京都府立南陽高等学校附属中学校

第45回特別研究指定校

研究課題

「学びのアトリエ」と「つなぐ展示」によるSTEAM教育の充実化と国際展開
~学びの表現活動と多様な他者との相互鑑賞による触発の連環に向けて~

2019年度04-07月期(最新活動報告)

最新活動報告
7月18日(木)に、国語と英語のコラボレーション授業を行った......

アドバイザーコメント

小柳和喜雄先生
「京都府立南陽高等学校附属中学校」は、京都府立南陽高等学校の敷地に......

京都府立南陽高等学校附属中学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 京都府 京都府立南陽高等学校附属中学校
アドバイザー 小柳 和喜雄 奈良教育大学 教授
研究テーマ 「学びのアトリエ」と「つなぐ展示」によるSTEAM教育の充実化と国際展開
~学びの表現活動と多様な他者との相互鑑賞による触発の連環に向けて~
目的 展示品への閲覧・コメント可能なWebサイトの構築と海外とのオンライン交流による、STEAM教育の充実化と国際展開を図る。
Web上に作品を企画・展示し、鑑賞及び省察することによる教科の知識の定着と応用力の涵養を図る。
現状と課題
  • 本校にはCALL教室はないが、一人1台のタブレット端末や電子黒板を導入し、Wi-Fi環境を活用して、実践研究を推進している。
  • 一人1台のタブレット端末の貸与により、協働学習、個別学習の両方を推進している。
  • ICTを活用した授業を提案するため、校内に複数教科の教員で構成するプロジェクトが立ち上がった。(2018年度から継続)
  • 2018年に比べ、タブレット端末を活用した授業を展開している教員が増えてきた。
  • 実践研究を附属中学校での取組に留めず、高校での実践に広げる方策が未定である。
学校情報化の現状 教科指導におけるICT活用は、現時点では数値は低いが、推進体制が整いつつあるので、今後充実すると思われる。
取り組み内容
  • 学校設定科目『ダ・ヴィンチ』と各教科の連携授業(昨年度の取組と今年度の実践)
  • 国語:ビブリオバトル開催(言語能力育成)
  • 数学:水道料金の算出(一次関数の応用)
  • 家庭:刺し子を施した風呂敷製作(文化の継承)
  • 音楽:グループ作曲(協働学習、相互評価)
上記の内容を、Skype授業でフィリピンにある英会話学校の講師にプレゼンテーションを行った。2019年度は、各教科で学んだ成果を“作品”と捉え、ウェブサイト上に“展示”し、国内外を問わず公開する。多様な他者との相互鑑賞により、表現力の向上と相手意識の芽生えを促す「対話型鑑賞教育」の実践に取り組む。
成果目標
  • 2019年度の実践計画の柱であるオンライン上の生徒発表に対する国内外のサーバー閲覧者(以下、コメンテーター)とのやり取り を、より実践的なものにする。
  • コメンテーターの所属範囲が広がることで、同質性の視点に異質な観点が加わることを実現する。
  • 上記のやり取りを、多角的な能力開発と学びに対する新たな興味・関心・意欲の喚起をもたらすことにつなげる。
  • 本校でのプロジェクトを社会の変容に対応した教育実践にするため、学校間連携、他校種間連携を実現し、STEAM教育推進のモデル校を目指す。
助成金の使途 iPad 9.7インチ、Apple TV、Apple Pencil、3Dプリンター、3D Scanner for iPad、旅費、製本及び発送費他
研究代表者 杉本 喜孝
研究指定期間 2019年度~2020年度
学校HP http://www.kyoto-be.ne.jp/nannyou-hs/mt/
公開研究会の予定
  • 4月20日 次世代大学教育研究会にて発表
  • 6月21日  The First Ocean Park International STEAM Education Conference 2019 (香港) にて発表

本期間(4月~7月)の取り組み内容

  • ・The First Ocean Park STEAM Education International Conference 2019で実践発表を行った。(6月21日)
  • ・香港の私立小中学校であるGood Hope School(望徳学校)を訪問し、学校間連携の枠組みの確立について話し合った。(6月24日)
  • ・第1回Skypeセッションを実施した(1年)。(7月12日)
  • ・アドバイザーの講演会を実施した。(7月12日)
  • ・数学、社会、英語のコラボ授業(1)を実施した。(7月12日)
  • ・国語と英語のコラボ授業(2)を実施した。(7月18日)

授業報告

授業者:杉本喜孝・前原陽一

 7月18日(木)に、国語と英語のコラボレーション授業を行った。京都工芸繊維大学の坪田康准教授にご助言とタブレットの貸与を受けたことで授業の実施をすることができた。

 今回の授業の目的は「日本語と英語の音声について科学的に分析しよう」というものである。日本語は基本的に子音と母音の組み合わせで発音を行っているが、日常生活においてその点が意識されることはない。また英語は発音記号も明示されているため、日本語に比べれば発音を意識する機会は多いと言えるが、発音に気を取られているためか英語独特の強弱アクセントへの意識はやや弱いということができるのではないだろうか。

 今回は音声レベルで日本語と英語に触れながら科学的に分析することを目標とするが、引いては発音やイントネーション、アクセントといったものについて自覚的になることも狙いとしたい。

 ツールとしてはタブレットの逆再生アプリを使用する。逆再生アプリを使用すれば、音声(子音と母音の組み合わせ)について理解を深めることが可能である。例えば「まえはら」と機器に音声入力し、それを逆再生すると「らはえま」とは聞こえない。一度ローマ字として処理(maehara)し、それを逆再生した音声になる(araheam)のである。よって、アプリには「アラヘアム」と入力すれば、逆再生をした際に「まえはら」と聞こえる音声を獲得できる。

 しかし、いくつかの例外がある。それを以下に列挙していく。

  1. 1.「にゃ(nya)」「にゅ(nyu)」「にょ(nyo)」などの拗音を含む文節の場合、子音の連続のため通常は発音できないが、半母音である「y」を「い」と発音することで逆再生が可能になる。「y」が半母音であることが良くわかる現象であり、同様の現象は「w」にもみられる。
  2. 2.助詞の「は」は、表記通りの「ha」という音声ではなく、「wa」というかたちで録音しなければならない。これはハ行転呼と言われる現象で、平安時代ごろから日本語にあった現象である。
  3. 3.「sokuhou(速報)」を逆再生した場合に「そくふぉう」と聞こえてしまう。これは逆録音する際に「uohukos」と入れるつもりが、中央の「h」を「f」として発音してしまうために起こっている。これを防ぐためには意識的に「f」ではなく「h」の発音をする必要がある。
  4. 4.「shi」の音声のうち「h」の音声は逆再生をした場合に拾い上げることができないため、「h」を含まない「すぃ」のような音になってしまう。この現象は「tsu」にもみられる。この3と4の現象は、ヘボン式のローマ字がいかに発音に忠実かを示す現象であるといえる。

 これらの日本語の特徴を踏まえたうえで、授業の後半では英語の音声を録音し、英語科教員に質問をすることにした。まずは英語でも同じことが可能かという問いかけをし、生徒に考えさせる時間を取った。およそ三分の一の生徒が「できると思う」と答え、三分の二の生徒が「できないと思う」と回答した。それぞれの根拠は、「英語にも発音記号があるし、それ通りに逆の音声を録音したらできるはずだから」「確かに発音記号はあるが、日本語よりも発音が複雑で録音できないと思うから」と説得力のあるものであった。活動を行い、実際に英語科教諭に質問をしたところ、8つの班のうち5つで質問と応答が成り立ち、3つの班では失敗した。応答が成り立った班の質問も「Who are you?」のような単純なものが多く、質問が長くなれば理解しにくいという状態であった。

 その結果を踏まえ、日本語と英語の音声的な違いについて言及した。それが以下の表である。

日本語 英語
音節 基本は開音節(母音で終わる)
ウォーク(woːku)
基本は閉音節(子音で終わる)
walk (wɔːk)
母音の数 約26
子音 子音1+母音1が多い 子音の連続も多い
アクセント 高低 強弱

授業後のアンケート結果も、生徒の学びの深まりや興味関心の高まりを示すものであった。以下アンケートからの抜粋である。尚、( )内は前原による補足である。

  • ・イントネーションやスピードだけで全然違ってくることが分かった。
  • ・子音だけになったときにどう発音するか悩んだ。
  • ・人が音を感じ取って発する仕組みのすごさがわかった。
  • ・日本語の時に子音が変化すること。(h→f、h→w)
  • ・「r」の音や「n」を逆再生したときはどうなるのか知りたい。
  • ・発音記号をもっとうまく使う方法は何か。
  • ・他の言語でも可能なのか。
  • ・強弱の調整や音の高低の調整が難しい。
  • ・英語の方が難しかった。
  • ・発音記号をそのまま読んでもいまいち。(忠実に発音できない)
  • ・聞いた音声のまねをする方がうまくいった。
  • ・「wa」ではなく「ha」を使ったらどうなっていたのか。
  • ・英語で回文はつくることができるのか。(音声レベルで)
  • ・「国宝」の発音が分からなかった。(破裂音kを含むため)

 日本語と英語の違いについて、知識的なものだけではなく音声レベルで実感することができたため、貴重な時間になった。以下は指導案と、実際の活動の場面の写真である。

  1. 1 対象 2年A組40名
  2. 2 日時 令和元年度7月18日(木)
  3. 3 場所 121、122教室
  4. 4 単元名 「国語と英語を科学する!? 逆再生による分析」
  5. 5 単元についての詳細
     ○冒頭で確認したため説明を省く。
  6. 6 目標
     ○日本語の発音が子音と母音の組み合わせであることを確認し、日本語と英語の音声的な違いを理解する。
  7. 7 評価規準
     ○積極的に話し合いを行い、学習活動に取り組めたか。(観察)
     ○日本語の発音、英語の発音について理解を深められたか。(アンケート)
  8. 8 本時の展開
過程 指導内容 学習活動 指導上の留意点 評価規準
【第一時】
導入
10分
・日本語の音声について ・教員のデモンストレーションを聞き、授業の見通しを持つ。 ・日本語が子音と母音の組み合わせであることを確認する。
・教員自身が逆再生アプリを使用して確認していく。
・観察
展開1
25分
・逆再生の音声を用いることで日本語の音声的な理解を深める。 ・逆再生を行いながら、文章の違和感に気付く。 ・お題を提示する。
1.ありがとうございます。
2.醍醐寺は国宝だ。(hとf、ハ行転呼)
3.ニュースをお伝えします。(拗音、shi)
展開2
10分
・逆生成をするとおかしくなってしまう部分をどのように解決したかを発表させ、共有する。 ・お題の文章についておかしくなってしまう部分を修正し、その方法を発表する。 2つめのお題ではhとf、ハ行転呼について、3つめのお題では拗音、shiについて触れる。
・できるだけ生徒から発音の工夫を引き出させる。
・観察
【第二時】
過程 指導内容 学習活動 指導上の留意点 評価規準
導入
5分
・考えた内容を発表させる。 ・英語でも同じことが可能かどうか、発音記号のプリントを参考にしながら考える。 ・質問で使用するであろう単語の発音記号集(プリント)を配布し、英語でも逆再生でコミュニケーションを行うことができるか考えさせる。
・両方の立場からの意見を吸い上げるようにする。
・観察
展開
25分
・第一時と同じく逆再生の活動に取り組ませる。 ・英語の逆再生質問の作成に取り組む。
・完成した質問は保存しておく。
・言語はコミュニケーションツールであることを踏まえ、「人に文章として意味が伝わるかどうか」を判断基準とすることを必ず伝える。 ・観察
まとめ
10分
・日本語の発音が子音と母音の組み合わせであることを確認し、日本語と英語の音声的な違いを理解する。 ・教員の話を聞く。
・振り返りのアンケートを記入する。
・クラス全体の場で、記録した音声を英語教員に聞いてもらう。
・日本語が開音節(母音で終わる言語)であることや、英語が閉音節(子音で終わる言語)であることを説明する。
・アンケート

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ・7月12日に実施した講演会で、特別研究指定校の意義を話していただき、以下の点を研究組織の教員で共有した。
  1. ①目標の明確化
  2. ②実践スケジュールの確認
  3. ③現状を見つめる機会の設定
  4. ④評価計画の設定
  5. ⑤取り組みの成果を見つめるために
    1)成果に関する行動変容に関する評価(成果の直接評価)
    2)成果に関する意識の変容に関する評価(成果の間接評価)
    3)取組に関する評価

本期間の裏話

  • ・実践開始以降、研究スタッフと外部専門家とのつながりが増えてきたこと。
  • ・研究スタッフから実践に対する自発的な提案が生まれてきたこと。
  • ・組織的取組により、教員の専門性が今まで以上に生かされる実践が生まれてきたこと。

本期間の成果

  • ・1学期に、昨年度とは異なる内容の2つのコラボ授業が実施できた。

今後の課題

  • ・本来の授業計画に支障のない範囲で、教科間のコラボ授業を実践すること。
  • ・PDCAサイクルのうち、研究計画とその実施に対するCheck体制を疎かにせず、改善が積み重なるようにすること。

今後の計画

  • ・11月22日(金)1,2年のSkypeセッション及びアドバイザーの第2回訪問アドバイス。
  • ・同日に外部講師を招いて、外国語によるコミュニケーションの効果的な進め方についての講演を依頼している。その直後に行われるSkypeセッションを参観してもらい、今後の活動でさらに表現力が増すようにしたい。

気付き・学び

さまざまな取組内容を校内に周知(本校ではチームコミュニケーションツールのSlackを利用)することで、新たな枠組みが生まれてきた。このことが、アドバイザーの助言にもあった、スタッフ同士の互恵的な関係構築を進めることに繋がると期待している。

成果目標

  1. ・他教科との連携を一層促進し、全校体制の充実を図る。
  2. ・11月のSkypeセッションに向けて、ダ・ヴィンチでの2年生の個人研究を充実させる。
  3. ・個人研究の発表をビデオ撮影し、Web上の仮想ミュージアムに順次アップロードする。
アドバイザーコメント
小柳和喜雄先生
奈良教育大学 大学院教育学研究科
教授 小柳 和喜雄 先生

1.研究テーマ・取り組みについて


 「京都府立南陽高等学校附属中学校」は、京都府立南陽高等学校の敷地に併設された緑豊かな市街地にある中学校である。2018年4月に開校され、京都府内5校目の公立高校附属の中学校であり、各学年1クラス、現在1,2年生80名が学んでいる新しい学校である。

 生徒の探究的な学びを大切にしている姿が印象的であり、現在在籍している隣通しの教室関係にある1,2年生が非常に快活で、意欲と自信を持って何事にも取り組んでいる様子が初回の出会いから感じられた。教室の後ろに掲示されている「行動規範」(右図)は、自立的自主的な姿を物語っていた。生徒たち自らが投票を通じて明確にしたもので、選ばれている表現もユーモアがあり、具体的な姿をイメージできる説得性を持つものであった。1)時間(とき)を待とう、2)授業は、つくるー騒は喪、静は生ー、3)360°―  =0°―美しさとは―、4)心にも制服をー一人一人が南陽ブランドー、5)行動に責任をーグレーは白ではないー、6)みんなのhappy!! 大切に。

 ICTに関しては、STEAM教育の充実とその国際展開と関わって、その活用を位置づけている。STEAM教育の基盤となる教科横断型授業を、教職員チーム、学外関係者とともに実践研究を進め、その推進のコアとなる時間を設定し、学習の成果の発表と交流(展示、コメント可能なWWWの構築、それらの展示品をトピックとした国際交流)を通して、生徒および参加者の対話的・主体的な学びを豊かなものにしようとしている姿が見られた。

 本校の話によれば、これから2年の研究期間に、積極的に様々な場で成果の発表を行うとともに、教科横断のコラボ授業の推進し(STEAM教育と関わって)、「対話的・主体的な学びに対する学習目標の変容と新しい評価方法を確立」していきたいとのことであった。

 さらに、次の3つの点に、取り組むことも目標していると言うことであった。

 1)Web上の展示と、国内外からの鑑賞による生徒の理解の活性化
 2)Visual Thinking Strategy(対話型鑑賞)の導入により言語化による理解の深化
 3)教員のファシリテーション技術と授業デザイン技術の向上

2.本期間の取り組み・成果の評価

 4月に最初に訪問をした後、7月に訪問を行い、今後の取り組みに関する打ち合わせを行った。その際、skypeを活用した遠隔支援による英語コミュニケーションの授業を見る機会に遭遇した。

 そこでは、先に述べた、Web上に展示された作品や研究成果と関わって国内外からの鑑賞に応えていくVisual Thinking Strategy(対話型鑑賞)と関わる取り組みの姿が見られた。

 右の写真にあるように、skypeを用いて、順番に一人一人が話す機会を作り、グループでそれを支え、またその姿をモニターし互いに活かしていこうとしている姿が見られた。

 この授業参観後、本時の授業から共通に学べた点の整理、今後の学びの方針についての確認に関わって、意見交換が行われた。

 Skypeを用いた英語コミュニケーションの姿から、これまで試みてきた実践の蓄積が感じられ、学校全体の取り組みとして、研究計画に即して、取り組みを振り返り、その改善につなげていく意気込みが感じられた。

3.今後の期待

 京都府立南陽高等学校附属中学校の取り組みは、他の学校にはなかなかまだ見られないSTEAMへの挑戦とそれに至るための理論的裏付け、具体的な手続きを進めてきた歩みがある。学校創設2年目の取り組みであるが、作り出していく雰囲気が感じられる。これを継続的に進め、それらを学校全体の財産としていくためには、今後、実践の成果をエビデンスに基づきながら、保護者、他校、地域に語っていく取り組みが求められる。それらを語る取り組みを積み重ねることにより、学校自体でも取り組みをより整理できると思われるからである。実践の成果の評価に基づきながらも、その成果を導いた各取り組みの評価を生徒、教員間、学外関係者と丁寧に見つめ、より目指している姿に近づいていって欲しい。

(奈良教育大学 小柳和喜雄)