榛東村立榛東中学校

第47回特別研究指定校

研究課題

子どもの学びに学ぶ授業研究の創造
~対話を通して多様で個性的な考えを見いだす生徒の育成を目指して~

2021年度04-07月期(最新活動報告)

最新活動報告
①榛東中学校スタンダード「5つの視点」に基づいた授業実践......

アドバイザーコメント

木原 俊行 先生
令和3,4年度,榛東村立榛東中学校(以下,榛東中学校)は......

榛東村立榛東中学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 群馬県 榛東村立榛東中学校
アドバイザー 木原 俊行 大阪教育大学 教授
研究テーマ 子どもの学びに学ぶ授業研究の創造
~対話を通して多様で個性的な考えを見いだす生徒の育成を目指して~
目的
  • ○他者との関わりから、多様で個性的な考えを見いだす生徒の育成。
  • ○ICT技術を活用し、生徒の具体的な姿から生徒の学びを分析する授業研究への転換。
  • ○生徒の記録(発話・表情・記述等)を活用した授業研究から授業改善に繋げるサイクルの構築。
現状と課題
  • ○全教員が教科を超えて、代表授業者の授業作りから授業後の授業研究会に関わり、授業づくりについて学んでいる。しかし、その学びを違う教科・単元で生かし切れていない現状である。
  • ○昨年度は、1単位時間の生徒の発話記録・表情・記述などから生徒の学びの姿を捉えてきた。研究を進める上で、単元を通して身につけた資質・能力をどう活用しているのか検証していく必要性を感じている。
学校情報化の現状 生徒用タブレット全生徒分、各教室には65インチ大型モニターを配備。また、令和2年度には校内無線LAN環境を強化し、日常的に授業でタブレットを活用している。併せて、授業研究会を含む諸会議でタブレットを活用している。
取り組み内容
  • ○本校独自の学びのスタンダードを基に、一人1台タブレットを利活用した対話を位置づける。(単元構想)
  • ○ICT機器を活用して授業を検証し、授業改善の方向を見いだす。
  • ○発話記録と映像(表情)を繋げた資料を作成し、授業研究で活用する。
  • ○生徒の学びの事実を捉えたことから授業デザインのポイントを見いだす。
成果目標
  • ○全職員参加の代表授業と授業研究会を2年に5回行う。
  • ○教員がICT機器を活用して、生徒の学びの姿に基づく検証を行う授業研究会の方法を確立する。
  • ○全県に向け研究の内容を継続して公開し、一人1台タブレットを利活用した対話的な学びを授業実践するモデル校となる。
    →生徒の学びの姿から授業を検証し、改善する授業研究サイクルが構築される。
助成金の使途 webカメラ、カメラスイッチャー、HDビデオカメラ、AI話者認識webカメラ、ICT先進地区夏期研修費、講師謝金他
研究代表者 足達 哲也
研究指定期間 2021年度~2022年度
学校HP http://www.shinto.ed.jp/jh/
公開研究会の予定 10/27(水)・1/18(火) 県指定事業ICT活用促進プロジェクト公開授業

本期間(4月~7月)の取り組み内容

①榛東中学校スタンダード「5つの視点」に基づいた授業実践

  • ・一人1台タブレットを利活用した授業実践
  • ・対話的・協働的な学びを取り入れた授業実践
  • ・5月28日(金)代表授業、授業研究会
  • ・6月8日(火)公開授業、授業研究会

【タブレットと対話を取り入れた授業の様子】

②授業改革委員会(研修推進メンバー)にて、研究内容や授業の検討・分析等

  • ・発話記録や生徒の姿(表情やうなずき)を分析(昨年度の実践について)
  • ・指導案検討(5月28日、6月8日の実践に向けて)
  • ・授業研究会の在り方の検討
  • ・授業実践の振り返り(成果と課題)
  • ・榛東中スタンダード「5つの視点」振り返りシートの見直し、改善

【生徒の発話記録を分析する様子】

③生徒の姿から生徒の学びを分析する授業研究会(5月28日、6月8日)

  • ・360度webカメラによる生徒の表情・動作・つぶやき・発話の記録、AI音声認識スピーカーによる録音、4方向同時録画カメラによる授業の様子の記録、発話記録(教員が文字化したもの)、生徒の振り返りの内容、タブレットやワークシートへの記載内容の分析、検証

【発話記録をもとに話し合う様子】
見る生徒(グループ)の担当を決めておき、1単位時間、そのグループの生徒を見取る。

【発話記録から対話の流れを分析】

④授業研究会での学びを新たな授業研究サイクルへ

    • ・1回目の代表授業、授業研究会での成果と課題をもとに、2回目の公開授業、授業研究会に生かす
    • ・2回の授業、授業研究会での省察(全教員が各々書いたもの)をもとに話し合い、自分の授業に生かす

【本校の授業研究サイクルのイメージ】

アドバイザーの助言と助言への対応

①「5つの視点」振り返りシートについて

学校として共通のものがあってよいが、教科によって、内容によって幅をもたせた方がよい。また、単元レベルでも「5つの視点」を考えていく必要がある。

⇒現在、授業改革員会で検討中である。やはり単元構想の段階で、ICTや対話を有効に取り入れるためにはどうしたらよいのか、そのためには1単位時間の授業をどうデザインするのかが重要である。そして、なによりも生徒の思考が単元の中でも1単位時間の中でもつながっていなければならない。今後も、この榛東中スタンダードの「5つの視点」を見直し、改善し、教員一人一人の柱になるようなものにしていきたい。

②授業記録・対話の記録について

授業の記録、対話の記録に何が映っているかが重要である。生徒の発言や表情がはっきりと記録できていないところがあるため、機器の検討や録音・録画方法を検討する必要がある。

⇒話合い活動をする際には、感染対策のため「飛沫防止パネル」を使い、10分間という制約の中で行っている。このパネルがあると、どうしても音声を拾うことが難しい。そのため、今後は感染対策をしながら対話の様子がしっかりと記録できるように物品を検討したり、実際に授業の中で活用しながら360度webカメラ・AI音声認識スピーカーの使い方について改善を図ったりしていく。

③授業研究会の在り方について

授業研究会で学びを自分の授業に戻していく具体的な仕組みを作っていく必要がある。

⇒教員一人一人が授業や授業研究会で学んだことを振り返り(省察)、記録に残す。それをテキストマイニング等により、気づきとしてどんな言葉が増えてきたのか分析を行う。また、その情報を一般化するために授業改革委員会で話し合い、教科部会で自分たちの教科に落とし込めるようにしていく。

本期間の裏話

 昨年度もパナソニック教育財団の研究助成を受けながら研究をさせていただいたことで、多くの学びを得ることができた。さらに、今年度は特別研究指定校に選ばれたことで、また自分たちの授業研究をレベルアップすることができそうで大変ありがたく思っている。

 本校では「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて、平成29年度から、授業研究に教科の枠を超えて全教員で取り組んでいる。昨年度も、ICT機器を用いテキスト化した生徒の発話を具体的に捉えて、生徒の学びの事実から分析する授業研究を行ってきたが、発話の分析が不十分であった。また、話合い活動後も授業は続いているのだが、生徒の学びの姿を捉える場面を対話部分に焦点化しすぎていたため、まとめの部分で生徒がどのように思考を巡らせて考えをもったのかまで見取ることができていなかった。その反省を生かし、今年度は「話の流れを捉えること」「生徒の表情やうなずきにも着目すること」「話合い活動からまとめへのつながりを見ること」に重点を置いた。すると、「AさんはBさんの、この発言から考えが変わった」「全員の考えはバラバラだったはずなのに、ここから考えがまとまってきた」などと授業を見ながら生徒の思考を分析できるようになってきた。また、授業研究会でもファシリテータを中心に議論の質に変容がみられている。その中でも印象的なのが、どの班でも「Cさんが〇〇と発言したら…」「Dさんはずっと黙っていたんですけど、振り返りには…」などと生徒の学びの事実をもとに、自分の意見を述べているところだ。経験則を語るのではなく、本校が目指している「子どもの学びに学ぶ授業研究」が少しずつではあるが実践できていると感じた。

本期間の成果

①榛東中学校スタンダード「5つの視点」に基づいた授業実践

 数年来この取り組みは行ってきており、今年度の課題として1単位時間の中でのICT活用や対話の位置づけを考えるのではなく、単元全体をより意識して位置づけを考える必要があることを共有し、1単位時間の授業づくりに臨むこととした。また、指導案の形式も以下のような「授業デザインシート」に変更し、生徒の意識を中心において、学習活動や発問、手立て・関わりを考えられるようにした。

【本校の授業研究サイクルのイメージ】

②話合い活動中の教員の関わり方

 話合い活動の様子を見ていると、どの班でも沈黙が起こることが多い。沈黙しているグループを見つけるとどうしても手を出したくなってしまうが、「じっくりと考えているので見守らなければならない」場合と「わからないので支援しなければならない」場合とがあることに気づいた。生徒の思考を促すか、止めてしまうかは教員の見取りが非常に大切であることがわかった。今回の授業研究会を通して、教員がグループの話合いにどう関わるべきなのかという視点をもつことができた。

③学び合い(話合い活動)からまとめへの生徒の思考の可視化

 今回の授業では、話合い活動を行ったあと何人かの生徒に自分の考えを発表させた。発表できたのは、数人であり発表しなかった生徒の考えは全体に共有されることはなかった。ICTを活用しているため他の生徒の考えは見られるが、それでは学び合いの内容や発言が生かされたまとめとは言い難い。ICTのメリット・デメリットを考え、まとめの場面では、めあてと対になるまとめを全体で共有すべきであることを再確認した。

【授業研究会での意見を参考に、自分の考えを付箋に書いて可視化し全員の考えを共有】

④授業研究会の内容

 今回は、全教員が1つの授業を参観して授業研究会を行った。そのため、全員が同じ問題意識をもって協議することができた。どの班も、生徒の具体的な学びの姿から担当したグループの対話の様子を分析し、生徒の学びがどうであったのかを検証することができた。

【生徒の姿を分析し、協議する様子】

【班での協議内容を全教員で共有する様子】

今後の課題

  1. ①榛東中スタンダード「5つの視点」の見直し、改善
  2. ②単元レベルでの「5つの視点」をもった授業デザイン
  3. ③授業記録・発話記録等の質のレベルアップ
  4. ④授業研究会の在り方(時間や内容など)

今後の計画

随時

  • ・授業改革委員会、教科部会(隔週)

10月

  • ・教育事務所要請訪問(13日)
  • ・県指定事業ICT活用促進プロジェクト公開授業(27日)

1月

  • ・県指定事業ICT活用促進プロジェクト公開授業(18日)

気付き・学び

 AI音声認識スピーカーや360度webカメラなどの活用により、生徒の学びが教科の資質・能力の獲得につながったかを捉えることができた。この授業研究により、教師の意図と生徒の学びは必ずしも一致しないこと、生徒の学びに授業デザインのヒントがあること、対話から学ぶ力は誰にでもあることがわかってきた。

成果目標

  • ・教科・単元に合った「5つの視点」に基づく授業デザインづくりを全教員ができるようになる。
  • ・発話記録だけでなく、生徒の微妙な表情の変化やつぶやき、うなずきなどを捉えながら授業を検証できるようになる。
  • ・授業研究会での学びを積み重ね、共有し、個々の授業改善に生かす仕組みを作り、全教員の授業力向上を図る。
  • ・研究の成果や課題を他校に紹介し、活用してもらえるようになる。
アドバイザーコメント
木原 俊行 先生
大阪教育大学
教授 木原 俊行 先生

 令和3,4年度,榛東村立榛東中学校(以下,榛東中学校)は,パナソニック教育財団の実践研究助成の特別研究指定校として,実践研究を推進することとなった。同校は,令和元年度には,群馬県で初めて日本教育工学協会から学校情報化優良校に認定されている。また,令和2年度は,パナソニック教育財団の実践研究助成の一般校として,「生徒同士の学び合いによる協働的な問題解決力の育成」という研究テーマの下,子どもたちの「学び合い」の質的向上を図った。同時に,群馬県教育委員会からICT 機器活用に関する共同研究校にも指定されている。こうした取り組みに基づく十分な準備の下,榛東中学校は,令和3年4月,特別研究指定校としての研究を開始した。それが順調なスタートであることを,以下の3点で確認できる。

 まず,教科担任制の指導体制を採る中学校において,授業づくりのスタンダード「5つの視点」を作成し,運用している点である。筆者は,4月と6月,榛東中学校の先生方とテレビ会議システムを通じてやりとりしたが,「5つの視点」が「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた,教員間の共通の羅針盤になっていることがよく分かった。もちろん,学校の活動報告に記されているように,このツールとその運用にも課題はある。それでもなお,その改善に向けた意識も含めて,「5つの視点」は,榛東中学校の実践研究の基盤となっている。

 多様な授業記録の作成と活用は,榛東中学校の特別研究指定校としての研究課題「子どもの学びに学ぶ授業研究の創造」の主柱を成す。360度カメラ,AI音声認識スピーカー等のテクノロジーによる記録,抽出グループ(生徒)に接近して教員が自らの手で残した記録等を複合的に活用して,榛東中学校の先生方は,「話し合い活動中の教員の関わり方」「学び合い(話合い活動)からまとめへの生徒の思考」などについて,ていねいに検討している。

 授業研究会のサイクルも,榛東中学校の先生方の実践研究推進上の工夫点として注目したいことである。授業研究会の内容や方法を改善することは,子どもたちの「学び合い」の充実を図る榛東中学校の先生方自身が「深い学び」を標榜し,実践していることを意味する。学校における授業研究は,一定の方式が絶対視され,形骸化しがちである。それを持続的に発展させようとする,榛東中学校の先生方の姿勢は尊い。アドバイザーとして筆者は,今後,そのいっそうの充実を支え促したいと考える。