御所市立名柄小学校

第43回特別研究指定校

研究課題

子どもの主体的な学びを育てる授業の創造
~Skypeを利用した効果的なライブ授業のあり方~

2018年度01-03月期(最新活動報告)

最新活動報告
教員1人1回授業公開する。Skypeを利用したライブ授業もしくは、ルーブリック......

アドバイザーコメント

御所市名柄小学校の1ー3月の活動は、3年間の実践研究の成果を言語化し、......

御所市立名柄小学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 奈良県 御所市立名柄小学校
アドバイザー 岸 磨貴子 明治大学准教授
研究テーマ 子どもの主体的な学びを育てる授業の創造
~Skypeを利用した効果的なライブ授業のあり方~
目的 Skypeを効果的に組み込む授業の工夫を通して、児童がより豊かなコミュニケーションスキルを獲得することを目指す。
現状と課題
  • 昨年度作成した、Skype接続マニュアルにより、教師の接続、操作等の習熟度が高くなっている。(ICT機器使用についての教師の抵抗感が薄れてきている)
  • 授業設計の際「Skypeを使うためにどのような授業をするのか」という考え方に陥りがち。(「Skypeありき」の授業づくりになっている)
  • Skype活用と児童の学力と関連が、可視化されていない。(アンケート調査や教師の手応え等、印象的評価となっている。)
  • 児童のコミュニケーションスキルについて「ICT機器を活用したコミュニケーション」と「対面してのコミュケーション」との相違点が整理されていない。
  • Skype接続先の交渉が個別交渉であり、全体化されていない。
学校情報化の現状 本年度9月より、児童用としてタブレット型PC(Win10)が導入される。
取り組み内容
  • 教師のSkype利用の考え方を目的から手段へと転換する。(「Skypeありき」からの脱却。遠隔合同授業チーム、バーチャル見学チームの2チームに分かれ授業づくり推進)
  • 授業中の配置(机・機器等)をレイアウトマップにし、その効果等をまとめ、マニュアル化する。
  • ライブ授業の効果を客観的に把握することのできる指標づくり。
  • 各学年でSkype使用時のルールづくりを行い、児童、教師ともにSkype使用時のポイントを意識づける。
  • 「反応する・きく・話す」Skypeを通した多様なコミュニケーションのあり方を6学年を通して体系化、系統化できるよう整理する。ライブ授業のコミュニケーションスキルだけでなくそれを、日常の授業、生活のスキルとの相違点を明らかにして整理する。
  • ライブ授業人材バンクづくり。
成果目標

〈教師の授業力向上〉

ICT機器活用の幅を拡げ、授業実践を積むことで、教師のスキルアップにつながる。
また、誰でもできるライブ授業になるようPDCAサイクルにのっとり、マニュアル、モデル化する。


〈児童のコミュニケーションスキル向上〉

コミュニケーションスキルをルーブリックによる評価を行うことで、児童についた力を段階的に把握できる。(教師、児童自身ともに)
児童にICTを活用する場面、日常の場面それぞれに応じたコミュニケーションスキルが身につく。


〈人材バンクの活用〉

SkypeID、連絡事項等を一覧にすることで、誰でも利用可能になる。交渉、打ち合わせの時間短縮。

助成金の使途 プロジェクター、設置費用、デジタル無線機、謝金
研究代表者 川西 賢侍
研究指定期間 平成29年度~30年度
学校HP http://www5.kcn.ne.jp/~nagara/
校内研究会と公開研究会の予定

校内研究会の予定

H29年度

  • 9月25日
  • 10月23日
  • 2月7日

公開研究会、学会発表等の予定

H29年度

  • 11月21日(授業公開)

特別指定校 御所市立名柄小学校
アドバイザー 岸 磨貴子 明治大学特任准教授

アドバイザー訪問記(1)

テレビ会議を通したスカイプの活用研修の実施

 名柄小学校では、子どもたちに教室や地域を超えて学習を広げていこうと、遠隔合同授業、バーチャル見学、テレビ会議を通した英会話演習などを実施しています。その目的は、外部の人とコミュニケーションを取る機会が地理的に制限されている子どもたちに、様々な人たちとコミュニケーションをとり、関わり、学ぶ機会を作っていくことです。
 名柄小学校では、これまでの実践を通して本研究助成を受けて、次の3つの課題に関する研究に取り組んでいます。第一に、いかに児童の学習・発達を捉えるかということです。特に子どもたちのコミュニケーション力に焦点をあてて、それをどのように捉えていくのかを検討します。第二に、子どもたちのコミュニケーション力を支援するための学習空間のデザインです。そして最後に、これらの実践をいかに授業と相互に作用させながら学習の質を高めていくかです。

スカイプの使い方

 第1回目の訪問(7月26日)後、名柄小学校の先生に、テレビ会議システム(スカイプ)の様々な機能の使い方に関するオンライン研修を行いました。オンライン研修では、画面共有、チャット機能、多地点会議、音声ミュートの利用の仕方などについて説明し、実際に使っていただきました。1対1のテレビ会議だけではなく、これらの機能を使うことによって、ICTを活用したコミュニケーションの幅を広げていけるでしょう。これからも名柄小学校での実践が楽しみです。

特別指定校 御所市立名柄小学校
アドバイザー 岸 磨貴子 明治大学特任准教授

アドバイザー訪問記(2)

 第2回目の訪問では、5年生および6年生の子どもと、留学生のナムさん(タイ人)とゴックさん(ベトナム人)の二人との英会話の公開授業を見学させていただきました。これまでテレビ会議を活用した授業実践の知見が活かされ、教室の空間をうまく利用した配置になっていました。

教室のレイアウト

教室のレイアウト

 ナムさんとゴックさんの自己紹介から始まりました。緊張した様子で、子どもたちは、二人に日本に来た理由、日本での生活、彼らの出身国について様々な質問をしました。最初は、大きな声で話かけることが難しかったようですが、順を重ねるうちに円滑に会話ができるようになっていました。最初のグループより、次のグループが、そして、その次のグループがより上手に話をしていました。これは、子どもたちがお互いの様子を観察しながら、参考にして自分たちの交流に活かせていたからです。

 留学生たちの回答が長く、また難しいため、どうしても理解できない部分も度々ありましたが、事前に学習したフレーズ(たとえば、Please say that againなど)を使って、反応を返してしました。また、教師は交流のプロセスを白板に可視化し、子どもの理解を支援していました。どうしても、聞き取れなかったこと、分からなかったことについては、教師が授業の様子をビデオ映像で撮影していたため、この映像を使って、発展的な学習もできそうです。このように、生きた英語を話す経験を積み重ねることで、子どもたちは、使える英語表現や伝えたいことを少しずつ増やしていくことができるでしょう。今後の子どもたちの変化が楽しみです。

留学生と交流の様子

留学生と交流の様子

 授業終了後の授業研究では、今後の実践に向けて次の3点について課題が共有されました。
 第一に、教室の空間を即興的につくりかえていくということです。今回は、テレビ会議を通した交流が円滑に進むように、黒板や白板の利用、発表者の立つ位置、聞く人が座る場所などが事前に決められて(固定されて)いましたが、今後は必要に応じて白板の位置を変えたり(交流相手にも見えやすいようにするなど)、子どもたち同士が相談しやすいように体を動かせたり、状況をみながら場を作り変えていきます。

 第二に、教科と関連づけた指導です。本実践を通して、「相手に聞こえるように大きな声で話す」「相手に反応する」「問いを出す」「分かり難いところは体を使って表現する」などの重要性を、スカイプ交流を通して教師も子どもも気づいたようです。そのため、これらのことを日常的な授業の中で意識的に実践し、習慣づけていくことになりました。それを支える土台としてルーブリック作成も検討することになりました。

 第三に、子どもが“気づき”、“考え”、“発言する”ことを促す教具の利用です。スカイプ交流では、見て、聞いて、関わって学ぶことができます。多くのことが一度に起こるため、子どもたちが自分たちの経験を多角的に振り返れるように、事前に「振り返りのための枠組み」を示し、子どもの意識の方向づけをしていくことも検討しました。たとえば、図1のようなXチャートやYチャートを利用して、「聞いたことを通して学んだこと」「見ることを通して学んだこと」「話してみて学んだこと」と視点を示すことで子どもは、その経験から何を学べばいいかよりわかりやすくなります。また、実践の最中においても図2のように「わかった単語」「わからなかった単語」という表にメモをさせると、あとでわからなかった単語の学習活動につなげることができそうです。

Xチャート/ Yチャート

図1 Xチャート/ Yチャート

PMIチャートの応用

図2 PMIチャートの応用

 本授業を通して、観察者である私も多くのことに気づき、考えることができました。授業研究では、先生方と多く意見交換をすることができ、大変有意義な時間でした。次のスカイプ交流では上記の3点を視野にいれてスカイプ交流を実践できればと思います。

2017年9月25日(月) 岸 磨貴子

特別指定校 御所市立名柄小学校
アドバイザー 岸 磨貴子 明治大学特任准教授

アドバイザー訪問記(3)

 第3回目(10月23日)の訪問では、ルーブリック(Rubric)に関する研修を行いました。今回の訪問では、3年生の国語の授業(葛城小学校との合同授業)1年生の学級活動(御所小学校との合同授業)の2つの授業を見せてもらう予定でした。しかし、台風21号による休校のため、急遽、ルーブリックの作成の研修を行いました。

研修の様子

ルーブリック研修では、次の4つの活動を行いました。

    (1)ルーブリックの意義と作り方
    (2)校内研修で先生がたが作成したルーブリックを検討・改善
    (3)公開授業で予定していた国語科の模擬授業(ルーブリックの共同作成を体験)
    (4)模擬授業をもとにした振り返り

<何故、ルーブリック?>
 第2回の公開授業研究会(第2回訪問)では、テレビ会議を通した遠隔授業を、如何に教科と関連づけて指導するかを検討していくことになり、その具体的な方法として、ルーブリックを教師と子どもが共同で作成し、上記の活動を相互に行き来できる目標を立てていくことになりました。

 そのために、教師と子どもが共同でルーブリックを作成していく経験を積み重ねていく必要があります。これが習慣化すれば、子どもは毎回の授業で「自分(たち)は、何ができるようになりたいのか」「何ができたら“できた”ということになるのか」などを意識して授業に取り組むことができます。

 これまでも小学校の授業では、多くの場合、授業の最初に「今日のめあて」を教師が子どもに示します。これによって、子どもは「自分(たち)が何を目標として授業に取り組めばいいのか」について見通しを持って授業を受けることができます。これに加えてルーブリックを用いることにより、「自分(たち)が何をしたいのか/どうなりたいのか」を自分の言葉で表現し、具体化することができます。「今日のめあて」が教師の言葉であるならば、ルーブリックは子どもの言葉です。そのため、教師はルーブリックの共同作成において、徹底的に子どもの言葉に落として表現させていくことが大切になります。曖昧なところは「わからない」「もっとわかりやすく言い換えて」「つまりどういうこと?」とやりとりをしながら具体化していくのです。さらに、数値で「測りにくい学力」を子どもに意識させることができます。学校で子どもたちが習得するものは、テストなど数値で「測れる学力」だけではありません。意欲、関心、思考、判断、表現など「測りにくい学力」も多く学んでいます。名柄小学校で取り組む遠隔授業で、子どもたちは多くを学び、できるようになっていますが、子ども自身も自分がどこまでできるようになったのか、次はどれくらいできるようになりたいのかを示すことができなければ、「今自分がどのあたりまでできているのか」振り返り改善することが難しいです。テストで75点をとれば、子どもは「次は80点までがんばろう!」と思うでしょう。しかし、「測りにくい学力」については、次にむけて何をどのようにがんばればいいかがわかりにくいのです。ルーブリックはそういった「測りにくい学力」を言葉で段階的に示し、子どもたちに今どの段階にいるかを示します。そしてその段階を、子ども自身が「納得」できるものにすることで、子どもに主体性と責任感をもって取り組ませることができます。そのため、時間がかかっても教師と子どもが一緒になってルーブリックを考え、意味づけていくことが大切です。

 研修では、ルーブリックの意義を確認したあと、実際に授業の中で、どのように教師と子どもが一緒にルーブリックを作るのかについて話し合いました。予定していた国語科の模擬授業を行い、導入部分でルーブリックを共同制作しました。研修に参加した先生がたが子ども役をしながらルーブリックを作ったのですが、子どもの言葉に落としていくというのは簡単なことではありません。しかし、教師と子どもの共通理解を作っていくというのは、先生がたが普段から授業でされていることですので、コツがわかればうまくできそうです。そのコツとそのプロセスもあわせて、研究知見として出していけたらいいな、と思いました。

本期間(8月~12月)の取り組み内容

  • ①インタラクティブプロジェクターの導入・研修
    昨年度、遠隔合同授業を行った際、2校の板書についての課題があがった。webカメラで黒板の映像を送っても内容が見づらい。事前に2校の教員が打ち合わせをし、同じ内容をそれぞれの学校で板書していくことも、予想外の児童の反応に対応しきれない。というものであった。この問題を解決する方法として、2校で画面共有ができ、双方から書き込みができるインタラクティブプロジェクター(Epson EB-1460UT)を導入することにした。
    【2チームに分かれ画面共有の実践練習】
    【2チームに分かれ画面共有の実践練習】
    【プロジェクターの操作練習】

          【2チームに分かれ画面共有の実践練習】        【プロジェクターの操作練習】

    【授業での使用の様子①】

    【授業での使用の様子①】

    実際に授業で使用した際、板書が共有できたという利点だけではなかった。書き込んだ画面は保存ができるため、前時の振り返りもスムーズに行うことができた。また、2校間での打ち合わせの際も、Skypeの複雑なカメラ設定も画面共有し、書き込みをしながら打ち合わせを行うことができた。さらに、特別支援学級でこの画面共有を利用した学習を行ったところ、浮かび上がってくる文字に児童の意識が集中し学習への関心が1時間途切れることがなかった。このように多岐にわたる活用の可能性が生まれた。
  • 【授業での使用の様子②】

    【授業での使用の様子②】

    【事前打ち合わせ】

    【事前打ち合わせ】

  • ②公開授業研究の実施

    • 【5・6年生の授業風景】

      【5・6年生の授業風景】

      ◆9月25日:5・6年生 外国語活動
      日本に来られた留学生と英語で交流。事前に調べた留学生の母国のことについて質問をしたり、自分たちのことを話したりした。なかなか伝わらないときに、どうすればいいのか、聞いた内容が本当にどこまで理解できたのか、が課題となった。

    • 【3年生の授業風景】

      ◆10月24日:3年生 国語科
      一斉授業だけでなく、グループでの話し合い活動にもチャレンジ。Skypeの多元接続となったため、ハウリングへの対応が喫緊の課題となった。集音マイクの導入を検討。

    • 【1年生の授業風景】

      【1年生の授業風景】

      ◆10月27日:1年生 学活
      市内の小学校1年生と学校紹介クイズの交流。どのように話したら伝わりやすいのか、返事・ジェスチャー等Skypeを通してのコミュニケ―ションに気をつけさせた。

    • ◆11月21日:1年生 生活科 3年生 国語科 5・6年生 総合的な学習
      奈良県小学校生徒指導研究大会の公開授業として県内外の100名を超える先生方にSkypeを活用した授業を参観していただく。

      【柿博物館館長に質問】

      【柿博物館館長に質問】

      【役割分担をして話し合い活動】

      【役割分担をして話し合い活動】

      【御所市長に提案】

      【御所市長に提案】

  • ③ルーブリック評価についての研修
    アドバイザーの岸先生から指導・アドバイスをいただきながら、ルーブリックについて研修を行い、ルーブリック評価づくりを行った。評価を作った時に困った点や振り返りの方法等わからない点を出し合い、授業に活かせる評価づくりを行った。
    【東京の岸先生とSkypeを使ったルーブリック研修】
    【東京の岸先生とSkypeを使ったルーブリック研修】

    【東京の岸先生とSkypeを使ったルーブリック研修】

  • ④レイアウトマップの作成
    レイアウトマップの作成
    ICT機器の配置を誰でもわかりやすくセッティングできるよう、図解した。良かった点・問題点・考慮する点も記入し、今後ライブ授業を行うときに、どのような教室空間を作るかの参考にできるようにした。しかし、「見やすさ」という点においては、今後もさらに追求していく必要がある。

アドバイザーの助言と助言への対応

■助言

  • ① 評価の在り方について
    ICT機器を活用したコミュニケーションとそうでないコミュニケーションの整理が必要。ルーブリック評価を利用すると良いのでは?

  • ② 授業・学習の「振り返り」について
    Xチャート・Yチャート等の活用。次の授業に活かすための振り返り。

  • ③ マニュアル・モデルづくり
    教室の配置について、レイアウトマップを作り、P(良い点)・M(問題点)I(考慮する点)の3つの観点について記述する。

  • ④ あれもこれもと広げず、研究を焦点化する

■助言への対応

  • ① ② ルーブリックとの初めての出会い・振り返りを大切に
    9月の訪問時、岸先生からレクチャーを受け、とにかく授業で児童と一緒にルーブリックを作ってみた。うまくいかなかった点は岸先生にアドバイスをいただきながら、どうしていけば良いのか、試行錯誤している。日頃の授業の中で、児童と意見交換をしながら「今日の目指すべきもの」を具体的に示す。さらに、自分たちで立てた目標の到達を自己評価できる振り返りを行う。

  • ③ レイアウトマップ・人材バンクづくり
    ライブ授業を行ったあと、教室のICT機器配置図をまとめる。Skype接続先は人材バンク一覧にまとめる。ゲストティーチャーへの謝金を予算計上する。

  • ④ 実践の積み上げ
    ライブ授業とプログラミング学習の計画を当初立てていた。新たなプログラミング学習に手を広げるのではなく、今までの授業実践の積み上げを大切にしていく。

本期間の裏話

  • 夏休みに市内の全小中学校のPC総入れ替えがあり、児童用PCはタブレット型になった。また、PC操作環境も一変し、セキュリティ強化もされることになった。情報の保護を考えれば、当たり前のこととはいえ、今まで自由に使えていたインターネット回線の制限がかかりSkypeの使用を許可してもらえるか?という不安もあった。そこで、Skype活用に関する本校の研究成果や今後の研究計画、市内小中学校への取組の普及等について、市教委やPC業者と何度も交渉をもった。その結果、市内各校全PCにSkype導入が実現し、本校の研究をさらに進めることが可能となった。
  • 11月21日の研究大会当日、3年生の児童1名が前日から体調を崩し、欠席となった。在籍児童2名中の1名欠席。「もう1名も欠席しないだろうか?1名の児童へのプレッシャーは大丈夫だろうか?」担任も周りの教員も前日から不安の色が隠せなかった。しかし授業本番、周囲の不安をよそに1名の児童はグループでの話し合いの司会をしっかりとやりとげた。昨年から本校の授業に関わってくださっている先生方から「彼女がこんなにハキハキと自分の意見を言ってるところを初めて見ました。」と褒めていただいた。児童は確実に力をつけてきているということが実感できた。

本期間の成果

    ライブ授業構成の見直し

  • 今まで、一度Skypeをつなげると1時間中ずっとつなぎっぱなしであった。例えば、バーチャル見学を行った時には、児童の質問に対して映像と共に回答していただくというパターンが多く、質問をする児童以外は、ひたすら話を聞いているだけであった。そこで、一旦Skypeの接続を中断し、学級での話し合いの時間を設けた。
    写真:研修の様子
    単調であった授業の流れに変化をつけることができたとともに、児童の学習の参加意欲が上がった。また、回答に対しみんなで話し合いをもつことで、新たな疑問・質問が生まれ、考えがより深化する場面もあった。
  • タブレット型PCの導入により、webカメラを多数活用できるようになった。そこで、Skypeの接続も多様化できるようになった。今まで、一斉授業でのSkype接続だけであったが、グループに分かれての話し合い活動を取り入れることができた。それに伴いSkype接続に対する教員の技量が上がった。
  • ルーブリック評価について教員の共通理解

  • 普段の授業で取り入れていくことを全教員で共通理解した。試行錯誤の毎日ではあるが、蓄積された評価を整理分類していくことが今後の課題となる。

今後の課題

  • 児童にコミュニケーションスキルをつける授業展開を教員が意識づける。
  • ルーブリック評価についての研鑽。
  • 集音マイクの活用方法。
  • 見やすい、わかりやすいレイアウトマップの作成。

今後の計画

  • ルーブリック評価を授業に取り入れ、評価の蓄積をする。
  • 市内学力向上フォーラムにて本校の取組報告。
  • 2月公開授業研究を行う。
  • 研究紀要作成。

気付き・学び

遠隔合同授業において、協力校より少人数の本校児童が取り残されないよう、授業を主で進めるのは本校の教員が行っていた。合同授業を進めている様子を参観していると、授業の中で違和感をもった。それは、本校の児童が「画面向こうの協力校の児童と自分たちの担任が授業をしている様子を見学している」という状況に見えたことであった。画面を通してではあるが、一緒に学習しているという感覚を与えるためには、どうすればよいのか?答えは画面向こうにあった。児童は画面向こうから言葉は、必死で聞き取ろうとする。そして、反応を返そうとする。だからこそ、協力校の児童は本校教員との授業に一体感がみられた。そこで本校教員が1時間中、主として授業を進めるのではなく、時折、主を入れ替え授業を進めることにより、2校の児童が一体感を持って学習に取り組むことができてきている。合同授業における2校の教員の役割については、これからも研究をしていかなければならない。

成果目標

  • ① 児童のコミュニケーションスキルの向上
    Skypeを通した授業でのコミュニケーションスキルの在り方、また普段の授業・学校生活でのコミュニケーションスキルの在り方を整理するとともに、どのような取組を実践することで、児童のコミュニケーションスキルを向上させることができるのかを具体化する。

  • ② 教員の授業力向上
    「Skypeを使うためにどんな授業をするのか?」ではなく「授業の目標を達成するためにSkypeをいかに利用するのか」へと教員の考え方を転換するとともに、Skypeを効果的に活用した授業設計を行う。授業設計にあたっては、単に1時間の授業だけでなく、単元全体を見通した計画を立てる。

  • ③ 評価についての客観的指標づくり
    コミュニケーションスキルの育成の過程と定着をどのように評価するのか客観的に判断できる指標をつくる。

  • ④ いつでも誰でも使えるマニュアルづくり
    Skypeの接続先を一覧にし、人材バンクを作成する。Skype接続のレイアウトマップをつくり、利点・欠点等をまとめる。

アドバイザーコメント
明治大学 国際日本学部 特任准教授 岸 磨貴子 先生

本校の研究テーマ・取り組みの意味付け・解説
 名柄小学校では、子どもたちに教室や地域を超えて学習を広げていこうと、遠隔合同授業、バーチャル見学、テレビ会議を通した英会話演習などを実施しています。その目的は、外部の人とコミュニケーションを取る機会が地理的に制限されている子どもたちに、様々な人たちとコミュニケーションをとり、関わり、学ぶ機会を作っていくことです。
 名柄小学校では、これまでの実践を通して本研究助成を受けて、次の3つの課題に関する研究に取り組んでいます。第一に、いかに児童の学習・発達を捉えるかということです。特に子どもたちのコミュニケーション力に焦点をあてて、それをどのように捉えていくのかを検討します。第二に、子どもたちのコミュニケーション力を支援するための学習空間のデザインです。机や椅子の配置、子どもの興味や関心、思考を可視化しコミュニケーションを促すための白板や黒板の利用、即興的にうまれていく会話を授業後に振り返りができるようなワークシートの利用などです。そして最後に、これらの実践をいかに教科と相互に接続させながら学習の質を高めるかです。たとえば、テレビ会議で話題になった海外の話題を社会につなげたり、うまく相手に伝えることができなかったことを国語につないだり、またその逆もあります。教科横断の視点をもって、教科に閉じた授業から教科から広がる授業へ、経験から教科内容の理解を深める授業へと展開しているところに特徴があります。

本期間の取り組み・成果の評価
 名柄小学校では、すでにテレビ会議を使った実践を行なっていたため、それまでの経験を土台に8月から12月までの4ヶ月、次の取り組みが行われました。その成果の評価もあわせて次の3点を報告します。
 (1)発展的な実践のための機材の設置と実践研究
 名柄小学校では、インタラクティブプロジェクターを導入し、「テレビ会議を通した会話」に加え「共同的な学習」の実践研究を始めました。私は特別支援学級の授業を視察しました。遠隔地にいる先生がインタラクティブボードを通して特別支援学級の子どもに話かけることで、子どもたちの「言葉」を引き出し、子どもの「書く」「表現する」学習を促していました。他にも報告書にあるように、テレビ会議と併用したり、授業で活用したりするなど多様な実践事例が蓄積されています。

 (2)学校間交流の実践
 本研究課題でもあるテレビを活用した教育実践を、グループ間、異学年間、学校間、国際間(留学生と)で実施されてきました。文化的規範(習慣や価値観など)が類似した人から異なる人たちまで幅広く関わることを通して、子どもたちのコミュニケーションを育てる取り組みが行われました。私が視察した国際間(留学生)との実践も大変興味深いものでした。視察の感想については、下記のURLにて報告しています。着実に実践事例が蓄積され、課題が明確になり、それにむけた研究が具体化している点にその成果を確認することができます。
アドバイザー訪問記(2)http://www.pef.or.jp/school/grant/special-school/nagara/?tabtrg=box02

 (3)評価基準の策定
 名柄小学校では上記のような新たな実践の試みを行なっていますが、その成果を如何に可視化するかを課題としていました。評価の目的は(1)実践をより良く改善していく、(2)子どの学習・発達の変化を捉える、(3)実践の成果を報告する(説明責任として)です。本実践研究では、「コミュニケーション」を重点とすることから、ルーブリックで可視化することになりました。しかし、ルーブリックを取り入れただけで、上記の3つができるわけではありません。上記の3つの目的をふまえて、教師と子どもが共同的にルーブリックを作ることになりました(詳細は、訪問記(3)にて報告)。教師と子どもが共同的にルーブリックをつくるためには、その意義や方法を教師も子どもも共有することが必要です。そこで、まずは、それぞれの授業でルーブリックを作れるようになることをめざして取り組んでいます。それができるようになれば、次の段階として、テレビ会議を通したコミュニケーションのためのルーブリックをつくっていきます。
 訪問記(3)http://www.pef.or.jp/school/grant/special-school/nagara/?tabtrg=box02

今後の課題・期待
 テレビ会議と通した教室の「外」とつながる教育実践は、教室の中の閉じた授業とは次の点において大きく違います。テレビ会議を通した今日いう実践は、シナリオ通りには進まないことです。常に予想外のことが起こりうるため教師も子どもも即興的に対応していくことが求められます。テレビ会議を通した子どものコミュニケーションとは、まさに「わからないこと・経験したことがないこと」を「即興的に対応していく力」が含まれます。まさにこれが、課題であり、期待するところです。私が視察した国際間(留学生と)の実践においても、相手からの質問が理解できなかったり、自分たちが質問したことが相手に伝わらなかったり(質問の内容は伝わっても、なぜ、そういう質問をするのかが伝わらなかった)していました。そういう時、どのように「会話」を続けるのか、相手に伝わるように「表現」を即興的に工夫するのかが求められます。これは大人にとっても難しい課題ではありますが、どの年齢(発達段階)でも挑戦はできます。重要なのは、その機会があるかどうかです。名柄小学校ではそういった機会を多く経験する場を設けているため、子どもたち自身が教師と一緒になって、「わからないこと・経験したことがないこと」に共同的に取り組み、そのやりかたを探求しています。その結果もそのプロセスそのものも教育面においても、学術面においても大変価値のある知見になるでしょう。

他校の参考になる助言 等
 名柄小学校の実践から他校が学べることはいくつもありますがここでは2点あげます。第一に、名柄小学校の実践事例は他校が同様の実践をはじめる上で大変参考になります。また、成果だけではなく課題についても報告がまとめられていることから、同様の実践をされる学校が何に気をつけて実践をすべきかについても参考になります。第二に、新しい実践創出のプロセスです。新しいことを実践する際には参考にできる先行研究が多いわけではありません。やりっぱなしにならないように継続的に実施するためには、実践するにとどまらずそのための体制づくりや研究のプロセスも参考になります。第一については報告書に記載されているのでそれを参考にしてみてください。第二については、研究(アクションリサーチ)として成果発表されることを期待したいと思います。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

  • ① 授業研究実施

    • ◆2月7日 6年生 外国語活動「相手を知るために自分で考えて聞こう。」今まで外国語活動で学習したことを活用し、英語で留学生と会話をする。

      【 学習空間の工夫 】

      【 学習空間の工夫 】

        前回の研究授業で課題となった「聞いた内容を子どもたちがどこまで理解できているのか?」という点を克服するため、今までは、質問をした子どもだけが受け答えしていたが、「○○○って言ったよな?」「こういう意味じゃない?」と周りの子どもたちもお互いに内容を確認しながら会話を進めた。また、わからない内容について調べることができるPCを設置し、子ども自身または教師が検索し表示した。しかし、インターネット検索において、フィルターがかかり検索できないことも多くその対応も考えていかなければならない。

  • ② ルーブリック評価を行った授業の記録作成

    •  以下のような記録シートを作成し、日々の授業で子どもたちがルーブリックを用いて自己評価できるよう実践した記録を残しておく。子どもたちが自己評価した結果をPDFデータにし、記録シートにリンク先として貼り付ける。

      授業の記録作成
  • ③ 宇検村立名柄小中学校との交流

    • ◆3月15日(木) 3年生
       奄美大島にある名柄小中学校とは「名前が同じ」つながりで手紙の交流から始まった。2学期にはSkypeを通して全校での交流をもち、3学期は人数の少ない3年生が名柄小中学校3・4年生と交流をもった。自己紹介では自分の特技を披露し合い、子どもたちの緊張も和らいだ。

      【特技のピアノ演奏を披露】

      【特技のピアノ演奏を披露】

       図工の作品紹介をした場面では、作品の見せ方を工夫したり、クイズにしてみたりと相手にどのように伝えれば良いか、相手意識をもったコミュニケーションが自然と行われていた。
       3年生は合同授業などSkype を利用した授業を多く体験しており、子どもたち自身Skype を通したコミュニケーシ【特技のピアノ演奏を披露】 ョンに慣れていた。回数を重ねることの必要性を改めて感じた。
      【図工の作品をお互いに紹介】
      【【図工の作品をお互いに紹介】

      【図工の作品をお互いに紹介】

  • ④ 名柄小学校が目指すコミュニケーションスキルまとめ

    • レイアウトマップの作成
       「子どもたちに必要なコミュニケーションスキルとは?」を考え授業を行ってきた。1 年間を通して、個々の教員の実践の中で出てきた「子どもたちにつけて欲しいコミュニケーションスキル」を左記の「名柄小学校が目指すコミュニケーションスキルがある子ども像」としてまとめ共有化した。少人数という強みをいかして、子ども一人一人の個人カルテをつくり、このコミュニケーションスキルの項目を指標にし、学習面と生活面の「話す・きく」の状況を書き込んでいる。学級担任だけでなく、教科担当等も含め全教員から見た意見が書き込めるようデータを校内サーバー内でオープンにしている。今後、子どもたちの変容と取組との関わりを考察していきたい。

アドバイザーの助言と助言への対応

〈2月7日の提案授業について〉

  • ① 目標設定について

    • ・まだやっていない活動に目標を立てることは難しい。イメージを共有するためにわからないところはシミュレーションしてみる。
    • ・「相手のことを知りたい!」と児童が強く思えるような状況を設定すると、目標設定しやすい。
      ex.「3・4年生にヤーセルさん(留学生)のことを教えてあげよう。」
    • ・「知りたい」と思ったことを知ることのできる手立てもあわせて用意をしておく。
      ex.「わからない言葉は日本語OK。ただし、習ったことは必ず英語を使う。」等のルール設定をする。
  • ② 児童の学習の様子から

    • ・「英語で話していた時」と「日本語で話していた時」の違いを検証してみる。「自分で考えて聞く」という目標と「英語で話す」ということにギャップがあった。「日本語で話してもいいよ。」と言ってからの子どもの意欲的な姿から、聞きたいことはたくさんあるけれど、「英語で話す」ということのハードルが高かったのではないか。また、日本語で話しているときは、相手がわからなかった言葉に対し簡単な言い方に変えて質問していたのは、まさに相手意識をもったコミュニケーションをとっていると言える。授業を「前半英語タイム」「後半日本語タイム」というような構成にしてもよかった。

-助言への対応-

  •   授業設計を行うにあたり、今回の授業だけでなく子どもが「知りたい」と思える場の設定を考えていく。子どもが目的意識をもって授業に参加できる状況を設定する。
     授業づくりについては、指導案検討に岸先生にも参加いただき、よりよいものにしていく。

〈ルーブリックについて〉

  • ① ルーブリックはコミュニケーションのツール。まずはルーブリックを使って子どもたちとコミュニケーションを楽しむというスタンスで行う。
  • ② たくさん子どもたちから意見が出たときに、教師が今日の授業ですることに合う意見だけをピックアップしていくと、子どもたちは教師が求める答えだけしか言わなくなり、話せなくなってしまう。子どもが出す意見はすべて書き留める。その中でどれを選択するのかは、子どもと教師とのコミュニケーションで選んでいく。選ばなかったものは、後日活用することも可能。
  • ③ ルーブリックを作るときに先生方が疑問に感じたことや、質問したいことが研究の知見になるので、記録をとりまとめておくとよい。

-助言への対応-

  •   ルーブリックを作成するにあたって、子どもとの対話を重視していく。教師の都合の良い意見だけとり上げず、意見を集める。苦労した点、疑問点等は記録シートに記入し、全教員で共有する。

〈今後の研究について〉

  • ① 児童の成長を撮影した映像データを用いて分析をする。その方法については、次回の研修で深める。
  • ② レイアウトマップをまとめるに当たって、交流学習の型に合わせて、目的別にするとよい。
  • ③ 提案授業の事後討議において、今回の授業の反省を踏まえ、次回の授業はどうしていくかを先生方みんなで考える時間をとり、授業のレベルアップをはかる。

-助言への対応-

  •   レイアウトマップについては、ハードチームによる再検討を行う。事後討議のもち方についても、研修部会が中心となり、検討を行う。

本期間の裏話

  • 校内でインフルエンザが蔓延し、2月の研究授業予定の6年生に流行らないかと懸念していたところ、子どもたちは無事でしたが、接続相手の留学生の方がインフルエンザに罹られた。前日、どうしたものかと代わりの相手を探したり、別プログラムを考えたりと大慌てでしたが、インフルエンザをおして子どもたちとの交流をしていただけホッと一安心。
  • 留学生の方は岸先生から紹介いただいたシリア人のヤーセルさんでした。交流の後日、職員室で「なんだか最近シリアのニュースがやたらと気にかかるんです。」「私もそう。いつも聞いていても、遠い国の話で他人事だったのが、そう思えない。」と教師間で話をしていたのですが、これは私たち教師だけではなかったのです。6年生の児童たちが「昨日、シリアのニュース見た。」「ヤーセルさんとこやんな、大丈夫かな?」「科学兵器のこと、新聞に載ってた。」と教室で話をしていたようです。シリアの場所さえ知らなかった子どもたちがSkypeを通して、普段出会うことのない人と出会い、自分たちの世界が広がったということを改めて感じました。
  • 3年生は毎年、老人介護施設へボランティア活動の一環として交流会に行きます。80人ほどのご老人の前で子どもたちが様々な出し物や交流をするのですが、今年の3年生は2名。ご老人の多さに圧倒されることが予想されましたが、2人は物怖じせず交流会を無事に終えることができました。たくさんの人の前でも恥ずかしがらずアピールできたり、初対面の人ともコミュニケーションをとれたりできるのも、Skypeを通してたくさんの人と出会い交流してきた成果の一つと考えられます。

本期間の成果

  • ① 授業のスタイルに合わせて、学習空間のレイアウトを考えることができた。今後はこれをレイアウトマップにまとめていく。
  • ② 全教員が授業でルーブリックを取り入れ、記録を残していくようになった。
  • ③ 全教員が「コミュニケーションを身につけた子どもの姿(目指す子ども像)」を共通認識できた。

今後の課題

  • ① ルーブリック評価について記録シートの内容の考察とルーブリック作成においての疑問点をまとめ研鑽を積む。
  • ② 教員の共通理解にとどまっている「コミュニケーションスキルのある子ども像」を子ども自身にも共有できるよう、学年段階を追った「コミュニケーションスキルがある子ども像(子どもバージョン)」を作成し、教室掲示するなどして、意識を高める必要がある。
  • ③ ICTを活用したコミュニケーションと対面との違いを子どもたちの体験をもとに子どもたちと対話しながらまとめていく。
  • ④ 本校の研究の普及活動について、どのように行っていくか具体的構想を立てる。

今後の計画

  • 1年のまとめとして、授業の記録(ビデオ)を考察し、子どもの成長を岸先生とSkypeで研修を行う。
  • 今年度の取組を整理し、研究紀要にまとめる。
  • 来年度の公開研究会に向け、スケジュール調整を行う。

1年間を振り返って、成果・感想・次年度への思い

 「とにかくskypeを使ってみよう」と始めた昨年度の取組から、今年度は「いかにSkypeを使うのか」ということに重点を置き授業設計を行った。1時間Skypeをつなぎっぱなしの授業だけでなく、一旦接続を止め、子どもたち同士の話し合いを入れるなど授業の流れに変化をつけた。このことにより、子どもたちの集中力が持続するようになった。

 また、目新しさで子どもたちの関心を引くというライブ授業では、子どもたちが「あきた」と言えば成立しなくなる。「もっと知りたい」「教えて欲しい」「わかりたい」という知的好奇心をくすぐる授業内容であることが必要である。うまくライブ授業が成立しているときは、子どもたち自ら「言いたい」「わかってもらいたい」と積極的にコミュニケーションをとろうとし、学びに主体性が現れていた。次年度も引き続き授業内容の充実を行っていきたい。

成果目標

  • コミュニケーションスキルの評価として、ルーブリックを用いる。教員一人一人がルーブリックを使用した授業を行い、子どもたちともに作成方法に慣れる。実践については、後に考察できるよう記録を残しておく。
  • 授業のスタイルに合わせて学習空間の工夫をする。
アドバイザーコメント
明治大学 国際日本学部 特任准教授 岸 磨貴子 先生

<本校の研究テーマ・取り組みの意味付け・解説>
 名柄小学校は平成30年1月から3月の間、テレビ会議を通したライブ授業における「評価」を中心に取り組みました。名柄小学校では、今年度もテレビ会議を通して遠隔地にいる人たちと定期的に交流してきたため、児童もそれに少しずつ慣れつつあり、そのノウハウも着実に蓄積されています(名柄小学校による報告書を参考)。教師は実践を通して、児童のその“変化(the process)”や“できるようになったこと(the outcomes)”に”気づく“のですが、それをどのように評価するかについて悩んできました。この3ヶ月は特に、”評価“に着目して、実践および研究をされています。
 名柄小学校で取り組んできた“評価”の研究は「パフォーマンス評価」についてです。従来の評価では、知識やスキルの定着をテストによって判断する(説明責任を目的とする)ものが多いです。しかし、本実践における児童の学習・発達はダイナミックかつ複雑であるため、テストで測定することができません。児童は、実際に国内外の人と関わりながら、関心を広げ、見方や考え方を深め、相手との関わり方を変化させていく、まさに“自分自身のあり方”を変えていくー“今の自分”を超えて、“なりたい自分”になっていくー学習・発達します。このような測定が難しい児童の学習・発達を捉えるため、名柄小学校では、児童のパフォーマンスに着目することになりました。具体的には、教師と児童が共同的にルーブリックを作成し評価(振り返り)というものです。

レイアウトマップの作成
 パフォーマンス評価では、実際の課題(現実の世界)において児童が、複雑な課題解決のためにいかに知識やスキルを活用していくのかを評価します。たとえば、2月7日の外国語活動では、シリア人のヤーセルさん(明治大学留学生)とテレビ会議を通した交流をしました(写真1)。そこでは、これまで学んだ英語の単語や表現を使うこと、単語や表現を柔軟に組み合わせて新しい表現を生み出していくこと、日本語やジェスチャーを交えながらも英語で相手からの働きかけに反応すること、相手の関心ごとに自分の関心ごとと繋いで会話を生み出すこと、分からない内容をインターネットで分担しながら調べていくこと、一人でうまくできないことは誰かの力を借りること、誰かがうまくできない時自分の力を貸すことなどがパフォーマンスとしてみられました。これらがパフォーマンス評価の対象となります。
 もちろん、すべての児童が上述したようなパフォーマンスをするわけではありません。一人でも多くの児童が上述したようなパフォーマンスができるように教師と児童が一緒になってルーブリックをもとに振り返り(何ができて、何ができなかったのか、それはなぜなのか)、次の実践につなげます。
 パフォーマンス評価では、教師が児童に対して評価するのではなく、教師と児童が一緒になって評価する(目標を立てて振り返る)ことが重要です。何ができて、何ができなかったのか、それは何故なのかを教師と児童が一緒に振り返ることで、次の実践にむけた目標をたてることができ、それがより良い実践につながっていきます。

<本期間の取り組み・成果の評価:評価に関して>
 名柄小学校では、Skypeを利用したライブ授業以外にも、すべての学年において日常的に教師と児童が共同的にルーブリックの作成に取り組みました。日常的に行うことで、児童が自ら目標をたて、それを意識しながら主体的に学習していくことを習慣づけるためです。もちろん、知識・スキル習得を目標とした授業もありますので、すべての授業にパフォーマンス評価としてのルーブリックを入れる必要はありません。測定しにくい力を評価する授業においては「何をもってできたとするのか?」と、教師と児童がルーブリックをコミュニケーションのツールとして共同的にその評価基準を作るようになっていました(視察の結果より)。その成果は、名柄小学校の報告書でも確認できます。
 また、これらの日々の記録と経験の蓄積をもとに「コミュニケーションスキル」に関連するパフォーマンス(名柄小学校がめざすコミュニケーションスキル)を整理したことも評価できます(名柄小学校の報告書を参考)。トップダウンで教師が定めた目標ではなく、実践を通して教師と児童が生み出したボトムアップの目標であることに、高い教育的意義を確認できます。

<他校の参考になる助言:評価に関して>
 名柄小学校の教師は、児童と共同でルーブリックを作れるようになるまでに多くの課題に直面し、これらの課題を授業研究で取り上げ、議論を通して解決してきました。このような課題や疑問、そして解決したこと、しなかったことなどが丁寧に記録されているため、これらの記録は、今後、同様の実践をする学校や教師にとって参考になる知見となるでしょう。

<今後の課題・期待等:全体として>
 今後の課題として、次の2つがあります。第一に、来年度は、「研究」を軸とした実践(研究)を行うことです。Skypeを利用したライブ授業に関しては、継続的に実施していることから、円滑に実践を進めるためのモデル(レイアウト図を含)ができ、一見(表面的には)問題なく実施できています。しかし、児童間や相手との会話を丁寧にみていくと(会話分析すると)、新たに見えてくる課題もあります。実践中は流れるように物事が過ぎてしまいますが、名柄小学校では実践をビデオで記録していますので、今後は記録した映像を分析することで、より批判的・創造的に内省し、実践を改善する(発展させる)ための本質的な問いを見つけ、研究していくことが期待されます。
 第二に、パフォーマンス評価(ルーブリック)とあわせて、(パフォーマンス)課題を検討することです。先に紹介したヤーセルさんとの実践においても、外国語(英語)の実践的活用だけが目標であればうまくいった実践と言えますが、それを現実社会での複雑な課題(パフォーマンス課題の)解決を目標としているのであれば、いくつかの改善点がみえてきます。パフォーマンス課題を考える際には、(1)何がゴールなのか?(2)それぞれの役割は?(3)誰が相手なのか?(4)想定される状況は?(5)生み出される結果は?(6)評価の観点は?などの観点が課題設計に必要になります。児童にとってヤーセルさんと会話する目的は何だったのか、自分(たち)の役割は何か(友達関係なのか、教えてもらっているのか)、交流しているヤーセルさんはどんな人なのか、この交流を通して彼に何を聞きたいのか、彼に何を伝えたいのか(それはヤーセルさんが本当に知りたいことなのか)、ヤーセルさんと関わることで何をしたいのか(保護者や下級生にシリアについて教えてあげるなど)などの視点です。ルーブリック作成に加えて、その評価のための課題(パフォーマンス課題)についても、今後検討していくことができればと思います。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

  • ① 年間指導計画にライブ授業を位置づける
    各学年の年間指導計画の中で、どの教科・領域でどのようなライブ授業ができるのかを考え、単元計画を立てる。教員それぞれが考えた内容を全体でシェアし、それに対し、アドバイスを出し合う。

  • ② 主な授業実践

    【ホワイトボード共有の様子】

    【ホワイトボード共有の様子】

    ◆6年生:総合的な学習
    同じ中学校区の小学校と一緒に行く「水平社博物館」見学を中心とした部落問題学習の事前・事後学習を行った。インタラクティブホワイトボードを使い、お互いの意見や考えをまとめることができた。

    ◆6月29日:フリー参観
    全学年Skypeを利用したライブ授業を行う。

    1年生:生活科「がっこうとおともだち」(バーチャル見学)
    1年生には初めてのライブ授業。校長室とつないで校長先生に案内してもらいました。

    【2年生の授業の様子】

    【2年生の授業の様子】

    2年生:生活科「レッツゴー町たんけん!」(遠隔合同授業)
    奄美大島の名柄小中学校とそれぞれの町たんけんで発見したことをもとに、お互いの町を紹介し合いました。

    【3年生の授業の様子】

    【3年生の授業の様子】

    3年生:外国語活動“How many~?”(遠隔合同授業)
    市内の小学校とつなぎ、一緒に数の勉強をしました。インタラクティブホワイトボードを使って数の問題を出し合いしました。

    【4年生の授業の様子】

    【4年生の授業の様子】

    4年生:社会科「アザレアホールのひみつをさぐろう!」(バーチャル見学)
    実際に見学をしてきた後、学習の中で出てきた疑問を、再度ライブ授業を通して質問に答えてもらった。

    【5年生の授業の様子】

    【5年生の授業の様子】

    5年生:英語科「Let’s ask “Do you like~”」(遠隔授業)
    中学校の英語の先生に自己紹介。そして「好きなモノ」を“Do you like~?”と尋ねて探っていきました。

    【6年生の授業の様子】

    【6年生の授業の様子】

    6年生:英語科“Where is~?”(遠隔授業)
    日本在住の外国人の方に英語で質問をして、どこの国の人か調べました。「ワールドカップに参加していますか?」「大きい国ですか?小さい国ですか?」「国旗の色は何色ですか?」etc

  • ③ 「これができたらA(エ~)ねん!」コミュニケーションスキルがある子ども像(子どもバージョン)ポスター作成
    昨年度、教員が共通認識を行った「コミュニケーションを身につけた子どもの姿」を子どもたちにも共有できるよう、低・中・高学年の段階を追ったポスターを作成し、教室掲示を行った。

    これができたらA(エ~)ねん!
  • ④ コミュニケーションスキルの自己評価実施
    1学期末、子どもたちに普段の授業とライブ授業での「話す力」「きく力」がどれだけついているかを自己評価させた。どこができていて、どこができていないのか一人一人意識させると共に、2学期に向けての目標を明確にする。全体の考察は夏期休業中に行う。

アドバイザーの助言と助言への対応

【助 言】

  • ① ルーブリック評価について
    コミュニケーションについて子どもと立ててきたルーブリックの蓄積ができてきた。子どもの中でも、イメージができてきた。それを整理し表にまとめる。

  • 【6/29事後討議資料より】

    【6/29事後討議資料より】

    ② デザイナーとしての教師を意識する
    普通の授業は、「教えるプロとしての先生」しかしSkypeの授業では「デザイナーとしての教師」でなければならない。場をどうやってデザインしていくのか?どうやって関わっていくのか?を考えなければならない。29日の授業は、右記の4つのポイントにまとめられる。

  • ③ 「経験-振り返り-教訓-次の実践」の経験から次の課題へのつながり
    いい経験ができる環境が整ってきた。この経験を単に評価するだけでなく、得たものを次の実践にどのようにいかしていくのか。これを今後、考えていく必要がある。教師も子どもも深く振り返りするために「○○と比較」「○○から判断」○○に当てはまる言葉を多くみつける。

  • 【岸先生からのアドバイス】

    【岸先生からのアドバイス】

    ④ レイアウトマップについて
    今までP(よい点)・M(問題点)I(考慮する点)でまとめていたレイアウトマップを授業の型別に分類し、授業事例とともに整理する。

  • 【可視化のイメージ図】

    【可視化のイメージ図】

    ⑤ コミュニケーションの可視化
    交流相手とどんなコミュニケーションがとれたのか・できたのかを振り返り付箋に記入する。同じ相手なら、次回は付箋の色を変える。付箋の枚数や記入している内容により成長が可視化される。

【助言への対応】

  • ① 名柄小のコミュニケーションルーブリックの作成
    今まで作ってきたルーブリックをもとに、コミュニケーションスキルに関する内容をソフトチームで整理、検討を行う。また、教科の評価としてのルーブリックも充実させていく。

  • ② 授業設計の充実
    目的を達成するためにICT機器を使う。どのような必然性をもってICT機器を使うのかという点を再度、授業設計の段階で考える。そして、岸先生からご指摘いただいた4つのポイントを踏まえた授業のレベルアップを行う。

  • ③ ⑤ 有益な「振り返り」の確立
    子どもの成長が可視化でき、次の授業にいかせる振り返りをどのように行うのか、再検討する。

  • ④ レイアウトマップの改良
    岸先生からアドバイスいただいた点を参考に授業事例の効果的な教師の立ち位置も入れながらハードチームでレイアウトマップの改良を行う。

本期間の裏話

  • フリー参観、どうすれば多くの方々に参加してもらえるのか?知恵を絞り、興味を引くチラシを作ることにしました。市内の小中学校はもちろん、出入りの業者さんにも配り、広報活動。そのおかげか、当日はたくさんの方々に参観いただくことができました。
  • ライブ授業フリー参観

    フリー参観当日、奈良県教育委員会制作の広報テレビ番組の取材がありました。当日の授業の様子を撮影されるのはもちろん、先生・子どもへのインタビューもありました。緊張で棒読み、ぎこちない様子の先生を尻目に、子どもたちのインタビューはスラスラ流れるように1発OK。これもライブ授業で鍛えられたコミュニケーションのおかげなのでしょうか。

本期間の成果

  • 新年度になり、新体制のもとライブ授業・ルーブリック評価について再確認することで、全教員の共通理解をさらに深めた。年間計画・授業案を全体での意見交流を通して、個々の取り組みから全体化できた。
  • フリー参観を実施することでSkypeを利用したライブ授業を広めることができた。参加者にアンケート調査した結果も、肯定的な意見がほとんどで、保護者がライブ授業に対して期待感をもっていることがわかった。
  • 奈良県教育委員会制作の広報テレビ番組「まなびだより」が放映された(8月15日~9月14日http://www.nps.ed.jp/nara-cにてインターネット公開予定)ことにより、本校の取り組みが知られるようになり、他市からSkypeを使った授業をするに当たっての問い合わせがあった。

今後の課題

  • ① コミュニケーションスキルに関するルーブリック評価の整理をする。
  • ② 教科の目標を盛り込んだルーブリック作成の研鑽を積む。
  • ③ ライブ授業を4分類化し、レイアウト・授業のポイントを整理する。

今後の計画

  • JAETでの研究発表
  • 12月7日公開授業研究会を行う。

成果目標

  • ① 児童のコミュニケーションスキルの向上
    Skypeを通した授業でのコミュニケーションスキルの在り方、また普段の授業・学校生活でのコミュニケーションスキルの在り方を整理し、児童がどのようなスキルを身につけなければならないのか、そのスキルを身につけるためにどのような取り組みを実践し、児童のコミュニケーションスキルを向上させる。

  • ② 教員の授業力向上
    「Skypeを使うためにどんな授業をするのか?」ではなく「授業の目標を達成するためにSkypeをいかに利用するのか」という教員の考え方を転換し、授業設計を行う。1時間の授業だけでなく、単元全体を見通した計画を立てる。

  • ③ 評価についての客観的指標づくり
    コミュニケーションスキルの定着をどのように評価するのか客観的に判断できる指標をつくる。

  • ④ いつでも誰でも使えるマニュアルづくり
    Skype接続のレイアウトマップをつくり、利点・欠点等をまとめる。

アドバイザーコメント
明治大学 国際日本学部 准教授 岸 磨貴子 先生

<本期間の取り組み・成果の評価:児童の変容を捉える>
 名柄小学校における4月から7月の研究活動もまた、前に続き充実していたと思います。定期的にオンライン上でコミュニケーションをとりながら、実践について意見交換すると同時に、7月にはその成果を公開研究会で視察しました。今年度から校長が変わり新しい体制となりましたが、前年度に研究体制を整えていたため、混乱なく今年度も実践および研究活動を実施しています。今回のコメント(平成30年度4月から7月)は、特に児童の変化に焦点をあてて、次の2点についてその成果と今後の展望ついてコメントをします。
 第一に、児童の変化としてオンラインコミュニケーションの上達を確認することができました。最初は、テレビ会議の前で「会話しよう!」といわれても、児童は何をどのように話せばいいかわからず当惑していましたが、1年後の実践では、話し方、立ち位置、見せ方などを工夫しながら相手とコミュニケーションをするようになっていました。このようにコンピュータを介したコミュニケーションは、Computer Mediated Communication(CMC)といい、対面とはもちろん異なりますが、使うツールによって、それ独特のコミュニケーションの形態があります。テレビ会議で会話を始める時、相手の話を聞く時、話しかける時、終わる時、それぞれの段階で、工夫がみられました。
 第二に、毎回の実践の中で、児童は教師との対話を通して自分で目標を立てるようになっていました。それはルーブリックの設定において教師と児童のやりとりで確認できました。たとえば、教師が「○○について質問をすることができる」というねらいを児童と共有したあと、「“何をもって”“うまく”質問できたってことにする?」と聞くと、児童はそれに反応し、自分たちで具体化するようになってきました。これは、毎回のテレビ会議での経験の積み重ねと反省の結果であるといえます。学年によって返答の質や量に違いはもちろんありますが、状況や経験に応じて自分の目標を立てていました。

<他校の参考になる助言:学習環境デザインの観点から>
 上記の2つの児童の変化を確認することができましたが、その変化は「自然」に起きているのではなく、教師が、児童の学習・成長を支える環境づくりと深く関連しています。次に示す3つの知見は、類似する実践をこれから行う学校や教師にとって参考になるでしょう。
 第一に、コミュニケーションルーブリックの導入です。オンラインコミュニケーションにおいて「何ができたら上手にコミュニケーションができたとするのか」という基準を、教師と児童が状況に応じて共同で作成していたため、児童は目標をもってオンラインコミュニケーションに取り組めていました。コミュニケーションルーブリックについては、研究成果として、そのプロセスおよび課題や解決方法も合わせて今後共有いただきたいと思います。
 第二に、児童がオンラインコミュニケーションに慣れるための段階的な設計です。オンラインコミュニケーションに慣れている人と会話する機会を設けることで、児童に「どのようにすれば相手によく伝わるのか」「どうすれば気持ちや考えを表現できるのか」のモデルを見せることができます。6月29日の公開研究会においても、児童は、図書館員(社会科)やフィリピン人の英語教師、中学校の英語教師(外国語活動)などオンラインコミュニケーションに慣れた人との会話をし、そこから多くのヒントを得ていました。このような経験があると、ルーブリックを設定する際に目標をイメージしやすかったり、同世代の児童同士で交流をした時、自分達のパフォーマンスを彼らと比較しながら振り返りしたりできるでしょう。
 最後に、実践に関する教師の対話的内省とそこから得た教訓の次への活用のサイクルです。名柄小学校では特定の教師だけがテレビ会議を活用した実践をしているのではなく、全学年および複数の教科で実施をしています。つまり、すべての教師がオンラインコミュニケーションの経験をしているため、具体的経験に基づいて実践を振り返り、事例間を比較検討しながら教訓を導きだしていました。また、振り返りの観点も明確で、①授業スタイルに合わせた学習空間の工夫、②他のメディア(インタラクティブボードや白板、黒板、ノートパソコン、ワークシートなど)との組み合わせ、③目標設定と評価、を軸としており、これらに関する研究知見が着実に蓄積されています。

<今後の課題・期待等:全体として>
 今後の展開としては、オンラインコミュニケーションを手段として如何に教科の内容を深めていくかでしょう。報告書にあるようにICTを活用することで児童に多様な学びの機会と可能性を広げることができたので、次はこの環境とここで培われたリテラシーを活用して、いかに教科についての深い学びを実現していくかが期待できます。また、研究面においては、毎回の実践を映像で記録しているため、この映像データを横断的(時系列)に分析し、児童の成長とそれを促す教育的介入や環境を、データとともに示していただきたいと思います。

本期間(8月~12月)の取り組み内容

① 研究のまとめ

図1:実践事例の整理

図1:実践事例の整理

【ライブ授業を4分類化】

今までの実践事例を基に「授業デザインの主体(教師中心/児童中心)および「参加の形態(質疑応答/対話)」を2軸として事例を4つの形態に整理した。(図1)
第1象限をバーチャル見学型、第2象限をゲストティーチャー型、第3象限図1:実践事例の整理をワークショップ型、第4象限を合同授業型とし、これを遠隔授業の4つの形態とした。(図2)

図2:ライブ授業の4つの形態

図2:ライブ授業の4つの形態

【レイアウトマップの整理】

今までのレイアウトマップ(活動報告2017年度08-12月期参照)を「ライブ授業4分類」の型に分け、実践事例を時系列に整理した。(図3)
レイアウトマップに示すICT機器のマークを統一した。(図4)

図3:レイアウトマップ例

図3:レイアウトマップ例

図4:レイアウトマップマーク一覧

図4:レイアウトマップマーク一覧

② 研究発表会に向けての授業づくり

低・中・高学年部会に分かれ研究発表会で公開する授業の教材研究と指導案検討を行う。
低学年:2年生(生活科)「めざせミッションクリア!もう1つの名がらのひみつ」
中学年:3年生(社会科)「工場ではたらく人びとの仕事」
高学年:6年生(図画工作科)「モンスター・プロジェクト」

③ 「ライブ授業の取組から伝えたいこと」(校内研修)

今までのライブ授業の取組から研究発表会に来られる先生方に、「どんなことを伝えたいのか(名柄小学校から発信したいこと)」、「自分が参加者ならどんなことを知りたいか?」一人一人の先生方の考え、思いを出し合いKJ法でまとめた。

図3:レイアウトマップ例

KJ法でまとめている様子

図3:レイアウトマップ例

できあがり!

④ 研究紀要・マニュアルの作成

【研究紀要】

以下の項目でまとめた研究紀要を作成した。
・研究について
・ライブ授業3年間の実践
・6月に行ったフリー参観授業の指導案
・今までの実践で見えてきたもの(評価について・レイアウトについて)
・成果と課題
・資料(レイアウトマップ・話そう!きこう!これができたらAねん!・アンケート結果考察)

【マニュアル「Let’sスタート ライブ授業 ~御所市立名柄小学校トラの巻~」】

図5:マニュアル表紙

図5:マニュアル表紙

4分類したライブ授業のそれぞれのポイント、ライブ授業を始めるに当たり必要な機器をまとめた。(図5)
※研究紀要・マニュアルについて詳しい内容を知りたい方は名柄小学校までご連絡下さい。

⑤ 研究発表会の実施

12月7日に県内外から多数の参加をいただき、研究発表会を開催した。公開授業のあとの全体会では、「チーム名柄」で取組発表。その後、アドバイザーの岸磨貴子先生からの指導助言とご講演を行った。

【公開授業】

2年生の授業の様子

2年生の授業の様子

2年生:生活科「めざせミッションクリア!もう1つの名がらのひみつ」

奄美大島の名柄小中学校とつなぎ、事前に伝えていたお互いに調べてもらいたいミッションを発表した。本校は近くのスーパーのひみつを、名柄小中学校は奄美の動物・特産品を紹介した。
お互いの反応がよくわかるように「なるほど」「びっくり!」と書かれたリアクションカードを活用した。

子どもの振り返りシートより

子どもの振り返りシートより

2年生の授業の様子

3年生の授業の様子

3年生:社会科「工場ではたらく人びとの仕事」

地元の製薬工場をバーチャル見学。実際に行う見学では、決して入ることのできないエアーシャワー室・栄養ドリンクの充填室をバーチャル見学させてもらう。
疑問に思ったことを画面共有機能を使い、グループで質問した。

2年生の授業の様子

6年生の授業の様子

6年生:図画工作科「モンスター・プロジェクト」

奈良芸術短期大学とコラボしての学習。
カズ・オオモリ先生が出すリクエストフレーズ(絵描き歌のような言葉)をもとに、モンスターを描いていった。
授業の様子は、奈良芸術短期大学のHPにもUPされています。
https://www.naragei.ac.jp/%e5%b0%8f%e5%ad%a6%e7%94%9f%e3%81%a8skype%e 6%8e%88%e6%a5%ad%ef%bc%81/

子どもの振り返りシートより

子どもの振り返りシートより

ビデオ授業

「まなびだより」(活動報告2018年度04-07月期参照)と今までのライブ授業のダイジェスト版をビデオ上映した。

【チーム名柄の取組発表】

・研究の経緯
・ライブ授業で広がる学び(授業実践から)
・名柄小学校におけるルーブリック評価について
・まとめ
という流れでリレー報告

3人の先生方の発表の様子

3人の先生方の発表の様子

ワークショップの様子

ワークショップの様子

【岸磨貴子先生からの指導助言とご講演】

全体会の場の雰囲気をみて、ワークショップ形式での指導助言とご講演。
・参加の理由
・授業で関心をもったこととその理由
・ライブ授業の教師にとっての意義
をグループでディスカッションした。

アドバイザーの助言と助言への対応

【助 言】

 名柄小学校の取組を普及するためにも映像化してはどうか?今までの実践の映像に合わせて、教員・児童のインタビュー(インタビュアーは岸先生)を流す。教員へのインタビューは「ライブ授業の教師にとっての意義」を中心に3年間の振り返り。児童へのインタビュー(4分類に1人程度)は、ライブ授業の深い振り返り。このインタビューの手法を通して、「深い振り返り」の学びをしてみては。

【助言への対応】

 次回のアドバイザー訪問までにライブ授業を行う。インタビューを受ける児童を選出。校外への配信も考慮し、肖像権の確認を行う。動画配信できる環境を整える。

本期間の裏話

 本期間は、研究発表会に向けて苦労の連続でした。
 まず一つはインタラクティブプロジェクター。6年生の公開授業で本校と大学、双方向から絵を描き込みすることを活動に入れていました。しかし、実際に接続テストを行ってもつながらない!セキュリティとネットワーク上の問題だったのですが、問題を取り除いたはずが、やっぱりうまくいかない。なんとか裏技を駆使し、ようやく接続ができ模擬授業を行ったのですが、途中でまたもや不具合...。結局、1度も最後までつながらないまま授業当日を迎えることに!もし、不具合が出た場合の代案を用意し、冷や冷や臨んだ授業でしたが、 本番は途切れることなく、スムーズに進めることができました。「図工苦手やけど、この授業楽しかった!」とつぶやく子どもたちの笑顔に苦労も吹っ飛びました。
 発表会前日、「大変です!」準備をしている体育館に駆け込んでくるS先生。「明日持っていくポケットWiFiの電波立ちません!ネットで調べたら、ソ〇トバ〇クが通信障害って出てるんですけど...」3年生のバーチャル見学先から中継するS先生は、機材の最終チェックをしているときに気づいたのです。「一時のことちゃう?」と、その場はみんなたかをくくっていましたが、実はこれが世間を騒がした4時間余りの通信障害だったのです。無事、復旧してホッと一安心でしたが、これが一日ずれていたら...と想像すると、ゾッとする出来事でした。

本期間の成果

  • ① 研究発表会を行うことで、その準備として研究紀要づくり、マニュアルづくり、取組内容の検討等を通して、研究のまとめが行えた。
  • ② ルーブリック評価を通して、子どもたちの振り返りの内容が充実してきている。
    今まで評価項目が「できた・できていない」という振り返りしか書けていない子どもが「どこがどのようにできたのか、できなかったのか、次の時間にはこうしたい。」という“なりたい自分の姿”を書けるようになってきた。
  • ③ レイアウトマップを類型別、時系列に整理したことで、ICT機器の配置・学習空間の変容が見やすくなり、活用しやすくなった。
  • ④ ライブ授業を4分類し、それぞれの授業のポイントをまとめたことで、ライブ授業をデザインするとき授業者は、この授業はどの分類に当てはまり、どこを意識して授業づくりしなければならないのかが明確になった。

今後の課題

  • ① 本研究の普及活動
  • ② ライブ授業を継続して行うために、ライブ授業を「特別な授業」ではなく「普段の授業」となるための授業のスリム化(質は落とさず、いかに簡略化するのか)

今後の計画

  • 2学期末に行ったコミュニケーションスキルの自己評価を考察し、1学期末との変化を分析する。
  • 次回の訪問アドバイスまでにライブ授業を実施する。
  • 本研究のまとめとして取組を映像化する。

成果目標

  • ① 児童のコミュニケーションスキルの向上
    対面でのコミュニケーションのあり方、コンピューターを介したライブ授業でのコミュニケーションのあり方(より即興性が求められる)、の相違点をまず、教員が把握する。授業の形態に応じたコミュニケーションスキルを児童に示し、スキルを身につけさせる。

  • ② 教員の授業力向上
    「Skypeを使うためにどんな授業をするのか?」ではなく「授業の目標を達成するためにSkypeをいかに利用するのか」という教員の考え方を転換し、授業設計を行う。1時間の授業だけでなく、単元全体を見通した計画を立てる。

  • ③ 評価についての客観的指標づくり
    コミュニケーションスキルについては、ルーブリック評価(これができたらAねん!)をもとに自己評価を行う。

  • ④ いつでも誰でも使えるマニュアルづくり
    ライブ授業を分類化し、その授業のポイントをまとめる。さらにレイアウトマップとリンクさせ、ICT機器の配置、学習空間づくりの視点からのライブ授業事例の形態変化をまとめる。

アドバイザーコメント
明治大学 国際日本学部 准教授 岸 磨貴子 先生

<本期間の取り組み・成果の評価>
 8月から12月の名柄小学校の活動は、研究成果の分析と考察、知見のまとめが中心となりました。名柄小学校は、これまで全学年、全教科でインターネットを活用した遠隔授業を多数実施してきました。そのうち41の実践事例を分析対象として記録し、これらを分析することになりました。分析の視点としたのは、「児童中心型学習/教師中心型学習」および「質疑型/対話型」の2軸です。名柄小学校では、「子どもの主体的な学びを育てる授業の創造」を研究課題としています。その「子どもの主体性」にも、教師がリードする中で発揮される主体性と、子どもたち自身が関心や問いを見つけながら学びに向かう主体性があることに気づき、第一の軸を設けました。次に、事前に明確な問い(学習目標)があり、相手との質疑応答を通して理解を深めていく学びと、相手と一緒に作品を作ったり、遊びを通して言語や表現を学ぶなど即興的な対話を中心とする学びの形態があることから、2つめの軸を立てました。これらの軸に基づいて事例を分析した結果、図2に示すバーチャル見学型、ゲストティーチャー型、ワークショップ型、合同授業型の4つの授業形態に整理することができました。そして、それぞれの形態にみられる特徴や課題を、記録した事例のビデオやフィールドノートの分析と通して整理し、遠隔授業をする際の環境デザインのノウハウを図3のレイアウトマップとして示しました。
 レイアウトマップ作成においては、誰もが参考になるように、学年、教科、単元、授業の概要、ICT機器の配置、レイアウトの理由、課題を事例ごとにまとめています。また、デザインに必要な要素を図4に示すように記号化し、記録と修正、共有しやすいように工夫されました。モデルのイメージ図、図表をはじめ大変わかりやすくまとめられています。
 これらの研究の成果は、平成30年度日本教育工学協会(JAET)川崎大会で発表され、発表原稿を下記のURLから閲覧できます。

「遠隔授業の4つの形態とその授業デザイン」
http://www.jaet.jp/repository/ronbun/JAET2018_D-2-9.pdf

 名柄小学校のすばらしい点のひとつは、継続的な実践、発展的な実践、学校全体での記録に基づいた省察と改善、その知見の蓄積です。また、教師自身の「即興的授業づくり」への意識と態度も、私がとてもすばらしいとおもう点です。遠隔授業では、予測できないことが度々起こりますが、その経験の積み重ねが、教師の「即興的行為」につながったように思います。名柄小学校の先生方との会話の中で「何が起こるかわからないので、子どもの力を借りながら進めます」「どんなに準備しても予定通りにはいかないこともあるので、楽しみながらやります」「環境をしっかり作れば、なんとかなるかなと」という言葉を聞きます。学校というばは、即興的行為がなかなかできないのですが、名柄小学校では、遠隔授業を通して子どもも教師もその経験を自然に積み重ねていることが確認できました。

<今後の課題・期待>
 名柄小学校での取り組みは(実践も研究も)、他校においても大変参考になるのですが、全国に向けてのアウトプットが弱いです。今回、JAET川崎大会で発表できたことは大きな一歩ですが(実際、JAET川崎大会での発表を通して横のつながりも広がったようです)、より広く知見を共有するためには工夫が必要です。そこで、研究成果のまとめのひとつとして、実践を映像にまとめることを提案しました。映像を通してこれまでの取り組み、教師や児童の変化をストーリー化することで、「なんとなくわかってきたこと」「なんとなくできるようになっていたこと」「なんとなく変わったなって思うこと」を言語化し、共同的に意味付けすることができるからです。もちろん、映像制作のためにはそのための準備や技術も必要になりますので、大きな期待を押し付けてしまうのでは、という気持ちもありますが、価値ある実践をより広く届けるために是非実現していただきたいと思います。

<他校の参考になる助言等>
 12月の研究発表会において、参加者から次の問いが投げられました。
・遠隔授業をするために、相手(交流先)をどう見つけるのか。
・どのような準備をどれくらいするのか?
・遠隔でないほうが効率的に進めれるものがあるがそれについてどう思うか。
・予測できないことが起きた時どう対応するのか。
・相手(交流相手)と話したい!一緒に学びたい!知りたい!と思えるような導入がとても重要だということがそのために工夫していることは?
・子どもの変化として何を確認できたのか。
・自分で目標(ルーブリック)をたてれるようになるための指導は?
 これらの問いはどれも、遠隔授業を行う他の学校にとって参考になりますので、これらに対する回答(知見)も上述した映像に含んでまとめていただきたいと思います。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

① 研修月間の実施

教員1人1回授業公開する。Skypeを利用したライブ授業もしくは、ルーブリック評価を行った授業を公開し、参観した授業について討議を行う。

学年 教科・単元名 ライブ授業(接続先) ルーブリック
1年 国語「じゃんけんやさんをひらこう」
音楽「いろいろなおとをたのしもう」
2年 算数「めざせ九九マスター!名がら九九大会」
(宇検村立名柄小中学校)

3年

国語「立場を決めてディベートをしよう!」
図工「サンネンドタウンをつくろう」
4年 社会「工場ではたらく人びとの仕事」
(金正食品工場)
5年 英語「She can run fast. He can jump high.」
5・6年 総合「屋久島のすごさを守るにはどうしたらよいか」
(西之表市立現和小学校)
6年 総合「人権のふるさと 西光万吉と水平社」
(西之表市立現和小学校)
〈6年生の授業より〉

現和小学校より屋久島についての発表聞き、屋久島の活性化のためにどのようなまちづくりをしたらよいかを環境保全派と観光促進派に分かれ、資料をもとにグループで意見を出し、まとめる。
名柄小学校、現和小学校それぞれのグループでの意見を出し合い両校で話し合った。

②インプロワークショップ参加

Skypeを利用したライブ授業においては予定通りに学習を進められないことがある。機器の具合もそうであるが、一番は子どもたちがSkypeを通してどのような発見や気づき、こだわりと出会うのかということは、教師の予想をはるかに越えてくることが多い。そのようなときにどのように子どもの意見を吸い上げ、柔軟に即興的に対応していくのかということは、教師の力量を問われるところでもある。
そこで、アドバイザーの岸先生おすすめのインプロ(演劇手法)のワークショップに本校より3名参加した。

〈参加した先生方の感想・気づき〉
  • ・いろいろな場を設定する力が必要だと感じた。場の雰囲気に合わせて(参加者の反応、様子等)、めざす「めあて」は変えずに、アプローチの方法を変えていくワークショップを通して、「普段の授業においても、課題解決の方法は子どもたちにどれが響くか分からない。子どもたちの場の雰囲気を感じ取り、アプローチを変えていきたい。」と思った。
  • ・「失敗をゆるす」という考え方を学んだ。子どもたちに「こうあるべきだ」という考えを押しつけているということに気付かされた。
  • ・「ほめる」ことの大事さを改めて感じた。
  • ・ワークショップ自体を普段の授業にどのように活かしていくのか…まだまだ勉強が必要です。
  • ・黒木さんのグラフィックレコードにただただ感動!

③ 三年間のまとめの動画づくり

教員それぞれが伝えたいことをウェービングマップに表していった。

【ウェービングマップ作成の様子とできあがり】

【児童のインタビューの様子】

アドバイザーの岸先生と明治大学の学生さん、パナソニック教育財団事務局の方にお世話になり、この三年間を振り返り、ライブ授業についての児童・教師・保護者へのインタビューを行っていただいた。動画編集についても、支援いただき今後パナソニック教育財団のウェブで公開する予定。

アドバイザーの助言と助言への対応

【助 言】

名柄小学校最後の訪問では、名柄小の2年間の研究の成果を、児童12名、教員、保護者へのインタビューを通して整理をした。児童からは2年間の変化と自分ができるようになった点、児童にとってのテレビ会議を通した遠隔授業の意義について聞いた。保護者には児童の学習や生活態度にみられた変化について、そして教員には、テレビ会議を活用した地域とつながる授業づくりのノウハウやそれを通して何が達成できたのか、そして今後挑戦したいことについて聞いた。これらの結果は、映像に記録し、近日パナソニック教育財団のウェブで公開する予定である。

本期間の裏話

JAET川崎大会で同じ発表グループであった、種子島の現和小学校の先生と意気投合し、5・6年生の遠隔合同授業が実現した。それぞれの小学校で総合的な学習の時間で学習してきたテーマを相手校に発表し、そのことについて各校で話し合い、意見交流したがお互いの学校では発想になかった意見がそれぞれから出され、児童は環境の違う学校同士の意見交流の楽しさを味わうことができた。

本期間の成果

【教師のインタビューの様子】

  • ・動画撮影において、本当に3人の皆さんにお世話をおかけしました。時間を忘れて、校舎内をあっちこっちと移動しながら、振り返りとなるインタビューをしていただいた。
    「子どもたち、先生、お母さんがた、思ってた以上にいい話をするので、ついつい時間が延びちゃって…」と岸先生におっしゃっていただいた。児童も教師も今までの「何となくわかったこと」「何となくできるようになっ【教師のインタビューの様子】たこと」をインタビューを通して言語化し、それぞれの教師の意見を映像の中で、絡ませていただいたことで、研究の意義や成果が明らかになってきた。
  • ・現和小学校との遠隔合同授業は、教師にとっても大変意義のあるものとなった。「それはSkypeをつないでする意義があるんですか?」という現和小学校の先生からの問いに研究の原点に引き戻してもらった。「Skypeをつなぐことが目的ではない」と繰り返し、確認してきたが、ライブ授業をこなしていく中で、「とにかくSkypeをつなげれば、何かそこで得るものがあるだろう。」という安直な考えになっていた。「Skypeをつなぐ意義」を求めることは、教材そのものの本質をしっかり理解する教材研究がまず、無くてはならないものであるということを再確認した。

2年間の成果

① 児童の変容

・コミュニケーション力

当初、画面向こうの相手に対しどのように反応していいのか分からない。表情も硬く、事前に用意していたことや練習を重ねたことしか言えず、相手から問われたことに答えることができなかった。しかし、ライブ授業を通して、いろいろな人と出会い、その人たちから影響を受け、「こうしたらいいんだ」ということが分かり、「自分たちも話したい」と即興的に相手とコミュニケーションをとれるようになってきた。

・ルーブリック評価を通して

当初、画面向こうの相手に対しどのように反応していいのか分からない。表情も硬く、事前に用意していたことや練習を重ねたことしか言えず、相手から問われたことに答えることができなかった。しかし、ライブ授業を通して、いろいろな人と出会い、その人たちから影響を受け、「こうしたらいいんだ」ということが分かり、「自分たちも話したい」と即興的に相手とコミュニケーションをとれるようになってきた。

② ライブ授業モデル例の整理

  • ・100を越える授業実践を蓄積できた。これを「授業デザインの主体(教師中心⇔児童中心)及び「参加の形態(質疑応答⇔対話)を2軸として実践事例を4つの形態に整理できた。それぞれの型のポイントとなることをまとめ、ライブ授業設計の参考とした。
    →ライブ授業の使用機器一覧とあわせて「Let’s スタート ライブ授業~名柄小トラの巻~」を発行、配布した。
  • ・ICT機器の配置をレイアウトマップとしてまとめた。
  • ・今までの接続先を、Skype人材バンクとして作成した。

③ 教師のスキルアップ

打ち合わせも含めると授業実践の倍以上になるSkypeの接続を通し、教師もICT機器に対する意識が高くなった。本年度の「教員のICT活用指導力の状況」において肯定的意見は、A項目100%(H29年度奈良県80.9%)、B項目88.9%(同74.0%)である。研究を始めたH27年度の結果と比べても、スキルアップがうかがえる。

【全国(H29)・奈良県(H29)・本校(H30)の比較】

【本校H27年度とH29年度の比較】

今後の課題

  • ・教師:教材研究・授業力の向上
  • ・児童:自分の考えを自分の言葉で伝える。
  • ・さらなるルーブリック評価の活用

2年間を振り返って、自己評価・感想(気付き・学び)など

「本当にこんなことできるんだろうか?」と思いながら始めた、一般助成を受けた3年前。1年の助成期間が終わり、それを引き継ぎ、2年間の特別指定校として研究を進め、実践を重ねていく中でライブ授業を通して、様々な人とのつながりができました。子どもたちだけでなく、教師も大いに影響を受け研究を推進できたことは本当に感謝しかありません。特に、アドバイザーで来ていただいた岸先生には、訪問時にいつも「その気」にさせられ、「やる気」をもらい、後日、実践してみると「あれ?こうやったけ?」ということもありましたが、岸先生の名言「できる、できないではなく、やるか、やらないかだよ!」を今後も名柄小学校で語り継いでいきたいと思います。

成果目標

  • ① 児童のコミュニケーションスキルの向上
    対面でのコミュニケーションのあり方、コンピューターを介したライブ授業でのコミュニケーションのあり方(より即興性が求められる)、の相違点をまず、教員が把握する。授業の形態に応じたコミュニケーションスキルを児童に示し、スキルを身につけさせる。

  • ② 教員の授業力向上
    「Skypeを使うためにどんな授業をするのか?」ではなく「授業の目標を達成するためにSkypeをいかに利用するのか」という教員の考え方を転換し、授業設計を行う。1時間の授業だけでなく、単元全体を見通した計画を立てる。

  • ③ 評価についての客観的指標づくり
    コミュニケーションスキルについては、ルーブリック評価(これができたらAねん!)をもとに自己評価を行う。

  • ④ いつでも誰でも使えるマニュアルづくり
    ライブ授業を分類化し、その授業のポイントをまとめる。さらにレイアウトマップとリンクさせ、ICT機器の配置、学習空間づくりの視点からのライブ授業事例の形態変化をまとめる。

  • ⑤ 外部への取組発信
    ライブ授業を取り組んできた三年間を児童・教師・保護者のインタビュー等でまとめた動画を発信する。

アドバイザーコメント
明治大学 国際日本学部 准教授 岸 磨貴子 先生

御所市名柄小学校の1ー3月の活動は、3年間の実践研究の成果を言語化し、まとめていくことが中心でした。一般助成校で1年、特別研究指定校として2年、合計3年間の実践研究を通して、次の成果と課題を確認することができました。

(1)ライブ授業における即興性を通した教師の専門的力量形成
 ライブ授業では、教師が予期せぬことが常に起こるため、指導案通りに授業を進めることはできません。教師は指導案の流れにそいつつも、子どもの状況をみながら、子どもの力を借りて、授業の流れを一緒に作っていました。このような教師と子どもの協働的、対話的な授業づくりは、子どもの主体性、表現力、言語化を引き出していました。今後の課題は、即興的な対話です。ライブ授業を中心としてその場で生まれてくる多様な言葉(多様な視点、考え、アイデア、問いなど)を深めていくためには、単に情報を交換するだけではなく、共に学びを深めていく対話を子どもがつくれるようになることが今後期待されます。

(2)教師のICTを活用した学習環境デザイン
 この3年間の実践研究を通して、ライブ授業のための環境づくりに多くの工夫がみられました。教師らは、実践を通して必要な機器を徐々に揃え、すぐに授業でライブ授業が実施できるように機器設定のマニュアルづくりや利用のためのルールづくりをしてきました。これらの知見は、報告書にまとめられています。学校にはICTが得意な教師とそうでない教師がいましたが、チームで機器の設定をするなどして、誰か特定の教師に負担がかからないように、また学校全体でICTを活用した学習環境デザインの知見を共有していました。

(3)子どものテレビ会議独自のコミュニケーションの向上
 テレビ会議を通したコミュニケーションは、直に会うコミュニケーションとは違います。それが「何か」について教師も子どもも経験を通して気づき、その経験をそのあとの実践に活かすことができていました。たとえば、子どもへのインタビューから「相手に関心を示していく必要がある」「会話が途切れないように事前に場所とかを確認しておく」「メモを取りながら話をする」「反応する」など多様なアイデアでていました。さらに、「2年前は・・だったが、今は・・できるようになった」と今の自分を前の自分と比較しながらテレビ会議でのコミュニケーションの経験を振り返りできていました。これについては、近日中に公開する映像にてご覧いただけるようにしたいと思います。

(4)地域に開かれた授業実施のための目標とのその方法のデザイン
 ライブ授業をしてから、教師の意識が地域に向くようになっていました。ライブ授業を始めた時は、保護者や地域(企業を含む)からの支援を受けることができるかと心配があったようですが、実際には、保護者も地域の協力をえて、多様な実践を実現することができていました。地域に開かれた授業は、子どもにとって、真正な学びの経験の場となります。そこから多くの気づきや問いが生まれてきていました。しかし、これらの気づきや問いを授業のねらいと関連づけていくことの難しさも教師は同時に直面していました。子どもたちの多様で広がりのある問いを目の前にあるにもかかわらず、授業のねらいに落とし込んでいくと、ライブ授業と授業のねらいに微妙なズレが生まれてくるのです。そういったズレをどのように調整していくかは、今後も引き続き取り組み、その成果を期待したいと思います。

(5)継続的な実施のためのマニュアルづくり
 名柄小学校の報告書および2018年度日本教育工学協会での発表は、名柄小学校での知見を学校外に発信するだけではなく、これから新しく名柄小学校に赴任される教師にも参考になるようにまとめられています。

・中谷瞳・山本訓子・山本伸二(2018)遠隔授業の4つの形態とその授業デザイン, 日本教育工学協議会報告書, http://www.jaet.jp/repository/ronbun/JAET2018_D-2-9.pdf (アクセス:2019/3/26)

・名柄小学校の実践研究報告書
http://www.pef.or.jp/school/grant/special-school/

 遠隔授業を学校で自然に実施できるようになるまで、名柄小学校の教師は試行錯誤の日々でした。教師自身も遠隔授業を経験したことがないため、やりかたがわからなかったからです。テレビ会議システムで他の学校や地域とつなげば、遠隔授業ができるというわけではありません。日々の授業で活用するためには、時間や労力をかけずにどのように準備できるのか学習環境としてテレビ会議システムを、どこに、どのように配置するのか、すべての教師がICT機器を使いこなせるようになるためにどのような学校体制をつくるのか様々な課題がありましたが、それを研究のテーマとして学校で取り組み、上記のような成果を発信することができました。

 名柄小学校の先生方、3年間の実践研究おつかれさまでした。今後も継続的、発展的な研究を期待しています。