篠山市立丹南中学校

第42回特別研究指定校

研究課題

反転授業を通した予習の習慣化とICTを活用したアクティブ・ラーニング
~予習習慣を身につけ、アクティブに授業に取り組み、思考力、判断力、表現力を磨く生徒の育成~

2017年度4-07月期(最新活動報告)

篠山市中学校間での教材共有のためのシステム作りができた。教材をアップして市内5中学校で活用できるよう......

篠山市立丹南中学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校名 兵庫県 篠山市立丹南中学校
アドバイザー 寺嶋浩介 大阪教育大学准教授
研究テーマ 反転授業を通した予習の習慣化とICTを活用したアクティブ・ラーニング
~予習習慣を身につけ、アクティブに授業に取り組み、思考力、判断力、表現力を磨く生徒の育成~
目的 予習を習慣化させ、授業でプレゼン・リレーや協働学習、グループ討議等のアクティブ・ラーニングを行うことによって、思考力、判断力、表現力を磨くとともに、自学自習に取り組む学習習慣を身につけさせる。
現状と課題
  • 予習をして授業に臨む生徒は少ない、授業でも積極性が見られず、受け身の姿勢で、学習も定着していない。
  • 本校では、これまでに反転授業を取り入れ予習動画を作成し、活用する研究を行ってきたが、まだまだ軌道に乗っておらず、予習動画も効率的・効果的に作成されていない。より質の高いICTコンテンツ(予習動画、コンテンツ(画像)、予習プリントをまとめていう)をどのように作成すればよいか研究する。
  • 教材作成にひじょうに時間がかかるので、市内5中学校まで広げ教材作成を行い、それを市内全体で共有する。
  • 予習動画を活用する授業デザインで校内や市内で公開授業を行い、成果と課題を共有し指導力の向上に繋げる。
学校情報化の現状 ICT環境はまだまだ整っていないので、教職員の活用意識もあまり高くない。
取り組み内容
  • 丹南中学校ICT部会が中心に効率的・効果的なICTコンテンツの作成方法やICTを活用した授業デザインについて研究する。
  • 各校でもICT部会が中心に校内研修を行いICTコンテンツの作成方法やICT活用スキル研修を行う。
  • 授業ではタブレット、書画カメラとプロジェクターを活用し予習動画・予習プリントを確認し、ICT機器を活用し、プレゼン・リレーを中心としたアクティブ(主体的・能動的かつ協働的)な学習活動を展開する。(プレゼン・リレーは生徒の説明で生徒同士の集中力や理解力をお互いに高め合える)
  • 個に応じた指導が必要な生徒には、授業でも個別にタブレットで予習動画をテキストとして学習する。
成果目標
  • 予習動画を活用し予習を習慣化することでアクティブに授業に取り組む態度を育成する。
  • 授業でプレゼン・リレーやディスカッション等の協働学習を行い、自己表現をする機会を増やすことによって学習意欲が高まり、言葉の力の育成や思考力・判断力・表現力の向上に繋がる。
  • 予習の習慣化によって学習意欲が向上し、学習内容を深め合うこと(ディープラーニング)ができる。
  • 生徒が中心となって進める授業展開(プレゼン・リレー)にすることによって、主体的・能動的かつ協働的な授業(アクティブ・ラーニング)ができる。
  • 市内5中学校で組織的に実践することにより、ICTコンテンツや授業デザインを共有し活用できる。
助成金の使途
  • タブレットPC
  • 書画カメラ
  • プロジェクター
  • アクセスポイント
  • 視察費
研究代表者 赤井 敏博
研究期間 平成28年度~29年度
学校HP http://tannan-jh.sasayama.jp/
公開研究会の予定
  • 6月 8日 校内授業研究会
  • 11月11日 兵庫県理科教育研究大会
  • 11月15日 パナソニック研究助成公開授業
  • 2月17日 篠山市ICT部会研修会

研究課題と成果目標

研究課題 反転授業を通した予習の習慣化とICTを活用したアクティブ・ラーニング
~予習習慣を身につけ,アクティブに授業に取り組み,思考力,判断力,表現力を磨く生徒の育成~
成果目標
  • 反転授業の予習動画を活用し,家庭学習で予習を習慣化することでアクティブに授業に取り組む態度を育成する。(予習することにやりがいを持たせ,習慣化させる。)
  • 反転授業で生徒が自己表現をする機会を増やすことによって,学習意欲を高め、言葉の力の育成や思考力・判断力・表現力の向上に繋げるとともに学習内容の定着率を高める。
  • 生徒が活躍する授業デザイン(プレゼン・リレー※やディスカッション等の協働学習)を構築し,主体的・能動的かつ協働的な授業(アクティブ・ラーニング)を展開する。
    ※(プレゼン・リレーは生徒の説明で生徒同士の集中力や理解力をお互いに高め合う)

本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応

本期間(4~7月)の取り組み内容
  • ○丹南中学校ICT部会を中心に市内5中学校のICT部会(数学、理科・情報担当)で反転授業について,次の3点について研究課題を設定。

    ・予習習慣を身につけさせる授業デザインと家庭学習(予習)とのリンク方法研究。

    ・反転授業を展開するための予習動画の効果的・効率的な作成方法について研究。

    ・反転授業のICTコンテンツ(予習動画、画像、予習プリント)の作成方法やICT活用スキル及びタブレットを活用した授業デザインの研究。

  • ○本校ICT部会を中心にICTコンテンツ作成およびICT機器活用スキルについての研修。

  • ○本校ICT部会(数学科)を中心に,ビデオ撮影やExplain・everything,パワーポイント,タブレット,書画カメラ等で予習動画を中心にICTコンテンツの作成。

  • ○反転授業の予習動画作成作業,配信方法について篠山市ICT担当を講師として研修。

  • 反転授業(3年数学)

    ○反転授業のICTコンテンツをHPで配信し,本校ICT部会(数学科)が授業実践。

    ・授業デザイン(プレゼン・リレー)および家庭学習(予習)の習慣化についての成果と課題について検証し,より効果的なICTコンテンツの開発。

  • タブレット活用授業(3年数学)

    ・授業ではタブレット,書画カメラとプロジェクターを活用し予習動画・予習プリントを確認し,ICT機器を活用し,プレゼン・リレーを中心としたアクティブ(主体的・能動的かつ協働的)な学習活動を展開する。

    ・個に応じた指導が必要な生徒には,授業でも個別にタブレットで予習動画をテキストとして学習。

    ・不登校生徒に対しては,家庭学習の補助教材として予習動画を活用した学習支援。

  • 研究協議

    ・校内研究授業及び公開研究授業(6月8日)を実施し,大阪教育大学寺嶋先生に指導助言をいただき,研究協議を行い,成果と課題について検証。

    ※予習動画は篠山市ICTサポーターと連携し,市サーバーにアップし市内中学校で共有し各校のHPから配信する。インターネットが視聴できない生徒については,DVDで配布する。(DVDは篠山市視聴覚ライブラリーで作成する)

    ※オリジナルなICTコンテンツを作成する。予習動画作成にあたっては著作権が関係するコンテンツ使用は基本的には使用しない。著作権が関係する場合の使用許可は必ず申請する。

※アドバイザーの助言と助言への対応
  • 寺嶋先生指導助言

    ○アドバイザー(寺嶋先生)の助言

    ・ICT導入(反転授業導入)のプロセスを整理し,「導入マニュアル」のような形でまとめる。

    ・「反転授業」のICTコンテンツを活用した授業デザインの目的を類別しパターン化するなど,整理して「授業フォーマット」の形でまとめる。

  • ○助言への対応

    ICT活用(保健体育)

    ・「導入マニュアル」は実践と理論に分けて整理した。「なぜ,反転授業をするのか?」から見直した結果,「予習してから授業にのぞむ学び方」を生徒が身に付けることが,自学自習し学び続ける人を育てる基礎になると結論した。「予習すること」を中心に置いた学び方と教授法の考え方を整理した。
    概念を整理し直したことで,「まずは実践から…」の研究が,「なぜ」,「どのような方法で」,「目指す到達点は」などと,プロセスを理論立てて説明する研究に変わってきた。
    篠山市全体で取り組めるように,データを共有できるシステムを作り,各校の研究授業では反転授業を積極的に取り入れるよう勧め,ICTコンテンツの積極的活用を促した。
    丹南中学校では,ICTを活用した授業や反転授業を日常的に行うことで,「反転授業は珍しくない」状況を作りだし,誰でもいつでも反転授業を実践できそうな雰囲気を作り出した。

    ・反転授業の型を3パターンに類別した。類別したことによって,反転授業を取り入れるタイミングや教科の特性や学習分野との相性などを見抜く手助けとなった。反転授業の実践を勧めるときに説得力が増した。

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

本期間の裏話
  • 「予習」して,あらかじめ知っていることがあると,「言いたい」「教えたい」気持ちが高まった状態で授業にのぞむ生徒が増えてきた。授業の途中で「疑問点」,「分からない点」が出てくると,すぐに近くの生徒に聞く,聞かれた生徒は授業そっちのけで一生懸命教える。そういう場面が,授業中にしばしばあり,最近では普通の光景になってきた。
  • 「予習」というよりも,「事前に学習する」「先行して学習する」ことが当たり前になってきた生徒が増えてきた。問題集の取り組みでは,今学習しているところよりもかなり先を解答している生徒が増えてきた。「どこまで進んでいる?」などと,競争しながら先に進む生徒もいる。
  • 授業が終わっても,まだ問題(課題)に取り組む生徒,まだ教え合っている生徒が増えてきた。もちろん,授業後,すぐに先生に質問に来る生徒がいることは,当たり前になった。(授業後に機材を片付けるので,先生はすぐに教室から出て行かない。したがって,生徒も質問できるタイミングがある。)
  • 授業中に,動画を使ってまとめると,生徒全員の目がこちらを向くので気持ちが良い。うなずく生徒も多く,解説しがいがある。
  • 教材づくりは,とても楽しいが,時間と労力がかかる。正直しんどいが,やりがいも大きい。生徒は,先生の自作教材であることを知っているので,授業の食いつきが大きい。とてつもない労力をかけるだけの価値を感じてしまうので,時間をかけて教材づくりをしてしまう仕事の仕方からどうしても抜け出せない。

成果

本期間の成果

○生徒の変容について

  • 反転授業を日常的に実践したので,生徒にとっては当たり前になった。その結果,適度な手抜きができる生徒が増えた。学習内容の難しさに応じて,あるいは自身の理解度に応じて,軽く流したり,しっかり学習したり・・・。こういう状態になった方が,教室全体の学び方が深まったように感じる。
  • 生徒の「あらかじめ知ってしまったことは『言いたい』,『教えたい』」気持ちが高まってきた。授業中に発表できる生徒の数は限られるが,生徒同士の教え合いはいつでもできる。ちょっと疑問に感じたことは,近くの生徒にすぐ聞く,聞かれた生徒は一生懸命教える。そういう場面は,ごく当たり前に,そこかしこで見られる。
  • 数学の問題の解き方よりも,考え方を質問する生徒が多くなってきた。
  • まだ授業で教えていないことを質問する生徒が増えてきた。(予習しているから?)
  • プレゼン・リレーで筋道が通って,なめらかに話す見事な生徒の発表は,聞いている生徒の反応が悪くなってきた。むしろ,途中で行き詰まったり,うまく説明できない生徒の発表の方が,聞いている生徒の反応が良い。発表が行き詰まったり,うまく説明できない場面があれば,そのときに聞き手の生徒達は,お互いに教え合い・確認し合いをする。だから,たどたどしい発表の方が,聞き手の生徒達は理解が深まるようである。

    ○授業デザイン(反転授業の構築)について

  • 授業で反転授業やICTを活用し,プレゼン・リレーや協働学習等のアクティブ・ラーニングを推進する取組を3つのプロジェクトチーム(「ICT活用授業研究部」、「アクティブ・ラーニング授業研究部」,「予習教材作成研究部」)を組織して取り組みが進んでいる。
  • 丹南中学校の数学科(3年)については,日常的に反転授業を実施しているが,その成果として,以下の3点があがっている。
    ①授業目的が予習動画に集約されているので,予習のポイントが明確で学習しやすい。
    ②学習内容に対して目的意識や課題をもって意欲的に取り組む生徒が増えてきた。
    ③反転授業を日常的に行うことによって,予習が当たり前になってきた。
  • 習習慣を身につけさせる授業デザインづくり」については,教師の意識も高まりつつあり,今後ICTコンテンツを作成し,反転授業を実施する方向で進んでいる。

今後の課題

  • 丹南中学校ICT部会を中心に,市内5中学校のICT部会で「予習習慣を身につけさせる授業デザインづくり」の研究を推進していきたい。
  • 「予習習慣を身につけさせる授業デザインづくり」を実現するための有効な手段の1つに反転授業がある。反転授業そのものを研究するだけではなく,「予習習慣を身につけさせる授業デザインづくり」の研究であるという方向性で進めていく。
  • 予習習慣を身につけさせることは、将来、自学自習し学び続ける人を育てることである。予習の意義を生徒ならびに教職員に充分認識させていくことが大切である。

今後の計画

  • 各教科の特性や分野について,3類型に分けた反転授業の型をさらに整理する。そして,効果的・効率的な反転授業の「授業フォーマットづくり」をする。
  • 反転授業をはじめとする「予習習慣を身につけさせる授業デザインづくり」を概念図の形に練り上げる。そして「導入マニュアル」としてまとめる。

気づき・学び

  • 自作教材を作る過程で,教師自身の学びがとても深まる。労力がかかるが,データを共有することを前提としたICTコンテンツを作ることで,教員の資質向上に大いに役立ちそうである。なぜ,データを共有することを前提とするのか?それがないと緊張感に欠けるからである。やはり,ある程度の緊張感の下で作ったICTコンテンツは,それなりの質がある。
  • 自作教材を使った授業をすることによって,生徒にはその授業に対する教師の思いが伝わり,それに応えようとして生徒が頑張っていることに気づかされる。授業デザインは工夫の仕方で,生徒の授業に対するモチベーションに大きく影響することをあらためて感じた。
アドバイザーコメント
大阪教育大学 大学院連合教職実践研究科 准教授 寺嶋 浩介 先生

篠山市立丹南中学校では,反転授業の普及や体系化をテーマとしている。ここ数年で,反転授業への取り組みについてはいくつか報告されている。しかし,まだ実施したことがない学校や教師からすれば,「本当に生徒は事前に動画を見てくるか」などというような素朴な疑問がまだ多いかと思う。公立の中学校においてどのような可能性を持ちうるものなのかについて,同校には研究を進めていただきたいと思う。

 

先日私が参観をした数学科の授業においては,習熟度別のクラスで同じ動画を活用して授業が進められていた。上位のクラスにおいては,動画を視聴してきていることを前提として,テンポがとても早い授業が展開されていた。その分,何度も繰り返し,手を変え品を変えながら,定着が図られていた。もう一方のクラスは,どちらかと言うと数学を苦手としているので,事前に動画を見てくるというよりは,その場で一緒に見ること,そこから疑問を解決していくことにより授業が進められていた。こちらは反転授業とはいえないかもしれないが,学校ぐるみで取り組んでいくと,動画の視聴に加え,授業内活動もどのように進めていくかについて,いくつか典型的な型が整理されていくのではないかと思った。今は一部の教科にとどまっているが,この取組を他教科に広げ,その可能性を探っていただきたい。

 

また,同校には大きな課題として,「反転授業導入マニュアル」のようなものの作成をお願いした。どのように教材を作成するか,事前視聴と授業内活動の組み合わせの工夫,教科による使い方の違いなどがあれば良いと思うが,このような形で他校に還元をしてもらいたい。

 

なお,本研究の計画として,同校内の取り組みだけではなく,これを篠山市内にも広げていきたいということであった。実は昨年度から本研究の土台となることは進められてきた。市の部会として,本財団の一般助成を受け,その成果は優秀校として表彰されている(http://www.pef.or.jp/01_jissen/06_seika/h28_seika_report_02_sub.html )。このようにステップを踏んで,特別研究指定校になっている同校の取り組みは実に着実かつしたたかな点も注目すべきところである。関心のある読者は昨年度の報告についてもご覧頂きたい。

研究課題と成果目標

研究課題 反転授業を通した予習の習慣化とICTを活用したアクティブ・ラーニング ~予習習慣を身につけ,アクティブに授業に取り組み,思考力,判断力,表現力を磨く生徒の育成~
成果目標
  • 反転授業の予習動画を活用し,家庭学習で予習を習慣化することでアクティブに授業に取り組む態度を育成する。(予習することにやりがいを持たせ,習慣化させる。)
  • 反転授業で生徒が自己表現をする機会を増やすことによって,学習意欲を高め,言葉の力の育成や思考力・判断力・表現力の向上に繋げるとともに学習内容の定着を図る。
  • 生徒が活躍する授業デザイン(プレゼン・リレー※やディスカッション等)を構築し,主体的・能動的かつ協働的な授業(アクティブ・ラーニング)を展開する。
    ※(プレゼン・リレーは生徒の説明で生徒同士の集中力や理解力をお互いに高め合う)

本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応

本期間(8月~12月)の取り組み内容
  • 予習動画制作(篠山市理科部会)

    ○篠山市中学校理科部会で予習動画を制作し,各校で反転授業を実施した。市内で公開授業研究会を実施し,効果的・効率的な予習動画制作方法について研究した。さらに兵庫県中学校理科教育研究大会で公開授業を行い,研究の成果と課題について実践発表を行った。

  • ○本校英語科(1年生)では,単元の文法内容を予習動画で予習し,授業はペア学習を中心に,生徒が主体的に表現する場面を設定した授業デザインで行っている。

  • ○本校数学科では,「学習内容解説型」「学習内容活用型」の反転授業を実施した。生徒には予習することにやりがいを持たせ,習慣化させた

  • 予習動画制作(実技研修)

    ○本校家庭科の授業で裁縫の分野で予習動画を制作し事前に縫い方を説明し,授業では作業学習を中心に行った。市内中学校で共有し,その成果と課題を近畿地区中学校技術・家庭科研究大会で発表した。

  • ○ICT機器活用について篠山市のICTサポーターの指導により,ロイロノート,Explain everything等の予習動画制作の方法について実技研修を行った。

  • ○公開研究授業(11月15日)を実施した。2年国語,1・2・3年数学,1年英語の授業を反転授業で行った。大阪教育大学寺嶋先生に指導助言をいただき,パネルディスカッションで研究協議を行い,成果と課題について検証した。

  • ○国語(2年生)では,枕草子をはじめ古典文学の随筆に興味を持たせるための予習動画を制作した。古典文学に関する基礎知識を定着させるための効果的・効率的なICTコンテンツを考えた。

    ○個に応じた指導が必要な生徒には,授業でも個別にタブレットで予習動画をテキストとして学習。

  • 公開授業 パネルディスカッション

    ○不登校生徒に対しては,家庭学習の補助教材として予習動画を活用した学習支援。篠山市の適応教室でも活用している。

    ※予習動画は篠山市ICTサポーターと連携し,市サーバーにアップし市内中学校で共有し各校のHPから配信する。インターネットが視聴できない生徒については,DVDで配布する。(DVDは篠山市視聴覚ライブラリーで制作する)

    ※オリジナルなICTコンテンツを作成する。予習動画制作にあたっては著作権が関係するコンテンツ使用は基本的には使用しない。著作権が関係する場合の使用許可は必ず申請する。

※アドバイザーの助言と助言への対応
  • 反転授業(1年英語)

    ■アドバイザーの助言

    ・反転授業と対面学習の学習過程を類型化し,授業改善のプロセスと生徒の学びがどのように変化したか,生徒に予習習慣が身についたかを検証する。

    ・効果的・効率的な教材づくりの条件を見いだし,一般化するにはどのようにすればよいかを研究。

    ・反転授業の導入ステップや学習プロセスをまとめることが,校内外の教師の参考になる。

  • ■助言への対応

    ○授業改善

    ・生徒が効果的な授業の進め方の評価などをするようになってきている。生徒の意見をフィードバックして授業の進め方を工夫することが授業改善の大きな要素になる。

    ・反転授業は生徒が事前に学習内容のイメージや見通しを持って授業に臨むことが前提である。生徒が知ったことをプレゼン・リレーする心構えをさせ,生徒の意欲が高まった状態で授業を開始する。

    ・教師が主体となって「教え込む」授業形態よりも,生徒が主体となって,教師は補足説明する「学習支援者・ファシリテーター」型の授業形態にしたい。

    ○学習習慣

    ・予習することの利点を感じている生徒は増えており,「予習」を中心とした学習をする生徒が増えた(同時に,しっかり『復習』する生徒も増えた)。このような実感をもつ生徒の場合は,特別な課題を与えなくても,自ら課題を設定し解決している

    ・予習習慣が身についてきたので,質問にくる生徒が増えた。授業内容に対する質問だけでなく,自主的に取り組んでいる問題集の問題に関する質問が多い。「自分たちが授業をつくっている」との意識を持つ生徒が出てきた。こういう気持ちのある生徒の学習意欲はとても高く,PDCAサイクルが確立している。

    ○反転授業の導入マニュアル

    ・反転授業導入マニュアルについては,段階的なステップ・マニュアルとしてまとめることができる。

  • 反転授業の類型化と構造(フローチャート)

    1.予習動画の作成(考え方)

    ①既存のビデオクリップ等を参考にする
    〈例〉NHK for school(NHKオンライン)
    1~2分から,10分程度のもの。質が高く,時間も短い。自作では無理な環境の下で制作されているので大変参考になる。

    ②予習動画を自作する

    (ア)学習内容解説型

    ・教科書の記述を詳しく説明するイメージ。学力中間層以下の生徒にとって有効。

    ・毎授業ごとに,予習してから授業に臨むスタイルが最も効果的。

    (イ)学習内容活用型

    ・課題を提示し,課題解決に向けたヒントなどを示す。課題を解決しようとする活動の過程で,関連する基礎知識などを予習(復習)することになる。

    ・適切なタイミングで動画配信する。

    (ウ)練習問題型

    ・暗記,計算,説明など,既習事項を活用して練習すること。知識の定着,技能の向上を目的とする。

    ・毎授業ごと,または適切なタイミングで動画配信する。

    ③予習プリントを作成する

    予習動画の型と一致するように作成する。

    (ア)学習内容解説型    (イ)学習内容活用型    (ウ)練習問題型

    動画はイメージに訴える力が強すぎるが故に,動画から学び取ることがらは生徒によって異なると考える。したがって,プリントなどで文章化(言語化)させて,まとめさせる。「イメージ」→「言語化」をさせて,動画から「何を」学んだのか確認できる手立てが必要。

    ④授業の進め方

    反転授業(1年数学)

    (ア)学習内容解説型…予習内容発表型

    ・生徒が予習したことを次々と発表(プレゼン・リレー)する。教師は「補足説明」する形式を取る。

    ・生徒の発表が型にはまったものになりやすい。しかし,学力低位層の生徒も発表しやすい。

    ・学習内容がテンポ良く進みやすい。教師が学習内容をまとめ直すことが重要。

    ・班で,または席が近くの生徒同士で相談しやすい。

    ・生徒は,授業で「とくに聞きたいところ」に的を絞って学習できる。

    ・授業が早く進みやすい。授業時間数に余裕が生まれるので,授業中に練習問題をするなど,基礎知識の定着や技能向上のための時間を確保しやすい。

    (イ)学習内容活用型…意見交流型

    ・班などを組んで,提出された課題の解決法または予習した内容の意見交流をする。

    ・グループによって進捗状況に差が出る。グループで出た意見を全体に見せる(途中経過を発表させる)などして,進み具合を調整する。

    ・グループによって,学びの質に差が出る。教師が学習内容をまとめ直すことが重要。

    ・「意見交流」活動がとくに活発になる。

    ・生徒が主体的に学習に取り組んでいる雰囲気が生まれる。

    ・生徒が意欲的に取り組むようになる可能性が大きい。

    (ウ)練習問題型…教え合い型

    ・解法を発表する方法…生徒なりの解法が出てくれば,技能や知識活用に広がりが出る。より高度な問題へと発展させやすい。

    ・班で取り組む方法…誤答や勘違いを共有できる。教え合いの中で誤答(勘違い)を修正できる。基礎学力の定着が図りやすい。

    ・班によって学びの質に差が出る。教師がまとめ直すことが重要。

    ・基礎知識の定着と技能の向上がはかりやすい。

    ⑤反転授業のフローチャート

    ○教科書をしっかり読んで予習することが基本。教科書の内容を理解するための手立てとして,予習動画・プリントを用意。(早めに配布・配信する)

    ・予習プリントの穴埋めを考えることで,基礎事項を学べるようにする。

    ・予習動画を見ることで,教科書から読み取りにくいことがらを理解したり,学習内容のイメージを捉える。

    ・「自分で発見したこと(学んだこと)は,誰かにいいたい!」そういう気持ちを育てたい。

    ・基礎知識・技能の部分を説明することは,とても難しい。そこで,予習プリントの解答解説をする形式を取る。上手に発表できない生徒も多いが,この形式であれば予習していれば,発表できる。また,発表が苦手な生徒もいるので,発表する順番はあらかじめ決めている。生徒にも都合があるので,ある程度自分が発表する範囲が分かっていた方が良い。生徒はうまく説明できないが,説明に詰まる部分,まさしくそこが「分かりにくい部分」である。発表者が詰まった時,発表を聞いている生徒は,あちこちで互いに学習内容を相談(確認)し合っている。この時間帯がとても大切である。また,生徒が詰まった部分こそ,教師が補足説明をするポイントでもある。補足説明や練習問題をして,生徒の理解を深め,基礎知識・技能を定着させる。

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

本期間の裏話
  • 効果的,効率的なICTコンテンツの作成方法は,決定打がまだ見つからない。初期の取り組みでは,「時間」と「労力」がかかるが,ICTコンテンツを蓄積することが肝要。一定量のICTコンテンツが蓄積できれば,それを学習素材として二次使用していくことで効率的なICTコンテンツ開発につながる。
  • 「学習内容活用型」は,活用する課題の設定の仕方が大切である。しかし,生徒が「新しい学習内容」を自ら探ろうとする学び方であれば,「学習内容活用型」の学びをする生徒が出てくる可能性がある。「予習の内容」「発表の仕方」を工夫することで,毎時間,「学習内容活用型」に近い形の授業が創造できるかも知れない。
  • 学習プロセスは「予習」して知り得たことを「誰かに言いたい」という気持ちを刺激するような工夫が良い。「言いたい」「知りたい」気持ちを育てていくことが,学習意欲の向上につながる。発表や協働学習などの授業デザインも効果的だが,生徒の気持ちをうまく刺激することを基本に置くことが大切である。

成果

本期間の成果

○生徒の変容について

    反転授業(3年数学)

    反転授業(3年数学)

  • 『新しい学習内容を1から先生に教えてもらうより,新しいことは,まず自分で探ってみて,「分かること」「分からないこと」を見分けてから,授業に臨む方が授業が楽しい』。このような実感をもつ生徒も出てきた。結果的に,こういった生徒の場合は,特別な課題を与えなくても,自ら「学習内容活用型」になっている。
  • 「予習」してから授業に臨むことに,「分かりやすい」という利点を感じている生徒が多い。しかも「予習」をしっかりしている生徒は,かなりしっかりした「復習」をしている。
  • 授業への集中力が高まり,生徒同士での,教え合いが活発になった。また,問題集など,自主的に取り組む生徒が増えた。
  • 質問にくる生徒が増え,「分からない」という表現から「ここが分からない」という言い方に変わった。授業内容に対する質問よりも,自主的に取り組んでいる課題に関する質問が多い。
  • 実験や実技で予習動画を見ることで,方法や作業の流れを確認し,見通しをもって作業を進めることができる。生徒は意欲をもって主体的に取り組み,お互いに教え合う姿が見られる。また,教え合うことでより理解できる。
  • 見通しをもつことができるので,特に支援が必要な生徒も自ら質問し,コツコツと作業をして積極的に取り組んだ。作業準備から開始が早くなった。生徒の主体性を引き出し授業をスムーズに進めることができた。家庭で動画を繰り返し見て復習もできる。
  • 「不登校」「適応教室」「特別支援学級」「日本語が母語でない生徒」への学習支援として,ICTコンテンツを活用した。

    ○授業デザイン(反転授業の構築)について

  • 「自分たちが授業をつくっている」という感覚で捉えている生徒が増えてきた。「次の授業では○○の部分を充実させて欲しい」「○○な方法は分かりやすくて良い」などのように,反転授業の進め方などについて,具体的提案をする生徒が増えてきた。生徒の提案を参考に進め方を工夫すると,確かな手応えを感じることが多い。
  • 振り返りシートに「しっかり復習しておきます」などのような感想を書く生徒が増えてきた。「予習」中心の授業の組立をすることで,「復習」に力を入れる生徒が増えてきている。
  • 「解説型」の場合は,ほぼ毎時間「反転授業」を実施するので,授業を通して,少しずつ生徒が馴染んでくる。予習をして授業に臨むことが当たり前だと生徒が感じてきている。
  • 教材研究をICTコンテンツという形でデータ化することにより,活用範囲が広がり,授業デザインの構築に効果的であることがわかった。
  • 国語の授業で教材の背景を予習動画で提示し,興味・関心を持たせておくと,授業へのモチベーションが高まり,アクティブに授業に取り組む姿勢が見られる。
  • 数学では,音声をつけていない1~3分程度の動画が特に効果的だと考えられる。

今後の課題

  • ○「予習」を中心とした授業をすると,大半の生徒がある程度の「予備知識」をもって授業に臨むことである。つまり,すでに「了解済み」の部分があって授業を受けている。生徒は「聞きたい内容」と「了解済みの内容」を判断しており,授業デザインを工夫する必要がある。
  • ○「予習」しない生徒への対策
  • ・「予習」していない場合はノートを取るのが間に合わなかったり,授業の流れが見えないために理解が追いつかないことが考えられるため,「予習動画」を「授業動画」として,授業中にも見せて補うようにしている。また,「予習プリント」=「授業プリント」という使い方をすることで,さらに補足するようにしている。また,「分かりにくい部分」は,近くの生徒同士で教え合う習慣になっており,生徒同士で補い合うことで,理解を進めている。
  • ・授業中に予習動画を見せながら解説することで,「予習」不足の生徒への対策としている。中には「予習」している生徒もおり,「予習」している生徒の理解はもちろん良い。「理解が進む生徒」と「理解が難しい」の2層にはっきりと分かれてきたことが大きな課題となっている。
  • ○ICTコンテンツが一定量蓄積される(アーカイブ化)までは,準備がとても大変である。市内5中学校での制作協力を得て,互いの共有財産としていく。
  • ○生徒自身が「自分たちが授業の主体」「自分たちで授業をつくっている」と思えるように,生徒が活躍するステージをどのように設定するか検討する。
  • ・生徒が活躍する授業デザインを進めることを通して,「発表する生徒」像から「説明できる生徒」像へと思考力・判断力・表現力の自己変革を促す。

今後の計画

  • 篠山市ICTプロジェクト(篠山市教育委員会内に設置)を中心に反転授業について,組織的・計画的な活用をしていく方向で検討している。
  • ICTコンテンツのアーカイブ化を目指して,市内5中学校のICT部会で蓄積し,共有化する。
  • 不登校生徒の学力保障や,「適応教室」「特別支援教育」など,関係機関等との連携を探りながら,活用方法を検討していく。
  • 国際理解教育において,母語が日本語でない生徒への学習言語の指導において計画的に活用していく。
  • 教科で「反転授業」を実施する目的を明確にし積極的に実践していく。そして実践を通した得た知見を研修等を通して検証し,研究推進を図る。
  • 公開研究授業(平成29年2月17日)は技能教科(音楽,美術,保健体育,技術・家庭)を中心にそれぞれ予習動画を活用した取り組みを実践発表する。

気づき・学び

  • 「新しい内容をゼロベースから他人に一方的に教えてもらう学び方」から「新しい内容をまず自分で探ってから,教え合う学び方」へ変えていくこと。これが「生涯学習」につながる学び方の基本スタイルである。
  • 「予習」していない生徒で学習が得意で,理解の早い生徒はついていけるが,そうでない生徒は授業の速さについていけない。学習が苦手で「予習」しない生徒にとって,厳しい教室の雰囲気になっている。こういった学習環境に馴染めない生徒への配慮をする。
  • 反転授業のための教材づくりを通して「教育水準の維持」および「教員の資質向上」を図ることが出来る。
  • 共有化したICTコンテンツをベースに,各自の授業デザインに合わせて書きかえると,効果的で効率的なICTコンテンツを制作することができる。
  • 予習動画の制作にあまり負担がかからない方法がわかってきた。「学習内容活用型」での課題解決に向けて予習動画は,生徒のモチベーションを上げるには非常に効果的で,さらなる発展課題に取り組む意欲が出てきている。
  • 生徒の授業の感想は,予習することで授業が楽しく,分かりやすいと大半が答えている。
アドバイザーコメント
大阪教育大学 大学院連合教職実践研究科 准教授 寺嶋 浩介 先生

篠山市立丹南中学校では,反転授業の普及や体系化をテーマとしている。反転授業の取り組みは私学を中心に拡がりつつあるが,公立中学校においてそれを進めていくことは大きなチャレンジである。

 

実際に同校の充実した報告を見てみると,着々と進みつつあることを確認することができた。特に本期間の取り組みとしては反転授業の類型化を行った点が特に注目される。また,これは助言時に伝えたことであるが,ただ単に授業前のビデオの活用やその質の異同を類型化するだけではなく,実際の対面授業をどのように進めるか,という視点も含まれており大変興味深い。今の段階で,この類型にこだわる必要はないので,これを土台にして改善していくのが良いのではないかと思う。

 

同校の今後の課題は,全体への普及にあるように思う。校内でも,何度か取り組みながら改善をしていき,ある程度慣れてきた教師と,本研究の指定を受けてとりあえずはじめてみた教員が存在する。その経験度合いにより,教材や授業の進め方に関して考えていることがかなり異なるように私には思えた。これは課題というよりも,反転授業を進める学校において必ず出てくる形のように見えるので,反転授業初心者教員とベテラン教員では進め方がどのように違うのかというところを明確にする視点も取り入れ,反転授業の導入モデルを作って欲しい。

 

将来的には地域への普及も期待されているし,実際に篠山市内でも進められていることが,今回の報告からも確認することができた。この点も今後注目したいところである。

研究課題と成果目標

研究課題 反転授業を通した予習の習慣化とICTを活用したアクティブ・ラーニング
~予習習慣を身につけ,アクティブに授業に取り組み,思考力,判断力,表現力を磨く生徒の育成~
成果目標
  • 反転授業の予習動画を授業でも活用し,予習することの有益さを感じさせることで,能動的に学習する態度を育成する。(予習することにやりがいを持たせ,習慣化させる。)
  • 生徒が解説する,疑問点を出し合うなど,表現の機会を増やすことで,学習への達成感とやりがいを持たせ,学習意欲,言葉の力,思考力・判断力・表現力の向上に繋げる。
  • 生徒が活躍する授業デザイン(プレゼン・リレー※やディスカッション等)を構築し,主体的・能動的かつ協働的な授業を展開する。
    ※(プレゼン・リレーは生徒の説明で生徒同士の集中力や理解力をお互いに高め合う)
  • 各班1台のタブレットを使って,生徒の多様な意見を引き出し,学習内容を深めながら,自分の意見を言う,他人の意見を聞く等の態度を養う。

本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応

本期間(1月~3月)の取り組み内容
  • ○篠山市教育委員会に情報教育部会(仮称)を設立。市内小中学校で学習コンテンツ(予習動画など)を共有していくシステム作りの準備がはじまった。

  • 予習動画制作(実技研修)

    ○予習動画作成では,篠山市のICTサポーターの協力により,教師の負担軽減ができた。

  • ○1月26日校内研修。反転授業の進め方および予習動画の作成。美術科・社会科・数学科などのように,実技教科と他教科でチームを組み,他教科の実践的知見を交流し,予習動画を作成。動画の作り方について研修を深めた。

  • ○不登校生徒に対して,家庭学習の補助教材として予習動画を活用した。また,篠山市の適応教室と連携し,予習動画を学習コンテンツとして提供した。

  • ○篠山国際理解センターと連携し,日本語を母語としない生徒の「学習用語」理解のため,予習動画を学習コンテンツとして提供した。

  • ○著作権フリーの学習コンテンツの確保のため,予習動画は教員の自作による。これらの動画がストックされることで,将来的に動画作成にかかる負担を軽減させていく。

  • 保健体育科(公開授業)

    ○2月17日公開研究授業実施。音楽科,美術科,保健体育科,技術家庭科で,「反転授業」に向けて取り組んだ。本年度は,9教科全ての教科で,「反転授業」の研究発表を行った。
    ・音楽科では,「ギターの奏法」に関する予習動画を作成した。生徒は,教師の解説を聞き,授業中にも流れている動画を見ながら実技を行う。
    ・美術科では,「色の印象と鑑賞」をテーマに予習動画を作成。授業ではペイントソフトを使って,生徒の関心を高める授業を公開。
    ・保健体育科では「マット運動」の反転動画を作成。身体の動きをストップモーションやスロー再生を使って解説。また,生徒の実技をその場でビデオ撮影して,生徒同士で検討し合う授業を行った。
    ・技術分野では「ハンダ付けと回路」の動画を作成。基礎知識の確認が効率的に進み,すぐに実技に入ることができた。
    ・家庭分野では「調理実習」で調理の様子を動画でまとめた。生徒はあらかじめ動画で調理の手順を確認してきているので,すぐに調理実習に入ることができた。

  • ○英語科(1年生)では,文法事項を「反転授業」で行い,他の学習内容をペア学習で行う授業スタイルが確立した。

  • ○数学科(1年生)では,「課題解決」や「練習問題」をテーマに動画を作成。生徒同士の意見交流を中心とした授業スタイルが確立した。

  • ○数学科(3年生)では,「知識理解」をテーマに動画を作成。毎時間,反転授業を行い,生徒が「新しい学習内容」を解説するスタイルが確立した。

  • ○理科(1年生),社会(2年生)では,「反転授業」の前段階として,ICT活用授業を計画的かつ積極的に実施している。

  • ※予習動画は篠山市ICTサポーターと連携し,市のサーバーにアップし各校のHPから配信する。インターネットが視聴できない生徒については,DVDで配布する。

  • ※オリジナルなICTコンテンツを作成する。予習動画制作にあたっては著作権が関係するコンテンツは基本的には使用しない。著作権が関係する場合は使用許可を申請する。

※アドバイザーの助言と助言への対応
  • ・市内および校内への普及の手立てを確立する。

    ・反転授業を体系化し,普及および導入のモデルを作る。

    ・反転授業の類型化をし,実際の対面授業でどのように活かすかを研究する。対面での授業の進め方をまとめる。

    ・反転授業の実践経験の多少によって,授業者の捉え方・授業デザインのあり方に段階がある。経験の度合いによる,授業の質・進め方の段階をまとめることで,反転授業の導入ステップになる。

    ・反転授業を通して、生徒の学びがどのように変化したか、授業改善のプロセスと生徒に学習習慣が身についたか検証する。

    ・ICT活用授業と反転授業の違いを明確にし,反転授業の研究を推進する。

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

本期間の裏話
  • 動画の作成には多大な労力がかかるが,その苦労を生徒は分かってくれる。反転授業を続けていくと,生徒の様子が変わってくる。数学の苦手な生徒の方が『頑張ろう』とする意欲が高くなるのがおもしろい。
  • 「復習をしなさい」と言ったことはないが,「予習中心」の授業をすればするほど,「復習」をしっかりする生徒が増えてきた。生徒に聞くと,「分からなかった部分が気になって仕方ないから」,「分かると,その日のうちに練習問題をしたくなる」・・・なるほどと思う。
  • 反転授業をはじめてから,問題集を宿題として出さなくなった。なぜなら,生徒は勝手に先に進んで問題集をやっているからである。「予習しなさい」という授業スタイルは,「問題集も自己判断でどんどん進めなさい」に繋がっているようである。定期テスト直前には,6~7割程度の生徒はすでに問題集はほぼ完了していることが多い。
  • 反転授業の特徴は授業が効率的に進むことである。授業時数に余裕が生まれるので,練習問題に取り組む時間を確保できる。班学習で勘違いや誤答を共有できるので,知識や技能の定着に役立っている。生徒は「もっと多くの時間が欲しい」と毎回要求してくる。
  • 生徒の発表で授業がはじまる。生徒は「発表」ではなく「説明」,「解説」と言っている。「自分たちが授業をつくっているんだ」・・・こういう気持ちで授業に臨んでいる。
  • 反転授業では,「予習」をサボると授業が分からなくなる。成績上位者が「分からない」と言った授業を,数学の苦手な生徒が「よく分かった。授業はおもしろかった」と言うこともある。新しい知識を学ぶときは,みんな同じスタートラインに立っている。
  • 厳しい学習形態であるが故に,気持ちが逃げる生徒もいる。こういう生徒をどう導けばよいのかが課題である。現状は,友達が一生懸命教えているので授業には支障はない。
  • 「人前で話すことが上手くなった」「発表に自信がついた」。生徒がよく語ってくれる感想である。反転授業は生徒の表現力も高めてくれる。
  • 「先生の説明はよく分かる」。必ず出てくる感想である。授業では,はじめに生徒が解説する。私は,生徒の解説の仕方と解説を聞いている生徒の様子を見る。そして,生徒が分かりにくかったところを中心に補足説明をする。後出しじゃんけんみたいなものである。「先生の説明は分かりやすい」。当然である。後出しじゃんけんなのだから。
  • 文法事項を予習動画にして,授業では会話練習にすぐに入る。あらかじめ,会話のパターンと文法事項のイメージが分かっているので,生徒の活動がとても活発である。
  • 班に一台タブレットをわたすと意見交流が活発になる。タブレットを通して他の班の意見も提示できるので,生徒の反応がとても良い。発表する力と表現力が向上した。

成果

本期間の成果
  • 職員研修を通して,多くの教師が動画作成に関わった。動画作成に関連する職員の基礎的技能が向上した。→自作教材(動画)作成を目指したスキルアップ
  • 動画によって授業デザインが変わることに気づいた。予習動画を作成することは,授業デザインの見直しを強く迫ることになった。動画作成は,質の高い職員研修になった。
    【ひとまとまりの学習内容で,はじめに予習動画を使う】
    英語科では,文法事項を中心に動画を作成している。授業は会話練習から開始し,文法事項は練習の後で確認程度の押さえでも十分な場合もある。授業が効率的だから,生徒の活動時間を多く確保できる。生徒は積極的に活動し,誤答や勘違いを共有して互いに修正していくので,基礎知識の定着が図れる。教師との距離感も近くなる。また,指導者の実感として,生徒の表現力に向上が感じられるようになった。
    【ひとまとまりの学習内容で,おわりに予習動画を使う】
    1年生数学では,章末で動画を利用している。主に基礎知識・技能を活用するための課題動画である。生徒は積極的に発表するようになり,多様な意見が出てくる。なかなか思いつかない視点からの意見が出ると,おおいに盛り上がる。「自分だけが分かる」のではなく「相手に分かるように伝えなさい」と指導することで,自分自身の理解も深まっている。
    【毎回,予習動画を使う】
    3年生数学では,教科書の内容を生徒がプレゼンする形で授業を進めている。生徒は「自分たちが授業を進めている」という気持ちで授業に臨んでいる。「理解が難しい部分」は,多くの生徒にとって共通しているので,生徒同士の教え合いも活発になっている。
    「予習」を中心に置いた授業では,「予習」「授業」「復習」が一体化している。しっかり「予習」している生徒ほど「復習」をよくしている傾向が高いことが分かった。
    教材として予習動画と予習プリントのセットを用意している。予習プリントのように,理解したことを文章や式で確認できる手立てを確立しておくことは重要である。
    【実技教科では時間の確保が重要か?】
    一週間に1~2回の授業の教科もある。知識理解も十分に教えたいが,実技を通して学ばせることもしたい。しかし,知識のないところでの実技・実習では意味がない。反転授業は家庭学習と授業との連続性があり,時間の確保の点でとても有効である。
    【その他・・・反転授業への前段階として】
    反転授業ではないが,授業中にプレゼンテーションソフトなどを活用して,生徒の注目度を高めたり,効率的で密度の濃い授業をする教科も出てきた(1年生社会地理,理科,技術科)。これは反転授業ではないが,通常の授業と反転授業の橋渡し的な授業形態とも言える。無理なく反転授業へと移行していくことを期待している。
課題
  • 社会科では生徒に見せたい図表や写真など豊富にあるが,著作権の問題がある。理科でも同様に利用したい画像があっても,予習動画として利用することは難しい。ホームページにリンクをはって,予習動画として活用することも検討していく。
  • 予習をしなかった生徒への対応が課題である。授業プリントを充実させる,予習動画を授業でも活用する,生徒同士で教え合いをさせるなどの手立てをとっている。
  • 次の段階としては,「予習を習慣化させること」「能動的な姿勢で学習に取り組むこと」である。方法論を確立させたいところである。
  • 予習動画,予習プリント,授業プリントなどを蓄積して,再利用できるようにしていきたい。教材を「共有財産として蓄積して利用していく」考え方を啓発していく。
  • 生徒が中心となって授業を進めることを通して,「発表する生徒」像から「説明する生徒」像へと変わっていくよう促す。さらに,高い表現力,能動的な学習姿勢へとつなげる。

今後の課題

  • ・篠山市情報教育部会と市内小中学校との連携,適応指導教室との連携など,他校や他の機関との連携をどう進めていくか。
  • ・全教科で反転授業を試みる。反転授業の利点・効果,課題点などを洗い出す。
  • ・予習を中心とした学びと授業デザイン・授業の進め方について,多くの職員が共感できるようなモデル図をつくること。(→反転授業導入マニュアルへ)
  • ・動画などを自作し,著作権フリーの教材(学習コンテンツ)のアーカイブをつくる。

今後の計画

  • 篠山市教育委員会,各学校の理解を求め,「予習中心の授業の構築」「教材の共同開発,共有化のためのシステム作り」を推進していく。
  • 本校の取り組みをモデルケースとして,篠山市内中学校に広める。各教科部会,情報部会,篠山市教育委員会などと連携を深め,ネットワーク上で教材等の共同開発の場を設け,予習中心の学習スタイルを篠山市全体で推進できるように働きかける。
  • 「適応教室」「特別支援教育」など,他の機関との連携を探る。
  • 予習をすることが当たり前になる学習スタイルを確立していく。
  • 効率的な教材開発の方法を研究,開発する。
  • ICT機材を積極的に活用し,視覚効果の高い授業の創造をする。
  • 複数台のタブレットを使った授業について,効果的な授業の進め方(授業デザイン)の研究を進める。
  • 定期テストの各問における正答率を出し,授業改善につなげるデータとする。

1年間を振り返って、成果・感想・次年度への思い

  • 反転授業を成立させるためには,ICT活用授業のスキルが必要だと思う。反転授業とICT活用授業を上手く組み合わせると,おもしろいかも知れない。
  • 反転授業になじめた生徒の「学習意欲」はとても高い。しかも,「自主的に取り組む学習態度」が身についてくる。友達との「教え合い」も,とても積極的である。テストの得点が低くても,苦手な教科であっても,「授業はおもしろいし,よく分かる」との感想を持つ。成果がとても大きな授業の型だと思う。大きな課題は学習コンテンツである。動画を自作しない限りは著作権の問題がある。苦労のしがいはあるが,自作で動画を作成することはなかなかできない。丹南中学校では,学習コンテンツの共有化を図っている。学習コンテンツを蓄積し,アーカイブ化することをめざしている。さらに,発展させて,篠山市内中学校全体の共有学習コンテンツとしていきたい。自由に使用,改変できる学習素材がそろえば,反転学習は取り組みやすくなる。
アドバイザーコメント
大阪教育大学 大学院連合教職実践研究科 准教授 寺嶋 浩介 先生

丹南中学校が,特別研究指定を受けてからまもなく1年がたつ。同校の現在の課題は,校内の全員の教員が取り組めるかという点である。この課題に従って,多くの教科での取り組みが公開されてきた。2017年2月においては音楽科,美術科,保健体育科,技術家庭科における授業が公開された。多くの方が初めての取り組みであった。授業後,実施された先生方と話をしてみると,以下の様なことがわかってきた。
(1)先生方はまず,「授業におけるICT活用」のような効果を見出す。それを第一歩として,次に時間外活用を明確に意図した授業デザインの工夫に入っていくことが期待される。
(2)映像を利用するタイミングは,反転授業としては,その時間の事前学習として通常は視聴させるが,実際には前の時間や授業直前,授業中なども繰り返し見せたりすることもあり,多様に活用している。
(3)技術的な制作パターンとして,静止画,スライドの連続提示,動画などがあり,複合的に活用される方もいる。教科の特性や,制作者のスキルにもよるところがある。

 

(1)の話が特に重要だと思われる。実際には,反転授業と言われてもイメージがわきにくく,既存の授業にどのように位置づけるかを考えることになる。「反転授業」の実践には,ビデオの中身だけではなく,対面の授業をどうデザインするかという意識改革を必要とする。この段階に到達できるかが,同校の課題となる。
 一方,どの程度の授業を反転授業化するかということも考えなければいけない。教師および生徒の負担の両面から考えることが必要であり,難しい問題である。しかしこれを学校単位で明確化できれば,中学校ならではの新しいカリキュラムマネジメントの方法を提案できる可能性がある。

研究課題と成果目標

研究課題 反転授業を通した予習の習慣化とICTを活用したアクティブ・ラーニング
~予習習慣を身につけ,アクティブに授業に取り組み,思考力,判断力,表現力を磨く生徒の育成~
成果目標
  • 市内5中学校が共有できるシステムの運営開始。「予習動画」等の学習コンテンツの共有化と活用。
  • 「予習動画」などの学習コンテンツの蓄積(アーカイブ化)。
  • ICT活用授業から反転授業への移行。
  • 各教科で,「反転授業」を導入しやすい分野を絞る。(カリキュラムにどのように組み込めるかを検討する)
  • 全教師,全教科で反転授業の取り組みを行う。
  • 生徒が解説する,疑問点を出し合うなど,表現の機会を増やすことで,学習への達成感とやりがいを持たせ,学習意欲,言葉の力,思考力・判断力・表現力の向上に繋げる。
  • 生徒が中心となって活躍する授業デザインを構築し,主体的・能動的かつ協働的な授業を展開する。
  • 各班1台のタブレットを使って,生徒の多様な意見を引き出し,学習内容を深めながら,自分の意見を言う,他人の意見を聞く等の態度を養う。

本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応

本期間(4月~7月)の取り組み内容
  • ○篠山市内の5中学校で,学習コンテンツを共有できるシステムを構築する。学習コンテンツ(予習動画,予習プリントなど)を各中学校でアップロードできる準備を進める。

  • ○4月10日職員研修。主に新任教諭,転任教諭を対象に「反転授業の進め方」の研修。

  • ○動画作成の校内研修(5月22日)

  • ○6月14日。研究授業。音楽科,体育科,美術科,社会科,数学科で実施。

  • 参加した授業(学年)複数回答あり
    参加した講習会場
    参加による学び
  • ○7月12日。研究授業。英語科,理科,数学科で実施。

※アドバイザーの助言と助言への対応
  • ○研究の継続性が必要であり,職員の異動によって,途切れないようにするための工夫がいる。
  • ・4月中に職員研修を実施。「反転授業の進め方」および「予習動画の作り方」。
  • ・1学期に校内研究授業を実施。
  • ○各教科のどの部分で「反転授業」を実施するのか。「反転授業」をするねらいを明確にし,効果の高いと思われる分野・教材を絞り込む。「反転授業」をカリキュラムマネジメントに反映して,1年を通した見通しを持てるようにする。
  • ・校内教科部会を持ち,効果が高いと思われる分野を検討する。

    数学科・・・新しい概念を説明する部分や演習問題や発展的学習をする部分を予習することにより協同学習の場で多様な意見が出やすい。

    英語科・・・文法事項を予習することにより,会話練習の時間が十分とれる。

    社会科・・・外国の生活の様子,経済や政治の仕組みなどの予習をすることにより,教科書からは読み取りにくい背景を理解できる。表面的な知識ではなく,理解が深まる。

    理科 ・・・実験などの手順を予習することにより,すぐに実験がはじめられる。考察などの時間を十分に確保できる。

    技能教科・・知識の部分を予習することにより,すぐに実習には入れる。技能習得の時間に余裕がある。経験しながら知識を習得する時間的余裕が生まれる。

  • 「反転授業」を実施すると,授業は効率的になる。授業時間に余裕が生まれるので,実習や練習問題または生徒同士の意見交換に使う時間が多めにとれる。
  • ○他校との連携
  • ・教育委員会が中心となって,反転動画などの共有システムを構築。2学期から運用開始の予定。

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

本期間の裏話
  • 英語科
     文法事項を予習しておくと,授業は会話練習からスタートする。英語に馴染みにくい生徒もいる。しかし,「予習動画」を見ているため,会話練習にはスムーズには入れる。生徒のモチベーションも高く,積極的に活動するようになっている。
     「予習動画」は,蓄積されたものがある。それを活用することもできる。また,過去の動画を参考に新たに作成するときも,短時間で作成できる。
  • 数学科
    ・「反転動画」を授業中に活用し,ICT授業として使うこともできた。生徒は,家庭と学校で同じ動画を2回見るので,理解も良かった。また,すでにある動画を使ったので,授業の準備にも時間がかからなかった。
    ・「反転動画」をみてから,協働学習をするととても盛り上がる。生徒同士の教え合いが積極的になる。教師が知識をまとめる段階では,ほとんどの生徒が余裕を持って講義を聞くことができる。また,練習問題でも,生徒同士の教え合いが当たり前のようにおこなわれている。
  • 社会科
     「反転授業」は社会科で教える内容の背景を知っておくのに役立つ。例えば,「貿易」の言葉の意味を教えるのは簡単だが,「貿易」に関わる背景を知らないと本当の意味での理解はできない。今までは「貿易」に関わるいろいろな背景を生徒に教えていたため,かなりの時間が必要であった。しかし,「貿易」に関する10分程度のビデオをあらかじめ見ておくだけで,生徒の理解の程度が違う。生徒の学習意欲も高くなり,授業中に発展的な内容まで考えさせる時間的余裕が生まれた。
  • 美術
     作品製作においては,アイデアを出す段階でかなり時間が必要な生徒もいる。生徒によっては具体的製作になかなか取りかかれない場合もある。しかし,「反転動画」を見ていれば,作品に対するイメージがある程度できているため,すぐに製作に取りかかれる生徒が多い。
     鑑賞においても同様である。生徒は作品に対してあらかじめイメージができているため,いろいろな意見がよく出る。
  • 音楽
     リコーダーの音階を出すことからはじめて,簡単な楽曲を吹くところまでを50分でおこなった。生徒は「動画」を見ていたので,すぐに音階を正しく出すことができ,楽曲の練習時間が十分にとれ,全員がうまく曲を演奏できた。動画作成には,あまり時間がかかっていない。短時間で作った割に,授業での成果が大きかった。研究授業を見た他校の先生方から,「今回使った予習動画を自分の授業でも使いたい。予習動画が欲しい。また,他の教材でも『反転授業』を試してみたい」と高評価であった。
     生徒が最後まで集中力を保って授業を受けていたことが嬉しい。

成果

本期間の成果
  • 「反転授業」の進め方は,「生徒が予習をしていること」を活用すること。生徒が主体的に学ぶためには「生徒が予習したことを授業で発揮できる場があること」が必要である。
  • 「反転授業」そのものを研究したいわけではない。「生徒が主体的・能動的で深い学びができる授業」を研究したい。そのための有効な手段として「反転授業」を考えている。生徒が「予習」していれば,授業での理解度は良いだろうと想像できる。しかし,生徒の予習を前提にして,講義形式の授業を行ったのでは,本研究のねらいとずれてくる。研究当初は,「予習動画」を配信したが,授業は講義形式のままである授業も多かった。したがって,生徒から見れば「予習しなくてもかまわないのでは?」と思えるような授業になっていた。2年目に入って,少しずつ授業デザインそのものが変わってきた授業が増えた。(生徒が中心となって活動する授業への変化)
  • 音楽のリコーダーの授業では,音階をはじめて出すところから開始して,簡単な曲を演奏するまでを50分間で達成できたこと。2~3時限はかかる内容を1時限で学習できたこと。実技の時間を十分にとれたこと。生徒の学習意欲が高く,集中力が高かったこと。技能の修得が早かったことなど,反転授業ならではの成果が多くあったと思われる。また,他校の先生から「予習動画」を自分の学校でも使いたいとの希望もあった。授業を見て,「効果あり」との評価である。「同じような授業計画でやってみたい」「予習動画を使いたい」と思われるような授業ができたことは大変嬉しい。
  • 「反転授業の研究」のイメージでは,授業手法の研究で止まってしまいやすい。「生徒の活動を中心とする授業づくり」「生徒の活躍の場を与える授業づくり」の研究であると定義し直し,それを実現するための有効な手段として「反転授業」があるという方向性の方が職員の授業研究が深まる。

今後の課題

  • 予習動画を授業でも活用することは,生徒の理解を深める上で効果的である。しかし,このパターンを授業の中心に置くと,講義型の授業から脱却することが難しい。生徒の活動を中心とした授業づくり,生徒が自ら学ぼうとする意欲を持つような授業づくりへと変えていきたい。
  • 反転授業を何回か経験しないと,「予習したこと」を活かす授業づくりは難しい。はじめの頃は,ICT活用授業になりやすい。ICT活用授業から反転授業へと転化させていきたい。そのためには,教師の意識改革も必要である。しかし,動画などを活用したICT活用授業も効果的ではある。
    「反転授業」「ICT活用」「講義形式」のバランスの取り方を検討したい。
  • 「反転授業」をどの分野で活用すれば良いのか?少しずつイメージができてきたようである。もう少し明確になれば,カリキュラムマネジメントに組み込めるようになると思われる。
  • 生徒の自己表現の力は高まってきている。一方で,受け身のままの生徒もいる。その生徒へのアプローチをどうしていくか,検討が必要である。
  • 予習をしっかりしている生徒と予習しなかった生徒の授業での理解度や授業の参加の仕方に明確な違いが出てきている。この差をどう埋めるか。
  • 全ての生徒がホームページ上で動画を見られるわけではない。DVD配布などで対応しているが,DVDの準備などにかかる手間がなかなか辛いところである。
  • 年度が変わると,職員の1/3程度が異動で変わる。したがって,毎年度始めに,丹南中学校で進めている授業研究について新たにガイダンスが必要である。新しく来た先生は,「反転授業」をしなくても,従来の授業でとくに不便も感じていない。意識を変えるのに時間がかかる。各中学校でそれぞれテーマを持って授業研究をしているので,「反転授業」で足並みをそろえることには無理がある。

今後の計画

  • 篠山市中学校間での教材共有のためのシステム作りができた。教材をアップして市内5中学校で活用できるよう準備を進める。
  • 効率的な動画づくり,教材づくりの研究。
  • 既存の教材コンテンツ(丹南中学校自作のもの)の積極的な活用を検討する。
  • 道徳など,他の教科での活用を検討する。
  • 職員の異動があっても「反転授業」の取り組みがスムーズに継続できるようにしたい。そのためにも,市内5中学校で教材の相互利用を進めたい。
  • NHKデジタル教材など,他のコンテンツの活用の仕方を研究する。

気付き・学び

  • 教師による講義形式は,教師から生徒への一方通行の学び方になりやすい。生徒同士で教え合う形式は,生徒から生徒,教師から生徒,生徒から教師と学び方のルートが多い。実際に授業で実践してみると,生徒同士で教え合う形式の方が生徒の学びが深く,知識の定着も良かった。なにより,生徒の学びに対するモチベーションがとても高く。50分間飽きずに学習できる生徒が増えた。
    「講義形式」も授業の中では必ず必要である。しかし,教師が思うほど「講義」による授業の頻度は多くなくても良いと思う。
    思い切って,「生徒に任せてみる」。案外上手くいくような気もする。「講義形式」にこだわらない授業デザインをめざしたいものである
アドバイザーコメント
大阪教育大学 大学院連合教職実践研究科 准教授 寺嶋 浩介 先生

 特別研究指定校が必ず乗り越えないといけないハードルのひとつとして,教員の入れ替わりがある。一般研究校が単年度計画であるのに対し,特別研究指定校は2年間の助成であるためだ。7月に拝見した授業においては3名中2名が本年度加入してきた教員であったが,これまで取り組んだ教員のアドバイスを得たり,ともに教材を制作したりすることで,自分のものにしようとしていた。実技研修もあるかもしれないが,やはりそれだけではなく実際やってみることに越したことはない。このあたりのOJTとOff-JTの組み合わせを明確化できると面白い。

 

 一方で,継続して取り組んでいる教員のうち一部は,反転授業のための動画制作を焦点にするのではなく,その後の対面授業の改善に意識が向くようになってきている。以前から,事前学習部分に着目するだけではなく,その後の対面授業にあわせて事前学習を設計することを強調してきたが,少し次のステージに進んだように思われる。その次がカリキュラム改善,ということなると思うが,反転授業を通して,まずはアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善や単元を見通した授業設計につなげたい。

 

 いささか気になる点として,学校情報化診断システムによって出される同校の学校情報化が他の特別研究指定校と比較すると,伸び悩んでいる点にある。これによって,反転授業動画の授業内での再利用や,対面でのアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善を阻害することになりかねない。学校が努力するだけではなく,自治体の支援もお願いしたい。

 

今回学校に訪問し,以下の目標について提案し,今後それに向けて進めていくことで合意できた。

  • ・11月16日(公開研究会当日)に,対外的に反転授業について説明できるリーフレットを作成し,参観者に配布
  • ・それを本年度終了までに評価を得て修正
  • ・次年度冒頭にパナソニック教育財団のHPに公開
 

 報告書としてこれまでやってきたことをまとめることは,それはそれで意義があることであるが,やはりこうした成果物を通して,さらにわかりやすく示して普及につなげていくということが,特別研究指定校に課せられている使命のひとつではないかと私は思う。