御所市立名柄小学校

第43回特別研究指定校

研究課題

子どもの主体的な学びを育てる授業の創造
~Skypeを利用した効果的なライブ授業のあり方~

御所市立名柄小学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 奈良県 御所市立名柄小学校
アドバイザー 岸 磨貴子 明治大学特任准教授
研究テーマ 子どもの主体的な学びを育てる授業の創造
~Skypeを利用した効果的なライブ授業のあり方~
目的 Skypeを効果的に組み込む授業の工夫を通して、児童がより豊かなコミュニケーションスキルを獲得することを目指す。
現状と課題
  • 昨年度作成した、Skype接続マニュアルにより、教師の接続、操作等の習熟度が高くなっている。(ICT機器使用についての教師の抵抗感が薄れてきている)
  • 授業設計の際「Skypeを使うためにどのような授業をするのか」という考え方に陥りがち。(「Skypeありき」の授業づくりになっている)
  • Skype活用と児童の学力と関連が、可視化されていない。(アンケート調査や教師の手応え等、印象的評価となっている。)
  • 児童のコミュニケーションスキルについて「ICT機器を活用したコミュニケーション」と「対面してのコミュケーション」との相違点が整理されていない。
  • Skype接続先の交渉が個別交渉であり、全体化されていない。
学校情報化の現状 本年度9月より、児童用としてタブレット型PC(Win10)が導入される。
取り組み内容
  • 教師のSkype利用の考え方を目的から手段へと転換する。(「Skypeありき」からの脱却。遠隔合同授業チーム、バーチャル見学チームの2チームに分かれ授業づくり推進)
  • 授業中の配置(机・機器等)をレイアウトマップにし、その効果等をまとめ、マニュアル化する。
  • ライブ授業の効果を客観的に把握することのできる指標づくり。
  • 各学年でSkype使用時のルールづくりを行い、児童、教師ともにSkype使用時のポイントを意識づける。
  • 「反応する・きく・話す」Skypeを通した多様なコミュニケーションのあり方を6学年を通して体系化、系統化できるよう整理する。ライブ授業のコミュニケーションスキルだけでなくそれを、日常の授業、生活のスキルとの相違点を明らかにして整理する。
  • ライブ授業人材バンクづくり。
成果目標

〈教師の授業力向上〉

ICT機器活用の幅を拡げ、授業実践を積むことで、教師のスキルアップにつながる。
また、誰でもできるライブ授業になるようPDCAサイクルにのっとり、マニュアル、モデル化する。


〈児童のコミュニケーションスキル向上〉

コミュニケーションスキルをルーブリックによる評価を行うことで、児童についた力を段階的に把握できる。(教師、児童自身ともに)
児童にICTを活用する場面、日常の場面それぞれに応じたコミュニケーションスキルが身につく。


〈人材バンクの活用〉

SkypeID、連絡事項等を一覧にすることで、誰でも利用可能になる。交渉、打ち合わせの時間短縮。

助成金の使途 プロジェクター、設置費用、デジタル無線機、謝金
研究代表者 川西 賢侍
研究指定期間 平成29年度~30年度
学校HP http://www5.kcn.ne.jp/~nagara/
校内研究会と公開研究会の予定

校内研究会の予定

H29年度

  • 9月25日
  • 10月23日
  • 2月7日

公開研究会、学会発表等の予定

H29年度

  • 11月21日(授業公開)

特別指定校 御所市立名柄小学校
アドバイザー 岸 磨貴子 明治大学特任准教授

アドバイザー訪問記(1)

テレビ会議を通したスカイプの活用研修の実施

 名柄小学校では、子どもたちに教室や地域を超えて学習を広げていこうと、遠隔合同授業、バーチャル見学、テレビ会議を通した英会話演習などを実施しています。その目的は、外部の人とコミュニケーションを取る機会が地理的に制限されている子どもたちに、様々な人たちとコミュニケーションをとり、関わり、学ぶ機会を作っていくことです。
 名柄小学校では、これまでの実践を通して本研究助成を受けて、次の3つの課題に関する研究に取り組んでいます。第一に、いかに児童の学習・発達を捉えるかということです。特に子どもたちのコミュニケーション力に焦点をあてて、それをどのように捉えていくのかを検討します。第二に、子どもたちのコミュニケーション力を支援するための学習空間のデザインです。そして最後に、これらの実践をいかに授業と相互に作用させながら学習の質を高めていくかです。

スカイプの使い方

 第1回目の訪問(7月26日)後、名柄小学校の先生に、テレビ会議システム(スカイプ)の様々な機能の使い方に関するオンライン研修を行いました。オンライン研修では、画面共有、チャット機能、多地点会議、音声ミュートの利用の仕方などについて説明し、実際に使っていただきました。1対1のテレビ会議だけではなく、これらの機能を使うことによって、ICTを活用したコミュニケーションの幅を広げていけるでしょう。これからも名柄小学校での実践が楽しみです。

特別指定校 御所市立名柄小学校
アドバイザー 岸 磨貴子 明治大学特任准教授

アドバイザー訪問記(2)

 第2回目の訪問では、5年生および6年生の子どもと、留学生のナムさん(タイ人)とゴックさん(ベトナム人)の二人との英会話の公開授業を見学させていただきました。これまでテレビ会議を活用した授業実践の知見が活かされ、教室の空間をうまく利用した配置になっていました。

教室のレイアウト

教室のレイアウト

 ナムさんとゴックさんの自己紹介から始まりました。緊張した様子で、子どもたちは、二人に日本に来た理由、日本での生活、彼らの出身国について様々な質問をしました。最初は、大きな声で話かけることが難しかったようですが、順を重ねるうちに円滑に会話ができるようになっていました。最初のグループより、次のグループが、そして、その次のグループがより上手に話をしていました。これは、子どもたちがお互いの様子を観察しながら、参考にして自分たちの交流に活かせていたからです。

 留学生たちの回答が長く、また難しいため、どうしても理解できない部分も度々ありましたが、事前に学習したフレーズ(たとえば、Please say that againなど)を使って、反応を返してしました。また、教師は交流のプロセスを白板に可視化し、子どもの理解を支援していました。どうしても、聞き取れなかったこと、分からなかったことについては、教師が授業の様子をビデオ映像で撮影していたため、この映像を使って、発展的な学習もできそうです。このように、生きた英語を話す経験を積み重ねることで、子どもたちは、使える英語表現や伝えたいことを少しずつ増やしていくことができるでしょう。今後の子どもたちの変化が楽しみです。

留学生と交流の様子

留学生と交流の様子

 授業終了後の授業研究では、今後の実践に向けて次の3点について課題が共有されました。
 第一に、教室の空間を即興的につくりかえていくということです。今回は、テレビ会議を通した交流が円滑に進むように、黒板や白板の利用、発表者の立つ位置、聞く人が座る場所などが事前に決められて(固定されて)いましたが、今後は必要に応じて白板の位置を変えたり(交流相手にも見えやすいようにするなど)、子どもたち同士が相談しやすいように体を動かせたり、状況をみながら場を作り変えていきます。

 第二に、教科と関連づけた指導です。本実践を通して、「相手に聞こえるように大きな声で話す」「相手に反応する」「問いを出す」「分かり難いところは体を使って表現する」などの重要性を、スカイプ交流を通して教師も子どもも気づいたようです。そのため、これらのことを日常的な授業の中で意識的に実践し、習慣づけていくことになりました。それを支える土台としてルーブリック作成も検討することになりました。

 第三に、子どもが“気づき”、“考え”、“発言する”ことを促す教具の利用です。スカイプ交流では、見て、聞いて、関わって学ぶことができます。多くのことが一度に起こるため、子どもたちが自分たちの経験を多角的に振り返れるように、事前に「振り返りのための枠組み」を示し、子どもの意識の方向づけをしていくことも検討しました。たとえば、図1のようなXチャートやYチャートを利用して、「聞いたことを通して学んだこと」「見ることを通して学んだこと」「話してみて学んだこと」と視点を示すことで子どもは、その経験から何を学べばいいかよりわかりやすくなります。また、実践の最中においても図2のように「わかった単語」「わからなかった単語」という表にメモをさせると、あとでわからなかった単語の学習活動につなげることができそうです。

Xチャート/ Yチャート

図1 Xチャート/ Yチャート

PMIチャートの応用

図2 PMIチャートの応用

 本授業を通して、観察者である私も多くのことに気づき、考えることができました。授業研究では、先生方と多く意見交換をすることができ、大変有意義な時間でした。次のスカイプ交流では上記の3点を視野にいれてスカイプ交流を実践できればと思います。

2017年9月25日(月) 岸 磨貴子

特別指定校 御所市立名柄小学校
アドバイザー 岸 磨貴子 明治大学特任准教授

アドバイザー訪問記(3)

 第3回目(10月23日)の訪問では、ルーブリック(Rubric)に関する研修を行いました。今回の訪問では、3年生の国語の授業(葛城小学校との合同授業)1年生の学級活動(御所小学校との合同授業)の2つの授業を見せてもらう予定でした。しかし、台風21号による休校のため、急遽、ルーブリックの作成の研修を行いました。

研修の様子

写真:研修の様子

ルーブリック研修では、次の4つの活動を行いました。

    (1)ルーブリックの意義と作り方
    (2)校内研修で先生がたが作成したルーブリックを検討・改善
    (3)公開授業で予定していた国語科の模擬授業(ルーブリックの共同作成を体験)
    (4)模擬授業をもとにした振り返り

<何故、ルーブリック?>
 第2回の公開授業研究会(第2回訪問)では、テレビ会議を通した遠隔授業を、如何に教科と関連づけて指導するかを検討していくことになり、その具体的な方法として、ルーブリックを教師と子どもが共同で作成し、上記の活動を相互に行き来できる目標を立てていくことになりました。

 そのために、教師と子どもが共同でルーブリックを作成していく経験を積み重ねていく必要があります。これが習慣化すれば、子どもは毎回の授業で「自分(たち)は、何ができるようになりたいのか」「何ができたら“できた”ということになるのか」などを意識して授業に取り組むことができます。

 これまでも小学校の授業では、多くの場合、授業の最初に「今日のめあて」を教師が子どもに示します。これによって、子どもは「自分(たち)が何を目標として授業に取り組めばいいのか」について見通しを持って授業を受けることができます。これに加えてルーブリックを用いることにより、「自分(たち)が何をしたいのか/どうなりたいのか」を自分の言葉で表現し、具体化することができます。「今日のめあて」が教師の言葉であるならば、ルーブリックは子どもの言葉です。そのため、教師はルーブリックの共同作成において、徹底的に子どもの言葉に落として表現させていくことが大切になります。曖昧なところは「わからない」「もっとわかりやすく言い換えて」「つまりどういうこと?」とやりとりをしながら具体化していくのです。さらに、数値で「測りにくい学力」を子どもに意識させることができます。学校で子どもたちが習得するものは、テストなど数値で「測れる学力」だけではありません。意欲、関心、思考、判断、表現など「測りにくい学力」も多く学んでいます。名柄小学校で取り組む遠隔授業で、子どもたちは多くを学び、できるようになっていますが、子ども自身も自分がどこまでできるようになったのか、次はどれくらいできるようになりたいのかを示すことができなければ、「今自分がどのあたりまでできているのか」振り返り改善することが難しいです。テストで75点をとれば、子どもは「次は80点までがんばろう!」と思うでしょう。しかし、「測りにくい学力」については、次にむけて何をどのようにがんばればいいかがわかりにくいのです。ルーブリックはそういった「測りにくい学力」を言葉で段階的に示し、子どもたちに今どの段階にいるかを示します。そしてその段階を、子ども自身が「納得」できるものにすることで、子どもに主体性と責任感をもって取り組ませることができます。そのため、時間がかかっても教師と子どもが一緒になってルーブリックを考え、意味づけていくことが大切です。

 研修では、ルーブリックの意義を確認したあと、実際に授業の中で、どのように教師と子どもが一緒にルーブリックを作るのかについて話し合いました。予定していた国語科の模擬授業を行い、導入部分でルーブリックを共同制作しました。研修に参加した先生がたが子ども役をしながらルーブリックを作ったのですが、子どもの言葉に落としていくというのは簡単なことではありません。しかし、教師と子どもの共通理解を作っていくというのは、先生がたが普段から授業でされていることですので、コツがわかればうまくできそうです。そのコツとそのプロセスもあわせて、研究知見として出していけたらいいな、と思いました。