三条市立大島中学校

第44回特別研究指定校

研究課題

地域社会との協働と連携による課題対応力の育成
~深い学びを実現するキャリア教育の推進~

2018年度04-07月期(最新活動報告)

最新活動報告
助成金を活用し,タブレット端末(iPad Pro :7台及びiPad第6世代:7台)とカバーを購入し,授業で活用......

アドバイザーコメント

三条市立大島中学校に訪問させていただいて最初に感じたことは「社会に大きく開かれた学校」である,ということです。

三条市立大島中学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 新潟県 三条市立大島中学校
アドバイザー 後藤 康志 新潟大学 准教授
研究テーマ 地域社会との協働と連携による課題対応力の育成
~深い学びを実現するキャリア教育の推進~
目的 ICT機器の活用を工夫しながら、実社会との関わりを重視した,よりリアルで深い学びを実現するキャリア教育のカリキュラム開発と実践を行う。
現状と課題
  • 小規模校で、生徒は大変落ち着いており、何事にも真面目に取り組む。その一方で、自分から何かに挑戦するといった向上心が低い傾向にある。また、狭い価値観の中で短絡的に物事を考えてしまう傾向が見られる。
  • これまでも、人間関係づくりや「学び合い」を中心とした授業づくりの実践及び研修を行ってきた。しかし、授業で身に付けた価値観や教科の学習内容が、実際の生活の中で資質・能力として生かされていない。
  • 昨年度より、キャリア教育を中核においた体験活動や道徳教育、「主体的・対話的で深い学び」のある教科教育を研究主題として取り組んできた。キャリア教育では、地域の方を講師に招き、農業体験を実施したり、地元の農業高校と連携して、地域の特産物を使った商品作りの試作を行ったりした。現在、キャリア教育を中心とした視覚的なカリキュラムづくりを行い、年間指導計画の見直しを行っている。
  • 昨年度末までに、大型テレビを各教室に配置し、教室でパソコンや実物投影機を利用しやすいように環境整備を行ったが、全教職員が各教科でICT機器を日常的に活用できるまでに至っていない。全ての教師が安心して有効に活用できるように校内研修を行ったり、ICT環境を整えたりしていく必要がある。
学校情報化の現状 情報機器を活用した実践がなされていない。そのためにも活用環境の整備が急務である。
取り組み内容

【具体的取組1】

    ◎授業のユニバーサルデザイン化を目指した「学び合い」の授業<授業力向上研修>

  • 日常の授業の中で,キャリア教育の5つの資質・能力の育成を意識した「学び合い」の授業実践
  • 年間3回の授業力向上研修(校内研修)の実施

【具体的取組2】

    ◎地域の教育資源を活用したカリキュラム開発と実践

  • 小中9年間の連続したカリキュラム(題材配列表)におけるキャリア教育の実践とその視覚化

<教科・領域>
地域と連携・協働した授業(寺子屋授業)の工夫
(例)地域の事業所を活用したマイ箸づくり [技術科]

<総合的な学習の時間>
ストーリー性のある総合的な学習の時間のカリキュラム開発
(例) 地域資源を活用した商品開発と販売  ※以下,一例

  • 1年目7〜10月:地域学習・農業体験(1年生)
  • 1年目11~2月:地域資源を活かした商品開発(2年生)
  • 2年目4月中旬:修学旅行における商品販売(3年生)
  • 2年目5〜7月 :地域でチャレンジショップの経営(3年生)

【具体的手段】教育活動におけるICT機器の活用の工夫

  • ①「学び合い」,②「情報収集・活用」,③「連携・協働」の3つのツールとしてのICT機器活用を図る。
成果目標
  • ◎ICT機器を3つのツールとして活用することで,実社会との関わりを重視した,よりリアルで深い学びを実現するキャリア教育を実践でき,生徒の課題対応力を高めることができる。

【取り組み後に期待される状況】

  • ①「主体的・対話的で深い学び」を行うことで、生徒は学習内容を自分のものとして捉え、様々な課題を仲間と協力して解決しようとする「課題対応力」が高まり、学習意欲が向上する。
  • ②校外活動や各教科の授業で実践を行う中で,他者と関わりながら課題を解決していく「課題対応力」が身に付く。また、地域紹介ビデオや地域紹介アプリなどのデジタルコンテンツを制作・開発することで、地域に愛着をもち、地域のために貢献しようとする「郷土愛」が育まれる。
  • ③高校生や事業所との遠隔コラボレーションに活用することによって、商品の開発や商品を販売するチャレンジショップの経営を通して、学校での学びと社会との関係や、働くことの意義を理解させるとともに、アントレプレナーシップを養い、未来に挑戦しようとする向上心が高まる。
助成金の使途 iPad Pro 12.9 インチ、 Smart Cover、Smart Keyboard、iPad 9.7 インチ、ソフトウェア、講師旅費・謝金、先進校視察、研修会参加
研究代表者 山﨑 寛山
研究指定期間 平成30年度~31年度
学校HP http://www.city.sanjo.niigata.jp/ojimachu/
公開研究会の予定
  • 公開研究会(オープンスクール)を毎年11月中旬に実施予定。
  • 学会等発表は、日本教育工学協会全国大会(毎年11月)にて発表予定。他に日本教育工学会(毎年9月)、日本キャリア教育学会(12月)にて発表予定。

◯その他、学校ホームページ等で広く成果を公開予定。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

【ICT環境整備】

  • ・助成金を活用し,タブレット端末(iPad Pro :7台及びiPad第6世代:7台)とカバーを購入し,授業で活用できるように環境を整えた。また,4階教室に大型モニタ(テレビ台付き)とAppleTVを常設し,授業ですぐに活用できるような環境整備を行った。
  • ・学校の基幹ネットワークとは別のネットワークインフラを新規に立ち上げるために,モバイル通信サービス(UQ WiMAX2+定額プラン)を2年契約した。

【研究推進】

  • ・研究推進部会を月2〜3回行うとともに,毎月の職員会議後に短時間で研究推進部会によるミニ校内研修を行った。主に研究の概要と当面のスケジュールを確認した。
  • ・上記とは別に校内研修を2回行い,全職員で参加した。
    • <1回目> 5月上旬
      • ・校長から研究の概要説明(校内研究グランドデザイン・下図)と研究主任による当面の研修の方針について説明を行い,2年間の研究について全職員で共通理解を図った。 研究推進
    • <2回目> 5月31日(木)の午後
      • ・外部講師として,常葉大学佐藤和紀講師をお招きして,全校生徒を対象とした全校道徳(メディア・リテラシーと情報モラルの講演会)及び,職員対象のICT機器活用研修(iPadの授業活用を含む)を行った。
      • 具体的取組1

        ・グランドデザインを整理し,組織で研究が推進できるよう,3つのプロジェクトを立ち上げ,それぞれの部署内で検討を始めた。

【事前調査】

  • ・本校の研究協力者であり,人間工学が専門の東京福祉大学柴田隆史教授の協力を仰ぎ,5月に事前調査としてタブレット端末を使った学習に関する健康面を中心としたアンケート調査(意識調査)を生徒と教職員に実施した。
  • ・キャリア教育に関する意識調査のアンケートを7月に生徒全員に実施した。

【授業実践】

〇具体的取組1(授業のユニバーサルデザイン化を目指した「学び合い」の授業)

日常の授業の中で,キャリア教育の5つの資質・能力を意識した授業ができるように,各教室にマグネットシートを用意し,本時の課題が特にどのキャリア教育の視点にあたるのかを明示できるようにした。また,道徳の「5つの約束」を各教室の前方に掲示し,学び合いを行う上で大切であることを常に意識できるようにした。

具体的取組1
具体的取組1

<教師のタブレット端末の活用>

多くの先生方が各授業や学級活動,部活動において,資料提示など授業で活用できる場面で大いに活用した。

(実践例)

  • 教師のタブレット端末の活用

    ・道徳の授業(第1回校内授業研修会)において,教師がグループで話し合ったホワイトボードをカメラ機能で撮影し,大型モニタに映し出しながら提示する試みを行った。

<生徒によるタブレット端末の活用>

授業において,グループ活動やペア活動で活用がさかんになってきた。

(実践例)

  • ・保健体育の授業において,生徒がタブレット端末の「カメラ」機能を活用し,クラウチングスタートの姿勢について,模範の映像(紙ベース)と比較してフォームを確認するグループ活動を行った。生徒たちは各自で直に自分の動きを確認することで,フォーム改善に活かそうと積極的に活用していた。また、どの角度で撮れば良いかをお互いに相談し合う場面も見られた。
    生徒によるタブレット端末の活用
    生徒によるタブレット端末の活用
  • ・英語の授業において,アプリケーション「Kahoot!」を用いて復習問題に取り組むペア学習を実践した。生徒は画面に出される問題に対して,4択の選択肢から正しい答えを選ぶ。ペアで相談しながら体を前に乗り出し,意欲的に問題に取り組む姿が見られた。

〇具体的取組2(地域の教育資源を活用したカリキュラム開発とその実践)

<教科・領域>地域と連携・協働した授業(寺子屋授業)

地域と連携・協働した授業(寺子屋授業)

7月9日(月)に,「マイ箸づくり」の実践(1年生24名)を行った。地域の事業所である「マルナオ(株)」に出向き,地域の方からものづくりについて指導いただき,キャリア発達を促す機会となった。

アドバイザーの助言と助言への対応

<助言>

  • ・先生方が情報機器に慣れるためにも,まずやれそうなところからやってみることが大切。ある先生がやってみてよかったという実践をどんどん共有することから始めてはどうか。情報機器の活用が苦手な先生がいたら,得意な先生が支援してあげる体制を作り,味方を増やすことで普及が進んでいく。
  • ・生徒が使用する時のポリシーなどは,研究協力者である佐藤和紀先生(常葉大学)が小学校で実践された時の財産があるはず。それを参考にして生徒に示したらどうか。
  • ・iPadに入れるアプリケーションは,まずはタブレット端末に既に導入されている「標準のアプリ」でできることからやってみる。
  • ・この実践のゴールはカリキュラム開発と評価のルーブリック開発と考えられる。他校の先生方が「自校でも日頃から」使えるようなものを作成していく。子どもたちに自己評価させながら,項目の妥当性や信頼性を確立させたり,子どもたちに項目を作成させたりするのも方法である。
  • ・端末とネットワークを介しての遠隔で結ぶ実践は,アプリやメンテナンスの問題があるので,個人の端末を利用した方が良い場合もあるので様々な方法を検討する。

<対応>

  • ・アドバイザーの後藤先生より,「iPadは大きなカメラ」というイメージで,まずはカメラ機能から活用してはどうかというアドバイスを受け,多くの先生からカメラ機能や標準のアプリ機能を積極的に使ってもらった。
  • ・佐藤先生と相談した際,「生徒たちに考えさせてもよいのでは」という助言をいただいたので,実際に佐藤先生が来られたときの全校授業及び3年生の学級活動でポリシーについて検討する機会を設けた。後日,生徒会を中心に大島中学校としてのタブレット端末活用のポリシーを策定する予定である。

本期間の裏話

  • ・先生方が様々な場面でタブレット端末を利用しようと試みてくれたことが何よりも嬉しかった。研究に対して理解があり,協力的な体制づくりができてきている。
  • ・中学校では学校行事や部活動,生徒指導など,毎日が多忙である。授業準備や研究推進が思うように進まないことにもどかしさを感じている。
  • ・職員数が少ない環境なので,プロジェクトごとに分担するなど,全校体制で少しずつ研究を進めていくことにした。

本期間の成果

  • ・研究の方向性や具体的な目標が定まり,研究のグランドデザインも完成させることができた。
  • ・1学期はICT環境の整備と,タブレット端末の積極的利用(まずは先生方が触ってみる,生徒たちに使わせてみる)だったので,概ね達成できたと考える。

今後の課題

  • ・引き続き,各授業で「学び合い」を視野に入れたタブレット端末の活用を考える。また、データの管理方法や生徒個人のID管理について早急に検討を進める必要がある(夏休み中に,Google社のG Suite for Educationの整備を進める)。
  • ・ルーブリックは,子どもたちがこの実践を行った後,「最終的にどういう自分になっているか」を基準に項目を検討する。→まずは年間指導計画を見直し,キャリア教育の視点で視覚的カリキュラム(各教科の単元とキャリア教育との関連)の作成を行う。※7~8月の職員研修時に行う予定。

今後の計画

  • ・9月19日(水)午後  第2回校内授業研究で授業を公開(アドバイザー訪問を兼ねる)
    内容:
    授業見学(総合的な学習の時間など),これまでの進捗の確認と今後の研究推進についての協議
  • ・11月17日(土)一日 オープンスクールで公開授業(これまでの成果報告)を予定。

気付き・学び

研究推進部が思っていたよりも,先生方がICT機器の活用に興味を示し,授業等で積極的に活用していることに驚いた。特に,大型モニタを常に使える環境にある教室では多くの実践が生まれていることから,各教室の環境が活用に大きく影響していると思う。今後もできるだけ授業準備に時間がかからないように環境を整えていきたい。

成果目標

  • ・研究推進部を中心に,本校の研究主題を整理し,校内研究グランドデザインを策定することで「何をいつまでにどうするか」のビジョンを明確にする。
  • ・教員がタブレット端末の利用に慣れ親しみ,自身の授業で使いたい場面で有効に活用できるようになる。
アドバイザーコメント
後藤 康志 先生
新潟大学 教育・学生支援機構学位プログラム支援センター
准教授 後藤 康志 先生

 三条市立大島中学校に訪問させていただいて最初に感じたことは「社会に大きく開かれた学校」である,ということです。学びあい,キャリア教育,ICT活用の研究者の参画が計画段階から行われているだけではありません。地域の教育力も自然な形で位置付いているのです。むしろ「どうするとこのような学校体制が構築できるのか?」に強く惹かれたほどです。それはさておき,特別研究指定校のミッションは,自校で優れた実践を行うことだけではなく,広く他のモデルを提供することです。その点で,「深い学びを実現するキャリア教育」を受けた生徒が卒業時にもつべき資質・能力及び態度を,生徒自身,保護者,地域を含む社会,そして学校教職員が共有できるような成果に期待します。
 参観した学級で,iPadが導入されたことについて生徒に感想を聞いてみました。彼は,はっきりと「これでますます便利になります!」と発言してくれました。この感覚が大事だと思いました。新しいメディアが入るということは,生徒にも教師にも学びを問い直す良い機会なのだと思います。教室に1台,印刷機が入ったとしましょう。ある教師は「よし,これで計算プリントと漢字プリントをいっぱい印刷して基礎・基本を定着させよう」と考えるかも知れません。一方で,「うん,文集を作って一人一人の作文や詩をみんなで味わおう」と考える教師もいるでしょう。私はそのどちらも正しいと思います。「深い学びを実現するキャリア教育」を支えるツールとしてのICTの有効性について,実践を通して見いだして欲しいと思います。