本校は今年度から左の図のような研究内容で研修を進めている。本期間中は、ICT研修や理論研究を4,5月に行い、6月30日、官民一体型学校の授業公開だったので、全クラス、ICT利活用授業を行った。県外や遠くは東京からも参観いただき、研究協議では、ICT利活用や子どもたちの協働的学びについて貴重なご意見をいただいた。
武雄市立武内小学校
第44回特別研究指定校研究課題
~共感力・対話力・深化力の向上をめざして~
武雄市立武内小学校の研究課題に関する内容
都道府県 学校 | 佐賀県 武雄市立武内小学校 |
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アドバイザー | 新地 辰朗 宮崎大学 理事・副学長 |
研究テーマ | 協働的に問題を解決する力の向上を目指す学習指導の研究 ~共感力・対話力・深化力の向上をめざして~ |
目的 | ICT機器を活用し、話し合い、学び合って、協調的・創造的に問題解決ができる児童を育てる。 |
現状と課題 |
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学校情報化の現状 | 児童一人一台のタブレット端末 全教室に電子黒板 無線ランの整備 |
取り組み内容 |
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成果目標 |
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助成金の使途 | 電子ペン、パソコン用キーボード、タブレット学習用ソフト、ビデオカメラ、デジタルカメラ、講師旅費、先進校視察 |
研究代表者 | 橋本 澄子 |
研究指定期間 | 平成30年度~31年度 |
学校HP | http://cms.saga-ed.jp/hp/takeuchi-e/ |
公開研究会の予定 |
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本期間(4月~7月)の取り組み内容

◇ICT研修
本校は、長期休業中にICT研修を行っている。今年度は市内の教育支援システムが変わることで、4月20日(金)にスタディーノート10の使い方の研修を行った。協働的学びにつながる基本的な操作の仕方などについて研修を深めた。
◇アドバイザー来校・提案授業
4月18日に、宮崎大学大学院の新地先生とパナソニックの金村氏に御来校いただいた。指導教諭の橋本が提案授業6年生社会科「大昔のくらし」を行い、今年度の研究の大まかな授業の流れを全職員で確認することができた。この授業ではミライシードのムーブノートアプリを使い、縄文時代は豊かだったのか、貧しかったのかのどちらかを選び、理由をかきこませたあと、全体で討議した。全員の考えを共有することで考えを広げたり、深めたりすることができた。そのあと、新地先生と金村氏にこれからの特別指定校としての取り組み内容や、研究の方向性についてご指導いただいた。
◇理論研究 5月


今年度から、協働的学びの充実に向け「個の集団をつなげる教師の働きかけ」「個と集団をつなげるICT利活用」「特設タイムによる個の力の向上」を手立てとしていく。そこで、上記の「ICT利活用の目的・場面」「協働的な問題解決の姿レベル」を全職員で考え、共通理解し、授業づくりに取り組むことを確認した。
◇官民一体型公開授業
6月30日に213名(教職員・保護者・地域の方)の参加者をお迎えし、公開授業を行った。1時間目に2,4,6年生の公開授業、2時間目に1,3,5年生の公開授業・研究協議を行い、宮崎大学大学院教授 新地辰朗先生に「AI時代に向け、育むべき情報活用能力とは ~主体的・対話的で深い学びを通して~」をテーマに講話をしていただいた。
〈授業の様子〉
【1年1組 生活科「だいすき なつ」 綿島 満子 教諭】
1年生は生活科「だいすき なつ」の授業を公開した。夏らしい砂場での遊び方のアイディアを持ち寄り、グループで作る遊び場を話し合い、ホワイトボードにかいてみんなに知らせた。本当に夏らしさが工夫されているか全体で話し合うことができた。参観者の方からは、「導入で砂遊びの動画を見せたことは、授業への楽しみやわくわく感をもたせることにつながっていた。」と感想をいただいた。
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電子黒板で砂遊びの動画視聴
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子どもたちの「夏と言えば○○」
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考えをホワイトボードで発表中
【2年1組 道徳科「小さないのちを考える」 千々岩 宏幸 教諭】
2年生は道徳科「小さないのちを考える」の授業を公開した。展開の場面では、生きものを飼うかどうかについての理由をタブレットのタッチアナライザー機能を用い、話し合いを通してそれぞれの考えにどんな変容があったのか、どのように考えが深まったのか気付かせることができた。参観者の方からは「タッチアナライザーを使って、意見をグラフ化して見せるのは大変良かった」と感想をいただいた。
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事前アンケートの結果を提示
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タッチアナライザーで考えを選択
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タッチアナライザーの結果を共有
【3年1組 理科「ゴムや風で物を動かそう」 牟田 和子 教諭】
3年生は理科「ゴムや風で物を動かそう」の授業を公開した。ゴムを伸ばしたときの実験結果をバイシンクを使って集約しまとめる中で、新たな問題を見付け、もう一度みんなで考えることができた。参観者からは「タブレット操作にも慣れていて、それ以上に意欲的に実験に取り組んでいる姿がよかった」と感想をいただいた。
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どれくらい進み方が変わるのか実験
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結果から言えることを
タブレットへ記入 -
電子黒板で各グループの考えを発表
【4年1組 算数科スマイル学習 「垂直・平行と四角形」 峯 慎一郎 教諭】
4年生は算数科「垂直・平行と四角形」の授業を公開した。ペアで作成した四角形を説明するとともに、タブレットを使って電子黒板に送り、全体で説明したり、質問したりしながら、図形についての理解を深めることができた。参観者からは「子どもたちの理解を助けるために分かりすいプレゼンを用意されていたのがよかった」と感想をいただいた。
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作った四角形を意欲的に発表
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電子黒板で作った四角形を紹介
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紹介された四角形が何か話し合い
【5年1組 算数科スマイル学習「式と計算」 T1川久保涼子教諭 T2立石航教諭】
5年生は算数科「式と計算」の授業を公開した。子どもたちは家でのスマイル学習で、いちごが並んでいる図から、どんな数え方があるか、図や式を使って数パターンを考えてきていた。児童の考えからひき算を使った式をタブレットに電子黒板から再配付しグループで熱心に考えることができた。参観者からは「スマイル学習で予習して授業に臨むことで、45分で協働学習の場が有効に使われていた」と感想をいただいた。
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話し合ったことをタブレットに記入
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自分たちの考えを全体に説明
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担任が新たな考えを引き出す
【6年1組 理科スマイル学習「体のつくりとはたらき」 山口 史教諭 】
6年生は理科「体のつくりとはたらき」の授業を公開した。子どもたちはスマイル動画で食べ物は口→胃→小腸へ運ばれることを学習し、食べ物が体の中でどのように変化するかを考えた。さらに実験方法を動画で視聴させることでスムーズな実験となった。参観者からは「事前のスマイルとICTがうまく活用され、タブレットを囲みながら話し合い、深まりが見られた。」と感想をいただいた。
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動画視聴後のスムーズな実験
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予想を入力し電子黒板に送る
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各グループから送られた予想と比較
〈研究協議・講話〉
①本校の取り組み及び校内研究の説明 ②質疑応答 ③協議 ④講話の順で進めた。研究協議では「それぞれのICT利活用は授業のめあて達成につながっていたか」を中心に話し合われた。全体的な意見としては、本校の児童は一人一台ずつタブレットをもっているので、ICT機器の操作にも慣れ、上手に使えているので授業のめあて達成につながっているということだった。講話では新地辰朗先生に「AI時代に向け、育むべき情報活用能力とは ~主体的・対話的で深い学びを通して~」をテーマに近未来の最先端のお話や校内研究に関わる内容など分かりやすくお話をしていただいた。
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全体協議
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新地先生の講話
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講話を聞く参観者
アドバイザーの助言と助言への対応
本校アドバイザーの宮崎大学大学院教授である新地辰朗先生から本年度の取り組みにおいて、次の3点、助言をいただいた。
- ①「協働的な問題解決の姿レベル」から児童用のアンケートを作り、子どもたちに今自分がどのレベルにいるのか認識させることは、次のステップを目指そうという意識付けになる。
- ②「ふり返り」が学びの深化につながっていくので、「ふり返りのポイント」など学年に応じて考えておくことも必要である。
- ③他者に向けた発信など情報活用能力の育成のためにも、目的をもたせた上で、もっとタブレットを自由に使わせてみるのもよい。
今後は、「協働的な問題解決の姿レベル」の見直しや学年に応じたふり返りのポイント作成、また学習のツールとしてのタブレット活用を推し進めていく。
本期間の裏話
5月に武雄市の光回線拡張工事があり、子どもたちのタブレットをすべて初期化しないといけなくなった。6月30日の公開授業をひかえていた本校職員はその話を聞き、みんな冷や汗・・・ほとんどのクラスがタブレット使用を考えていたからだ。いつ工事が終わるのか?タブレットが初期化されたあとのインストールが間に合うのか?間に合ったとしても低学年は慣れさせていないと難しいし・・・などなど。毎年、公開授業をおこなっている本校ですが、こんなにハラハラする公開授業はありませんでした。ギリギリICT設備が間に合った状況にもかかわらず、職員そして子どもたちはよく頑張ったなと思います。ピンチをチャンスに変えた公開授業でした。
本期間の成果
教師が日々の指導の中で、協働的な学びを意識して、授業に位置づけていることです。授業におけるICTまたはホワイトボードなどのアナログを学年や授業の内容に合わせて、うまく活用できるようになってきました。また、子どもたちの学びの深化につながる「ふり返り」の意義を理解することで、1年生であっても少しずつ書けるようになってきました。
今後の課題
協働的解決場面で、自分の考えをもてず、友だちの意見を聞くだけの子がいるので、自分の考えを構築できる「かくスキル」を身に付けられるようにしなければならない。また、子どもたちが本気で解決したいと思えるような課題設定について研究を深める必要がある。
今後の計画
- 7/26(木) ICT職員研修(スタディーノート10)
- 9/5(水) 4年生研究授業(宮城県議会議員視察)
- 10/17(水) 5年生研究授業(新地先生、パナソニック教育財団来校)
- 10/31(水) 6年生研究授業
- 11/14(水) 3年生研究授業
- 11/20(火) 武雄市教育委員会訪問
- 11/28(水) 1年生研究授業
- 12/5(水) 2年生研究授業(新地先生、パナソニック教育財団来校)
気付き・学び
グループで協働学習を行う時の合い言葉として「寄せ合い、見せ合い、話し合い」が定着していけば、主体的に話し合う児童が増えると考える。大人の私たちも同じであるが、児童は、学びのインプットは得意だが、自分の考えをアウトプットする「かく」活動は、日常的に授業に取り入れることで、苦手意識が解消されていくのではないかと思う。プログラミング思考までには至らないが論理的に考え、課題を順序立てて解決できる児童を育成していくことを目指していきたい。
成果目標
- ・子どもたちが、ワクワクするような学習課題を設定し、学習意欲を高める。
- ・タブレットでの入力時間を縮めるためにICTスキルタイムにおいて、タッチペンの使い方(低学年)やキーボード入力(中・高学年)の練習時間を確保し、現段階よりも入力時間を縮める。
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- 宮崎大学 大学院教育学研究科 教授 新地 辰朗 先生
武内小学校は,第42回と第43回の一般助成校を経て,第44回特別研究指定校として採択されました。特に,第42回一般助成校の研究成果報告書は,佳作として表彰されるなど,教職員が一体となった研究推進体制が確立されているだけでなく,研究内容・活動の創意工夫や研究成果をわかりやすくまとめることのできる学校として期待されます。
実際に,授業検討会に参加させていただくと,研究主任など中心的な教師による構想や意見に留まることなく,研究主題に沿って,全ての参加者から児童の実態を踏まえた意欲的な意見が表明される姿が見られます。さらに,研究の歩みと成果を整理した研究収録が,毎年度,作成されています。
特別研究指定校としての今回の研究では,”協働的な問題解決に関わる力”について,「共感力」,「対話力」,そして「深化力」の3観点から,達成段階毎に児童の姿を整理することからスタートされました。これまでの,教師によるICT活用の工夫,個と集団をつなげる手立てに関わる研究を礎にしながら,学習内容の習得はもちろん,学ぶ力を高める学習指導についての追究に進むことになります。
当面は,学校で作成された”ICT利活用の目的・場面(参考:学校による活動報告書中の表)”や”協働的な問題解決の姿・レベル(同)”をもとに,子どもたちの反応や変容を把握・評価する方法について検討を深める必要があるように思います。子どもの変容を把握しながらの,学習指導方法に関わる実践研究は,教師の専門性を生かしながら望ましい学習過程の実現を目指す他校にとって,参考になるものと思われます。
また,中期的には,”協働的な問題解決の姿・レベル”に対する,授業終盤で求める”ふり返り”の位置付け,”協働的な問題解決に関わる力”の資質・能力としての捉え方の整理が期待されるように思います。
本期間(8月~12月)の取り組み内容
◇全校子ども会議(情報の主体的な表現・処理)

8月27日の全校子ども会議

日曜参観に親子で情報モラル教育
児童の情報活用能力育成と関連づけて、電子メディアとの付き合い方について全校児童にアンケートをとった。その後、5,6年生がアンケート結果を基に子ども会議を2回行った。1回目は電子メディアの良いところ・悪いところについて,2回目はこれからの自分の実践について子ども会議を行った。会議の結果を全校児童に知らせ、スマホ・タブレット・ゲームなどの電子メディアを賢く使うことを全員で取り組んでいくことを呼びかけた。子ども会議を通し、情報モラルを含めた情報に対する主体的な収集・判断・表現・処理の方法について考える事ができた。
9月26日の授業参観日には、保護者対象に6年生の代表が武雄市子ども会議の報告を行い、さらに11月11日、「ICTとの上手な付き合い方」というテーマで、ITサポート佐賀代表の陣内氏を講師に招き、親子情報モラル教育を実施した。
◇理論研修 10月
- 共感力・対話力・深化力を高めるための手立てについて話し合い、指導案にも明記していくことを確認する。
- 子どもたちの共感力・対話力・深化力の高まりをどのように評価していくのか、また子どもたちにもっと共感力・対話力・深化力を意識させるための方法について話し合う。
- 教職員評価シートの項目について検討する。
◇研究授業の実践
研究授業実践を通して、共感力・対話力・深化力を高める手段として、思考の揺さぶり発問・思考の往還やICT利活用などの研究を行った。
【4年1組 道徳科「大きな絵はがき」峯慎一郎 教諭】9月
4年生の道徳科の研究授業では、学級全員の判断結果を視覚化し、共有化させるために、タブレット~電子黒板によるタッチアナライザー機能を使用した。瞬時に結果がグラフ化されどちらの考えが多いのかが分かり児童の思考を揺さぶることができた。さらに、教師は、どの児童がどちらを選んでいるかが分かるので、指名して理由を問うことで、意見の相違点や類似点に目を向かせることができた。児童は、友だちの考えや言いたいことを理解しながら話し合おうとしていたり、友だちの考えと同じ所や違う所を比べながら話を聞いたり話したりする姿が見られ、共感力・対話力を高めるのに効果的であった。

電子黒板での挿絵提示

グループでの話し合い

タッチアナライザーでの結果表示
【5年1組 社会科「わたしたちの食生活と食料生産」 川久保 涼子教諭】10月
5年生の社会科の研究授業では、タッチアナライザー機能の効果を確認することができた。また、消費者の立場になって考えるための支援として、保護者や栄養教諭による動画インタビューを見せた。身近な人の生の声を聞くことで消費者としての立場のより深い理解につながった。「振り返りのポイント」を提示することで、学習の過程を振り返りながら分かったことをまとめることができた児童が増え、深化力を高める手立てとして有効なことが分かった。

タッチアナライザーでの結果表示

グループでの話し合い

インタビュー動画
【3年1組 理科「ものの重さをしらべよう」 牟田 和子教諭】11月
3年生の研究授業では、実験の予想の段階で、学級全員の判断結果を視覚化し、共有化させるために、タブレット~電子黒板によるタッチアナライザー機能を使用した。また、実験結果からいえることをグループでまとめ、エクスチェンジボードを使って全体で共有することで、意見の相違点や類似点に目を向かせることができた。児童は、友だちの考えや言いたいことを理解しながら話し合おうとしていたり、友だちの考えと同じ所や違う所を比べながら話を聞いたり話したりする姿が見られ、共感力・対話力を高めるのに効果的であった。また、深化力の向上を見取るためのふり返りのポイントの提示の工夫(いくつかのポイントから指示する)について協議することができた。

タッチアナライザーで予想表示

粘土の形を変えて実験

結果から分かったことを書く
【1年1組 国語 くらべて読もう「自動車くらべ」 綿島 満子教諭】11月
1年生の国語科の研究授業では、はじめに電子教科書の動画を活用したことで、本時のめあて達成の学習意欲を高めることができた。協働的な学びの場である「友だちタイム」においてはグループでの話し合いでホワイトボードを活用し、児童は友だちの考えや言いたいことを理解しながら話し合おうとする姿が見られ、共感力・対話力を高めるのに効果的であった。

はしご車の無声動画視聴

寄せ合い見せ合い話し合い

意見をホワイトボードに書く
【2年1組 体育科めざせピョンピョン名人!とびばこあそび 千々岩宏幸教諭】12月
2年生の体育科の研究授業では、児童がお互いに共感しながら対話活動ができるようにするために「体育のふわふわ言葉(がんばれ・あと少し・上手等)」を設定し、児童は積極的に使っていた。友だちタイムにおいては技が上手な友だちの動画から、手をつく位置などうまくなるポイントを見つけ出し、自分の練習に生かしていくというICTの効果的な活用が提案された。

動画の一時停止のよさを確認

話し合ったことをタブレットに記入

エクスチェンジボードで交流
【6年1組 理科 てこのはたらき 山口 史教諭】12月
6年生の理科の研究授業では、スマイル学習(武雄式反転授業)で前日に家で支点・力点・作用点の意味を学び、本時では、グループごとに、いろいろな道具をさわって、支点・力点・作用点を確かめたり、調べたりした。調べるときのツールとして、タブレットの動画を使用しているグループもあり、話し合いが活性化し協働で課題を解決できていた。

グループで実物を使って調べる

タブレットの動画活用

電子黒板に3点を示し説明
◇10月22日~26日 ICTスキルタイム週間
- 1年生 タブレットでカメラ撮影後、クイズ作り
- 2,3,4年生 スタディノート10を活用(タッチアナライザー・エクスチェンジボード)
- 5,6年生 キーボード入力練習 無料タイピング教材「マナビジョン」活用

1年生 何て書いたでしょう

2,3,4年言葉つくり

5,6年生 キーボード入力
◇ICT職員研修
- 夏休みにスタディノート10を使い、共感力・対話力・深化力を高めるための、効果的なタブレットや電子黒板の活用方法について研修を行った。
- 11月にラインズより講師を招き、授業で使えるeライブラリーの研修を行った。
アドバイザーの助言と助言への対応
- 研究授業で、副題「~共感力・対話力・深化力の向上を目指して~」について協議できるように計画する必要あり。そのためには、3つの力について授業と関連させる必要がある。ぜひ「研究題目」やキーワードで協議されるのを期待する。
- 「協働的に問題を解決する力」と「共感力・対話力・深化力」と「情報活用能力」との関係を明確にすること
- 単元全体を通して「共感力・対話力・深化力」を高めると考えれば、単元のはじめでは共感力を、中では対話力を、終わりでは深化力を重点的に指導するという方法も考えられるのではないか。
上記の助言に対しては、次のように対応した。 - 研究授業において、共感力・対話力・深化力をどのようにつけさせるのか、指導案に明記し、事後研究会の協議の柱を変更した。
- 「協働的に問題を解決する力」と「共感力・対話力・深化力」と「情報活用能力」との関係については再検討を行い、助言を仰ぐ予定である。
- 今年度の研究授業は、1時間の授業の中で共感力・対話力・深化力をつけさせることを前提に行ってきたが、来年度は教科によっては、単元全体を見通し、3つの力を付けさせていく授業もあっていいのではないかと共通理解した。
本期間の裏話
- 本校では共感力を「相手の考えに寄り添い、受け止める力」と定義している。2年生が体育の研究授業をするにあたって、担任が体育的技能を伸ばしつつ、共感力を高めるための手立てとして「体育科におけるふわふわ言葉」を授業に位置づけた。簡単に言うと、友だちを励ます言葉である。あえて「体育科におけるふわふわ言葉」として授業に位置づけたことで友だちに寄り添い、チーム力を高めることができていた。これ以来、体育などの技能教科においても、道徳で学んだふわふわ言葉が共感力に有効ではないかという認識をもつことができた。共感力を高める手立てに対する職員の視野が広がったように思う。動画の停止の効果を子どもたちに見付けさせるなどICTの効果的な活用に目を向けるように工夫されていた。
- 本校はタブレットが導入され、5年目になる。これまではスマイル学習や授業で使う場合は教師の指示の後に使用することが多かった。今年度は授業中の調べ学習を中心に高学年の子どもたちが主体的にタブレットを使っていこうとする姿が見られ、タブレットが学習ツールとしての役目を広げている。
本期間の成果
◇研究授業の実践を通して
- 9月から12月までに6本の研究授業を行った。共感力・対話力を高めるための、タブレットと電子黒板によるタッチアナライザー機能の活用実践等ICT利活用授業に取り組んだ。ほとんどのクラスが学級全員の判断結果を視覚化し、共有化させるために、タブレット~電子黒板によるタッチアナライザー機能を使用した。瞬時に結果がグラフ化されどちらの考えが多いのかが分かり児童の思考を揺さぶることができた。さらに、教師は、どの児童がどちらを選んでいるかが分かるので、指名して理由を問うことで、意見の相違点や類似点に目を向かせることができた。児童は、友だちの考えや言いたいことを理解しながら話し合おうとしていたり、友だちの考えと同じ所や違う所を比べながら話を聞いたり話したりする姿が見られ、共感力・対話力を高めるのに効果的であった。
- 研究授業実践を通して、「振り返りのポイント」を提示することで、学習の過程を振り返りながら分かったことをまとめることができた児童が増え、深化力を高める手立てとして有効なことが分かった。低・中・高学年の段階ごとのふり返りのポイントについて研究していく方向性を見いだすことができた。
◇アンケート結果より
- 作成した「協働的な問題解決の姿レベル表5段階」【共感力・対話力・深化力】をもとに現在の実態把握のためアンケートを行った。6年間を通しての目指す姿を設定したので、1~3年生はレベル3まで、4~6年生まではレベル1からレベル5までで自己評価をさせた。各学年のクラスの平均値を表に示し、児童が今、自分はどのレベルなのかを認識することができ、どのレベルを目標とするのか意識させることができた。児童だけでなく教員も目指す子ども像が明確になった。

1,2,3年生用レベル表(教室掲示)

4,5,6年生用レベル表(教室掲示)
- 6月と12月の児童アンケート結果は次の通りである。






どの学年も6月よりも共感力・対話力・深化力において、平均0.3ポイントから1ポイントの上昇が見られ、子どもたち自身がそれぞれの力の向上を実感していることが分かった。
◇教職員評価シート
- 研究授業では、教職員評価シートを活用し、共感力・対話力・深化力の充実をねらった指導の工夫を評価項目にあげたことで、指導の工夫が求める児童の姿につながっていたかを観点に沿って評価できた。

◇ICTスキルタイム
- ICTスキルタイム週間では、各学年の実態に合わせ次のように行い成果が見られた。
1年生は、ひらがな、カタカナ、漢字を白紙に書き、写真撮影を行い、それを反転させ鏡文字にし、「これは何でしょう」クイズを行った。子どもたちは、クイズを楽しみながら、カメラ撮影・編集機能のスキルを身に付けた。
2、3、4年生はそれぞれの学年にあった内容でタッチアナライザーやエクスチェンジボードなどを使い、タブレット操作の新たな機能の習得ができた。
5,6年生は、ベネッセの「マナビジョン」を使って、キーボードのホームポジションやローマ字入力の練習を行った。はじめてキーボードでタイピングを経験する子が5,6年生全体で3分の1おり、タイピングへの興味関心をもたせるきっかけになった。
今後の課題
- 本研究と情報活用能力との関係性をより明確にする必要がある。
- 共感力を高めるために、現在、問題との出合わせ方や「体育科におけるふわふわ言葉」等を工夫しているが、その他にもどのような手立てがあるか。
- 深化力を高めるために、現在ふり返りのポイントの提示について研究しているが、学年や教科による特性の有無、どのような視点が有効か整理していく必要がある。
今後の計画
- 1月16日 研究集録提案・執筆作業
- 1月30日 年間反省・次年度構想(新地先生来校)
- 2月4日~2月8日 ICTスキルタイム週間
気付き・学び
研究授業の中で動画を使用された際、より明確に場面を凝視するために、停止ボタンを押すことで理解が進んでいた。大人にとっては何気ない動作であるが、低学年の子どもたちには1つのICTスキル習得になっているのではないかと気づかされた。
成果目標
- 協働的な問題解決の姿アンケート(2月)のそれぞれの項目で、全学年の平均値が初回の値より0.5ポイント上回る。
- 評価方法としては、1月末に協働的な問題解決の姿アンケートを全児童に行い、当初の値と比べる。
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- 宮崎大学 理事・副学長 新地 辰朗 先生
この期間での取り組みの特色は,“協働的な問題解決に関わる力”を育てるうえで,本校が着目した「共感力」,「対話力」,そして「深化力」の3観点を意識した授業研究に進んだことです。3観点は,本校のこれまでの教育実践における特色や課題を踏まえて焦点化されたものですが,1~3年生用には3段階に,4~6年生には5段階に,目指す子どもの姿を文章で表すことで,教師間に限らず,児童と教師の間でも,協働的問題解決に向けての目標や進捗を共有できるようになりました。
活動報告の中に写真で示されているように,段階表の教室内での掲示は,子どもたちに学びの見通しを持たせる効果につながるように思います。また,授業研究でも,3観点について協議がみられるようになり,活動報告の中には,以下のような記述が見られます。
- 児童は、友だちの考えや言いたいことを理解しながら話し合おうとしていたり、友だちの考えと同じ所や違う所を比べながら話を聞いたり話したりする姿が見られ、「共感力」・「対話力」を高めるのに効果的であった。
- “振り返りのポイント”を提示することで、学習の過程を振り返りながら分かったことをまとめることができた児童が増え、「深化力」を高める手立てとして有効なことが分かった。
- 「深化力」の向上を見取るためのふり返りのポイントの提示の工夫について協議することができた。
- 協働的な学びの場である“友だちタイム”においてはグループでの話し合いでホワイトボードを活用し、児童は友だちの考えや言いたいことを理解しながら話し合おうとする姿が見られ、「共感力」・「対話力」を高めるのに効果的であった。
さらに,6月と12月に実施したアンケート結果から,各学年毎に3観点について定量的に教育実践の効果の変容を把握しています。また,研究授業で参観した教員が利用する“授業評価シート”でも,3観点について言及されており,児童による自己評価と教師による授業分析の両者から,指導法の改善のポイントや学校全体で傾注すべき方向性が定まるように思います。
今後,“協働的な問題解決に関わる力”の育成に関連すると思われる情報活用能力を主とした資質・能力にも着目し,ICTスキルタイムや全校子ども会議等と授業でのICT活用との関係を整理できると,本校の特色をカリキュラム・マネジメントとして説明できる可能性もあるように思います。引き続き,実践研究による効果を確認しながら,本校の特色ある教育実践を深めていただきたいと思います。