長岡京市立長岡中学校

第43回特別研究指定校

研究課題

タブレットをはじめとするICT機器を活用した「わかる」授業の創造
~深い学びを追及した考えを練り上げるためのグループ活動の仕掛けづくり~

2017年度1-3月期(最新活動報告)

グループ活動を通して課題設定・課題解決力を付ける指導の在り方を追求する。......

アドバイザーコメント

本校の研究テーマは、下記の通りである。『タブレットをはじめとするICT機器を活用した「わかる」授業の創造

長岡京市立長岡中学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 京都府 長岡京市立長岡中学校
アドバイザー 浅井 和行 京都教育大学副学長
研究テーマ タブレットをはじめとするICT機器を活用した「わかる」授業の創造
~深い学びを追及した考えを練り上げるためのグループ活動の仕掛けづくり~
目的 「わかる」「できる」「協働」「深い学び」「対話的な学び」「ユニバーサルデザイン」をキーワードとした授業改善
現状と課題

(現状)

  • 子ども達はグループ学習で思考が深まることを楽しいと感じている。(授業アンケートより)
  • 理解を深めるために授業でグループ学習に取り組む展開は多くの教科で取り入れられ効果も上がっている。

(課題)

  • タブレットの基本的な使い方について子ども達に指導する機会が得られていない。
  • 教師がタブレットを使って授業をするイメージが作りにくい。
  • タブレットの教員機が一台しかないためタブレットを使った授業の準備を複数の教員が同時にすることができない。また、教師に一人一台貸与されているパソコンとタブレットの互換性が低く、授業準備がスムーズに進まない。
学校情報化の現状 教師のICT活用はある程度進んでいるが、生徒の活用に課題がある。
取り組み内容
  • アドバイザーによる講義
  • ICT機器の活用研修
  • ICTを用いたグループ活動の授業実践
  • 校内授業研修の実施
  • 公開授業の実施
  • 事後研究会の実施
  • 教育委員会および地域小中学校と連携し研究を共有する。
  • 生徒への授業アンケート
  • 研究発表会の実施
成果目標
  • 教員がICTを活用したグループ活動を計画実施できる。
  • 生徒がICTを活用してグループで協働して課題解決することで自己有用感を高める。
  • 生徒がICTを活用したグループ活動を通して、他者の考えやその良さに気付き思考を深めるきっかけにできる。
助成金の使途 タブレットPC、プロジェクター、視察旅費、謝金、事例集作成
研究代表者 森山 結城
研究指定期間 平成29年度~30年度
学校HP http://www.edu.city.nagaokakyo.kyoto.jp/nagaoka-j/
公開研究会の予定
  • 平成30年1月25日 中間発表会
  • 平成31年1月    2年間のまとめ発表会

研究課題と成果目標

研究課題 タブレットをはじめとするICT機器を活用した「わかる」授業の創造
~深い学びを追求した考えを練り上げるためのグループ活動の仕掛けづくり~
成果目標

①本校の生徒につけたい力を教職員全員で明確にし、共通理解する。

②タブレットPCを授業に取り入れてみる。

本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応

[本期間(4~7月)の取り組み内容]

①について
・教職員研修の実施
【5月】

【7月】

参加した授業(学年)複数回答あり
参加した講習会場
参加による学び

②について

  • 国語科での実践
  • 国語科で校内公開授業
  • 総合的な学習の時間でプレゼンテーション撮影
  • 保健体育科での実践
  • 部活動での活用
参加した授業(学年)複数回答あり
参加した講習会場
参加による学び
アドバイザーの助言と助言への対応

《助言》

  • 学校内で生徒につけたい力を共有しそれに対してICTをどう活用するかという視点を持つこと。
  • 市教育委員会との連携

《対応》

  • 教職員アンケートから校内研修会を持ち、生徒観の共有、つけたい力の共通認識をはかった。
  • 市教育委員会にヒアリングを要請し、現状の報告と今後のICT環境についてディスカッションした。

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

・嬉しかったこと
校内研修会に全教職員が積極的に参加できた。年齢やキャリアを問わず発言できる雰囲気や、まずはやってみようという前向きな空気感が確認でき有意義な時間となった。
タブレットPCを授業に取り入れることに対し生徒が前向きで、使わない日は「先生、今日はタブレットないの?」という声を聞くことができた。普段は授業に参加することが難しい生徒も、グループでタブレットPCを使って考えることで参加できた。

・苦心談
本校で元々から活用している、ノートPCやデジタル教科書、大型モニターやプレゼンテーションソフトを活用した授業について、今以上の成果を求める活用方法が見つかっていない。
 新しく試験的に導入されているタブレットPCの活用がポイントとなると思われたが、様々な問題が発生した。タブレットPCの台数が少ないため、授業担当者が複数の場合、単元そのものをずらさないと使うことができず調整に苦慮している。
また、使ってみることでタブレットPCそのものの弱点が見えてきて「もっとこうしたい」「もう少しこうだったらもっと使えるのに」が増えてきている。今後市教育委員会とも協議し改善していかなければならない。

成果

 ICT活用で成果が出る部分と、今まで通り黒板・ノート・ホワイトボードがスムーズな部分が見えてきたように思う。タブレットPCについてはいくつかの実践がされ、交流から「自分の授業でも使ってみよう」という積極的な意見や「もう少しこんな点を改善しては・・・」といったアイデアが出され、2学期の実践に向けての方向性についても各教科で話し合う機会が持てた。
 生徒達はタブレットPCを使うことで目新しくもあり、楽しんで使っている。学期末に行っている教科担当教員への授業評価では、「よくわかった」「おもしろく学べた」との記述も見られ、まずは学習への意欲関心を高めることができた。
 また、保健体育の高跳びの授業でフォームを撮影する実践では、「自分のフォームを客観的に見たり、考えたりしてここをこうすればいいのでは、こんな所をもっと伸ばせば、さらに記録が出るのではと探求していくのも一つの楽しさを感じるところかなと思います。」という感想が見られ、効果が実感できた。

今後の課題

  • つけたい力を明確にした授業展開
  • ICTを利用した協働学習の検討
  • タブレットPCの環境整備

今後の計画

10月23日に公開授業、事後研修会を予定

気付き・学び

教職員が、よりICTを活用しようとする意欲を高めるためにICT機器(タブレットを含む)を常備した特別教室の整備が有効ではないか。

アドバイザーコメント
京都教育大学 副学長 大学院連合教職実践研究科長 教授 浅井 和行 先生

 学校教育活動でお忙しい中、4ヶ月間の取り組みご苦労様でした。

 本校の研究の特徴は、先端研究としての成果を目指すだけでなく、どの学校でも取り組めるメディア教育実践のアイデアを紹介しようとするところです。5月の研修会では、タブレットPCを活用した授業が提案され、その後「ICTを活用した授業」についての紹介があり、教職員間で議論が行われました。また、7月の研修会では、5月の研修内容を受けて、子どもたちにどんな力をつけようとするのか、校内の各教科・領域や活動の中でどんなことを実践していくのか、また実践したのかについて議論が行われました。次回の報告からは、行われた研修会の具体的な内容もご紹介いただけるとよりわかりやすいと思います。

 

 本校の取り組みは、「深い学びを追求した考えを練り上げるためのグループ活動の仕掛けづくり」を通して、『タブレットをはじめとするICT機器を活用した「わかる」授業の創造』を目指すものです。しかし、研究の取り組みを始めるにあたって、この4ヶ月間でそのスタート地点に立つための準備を行う必要がありました。タブレットPCについての取り組みの記述が中心になってはいますが、本研究はあくまでも『ICT機器を活用した「わかる」授業の創造』を目指すものであり、そのための「グループ活動の仕掛けづくり」を検討するものです。これからの取り組みの中で、様々なメディアを活用して、グループ活動の仕掛けが行われ、子どもたちのために「わかる」授業が展開されることを期待しています。

 

 タブレットPCそのものの弱点が見えてきたということですので、具体的に議論されたことをご紹介いただければ、私も一緒に考えさせていただけますし、この活動報告を読まれた方からも、学校に対して、これまで全国で行われてきた工夫やアイデア、そして様々なアドバイスをお知らせいただけるのではないかと思います。また、助成金を活用し、タブレットPC自体の購入もご検討いただければと思います。

 

 なお、私自身も大学院の要件で京都府教育委員会学校教育課、乙訓教育局局長、長岡京市教育長にお会いした折、本校の取り組みの経過をご報告しました。皆さんがたいそう期待しておられたことを申し添えます。

 

本期間(8月~12月)の取り組み内容

  • 1.アドバイス訪問時に授業を公開
    3年生で6授業を公開
    《英語科》
    英語科
    道案内の授業で教科担当がALTとともに学校外で撮影した動画(嵯峨嵐山観光案内)を使用。実際に普段使っている最寄り駅での映像に、生徒の関心をよりもたせることができた。また、ALTが本校に勤務していないときも、ネイティブの発音に触れ、親しみの持てる内容で学べる実践となった。
    《保健体育科》
  • 保健体育科1
    保健体育科2
    保健体育科3
  •  ソフトボールの授業(雨天のため体育館にて実施)
    ボールをミートするために動画を撮影し、グループで各自のフォームを分析。
    分析結果を全体に交流し、より良いフォーム等を考えるのに効果的であった。
    動画の鏡的利用と焦点を絞った振り返りにより、学習が深まった。

    《国語科》

    国語科
    和歌の鑑賞文とイメージ画をグループ内でビブリータイマーを用いて交流。ビブリオバトルで培ったプレゼンテーション力と、聞く側の協力でスムーズな交流タイムになった。この後、グループ代表が実物投影機を使って鑑賞文を全体に発表した。
  • 《社会科》

    社会科1
    社会科2

    三権分立の仕組みを学習後、「内閣は衆議院を解散する場合と総辞職する場合のどちらに利点があるか」をグループで考える実践。グループディスカッションの途中経過を撮影してモニターに提示することで全体の議論を活性化させた。

    事後研修では、教科部会を持った。校種をこえて、他校からの先生方も交え、授業に対する質問・意見だけでなく、生徒の学ぶ姿勢や学び方のスタイル、ICT活用の場面や成果課題に対しても各教科時間いっぱいを使って活発な議論ができた。他校の先生方からは以下のようなコメントをいただいている。
    小学校(1校から)
    ▼英語は、聞いたり話したりの活動が多く、自分が受けてきた授業とは、イメージが違いました。
    高等学校(3校から)
    ▼教室では実物を見ることが難しいものをできるだけ動きを伴った形で見せるということに意味があると感じた。
    ▼星の動きのように変化に要する時間が長く時空間的に教室で見ることが困難であるものではICTを活用することによって、静止画像の連続を見せるよりも、動画として見せることによって、よりリアルな星の動きを生徒の学習に結びつけることの助けになると感じた。
    ▼隣の席の生徒同士でのペアワークもワークシート等をICT機器で共有することで教室全体の学びに、さらにはより深い対話に繋がるのではないだろうか。
    ▼2人1組で配置された座席は生徒間のコミュニケーションを容易にし、教員の発問に対し、自然と考えを出し合いながら答えを導く姿が見られ、より能動的な姿勢につながっていると感じた。
    ▼数学の時間では、すごく教師と生徒の言葉のキャッチボールがなされていると思いました。
    ▼生徒の解答をタブレットで撮影して、前の電子黒板で共有するという手法をみて、これこそがICTの有効な使用法だと感じた。
    ▼保健体育科のソフトボールの授業を見学させて頂きましたが、指示が的確で、何を目的として学習するのかが明確でした。
    ▼さらにタブレットを使い自らの身体の動きを把握することで改善するポイントを言葉で教えられるよりも早く確実に理解することができていたように思いました。
    ▼中学生が学習に対して積極的で楽しんでいる姿が印象的でした。
    ▼ICT活用を短時間で、メリハリをつけて学習活動を行えると実感しました。また、本文や生徒の作品を写すことで、効果的に共有することができると感じた。生徒たちがグループ活動に慣れており、活発なやとりがあるとあるのも印象的だった。
    ▼中学1年生は好奇心が強く、手を挙げたり、発言したり、授業に積極的に参加していた。
    ▼各授業で、グループ学習や競わせる、教え合わせる、発表させるなどの工夫がなされていた。
    ▼生徒が興味を持ち、主体的に授業に参加できるように様々な工夫をされているのがわかりました。
    ▼ICTとICT以外の学び方を併用することが大切だとわかりました。

  • 2.多くの教員が他校の実践に触れる
    • ・8/1 パナソニック財団指定中間報告会視察10名の視察団で参加
    • ・8/21 校内研修会: 講演 マイクロソフト社 エバンジェリスト 西脇資哲氏
    • ・研究発表・公開授業等、一人一回を目標に参加
    • ・全日本教育工学研究協議会全国大会に参加
  • 3.本校での実践を整理
    • ・研究推進プロジェクトチーム発足
      定期的にプロジェクトチーム会議を行い、教科でのICT活用の交流をはじめた。プロジェクトで紹介した実践を校内研修でも紹介し全体共有の場を設けている。
  • 《数学科で公開授業》

  • 数学科で公開授業1
    数学科で公開授業2
    数学科で公開授業3

    プレゼンテーションソフトのハイパーリンクを利用した実践。リンク先にあるヒント集を使って証明を導き出すことで、生徒の主体的な学びを実現するとともに、生徒同士が協働しながら時間いっぱいまで熱心に学習する姿が見られた。

    • 《国語科 市内教務主任研修で公開授業》

    • 国語科 市内教務主任研修で公開授業
      国語科 市内教務主任研修で公開授業2
      国語科 市内教務主任研修で公開授業3

      平家物語の群読の際、タブレットPCを使って作ったスライドをあわせて発表を行った。

      国語科 市内教務主任研修で公開授業4
      国語科 市内教務主任研修で公開授業5
      国語科 市内教務主任研修で公開授業6
      写真のコピーやトリミングを使って気軽にスライドが作れることが有効であった。また、スライドを作るに当たって、生徒同士の「この矢の角度おかしくない?」「色ってこれで合ってる?」などやりとりが多く見られ、協同的な学びで情景の読みを深めることができた。また、いつもは開かない大きな図版資料を参考にするなど主体的に調べる場面も多く見られ、理解を深めた。
    • 《社会科で公開授業》

      • ① 株式会社の運営をイメージするために、タブレットPCにExcelファイル配布して5年間会社を運営するという実践を行った。Excelの活用により、計算にかける時間が省け会社運営の仕方に集中して取り組めた。計算ソフトがあることでPC頼りの活動になるかと思われたが、準備していた紙の表で考えながら入力する形での活用が中心となった。興味深かった。
      社会科で公開授業1
      社会科で公開授業2
      社会科で公開授業3
    • ② 長岡京市の選挙管理委員会と社会科のコラボレーションで主権者教育模擬投票を行った。活動の深まりを目指して大型モニターとホワイトボードを適所で活用した。ホワイトボードでグループの考えをまとめ、全体でのまとめをすることで深まりを持たせることができた。
    • 社会科で公開授業4
      社会科で公開授業5
      社会科で公開授業6
      • 《保健体育科での実践》

        • マットの授業で4人に1台、タブレットで技の練習を撮影
          • ・練習の流れを切らずに撮影するための活用方法
            • 例)①グループ内の4人分を連続して撮影し、スローで再生
               ②1人の撮影者が3人を撮影し、再生している間に自分の練習
               ③人の撮影者が、1人の動きを撮影する。
          • 【動画のメリット】
            • ・動きを具体的に理解することができる。
            • ・技のポイントの確認や振り返りをし、一人一人の課題を明確にする。
            • ・教え合いが活発になり、学び合いが深まる。
          • 【学習場面から】
            • ・特に指定をしなくても、生徒は練習と技の確認を繰り返していく。
            • ・撮影をしながら適宜アドバイスも生まれる。
            • ・次は「この技の、この部分」とポイントを絞って運動し、できたかどうか確認ができる。

          プロジェクト会議で交流された内容について、校内研修でも発表し全教職員で共有することができた。

          1月の中間報告のヒントとして活用できるよう、教科部会でも話し合っている。

  • 4.アンケートを整備
    11月末から全ての生徒に対するアンケートを実施することができた。
    これから細かく分析していく予定である。

アドバイザーの助言と助言への対応

《助言》

  • ・ICTがあるから使うという姿勢ではなく、ねらいをはっきりさせどんな力をつけたいかつきつめて活用を考えていくとよい。
  • ・日常的にグループ活動が行われていることが本校の強みとなる。グループ活動にICTをうまく組み合わせた授業で考えが深まる、理解が深まるような実践を目指していくとよい。

《対応》

  • ・推進チームを中心に、奇をてらった何かをするのではなく、今やっていることを振り返り、どんな力をつけさせるために実践なのかを考える。子どもが「腑に落ちた」と思える方向でICTを活用することを大切に研究を進めていく。

本期間の裏話

  • ・2学期は行事が立て続けにあり、研究と行事の両立に苦心した。そんな中でも先生方は研究授業に向けて着々と準備を進めてくれた。「何のためにICTを利用するのか、本当に必要なのか」といった点について各教科で議論が多くもたれ、様々な実践が発表された。そのことがまた次の実践や議論につながり、研究が活性化した。
  • ・推進チームが発足したことで現場の様々な思いやニーズが交流され、具体的な課題が共有されるとともに、解決に向けての具体的な動きも生まれた。研究への動きが太くなり、広がっていくきっかけとなった。
  • ・1月の発表に向けての動きの中で、若手英語教員から直接相談を受けた。相談の中で私にはわかりにくい点があったので、その点について詳しいベテランの数学教員が細かく説明すると、「イメージがわいてきました」という、うれしいつぶやきを聞くことができた。その方向で授業を進めるべく奮闘している。一つの研究で職員室の教科や、年齢を超えた話し合いが生まれ、教師同士がつながっていく実感があり非常にうれしい場面だった。また、「森山先生、IOTていうのがあるらしいねんけど知ってる?」「知らん知らん、なんなんやろそれ?」という会話に近所に坐っていた先生が「それ知ってますよ・・・」と教えてくれる。職員室内に何気ない会話のつながり・まじめな雑談が増えたと感じている。
  • ・生徒アンケートに「ICTを使ったグループ活動をしたことで理解が深まった。」というコメントが見られた。生徒の具体的な言葉として表れたことは大変うれしかった。

本期間の成果

  • ・研究推進チームが動き始めた。
  • ・校内研修会・教科部会だけでなく、職員室のあちこちで話し合いが生まれた。
  • ・教科、年齢を超えた教師のつながりが新しい実践を生み出しつつある。
  • ・たくさんの授業を公開し、お互いの授業を参観し合えた。
  • ・生徒からICTを利用した授業が楽しい、よくわかるという感想が聞けた。

今後の課題

「ICTを活用する」視点についてはずいぶん整理されてきているが、グループ活動での活用(協同的な学び)や主体的な学びについて、できる実践とそうでない実践が存在している。

今後の計画

1月25日 中間発表
来年度
1学期 アドバイス訪問
夏休み 中間発表
2学期 アドバイス訪問
3学期 研究発表

成果目標

  • 1.アドバイス訪問時に授業を公開する。
  • 2.多くの教員が他校の実践に触れる。
  • 3.本校での実践を整理する。
  • 4.アンケートを整備する。
アドバイザーコメント
京都教育大学 副学長 大学院連合教職実践研究科長 教授 浅井 和行 先生

 研究課題の「タブレットをはじめとするICT機器を活用した『わかる』授業の創造」に向けての取り組みは順調に進んでいます。また、各教科での検討もしっかり行われています。ただ、サブテーマの~深い学びを追求した考えを練り上げるためのグループ活動の仕掛けづくり~に向けての焦点を絞りきるのはなかなか難しいようです。

 財団が夏休みに行われた中間報告会には10人の教員が参加しておられて、私自身驚きました。助成金を単にメディア機器を購入するのに使用するのではなく、教員の力量形成に力を傾けておられるのが本校の特徴です。

 また、研究推進プロジェクトチームが発足したことも大きいと思います。教員個人の研究から学校全体の研究になりつつあります。

 今後は、現在の取り組みを進めつつ、サブテーマについての検討も進めていただきたいと思います。グループ活動の仕掛けをどのように行うかを検討することが、生徒たちの深い学びにつながります。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

①授業公開

 1、2年生で10授業を公開し、他校から60名近くの参加があった。
(予定していた10授業中1授業はインフルエンザ流行のため中止)

家庭科1年生
《家庭科1年生》「まつり縫い」の説明で拡大した現物と同時に手元を拡大したタブレットPCの作業動画を使い説明した。また指導中、上手な生徒の作業動画を大型モニターに提示し縫うときのポイントや意識していることを発表させた。作業を繰り返し見ることができることや、上手くできた生徒が紹介されることで自己肯定感が上がるなど効果的であった。
英語科1年生
《英語科1年生》授業で使用するワークシートをプロジェクターを使って黒板に投影し、そこにチョークで解答解説を書き込みながら授業を進めた。手元のワークシートと全く同じものが黒板に投影されることで、今、している作業が明確になり指示が減ると同時に、机間指導や支援が必要な生徒への指導時間を増やすことができた。また、強い光源のプロジェクターを使用すれば、写真や動画なども黒板に投影できることがわかり、指導のバリエーションが広がった。
国語科1年生
《国語科1年生》文学作品の読み取りの授業での、プロジェクターで本文を黒板に投影し討論の際の生徒の発言をその都度書き込んでいった。作品のどこを根拠として発言しているのかが明確になり、全体で共有することができた。また、データに記録が残っていくので次時に復習するときにも活用でき効果的だった。
数学科1年生
《数学科1年生》4人1組のグループに1台ずつのタブレットPCを持たせ、立方体の断面図を考えさせた。大型モニターに投影したアニメーションと、手元にあるタブレットPCに配布される図、具体物としても立体模型を駆使し、グループで答えを導き出した。2Dではとらえにくい空間図形が3Dで提示されること、グループで話し合いながら思考することで考えが深まった。
社会科2年生
《社会科2年生》地理分野のパフォーマンス課題として秋田県大館市と長岡京市が姉妹都市になった際お互いを高め合う施策を考えさせた。大館市出身の授業者が故郷で撮影したインタビュー動画を編集して提示することで、長岡京市とは大きく違う秋田県の魅力や課題を多面的にとらえさせることができた。同時に生徒は自分の居住地である長岡京市について調査分析をし、つなぎ合わせることで来年度の公民的分野につながる実践となった。

《数学科2年生》二等辺三角形・正三角形・直角三角形になる条件を見つける授業でICT機器を活用してヒントを得ながら思考し学習を進める実践を行った。プロジェクターで黒板に様々な場合を投影し個別で考えることから始まり、次の課題についてグループで考えた。ヒントのプレゼンテーションを見ることのできるPCを教室内に設置し、自由にヒントを見ながら考えをまとめグループの代表が発表をした。生徒の意志で自由に探索し主体的に学習を進めることができる実践となった。

英語科2年生
《英語科2年生》聞き手に伝わるプレゼンテーションをすることを目標とし、タブレットPCで動画を撮影しながら練習を行った。事前にAETによるプレゼンテーションを撮影しておき、全体で視聴し評価の基準を確認させた。その後4人のグループで役割分担をし、それぞれのプレゼンテーションを撮影し客観的に見ながら改善点を話し合った。自分のプレゼンテーションをその場で確認し改善できるタブレットPCならではの良さが生かされる実践になった。

《数学科2年生》折り紙を使って面積が最大となる正三角形の折り方を考え、後に正三角形ができる理由を考えた。プロジェクターを使って黒板にスライドを投影することで、チョークで書き込みながら説明ができた。生徒の手元の作業を実物投影機を使ってモニターに映し出しながら説明できるなど、身近な機器の良さを最大限に使いながら、思考し発表できる実践となった。

数学科2年生
数学科2年生
国語科2年生
《国語科2年生》絵画の評論文に出てきた「一点透視図法」について理解するため、グループに一台持たせたデジタルカメラで消失点のある写真を撮影してきて、その意図や効果を説明させる授業を展開した。画家のねらった効果と意図を理解し、表現するために消失点を効果的に利用したことを読み取り、同じ効果のある写真を時間内に撮影することで言葉による抽象的な説明が実感の伴うものに変化した。また、グループで読むことで読解の難しい生徒にも中身を理解でき、勘違いしていたグループも自分たちの間違いに気付くことができる実践となった。

《事後研修》

 本校の事前会議で「授業者と参観者が近い距離で実践について話し合えるような事後研がしたい。」「成果と課題を明らかにし改善策を考えられるような事後研が必要だ。」「誰かのまとめを受け身で聞くのではなく、参加し議論できる事後研にならないか」といった意見が多く、今回はグループ討議型の事後研修を行った。あらかじめ参観者には成果・課題・疑問を付箋に記入しておいてもらい、それをもとに授業者が2人1組でブースを担当し、同じ教科から司会者・記録者を決め、参観者と共に授業を振り返った。時間の都合上短時間の討議になったが、論議は非常に白熱し、まだまだ話し足りないムードでグループ討議を閉じることとなった。外部の先生方の意見を聞くことができ良い機会になると共に、参加型の研修になり外部の先生方達からもおおむね講評であった。この討議を踏まえて校内では教科部会を持ち、今年のまとめと来年度への展望を持つ機会とすることができた。

 

②本校の研究を発信

 研究発表について市内の中学校の教職員が参加し、共に協議し合う場面をつくることができたことは大きな成果である。また、参加者には研究紀要・指導案集も配布することができた。

 

③ICTの活用、グループ活動に関する生徒アンケート

 全国学力・学習状況調査と同じ項目でアンケートを作成し3年生を中心に今年度の変化を見取った。以下がその結果を示すグラフである。

事後研修
事後研修
事後研修
事後研修
事後研修
事後研修

 11月のアンケートでは多くの項目で4月の値を上回っている。今年度、学校全体でICTの研究を中心に据えて対話的で主体的な学びに取り組んできたことの成果といえる。

 

④1年目の研究のまとめ

 研究紀要と中間発表用のスライドに今年度の研究をまとめることができた。

 

研究紀要より抜粋

 グループ活動に対して肯定的な本校の生徒達だがグループ活動について「グループ活動は嫌い」「話すのは苦手」「発表はいやだ」というような記述も見られる。討論、話し合い活動、群読の創作、班活動の発表、ワールドカフェ、ビブリオバトル、ニュースバトル、グループ作業など様々な実践の中で様々な思いを持つ生徒がいるのは当然である。しかしそれを理由にグループ活動は意味がないと考えるべきではない。たとえ積極的に発言したり参加できたりしなくても、その場にいて他人の意見を聞いていること、他者の考えに触れること、周囲の気づきを知ることがその生徒の中で世界を広げ理解を深めている。「わからない」ことは「不快」であるが「わかった」実感を持つことはどの生徒にとっても「快」である。「発言するのはいやだけど、他の人の意見を聞いてなるほどと思った」などの記述が見られるように、グループ活動が「快」を生み出す一つの要因として生徒にも受け入れられていると考えて良いのではないか。

 

 また、教員間に研究を通して対話が多く生まれたのも大きな成果といえる。
職員室でも様々な会話が生まれた。
「やっぱり授業を考えるっておもしろいですね。」
「こんなんするんですよ、見に来てください。」
「使ってみたいんやけどだれかしってる?」「知ってる、知ってる」
「そんなことできるんや、世界が広がりました。」「1回見においでよ」(プロジェクト会議でICT活用を交流した後の会話)
「見に行けなかったんですけど、どうでした?」「すっごいおもしろかったよ。生徒がこんな風に言って・・・・」(授業後の職員室)
「なんか楽しかった、腑に落ちた。考え議論する道徳ってこれなのかなぁ。」(道徳の指導案を検討しているときの会話)

 

 今までの本校に教員間の会話がなかったわけではない。むしろ、従来から年齢を超えて教科を超えて会話の多い職員室である。今年、研究をきっかけにさらに会話が増えたことが実感できる。今、ベテランから若手への技能技術の伝承は教育界では大きな課題だ。研究をきっかけとして教員同士のコミュニケーションもより円滑となり、そのことで授業の質も上がってきたように思う。課題はまだまだあるが、この前向きなトーンは来年度につながっていくことを確信している。

アドバイザーの助言と助言への対応

《助言》

アンケートの分析により子どもたちの変容を評価していく。
対話の中身、対話の前後でどう変化するかを見取る必要がある。
ICTを活用したグループ活動を軸に考えていく方向性を持つ。

 

《対応》

 アンケートを採り、集計し変容を確かめるところまではできた。今後在校生の変化を追跡する必要である。
 対話の前後の変化については、振り返りの記入などから見取ることはできた。しかし、対話の中身や、何が要因で変化していくのかなどの分析が来年度の課題となる。
ICTを広くとらえ日常的に活用することや、自分の得意な分野に付け足していくという発想は持てたが、グループ活動という視点ではまだまだ研究が必要である。

本期間の裏話

 本校にはタブレットPCは合計20台しかない。中間発表に当たり、どの授業でも最新の機器が使える状況はない。そこでICT機器を広くとらえ、プロジェクター、実物投影機、デジタルカメラ、ノートパソコンなどあるもの全てを生徒の理解が深まる目的で利用してみる実践となった。その結果一番人気だった機器はプロジェクターで現在もプロジェクターは授業で調整が必要なほど活用されている。どの学校にもある機器をどう使うか。無いからできない、タブレットPCを使わなければならないのか、といった呪縛から逃れることができた中間発表会となった。

本期間の成果

  • ・中間発表会に向けて教職員が同じ方向性で研究を進めることができた。
  • ・指導案の型について検討し、独自の型を作ることができた。
  • ・中間発表会に向けて教職員が同じ方向性で研究を進めることができた。

今後の課題

  • ○グループ活動を通して課題設定・課題解決力を付ける指導の在り方を追求する。
  • ○グループ活動の評価とねらいの達成をどのように見取るかを検討する。
  • ○グループ活動にICTを有効に活用する実践を追求する。

今後の計画

1学期 アドバイス訪問
夏休み 中間発表
    校内研修 指導案検討会
2学期 授業参観週間 全教職員一授業公開
3学期 研究発表
再来年度
夏休み 発表

1年間を振り返って、成果・感想・次年度への思い

 1年間を振り返ったとき、今年度の成果として大きく3点あげられる。
①前述の通り、教職員同士が語り合えたことは最大の成果である。仕事への充実感の向上、授業する楽しさの実感、授業作りを通しての教職員のチームワークの高まりなど、語り合うことが良い影響を生み出し、職員室が明るくなったように感じられる。
②今年度前半は研究自体が「タブレットPCが導入されたので使わなければならない」「発表だから使わないといけない」というとらえ方になり、拒否感や苦手感、不必要感、環境が整っておらず使いにくい、などICT機器ありきの姿勢が色濃かった。
 しかし、夏の報告会の参加、プロジェクト会議、各教科でのICT活用交流、各方面への視察とその報告などを重ね、ICT機器ありきでないというスタートにたつことができた。また、それを踏まえて活用してみて結果を検証することを繰り返すことができた。この検証の中で、仕掛け作りの創意工夫を各教科あるいは教科を超えて議論でき、発表し合うことで工夫事例が多く生み出せた。特に中間発表会では、どの学校でも今すぐできる実践事例を多く生み出すことができた。
③こういった成果が子どもたちの感想にも現れている。グループ活動、ICTの活用は楽しい、考えを深められたとの声が多く見られた。また、子どもたちは討論や話し合いはは楽しいと言う。かつてなら家庭で討論が存在したり、大人の意見に触れることも多かったのだろうと思う。しかし核家庭化が進み、共働き家庭も増え大人と子どものまじめな会話は困難な状況となっている。子どもたちの「話したい」「聞きたい」「知りたい」「わかりたい」という要求に答える学習形態、リアルな体験をグループ活動は担っているのではないかと考える。
 AIが発達して世界は激変するといわれているが、話し合い、気付き、深めより高い境地にみんなで着地していくことは人間にしかできない、なくならないと言われている。ICTとグループ活動を組み合わせていく発想は世の中を生き抜いていくヒントを子どもたちに与えることにもつながるのではないか。
 今年度の研究の成果は様々な場面で「その成果」を「実感」できているところにある。その中で来年度は、「活用した、便利だった、おもしろかった」ではいけないという話が教職員の中から出てきた。現場の声と実感を大切にしながら、ICTを活用したグループ活動とその成果の見取りについて焦点化していくことが来年度の課題であると考えている。

成果目標

  • ①中間発表時に授業を公開する。
  • ②発表及び事後研修会で地域の学校へ本校の研究を発信していく。
  • ③ICTの活用、グループ活動に関する生徒アンケートを分析する。
  • ④1年目の研究のまとめをする。
アドバイザーコメント
京都教育大学 副学長 大学院連合教職実践研究科長 教授 浅井 和行 先生

 本校の研究テーマは、下記の通りである。
『タブレットをはじめとするICT機器を活用した「わかる」授業の創造
~深い学びを追求した考えを練り上げるためのグループ活動の仕掛けづくり~』
 当初は、教科指導におけるICTの活用が中心であったが、少しずつグループ活動の仕掛けづくりに焦点が当たるようになってきた。
 《数学科1年生》の授業でも、
「4人1組のグループに1台ずつのタブレットPCを持たせ、立方体の断面図を考えさせた。大型モニターに投影したアニメーションと、手元にあるタブレットPCに配布される図、具体物としても立体模型を駆使し、グループで答えを導き出した。2Dではとらえにくい空間図形が3Dで提示されること、グループで話し合いながら思考することで考えが深まった。」のように焦点化がなされるようになってきている。
 また、《英語科2年生》の授業でも、
「聞き手に伝わるプレゼンテーションをすることを目標とし、タブレットPCで動画を撮影しながら練習を行った。事前にAETによるプレゼンテーションを撮影しておき、全体で視聴し評価の基準を確認させた。その後4人のグループで役割分担をし、それぞれのプレゼンテーションを撮影し客観的に見ながら改善点を話し合った。自分のプレゼンテーションをその場で確認し改善できるタブレットPCならではの良さが生かされる実践になった。」というように、グループ活動の仕掛けづくりができつつあることがうかがえる。

 本校の研究発表会の事後研では、グループ討議が行われた。一般的な、校長の挨拶、研究主任の報告、講演、質疑応答という形ではなく、少人数の話し合いであったため、すべての参加者が、話し合いに参加できたようであった。

2年間の研究計画の初年度としては、教職員のICTとの親和性も出てきたように思う。「深い学びを追求した考えを練り上げるためのグループ活動の仕掛けづくり」から「わかる授業」につなげていっていただきたい。