静岡市立横内小学校

第47回特別研究指定校

研究課題

誰一人取り残すことのない学校をめざして
~端末の持ち帰りが子供の学びを「つなぐ」「ひろげる」「つみかさねる」~

2021年度04-07月期(最新活動報告)

最新活動報告
4月、4年生以上の学級で端末の利用が始まった。端末活用の基本は......

アドバイザーコメント

高橋 純 先生
第47回特別研究指定校に指定された静岡市立横内小学校の研究が始まった......

静岡市立横内小学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 静岡県 静岡市立横内小学校
アドバイザー 高橋 純 東京学芸大学 准教授
研究テーマ 誰一人取り残すことのない学校をめざして
~端末の持ち帰りが子供の学びを「つなぐ」「ひろげる」「つみかさねる」~
目的 ハイブリッドな学習を進めたり、学校に適応できない子供への個別の対応をしたりしていくために、静岡市教委が予定しているよりも早く端末の持ち帰りを試行する。行政と課題を共有しながら、成果を明らかにすることで、端末持ち帰りを全市に広げていく。
現状と課題 クロムブック端末は、4年生以上の台数分を整備済。児童全員分が揃うのは、令和4年度の見込み。高学年での端末の授業活用や、行事や集会での活用は進んでいる。端末の持ち帰りについては、市教委もその必要性を感じてはいるが、環境の整わない家庭への対応などができないため、手が付けられていない。
学校情報化の現状 大型モニターや書画カメラがようやく教室に揃い、学校情報化の入口にいる状態。特にプログラミング教育など情報教育の面で遅れている。1人1台端末の整備も遅れており、低学年での活用が進んでいない。
取り組み内容
  • ・5、6年生の児童(約200名)全員が端末を家に持ち帰り、家庭学習を行ったり授業の復習に活用したりする。
    Wi-Fi環境の整っていない家庭が10%程度あるので、学校で用意するモバイルルーターを貸し出す。
  • ・家庭との連絡用に端末を活用し、子供の様子を知らせたり、簡易な連絡手段としたりする。
  • ・不登校児童・別室登校児童とのオンライン学習の実践
  • ・一人も取り残さないオンライン学習(ハイブリッド学習)の実践
成果目標
  • ・端末の使用方法や情報モラル等、持ち帰りによって生じるであろう課題を学校と家庭が一体になって解決しながら、学校でも家庭でも、端末を使うことが特別ではなく、文房具のように当たり前に使用できる。
  • ・不登校児童・別室登校児童も、端末を活用することで、自分の居場所を学校につくることができる。
助成金の使途 モバイルルーター賃借料、先進校視察交通費他
研究代表者 新井 義広
研究指定期間 2021年度~2022年度
学校HP https://yokouti-e.shizuoka.ednet.jp/
公開研究会の予定 9月30日(木)、3月1日(火)

本期間(4月~7月)の取り組み内容

○タイピングスキルUP

 4月、4年生以上の学級で端末の利用が始まった。端末活用の基本は、タイピング力をつけることである。キーボード入力のスキルの有無が、学習の質にも影響してしまう。「タイピングは運動能力」という信州大学佐藤先生の言葉を受け、一斉にタイピング練習に取り組むことにした。

子供たちが楽しく興味をもってタイピング練習ができるよう、鈴木教育ソフトの「キーボー島アドベンチャー」を利用した。ゲーム感覚で、入力が上達するごとに級が上がっていくので子供たちが意欲的に取り組むことができた。

 次に、一日の出来事を振り返りながら、タイピングの力と書く力をつける練習も行った。5分間でどのくらいのタイピングができるか、毎日記録をつけて、自分の上達の様子を可視化した。毎日5分を続けることでタイピング力は下のグラフのように飛躍的に向上した。

○保護者への説明

 端末を使うことが、単にワープロの練習をしたり表計算ソフトの使い方を覚えたりするのではないかといった既成概念でとらえている保護者もいる。GIGAスクール構想とは何か、これまでの授業とどう違うのか、端末を導入することでどんな利点があるのかなど、保護者会で説明を行った。

さらに、保護者の「情報モラル意識」を高めていくことが必要と考え、保護者会でも注意喚起を行うとともに、折に触れて、写真や動画の取り扱いについての注意喚起を行っていくことにした。

 GIGAスクール構想についての情報提供については、全校の保護者への周知を図るために、学校独自の「Yokouchi GIGA News」を発行し、GIGAスクールの基本的な考え方や静岡市の取組、学校の取組をわかりやすく伝えるようにした。さらに、学校ホームページでも、端末を使った授業の様子を、「Yokouchi GIGA News Online」として情報提供している。授業にどのように使われているのか、端末を使うことにどのような効果や良さがあるのかを引き続き伝えていきたい。

○モバイルルーターについて

 各家庭のWi-Fi環境の調査を行った。5年生も6年生もWi-Fi環境の無い家庭は4~5家庭程度だった。モバイルルーターは、NTTMEDIASの「DoRACOON」を利用する方向で検討している。試用したところ、問題なく接続することができた。スマートフォン程度の大きさで、携帯にも便利である。体育館にWi-Fi設備が無いので、このモバイルルーターを体育館で使用し接続すれば(10台程度の接続が可能)、体育の授業でも活用できるのではないかと考える。

○端末の持ち帰りについて

 夏休み前に、5年生の1クラスで試験的に端末の持ち帰りを行った。持ち帰りを行う前に、持ち帰る目的、期間、持ち帰った際にどのようなことを子供たちが取り組んでいくのか等を記載した通知文を保護者に通知した。子供たちには、端末を使うときの注意事項や家庭での使用方法や使用時間など説明を行った。

 端末持ち帰り後、子供たちと保護者に向けてアンケート(フォーム)を行った。持ち帰りに関する「課題」についての結果は以下の通りである。

子供用アンケート結果

保護者用アンケート結果

 結果から、子供たちよりも保護者の方が課題を感じていることがわかった。持ち帰り成功のためには、保護者の協力が欠かせない。保護者の理解と協力を得るためにも改善できる部分については早急に対応していくこととした。

 これらの改善案をもとにして、夏休み明けから5・6年生の持ち帰りを始めようと考えている。

○不登校の児童とオンラインでつなぐ取組

 担任とのやりとりが始まり、該当児童と担任とのコミュニケーションが定期的に取れるようになってきた。現在は1か月に3回程度Meetでの連絡を行いながら、学校の様子や家庭での様子について双方向でのやり取りを行っている。限定コメントを利用しながらの連絡も始めている。ただし、焦ると失敗するので、保護者の反応も見ながら、地道に進めていきたいと考えている。さらに、他の学級の登校できない児童とのやりとりも予定があり、今後どのように活用できるかを探っていきたい。

アドバイザーの助言と助言への対応

○子供の立場で考える

  • ・より良く学ぶために ICT を活用するのであって、授業をよりよくするために ICT を活用 するのではない。常に子供の立場で、「より良く学ぶ」ということを考えて実践していく。

○持ち帰りは手段である

  • ・学ぶということはどういうことかを考えてほしい。その結果端末の持ち帰りが必要であ るということなら、そこに必然性が生まれる。持ち帰りありきでは駄目だ。学びの仕方 をゼロベースで考えて取り組んでいく。

○「ラクで便利」なら活用はどんどん進む

  • ・授業だけで効果的に活用しようと思わず、学級活動や特別活動などいろいろな場面で端 末を利用していく。「ラクで便利」と気づけば、自然と活用が広がっていく。ICT に慣れ た人がどんどん活用の幅を広げていくはずだ。

○反転授業の学び方 クラスルームの使い方

  • ・繋がりながら学んでいく。持ち帰りをした意義があった!ということが1つでもあることが大切。
  • ・持ち帰りの意義が学校ごと異なるだろう。昨年度実践した内容を職員に共有し広げていくところからはじめる。
  • ・「つなぐ」がキーワード 家庭と学校をつなぐ 不登校児童とつなぐ 予習復習とつなぐ。

○反転授業

  • ・NHK for Schoolは非常に有効(反転授業に活用するとよい)。それらを見た上で授業に参加する。
  • ・個別最適化のためのAIドリルの導入→家での復習のためにAIドリル等を活用しソフト面の支援をしていく。
  • ・持ち帰り宿題から持ち寄り宿題に転換する→家庭学習をやってくることが学び合いにつながる。例えば、音読をするなら、家で実際に読んだものを録音して Before→Afterを確認する。子供が宿題をやっている姿が見える。お家の人にも参画してもらうことが可能。

○オンラインでの授業参加

  • ・通常級においても、支援の必要な子への手立てが大切である。オンデマンドはゆっくりと自分のペースで見ることができるので有効。
  • ・特別な支援が必要な子だけでなく、どの子も聞いて見て学べることが大切。
  • ・カメラの配置 家から参加しやすい位置を考える。置き方も重要である。

○導入されていない学年はどのように取り組んでいくか

  • ・1〜6年生で情報モラルを学ぶ上で、何が重要なのか、何を育てていくかを考える。
  • ・単元で紐付け、全校体制で各教科と単元でどこで情報モラルを設けることができるか計画を立てていく必要がある。

本期間の裏話

  • ・ある日6年生の女子3人が校長先生に聞きたいことがありますと言って校長室を訪れた。3人はクロムブック端末を持ち、まるで取材記者のように話しはじめた。内容は、自分たちが疑問に思っていることについて、行政の担当者にメールを出しても良いかというものであった。端末には相手にどのようにメールを打つか、見事に推敲された文章が書かれていた。その時の子供たちの様子は、自信をもって、自分たちの考えを聞いてほしいという姿だった。端末を持っているからということではないかもしれないが、端末が子供たちのお守りのような、ある意味武器のような感じもして頼もしく感じたのである。

本期間の成果

  • ・4~6年生については、端末利用にかなり慣れてきている。特にタイピング力は飛躍的に向上し、授業でも実用的になるくらいの力がついてきている。
  • ・授業以外の日常的な利用として、例えば、係活動の問題点を仲間で共有し、課題を解決するためにどのような取組を行っていくかを考えてプレゼンしたり、児童会の活動で話し合いの内容をリアルタイムで端末でまとめ、それを大型モニターに提示するとともに、印刷して配布したりするなど、大人顔負けの活用も見られた。紙と鉛筆、黒板とチョークという従来のアイテムだけでなく、端末が便利な道具として子供たちに根づき始めていることがうかがえる。
  • ・端末の持ち帰りについては、5年生の1クラスで試行を行い、課題も見えてきた。子供や保護者の意見を整理した上で、扱い方の基本や情報モラルの確認をして、5・6年生に広げたい。

今後の課題

  • ・端末の整備されていない1~3年生は、当然ながら活用は進んでいない。さらに、低学年の文字入力について、あるいは文字入力に代わるものについて、研究が進んでいない。カメラや手書き文字等を活用しながら、どのような活用方法があるか、先行事例を参考に取り組んでいきたい。
  • ・端末の持ち帰りに当たっては、保護者の理解が欠かせない。端末を持ち帰ることで何が変わるのか、端末を持ち帰って何をしたいのか、メリットやデメリットの具体を示しながら、丁寧な説明を行っていく必要がある。
  • ・端末の持ち帰りを5・6年生の全クラスに広げることで、さらに学校体制としての取組を強化する必要がある。「端末が学校と家庭を行き来するだけ」ということにならないようにしなければならい。持ち帰って何をするのか、家庭学習のあり方や、予習復習の工夫など、よりよい学習をするための取組を進めていく。
  • ・不登校児童や別室登校児童とのオンライン学習の取組については、該当する児童の状況を見ながら、慎重に取り組んでいく必要がある。ようやくつながった糸を切らないように、児童や保護者に情報を提供しながら、対話を重ねていきたい。

今後の計画

  • ・8月中にモバイルルーターの契約を行い、9月からの持ち帰り実践に備える。
  • ・端末持ち帰りについて、児童や保護者への説明プレゼンやマニュアルを用意する。
  • ・端末持ち帰りについて、保護者への通知や誓約書等を、市教委の考えと擦り合わせを行い、作成する。
  • ・端末持ち帰りについて、児童や保護者の不安や疑問に答えられるよう対応を考える。
  • ・全学年を通した情報モラル教育についての系統表を作成し、教科の単元の中に位置づけながら適切に指導が行えるようにする。
  • ・不登校児童、別室登校児童とのオンライン学習について、どのようなことが可能か、個々の児童の様子を考えながら計画を立てる。

気付き・学び

  • ・1人1台端末は、子供たちがより良く学ぶための計り知れない可能性をもったツールである。しかし、これまでにない取組であるために、教職員にも保護者にも戸惑いがある。加速度的に進むGIGAスクール構想であるが、一度立ち止まって、誰のために、何のために、どのように取り組んでいくのかを確認し、強さだけでなく優しさをもって取り組んでいきたい。

成果目標

  • ・端末の使用方法や情報モラル等、持ち帰りによって生じるであろう課題を学校と家庭が一体になって解決しながら、学校でも家庭でも、端末を使うことが特別ではなく、文房具のように当たり前に使用できる。
  • ・不登校児童・別室登校児童も、端末を活用することで、自分の居場所を学校につくることができる。
アドバイザーコメント
高橋 純 先生
東京学芸大学
准教授 高橋 純 先生

 第47回特別研究指定校に指定された静岡市立横内小学校の研究が始まった.コロナ禍により,未だ学校を訪問できていないが,テレビ会議と報告書からコメントをしたい.

 本校のテーマは「誰一人取り残すことのない学校をめざして」であるが,同時に,「端末の持ち帰り」というキーワードも示されている.PCをうまく活用することで,今後,誰一人取り残すことのない取り組みが始まるのであろうが,まずは,報告書にあるように,スキルの育成,ルール作りなど,基盤となる取り組みが欠かせないであろう.

 このように, GIGAスクール構想の実現のために,我々は過去の莫大なツケを払うことから始めなくてはならない. 2010年代,我が国はPISAをはじめとした様々な国際調査において,紙の調査では最上位であるが,CBT(コンピュータ利用型テスト)であったり,情報化に対応した問題であったりすると成績が落ちた.子供に限らず,成人,ビジネスパーソン,いずれの日本人を対象にしても同様の結果であった.紙なら誰にも負けないといってみても,もはや社会ではICT活用を含んで人の実力が評価される.未だ紙と鉛筆のみで人が評価されるのは学校のテストくらいかもしれない.まずは,大人も子供もICTに慣れ,ICT活用スキルを鍛えるところから始めるしかない.

 子供はICT活用に慣れており,あっという間に覚えるというのも,誤解を招く考え方である.PISA2018において,ICTの活用頻度に関する質問のほとんどが世界最下位であったが,世界一位であったものが2つある.それはゲームとチャット(LINE)の活用である.つまり,日本の子供たちは世界で一番,遊びにICTを活用している.大人たちができると思い込んでいる子供のICT活用の実態は「遊び」なのである.遊びと学習ではICT活用のレベルは大きく異なる.実際,ICTによる読解力の調査では有意に順位が落ちた.結局,紙と同様に,大人がしっかりと指導しないと,子供に力はつかないのである.

 一方で,一部の大人にとっては,「ICT=遊び」のイメージが定着している.このような大人にとっては,家庭への持ち帰りや,授業でICTを活用するようなことは許し難い.そうでなくても,動画を禁止すべきとか,チャットやメールを禁止すべきとか,遊びにみえるツールを軒並み禁止すべきだと主張する.しかし,学習や仕事にも活用できるツールを禁止することは,子供のさまざまな機会の損失になる.ICTは,学習や問題解決の道具,子供自身が将来を切り拓いていくために欠かせない道具という考え方を浸透させていく必要がある.現状,このような良質な活用法が優位になるような意識の醸成から始める必要もある.

 ICTが,これまで学校教育でしっかりと扱われてこなかったことのツケは,学校や家庭,社会など,様々な人々の大きな意識の差となって現れている.こうしたことを克服した上で,誰一人取り残すことのない学校づくりのためにICTが活用できるようになるかどうか,本校の今後の取り組みに期待したい.