小林市立東方中学校

第45回特別研究指定校

研究課題

確かな学力を身に付けた生徒の育成 ~主体的・対話的で深い学びにおけるICTの活用を通して~

2020年12月11日に実施した研究報告の映像


研究報告
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アドバイザー講評
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2020年度01-03月期(最新活動報告)

最新活動報告
本校は令和3年2月9日に行われた授業研究会において、問題発見・......

アドバイザーコメント

吉崎静夫先生
本期間は、「総合的な学習の時間(こすもす科)」の実践と「ビデオ会議システム(Zoom)」......

小林市立東方中学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 宮崎県 小林市立東方中学校
アドバイザー 吉崎 静夫 横浜国立大学 客員教授/日本女子大学 名誉教授
研究テーマ 確かな学力を身に付けた生徒の育成 ~主体的・対話的で深い学びにおけるICTの活用を通して~
目的 ICTを活用し、効果的に主体的・対話的で深い学びを生む授業を行う中で、生徒の思考力・判断力・表現力と情報活用能力の育成及び向上を図る。
現状と課題

●現状について

 校内の学習環境に関しては、東方中学校は小林市のICT教育推 進校として、平成29年9月にタブレットPCが22台導入された。また、タブレットPC以外のICT環境(電子黒板、校内無線LAN設備、授業支援ソフトなど)も充実している。このような環境の中、生徒たちは校内のどこにでもタブレットPCを持ち運びながら学習活動を行うことができるようになっており、授業だけでなく、生徒会活動や各種行事の準備・運営などにも活用している。 生徒の学力に関しては、各種調査による生徒の学力を分析すると、全体的に2極化の傾向にあり、特別支援を必要とする生徒が数名いる。 教師の指導力に関しては、「主体的・対話的で深い学び」についての共通理解がまだできておらず、ICTリテラシーについても差がある状況である。

●課題について

 現状を踏まえ、取り組むべき課題は、東方中学校における「確かな学力」と「主体的・対話的で深い学び」の定義を明確にし、全職員の共通理解を図ったうえで、授業改善を行っていくことである。また、これらのことと併せて、「主体的・対話的で深い学びを生む授業・単元構成」を効果的に実践できるようICTの活用を行っていきたい。
学校情報化の現状 校内無線LANが整備されており、タブレットPC22台を用いて、1学級全員が授業を行うことができる。
取り組み内容
  • ①東方中学校における「確かな学力」の定義を明確にし、全職員の共通理解を図る。
  • ②東方中学校における「主体的・対話的で深い学び」の定義を明確にし、全職員の共通理解を図る。
  • ③東方中学校における「確かな学力」の定義と「主体的・対話的で深い学び」の定義を基に、各種学力調査の結果を分析したり、アンケート調査を行ったりして、生徒の実態を把握する。
  • ④東方中学校における「主体的・対話的で深い学び」の定義を基に、各教科における「主体的・対話的で深い学び」を生む授業構成や単元構成を構築する。
  • ⑤各教科等における「主体的・対話的で深い学び」を生む授業を効果的に行うために、ICT機器や環境、各種ソフトウエアやコンテンツをどのように活用できるか整理する。
  • ⑥教師のICTリテラシーを高めるための研修会を計画的に実施する。
  • ⑦①~⑥の取組を踏まえながら、全職員で授業改善に取り組めるよう計画的に授業研究会を行う。
  • ⑧研究実践の成果や課題を他校に紹介・伝達できるよう、授業公開を行う。
成果目標
  • ①東方中学校における「確かな学力」の定義を基に生徒の学力を向上させる。
  • ②東方中学校における「確かな学力」の定義を基に、各教科における主体的・対話的で深い学びを生む授業や単元構成を構築し、各教科の授業改善や教師の指導力向上を図る。
  • ③各教科の主体的対話的で深い学びを生む授業や単元の学習を効果的に行うためのICTの活用法を整理し、各教科の授業改善のポイントを明確にする。
  • ④各教科、特別活動、各種行事、生徒会活動等における情報活用能力指導の体系表を構築し、系統的、計画的な指導を実践し、生徒の情報活用能力を向上させる。
  • ⑤教師のICTリテラシーを向上させる。
  • ⑥校内授業研究会を数多く行い、各教師の授業力を向上させる。
  • ⑦教育委員会と連携して授業公開を行ったり、ホームページで研究実践を紹介したりすることで、研究の成果や課題を他校に紹介・伝達する。
助成金の使途 タブレットPC・専用ペン、タブレットPC用キーボード兼カバー、授業支援ソフト、旅費、印刷費他
研究代表者 山口 博英
研究指定期間 2019年度~2020年度
学校HP https://cms.miyazaki-c.ed.jp/4406/htdocs/
公開研究会の予定 2019年度は、11月に小林市教育委員会と連携して、授業研究会を実施する予定である。2020年度は県内・県外に広く呼びかけて、12月に公開研究会を実施する予定である。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

  • ① 東方中学校における「確かな学力」の定義を明確にし、全職員の共通理解を図る。
  • ② 東方中学校における「主体的・対話的で深い学び」の定義を明確にし、全職員の共通理解を図る。
  • ③ 東方中学校における「確かな学力」の定義と「主体的・対話的で深い学び」の定義をもとに、各種学力調査の結果を分析し、全職員で生徒の実態について共通理解を図る。
  • ④ 東方中学校における情報活用能力チェックリストを作成し、全生徒のアンケート調査を行い、生徒の実態を調査・分析する。
  • ⑤ ①~④を踏まえて、授業等における研究実践と検証を行う。

アドバイザーの助言と助言への対応

助言① 研究の方向性や考え方を共通理解しやすいように、なるべく図式化した方がよい。

対応① 研究推進委員会を中心に、東方中学校における「確かな学力」、「主体的・対話的で深い学び」の定義図と研究の全体構想図を作成した。

助言② 研究副題にある「主体的・対話的で深い学び」について、昨年度までの研究で全体的なものができているので、それを土台にして、各教科の特性をふまえた、各教科における「主体的・対話的で深い学び」を生む授業における工夫・改善を行っていく必要がある。

対応② 研究推進委員会で原案を作成し、夏季休業中に、各教科の先生方で各教科の特性をふまえた、各教科における「主体的・対話的で深い学び」を生む授業構成(案)をつくり、全体で検討していく。

助言③ 本校の研究では、ICTを効果的に活用して、「思考力・判断力・表現力」と「情報活用能力」を中核とした「確かな学力」の向上を目指しているが、ICTといったデジタルに特化した研究を行うのではなく、アナログ(板書やノートを整理したまとめたり、紙の辞書を引いて調べたりすることなど。)とデジタルのすみ分けを全職員で共通理解して研究を進めることが大切である。

対応③ 夏季休業中の校内研修で、研究目的を再確認し、アナログとデジタルのメリットを生かした研究を実践していく。

助言④ 「思考力・判断力・表現力」と「情報活用能力」を向上させるためには、地道な知識・技能の定着の積み重ねを行っていくことが大切である。

対応④ 全教科を通して、基本的な知識・技能の定着を図る工夫を積み重ねていく。

本期間の裏話

 パナソニック教育財団の研究助成を受けることができ、さらに特別研究指定校に選ばれたことで、さらなる研究実践を行うことができるようになったことがとてもありがたいです。

 本校はこれまでも宮崎県小林市の研究推進校として、ICTを活用した教育の研究を行っていたので、今までの研究実践をレベルアップした形で取り組んでいけばよいのではと考えています。

 しかし、本校は小規模校なので各先生方の職務も多く、どうすれば先生方が多忙感を感じず、ICTを効果的に活用した授業等の研究実践が行えるか、また、小学校と連携しながら、発達段階を考慮した取組を行うことができるのか悩んでいます。

 そのような中、パナソニック教育財団の事務局の皆様やアドバイザーの吉崎先生から、適切活具体的な指示や指導、助言や励ましのお言葉をいただき、全職員同じ方向性のもとで研究を進めていく意欲が高まってきています。

本期間の成果

① 東方中学校における「確かな学力」の定義を明確にし、図式化することで、全職員の共通理解を図ることができた。

② 東方中学校における「主体的・対話的で深い学び」の定義を明確にし、図式化することで、全職員の共通理解を図ることができた。

③ 東方中学校における「確かな学力」と「主体的・対話的で深い学び」の定義をもとに、研究の全体構想図を図式化することで、全職員の共通理解を図ることができた。

④ 東方中学校における「確かな学力」の定義と「主体的・対話的で深い学び」の定義をもとに、各種学力調査の結果を分析し、生徒の実態を把握することができた。

⑤ 東方中学校における情報活用能力チェックリストを作成し、全生徒を対象にしたアンケート調査を行い、生徒の実態を調査することができた。

今後の課題

  • ① 本校の職員が同じ方向で研究実践を行うことができるよう、研究主任としてリーダーシップを発揮し、校長、教頭、教務主任、各研究班長と連携をとりながら、研究を推進していくことが重要である。
  • ② 本校職員の負担感が増えないよう、生徒の実態を把握して、研究実践内容を絞り込み、焦点化していく必要がある。
  • ③ 教育委員会や教育事務所と連携をとりながら、本校の研究実践を他校に波及させていく機会を設定していく必要がある。
  • ④ 本校職員の資質や能力を高めるために、助成金を有効に活用して計画的に先進校や各種セミナー等に出向してもらい、学んできたことを全職員にフィードバックしていく機会を設ける必要がある。

今後の計画

  • ① 本校における情報活用能力体系表を作成し、各教科や各種行事、活動の中での指導の分担や内容を明確にする。
  • ② 本校における「主体的・対話的で深い学び」の定義をもとに、各教科における「主体的・対話的で深い学び」を生む授業構成や単元構成を構築し実践を行う。
  • ③ 各教科等における「主体的・対話的で深い学び」を生む授業を効果的に行うために、ICT機器や環境、各種ソフトウエアやコンテンツをどのように活用できるか整理する。
  • ④ 教師のICTリテラシーを高めるための研修会を計画的に実施する。

気付き・学び

○ 「学力向上」というと各種学力調査の点数を上げることにとらわれがちだが、生徒が将来にわたって生きる力となってはたらく「確かな学力」という観点で考えると、「思考力・判断力・表現力」やその土台となる知識・技能の関係、情報活用能力の内容や資質・能力の必要性について、研究を通して把握できたことは大きかった。

成果目標

  1. ① 東方中学校における「確かな学力」の定義をもとに、各教科における主体的・対話的で深い学びを生む授業や単元構成を構築し、各教科の授業改善や教師の指導力向上を図る。
  2. ② 各教科の主体的対話的で深い学びを生む授業や単元の学習を効果的に行うためのICTの活用法を整理し、各教科の授業改善のポイントを明確にする。
  3. ③ 各教科、特別活動、各種行事、生徒会活動等における情報活用能力指導の体系表を構築し、系統的、計画的な指導を通して、生徒の情報活用能力を向上させる。
  4. ④ 各教師のICTリテラシーを向上させる。
  5. ⑤ 校内授業研究会を数多く行い、各教師の授業力向上を図る。
  6. ⑥ 教育委員会と連携して授業公開を行ったり、ホームページで研究実践を紹介したりすることで、研究の成果や課題を他校に紹介・伝達する。
アドバイザーコメント
田村 順一 先生
横浜国立大学客員教授/日本女子大学
名誉教授 吉崎 静夫 先生

(1)本研究の意義

 本校の研究主題「確かな学力を身に付けた生徒の育成―主体的・対話的で深い学びにおけるICTの活用を通して―」は、まさに次期学習指導要領がめざす教育そのものです。そこでは、確かな学力として、「思考力・判断力・表現力」と「情報活用能力」といった資質・能力が取り上げられています。そして、それらの資質・能力を育成するための教育方法(授業の方法)として、「主体的・対話的で深い学び」と「ICTの活用」が取り上げられています。

 本研究を通して実現しようとする教育実践は、まさにわが国の学校がめざすものであり、その研究成果が他の学校の教育実践に大きな影響を及ぼすことになるでしょう。

(2)研究の成果

 本研究が本格的にスタートしてまだ4ヶ月間にすぎないのに、次のような大きな成果が生まれています。

  • ①「確かな学力」の定義を明確にし、さらに図式化を図っています。そこでは、「確かな学力」が「思考力・判断力・表現力」と「情報活用能力」の2つの側面から定義されています。さらに、「思考力・判断力・表現力」の土台となる基礎的な学力がAとBに分けて考えられています。とてもよく考えられていると思います。
  • ②「主体的・対話的で深い学び」が明確に定義され、図式化されています。そこでは、「主体的・対話的で深い学び」が、「自分の考えをもつこと」「自分の考えを広げ、深めること」「自分の考えをこれまでの考えと関連づけ、構造化すること」のように、「自分の考え」を中核として定義づけられています。とてもわかりやすい定義であると思います。
  • ③①と②の定義をふまえて、研究の全体構造図が明確に表現されています。この構造図は、本校の教職員の共通理解を促すとともに、他校の教職員が新しい教育実践を考える際の参考にもなると思います。
  • ④「思考力・判断力・表現力」と「情報活用能力」についての生徒の実態を把握する方法(評価法)を考えていることです。このことは、本研究の成果を確認し、本研究をよりよいものにするために大切なことです。

(3)今後の課題

 これからやるべきことは、教職員の負担を十分に考慮しながら、研究の全体構造図に示された教育実践を1つ1つ着実に積み重ねていくことです。そして、生徒の実態にもとづきながら、それらの教育実践の改善を図ることです。大いに期待しています。

本期間(8月~12月)の取り組み内容

  • ① 本校における「主体的・対話的で深い学び」の定義をもとに、各教科の職員に協力してもらい、各教科の特性を踏まえた「主体的・対話的で深い学び」を生む学習構成表を作成した。
  • ② 各教科等における「主体的・対話的で深い学び」を生む授業や活動を効果的に行うために、ICTの活用法を全職員で作成した。
  • ③ 東方小・中学校の各職員と協力して、東方小・中9年間を見通した情報活用能力体系表原案を作成した。
  • ④ 東方中学校情報活用能力チェックリストを作成し、7月と11月の2回全生徒にアンケートを実施し、変容を分析することができた。
  • ⑤ 本校において、これまでに起きたICT関係のトラブルや改善点についてまとめることができた。
  • ⑥ 教師のICTリテラシーを高めるための研修会を実施した。

●令和元年7月26日に東方中学校で行われた小林市魅力ある授業づくり研修会のようす

東方中学校
東方中学校英語科の授業の様子

●令和元年10月16日に東方中学校で行われたタブレットPC操作研修会のようす

東方中学校英語科の授業の様子
東方中学校英語科の授業の様子

⑦ 計画的な研究授業の実施や、タブレットPCを活用した校務のペーパーレス化を行った。

●令和元年9月9日に行われた英語科の授業のようす

東方中学校英語科の授業の様子
東方中学校英語科の授業の様子
東方中学校英語科の授業の様子
東方中学校英語科の授業の様子

●令和元年11月29日に東方中学校で行われた研究授業のようす

東方中学校研究授業のようす
東方中学校研究授業のようす
東方中学校研究授業のようす
東方中学校研究授業のようす

●令和元年12月4日職員会議のようす

東方中学校職員会議
東方中学校職員会議

アドバイザーの助言と助言への対応

助言① 本校における「主体的・対話的で深い学び」の定義をもとに、各教科における「主体的・対話的で深い学び」を生む授業の在り方を構築してほしい。

対応① 夏季休業中に研修を行い、各教科で、教科の特性を踏まえた「主体的・対話的で深い学び」を生む学習構成表を作成した。

助言② 「主体的・対話的で深い学び」を実践する上で、効果的なICTの使い方が各教科によって異なるはずである。よって、各教科でどのようなICTの活用法があるのか整理する必要がある。

対応② 対応①と同じく、夏季休業中に全職員で分担して、教科におけるICTの活用法を考えてもらい、各教科における「主体的・対話的で深い学び」を生む学習構成表に整理してまとめた。

助言③ 本校が作成した情報活用能力チェックリストを用いて、生徒の変容を定期的に調査し、分析を行って変容を継続調査していくことが大切である。

対応③ 夏季休業中の校内研修で、研究目的を再確認し、アナログとデジタルのメリットを生かした研究を実践していく。

本期間の裏話

 中学校では、9月からは体育大会や文化祭等の行事が重なってくる。そこで、研究に対する各職員の負担をできるだけ減らすために、夏季休業中を中心に作業を行った。また、どのような作業をしてもらうかを研究推進委員会で検討し、作業内容を明確にした。

 

 本校は小規模校であるので、職員1人あたりの仕事内容がどうしても多くなってしまう。そこで、夏季休業中に作業日程期間を設定し、余裕をもたせることで、各職員の負担感を減らすことができたのではないかと思う。

本期間の成果

① 各教科の特性を踏まえた「主体的・対話的で深い学び」を生む学習構成表(案)の例

② 全職員で作成したICTの活用法

③ 東方小・中9年間を見通した情報活用能力体系表原案

④ 東方中学校情報活用能力チェックリストと生徒の変容

⑤ 本校で、これまでに起きたICT関係のトラブルや改善点

⑥ 本校では、パナソニック教育財団特別研究指定校として研究を行う以前から、全職員が年間を通して1人1研究授業を行ってきた。本年度は研究主題:「確かな学力を身に付けた生徒の育成」、副題:「主体的・対話的で深い学びにおけるICTの活用を通して」を柱として、計画的に研究授業を実施し、各職員の授業改善を推進することができた。また、職員会議においてもタブレットPCを活用し、会議のペーパーレス化や職員のICTリテラシー向上に努めることができた。さらに、教師のICTリテラシーを高めるための研修会を小林市教育委員会と連携して実施し、研究成果の地域への波及を行うことができた。

今後の課題

  • ① 本校の職員が同じ方向で研究実践を行うことができるよう、研究主任としてリーダーシップを発揮し、校長、教頭、教務主任、各研究班長と連携をとりながら、研究を推進していくことが重要である。
  • ② 今年度の研究実践の総括を行い、成果や課題を全職員で共通理解し、次年度に向けた取組について検討していく必要がある。
  • ③ 小林市の全小・中学校に無線LAN環境が整備され、タブレットPCが配備されたので、教育委員会と連携をとりながら、本校の研究実践を地域の小・中学校に波及させていく必要がある。
  • ④ 個に応じた知識や技能の定着を図る手立てまで研究が進んでいないので、全職員共通理解のもと、工夫や実践を行っていきたい。
  • ⑤ 本校職員の授業改善やICTリテラシーを高めるために、校内でお互いの授業を参観しあい、授業改善の方法やICTの活用方法について気軽に情報交換ができるようにしていきたい。
  • ⑥ 本校がこれまでに用いてきた学習指導案形式等を見直し、ICTの活用の在り方や主体的・対話的で深い学びが一目で分かるようなものを作成していきたい。

    アドバイザーの助言より

  • ○ 21世紀型学力を生徒に身に付けさせるために、教科横断的に(いくつかの教科を串刺しにするような形で)言語能力、情報活用能力(情報収集、情報の整理、情報の発信、情報モラルなど)、問題発見解決能力の3つの力を育成する授業デザインを構築、実践してほしい。ただし、その場合、3つの力のどこにポイントを置くかを明確にして授業デザインを行ってほしい。
  • ○ 21世紀型学力を育成するための基礎として、学習指導要領の改訂において、教科の見方・考え方が重視されるようになった。よって各教科を担当する職員が教科の見方・考え方を明確に理解し、生徒にどう指導していくのかについて研究を深めてほしい。

今後の計画

  • ① 個に応じた知識や技能の定着を図る手立てを実践し、生徒に思考力・判断力・表現力の基礎 を確実に身に付けさせる。
  • ② 日頃の授業において、主体的・対話的で深い学びを生む授業改善を実践し、その中で、効果 的に ICT を活用していくことで、生徒の知識や技能の定着、思考力・判断力・表現力の向上を図 る。
  • ③ 授業改善の結果については、定期的なアンケート調査と各種学力調査の結果と併せて分析し、 研究の結果を検証する。
  • ④ 宮崎県西諸県地区(小林市、えびの市、高原町)の教育委員会や各小・中学校と連携 し、本校の研究実践を広く紹介し、波及させていくことで、西諸県地区の小・中学校における授業改善に役立ててもらう。

気付き・学び

○ 本校の研究である確かな学力(思考力・判断力・表現力と情報活用能力の2つにポイントを置いたもの)について、これまでの実践を基礎に、問題発見解決能力を育成する授業デザインを構築し、実践を積み重ねていくと最終的に本校の研究主題に到達できる見通しが立ってきた。、全ての教科でこの実践を行っていくことは難しいので、本校の教育課程の中で、できるところから実践を行っていきたい。

成果目標

  1. ① 東方中学校における「確かな学力」の定義をもとに、各教科の特性を踏まえた「主体的・対話的で深い学び」を生む学習構成表(案)を構築することができたので、この学習構成表を基に、各教科で授業改善や教師の指導力向上を図る。
  2. ② 各教科等における「主体的・対話的で深い学び」を生む授業や活動を効果的に行うために、ICTの活用法を整理してまとめることができたので、この活用法の表を基に実践を積み重ね、各教科の授業改善に生かしていく。
  3. ③ 東方小・中学校の各職員と協力して、東方小・中9年間を見通した情報活用能力体系表原案を作成することができたので、この体系表原案をもとに実践を積み重ね、系統的、計画的な指導を通して、生徒の情報活用能力を向上させる。
  4. ④ ①~③の実践を積み重ねるとともに、各職員の実践を共有できる仕組みを構築し、情報の共有化や共通理解を図っていく。
  5. ⑤ 校内授業研究会を数多く行い、各教師の授業力向上を図るとともに、各教師のICTリテラシーを向上させる。
  6. ⑥ 教育委員会と連携して授業公開を行ったり、ホームページで研究実践を紹介したりすることで、研究の成果や課題を他校に紹介・伝達する。
アドバイザーコメント
田村 順一 先生
横浜国立大学客員教授/日本女子大学
名誉教授 吉崎 静夫 先生

2019年8月〜12月

 本校がめざす「確かな学力(つまり、教育目標)」は、各教科等の学習で育てる「思考力・判断力・表現力」と、教科等横断的な学習で育てる「情報活用能力」の2つに大別されます。そして、これらの資質・能力を育てるための教育方法として、「主体的・対話的で深い学び」と「ICTの活用」が取り上げられています。

 これらの教育目標・方法は、新教育課程で求められているものであり、まさに新教育課程の一丁目一番地です。そして、本校の教育実践研究の歩みは、本年度の1学期(4月―7月)から2学期(8月―12月)へと確実に前進していることが、次の研究成果からわかります。

●研究成果

  • (1)各教科において、「主体的・対話的で深い学び」を生む「活動場面」と「教科の特性を考慮した活動」が的確に整理されています。これらは、1学期の全体構想や定義をふまえて、各教科の授業にまで具体化させたものとなっています。
  • (2)各教科における「主体的・対話的で深い学び」のためのICT活用法が、学習構成表に整理してまとめられています。
  • (3)東方小・中学校の教職員が協働して、小・中学校9年間を見通した「情報活用能力体系表(原案)」を作成しています。そこでは、小学校低学年・中学年・高学年、中学校ごとに、「知識および技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力、人間性等」といった観点にもとづく情報活用能力がわかりやすく整理されています。
  • (4)川崎市で作成された「情報活用能力チェックリスト」を活用して、本年度の7月と11月の2回全生徒を対象にアンケート調査を実施し、生徒の情報活用能力の変容をとらえています。その結果、各学年ともチェックリストのほとんどの項目でプラスの変容がみられました。
  • (5)本校でこれまでに起きたICT関係のトラブルや改善点をまとめています。これから本格的にICTを活用とする学校にとって、大いに参考になる資料です。

●今後の課題と期待

  • (1)小林市の全小・中学校に無線LAN環境が整備され、タブレットPCが配備されたので、教育委員会と連携しながら、本校の実践研究の成果を市内の小・中学校に紹介し、普及させてもらいたい。
  • (2)本校がめざす「確かな学力(思考力・判断力・表現力と情報活用能力)」を育成するための問題発見・探究型の授業をデザインし、実践を積み重ねてもらいたい。その際、北海道教育大学附属函館中学校の2年・数学科の授業実践など、先進校の実践事例を参考にしてもらいたい。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

 本校の校区は東方小学校と東方中学校で構成されている。校区内は1小1中で、以前から学校個別の校内研究ではなく、東方小学校と東方中学校が連携して合同研究会の形で小・中9年間を見通した研究を行ってきた。本期間(2020年1~3月)では、以下のことに取り組んだ。

1 東方小学校においては、川崎市情報活用能力チェックリストをもとに、小学校低学年(小学1・2年生)、小学校中学年(小学3・4年生)、小学校高学年(小学5・6年生)版の情報活用能力チェックリストを作成してもらい、小学校における実態調査を行っていただいた。また、東方中学校においては、2019年4~7月期に作成した東方中学校情報活用能力チェックリストの5月と11月の結果を分析したものを基に考察を加えた。そして、2月に行われた東方小・中合同研の中で児童・生徒の実態及び変容分析結果の検討を行い、研究紀要にまとめ、東方小・中学校全職員で共通理解を図った。次年度は、小学校においては、本年度の情報活用能力の実態を考慮し、低下している項目を中心に具体的な手立てを考え指導を行っていく予定である。また、中学校においては、ほとんどの項目が高い値を示していたので、この値を維持できるよう継続した指導を行っていく予定である。なお、小・中学校ともに次年度も定期的に情報活用能力チェックリストを使って定期的に生徒の実態や変容を調査していく予定である。

2 東方中学校では以前から宮崎県小林市のICT推進校として指定を受け、小学校と合同でICTを活用した教育について研究実践を行ってきた。その中で毎年度1回、小・中学校が分担して、ICTを活用した研究授業も行ってきた。研究授業における指導案形式についても毎年度検討が加えられている。最近は「主体的・対話的で深い学び」という言葉が教育分野におけるキーワードになっており、東方小・中合同研の指導案形式においてもICT活用の項目だけでなく、「主体的な学び」、「「対話的な学び」、「深い学び」が指導案項目の中に明記されるよう工夫している。今年度第3回目の訪問でアドバイザーに東方小・中学校合同研で作成した指導案形式を見ていただいたが、学習指導過程の中で使われている文頭記号の種類が多いので、もう少しまとめて整理した方が良いという意見であった。そこで、東方中学校がパナソニック教育財団特別研究指定校の認定を受けたこともあり、研究推進委員会や全体研究会を通して検討を重ね、「主体的・対話的で深い学び」と「効果的なICTの活用」につながる指導案形式を作成することができた。

3 研究主題にある「確かな学力」は、本校では「思考力・判断力・表現力」と「情報活用能力」を合わせたものと定義している。これまで、副題にある「主体的・対話的で深い学び」については、本年度4~7月期に本校における定義図を全職員に分かりやすい文言で作成し、全職員で考え方を共有して実践を行うことができた。しかし、「思考力・判断力・表現力」と「情報活用能力」については本校における分かりやすく明確な定義をしておらず、全職員でこの2つについても考え方を共有しておくことが必要だと考え、定義図を作成した。さらに、東方中学校における「思考力・判断力・表現力」と「情報活用能力」、「主体的・対話的で深い学び」、「効果的なICTの活用」がどのように「確かな学力」に関係しているのかを明確にするために、これらの関係図研究推進委員会や全体研究会で検討を重ね作成することができた。

4 次年度の研究の方向性について、本年度の成果と課題をもとに、研究推進委員会及び全体研究会で検討と確認を行った。

 第2回活動報告の中で、アドバイザーから「これからは教科横断的な問題発見・探究型の学習に取り組んでほしい。」とのご意見をいただいたので、研究推進委員会で2つの案を検討した。1つは、各教科の授業において発展的な内容を扱う単元を設けて、教科の授業の中で問題発見・探究型の授業を行う方法である。各教科の授業で行うことになるが、発展的な内容となるので、その教科の見方・考え方だけではなく、他の教科の見方・考え方を使う場面もあると考え、ある程度教科横断的な内容に絡むと考えた。もう1つは、総合的な学習の時間の中で問題発見・探究型の単元を設けて行う方法である。総合的な学習の時間はその目的上、学習内容が各教科の内容を総合したものとなるため、教科横断的な問題発見・探究型学習を実施しやすいことが考えられる。研究推進委員会では上記の2つの案について検討を重ねたが、なかなか絞り込むことができなかったので、第3回訪問の際にアドバイザーのご意見を聞いた上で全体研究会を行い、次年度の方向性を検討・確認することにした。

 第3回訪問では、アドバイザーから両方に取り組んでほしいとのご意見をいただいたが、本校は小規模校で職員数も少ないため、両方同時に進めることは難しいのではないかということと、小林市では市内の全小・中学校で総合的な学習の時間に「こすもす科」という地域独自単元を設けて学習を進めており、次年度は「こすもす科」の内容が改訂され新しい内容で実施されるので、総合的な学習の時間で進めるのは難しいのではないかということをお伝えした。そのような内容で相談を進めたところ、次年度は、まずいくつかの教科において発展的な内容で問題発見・探究型の授業を実践していくとよいということ、そして、再来年度あたりに次年度の成果と課題を生かす形で総合的な学習の時間における問題発見・探究型の学習に取り組んでいけばいいのではないかというご意見をいただいた。

 そこで、研究推進委員会で検討した2つの案をもとに、アドバイザーからのご意見を考慮しながら全体研究会で検討したところ、次年度は各教科において発展的な単元を設定し、各教科の特性に応じた形で問題発見・探究型の学習に取り組んでいくことで確認した。

5 令和2年2月14日の第3回訪問において、技能教科である体育の研究授業を行い、技能教科における「主体的・対話的で深い学び」の学習構成や効果的なICT機器の使い方を研修した。

 実際の授業は、バスケットボールのフリースローの確率を上げるためにはどうすればよいかを生徒たちが考えて練習する内容であった。まず始めに学習課題の説明を行い、50インチの液晶テレビとタブレットPCを使って、フリースローの模範演技を動画で確認させた。次に、タブレットPC5台をそれぞれ三脚に取り付け、授業支援ソフトとタブレットPCのビデオカメラ機能を使って、自分がフリースローをしている動作を撮影し、追っかけ再生機能を使って生徒自分自身で確認できるようにした。この手立てにより、生徒たちは画面で視覚的に模範演技の動作に自分の動きを近づける形で動作の修正を行うことができた。さらに、グループで集まり、タブレットPCに撮影されている自分たちの動作を模範演技と比較して再生することで、フリースローの動作におけるポイントについて話し合いをさせた。最後に全体で集まって、各グループからの意見を発表させ、フリースローの動作のポイントを全体で確認した。

 この研究授業を通して、技能教科における「主体的・対話的で深い学び」を生む学習過程を構成する上でも効果的にICTを活用することで、学習効果を上げることができることが分かった。

アドバイザーの助言と助言への対応

○ 助言1

 次年度の研究の方向性について、問題発見・探究型の授業に取り組んでほしいと思っている。本校では総合的な学習の時間か各教科の発展的な内容として取り扱う場合のどちらかを考えられているようだが、できれば両方で取り組んでもらいたい。

● 助言1への対応

 年度が替わると人事異動で職員が入れ替わる。また、宮崎県小林市では総合的な学習の時間の中に「こすもす科」という単元を全小・中学校で設けており、これまでの「こすもす科」の内容が見直されるため、次年度から新しい内容で取り組むこととなる。さらに現在、コロナウイルス関連の対策で臨時休校が行われていることを考えると、問題発見・探究型の授業を次年度に設けていくことが難しいのではないかと考えられる。

 よって、これまでの実践を生かしながらで、各教科の中で発展的な内容として、問題発見・探究型の授業を設定して取り組んでいきたい。

○ 助言2

 本校の研究の理論面は1年次でほぼ完成していると思われる。よって、今後は学校での教育活動全般にわたって実践及を積み重ねていくことと、研究成果の波及を積極的に行ってほしい。

● 助言2への対応

 本年度3月中に1年次の研究の総括を行い、全職員でこれまでの研究実践内容について共通理解を行う。また、次年度になって新たな職員構成となったときに、再度1年次の研究実践内容についての確認と次年度研究の方向性について検討と共通理解を行う予定である。なお、研究成果の波及については、次年度12月に研究公開を行う予定であるが、そのほかの機会に積極的に研究成果を発表していきたい。

本期間の裏話

 1月~3月の間は高校入試などの行事があり、研究を進めることが難しいと思われた。そのような中、各先生方が積極的にタブレットPCや授業支援ソフトを活用した授業を行ってくださり、実践を積み重ねることができた。また、2月の第3回訪問に向けて、若手の体育の先生が授業を引き受けてくださり、実際の授業において、ICT機器のさまざまな使い方を見せてくれたおかげで、他の職員にとって大変勉強になった。

本期間の成果

  • 1 東方小学校と連携し、川崎市情報活用能力チェックリストをもとに、小学校低学年(小学1・2年生)、小学校中学年(小学3・4年生)、小学校高学年(小学5・6年生)版の情報活用能力チェックリストを作成し、小・中合同研の中で児童・生徒の実態及び変容の分析や共通理解を行うことができた。
  • 2 東方中学校の「主体的・対話的で深い学びにおける効果的なICTの活用」を実践するための指導案形式を全職員で検討し、基本形式を作成することができた。
  • 3 本校の研究に関する言葉について明確で分かりやすい定義づけを行うことと、関係図を作成することができた。
  • 4 次年度の研究の方向性について、各教科において発展的な学習を行う単元を設定し、各教科の特性を考慮しながら問題発見・探究型学習を行っていくことを全職員で共通理解・確認した。

今後の課題

  • 1 本年度の研究成果と課題を踏まえ、次年度研究の方向性、内容、組織体制を全職員で検討し、意思統一と共通理解を図っていくこと。
  • 2 令和2年12月の研究公開に向けて見通しをもって計画を作成し、着実に準備を進めていくこと。

今後の計画

  • ● ICT(電子黒板、タブレットPC、授業支援ソフトなど)の使用法についての研修会を定期的に実施する。
  • ● 各種学力調査の分析を行い、その結果を全職員で共通理解し、授業改善に生かす。
  • ● 「主体的・対話的で深い学び」を生む授業の改善のポイント(授業構成、ICTや板書・ノートの工夫など)について見直しと共通理解を行う。
  • ● 個に応じた知識や技能の定着を図る手立ての見直しと共通理解を行い、実践を積み重ねていく。
  • ● 情報活用能力チェックリストによる定期的な生徒の実態や変容把握を行い、その結果を分析し、成果と課題の共通理解のもと授業改善に生かす。
  • ● 研究主題に迫るために、1人1研究授業を通した研究内容の検証や、日頃の授業における実践を積み重ねていく。
  • ● 2年間の研究結果を報告するための授業公開を実施する。
  • ● 2年間の研究内容の検証と次年度に向けた研究の方向性の検討と共通確認を行う。

1年間を振り返って、成果・感想・次年度への思い

 まず、本校がパナソニック教育財団の特別指定研究校に選ばれたことに感謝したいと思います。本校は3年前に宮崎県小林市のICT推進校に指定され、これまでに導入されていた電子黒板やデジタル教科書等に加え、校内無線LANの整備やタブレットPCと授業支援ソフトの整備が行われました。そのことに加えてパナソニック教育財団からの研究助成金をいただくことで、ICT機器のさらなる整備や職員の県外研修を行うことができ、大変助かりました。

 また、これまでも東方小学校と合同でICT機器を活用した授業について研究を行ってきましたが、特別研究指定校に選ばれたことで、研究の焦点化、明確化、深化、波及を行うことができました。さらに、各職員の授業改善を図ることで、各職員の授業力の向上や生徒の学力向上に努めることができました。

 まだ研究半ばですが、本校の職員一丸となって協力し、本校生徒の学力向上はもとより他校への研究成果の波及をさらに行っていきたいと思います。

 この1年間のご指導、ご助言、本当にありがとうございました。

成果目標

  1. 1 日頃の授業において、主体的・対話的で深い学びを生む授業改善を実践し、その中で、効果的にICTを活用していくことで、生徒の知識や技能の定着、思考力・判断力・表現力の向上を図る。
  2. 2 授業改善の結果については、定期的なアンケート調査と各種学力調査の結果と併せて分析し、研究の結果を検証する。
  3. 3 宮崎県西諸県地区(小林市、えびの市、高原町)の教育委員会や各小・中学校と連携し、本校の研究実践を広く紹介し、波及させていくことで、西諸県地区の小・中学校における授業改善の一助とする。
アドバイザーコメント
田村 順一 先生
横浜国立大学客員教授/日本女子大学
名誉教授 吉崎 静夫 先生

2020年1月〜3月

 本期間においても、本校は「確かな学力を身に付けた生徒の育成」をめざして着実な研究成果を積み上げています。したがって、2020年4月からの2年目の研究成果が大いに期待できます。

●研究成果

  • (1)研究主題である「確かな学力」について、本校では「思考力・判断力・表現力」と「情報活用能力」を合わせたものととらえています。そして、全職員の共有化をはかるために、「思考力・判断力・表現力」と「情報活用能力」の定義図を作成しています。さらに、「思考力・判断力・表現力」と「情報活用能力」、「主体的・対話的で深い学び」、「効果的なICTの活用」がどのように「確かな学力」に結びつくのかを関係図に集約しています。この関係図は、新学習指導要領で求められるキー概念を見事に整理しているだけに、他の学校にとっても大いに参考になるものです。
  • (2)本校の校区は小林市立東方小学校と東方中学校です。そして、校区内1小1中という特徴をふまえて、小中9年間を見通した「情報活用能力を育てるカリキュラム」と「情報活用能力チェックリスト」を作成しています。そして、本期間では、小1から中3までの「児童・生徒の情報活用能力」の経月(2019年の5月と11月)の変化をふまえて、東方小・中学校全職員で情報活用能力の実態についての共通理解をはかっています。そこには、小・中学校という義務教育の9年間で情報活用能力を育成しようとする教職員の共通の願い(思い)があります。
  • (3)2020年2月14日の第3回訪問の際に、技能教科である体育科(1年バスケットボール)の授業実践が若手教師によってなされました。そこでは、「前時の学習で撮った自分のフリースローの映像と見本(手本)の映像を比較する」場面や、「前時のフリースローの映像と本時のフリースローの映像を比較する」場面において、ICT(タブレットPC)が有効に活用されていました。それは、「主体的・対話的で深い学び」を実現するために、ICTをどのように活用したらよいのかを具体的に示すものでした。なお、若手教師がこの実践を見事に行うことができたのは、教頭先生をはじめとするベテラン教師のサポートがあったからです。

●今後の課題と期待

  • (1)「主体的・対話的で深い学び」を実現するために、ICTをどのような授業場面で、どのように活用したらよいのかを授業実践を通してさらに検討し、市内の教育関係者はもちろんのこと、市外の教育関係者にも積極的に公開してほしい。
  • (2)本校が追究している「思考力・判断力・表現力」と「情報活用能力」をさらに育成するためには、ICTを有効に活用した「問題発見・探究型学習の授業」を提案し、広く教育関係者に公開することが不可欠です。その際、「問題発見・探究型学習の授業」を各教科の発展的な内容で行うのか、それとも総合的な学習の時間を使って行うのかは、学校の事情(カリキュラム、教員配置など)を考慮しながら判断してほしい。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

 昨年度末からの新型コロナウイルス感染症の影響で臨時休業が続いた中、職員の入れ替わりもあり、臨機応変な対応を強いられた期間であった。そのような本期間(2020年4~7月)では、以下のことに取り組んだ。

1 情報活用能力の実態と変容

 本年度6月上旬に本校情報活用能力チェックリストを用いたアンケート調査を行い、新1年生の実態と2、3年生の経月変化を調査した。

 各領域別に見ると、1年生は4点満点中3点を大きく上回っており、小学校からの継続的な指導が効果を上げていると考えられる。ただ、質問項目別に見ると2点台の項目もいくつか見られるが、今後の指導・支援で十分向上していくと思われる。

 2、3年生では、どの領域でも向上しているか、値が高止まりしているかのどちらかであり、質問項目別に見ても、令和2年6月の調査では2点台の項目は1つもなかった。このことから、2、3年生では指導・支援の成果が現れているといえる。

2 計画的なICT研修会の実施

ICT研修の様子1

 本年度、本校は昨年度職員11名のうち7名の職員が入れ替わった。よって、タブレットPCの操作スキルや授業支援ソフトの活用スキルが身に付いていない職員も年度当初多く見られた。そこで、職員のICTスキルを底上げするために4月から6月にかけて3回タブレットPCの操作法や授業支援ソフトの操作法について校内研修会を行った。

 校内研修会では、「まずさわってみましょう。みんな最初は失敗します。大丈夫です!」をモットーに、ざっくばらんな雰囲気のもとみんなで聞き合い、教え合いながら研修を進めていった。その結果、最初はタブレットPCの操作に消極的だった職員も、次第に授業で使う場面が増え、全体的なICTスキルも向上したと思われる。

ICT研修の様子2

新しく来られた職員のタブレットPC活用

3 問題発見解決能力と情報活用能力育成のための問題発見・探究型学習の取組

 昨年度の第2回活動報告の中で、アドバイザーから「これからは教科横断的な問題発見・探究型の学習に取り組んでほしい。」とのご意見をいただいた。そこで昨年末に行った研究1年次の総括では、各教科で発展的な内容を扱う単元を設けて、教科の授業の中で問題発見・探究型の授業を行う方法を実践していくことを共通理解した。しかし、定期人事異動で職員が大幅に入れ替わったこと、昨年度末からの新型コロナウイルス感染症の影響で臨時休業が続いたことから、本年度の教科時数確保が最優先事項となり、教科の授業の中で問題発見・探究型の授業を行うことが困難となった。 そこで、本年度の職員でもう一度検討した結果、総合的な学習の時間の中で問題発見・探究型の学習を実践していくことを共通理解した。

 具体的には、小林市は総合的な学習の時間に「こすもす科」という独自単元を設けており、市内の全小中学校で系統的、段階的に小林市のことやキャリア教育、ICTリテラシーなどを学習する内容となっている。本校では、その中の「小林市シリーズ」という学習内容を問題発見・探究型の学習構成に組み直して夏季休業開けから各学年で実践する予定である。

4 Zoomを用いた研究授業と授業研究会の実施

教室でのwebカメラ設定

 本年度6月26日に第1回のアドバイザー訪問を予定していた。ところが、新型コロナウイルス感染症の影響で、都道府県をまたいでの移動が難しい状況となった。そこで、Zoomを用いた遠隔での研究授業参観と授業研究会を行った。本校でも初めての取組であったので、マイクでの授業の集音がうまくいかなかったり、回線容量が逼迫したりなどいろいろなトラブルがあったが、全職員貴重な体験ができた。

研究授業のようす1

研究授業のようす2

Zoomによる授業研究会のようす1

Zoomによる授業研究会のようす2

アドバイザーの助言と助言への対応

○ 助言1

  問題発見・探究型の学習を進めていくためには、生徒の問題発見解決能力と情報活用能力を育成するために学習活動を行うことを職員全員で明確に共通理解して実践する必要がある。

● 助言1への対応

 本年度の夏季休業中に計画的に職員研修を行い、生徒の問題発見解決能力と情報活用能力を育成するための問題発見・探究型の学習の進め方について検討と共通理解を行う。

○ 助言2

 小林市を取り上げた地域教材で3学年系統的、計画的に問題発見・探究的な学習を進めるためには、生徒自身の当事者意識を高めることが重要である。コロナの時代だからこそ地域のよさを考えることが大切になっている。3年間を通してふるさと小林のことを学習するのであれば、1年で「小林が抱える課題は何か」、2年で「他の地域と比べて小林にはこんなよさがある」、3年で「小林の未来はどうしたらよいか」、という流れで授業設計を行うとよいのではないか。

● 助言2への対応

 研究推進委員会で、総合的な学習の時間で行う小林市に関する地域学習活動(問題発見・探究的な学習)について検討し、全体研究会で提案する。全体研究会で提案内容を吟味修正し、活動の流れについて共通理解を行う。その後、各学年部会に分かれ、具体的な授業設計を行っていく。各学年の作業については夏季休業中に行い、夏季休業開けから全学年で実践できるよう準備する。

本期間の裏話

 昨年度末からの新型コロナウイルス感染症の影響による臨時休業には本当に参りました。本年度の全ての授業や行事について見直しをしなければならず、臨機応変に対応しなければならないことも数多く続いています。また、定期人事異動で11名中7名の職員が異動となり、研究内容の共通理解などに不安がありました。そんなピンチの中、皮肉なことにこれまでなかなか実現できなかったリモートワークやオンライン授業を行う取組がどんどん進んでいます。本校でもパナソニック教育財団の協力で、初めてZoomを用いた研究授業や授業研究会を行うことができ、貴重な経験となりました。

本期間の成果

  • ① 生徒の情報活用能力の実態や変容の調査結果から、本校生徒の情報活用能力が高いレベルで推移していることが把握できた。
  • ② 本年度、職員が大幅に入れ替わった中、計画的に職員のICT研修を行うことができ、新しく来られた職員もICT機器を活用した授業を積極的に行っている。
  • ③ 生徒の問題発見解決能力と情報活用能力を育成するための問題発見・探究型の授業構成について、昨年度の研究内容をもとに概要を設計することができた。
  • ④ 本校のホームページを通じて、昨年度の研究成果を発信することができた。また、本校が所属する宮崎県西諸県地区の小中学校教育研究会情報(視聴覚)部会において、昨年度本校が研究した内容をもとにして地区全体で研究を進めることになり、本校の研究成果を他の学校に波及することができた。
  • ④ Zoomを用いたオンラインでの訪問研究授業参観と授業研究会を実施することができ、職員のICTリテラシー向上を図ることができた。また、オンラインにおけるさまざまな課題も明らかとなった。

今後の課題

  • ① 新型コロナウイルス感染症で先の見通しが不透明な中、今後の研究計画について、何通りかのスケジュールを立てて、臨機応変に研究実践を行っていく必要がある。
  • ② 各職員のICT研修を進め、職員のICTリテラシーを向上させるとともに、積極的にICTを取り入れた授業を行っていける雰囲気を醸成したい。
  • ③ 12月に予定している研究公開に向けて計画的に準備していく必要がある。

今後の計画

  • ① 東方中における総合的な学習の時間を活用した問題発見・探究型の学習(こすもす科:小林市シリーズ)の授業設計を全職員協力のもと夏季休業中に行う。
  • ② 夏季休業開けから総合的な学習の時間を活用した問題発見・探究型の学習(こすもす科:小林市シリーズ)の実践を各学年で行う。
  • ③ 情報活用能力チェックリストを用いた定期的な生徒の情報活用能力調査を実施する。
  • ④ 教師のICTリテラシーを高めるための研修会を計画的に実施する。

気付き・学び

  • ○ 今後教育現場では、Zoom等のリモートワークツールの活用法の研究が進むことで、新しい学習形態や学習活動が生まれてくるのではないだろうか。

成果目標

  1. 1 生徒の情報活用能力について、東方中情報活用能力チェックリストを用いて調査し、1年生では実態の把握を行い、2、3年生については昨年度からの変化を分析し、全職員で共通理解を図る。
  2. 2 ICT(電子黒板、タブレットPC、授業支援ソフトなど)の使用法についての校内研修会を計画的に開催し、定期異動で新しく本校に赴任した先生方のICTリテラシー向上を図る。
  3. 3 昨年度の研究成果である、本校における主体的・対話的で深い学びの定義、本校における、思考力・判断力・表現力の定義、本校における情報活用能力の定義、各教科における効果的なICTの活用法を踏まえつつ、本年度の課題である問題発見・探究型の学習について、全職員共通理解のもと、授業設計の検討を行う。
アドバイザーコメント
田村 順一 先生
横浜国立大学客員教授/日本女子大学
名誉教授 吉崎 静夫 先生

2020年4月〜7月

 本期間は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で臨時休校が長くあり、しかも11名の教職員のうちの7名が定期異動で入れ替わるという厳しい状況の中で、「確かな学力を身に付けた生徒の育成」をめざして着実に理論研究と実践研究を積み重ねていることがわかりました。

●研究成果

  • (1)研究主題である「確かな学力」について、本校では「思考力・判断力・表現力」と「情報活用能力」を合わせたものととらえています。さらに、本年度は、「問題発見・解決能力」を「総合的な学習の時間(こすもす科)」を活用して育成しようとしています。このように、21世紀の社会を見据えて、「確かな学力」を積極的に拡大して、「思考力・判断力・表現力」「情報活用能力」「問題発見・解決能力」の3つの柱でとらえていることは大いに評価できます。というのも、21世紀の学びの中核には、「探究学習」があるからです。
  • (2)本校で作成した「東方中・情報活用能力チェックリスト」を用いて、1年生から3年生までの「情報活用能力の実態と変容」を的確に把握し、その特徴を全職員で共通理解していることは素晴らしいです。
  • (3)新型コロナウイルス感染の影響を考慮して、6月26日の本年度第1回訪問は、「ビデオ会議システム(Zoom)」を活用して、オンラインで行われた。まず、第3学年・社会科(戦時下の人々)の授業実践がZoomで公開されました。4台のカメラを駆使しての映像は教室の風景を鮮明に映し出していました(ただし、残念ながら、ときどき音声が聞き取りにくかった)。その後、Zoomを用いて、授業検討会が行われました。このようなオンラインでの公開授業研究会は、今後ますます需要が高まることでしょう。その意味でも、今回の取り組みは貴重なものでした。
  • (4)本校が作成した「主体的・対話的で深い学びの定義図」「思考力・判断力・表現力の定義図」「情報活用能力の定義図」「主体的・対話的で深い学びとICT活用および情報活用能力の概念図」が宮崎県西諸県地区の情報教育研究会で採用され、各学校で実践に移されています。このように、本校の研究成果が地域に広がっているのは素晴らしいことです。

●今後の課題と期待

  • (1)「総合的な学習の時間(こすもす科)」を活用した、問題発見・解決能力を育てる「探究学習」の授業設計を教職員全員でさらに検討してください。
  • (2)今年の12月に予定されている公開研究発表会は、オンラインで行われる可能性が高いです。その際、公開授業と授業研究会がオンラインでも可能であることを全国の教育関係者にしっかりと示してください。

本期間(8月~12月)の取り組み内容

1 情報活用能力の実態と変容

 本年度6月上旬に本校情報活用能力チェックリストを用いたアンケート調査を行い、新1年生の実態と2、3年生の経月変化を調査した。

 グラフの結果からは、全学年、全分類において上昇傾向が見られる。この原因として、タブレットPCをはじめとしたICT機器を活用した授業が年々増えていることや、昼休みや放課後にタブレットPCを借りる生徒が増えているため、生徒の使用頻度が増えていることが考えられる。

2 思考力・判断力・表現力の変容

 本年度10月に、昨年度のみやざき学習状況調査活用問題を用いて、1年生と2年生を対象に、生徒の思考力・判断力・表現力の変容を調査した。

 グラフの結果からは、1年生、2年生とも向上している教科とそうでない教科のばらつきが見られた。思考力・判断力・表現力については、新型コロナウイルス感染症の関係で、年1回のテストで変容を調べたことにより、結果の信頼性が乏しいと考える。よって、今後は他の評価方法も用いながら多面的に変容を調べていきたい。

3 校内研修会の取組

 8月に校内でのICT研修会を行った。また、9月には宮崎大学の小林博典先生を本校に招き、東方小学校と合同で今後の教育の進展に関して講義を受け、iPadとプログラミングロボットを使って、プログラミング教育の実技演習を行った。11月、12月は研究授業の事前研究会や各学年職員でタブレットPCの操作スキル研修を行った。

9月30日(水) 宮崎大学の先生を招いての小中合同ICT研修会

4 問題発見探究型学習の取組

 小林市は総合的な学習の時間に「こすもす科」という地域単元教材を設けている。その中に全学年共通で学習する「小林市シリーズ」の単元がある。

 この単元を各学年で分担して問題発見探究型の学習過程に構成しなおした。そして夏季休業開けからの実践に取り組んでいる。

 なお、「こすもす科」における問題発見・探求型学習の実践にあたり、生徒が次の5つのステップを通して学習するように工夫した。これらの5つのステップは本校が定義している「思考力・判断力・表現力」と「情報活用能力」と連携させている。

5 Zoomを使った授業研究会

 本校は11月9日に第2回訪問を兼ねてZoomによる遠隔授業研究会を実施した。問題発見探究型の授業で、3年生総合的な学習の時間、地域単元教材のこすもす科(小林市シリーズ)の授業を行った。

 本校の今年度におけるパナソニック教育財団定期訪問は、新型コロナウイルス感染症の影響で全てZoomを使って遠隔授業・研究会を行っている。第1回では音声がうまく聞こえなかった反省があり、今回はマイクを3本使い生徒の声や教師の声をきれいに集音することができた。また、タブレットPCと授業支援ソフトの画面合体機能を使い、効果的にICTを活用して協働学習を展開し、授業の目標を十分達成することができた。

Zoomを使った研究授業使用機材

授業のようす

6 研究公開の実施

 本校は12月11日(金)に、特別研究指定校として1年半にわたる研究の取組を広く見ていただくために研究公開を実施した。実施形態は、11月9日に行った授業研究会と同様、Zoomを使って遠隔の研究公開であった。今回のZoomは通常のZoomミーティングと違い、パナソニック教育財団の協力でZoomウエビナーを使用した。理由は、Zoomウエビナーでは登録さえしていれば、オンラインでなくても後から録画されたものを視聴できること、一般の視聴者の画面は出ないこと、視聴用の画面をホスト権限を持ったものがコントロールできることなどがあげられる。

 映像や音声については、11月9日の授業研究会の通信がうまくいったので、11月9日の機材に電子黒板画面送信用とグループ活動撮影用のタブレットPC2台を追加する形で実施した。

 授業は問題発見探究型の学習で、2年生総合的な学習の時間、単元はこすもす科(小林市シリーズ)、単元目標は「小林市について調べ、他地域にない『小林市のよさ』を見つけることができる。」、「他の地域と違う『小林市のよさ』について調査し、他に分かりやすく紹介することができる。」であった。

研究公開 授業のようす

 Zoomウエビナーによる研究公開は初めての取組であったが、学習している生徒たちや教師の動き・音声を明瞭に送信することができた。また、研究概要説明や吉崎先生による指導・助言と講演も円滑に行うことができた。

アドバイザーの助言と助言への対応

○ 助言1

 授業のしっかりした先生がICTを使うと鬼に金棒である。しかし、授業力や構想が不十分な教師がICTを使うと空回りになる。ベテランの教師は授業はしっかりしているがICTリテラシーやスキルが不十分な傾向があり、逆に若い先生はICTリテラシーやスキルは豊富だが授業力が追いついていない傾向がある。今後はベテランの先生と若手がチームとなり、協力して授業をつくっていくとよいのではないか。

● 助言1への対応

 第3回定期訪問授業研究会や今後の研修の在り方に生かしていきたい。

○ 助言2

 本校の「確かな学力」は「思考力・判断力・表現力」と「情報活用能力」が合わさったものと定義されている。本年度は総合的な学習の時間における問題発見探究型学習に取り組んでおり、生徒に身に付けさせる資質・能力として、「問題解決能力」も重要である。よって、「確かな学力」の定義として、「問題解決能力」も合わせてはどうか。

● 助言2への対応

 次年度に向けた研究構想に「問題解決能力」を加えて検討を行う。

本期間の裏話

 Zoomを使った遠隔授業研究で、一番苦労したことが音声の集音である。試行錯誤をくり返しながら、学校にあるマイクとミキサーを使うのが最も良いことを発見できたのは大きかった。また、Zoomを使うにあたり、1番は通信速度、2番目は音声、3番目に画像が重要であることも分かった。

本期間の成果

  • ① 生徒の情報活用能力の調査結果から、本校生徒の情報活用能力が高いレベルで推移していることが把握できた。
  • ② 総合的な学習の時間における問題発見探究型の授業構成について、各職員で協力・分担して練り上げることができた。
  • ③ Zoomを用いたオンラインでの定期授業研究会と研究公開を実施することができ、本校の成果や課題を波及することができた。

今後の課題

  • ① ベテランと若手が協力して授業実践や研修が行えるよう工夫を行う。
  • ② 本校における「確かな学力」の定義に、どのように「問題解決能力」を付加するか、また、本校における「問題解決能力」の定義をどうするか検討していく。

今後の計画

  • ① 2月に行われる最後の定期授業研究会に向けて、全職員で協力して取り組んでいく。
  • ② 2年間の研究の成果と課題を生かし、次年度の研究構想を検討していく。

成果目標

  1. 1 生徒の情報活用能力について、東方中情報活用能力チェックリストを用いて調査し、昨年度からの変容を分析し、全職員で共通理解を図る。
  2. 2 生徒の思考力・判断力・表現力について、昨年度のみやざき学習状況調査の活用問題を用いて生徒の変容を分析し、全職員で共通理解を図る。
  3. 3 ICT(電子黒板、タブレットPC、授業支援ソフトなど)の使用法についての校内研修会を計画的に開催し、職員のICTリテラシーとスキルの向上を図る。
  4. 4 各教科の特性に応じた主体的・対話的で深い学びの実践と効果的なICTの活用法をもとに、総合的な学習の時間における問題発見・探究型の学習について、全職員共通理解のもと、授業設計及び実践を行う。
  5. 5 11月にZoomを用いた遠隔授業研究会と12月にZoomを用いた遠隔研究公開を実施する。
アドバイザーコメント
田村 順一 先生
横浜国立大学客員教授/日本女子大学
名誉教授 吉崎 静夫 先生

2020年8月〜12月

 本期間は、「総合的な学習の時間(こすもす科)」の本格的な実践と「ビデオ会議システム(Zoom)」を活用したオンラインでの公開研究発表会が行われたことに特長がある。

●研究成果

  • (1)教育目標(確かな学力の育成)、教育過程(主体的・対話的で深い学び)、教育方法(ICTの活用)の三者関係が、理論的にも実践的にも明確になった。つまり、「主体的・対話的で深い学び」の教育過程において、ICTをどのように活用できるのか、あるいはICTをどのように活用すべきなのかを授業実践を通して検証することによって、本校がめざす資質・能力(思考力・判断力・表現力と情報活用能力)を育成できることが明らかになった。そこでは、「主体的・対話的で深い学び」を明確に定義(規定)して、教職員で共通理解を図っていくことが重要であった。このことは、他校も参考にできることである。
  • (2)本年度から本格的に実践研究に取り組んでいる「総合的な学習の時間(こすもす科)」を通じて、21世紀の社会に求められる資質・能力である「問題発見・解決能力」が探究学習によって育成できることがわかってきた。そこでは、これまでの教科の実践研究を通じて明らかになってきた「主体的・対話的で深い学びとICT活用」に関する知見が大いに生かされている。
  • (3)本校がめざす「確かな学力」の実態を定量的に評価して、教職員間で共通理解を図っている。1つは、本校で作成した「東方中・情報活用能力チェックリスト」を用いて、1年生から3年生までの「情報活用能力の実態と変容」を的確に評価している。もう1つは、「みやざき学習状況調査の活用問題」を用いて、生徒の「思考力・判断力・表現力の実態と変容」をとらえている。
  • (4)11月にZoomを用いたオンラインでの授業研究会、12月に「対面」と「オンライン」によるハイブリッド型の公開研究発表会を行って、本校の実践研究の成果を広く紹介できた。その過程で、オンラインで授業を伝達するための方法(映像や音声の収録・通信)に関するノウハウを蓄積することができた。このノウハウは他校にとっても大いに参考になるものである。

●今後の課題と期待

  • (1)ベテラン教員と若手教員がそれぞれの強みを生かして、「ICTを活用する授業」を協働でデザイン、実践、評価、改善するサイクルを深めてもらいたい。
  • (2)総合的な学習の時間などの探究学習を通して育成する「問題発見・解決能力」の定義と評価法をさらに研究してほしい。
  • (3)本校の研究成果はまさに新学習指導要領がめざすものだけに、県内外の学校教育関係者にその成果を今後も発信し続けてもらいたい。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

1 問題発見・探究型学習の研究実践について

 本校は令和3年2月9日に行われた授業研究会において、問題発見・探究型学習の研究実践に取り組んだ。内容は、総合的な学習の時間の小林市地域教材単元であるこすもす科で、1年生が「小林市のよい点と問題点を考える。」というものである。授業では、前時にタブレットPCを活用して各生徒が考えた「小林市のよい点と問題点」について、グループをつくり、話し合いや画面での操作を用いて協働的な学習(対話的な学び)を行い、整理してまとめていく活動を行った。また、各グループがまとめた内容を代表生徒がタブレットPCを用いて発表し、全生徒で共通確認をした。最後に、地域を取り上げた動画を視聴させ、次の学習への意欲付けを行った。

 授業研究会の時期が新型コロナウイルス感染症の第3波の時期にあたり、グループ学習にも細かな配慮が必要であったが、授業研究会を通して多くのこと学べる良い機会となった。

2 次年度研究の方向性の立案について

 令和3年2月9日に行われた授業研究会において、本校アドバイザーの吉崎先生からいただいたアドバイスや2年間の研究の成果と課題、研究の検証結果分析などをもとに全職員で次年度研究の方向性について検討を行っている。次年度には生徒1人1台のタブレットPC環境と新学習指導要領の完全実施、改訂された教科書の配付が行われることも踏まえ、ICTの効果的な活用を基本としつつ、職員の資質や能力を向上させる研究に取り組んでいきたい。

本期間の裏話

 令和3年2月9日に最後の授業研究会を行った。今回も新型コロナウイルス感染症の影響で、Zoomによる遠隔授業研究会となった。ただし、昨年12月11日にZoomを用いた遠隔研究公開を行い、遠隔授業研究会におけるノウハウの蓄積があったので、円滑に授業研究会を行うことができた。

 また、アドバイザーの吉崎先生からは、本校2年間の研究の総括と成果及び課題について、プレゼンテーションでまとめてくださり、全職員大変参考になった。これまで2年間、さまざまな面でサポートしていただいたパナソニック教育財団事務局の方々に対しても感謝の気持ちで一杯である。

本期間の成果

  • ① 本年度第2回訪問時研究授業と研究公開授業を参考に、1学年担当職員を中心に、総合的な学習の時間における問題発見・探究学習(こすもす科:小林市シリーズ)の単元構成と第3回訪問時の学習指導案を立案し、全職員で検討した。
  • ② ①をもとに、Zoomを用いた遠隔授業研究会を実施し、本校における問題発見・探究学習の単元及び授業構成について全職員で意見交換をすることができ、問題発見・探究学習に関して知見を深めることができた。
  • ③ 2年間の研究実践における成果と課題及び生徒の情報活用能力と思考力・判断力・表現力の変容をもとに、全職員で次年度の研究の方向性を検討し、原案を立案することができた。

2年間の成果

1 「確かな学力」の育成について

 本校は、研究主題にある「確かな学力」の定義として、「確かな学力」は「情報活用能力」と「思考力・判断力・表現力」を合わせたものと定義している。よって、2年間の研究の成果として、「情報活用能力」と「思考力・判断力・表現力」の変容を見ていきたい。

(1) 情報活用能力の変容について

 本校は文部科学省の情報活用能力体系表や川崎市の情報活用能力チェックリストを参考に、本校における情報活用能力チェックリストを作成し、昨年度7月より定期的にアンケートを行い、生徒の「情報活用能力」の変容を調査してきた。これまでの変容の結果は以下のグラフの通りである。

 情報活用能力チェックリスト各分野の満点は4点であるが、グラフより、2年間の研究期間を通して全学年、全分野とも値が向上傾向にあるか、高い値を維持している。このことから、研究実践を通して生徒の「情報活用能力」を向上させることができたと考えられる。

(2) 思考力・判断力・表現力の変容について

 通常ならば年度初めの4月に実施される予定の「みやざき学習状況調査」が、新型コロナウイルス感染症の影響で実施できず、本年度は12月に2年生のみを対象として実施された。

 本校の研究では、「確かな学力」の「思考力・判断力・表現力」について、「みやざき学習状況調査」の活用問題の経年変化を用いて検証することにしていた。以下のグラフが2月下旬に返ってきた「みやざき学習状況調査」活用問題の経年変化である。

 青のグラフが中学1年時の県平均との差で、緑のグラフが中学2年時の県平均との差、赤のグラフが2年間の県平均との変化値である。英語については中学1年時に調査がなかったので、中学2年時の県平均との差のみ示している。

 「みやざき学習状況調査」の結果分析については、研究推進委員会で基礎問題と総合(基礎問題と活用問題の合計)も併せて比較検討した方がよいという意見が出たので、その意見を踏まえて2月下旬に全職員で分析を行った。

 分析の結果をまとめると、以下のようになった。

  • ● グラフより、「思考力・判断力・表現力」が向上した教科とそうでない教科があり、ばらつきが見られる。
  • ● どの教科においても、基礎的な学力が不十分であるとみられる。よって、基礎的な知識・技能の習熟や定着を図る時間を確保したり、個に応じた丁寧な指導を行ったりする必要がある。

 本校における「確かな学力」の定義において、「思考力・判断力・表現力の土台となる基礎的な学力」が示されている。その中には「基礎的な学力A」と「基礎的な学力B」が入っているが、「思考力・判断力・表現力」とそれらの関連も検討しながら、今後も生徒の「思考力・判断力・表現力」が向上する工夫に取り組んでいきたい。

今後の計画

  • ● 本年度中に次年度研究の方向性の原案を作成し、次年度4月に全職員で再度検討して、次年度の研究主題、副題、研究内容、研究計画、研究組織等を共通確認して設定する。
  • ● 令和2年度第3回授業研究会でアドバイザーの吉崎先生よりご助言いただいた本校の課題(以下の表)や2年間の研究の成果と課題などをもとに、次年度研究の方向性を全職員で検討していきたい。
  • ◆ どういう子どもにどのようにICTを使っていくか。
  • ◆ 1人1台端末による「個別最適化」の学び。
  • ◆ 「対面(教師)」と「オンライン(ネット上のアドバイザー)」によるハイブリッド型の指導形態やインターネット環境を生かした「反転学習」などの新しい指導形態の工夫。
  • ◆ 各教科における探究学習の実践。

2年間を振り返って

 本校ではこの2年間、「『確かな学力』を身に付けた生徒の育成」を研究主題として全職員で研究実践に取り組んだ。2年間を通して気付いたことや学んだことを上げてみると、おおよそ以下の内容となる。

  • ● アドバイザーの吉崎先生のご指導により、研究当初に本校における「確かな学力」、「主体的・対話的で深い学び」などの研究に関する文言の定義を明確にしたことで、全職員が研究内容を共通理解する一助となった。
  • ● アドバイザーの吉崎先生のご指導により、研究当初に本校における「確かな学力」、「主体的・対話的で深い学び」など研究内容に関する項目を図式化して整理することで、全職員が研究内容を共通理解する一助となった。
  • ● 研究2年目に、新型コロナウイルス感染症の影響で臨時休業や行事の中止などがあり、学校現場に大きな混乱が生じた。そのような中、ICT環境を生かして遠隔で授業研究会を行ったり、研究公開を行ったりすることができ、新たなICTスキルを各職員が身に付けることができた。
アドバイザーコメント
田村 順一 先生
横浜国立大学客員教授/日本女子大学
名誉教授 吉崎 静夫 先生

2021年1月~3月

本期間は、「総合的な学習の時間(こすもす科)」の実践と「ビデオ会議システム(Zoom)」を活用したオンラインでの遠隔授業研究会が行われたことに特長がある。そして、2年間の実践研究の成果と課題をふまえて、全職員で次年度の研究計画(案)が検討された。

本期間の研究成果

  • (1)今年度から実践研究に取り組んでいる「総合的な学習の時間(こすもす科)」を1年生でも本格的に実践し、21世紀の社会に求められる資質・能力である「問題発見・解決能力」を探究学習によって育成しようとした。そこでは、生徒がタブレット端末を的確に活用して、「小林市のよい点と問題点」をテーマに、協働的な学習(対話的な学び)を活発に行うことができた。
  • (2)2021年2月9日に、Zoomを用いたオンラインでの遠隔授業研究会を行うことができた。今回が3回目の遠隔授業研究会であったために、これまでのノウハウを生かすことができた。その結果、対面と遜色ない授業研究会を行うことができた。

2年間の研究成果と課題

  • (1)「確かな学力」や「主体的・対話的で深い学び」など、本研究のキー・コンセプトを明確に定義し、さらにそれらのキー・コンセプトとICT活用との関係をわかりやすく図式化できた。そのことが、教職員の共通理解を促した。
  • (2)本校がめざす「確かな学力」の実態を定量的に評価して、教職員間で共通理解を図ることができた。1つは、本校で作成した「東方中・情報活用能力チェックリスト」を用いて、1年生から3年生までの「情報活用能力」を評価した。その結果、2年間の研究期間を通して、全学年とも値が向上傾向にあるか、高い値を維持していた。このことから、授業実践を通して、生徒の「情報活用能力」を向上させることができたといえる。もう1つは、「みやざき学習状況調査の活用問題」を用いて、生徒の「思考力・判断力・表現力の実態と変容」をとらえた。その結果、「思考力・判断力・表現力」が向上した教科とそうでない教科がみられた。このことは、本校の今後の課題である。
  • (3)コロナ禍という厳しい状況の中で、2020年11月と2021年2月にZoomを用いたオンラインでの授業研究会、2020年12月に「対面」と「オンライン」によるハイブリッド型の公開研究発表会を行って、本校の実践研究の成果を広く紹介できた。その過程で、オンラインで授業を伝達するための方法(映像や音声の収録・通信)に関するノウハウを蓄積することができた。このノウハウは他校にとっても大いに参考になるものであった。そして、本校の教職員のICT活用スキルを向上させるものであった。

今後の実践研究への期待

  • (1)「主体的・対話的で深い学び」を実現するためのICT活用のあり方をさらに追究してほしい。
  • (2)一人一台の端末という新しい学習環境のもとでの「個別最適な学び」をデザインし、実践・評価してほしい。
  • (3)本校が総合的な学習で行った「問題発見・探究学習」を、各教科においても実践してほしい。