京都府立嵯峨野高等学校

第46回特別研究指定校

研究課題

思考力・判断力・表現力の伸張を目的とした、ブレンド型学習を導入したSDGs に資する教育カリキュラムの研究開発
~日英両言語におけるリサーチスキル、プレゼンスキル、ライティングスキルの育成とその指導方法の校内での普及~

2021年度04-07月期(最新活動報告)

最新活動報告
1 特別研究指定校第4回会議(Zoom)......

アドバイザーコメント

岸 磨貴子 先生
嵯峨野高等学校では、「嵯峨野高校SDGsグローバルリーダーシップイニシアティブ......

京都府立嵯峨野高等学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 京都府 京都府立嵯峨野高等学校
アドバイザー 岸 磨貴子 明治大学 准教授
研究テーマ 思考力・判断力・表現力の伸張を目的とした、ブレンド型学習を導入したSDGs に資する教育カリキュラムの研究開発
~日英両言語におけるリサーチスキル、プレゼンスキル、ライティングスキルの育成とその指導方法の校内での普及~
目的
  1. SGHとして本校が研究開発を終了した総合教育プログラムにおいて、ICTの活用を一層校内に広め促進する。
  2. ブレンド型学習を導入し、日英両言語におけるリサーチスキル、プレゼンスキル、ライティングスキルを伸張する指導方法、カリキュラムの研究開発を行う。
  3. ICT活用法について研修すると共に校内への普及を行う。また、組織とその効果的な運営、定着と発展についても実践研究を行う。
現状と課題 <現状>
  1. 平成26年度から5年間、SGH指定校としてカリキュラム開発した実績がある。
  2. 平成26年度からユネスコスクールの指定を受けている。
  3. 平成24年度からSSH指定校である。
    ⇒ノウハウを本助成研究に活かして、学校全体の教育力を高めたい。
<課題>
  • ICT環境が理想的ではない
学校情報化の現状 教室には電子黒板は設置されていない。合計約160台のICT機器を装備しているが、これは約6人に1台の割合である。
取り組み内容
  1. 外国語の授業
    リサーチプロジェクトでデジタル技術やネット環境及びリサーチスキルを活用し研究を進め、協働スライド編集機能を使ったプレゼンを作成し、スライド等で発表し質疑応答する。
  2. 情報と科学(1年生全員)
    SDGsにかかるミニ課題研究プレゼン発表大会を実施する。
  3. 総合的な探究の時間(2年生240名)
    課題研究を行い、体育館で全生徒が日本語ポスター発表する。リサーチの内容やまとめ方及び、発表・質疑応答のパフォーマンスを評価する。
  4. 課題錬成(3年生240名)
    2年次の総合的な探究の時間の課題研究の成果を英語で発表・質疑応答する。
成果目標 <成果目標>
  1. パフォーマンスについては、ルーブリック評価を行う。
  2. リサーチスキルやICT活用等については、リッカート尺度を用いたアンケート調査による定量的評価と自由記述等による定性的評価を行う。
<取り組み後の状況>
  1. 1年次1月シンガポール研修のグループ発表(日本紹介)や3年次6月英語による課題研究発表会において自ら満足のいく英語発表と質疑応答ができる。
  2. 2年次2月課題研究発表会にてリサーチスキル、主張を論理的にまとめる力、質疑応答力の伸長を感じ成長自らを感じられる。
    将来グローバル人材として活躍する。
助成金の使途 Chromebook、旅費、研究成果報告書パンフレット(カラー印刷費)他
研究代表者 岡本 領子
研究指定期間 2020年度~2021年度
学校HP http://www1.kyoto-be.ne.jp/sagano-hs/
公開研究会の予定
  • 10月:全国英語科・国際科高等学校校長会 秋季総会・研究協議会
  • 11月:JALTの国際会議及びCALL部会
  • 1月 :ユネスコスクール公式ウェブサイト上
  • 2月 :本校教育実践研究発表会

本期間(4月~7月)の取り組み内容

1 特別研究指定校第1回会議(Zoom)

  1. (1) 日 時 :4月24日(金)午後1時から同2時30分まで(90分)
  2. (2) 参加者 :本校教職員(9名)、担当アドバイザー岸准教授、パナソニック教育財団
  3. (3) 主な内容:
    1. ア 研究計画書の共通認識
    2. イ 概ね3つの研究課題に焦点を当てる方向で議論
    3. ウ 今後の研究等の進め方について議論

2 家庭におけるICT環境調査アンケート(グーグルフォーム)

  1. (1) 日 時 :5月10日から13日(4日間)
  2. (2) 対象者 :全生徒の保護者
  3. (3) 主な内容:利用デバイスの種類・利用インターネット回線・遠隔教育等で困っていること等

3 特別研究指定校第2回会議(Zoom)

  1. (1) 日 時 :5月18日(月)午後2時から同3時30分まで(90分)
  2. (2) 参加者 :本校教職員(7名)、担当アドバイザー岸准教授、パナソニック教育財団
  3. (3) 主な内容:
    1. ア デジタルストーリーテリング(以下DST)について
      • ・作成方法の紹介映像鑑賞
    2. イ 評価ルーブリックの作り方について
    3. ウ ICoME(International Conference for Media in Education)2020について
      • ・外国語科学校設定科目「グローバルインタラクション(以下GI)」に関する発表内容を確認
    4. エ プレゼンテーションの本質を考える活動体験

4 課題研究に関するアンケート(グーグルフォーム)

  1. (1) 日 時 :5月21日(木)
  2. (2) 対象者 :全生徒
  3. (3) 主な内容:<経年比較をする目的で実施>
    • ・ICTを活用した情報収集力、協働する能力、課題設定能力、プレゼンテーション能力、ICTを活用したプレゼンテーション資料作成能力等についての自己評価

5 助成金贈呈式及びスタートアップセミナー(Zoom)

  1. (1) 日 時 :5月29日(金)
  2. (2) 参加者 :本校教職員(10名、内8名は視聴のみ)
  3. (3) 主な内容:
    1. ア 本校の説明
      • ・本校カリキュラムの特徴的な取り組みである「京都グローバルスタディーズ」(情報の科学、総合的な探求の時間、課題研究発表会、外国語科学校設定科目「GI」及び「課題錬成」、英語による課題研究成果発表会の総称)の指導の流れとICTの活用方法について
      • ・英語によるバーチャル課題研究成果発表会(嵯峨野SDGsグローバルプレゼンテーション)について
    2. イ 受けたアドバイス
      • ・学年毎の目標を明確化すること
      • ・京都グローバルスタディーズの内容を発信すること

6 令和2年度嵯峨野SDGsグローバルプレゼンテーションに関する生徒アンケート(グーグルフォーム)
  1. (1) 日 時 :5月の実施後すぐ
  2. (2) 対象者 :参加全生徒
  3. (3) 結果分析:
    • ・昨年度同調査と比べ、2年生の英語プレゼンテーションの理解度が向上
      ⇒次年度以降は、足場掛けとしてバーチャル課題研究成果発表会を組み込み、その後に口頭での英語プレゼンテーションを実施する。これにより、理解度の高まりや質の高い質疑応答が期待できる。

7 本校で「アカデミックラボ」と呼ぶ「総合的な探究の時間」の取組の概要

 「アカデミックラボ」は、2年生6クラス(240名)の生徒が17の異なる「ラボ」に所属して学ぶ1年間の探究学習の取組で、それぞれの「ラボ」の研究領域は、下の表のとおりである。各「ラボ」に所属する生徒の人数は、5~20名程度で、「ラボ」により異なる。どの「ラボ」に所属するかは、生徒の希望調査の結果を尊重して決めている。そして、原則として各ラボ内で4名の小研究集団を1ないし複数編成し、その小集団で課題を設定し探究活動を行う。すべての小研究集団が、その研究の成果を2月の課題研究発表会(ポスターセッション形式、体育館)で日本語で発表し、3年次6月の発表会(スライド形式)では英語で発表し質疑応答を行う。指導体制は、すべての教科(国語、地歴・公民、理科、数学、英語、保健体育、家庭科、芸術科)の教員(計22名)がラボの指導を行う。1つのラボを、1名もしくは複数の教員が担当して指導し、図書館司書や理科実習助手も活動をサポートする。

①京・平安文化論     ②躍動する時代の文芸    ③日本文学近・現代
④⑤数学活用ラボ(A,B) ⑥⑦⑧理科ラボ(A,B,C)  ⑨法学
⑩ソーシャルビジネス   ⑪国際関係         ⑫京の食文化
⑬グローバルイシューズ  ⑭グローバル環境      ⑮京の文化財
⑯芸術工学        ⑰地域とスポーツ

 今年度の活動は、臨時休校終了後の6月1日より始まったところで、各ラボにおいては、各ラボの領域についての文献調査やインターネットでの調査、領域に関連する外部講師の講義を聞いたり、フィールドワークがおこなわれているところである。

図書館で図書やインターネットによる調査

ブレーンストーミングとグルーピング

フィールドワークで現地聞き取り調査

フィールドワーク報告会の様子

8 グローバルインタラクションの取組について

 グローバルインタラクション(嵯峨野高校1年生対象の学校設定科目)は、オールイングリッシュで行う授業であり、表現活動を中心にして、「読む・書く・聞く・話す」の4技能を活用し、論理性を伴ったコミュニケーション能力の向上を図る取組である。また、シンガポールをはじめとする各国との交流において、積極的にコミュニケーションするための技能を習得するだけでなく、国際社会に生きる者として、異文化を理解し尊重する態度を育てるとともに、自国の文化への理解を深め、それをプレゼンテーションソフト等を用いて発信できることを目指す。

 臨時休校中(4~5月)は、グーグルのGoogle Classroomを用いて英語のオリジナル動画教材を定期的に配信して、生徒はその課題に取り組み、クラウド上に提出した。

 6月からは、ポスター発表や、ポスター内容に関するカンバセーションテストに取り組んでいる。

オリジナル英語教材のビデオを視聴

嵯峨野高校について調べたことを英語で報告

ミニ英語自己紹介(ポスター形式)

カンバセーションテスト

9 総合的な探究の時間(アカデミックラボ)の第3回校内担当者会議

  1. (1) 日 時 :6月30日(火)午後4時40分から同5時30分まで(50分)
  2. (2) 参加者 :アカデミックラボ担当者等15名(全担当者22名中12名・担当者以外の職員3名)
  3. (3) 主な内容:
    1. ア DST(デジタルストーリテリング)用動画の作成依頼
      1. (ア) 作成者:担当者
      2. (イ) 作成の目的:
        • ・教職員間で各研究室(以下ラボ)の指導方法を共有するため
        • ・次年度のラボ選択に関する生徒説明会の資料とするため
    2. イ 各ラボに共通する評価ルーブリック(3段階:S・A・B)の作成依頼
      • ・留意事項:各ラボで生徒に具体的な項目を設定させる。

10 特別研究指定校第3回会議(Zoom)

  1. (1) 日 時 :7月6日(月)午前8時50分から同9時40分まで(50分)
  2. (2) 参加者 :本校教職員(9名)、担当アドバイザー岸准教授、パナソニック教育財団
  3. (3) 主な内容:
    • ア 研究進捗状況の報告
    • イ 協議
      • ・DST実施上の課題と解決策について
      • ・共通ルーブリック実施上の課題と解決策について
      • ・オンラインシンポジウムの実施検討について
      • ・全日本教育工学研究協議会全国大会での発表検討について

11 休校中の生活及び学習について調査アンケート(グーグルフォーム)

  1. (1) 日 時 :7月中旬
  2. (2) 対象者 :全生徒
  3. (3) 主な内容:
    1. ア 主に使用したデバイス
    2. イ 遠隔学習(課題のやりとり、ビデオ会議等)を行った感想
    3. ウ グーグルドライブ(クラウド)の活用に関すること 等

12 総合的な探究の時間(アカデミックラボ)の第4回校内担当者会議

  1. (1) 日 時 :7月10日(金)午後1時30分から同2時30分まで(60分)
  2. (2) 参加者 :アカデミックラボ担当者等16名(全担当者22名中12名・担当者以外の職員4名)
  3. (3) 主な内容:
    1. ア 地理情報システムGIS(Geographic Information System)の紹介
    2. イ DST(デジタルストーリテリング)用の動画作成方法に関する研修会
      • ・PowerPointを使う方法の説明やiMovieを使う方法の紹介

(動画作成の研修会の様子)

アドバイザーの助言と助言への対応

〇アドバイザーよりの助言

  • 1 2年間の研究課題で、重点的に取り組む課題とそうでないものに分ける。
    ⇒ 重点を3つ程度に絞り絞り込むことにし、研究を進めやすいように整理できた。
  • 2 評価ルーブリックの到達度尺度を実用的で教職員が使いやすいよう3段階に分ける。
    例)S  :特に優れている。
      A  :到達すべき基準に達している。
      FかB:到達すべき基準に達していない。
    ⇒ 上記例のとおり、3段階で実践することとし、検証していく。
  • 3 総合的な探究の時間(アカデミックラボ)の全担当者が互いにどのような指導をしているかを共有する方法として、DSTの手法を取り入れる。
    ⇒ コロナウイルス感染拡大防止への対応のため、ICTを活用した遠隔指導を全教職員が行う状況であった。そのため、ICTを活用することについては、教職員の抵抗感が少なくなっており、校内では何でも取り組んでみようという機運がある。よって、DSTの実践を進めて、教職員間の指導方法の共有による効果を検証していく。あわせて、DSTを各ラボの紹介にも活用しようというアイデアが出てきたことから、これについても実践しその効果を検証していく。

本期間の裏話

 本事業での研究は、生徒の主体的・対話的で深い学びを促すための、ICTを活用する実践研究であった。このタイミングは、コロナウイルス感染拡大防止への対応のために、ICTの活用が奨励される時期と重なった。第二波への対応のためにも、生徒の学びの質を高めることにつながるICT活用を促進したい。

本期間の成果

 年度当初に急遽休校対応が求められ、6月1日になってから学校が再開された。現在は対面授業が始まったところで、今後本格的に探究学習等において、ICTを活用していくところである。実践研究を始める基礎が構築されつつあることが成果と思われる。

今後の課題

  1. 1 全ホームルーム教室のICT環境整備(2学期から使用できるよう、高速大容量の校内LAN敷設とプロジェクター設置を予定していたが、諸般の事情で遅れが生じている。)
  2. 2 ICTを活用する授業実践を校内で広げること
  3. 3 本校でICTの活用を促進することにより、どのように指導や学習の質が向上し、どのような効果が期待できるかについて、ビジョンを構築し共有すること
  4. 4 DST用の動画作成をとおして、教職員が指導方法の共有を図ること
  5. 5 ICTを活用したリサーチスキルやプレゼンスキルを向上させる指導方法の実践研究
  6. 6 2・3年生の英語によるリサーチスキル・プレゼンスキル・ライティングスキルの向上
  7. 7 GIにおいて、スマホ等のデバイスを活用したりグーグルミート等のテレビ電話アプリを活用したりする授業実践

今後の計画

  1. 1 実践研究における具体的なリサーチクエスチョンの決定とデータの収集
  2. 2 DSTに取り組む教職員に対するアンケートやインタビュー

成果目標

  1. 1 3年生6月の英語による課題研究発表会において、生徒が自ら満足のいく英語発表と質疑応答ができること
  2. 2 2年生2月の課題研究発表会において、生徒がリサーチスキル・主張を論理的にまとめる力・質疑応答に伸長を感じ、成長を実感できること
アドバイザーコメント
岸 磨貴子 先生
明治大学 国際日本学部
准教授 岸 磨貴子 先生

京都府立嵯峨野高校との第1回目の会議は、新型コロナウィルス拡大防止のため、直接学校を訪問し、授業を視察することができなかったため、オンラインで実施しました。

第1回目の会議では、まず、嵯峨野高校の取り組みの現状についてご報告いただき、その後、研究の内容とその進め方について意見交換をしました。

嵯峨野高校では、「思考力・判断力・表現力の伸長を目的とした、ブレンド型学習を導入したSDGsに資する教育カリキュラムの研究開発−日英両言語におけるリサーチスキル、プレゼンスキル、ライティングスキルの育成とその指導方法の校内での普及−」をテーマとし、(1)外国語の授業でのリサーチプロジェクト、(2)1年生を対象とした情報と科学におけるSDGsにおける課題研究、(3)2年生を対象とした総合的な探求の時間における課題研究、(4)3年生を対象とした課題鍛成における英語での発表の4つの実践研究を行います。

第1回目の会議では、2年間の研究期間で何を明らかにしたいのか、何を到達したいのかについて検討をしました。つまり、研究の問いを絞ることにしました。研究の問いを具体化する上で、現状において、嵯峨野高校が解決したい課題について話し合いました。その結果、次の2つを問いとしてこの1年間研究をすることにきまりました。

第一の問いは、アカデミックラボにおいて、デジタルストーリーテリングによる知見の共有を通して、教師のICT技術の向上および各ラボでの知見の共有による相互参照によってラボの活動が改善されるかどうかを視点に研究を進めていきます。嵯峨野高校では、少人数制のアカデミックラボ(以下:アカラボ)を複数同時に運営しています。各ラボには教員がつき、その中で「情報活用力、課題設定・解決力、協働的に取り組む力など」、アカデミックスキルを学びます。ラボの扱うテーマ・領域はラボごとに異なり、指導の方法も多様であるため、ラボ担当者がお互いの指導方法を共有し、自らのラボの指導に活かすことが課題としてありました。すでに5年間のアカラボの実績があるため、そのノウハウを共有することがひとつ課題としてありました。そこで、デジタルストーリテリングの手法を使ってその共有をすることにしました。その理由は、教師の知見をストーリーとして意味づけおよび体系化すること、デジタル化することで教師のICT技術を高めること、デジタル化することで他のラボと共有し相互参照することです。この取り組みのため嵯峨野高校では、教師が動画編集をするための研修を実施し、それぞれのラボでDST制作を進めています。

第二の問いは、アカデミックラボに、ルーブリックをコミュニケーションのツールとして導入し、教師と生徒が何を目指すかを明確にすることで、生徒のアカデミックスキルの変化を捉えると同時にそれによって生徒のラボでの取り組みの意識にどのような変化があるかについて明らかにすることです。教師は、リサーチスキルが何かについて定義し、何ができれば「できた」とするのかの観点と基準を決め、ルーブリックを作成しました。また、そのルーブリックを各ラボの状況をみながら生徒と修正しながら利用していきます。教師と生徒が共同でルーブリックを見直し、修正しながら活用することもまた、生徒のアカデミックスキル育成にどのように作用するかも研究の視点になりそうです。

以上、2つの問いについて当面、研究をすることになりました。上記の研究成果は、国際学会および日本教育協議会で発表をする予定で進めています。

私自身、嵯峨野高校の研究にとても興味深く関わっています。教えるためのICT活用だけではなく、生徒の探求(リサーチ)を進めるために環境としてICTを活用していく視点が興味深いです。今後も、探求を軸として、語学力(英語を含む)、リサーチ力、思考・判断・表現力などを育成するために、ICTを含む学習環境をどのようにデザインしていくのか、どのような活動をデザインすればいいのか、そして、生徒の成長をどのように評価すればいいかについての議論を進めていきたいと思います。

本期間(8月~12月)の取り組み内容

1 総合的な探究の時間(アカデミックラボ)に関する1年生向け説明会

  1. (1) 日 時:10月1日(木)7限
  2. (2) 参加者:1年生1~6組(240名)
  3. (3) 会 場:6部屋の特別教室に分散(プロジェクター、スクリーン、Wi-Fi環境整備等)
  4. (4) 目 的:
     次年度のアカデミックラボ開講について、生徒に各研究グループ(以下、ラボ)の取り組みを理解させ、登録希望順位を決めるための参考にさせる。
  5. (5) 内 容:
     全体説明(リアルタイムオンライン配信)及び各ラボの紹介動画(デジタルストーリテリング(以下、DST)2分30秒程度×13ラボ分)を視聴

担当者による全体説明(同期)視聴風景

理科ラボ説明動画(非同期)視聴風景

2 総合的な探究の時間(アカデミックラボ)の第5回校内担当者会議

  1. (1) 日 時:10月7日(水)午後1時30分~同2時30分
  2. (2) 参加者:アカデミックラボ担当者
  3. (3) 内 容:
    1. ア (情報共有)「総合的な探究の時間」について新学習指導要領の確認
    2. イ (情報共有)図書館でのクロムブック活用について
    3. ウ 新型コロナ感染予防と2月課題研究発表会の実施方法の協議
    4. エ 発表会実施までのスライド作成にかかるデバイスの使用計画
    5. オ 日本語論文と英語スライド(説明動画)の視聴方法等について
    6. カ 次年度Sagano SDGs Global Presentation(英語による課題研究発表会)について

3 特別研究指定校第4回会議

  1. (1) 日 時:10月30日(金)午後1時から同5時まで
  2. (2) 参加者:本校教職員(9名)、アドバイザー岸准教授、パナソニック教育財団(1名)
  3. (3) 内 容:
    1. ア 5限 グローバルインタラクション(以下、GI)の授業参観(LL、語学演習室)
    2. イ 6限 アカデミックラボの授業参観(LL、図書室等)
    3. ウ 7限 研究協議兼業務打ち合わせ(応接室)
      1. (ア) アカデミックラボにおけるDSTの取り組みについての報告
        1. ①全ラボ(13ラボ)のDSTが作成されたこと
        2. ②1年生(6クラス)がDSTを視聴したこととその時の生徒の反応
      2. (イ) アカデミックラボにおけるルーブリックについて
        1. ①生徒が作成するという取り組みについての相談
        2. ②各ラボにおける作成・活用状況についてのアンケート調査の結果報告
      3. (ウ) GIの授業の取り組み(オンライン国際交流等)の報告

4 総合的な探究の時間(アカデミックラボ)の第6回校内担当者会議

  1. (1) 日 時:12月1日(金)12時10分から
  2. (2) 内 容:
     日本語による課題研究発表会(2月5日)の実施方法について、次のア・イの併用
    1. ア 対面発表(ホームルーム教室)
      グーグルスライドを投影しながら、口頭発表し質疑応答する。
    2. イ 非同期発表会(クラウド上)
      発表スライドファイル(口頭発表原稿付き)または動画ファイル(音声及び発表者画像入りスライド)をクラウド上で視聴し、質疑応答を行う(グーグルクラスルームをプラットフォームとして使用する)。

5 GI、アカデミックラボ、サイエンス英語等における海外の教育機関とのオンライン会議システムを使用した交流

課題研究テーマについてインタビュー調査(相手:カナダ・ケベック州の大学生10名)

前年度フロリダ研修参加者が研究成果をオンライン会議で発表(相手:京都大学大学院留学生8名)

シンガポールのイーシュンタウンセカンダリスクールとのオンライン交流(10グループ、LLにて)

6 2年生の特別活動(ホームルーム活動)の一環

 1~6組の課題研究と7・8組のスーパーサイエンスラボの内容についてのグループ交流会を実施し、互いの課題研究について情報交換等の活動を行った。

アドバイザーの助言と助言への対応

1 アドバイザーの助言

  • (1) 研究課題に即した実践になっているとよい。
    取り組みの成果を明らかにするためには、ある状態(A)から別の状態(B)に変容する際に、どのような介入をしたかが明確に分かるようにするとよい。
  • (2) ルーブリックの弊害に注意するとよい。
    ある観点における上限を決めてしまうと、そこで生徒の能力の伸長をとめてしまうことがあるので、注意が必要となる。

2 助言への対応

  • (1) 具体的な事項を会議等で検討する。
  • (2) 評価の規準について基準の上限がない書き方を工夫する。

本期間の裏話

 コロナ感染が広がる状況下でも、感染防止対策としてICTを活用することで、学年全体の説明会等を中止せずに実施したり、新しい指導方法を開発したりすることができた。

本期間の成果

  • 1 各ラボのDST(2分30秒程度)を作成し、クラウド(グーグルドライブ)上で共有することにより、全担当者間で取り組みを共通理解することができた。
     また、学校全体での取り組みの共有を図る契機とすることができた。
  • 2 1年生向け説明会では、上記1の動画を活用することで、紙の資料と口頭説明の紹介による従来の方法よりも、理解を深めることができた。
  • 3 海外パートナー校との同期形式(グーグルミートやZoomを活用したオンライン会議)や非同期形式(グーグルクラスルームを活用するもの)の交流を行うことができた。
    また、新しい交流先を開拓することもできた。
  • 4 次年度の英語による課題研究発表会について、英語による非同期発表会(クラウド上)を足場掛けとして実施し、その後、英語による対面の同期発表会(ホームルーム教室等)を実施する方向性を打ち出すことができた。

今後の課題

  1. 1 研究課題に即して、生徒の資質・能力・態度等について、どのような取り組み(介入)を経てどのような変容があったかを明らかにする方針を決めることが必要である。
  2. 2 複数のラボにおいて、ルーブリックを活用することによりどのような生徒の変容があったかを明らかにする取り組みが必要である。

今後の計画

  1. 1 SDGsミニ課題研究のスライド発表をビデオ収録し、グーグルクラスルームに動画ファイルをアップロードし、バーチャル発表会を実施(1年生情報科「情報の科学」)
  2. 2 日本語による課題研究発表会(対面:2月5日、クラウド上での非同期発表会:2月13~17日)
  3. 3 特別研究指定校第5回会議を2月下旬以降に実施(オンライン会議または訪問指導)
  4. 4 令和3年5月にオンラインシンポジウムを実施(予定)

成果目標

  1. 1 3年生6月の英語による課題研究発表会において、生徒が自ら満足のいく英語発表と質疑応答ができること
  2. 2 2年生2月の課題研究発表会において、生徒がリサーチスキル・主張を論理的にまとめる力・質疑応答に伸長を感じ、成長を実感できること
アドバイザーコメント
岸 磨貴子 先生
明治大学 国際日本学部
准教授 岸 磨貴子 先生

 京都府嵯峨野高等学校(以下、嵯峨野高校)では、国際社会のさまざまな分野でリーダーとして貢献できる人材を育成する教育の実践研究をされています。本コメントでは、2020年10月30日(金)に私が嵯峨野高校を訪問した際に見学した総合的な探究の時間(アカデミックラボ)を中心にコメントします。

(1)総合的な探究の時間(アカデミックラボ)におけるDigital Story Tellingの実践

 総合的な探究の時間(アカデミックラボ)では、生徒は自分の興味関心、問題意識をもとに、14の研究室(ラボ)から1つ選び、4人一組で探究活動を行います。クラスごとではなく、クラスを超えて学年で取り組む研究活動です。新型コロナウィルス拡大防止の観点から、6月まではオンラインでの授業が行われていましたが、6月から登校がはじまり、アカデミックラボの活動がはじまりました。

 本取り組みでは、生徒がラボを選択することから始めますが、これに関して一つの課題がありました。それは、それぞれのラボで何が行われているのか、またラボ間で何をどのように実施しているかが共有されていないことでした。そこで、嵯峨野高校では、ラボの実践を「言語化」し「共有」するため、各ラボをビデオ映像で紹介するDigital Story Telling(DST)の実践を行いました。

 この取り組みでは、4つの成果がみられたそうです。第一に、DSTを制作するプロセスにおいて、ラボの活動を省察し、意味づけ、言語化(映像化)できたことです。第二に、生徒はビデオをみてラボを選択することができるようになったことです。第3に、DSTを制作する上で教員のICTスキルの向上がみられたことです。ラボの取り組みを映像化し、共有できたことは、ブレンド型授業へのステップにもなりそうだと期待されていました。最後に、若い教師の活躍が見えるようになったということです。映像制作ということで比較的にICTに強い若い教師が他の教師とか関わる機会になり、それが若い教師の才能や強みをみるきっかけになりました。このように、これまで対面で行ってきたことの一部をデジタル化することで、これまでの取り組みに動きや変化を生み出すことが期待できます。

(2)多様なICTの利用

 嵯峨野高校では、ICTは生徒にとって学習のツールの一部として定着していました。どのラボでも、調べ学習、共同学習、メディア制作でICTが利用されていました。生徒のICTの活用方法は多様で、学校教育でよくみられる「生徒全員が同じ内容を、同じ方法で、同じペースで」ではありませんでした。グループワークでまとめる際、ノートを使う生徒もいれば、パソコンを使う生徒もいる。パソコンで記録する役割もいれば、会話をファシリテートする生徒もいる。実験をするラボでは、どの実験道具を使うかも生徒が決め、調べ方も図書であったり、パソコンであったり生徒の裁量に任せつつ、教師が適宜支援する方法がとられていました。このように、生徒たち自身がこれらのツールの選択をし、利用している様子がみられました。

 また、ICT活用についてわからないことがあれば、自分で助けを得られるしくみがありました。たとえば、嵯峨野高校では、授業において日英両言語が自然に使われることをめざしているため、生徒がわからないことがあれば、ネイティブの教師に「Can I get your help?」のように英語で声をかけ、英語で支援を得られます。わからないことを自分で解決すること、そのために日英両言語を使うことが日常的に行われていました。また、教室の壁には、ICTの操作や英語表現で困った時に役立つ情報が掲示されていました。生徒自身が自ら動いて解決できる学習環境がつくられていました。

(3)問いを中心とした活動

 嵯峨野高校では、新型コロナウィルス対策として教え方のスタイルも柔軟に変化させて取り組んでいました。たとえば、従来のポスターセッションをオンラインで実施するためにはどうすればよいのか?生徒を集めてガイダンスができないならどうすればいいのか?学生同士の議論をどんな形で実現するのか?と、従来の実践を土台にしながら、これらをどのようにオンラインで実現するのか、教師自身も探究され続けていました。

 それは、生徒たちも同様でした。嵯峨野高校では、グローバル市民を育てることをめざしていることから、生徒自身が自ら動けるように、自分で問いを持ち、問いを追求するための方法を―ICTや英語の活用を含め、日常的な学習活動の中で学んでいけるような取り組みが行われていました。

 嵯峨野高校訪問を通して、教師と生徒、そして生徒同士が「知を生み出す実践」を目にすることができました。まさに探求であり、研究の実践が行われていました。

(4)今後の活動の期待すること

 今後の研究活動としてアドバイスしたことは次の2点でした。第一に、研究の問いを明確にし、その観点から記録や成果をまとめていくことです。私が嵯峨野高校の実践を観察したところ、実践的かつ学術的に意義のある実践がされていましたが、常に多くのことが同時に起こっているため、それらを言語化(描写)しづらくなっていました。そこで、「DSTの取り組みは教師のICTに対する意識にどのような影響があったのか?」「生徒が多様な形でICTを活用できるようになるための教室環境のデザインとは?」など、研究の問いを絞って、その問いの観点から、実践を記録、分析、まとめていくことを、研究成果をまとめていく次のステップとして提案しました。

 第二に、ルーブリックの意義と課題を把握しつつ利用することです。アカデミックラボでは、教師も生徒も、予想を超えて新しい発想や活動を生み出していました。アカデミックラボでの生徒の学びを捉え評価するためにルーブリックを導入しましたが、基準が明確に示されることで「ここまですればいいのか」という壁になる可能性があります。アカデミックラボで全体として何を確実に生徒に身につけさせたいのか、ということを言語化し、ルーブリックを通して教師と生徒、生徒同士が共通意識を持つ上で役に立ちますが、同時に、ゴールを事前に決めてしまうことで、それを超える動きを阻害する可能性もあります。生徒の能力を伸長するために、これらのツールを、いつ、どんな形で、どう意味づけしながら使っていくかも、研究されると良いと思いました。

 嵯峨野高校の取り組みの独創性や面白さを、どう伝えるのかが来年度の課題だと思いました。そのためにも、来年度は、「何をしたのか」の実践報告ではなく、研究の問いを軸として「何がわかったのか」の報告を期待したいと思います。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

 本校の京都グローバルスタディーズでは、思考力・判断力・表現力の伸長を目的とした、ブレンド型学習を導入したSDGsに資する教育を、3年間を通じて実施している。1年で「グローバルインタラクション」を通して英語・異文化コミュニケーション能力を、「情報の科学」を通してICTを活用してリサーチやプレゼンをする能力を育成する。2年生では、「アカデミックラボ(総合的な探究の時間)」を通して、課題設定・解決力や論理的にまとめて発表する力を身につけること、3年では「課題錬成」で自らの課題研究を英語で発表して質疑応答する能力を身につけることを目的としている。

 2020年度1月から3月における、1年の「グローバルインタラクション」「情報の科学」、2年の「アカデミックラボ」について報告する。

【1年】グローバルインタラクション(外国語科英語学校設定科目)(写真①

 グローバルインタラクション(担当:エリンノクソン教諭ら)では、指導技能として、異なる文化的背景を持つ人々との交流を通して4技能を統合的に運用する技能の向上を図った。また、指導内容として、生徒が自らどのようなグローバル市民になるかを考えさせる取り組みを行った。

  1. (1) 一人一台のChromebookを使い、グーグルクラスルーム上で授業の課題を配信し、読んだり聞いたりした内容を理解し、ペアやグループで自らの言葉で理解した内容や自らの考えを英語で述べる活動を行った。
  2. (2) 明瞭な通じる英語の発音を意識させるため、グーグルドキュメントの音声認識機能を活用し、与えられたテキストを読む課題に取り組んだ。
  3. (3) オンライン会議アプリ、グーグルミートやZoomを利用して、京都で留学生活を送る大学院生などに英語でキャリア観についてインタビューした。
  4. (4) グーグルスライドを用いてポスターを作成し、自分が考えるグローバル市民とはどんな人かについてクラス内でポスター発表を行った。
  5. 【1年】 情報の科学

     情報の科学では、ミニ課題研究に取り組んだ。1年生全員がSDGs「世界を変えるための17の目標」の中から興味のあるものを4人グループで1つ選んだ。そのテーマにつきマンダラートを作成して情報を整理し、研究テーマを決定した。自分たちの主張・意見とその理由・根拠、予想される反論、反論への反論についてまとめるとともに、発表資料を、グーグルスライドを用いて作成した。Zoomを用いてプレゼンテーション動画を作成した。コロナ感染予防のため学年全体での発表会は中止し、講座の生徒間で相互視聴した。

    【2年】アカデミックラボ(総合的な探究の時間)

    アカデミックラボに関して、次の3つの取り組みを行なった。

    (1) 課題研究発表会(写真②

    実施日:2021年2月5日(金)午後半日(バーチャル発表会は2月12~19日)

     「アカデミックラボ」のグループ課題研究の成果発表会を行なった。発表者は、2年生の普通科及び京都こすもす科人間科学系統の生徒240名である。発表会は、従来、体育館で全員が一堂に会してポスター発表形式の対面でおこなっていた。しかし、今年は、新型コロナ感染対策として密を避けるため、普通教室等(19会場)に分散し、教室内の人数を制限して、スライド発表形式の対面でおこなった。聴衆の生徒は割り当てられた発表を視聴することになった。後日バーチャル発表会も併せておこない自由に視聴できるようにした。対面発表会の事後アンケートによると、満足できる発表ができたとする2年生の比率が前年よりも高かった。雑音の多い体育館でなく、教室でしっかりと発表内容を伝えたり質疑応答をしっかりできたことが、満足感が高くなった理由の一つと思われる。

     バーチャル発表会は、2月12日から19日の1週間に、事前にアップロードされているスライドおよび口頭発表原稿や映像のなかから、自分が視聴したい発表を選択して非同期で視聴し、コメントや質疑応答ができるようにしたところ、活発な質疑応答が行われた。バーチャル発表会開催期間には、府教育委員会、京都府内の高校及び山形県立高校の関係者の参加があった。京阪神地区に2021年1月14日~同2月28日まで緊急事態宣言が発令されていたため、発表会当日は原則として校外の参加者の来校参観は不可としたが、バーチャル発表については、学校外の方にも参加してもらえることができた。

    (2) ICT機器利用方法研修会(教員向け)

     2020年度の課題研究発表会は、ウェブ会議形式で開会式や閉会式を行い、生徒の発表は対面で実施することになった。すべての発表会場で、会場担当者がクラウドから発表ファイルを取り出したりアップルTVでスライドを映写するなど、複雑なICT機器の操作が必要になるため、研修会を実施した。小さなトラブルはあったが、概ね大きなトラブルなく、すべての会場で発表会を実施することができた。

    • ・研究の日時:2021年3月31日1月27日(水)・2月1日(月)両日共午後4時30分~
    • ・参加教員計:20名
    • ・研究の内容:クラウドに保存されているスライドを新しく設置されたプロジェクターで投影する方法の研修
    • ・研修の成果:ICT機器操作に不慣れな教員もアップルTVやiPadやグーグルドライブやWi-Fiの操作に慣れることができた。
    • ・研修の課題:当初1回の研修会の予定であったが、多数の教員が関係し日程調整が困難であったため全員が参加できず、2回実施することになった。
    (3) プレゼンテーション英訳作成

     アカデミックラボでは、2年生の普通科及び京都こすもす科人間科学系統の生徒240名が、課題研究プレゼンテーション(日本語スライド及び口頭発表原稿)の英訳を行う。第1次原稿締切日である2月26日までにグーグルスライド上で作成した。いつでもどこでもインターネットにつながっているPCがあれば教員が添削指導を行え、生徒にフィードバックできるのでグーグルスライドを使用した。3月中旬にグーグルスライド上で教員からアドバイスを受け、最終原稿の締切日3月末までに英語スライドと英語口頭発表原稿を完成する予定である。

    【その他】特別研究指定校第5回会議(オンライン会議)

     本研究を進める上で、パナソニック教育財団の専門員岸磨貴子准教授と本研究の主担当の伊藤教諭がリアルタイムオンラインで何度かテレビ会議を行い、それを元に3月19日に本研究推進チームと打ち合わせを行なった。2020年度は新型コロナの感染拡大防止のため、アドバイザーによる訪問は一度のみで、その他オンラインでの打ち合わせであったが、本研究の進捗の報告および適宜アドバイスを受けながら、研究進めることができた。

    (1) 実施の概要
    • 日時:2021年3月19日(金)午後1時30分~同3時迄
    • 参加:本校教職員(小川校長、苅野、伊藤、山脇、ノクソン、藤本、堀出)、岸、パナソニック教育財団職員(関戸・則常)
    • 内容:① 本年度1~3月の取り組み報告
      ② 取り組みをもとにした研究の問いの明確化と研究方法の検討
      ③ 来年度の計画
    (2)アドバイザーの助言と助言への対応

     アドバイザーの岸磨貴子先生とは、数回のオンライン会議で進捗状況と研究の問いについて、伊藤と議論を行い、3月19日にはこれらの議論を土台に研究推進チーム全体で議論を行なった。その中でいただいた助言と対応は以下の通りである。

    助言 対応
    研究の問いを明確にすること
    本研究は、多くの活動を行い、それを幅広く報告することが多かったが、今後はICT活用に焦点を当て、「何を明らかにしたいのか」の問いをもって研究を進めることについての助言を得た。
    次の3点を研究の問いとしてデータを収集し研究成果をまとめていくこととなった。(1)デジタルストーリーテリングを導入したラボ共有の取り組み(2)国際的な探究力を評価するルーブリックの開発(3)Google formを用いた相互評価の導入の取り組みである。
    本学の研究対象である京都グローバルスタディーズの実践の目的は「グローバルな視点で地球規模の課題や地域の課題に取り組む」こと、および、本研究の目的である「探究できる力」の両者のつながりを明確にし、定義するように助言を得た。 「グローバルな視点で地球規模の課題や地域の課題を探究し、解決策を提案すること」とし、これを、「国際的な探究力(仮)」とし、その定義について検討することになった。「国際的な探究力(仮)」については今後も議論が必要になるが、本校の研究の特徴が読み手や聞き手に伝わりやすい表現にかえ、示していくこととする。
    上記3つの研究の問いについてのデータ収集の計画をたてること それぞれの研究の責任担当者を決め、それぞれの問いについて調査できるように進め、定期的にアドバイザーとオンラインで意見交換をして分析を進めて行く。

本期間の裏話

 新型コロナの感染防止対策のため当初想定した以上にICTの活用が促進された。

本期間の成果

(1)アカデミックラボ(総合的な探究の時間、2年)

  • ・課題研究発表会
    口頭発表とオンライン発表を併用したため、参加者は8本以上の発表(昨年度まで実施のポスター発表形式では最大6本までしか視聴できなかった。)を視聴・閲覧できた。オンライン発表では全員に何らかの質問・コメントを求めたこともあり、オンライン上で1,400本以上の質問・コメント・回答が行われた。
  • ・デジタルストーリテリング(DST)の教員アンケート
    ①DSTは制作するのは大変だが、「十分実施する意味のある取り組みであった」、「そう思う・ややそう思う」と回答した教員が、合わせて85%に達した。
    ②教員自身のICT活用スキルが上昇したかについて、全員が「そう思う・ややそう思う」と回答した。
    ③75%の教員が他のラボ活動についての理解が増したと回答した。

(2)情報の科学(1年)でのミニ課題研究の取り組み

 事後アンケート(「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」に関すること)の結果から、生徒の技能が向上したと推測できる。

(3)グローバルインタラクション(外国語科英語学校設定科目、1年)

 ChromebookでGoogle MeetやZoomを使い、インターネット接続と各種情報端末を活用して、英語で交流することができた。

今後の課題

  1. 1 第2年次の研究開発計画を策定し、それを着実に実施すること
  2. 2 下の予定に向けた具体的な準備計画
    1. (1) 2021年6月   公開研究会の開催
    2. (2) 2022年2月   公開研究会の開催
    3. (3) 2022年3月   研究成果報告書完成(財団ホームページ掲載)
    4. (4) 2023年8月初旬 成果報告会にて発表
    5. (5) 2023年11月  JAET(日本教育工学協会)にて発表

今後の計画

 以下は次年度の構想である。

  1. (1)英語による課題研究発表会(学校行事、3年生)
    次年度6月11日に実施予定の3年生「英語課題研究発表会」に向けて、2年生はスライド及び口頭発表原稿の英語への翻訳を3月末までに終える。次年度には、オンライン(非同期)での英語発表を経て、発表本番を迎える予定である。
  2. (2)アカデミックラボ(総合的な探究の時間、2年)
    (ア)2月の課題研究発表会は、アカデミックラボの一年間の成果を発表する場として位置付けて実施する予定である。発表会の形態をどのようにするかは、コロナ禍の状況を考慮しながら今後検討する。
    (イ)年度当初に、ラボ担当者及び着任教員に向けて30分のデジタルストーリーテリング(DST)のビデオを視聴してもらう機会を設ける。
  3. (3)英語のスピーチ・ポスター発表(外国語科英語、2年)(写真③
    本年度同様に、日本人英語科教員と外国語指導助手のティームティーチングで、説得力のある英語スピーチ(個人)と英語ポスターブレゼンテーション(ペア)に取り組み、3年次の英語による課題研究発表会に備えたい。本年度は即時フィードバックが可能なグーグルフォームを使用する生徒間相互評価を実施したが、次年度はそれに加え、グループプレゼンテーション想定問答集を作成させ、プレゼンテーションの内容理解を深化させたり、質疑応答能力を向上させたりしたい。また、VEO(Video Enhanced Observationの頭文字、アプリ)を活用したスピーチデリバリー指導の導入を検討したい。
  4. (4)情報の科学(1年)でのミニ課題研究の取り組み
    各グループでミニ課題研究発表をさせたが、授業の進め方や支援方法に課題が残っているため、今後吟味を行う。
  5. (5)グローバルインタラクション(外国語科英語学校設定科目、1年)
    英語・異文化コミュニケーション能力育成の指導におけるICTの一層の活用の工夫

1年間を振り返って、成果・感想・次年度への思い

 新型コロナ感染防止のため4-5月は臨時休校となり、6月から対面での授業が始まった。休校期間中は、特にグーグルクラスルーム等のICTの校内活用体制の構築が急ピッチで行われた。

 校内の高速大容量のインターネットの回線整備はまだ十分に行われていないが、普通教室へのプロジェクターやスクリーンの整備も行われ、担当教員の許可があれば、授業中に生徒がスマートフォンを使えるというルールも作成された。

 Withコロナの時代においても、本校の教育課題や教育環境にマッチするブレンド型学習を創出することで、本校グローバル・リーダーシップ・イニシアティブの教育課程の改善を図り、生徒のより豊かな学びが生まれるようにしたい。

写真① 課題研究発表会スライドプレゼン(教室人数制限)(本文へ戻る

写真② グローバルインタラクション: 英語ミニポスターセッション(本文へ戻る

写真③ 2年英語スピーチ(フォーム生徒相互評価)(本文へ戻る

成果目標

  1. (1)3年生6月の英語による課題研究発表会において、生徒が自ら満足のいく英語発表と質疑応答ができること
  2. (2)2年生2月の課題研究発表会において、生徒がリサーチスキル、論理的にまとめ伝える力、プレゼンテーションスキル、質疑応答力などの伸長を感じ、成長を実感できること
アドバイザーコメント
岸 磨貴子 先生
明治大学 国際日本学部
准教授 岸 磨貴子 先生

嵯峨野高等学校では、「嵯峨野高校SDGsグローバルリーダーシップイニシアティブ:京都グローバルスタディーズ」の3年間の取り組みから、高校1年生から3年生の3年間を通して、グローバルな視点で地球規模の課題や地域の課題を探究できる力-国際的な探究力を育てるカリキュラム開発を研究しています。2020年度は新型コロナ拡大防止の観点から、従来の活動の多くをオンラインで実施できるように試行錯誤され、結果として先生がたのICTスキルはもちろん生徒たちのICTスキルも高まったように思います。そしてその背景に、学校全体として教師のICTスキルを高める研修の取り組み、そして生徒のICTスキル向上のためのさまざまな支援があります。詳細については、嵯峨野高校の報告書を参考にしてください。

2020年後半では、嵯峨野高校が取り組む京都グローバルスタディーズの「何を」他の学校に参考にしてもらえる知見として焦点をあて、発信するかについて検討しました。日英語両言語での指導、リサーチ力の育成など多様な観点から教育活動が行われていますが、本研究ではICTを活用した3つの取り組みである(1)デジタルストーリーテリングを導入したラボ共有の取り組み(2)国際的な探究力を評価するルーブリックの開発(3)Google formを用いた相互評価の導入の取り組みについて焦点をあてて研究を進め、発信していくことになりました。

(1)のデジタルストーリーテリング(Digital Story Telling:DST)を導入した嵯峨野高校のラボの活動内容の共有の取り組みは、探究活動を行う学校や教師に参考になります。

 探究の方法は多様です。たとえば、個人またはグループで問いを生成し、その問いを軸として探究し、まとめ、発表していくなどがあります。その多様な活動内容や方法を共有するため、DSTでは、画像、映像、イラスト、図表、ナレーション、BGMなどさまざまなデジタルデータを組み合わせて、これらを1分から3分程度で「ストーリー(物語)化」します。DSTは、効果効率的な情報伝達を重視するスライドを使ったプレゼンテーションにさらに芸術的要素や遊び心(いわゆるパフォーマンス)を含めることができます。

 嵯峨野高等学校では、2020年に多様なテーマで研究をするラボの「教師」の多くが、このDSTに取り組みました。DSTの制作を通して、教師らは多様なデジタルデータを統合してDSTを作る経験からICT活用力を高めることができたことと、他のラボのことをより知ることができました。

 2020年度は、他のラボでの探究内容や方法を知ることを目的として試験的に実施しましたが、このようなラボ間の理解や交流によって、ラボの取り組みにどのような変化や動きがあるかについて検討されるそうです。また、DSTをラボに入る前の生徒に視聴させることによって、生徒のラボ選択やその後の活動にどのような影響があるかも調査されるということで、これも楽しみです。

(2)の国際的な探究力を評価するルーブリック評価については、2020年度は試験的に実施されました。嵯峨野高校では3年間を通して国際的な探究力を高めていきますが、今回ルーブリックを導入したのは2年生のラボ(つまり、3年生で探究成果を英語で発信する前)であることから、「探究力を評価する」ことに挑戦しました。嵯峨野高校からの報告にもあるように、ラボでのテーマや方法は多様であることから、それぞれのラボがそれぞれの基準で評価しています。

 一方、嵯峨野高等学校全体としてめざすべき探究力を定義し、3年間を通して、そしてそれぞれのラボで到達していけるように、共通のルーブリックを作られました。「探究力を評価する」評価基準は、文部科学省(2018)の「高等学校学習指導要領解説 総合的な探究の時間編」の「第3章 総合的な探究の時間の目標」に示されたものを参考に作られましたが(表3)、これに加えて、「地域社会に貢献する」観点を含めています。現在、いくつかのラボでこのルーブリックを試験的に導入し、それぞれの観点に対して生徒が「何をもってそれぞれの段階において到達したとするのか」の根拠を記述したところです。

 今後、その記述を分析し、それぞれの観点(段階)においてICTがどのように活用されたかを明らかにすることができれば、探究活動におけるICT活用の指導や環境のデザインを検討することができるでしょう。また、国際的な探究力を評価するルーブリック開発は今後の課題ではありますが、国際性を含めた探究力の評価基準は、国際化をめざす高等教育において非常に参考になるでしょう。

(3)Google formを用いた相互評価の導入については、本研究推進チームの主担当である伊藤先生の「グローバル環境」で試験的に実施されました。各ラボでは個人またはグループで探究活動を行い、形成的評価として中間発表(報告)を経て、最終の成果報告を行います。教師一人がすべての発表に対してフィードバックするには時間も労力もかかることから、相互評価を導入されました。伊藤先生いわく、生徒同士で相互評価ができるか心配だったそうですが、実際の相互評価では、発表の内容、方法など多様な観点から的確なコメントがされていたそうです。またGoogle Formを使うことによって即座のフィードバックができることから、発表側も刺激を受けていたそうです。Google fromをつかった相互評価は手応えがあったことから他のラボや授業などでも継続的に実践し、より良い相互評価にむけて研究を2021年度も継続的に実施されるそうです。そのために、2020年度に伊藤先生のラボ「グローバル環境」での相互評価における生徒のコメントを定性的に分析し、具体的にどのようなフィードバックがあったのかを分析し、より質の高い相互評価にむけたアクションを検討されるそうです。分析の結果も、また分析結果を通して2021年にどのようなアクションが実施されるか楽しみです。

以上が、2020年度1-3月の嵯峨野高等学校の報告に対するコメントです。今後も嵯峨野高等学校の実践および研究が期待されます。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

1 特別研究指定校第4回会議(Zoom)

  1. (1) 日  時:5月24日(月)午後2時から同15時30分まで(90分)
  2. (2) 参加者 :本校教職員(7名)、担当アドバイザー岸准教授、パナソニック教育財団
  3. (3) 主な内容:
    1. ア 本研究チームメンバー変更のご報告
    2. イ 2020年度の取組の成果と課題の確認
    3. ウ 2021年度の研究課題についての議論

2 令和3年度アカデミックラボ(総合的な探究の時間)第2回担当者会議

  1. (1) 日  時:5月25日(火)午後2時から同3時まで(60分)
  2. (2) 参加者 :アカデミックラボ担当者等15名(全担当者22名中12名・担当者以外の職員3名)
  3. (3) 主な内容:
    1. ア 全体としての今年度の目標の共有
    2. イ 日本文学から見る近現代ラボの取組み内容を共有
    3. ウ 理科ラボの取組み内容の共有
    4. エ ラボ担当者の交流

3 課題研究に関するアンケート(グーグルフォーム)

  1. (1) 日  時:6月中
  2. (2) 対象者 :全生徒
  3. (3) 主な内容:<経年比較をする目的で実施>
    • ・ICTを活用した情報収集力、協働する能力、課題設定能力、プレゼンテーション能力、ICTを活用したプレゼンテーション資料作成能力等についての自己評価

4 令和3年度嵯峨野SDGsグローバルプレゼンテーションに関する生徒アンケート(グーグルフォーム)

  1. (1) 日  時:6月11日(金)嵯峨野SDGsグローバルプレゼンテーション実施後
  2. (2) 対象者 :参加全生徒
    昨年のアンケートの結果分析を踏まえ、今年度は足場掛けとしてオンライン課題研究成果発表会を組み込み、その後に口頭での英語プレゼンテーションを実施した。これにより、理解度の高まりや質の高い質疑応答が期待できるという仮説であった。
  3. (3) 結果分析:
    • ・発表者側である3年生は9割越えの生徒が達成感、満足感を得ており、質問に対してのやりとりも7割の生徒ができたと答えている。プレゼンテーション能力、コミュニケーション能力共に、昨年以上に向上を実感できた生徒が多かった。また、アカデミックラボの活動にも9割の生徒が主体的・協働的に参加できたと感じている。また、コロナ禍の中にあっても海外生徒の参加を可能にし、アメリカやオーストラリアの高校生からコメントをもらいやりとりができたことを喜ぶ声が多くあった。
    • ・一方、2年生は、発表の理解、内容への興味関心、について昨年よりも否定的な回答の割合が増加した。そして、やりとりに関しては「質問できなかった」という回答が大きく増加した。おそらく、多くの2年生は、オンライン発表会で内容の理解を得ないまま口頭でのプレゼンテーションを聞いていたと思われる。オンライン課題研究成果発表会を足場掛けとして利用せずに口頭プレゼンテーションに参加していたためこのような結果になったと思われる。同じ内容のプレゼンテーションを2回聴く意図をしっかり理解しなければ生徒はオンラインの発表会には主体的に参加しないのではないかと考察される。

5 探究活動に関わる資質・能力の生徒アンケート(グーグルフォーム)

  1. (1) 日  時:1学期期末テスト前後
  2. (2) 対象者 :特定ラボの生徒、回答者100名
  3. (3) 結果分析:
    誰かの指示に従って物事を進めるような力…十分に身に付いているとの自己評価
    生徒のニーズ…自らの探究意欲や好奇心を満たしたい
    探究の成果を効果的に他者に伝える手法・スキルを身に付けたい
    ⇒年度末にもアンケートを実施し、探究活動に区切りを付けた生徒の自己認識がどのように変容するのかについて、分析・考察を行いたい。

6 総合的な探究の時間(アカデミックラボ)の第3回校内担当者会議

  1. (1) 日  時:7月5日(月)午後2時00分から同3時20分まで(80分)
  2. (2) 参加者 :アカデミックラボ担当者等16名(全担当者22名中14名・担当者以外の職員4名)
  3. (3) 主な内容:
    1. ア 研修会(ZOOM)
      「生徒の探究を深める学習環境デザイン」明治大学 准教授 岸磨貴子先生
    2. イ 今年度のDST作成について
    3. ウ 1学期の評価について

7 総合的な探究の時間(アカデミックラボ)でのICT利用 World Wide Learning Lab

  1. (1) 日  時:毎週金曜日 6限・7限<
  2. (2) 参加者 :2年生
  3. (3) 主な内容:Google Classroomを用いての課題の配付・DSTの作成・共有・Google Formを使用した意識調査・Google Slide Google formを使用したプレゼンテーション・Google Jamboardを利用したアイデのブレインストーミング、収束、問いの設定

アドバイザーの助言と助言への対応

【助言】

2021年度の新体制による研究の問い①―探究プロジェクト間の連携と協力について

 各ラボの内容をDSTで情報共有するだけで、ラボ間の連携や協力を起こすことは簡単なことではない。ラボ間の連携や協力がなぜ必要なのか、共有を通してどのような働きかけをして、どのような連携や協力をおこしたいのか、具体的なイメージを教員間で共有し、それを積極的に進めていく必要がある。

【対応】

 本校では①説明することで探究力があがる②相互参照で探究力があがる③質問や交流することで探究力があがるという仮説をたて、教員の連携や協力が指導力を向上させ、しいては生徒の探究力を向上させることにつながると考えた。ラボ会議を通じて教員同士で「探究活動」について議論する機会を持ち共に思考していきたい。

【助言】

2021年度の新体制による研究の問い②―探究における問いの設定と教師による支援

 探究力を高めるための手立てを考えるならば、まず、何をもって探究力を上がったとするのか、という基準を明確にすることが重要である。たとえば、2020年度のオンライン会議で、教員から「探究の成果発表の場面でも、発表することが目的となっていて深まらない」、といったことが問題としてあがっていた。そこで、探究のプロセスにおける「発表」の焦点をあてるならば、「発表において何ができたら探究力があがったとするのか」と基準をきめて、その観点からデータを収集し、生徒の変化を捉える必要がある。たとえば、「探究の成果を発表するだけにならず、発表する側と聴く側が共同して、批評を通して改善にむけて次のステップを構築できる」とするならば、それを実現するためのICTを含む道具の活用や授業設計、指導などを研究知見として整理していく。

 上記の事例のように、探究プロジェクト(アカラボ)で共通する課題を明らかにしつつ、何がどうできたら「探究力が上がった」といえるのかを明確に示し、そこに向けてアクション(指導など)を考え、その成果と課題をデータに基づいて示していくことが必要である

【対応】

 探究活動を通して獲得して欲しい力についてGoogle Formを使って調査をした。同じような項目のアンケートを行う予定である。特に注目したいのは、以下の点であった。

  1. ①探究活動のステップを主体的に経験できる。
  2. ②「よい論題」を立てられる。
  3. ③発表する側としても聴く側としても、次の探究活動に続く問いを立てられる。
  4. ②については、Google form を使って、課題設定時の振り返りシートを作成し、生徒に取り組ませている。非常に深い問いなので、担当者間で継続して議論しながら、研究を進めていきたい。

本期間の裏話

 昨年度アカデミックラボを担当された先生方が制作されたDSTの手法を用いたショートムービーを担当者会議で活用することができた。生徒だけでなく教員でも十分活用できることが理解できた。

 岸先生の依頼した探究活動に関する研修会が終わった後も、参加された先生方がそれぞれの職員室に戻ってからもより充実したアカラボにするために議論を続けられている光景がみられたことは嬉しかった。

本期間の成果

 アカデミックラボの会議をただの連絡会ではなく、探究活動をより充実したものにするためのやりとりの場として提供できはじめていること。

今後の課題

 生徒一人一端末が今年度入学の 1年生には導入された。思考力・判断力・表現力の伸張を目指した効果的な端末の使用方法を教員が如何に習得していくかが大きな課題となっている。端末を使用することが目的ではないことを我々教職員がしっかりと理解しなければならない。

 安定したWifi環境がまだ確保されていない。特に生徒の端末を一時に使用した場合の不安定さが課題である。

 パフォーマンススキルの向上にむけて導入するVEOアプリの導入とそのための教員研修の実施。

今後の計画

 今年度もDSTの手法を用いたショートムービーの作成をアカデミックラボ担当者に依頼している。昨年の経験が活かされることを期待する。

 研修会で共有されたアカデミックラボ担当者が抱える課題をひろく共有し、会議・研修の機会をこれまで以上にもって、協働で課題解決に向けて取り組む。

成果目標

 アカラボ会議で以下のねらいをもって、それぞれの取り組みを発表・意見交換する。継続してDSTを導入した結果、ラボ間の指導内容や方法が共有されたのか、またそれによってそれぞれのラボでの活動にどのような影響が合ったかを明らかにする。DSTを教員間で共有することで、ラボ間の連携や協力がおこったかどうかを明らかにする。

 課題設定において「問い」の立てる際の指導方法、例えば、教員の介入程度や、時間設定の仕方、また、考察の取り組み方、そもそも高校教育という段階での探究活動の目的・目標はどう設定すべきかなど、本校担当者が抱える課題を教員が協働で解決できないか、模索する。

アドバイザーコメント
岸 磨貴子 先生
明治大学 国際日本学部
准教授 岸 磨貴子 先生

嵯峨野高等学校では、「思考力・判断力・表現力の伸張を目的とした、ブレンド型学習を導入した SDGs に資する教育カリキュラムの研究開発―日英両言語におけるリサーチスキル、プレゼンスキル、ライティングスキルの育成とその指導方法の校内での普及」をテーマとして研究しています。2021年度4-7月の研究の進捗をオンライン会議および報告書にて報告いただきました。以下、その内容を土台に研究校へアドバイスを以下の通りまとめました。

2020年度までの研究の取り組みと2021年度の新体制による研究の取り組み

 嵯峨野高等学校では、2021年度に研究チームのメンバーが大幅に変更になり、岡本教諭とエリン教諭が本研究のコーディネータとして新たな体制で進めることになりました。2020年度は、次の3つの問い–(1)探究の成果発表におけるGoogle formを活用した生徒の相互評価の実態と課題を明らかにすること、(2)それぞれの探究プロジェクト(アカデミックラボ:以下 アカラボ)の相互参照をデジタルストーリーテリング(Digital Story Telling:以下DST)を通して促し、研究方法やプロセスを相互発達させることができるかを明らかにすること、(3)多様な研究テーマに取り組むアカラボにおいて共通の土台となる探究力を定義した評価基準(ルーブリック)を開発すること–に取り組んでいました。

 2021年度の新体制では、特に(2)の取り組みを発展させることになりました。具体的には、嵯峨野高等学校の報告書に示されるとおり「DSTの共有を通してラボ間の連携や協力をいかにおこしていくのか」を研究することになりました。

 しかしながら、各ラボの内容をDSTで情報共有するだけで、ラボ間の連携や協力を起こすことは簡単なことではありません。ラボ間の連携や協力がなぜ必要なのか(教員にとって、生徒にとって)、ラボの情報共有を通して教員はどのような働きかけを生徒に対してして、どのような連携や協力を生徒間におこしたいのか、具体的なイメージを教員間で共有し、それを積極的に進めていく必要があります。

 嵯峨野高等学校では、定期的にアカラボ会議を実施しているため、教員間で、ラボ間の連携や協力の必要性と意義、それを具体的にDSTの相互参照を通してどのように実現していくのかについて実践研究を通して示されることが期待できます。

2021年度の新体制による新たな研究の問い―探究における問いの設定と教員による支援

 2021年度の新体制では、新たな研究の問いをたてることになりました。それは、嵯峨野高校の報告書に示されているように「教員の介入程度や、時間設定の仕方、また、考察の取り組み方、そもそも高校教育という段階での探究活動の目的・目標をどう設定すべきかなど」についてです。本研究の最終年で新たな研究の問いをたてて研究を進めることに不安もありますが、新しい体制でのメンバーが関心や必要性を感じる研究を進めることも重要であるため、今後の研究を見守りたいと思います。

 そのための取り組みとして、2021年7月5日のアカラボ会議にて、これまでのアカラボでの取り組み/経験を通して、担当教員が探究活動の何に問題意識や課題を感じているのかを明らかにすることになりました。岸がそこで探究学習について話題提供をすることになりました。具体的には、(1)探究学習で育てたい生徒はどんな生徒か?(2)探究学習の特徴、(3)公正と共生の観点からみた探究学習のデザイン、(4)探究における教員の役割について簡単な講義を行い、会話をはじめました。表1は、教員の意見を集約したもので、中でも、探究の課題設定における問いの立てる際の指導方法についてアカラボの担当教員が関心を持っていることがわかりました。

 そこで、研究校に次の3点についてアドバイスしたいと思います。第一に、問いの設定に関する先行研究を調査し、参考になる事例や方法を整理すること、第二に、問い設定の際の指導において何ができて、何が課題になっているか実践を通して具体的に問題を示していくこと、第三に、その問題解決のためにICTをはじめとする道具をいかに活用できるかの仮説をたて、検証していくこと、です。

表1 オンライン教員研修を通して出てきた教員の探究に対する考えや問い

投げかけた問い 教員からの意見
探究で育てたい生徒像 ・未解決の課題を解決しようと挑戦する生徒
・事象を深く(多角的に)捉えることができる生徒
・知識や固定観念に囚われず柔軟に関心や疑問を示せる生徒
・自ら課題を見つけ、探究し、形にできる生徒
・自立した学習者
・自らの問いや関心にこだわりを持つ/没頭する生徒
・論理的に思考できる生徒
探究学習の特徴 ・問を自分で生成する(問が与えられない/自分らしさがある)
・知識獲得だけではなく、知識生成の側面がある
・教科横断的(教科の枠に囚われない)
・能動的に探究の目的や方法を選択、創造する
・アウトプットが重視される
・社会的な学び
深めたいトピック ・いかに生徒自身に問いを設定させるのか/その支援は?
・経験をいかに批判的に省察させるのか?/その支援は?
・テーマや問いに、関心、こだわり、好奇心を持たせるには?
・主観を重視しすぎず、客観的に考察させるためには?
・失敗を恐れず挑戦させるためには?
・探究学習で何ができたら「できた」とするのか?
・生徒の学ぶペースや方法が多様でありどこまで教員は待つべきか
・生徒が立てた課題に対する助言
・探究を始める上でその前提となる知識不足への対応
・探究を楽しいだけで終わらせず、深い学びにするためには?

その他の取り組み

 そのほか、授業実践を映像に撮影して分析し、授業に活用するためVEOの導入を行うこととなり、Erin教諭を中心に研究が進められています。VEOとは、撮影したビデオにタグ付けをこない、そのタグを手がかりに授業分析をするソフトウェアです。教員の専門力量形成において、実践の省察は重要であり、授業内での省察(reflection-in-action〉だけでなく、授業後に改めて授業をみて省察していく(reflection-on-action)も重要です。VEOの導入が教員の授業や生徒の探究活動においてどのように作用していくかの研究も期待ができます。

詳細:https://veo.co.uk/student-learning/