東京学芸大学附属小金井小学校

第45回特別研究指定校

研究課題

通常学級におけるインクルーシブ教育を実現するICT活用の研究
~学びの多様性を拓く未来の教室づくり~

2020年度01-03月期(最新活動報告)

最新活動報告
「学びを止めないTeams活用」と題したオンライン教育セミナーを2回開催......

アドバイザーコメント

田村順一先生
新型コロナウィルスによる登校自粛は、結果として遠隔授業等の必要性から......

東京学芸大学附属小金井小学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 東京都 東京学芸大学附属小金井小学校
アドバイザー 田村 順一 帝京大学 教授
研究テーマ 通常学級におけるインクルーシブ教育を実現するICT活用の研究
~学びの多様性を拓く未来の教室づくり~
目的 通常学級におけるインクルーシブ教育を実現するためのICTの活用法を明らかにする。
現状と課題 2016年に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が施行され、国公立の学校では個々の教育的ニーズに合わせた支援が提供されるようになった。現在では、特に学習に困難を抱える児童に対するICTを活用した支援が期待されているが、通常学級における研究は十分ではない。
本校がこれまでに取り組んできた平成25〜26年度の文部科学省「インクルーシブ教育システム構築モデル事業」や平成30年度の文部科学省「学習上の支援機器等教材活用評価研究事業」等での実績を踏まえ、「ICTを活用して適切な支援を行うことにより、通常学級でのインクルーシブ教育を実現していくこと」についての研究を進め、その実現方法や必要性を広く社会に訴えていくことは、共生社会の実現に向けた重要な取組みであると考えている。
学校情報化の現状 自治体等からの支援は無く、予算状況が厳しいので、外部資金の獲得状況に応じて少しずつ整備を進めている。
取り組み内容
  1. ICTを活用した支援のベースとなる「ICT×インクルーシブ教育」教室の整備。
  2. 通常学級において読み書きに困難を抱える児童へのICTを活用した困りごとの把握(タブレット版読み書きアセスメントの活用)と、それに基づく支援方法の確立。
  3. 学習者用デジタル教科書を、学習に困難を抱えた児童への支援ツールとして機能させる授業の設計と公開。
  4. コミュニケーションに困難を抱えた児童へのICTを活用した支援。
    ①インタラクティブプロジェクション機器
    ②AIスピーカー,AIロボット
    ③学級内SNS,グループチャットツール
成果目標
  1. 「ICT×インクルーシブ教育」教室の構築と稼働、インクルーシブ教育に適したICT環境の明確化→利用実績のレポート
  2. PC版読み書きアセスメント活用のガイド作成→他校での実施による普及
  3. 公開授業及び協議会の実施によりデータを蓄積し、その分析から効果的な授業設計方法を構築→学術誌への論文投稿または書籍化
  4. ①〜③のデバイスについて、コミュニケーションに困難を抱えた児童への影響の測定と有効な活用方法の確立→学術誌への論文投稿
※全体を包括した報告書を作成予定
助成金の使途 電子黒板、ネットワーク対応レーザープリンター、レーザープリンタートナー、旅費、講師謝金他
研究代表者 鈴木 秀樹
研究指定期間 2019年度~2020年度
学校HP http://www.u-gakugei.ac.jp/~kanesyo/
公開研究会の予定
  • ICT✕インクルーシブ教育セミナー
     (7月13日,於日本マイクロソフト品川本社)
  • 研究発表会(1月25日)
  • PCカンファレンス(8月8日)
  • 日本教育大学協会研究集会(10月5日)他

本期間(4月~7月)の取り組み内容

  • ・「ICT×インクルーシブ教育」教室の整備。
  • ・国語科における学習者用デジタル教科書の活用を軸としたインクルーシブ教育を実現する授業の開発と実践。
  • ・WizeFloorを教科指導で活用
  • ・PC版読み書きアセスメント等実施による児童の学習に関する困りごとの把握。
  • ・オンラインチャットツール(Microsoft Teams)を活用したコミュニケーション支援の環境構築
  • ・AIスピーカー、ロボット、HylableDASを活用したコミュニケーション支援開始。
  • ・第2回東京学芸大学附属小金井小学校ICT×インクルーシブ教育セミナー「ICTに学びを救われる子はあなたのそばにいる」を開催。プログラムは以下の通り。

公開授業

  • 4年国語「ウナギのなぞを追って」(支援ツール:タブレットPC、学習者用デジタル教科書)/東京学芸大学附属小金井小学校 教諭 大塚健太郎
  • 6年国語「『鳥獣戯画』を読む」「この絵、私はこう見る」(支援ツール:タブレットPC、学習者用デジタル教科書、Office 365)/東京学芸大学附属小金井小学校 教諭 鈴木秀樹

協議会

講師/放送大学 教授 中川一史氏

セミナー&ワークショップ

  • 「読み書きに困難を抱えた子どもの学びを支えるICT」
    /島根県松江市意東小学校 教諭 井上賞子
  • 「タブレットPCを紙と鉛筆にして学ぶ」
  • 「授業でのつまずきをICTで救う(社会)」
    /東京学芸大学附属小金井小学校 教諭 岸野存宏
  • 「授業でのつまずきをICTで救う(理科)」
    /東京学芸大学附属小金井小学校 教諭 三井寿哉氏
  • 「『困った!』が言えない子どもへのロボットによるコミュニケーション支援」
    /東京学芸大学附属小金井小学校 養護教諭 佐藤牧子

パネルディスカッション

  • /放送大学 教授 中川一史
  • /東京大学先端科学技術研究センター 特任助教 平林ルミ
  • /東京学芸大学教職大学院 教授 藤野博
  • (モデレーター:東京学芸大学附属小金井小学校 教諭 鈴木秀樹)

アドバイザーの助言と助言への対応

〇WizeFloorを用いた誰でもが楽しく取り組める教育システムに期待したい。

  • →5月に女子美術大学アート・デザイン表現学科のヒーリング表現領域とメディア表現領域の合同授業内で、身体活動やコミュニケーションを活発にするコンテンツの共同開発を行い、児童が試作を体験し、コンテンツ内容について検討した。
  • →6月に6年生が総合の授業で、Wizefloorを活用して、小学校生活におけるけがの防止(学校内のけが、登下校、犯罪被害等)について、プログラムした。プログラムした内容を1年生の特別活動の時間を用いて紹介し、共同で体験的にけがの防止について学習した。
  • →8月にデンマークのAlexandra社を訪ね、WizeFloorの教育利用について意見交換を行うと共に教育利用の実態について視察・調査を行う。

〇安価な単焦点型の電子黒板機能を持つプロジェクタで代替できるものかどうか、少し研究してみてはどうか。

  • →AGC株式会社からinfoverre TOUCH 5台を寄贈していただくことになった。フロアプロジェクションではなく、テーブル型のディスプレイだが、コミュニケーション支援ツールとしては可能性を感じるので研究を進めたい。

〇支援の方向性を確認するためにもアセスメントも可能な限り取り入れられると良い。

  • →専門機関と連携しWISC、文字の読み書きに対してのアセスメントを実施し困難さに応じた支援を検討・実施した。
  • →東京学芸大学藤野博教授の助言により日本版CCC-2(子どものコミュニケーションチェックリスト)を実施し、ICTを活用した支援を検討・実施した。

本期間の裏話

協力企業(日本マイクロソフト株式会社)と連携して学外の会場で200人規模のセミナーを開催するのには相当なエネルギーを必要とする。特に申し込み受付を開始した6月以後は、毎週月曜のWEBマガジンの発行、週1回のSkypeミーティング、各種事務作業と並行して公開授業やプレゼンテーションの準備を進めなければならず、かなり忙しくなったが、当日多くの来場者を迎えてセミナーを開催できたこと、それが好評をもって迎えられたことで報われるのを感じた。何より、子どもたちが公開授業を楽しみ、大勢の参観者の中でも臆することなく学習を進めていた姿は感動的ですらあった。

本期間の成果

  • ・第2回東京学芸大学附属小金井小学校ICT×インクルーシブ教育セミナー「ICTに学びを救われる子はあなたのそばにいる」を開催(参加者約200名)。「ICTを活用してインクルーシブ教育を実現する」というコンセプトについて公開授業を中心に据えたセミナーによって広く社会に問う契機とすることができた。
  • ・ロボット(ソータ/Vstone株式会社)を活用したコミュニケーション支援を開始し、一定の成果をあげることができた。またHylableDASを活用して児童の話し合い活動の分析を可視化することによりコミュニケーション支援の基礎とすることができた。

今後の課題

  • ・ロボットによるコミュニケーション支援には大きな可能性を感じるが、Wi-Fiの設定がセンシティブでロボットがなかなか起動しない時があり苦労した。これに代表される機器のオペレーションについては更にスムーズな運用を目指して改善していかなければならない。
  • ・同時に進めている文科省事業のうち、個別支援については概ね軌道に乗ってきたが、教科指導上のつまずきに関する研究・実践はまだまだこれからである。来年1月25日の研究発表会を一つのゴールと定め、国語・社会・理科・総合的な学習の時間について「ICTでつまずきを救う」ことの研究を進めていきたい。

今後の計画

  • 08月 コンピュータ利用教育学会PCカンファレンスでポスター発表。
  • 10月 全国教育大学協会研究集会で口頭発表。
  • 11月 東京学芸大学教育フォーラム2019で講演。
  • 12月 ATACカンファレンス 2019で口頭発表及びポスター発表(予定)。
  • 01月 東京学芸大学附属小金井小学校研究発表会でICTを活用してインクルーシブ教育を実現する公開授業を実施。
  • 03月 CIEC研究会報告集または東京学芸大学紀要で論文発表。

気付き・学び

ICT✕インクルーシブ教育セミナーの公開授業後の授業協議会では、時間が足りなくてフロアからの意見をもらうことができなかった。試験的に、当日参観したマイクロソフト認定教育イノベーターの先生方とFacebookグループを作り公開授業について議論しているが、これが非常に活発で中身の濃い議論が展開されている。授業研究は公開授業をやって終わり、ではないので、こうした形で継続して議論できるような環境を作ることも意味があるのではないかと感じている。今後の研究課題としたい。

成果目標

通常学級におけるインクルーシブ教育を実現するためのICTの活用法として以下を明らかにする。

  1. 1. 学習者用デジタル教科書を学習に困難を抱えた児童の支援ツールとして機能させるための授業設計方法。
  2. 2. コミュニケーションに困難を抱えた児童をICT(①インタラクティブプロジェクション機器,②学級内SNSやグループチャットツール,③ロボット)の活用によって支援する方法。
  3. 3. 通常学級において読み書きに困難を抱える児童へのICTを活用した困りごとの把握と支援の方法。
アドバイザーコメント
田村 順一 先生
帝京大学
教授 田村 順一 先生

1.研究期間  令和元年4月~7月

2.今期間の取り組みの意味付けについて


  • ・今期間は、小金井小学校における特別研究の第一期と言えるが、すでに方向性は固まっており、インクルーシブ教育の実現に向けたいくつかの実践が行われた。
  • ・一つ目は6月4日の学校訪問時に授業観察したWizeFloorによる実践であったが、この日は機器の調子も悪く、意図したような活動につながらなかった。
  • ・このWizeFloorを今後も研究活動のメインにするかどうかについて協議したが、メーカーの協力体制や機器の安定性に課題はあるものの、ユニークな機器活用の実践としてなんとか継続できないか検討課題とした。
  • ・この期間のハイライトとなる実践は、7月13日に品川のマイクロソフト株式会社で行われた公開授業とセミナーの開催である。
  • ・ここでは、4年生と6年生によるタブレットPC、デジタル教科書を使った授業が行われ、その後セミナー、ワークショップ、パネルディスカッション等が行われたが、多岐にわたる豊富な情報量で、参加者も満足いくものであったように思われる。

3.本期間の取り組み・成果の評価

  • ・WizeFloorの活用に関しては、今後も継続的にメーカーからの協力が得られることを期待したい。単焦点型の電子黒板の応用で同様の試み(床に投影し、子どもらが手で行うだけではなく全身で入力操作ができる)ができないかは検討の余地はあると思われる
  • ・本校で取り組んでいる「インクルーシブ教育」の理念が、一部の配慮を必要とする児童への対応と行った狭義のインクルーシブ教育概念ではなく、学級の児童一人一人の個性や違いを尊重し、個々の優劣ではなくどの子をも置き去りにしないというインクルーシブ教育本来のイメージを尊重していることが明らかになり、より本質に近づいたものとして評価される。
  • ・公開授業では、児童らが大勢の参観者にもかかわらず慣れた様子で授業に臨み、機器の操作や発表も動じずに行っていたことは、流石に日常の教育活動が充実したものであることを伺わせた。
  • ・セミナーやワークショップは企業の協力も上手に使い、充実したものであった。
  • ・井上賞子先生による「読み書きに困難を抱えた子どもの学びを支えるICT」の講演は、豊富な実践から多くの参加者に感銘を与えていたようである。

4.今後の課題・期待

  • ・WizeFloorに決してこだわる必要はないのだが、本研究の一つの目玉として何らかの継続が期待できるとよい。
  • ・デジタル教科書やコミュニケーションツール等を活用したICT機器を活用した支援も十分に実績を上げており、多様な試みも成果を上げつつある。
  • ・しかしながら特別研究として行うためには、ある程度独自性ある取り組みも望ましいと思われ、WizeFloorに限らず誰でもが楽しく取り組める教育システムに期待したいところである。
  • ・学校としての総合力や、マイクロソフトをはじめとする各企業の力を活用するノウハウも高く持ち、豊富な実力が垣間見られた公開授業であり、実践であった。

5.他校の参考になる助言など

  • ・インクルーシブ教育に関する相対的な取り組みは、よく考えられていて共感できる部分が多々あった。
  • ・担当の鈴木教諭をはじめ、桁外れに力を持った教員が複数おり、研究の全体を牽引している感じがするが、付属校のよいところとしてそれらの積極的な実践が支援され、学校全体の取り組みとしてまとまっているところが長所としてあげられる。
  • ・会話型ロボット(ソータくん)を用いた指導が今後どのように発展していくのか、興味深く見守りたい。

本期間(8月~12月)の取り組み内容

1.個別支援:児童の「できそう、やってみたい」にアプローチした支援

  • (ア) AI対話ロボットの音声読み上げ機能
    • ①音読困難な児童への音読支援(9月~12月)
    • ②漢字の書字困難な児童へのタカナ音読・書字支援(9月~12月)
    • ③コミュニケーションに困難をかかえる児童への口頭発表サポート(9月~12月)
    • ④コミュニケーション・語彙に課題を抱える児童への会話型支援(9月~12月)
  • (イ) AIスピーカー、ネットワークカメラを使用した支援
    • ①教室からの飛び出し、登校しぶりのある児童への遠隔授業支援(11月〜12月)

2.授業実践

  • (ア) 「障害の社会モデル」の開発授業(道徳)を実施。(12月11日)
  • (イ) AIスピーカーによる学級全体を対象としたコミュニケーション支援実証。
(10月~12月)
  • (ウ) 国語以外の教科におけるICTを活用してインクルーシブ教育を実現する授業の開発と実践。(9月~12月)

3.ICT×インクルーシブ教育に関するアウトリーチ活動

  • (ア) コンピュータ利用教育学会PCカンファレンスでポスター発表。(8月7日)
  • (イ) 全国教育大学協会研究集会で口頭発表およびポスター発表。(10月5日)写真左
  • (ウ) コンピュータ利用教育学会PCカンファレンス北海道で口頭発表。(10月26日)写真中
  • (エ) ATAC Conference で自主セミナー開催。(12月8日)写真右

アドバイザーの助言と助言への対応

〇WizeFloor については買い取れる価格でもなく、メーカーの協力も外国メーカーであるだけに難しいので、あまり無理は利かないものと思われる。

  • →Wizefloorの活用について、各所で事例報告を重ねた結果、1大学及び1企業が共同研究についての興味を示している。そうした外部機関との協力によってWizeFloorについての研究推進を模索する。

〇支援の必要な個々の事例については、今後も大学の協力も得ながら検討していただきたいし、必要なアドバイスや協力はしていきたい。

  • →1学期に田村先生にご助言いただき個別支援計画に基づき支援の評価を行った。今学期は9月に行った小学校と大学の合同検討会個別指導計画の中間評価で、ユニバーサル授業デザインの指標を基に、客観的アセスメントに加え、児童の学習等に対するモチベーションの視点を加えた。そのことにより児童が訴える困難さや授業観察から予想される困難さにアプローチした支援を行った。児童がこれなら「できそう、やってみたい」と思うモチベーションの向上や不安の軽減が支援に反映された。今後も定期的な検討会での協議、アドバイスを取り入れた支援を継続し、校内で同じような困難さを抱える児童等への支援を広げていきたいと考えている。

〇それら個別支援にくわえて、学級活動全体における支援については、もとよりレベルの高い校内体制と教員集団であるだけに期待したいところである。

〇この特別研究は学校に対して行われるものであるだけに、限られた教員だけが実践や研究を行うのでなく、多くの教員集団を巻き込んで組織的に進めていただきたいと願うところだが、付属校の常として人出の少なさや各自がそれぞれの研究テーマに取り組んでいることなど、なかなか全体での取り組みに発展しづらい事情は理解できる。

  • →ICT×インクルーシブ教育の取り組み自体は学校全体でオーソライズされており、協力も得られているが、特に2学期は教育実習等もあり国立大学附属学校としては多忙を極める時期で、なかなか形にできないところがもどかしい。1月25日の研究発表会が終われば、学校全体に余裕が生まれるので、各々が行っている実践等をまとめ、2月29日の成果報告会や報告書で発表していきたい。

本期間の裏話

 本校がインクルーシブ教育に取り組み始めたのは2014年からであるが、それをICTと組み合わせて、更に進めようと考えるようになった発想の源は2017年のATACカンファレンスに参加したことで得たものである。そのATACカンファレンスで、錚々たる講師陣と並んで自主セミナーを開催できたことは非常に嬉しかった。参加者も得られ、ニーズがあることが確認できた。本校の考えるICT×インクルーシブ教育が着実に形になってきていることを感じられると共に、これまでの道のりが間違っていなかったことを確認する機会となった。

 7月に開催した「ICT×インクルーシブ教育セミナー ICTに学びを救われる子はあなたのそばにいる」を契機として、新たな繋がりが出来た。東京電機大学や博報堂等、これまで縁のなかった大学や企業と協力う関係を築けているのは、可能性を広げることに繋がると考えている。また、メディアに掲載されることが多かったのも、本期間の嬉しかったことの一つである。掲載メディアは以下の通りである。

本期間の成果

  • ・今年度1学期までに実践を進めて得られた成果を、学会等での発表やメディアへの掲載を通じてアウトリーチすることができた。
  • ・AIスピーカー、デジタルテーブル等、新しい機材の利用方法開発を進め、その活用の目処をつけられた。
  • ・デンマークのWizeFloor社を訪問し、交渉を重ねたことで、ライセンスについては無償供与を受けられる目途が立った。

今後の課題

  • ・個別支援の評価・支援内容をデータベース化すると共に、その妥当性を検討する。
  • ・AIスピーカーを活用した実践についての効果を検証・分析して論文にまとめる。
  • ・WizeFloorを活用した実践・研究の可能性を模索すると共に、WizeFloorにこだわらず「大型の表示装置を備えたインタラクティブな機器」ということでICT×インクルーシブ教育に資するものを探っていく。
  • ・間近に迫った「一人一台タブレット環境」の時代を先取りした「ICT×インクルーシブ教育プラン」を策定する。

今後の計画

  • 01月 Microsoft Educator Community において、ICT×インクルーシブ教育についてのオンライン講義を配信。
    東京学芸大学附属小金井小学校研究発表会でICTを活用してインクルーシブ教育を実現する公開授業を実施。
  • 02月 今年度の成果報告会を開催すると共に報告冊子を発行。
    AIスピーカーの実践を論文化
  • 03月 報告書の作成。

成果目標

通常学級におけるインクルーシブ教育を実現するためのICTの活用法として以下を明らかにする。

  1. 1. 学習者用デジタル教科書を学習に困難を抱えた児童の支援ツールとして機能させるための授業設計方法。
  2. 2. コミュニケーションに困難を抱えた児童をICT(①インタラクティブプロジェクション機器,②学級内SNSやグループチャットツール,③ロボット)の活用によって支援する方法。
  3. 3. 通常学級において読み書きに困難を抱える児童へのICTを活用した困りごとの把握と支援の方法。
アドバイザーコメント
田村 順一 先生
帝京大学
教授 田村 順一 先生

1.研究期間  令和元年8月~12月

2.今期間の取り組みの意味付けについて

  • ・今期間は、小金井小学校に限らず付属校においては、教育実習生の受け入れ等で多忙を極める時期に当たり、研究を進めるに当たっても困難があったことは十分理解できる。
  • ・当初新しい機器として注目したWizeFloorであるが、本社(デンマーク)や輸入販売元の協力が得られなくては実践を重ねることは困難であり、この期間はすでにある機器を活用して個別の支援が必要な児童への対応を行った。
  • ・対話ロボットやスマートスピーカーを用いた音読支援や書字支援、コミュニケーションに課題のある児童へのロボットを介した授業支援(これは記録ビデオを拝見したが、人前でなかなか発表ができない児童に、ロボットに児童自らが発表原稿をテキスト入力して替わって読ませる実践であった。)良いアイディアであり、児童も途中でテキスト入力が途切れて以降は口頭で発表もできたとのことであった。一旦このような支援方策を講じ、徐々にフェーディングしていって最終的には一人でできるように慣れさせていくことも有効である。
  • ・この期間に行った授業の一部は参観させていただき、児童らの手慣れたICT活用のレベルの高さを実感させていただいた。
  • ・他学年の何らかの支援が必要とされる児童の事例もビデオで拝見したが、的確なアセスメントに基づいて実践が試みられており、先のロボットの事例のように柔軟な支援方策を講じているところが評価できる。
  • ・また、この時期の忙しさの合間に様々なアウトリーチを行い、学会やカンファレンス等で発表を行うなど、積極的な研究態度には頭が下がる。

3.本期間の取り組み・成果の評価

  • ・WizeFloorの活用に関しては、メーカーとの協議もできたようなので、今後に期待することとする。
  • ・基本となる児童のメディアリテラシーが極めて高いため、授業におけるICTの活用も円滑でよどみがない。
  • ・その中で、個々の児童の特性や支援内容を意識しながら研究を進めており、これからの様々な試行を期待したい。
  • ・積極的な情報発信は、大変ではあろうが、特別支援教育関係の情報はなかなか流通しづらく、多くの実践はそれぞれの実践者の試行錯誤によって支えられていることが多い。そうした情報を得るためには多くのつながりを得ることが一番有効であり、ATACなどの先進的な実践を行う人々との交流や適切な評価が、さらなる研究の充実につながるものと思われる

4.今後の課題・期待

  • ・様々なメディアの注目度も高く、そうした報道や学会等の積極的な情報発信も必ず良き評価や得がたいアドバイスとして帰って来るものである。
  • ・クラス全体への授業内における支援と、特に個別の課題の大きい児童への個別支援と両面を行うのは負担も大きいと思うが、校内の共通理解や大学の間接・直接の支援、外部機関や企業等の支援も上手に受け入れてさらに充実した研究ができている。
  • ・デジタルテーブル(テーブル型の大型タブレットPCのようなもの)の入手や、これまでの対話ロボット(遠隔でしゃべらせたり、身代わり的な役割は十分果たせるが、自律的に適切な応答が得られるかはこれからの課題だが)、あるいはスマートスピーカーの活用は他校でも参考になる事例として期待される。
  • ・学校としての総合力や、マイクロソフトをはじめとする各企業の力を活用するノウハウも高く、何でも学校内で処理することにこだわらず、企業も含めて多くの協力や支援を得ながら研究及び実践を行うのは今後の新たな学校教育のあり方を示している。

5.他校の参考になる助言など

  • ・日常の授業や学級経営そのものがしっかりしていることや、校内の共通理解がとれていることが、新しい試みを行う上での基盤となる。
  • ・こうした先進的な事例を見て、附属だからできると考える向きもあろうが、むしろ大きな制約の中で、最大の効果を上げうる方策に大胆にチャレンジしていると思う。
  • ・2024年度までに一人一台のタブレットPCを整備するという計画が国から発表された。機器さえあれば何でもできるわけではなく、前述のように日常の授業そのものがしっかりできていて初めてICT機器が生きてくる。ICTを「いつでも、ちょこっと、助けてくれる」の頭文字だという鈴木教諭、佐藤養護教諭ほかの今後の実践に期待したい。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

●1月25日(土)本校研究発表会においてICT×インクルーシブ教育部会として公開授業2本を公開すると共に研究協議会を開催。

  • 公開授業1 保健6年 『病気の予防』 授業者:佐藤牧子
  • 公開授業2 国語6年 『やまなし』 授業者:鈴木秀樹
  • 協議会 講師:田村順一(帝京大学) 中川一史(放送大学)
    司会:小池翔太(千葉大学附属小)

●2月15日(土)日本教育工学会「教育の情報化SIG」第10回ワークショップ『一人一台の時代に一人一冊のデジタル教科書を!』でパネルディスカッションに参加

●2月21日(金)Microsoft教育センターにおいて「[MIEEコース]ICT に学びを救われる子はあなたのそばにいる  ICT × インクルーシブ教育」を公開。

https://education.microsoft.com/ja-jp/courses

コンテンツ

  1. ICT×インクルーシブ教育とは?
  2. ICT×インクルーシブ教育セミナー
  3. インクルーシブ教育の授業で使えるICT(1)
  4. インクルーシブ教育の授業で使えるICT(2)
  5. インクルーシブ教育の授業で使えるICT(3)
  6. ICT×インクルーシブ教育の挑戦
  7. ICT×インクルーシブ教育の情報
  8. クイズ

●2月12日(水)文部科学省「発達障害支援の地域連携に係る全国合同会議」において事例報告者として登壇。

●2月29日(土)予定では日本マイクロソフト品川本社セミナールームで開催予定であった「ICT×インクルーシブ教育 成果報告会」をオンラインで開催。(プログラムは以下の通り)

  • Microsoft教育センターで公開したコンテンツの紹介
  • 事業概要報告と提案
  • 読み書きアセスメントについて
  • 国語における学びに困りごとを抱えた児童への支援
  • 理科における学びに困りごとを抱えた児童への支援
  • 5つのバリアを超えて
  • RPAが拓くICT×インクルーシブ教育の未来

●3月11日(水)ICT×インクルーシブ教育 成果報告書を発刊。

●授業の参観・視察等受け入れ

  • 1/22 日本マイクロソフトSurface担当部門
  • 1/23 東京学芸大学教職大学院フィールドワーク
  • 1/28 東京学芸大学初等国語科教育法授業
  • 2/5 Majang社(Minecraft 開発元)Education Edition開発部門

本期間の裏話

 1月25日(土)の本校研究発表会においてICT×インクルーシブ教育部会として公開授業2本を公開すると共に、アドバイザーの田村順一先生、中川一史先生を講師としてお迎え位し研究協議会を開催した。特に2時間目の国語では授業を行った教室、中継した先の教室合わせて230名以上の方が参観してくださった。ICT×インクルーシブ教育への期待と熱意の高まりを感じられたのは非常に嬉しかった。

 他方、残念だったのはコロナウィルスの蔓延防止の観点から2月29日(土)に開催を予定していた「ICT×インクルーシブ教育 成果報告会」を中止せざるを得なかったことである。ただし、せっかく準備を進めてきたのに全く何もせずゼロにしてしまうのはあまりに勿体なく、発表予定だった教員を中心にムービーコンテンツを作成し、それをつなげるような形でのオンラインイベントを行った。

 これにより、オンラインによるコンテンツ配信のノウハウを蓄積することができ、期せずして「デジタルコンテンツの配信によってICT×インクルーシブ教育を広める」という長期的な目標への足がかりを得ることが出来たのは大きな収穫だった。今期はマイクロソフト教育センターを通じて1つデジタルコンテンツの配信を開始することができたが、次年度はこうしたデジタルコンテンツの配信を更に進めたい。

本期間の成果

  • ・公開授業、学会における発表を通して、学びに困難を抱える児童の支援に学習者用デジタル教科書が有効であることを確認することができた。
  • ・Microsoft教育センターにおいて「[MIEEコース]ICT に学びを救われる子はあなたのそばにいる  ICT × インクルーシブ教育」の公開や、教育新聞において特集「インクルーシブ教育の実践 『ICT』とは、何の略称か」が組まれたことにより、ICT×インクルーシブ教育のコンセプトや実施方法等についてWEBを介して広く社会に問うことができた。

今後の課題

  • ・研究発表会、成果報告会といった大きな成果発表の機会が続き、コロナウィルス問題対応で時間を割かれることも多かったために、前期に行ったAIスピーカーの実践についての分析・論文化を進めることができなかった。これについては、来年度の早い時期にまとめる必要がある。
  • ・GIGAスクール構想に伴い、本校でもネットワーク環境の整備と5・6年生へのタブレット配備される予定である。(たまたまではあるが、各教室の電子黒板も春休みにリプレースされる。)また、国語・社会・算数・理科については学習者用デジタル教科書も導入する予定なので、各教科における学びに困難を抱える児童への効果的な活用方法について研究を進める予定である。

今後の計画

  • ・GIGAスクール構想に基づく校内ネットワーク整備とタブレット端末整備を進める。
  • ・リプレースされる電子黒板の活用方法及び令和2年度より導入されるOffice365 A3について教員研修を重ね、ICT×インクルーシブ教育の考え方に立った指導方法の周知と、タブレット端末整備への準備を進める。
  • ・ICT×インクルーシブ教育の実践についてレクチャーするムービーを核としたデジタルコンテンツを作成する。また、配信の形について検討を進め、なるべく広く社会に問うことができる形での公開を目指す。

1年間を振り返って、成果・感想・次年度への思い

 個別支援についても、学級での授業場面における支援についても、新しいテクノロジーを積極的に取り入れて着実に実績を積み重ねていくことができたのは大きな成果であるし、我々が元々考えていた「ICTを活用することで通常学級における学びに困難を抱えた児童への支援を行いながらインクルーシブ教育を実現する」というコンセプトが間違っていないことを確認することもできた。そういった意味では順調な1年間だったと言ってよいだろうと考えている。

 また、本校アドバイザーの田村順一先生はもとより、やはりパナソニック教育財団のアドバイザーである中川一史先生はじめ、多くの先生方に授業を見ていただいたり、ご助言をいただけたことは非常に大きな学びになった。

 ただ、全校的な取り組みという意味では課題が残るのも事実である。本校は長く教科教育研究を中心に研究を行ってきたので、教科横断型のICT×インクルーシブ教育のような提案に対しては、教員間で温度差があることは否めない。

 しかし、今年度の様々な活動を通して、だんだんと教員間で意識が高まってきた。そこにGIGAスクール構想が打ち出されたので、誰もICTを無視できない状況になった上に、本校のこれまで取り組んできたインクルーシブ教育を組み合わせることの重要性がますます認知されるようになってきたのは間違いない。

 次年度はGIGAスクール構想に伴う環境整備にかなりの労力を割かねばならないことが予想されるが、今年度以上に着実に研究・実践を進めて高い成果をあげたい。

成果目標

 通常学級におけるインクルーシブ教育を実現するためのICTの活用法として以下を明らかにする。

  1. 1. 学習者用デジタル教科書を学習に困難を抱えた児童の支援ツールとして機能させるための授業設計方法。
  2. 2. コミュニケーションに困難を抱えた児童をICT(①インタラクティブプロジェクション機器,②学級内SNSやグループチャットツール,③ロボット)の活用によって支援する方法。
  3. 3. 通常学級において読み書きに困難を抱える児童へのICTを活用した困りごとの把握と支援の方法。
アドバイザーコメント
田村 順一 先生
帝京大学
教授 田村 順一 先生

1.研究期間  令和2年1月~3月

2.今期間の取り組みの意味付けについて

  • ・小金井小学校の研究姿勢で特筆したいことは、成果の積極的な対外発信である。
  • ・1月25日には学校をあげて研究発表大会を行い、全国から多くの教員が参加した。
  • ・ICT及びインクルーシブ教育に関する発表としては、公開授業で佐藤養護教諭が6年生に保健の授業「病気の予防」、鈴木教諭が同じく6年生に国語で「やまなし」の授業を行った。いずれもICTを効果的に利用した授業であったが、保健の授業では病気の児童や人にとっていやすい環境とは?と言ったテーマで、ゲーム作成ソフトを利用した授業が人の立場になって考えるなど、インクルーシブ教育の理念を取り入れたものであった。
  • ・学習上の困難を内包する児童を含む一斉指導であっても、苦手意識を持たせない工夫もあり、国語の授業も児童に様々な角度から「考えさせる」活動をどのように引き出すかというもので、参加者の関心も高いものがあった。
  • ・個々の児童に対する学習支援は研究発表会にはなじまないため、多くを触れることはできなかったが、着実に支援方策を講じながら研究を進め、この研究報告会を企画していることは理解できる。
  • ・その後のシンポジウムでは、広く全国から集まった現場の先生方はもっぱら機器の活用や、今後のGIGAスクール構想に関心が集まっていたが、多くのヒントを得ることができたものと思う。
  • ・2月、3月はコロナウィルス騒ぎで研究や教育実践を中断せざるを得なかったが、これは全国的な問題であって、本校の責任ではない。児童の安全が確保されたところで、次年度にこれらの実践を引き継いでもらいたい。

3.本期間の取り組み・成果の評価

  • ・6年生も3学期ともなれば機器の操作や道具としての機器を活用して学習を進めることに習熟している。
  • ・卒業式もどうなるか不明だが、せっかくの小学校としてのまとめがこのようなことで中断を余儀なくされ、6年生として児童らも担任の鈴木教諭もさぞ残念なことであろう。
  • ・一方、学習支援の必要な児童は中学年に多く、個々の児童の特性や支援内容を意識しながら研究を進めており、これからの様々な試行を期待したい。
  • ・積極的な情報発信は、高く評価するが、日本教育工学会、マイクロソフト教育センターのおける実践報告、文科省における事例報告など、いくつかの発表ができたことは良かった。
  • ・特に、2/21の発表ではインクルーシブ教育の理念を発信できたことは意義深いことと評価できる。
  • ・残念なことに、2/29に予定していた成果報告会は中止せざるを得ず、もったいないと思っていたが、オンラインで報告するなど、フォローをしっかり行っていた。

4.今後の課題・期待

  • ・年度末の忙しい日程の中で、多くの対外発信の場を用意したことは評価できるが、次年度においても機会あるごとに積極的な発信を期待したい。
  • ・ある意味、ICTの活用に慣れた6年生が卒業し、次は何年生を担当するかは今後のこととなるが、引き続き「誰をも置き去りにしない」インクルーシブ教育の理念のもと、さらなる実践に期待したい。
  • ・デジタルテーブル(テーブル型の大型タブレットPCのようなもの)は児童にとっても使いやすい機器であり、情報の共有や操作に適切である。また、これまでの対話ロボット(遠隔でしゃべらせたり、身代わり的な役割をさせる)、あるいはスマートスピーカーの活用は他校でも参考になる事例として期待される。
  • ・以前も書いたことだが、本稿は学校としての総合力も高く、マイクロソフトをはじめとする各企業の力を活用するノウハウも有しており、大学や企業も含めて多くの協力や支援を得ながら研究及び実践を行うのは今後の新たな学校教育のあり方を示している。

5.他校の参考になる助言など

  • ・1/25の研究発表会に参加した全国の先生方の感想をシンポジウムなどで少し聞く機会があったが、日常の授業や学級経営そのものがしっかりしていることや、校内の共通理解がとれていることが、研究を行う上で高く評価されている。
  • ・えてして機器の充実度だけに目を奪われて、附属だからできると考える向きもあろうが、基本となる教育実践ができているからこそ道具としての機器活用や、個々の児童を生かすインクルーシブな教育実践ができるのである。
  • ・2024年度までに一人一台のタブレットPCを整備するというGIGAスクール構想や、電子黒板のリプレースなど、新年度初めは調整や習熟までに手間もかかろうが、新たな機器でできることも増え、新たな実践がなされることを引き続き期待したい。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

●Microsoft Teamsを活用したオンライン教育の全校での実施。(以下、発表タイトルと発表者)

  • ▷ “Face to Face”の教育から、学びの“Side by Side”へ:鈴木秀樹
  • ▷ オンライン学習指導の実際(1)算数:加固希支男
  • ▷ オンライン学習指導の実際(2)国語:大村幸子
  • ▷ オンライン学習指導の実際(3)理科:三井寿哉
  • ▷ 分散登校こそTeams活用:鈴木秀樹
  • ▷ オンラインで繋げよう子どもの心身の健康:佐藤牧子
  • ▷ おうちでテニピン遊び~ウィズコロナの体育授業を見据えて~:今井茂樹
  • ▷ Teamsで創る道徳授業~絵はがきと切手の実践より:遠藤信幸
  • ▷ 掟破りの同期型オンライン授業:鈴木秀樹
  • ▷ Teamsを使った学校教育の拡張~理科における観察学習と外部講師の活用~:小林靖隆
  • ▷ Teamsが支える試行錯誤~1年生をビデオ学校探検につれていこう!の実践より~:富山正人
  • ▷ 意欲と学習活動を支えるTeams 〜共に学ぶとはなにか〜:岸野存宏

●「学びを止めないTeams活用」と題したオンライン教育セミナーを2回開催。

●同セミナーのアーカイブをYouTubeにて公開

https://www.youtube.com/playlist?list=PLTTN-P3KCkUzy4WHkCCx0bYJuTdRadfZF

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ・個別の配慮が必要な児童に対しては、遠隔で対応することは難しいと思うが、こうした「オンラインの方がわかりやすい」という声を、単なる印象としてでなく、formsなどのアプリを用いて児童らの意識等を調査し、オンラインのメリット・デメリット、一斉指導では得られない児童の学びの特徴が調査研究できるとよい。
    →休校期間、または分散登校期間中のオンライン授業実施時には、実施することで手いっぱいでなかなか分析まで進めることはできなかったが、ご指摘の通り、オンラインのメリット・デメリットを明らかにしていくことは、オンライン教育の実施が一定の成果をあげた本校でこそやらねばならないことだと考える。まずは1学期末に児童・保護者にアンケートを取ってオンライン教育について振り返っておきたい。
  • ・今後留意しなければならないこととして、通常の学校生活に戻るに当たり(現状は曜日ごとに学年を分けての分散登校が行われている)おそらく混む電車等で通学する児童も多くあろうことから、コロナへの不安、遠距離通学の負担などから精神的不適応や登校しぶりなどが生じる可能性があること、さらに一定の時期が過ぎたあたりで生じるPTSDの可能性を想定しておく必要もあろう。
    →大変、重要なご指摘と受け止めている。今回の事態が児童に何をもたらしているのか、正直なところ、我々にも見えていない部分は大きい。短期的なことだけでなく、長期的に児童の心身の状態を把握するような仕組みづくりをこれまで以上に整備して適切な支援をしていきたい。

本期間の裏話

 日本中、どこの学校でも大変な時期を過ごしたことと思うが、この困難な状況を「ICTを活用して乗り切ろう」ということで全校一丸となって取り組むことができたのは非常にうれしかった。教科教育研究が盛んな本校にあってICTは常にメインテーマとはなり得ない存在であったが、今回ばかりは「ICTをどう活用するか」「どう活用することが教育的に意味があるか」「この活用から我々は何を学べているか」等について全校の教員と議論しながら進めていけたのは極めて意義深い。オンライン教育セミナーも月に1回のペースで開催できているが、一つの学校の教員だけでここまでハイレベルなセミナーを連続して行えているのは本校の強みであると改めて感じる契機ともなった。

本期間の成果

  • 1. Microsoft Teams を活用したオンライン教育を全校で実施する中で、「Face to Faceの教育から、学びのSide by Sideへ」というコンセプトを確立することができた。
  • 2. オンライン教育セミナーの開催や、各種メディアに取り上げられることにより、全国に向けて本校の取り組みをアウトリーチすることができた。
  • 3. 全校挙げてのオンライン教育の実施となったことで、これまでICTに関して積極的ではなかった教員も含めて全校的な取り組みとしてのICT活用を進めることができた。
  • 4. TeamsやFormsを活用することで、休校中であっても児童の心身の状態を把握し、適切な支援を行うことができる枠組みを示すことができた。
  • 5. 学校再開後にICTを活用した個別支援の新しい形態を取り入れることができた。
  • 6. 他大学の協力を得てWizeFloorを導入できる目途が立った。

今後の課題

  • 1. 特殊な状況の中、オンライン教育の実践に多大なる労力を必要とし、また児童の登校が叶わなかったので、ICT×インクルーシブ教育の授業研究を十分に進められなかった。2学期の状況は未だ見通せないが、WizeFloorの導入も目途が立ったので、個別支援、授業における支援、いずれの場面でも本格的な研究を進めていきたい。
  • 2. GIGAスクール構想によるタブレット整備までにはまだ時間がかかる。それまでの間、Teams活用を止めずにどのように効果的に活用していくかは工夫を要する。全校のノウハウを集積して更なる活性化を目指したい。

今後の計画

  • 1. オンライン教育セミナー「学びを止めないTeams活用」を継続的に実施する。
  • 2. 11月7日開催の東京学芸大学附属小金井小学校ICT×インクルーシブ教育セミナー「ICTに学びを救われる子はあなたのそばにいる」vol.3開催に向けた準備を進める。
  • 3. WizeFloorの設置と環境整備を進める。

成果目標

 通常学級におけるインクルーシブ教育を実現するためのICTの活用法として以下を明らかにする。

  1. 1. 学習者用デジタル教科書を学習に困難を抱えた児童の支援ツールとして機能させるための授業設計方法。
  2. 2. コミュニケーションに困難を抱えた児童をICT(①インタラクティブプロジェクション機器,②学級内SNSやグループチャットツール,③ロボット)の活用によって支援する方法。
  3. 3. 通常学級において読み書きに困難を抱える児童へのICTを活用した困りごとの把握と支援の方法。
アドバイザーコメント
田村 順一 先生
帝京大学
教授 田村 順一 先生

1.研究期間  令和2年4月~7月

2.今期間の取り組みの意味付けについて

  • ・今期間は、新型コロナウィルスの関係でどの学校も自粛と自宅待機、3月の卒業式以来満足な教育活動もできず、研究そのものも進めようがない事態であった。
  • ・この間の授業の大部分はこれまで行ったことがないオンラインによるものにせざるを得ず、学校全体として新たな取り組みに手一杯の状態であったことは容易に想像できる。
  • ・一方で、この時期だからこそ全教員が一丸となって遠隔教育に取り組み、個々の教員のICT利用に関する力量が向上したことは今後の全体的な取り組みを進めるにあたり、結果的によかったとも言えよう。
  • ・できないことを嘆くより、この時期だからこそできることとして、オンライン授業の在り方を研究し、その中でも可能な限り児童らの「学びにくさ」を支援する方策を見いだすことがこの時期における意義と言えよう。
  • ・一方、本校の基本的なスタンスとして評価できるのは、対外的な情報発信を積極的に行っていることだが、youtubeにおいて発表の場を確保していることは大事なポイントであるが、多くの人に周知する工夫を行うとなおよい。

3.本期間の取り組み・成果の評価

  • ・オンライン授業の工夫によって、Microsoft Teamsを活用して可能な限り双方向性を保った状態での授業ができたのはよかった。
  • ・また一部のICTに強い担任のみで可能になるのではなく、本校の先生方一人一人の努力によって、全校で実施できたこともこの苦しい時期の成果としてはよく頑張ったと言える。
  • ・児童らからは、「オンラインの方がわかりやすい」などと言う声が上がっているようだが、一過性の授業場面で集中力を要するより、自宅でゆっくり、自分のペースで学修できることのメリットも計り知れない。
  • ・今後徐々に対面式の通常の授業形態に戻っていくことと思われるが、児童の特性によっては今後もオンライン授業の形式と併用することで効果を上げるケースや、「反転学修」の道も開ける可能性もあることから、児童らの意識調査などを通してオンラインのメリット・デメリットを把握しておく必要もあるだろう。
  • ・対面授業のFace to Face から、オンラインによるSide by Sideという意識を持って学修を考えるという姿勢は高く評価する。
  • ・また、保健室からはformsを使って児童らの健康状態や心のケアを行っていたが、自粛生活で孤立しがちが児童の心の問題を考えると、つながりを維持することの大切さを考慮したものと考えられる。
  • ・今後通常の授業形態に復帰するに当たり、どうしても遠距離から通学してくる附属学校の特性などから、電車等での感染の心配や、精神的な不適応が生じる可能性もあり、登校渋りなども出るかも知れない。さらには、一定期間後にコロナ禍によるPTSDの可能性も否定できない。
  • ・その際にこうした顔を合わせることはできなくても、いつも先生が見守っていてくれているというフィールドを確保することには大きな意義がある。

4.今後の課題・期待

  • ・コロナ禍は今後どのように変遷するか分からない不透明性をはらんでいる。
  • ・いつになれば通常の授業や学校体制が復活するか見通しが立ちにくく、付属校の特性として9月からの教育実習受け入れによる教師集団の負担増もあり、すぐに研究体制が元に戻るとは期待しがたいところがあることはよく理解できる。
  • ・Wize floorの借用のめどが立ったことなど、今後に期待できるところもあるが、昨年度研究の中心であった6年生は卒業してしまい、次の学年(学級)がペースを取り戻すにも時間がかかるので、あまり無理せず、じっくりコロナと向き合いながら研究を進めていただきたい。

5.他校の参考になる助言など

  • ・どの学校も、このコロナ騒ぎで通常の授業ができず、オンライン授業などを手探りで行ってきたことと思う。
  • ・本校においては、学区が近くに集中しているわけではない付属校のため、オンラインによる授業で学習面の支援に力を入れねばならないわけだが、そうした中だからこそ発見できたオンライン授業のメリットや可能性もあることに着目いただきたい。
  • ・顔を合わせることができないからこそ、距離は離れてもいつも側に居て見守っているという意識を児童らに持たせ、心のケアを行うためにも、Side by Sideと言うキーワードは他校でも大きく参考にするべき姿勢なのではなかろうか。

本期間(8月~12月)の取り組み内容

1.「学びを止めないTeams活用」と題したオンライン教育セミナーを2回開催。

  • (ア) 第4回(8月22日)
    • ・Teamsでタブレットは手となり足となる:鈴木秀樹
    • ・子どもの主体性を大切にできるTeams:小池翔太
    • ・GIGAスクール時代のTeams活用:狩野さやか 小池翔太 鈴木秀樹
  • (イ) 第5回(9月19日)
    • ・Teamsを活用した算数の探究的な学びと学級づくり :田中英海
    • ・Teamsを活用するためのご支援:西尾千賀子
    • ・学習者用デジタル教科書×Teams:鈴木秀樹
    • ・Teamsここが勘所:石山将(日本マイクロソフト)

2.「ICT×インクルーシブ教育セミナーvol.3」を開催。

  • ・授業提案「想像力のスイッチを入れよう」鈴木秀樹
  • ・協議会 中川一史×鈴木秀樹
  • ・企業からの提案1(光村図書)
  • ・実践発表 大村幸子・小林靖隆・西尾智賀子、コメント:田村順一
  • ・講演 井上賞子
  • ・企業からの提案2 (日本マイクロソフト)
  • ・パネルディスカッション 坂井聡×中川一史×鈴木秀樹×佐藤牧子

3. 第5学年で一人一台タブレット環境を実現。主に学習者用デジタル教科書の効果を各教科で検証。

4. WizeFloorを活用した個別支援及び対象児の在籍するクラスでの活用を推進。

5. ATACカンファレンス2020で成果発表
「コロナとオンライン教育」(鈴木秀樹・佐藤牧子)

※8・9月は一斉時差登校、9月下旬より通常登校。ただし、校内での感染対策は引き続き継続して行っている。

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ・色々難航していたWize-Floorであるが、天井取り付け型に進化して整備された。これによって児童(特に低学年)が夢中になって機器にぶつかるという危険もなくなり、高学年の児童が1,2年生に向けてコンテンツを作成すると言った、校内の交流が一層進化するものと期待される。コロナ禍により、大きく時間を取られたものの、かえってそれによってICTの利活用が広がるなど、プラスの面もあった。しかし、あとわずかな研究期間で、さらにその先の未来に向けた方向性を打ち出していってもらいたい
    →研究期間中にWizeFloorの設置が間に合ったことは我々にとっても僥倖であったが、確かに時間的には厳しいものがあるのも事実である。そこで、国立大学附属の強みを生かし、本学大学院に学ぶ学生と協働して児童への実践と分析を進めている。これにより、今年度中に成果としてまとめ上げる目途が立ちつつある。また、現在デンマークの学校との交流を進めており、WizeFloorの活用法やソフトウェア開発にして意見交換をオンラインで行っていきたいと考えている。

ICT×インクルーシブ教育セミナーから

ICT×インクルーシブ教育セミナーから

本校ICT部会YouTubeチャンネル

本期間の裏話

 ハイライトは11月のICT×インクルーシブ教育セミナー開催であった。本校のICT活用、およびそれに下支えされたインクルーシブ教育も全校的な展開を見せつつあり、今回は教員3名およびICT支援員による実践発表を行うことができた。教科教育研究の盛んな本校で、教科横断的に取り組むICT×インクルーシブ教育が市民権を得て、校内からの発表者に困らない状況にまでなったことを感じられたのは、担当者としては非常に嬉しかった。

 学校の中を見ていても、何らかの困難を抱えた児童への支援策としてICTを使う姿は完全に普通のことになってきた。そうした支援を得て、学びの入り口に立とうとする子供たちの明るい表情は、我々の研究の一番の成果であると感じている。

本期間の成果

  • 1. コロナウィルス禍の休校時に全校あげてMicrosoft Teamsを活用した学習支援を全校で進めた成果で、ICT活用が大きく進んだ。
  • 2. 特に第5学年に関しては企業の協力もあって10月から全クラスで一人一台タブレット環境を実現することができた。現在は、主に学習者用デジタル教科書の効果を検証している。
  • 3. WizeFloorを導入し、個別支援への活用を進めることができた。

WizeFloorで活動する児童の様子

今後の課題

  • 1. コロナウィルス禍による長い休校期間、短くなってしまった夏休み等、今年の学校生活は児童にこれまでとは違った負荷をかけている。そうした児童にICTを活用してどのような支援ができるか様々なトライをしてきているが、今後も引き続き考えていく必要がある。
  • 2. 本来であれば大きな会場で実際に人を集めて行うはずだったICT×インクルーシブ教育セミナーはオンラインでの開催となった。研究成果を発信していくことは特別研究指定校の責務であると考えているが、その手法はまだ確立できていない。今後も試行錯誤を続けていく必要がある。

今後の計画

  • 1. 東京学芸大学附属小金井小学校KOGANEI授業セミナーで成果発表。
  • 2. 3月開催予定の「東京学芸大学附属小金井小学校ICT×インクルーシブ教育成果発表会」の準備を進める。
  • 3. 報告冊子の作成を進める。

成果目標

 通常学級におけるインクルーシブ教育を実現するためのICTの活用法として以下を明らかにする。

  1. 1. 学習者用デジタル教科書を学習に困難を抱えた児童の支援ツールとして機能させるための授業設計方法。
  2. 2. コミュニケーションに困難を抱えた児童をICT(①インタラクティブプロジェクション機器,②学級内SNSやグループチャットツール,③ロボット)の活用によって支援する方法。
  3. 3. 通常学級において読み書きに困難を抱える児童へのICTを活用した困りごとの把握と支援の方法。
アドバイザーコメント
田村 順一 先生
帝京大学
教授 田村 順一 先生

1.研究期間  令和2年8月~12月

2.今期間の取り組みの意味付けについて

  • ・新型コロナウィルスによる登校自粛は、結果として遠隔授業等の必要性から、Teamsなどの利活用の必要が生まれ、今まで一部の教員で行われていたICTの教育利活用を全校に広げる結果となった。
  • ・7月は分散登校、8月は時差登校と、通常の教育活動に服したのはようやく9月からであり、付属校の宿命として9月からしばらくは教育実習の学生受け入れで手一杯であったため、十分な研究が進められなかったことはやむを得ないことであった。
  • ・GIGAスクール構想の前倒しで全校一人一台のタブレットPCを実現させている自治体もある中、鈴木教諭が担当する5学年だけでも一人一台態勢が実現されたことも幸運であった。
  • ・またデジタル教科書学習者用の活用が進み、児童の意思を尊重して多様な選択ができるようになった。
  • ・無理にタブレットPCやICTメディアを使うことを強要せず、あくまで個々の児童の学びやすさと自己選択に重点を置く姿勢は評価できる。

3.本期間の取り組み・成果の評価

  • ・引き続き、オンライン授業の工夫によって、Microsoft Teamsを活用して可能な限り双方向性を保った状態での授業ができたのはよかった。
  • ・必要が生んだ結果とは言え、全校にICTの利活用が進んだことはよかったと思われる。
  • ・今後、まだコロナ禍は予断を許さない状況が続いている。この間の遠隔支援のノウハウをきちんと総括し、仮にまた登校自粛等に陥った場合でも、教育の質を落とさない態勢を記録として残しておいていただきたい。
  • ・11月7日にオンラインで開催された、ICT×インクルーシブ教育セミナーは、学校から発信するという負担の大きさもあろうと思うが、今後多くの参加者が遠隔で参加できるという新たな成果発信の方法として、これも記録にとどめておいていただきたい。
  • ・短い時間の中でも内容の濃いセミナーであったと思うが、特に若手の教員の事例発表や、情報教育支援員の報告には大きな意義があった。
  • ・これらはまぎれもなくICT活用の裾野が広がったことを表すと共に、新しい感性を取り入れやすくなることを示している。学校現場では、往々にしてこうしたICT利活用などは、中心になっているメンバーが抜けると急に衰退してしまったり、次世代の育成が難しくなる傾向があるが、その点本校の活用はよい後継者育成につながっているようである。
  • ・また、情報教育支援員の存在は大きく、誰もが安心して授業で使えるよう、トラブルのリカバリーや日常の機器整備に努めてくれる人的資源は重要である。
  • ・この期間に、上記セミナーばかりでなく8月、9月にオンラインセミナーを行い、研究内容を公開した。
  • ・さらには、朝日新聞などの新聞、Impresswatchのwebマガジンなど、多彩な情報発信を行い、GIGAスクール構想を前に情報を求めている全国の教育関係者へのニーズに応えたことは評価できる実践である。

4.今後の課題・期待

  • ・色々難航していたWize-Floorであるが、天井取り付け型に進化して整備された。
  • ・これによって児童(特に低学年)が夢中になって機器にぶつかるという危険もなくなり、高学年の児童が1,2年生に向けてコンテンツを作成すると言った、校内の交流が一層進化するものと期待される。
  • ・コロナ禍により、大きく時間を取られたものの、かえってそれによってICTの利活用が広がるなど、プラスの面もあった。
    しかし、あとわずかな研究期間で、さらにその先の未来に向けた方向性を打ち出していってもらいたい。

5.他校の参考になる助言など

  • ・セミナーの報告書にも書いたことだが、こうした機器環境や特殊な機材さえあれば、どこでも同じ事ができるというものでもない。
  • ・積極的に子どもに何を提供したいのか、どのような支援を講じたいのかの目的意識がしっかりあれば、企業や行政など、様々な支援が得られる可能性がある。
  • ・本校の実践は、そうした意欲が先にあって、様々なメーカー等が協力してくれたものであり、先に環境条件がそろっていたわけではもちろんない。
  • ・そういった意味で、うらやましがるより先に自分らは子どもらに何をしたいか(残したいか)の議論をしっかり行い、この実践の後に続いてもらいたい。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

  • オンラインセミナー「Side by SideのICT活用」開催(2月6日)
  • 厚木市教育委員会ICT研修会(2月2日)
  • 宇都宮大学シンポジウム(2月7日)
  • 成果報告ムービーの作成

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ・毎回言うが、こうしたセミナーを毎年開催し、積極的に情報を発信している本校の取り組みをまず高く評価したい。
    →ありがとうございます。励みになります。この状況ですので、オンサイトでの公開授業の公開はまだ難しそうですが、今後もオンラインセミナーやYouTubeチャンネル等を通じて積極的に情報発信に努めます。今期、作成に取り組んでいる成果報告ムービーも役立てたいと考えています。
  • ・今回はオンラインで行われ、音声がうまく拾えないなど、トラブルもあったが、その様子はきっと視聴者には好意的に移ったのではないか?とあとで大笑いした。苦労も大きかったと思うが、視聴した全国の教員によいメッセージが伝わったのではなかろうか。研究期間は終わるが、コロナ禍によって予定外のこともおき、十分な研究体制が取りにくかったことはやむを得ない。しかしながらWizeFloorも含めてようやくいろいろな実践のできる体制ができたので、財団の特別研究は終わっても、こうした新しい機器の活用が今後楽しみである。
    →ご指摘の通りで、むしろここからが本番と言いますか、ここからが肝心と捉えています。2年間のうちの1年間はほぼほぼコロナ対応に奪われてしまいましたので(そこから得られたことも多くありましたが)、他の学校への発信はオンラインに頼らざるを得ませんでした。コロナウィルス禍が収まってきたら、例えばWizeFloorの体験会等も積極的に開いていきたいと考えています。

本期間の裏話

 田村先生からのコメントにもあるが、豪華なゲストを招いて開催したオンラインセミナー「Side by SideのICT活用」であったが音声トラブルが発生した。リハーサルでは全く問題なかったのに、本番になったら音声がとぎれとぎれになってしまったのである。

 致し方なく、用意してあったマイクとミキサーを通した音声は諦め、Bluetooth接続のマイクを回して使うという何とも間抜けなことになってしまった。だが、こうした失敗を積み重ねていくことが経験値を高めることは間違いない。小学校の教員としては本来、担当する業務ではないことであるようにも思うが、これを乗り越えることで一層「発表したい!」という気持ちが高まってきたようなところがある。

 また、音声が途切れ途切れになってしまったので撮り直しを行った部分もあるのだが、この撮り直しを行うことで改めて自らの発表を冷静に見つめ直してブラッシュアップすることができたりもした。転んでもただでは起きない、という姿勢は大切かな、と考えている。

(撮り直した発表はこちら https://youtu.be/UguA_hFAqCU

本期間の成果

 田村先生、中川先生をお招きしてシンポジウムを開催することで、これまでの我々の取り組みについての評価をいただくと共に、今後へ向けての課題も明らかにすることができた。特に田村先生からご指摘のあった「教員の意識改革」については、ICT×インクルーシブ教育を進める上では必須のものであり、どうすればそれを成し遂げられるのかを明らかにしていくことが次の課題として浮かび上がってきたと捉えている。

 11月のICT×インクルーシブ教育セミナー開催の際にはプロの方に撮影等々を委託したが、今回の「Side by SideのICT活用」では、全てを自前で行った。それ故、各種トラブルは起こったが、ある程度自分たちでできるのではないかという手応えを得ることができた。今後に活かしていきたい。

2年間の成果

本研究の課題は、通常学級におけるインクルーシブ教育を実現するためのICTの活用法として以下を明らかにすることである。それぞれについて成果を述べていきたい。

1. 学習者用デジタル教科書を学習に困難を抱えた児童の支援ツールとして機能させるための授業設計方法。

これについてはある程度、確立することができたと考えている。まず学習者用デジタル教科書が備えている機能を支援ツールとしてどう活かすかが、見えてきた。「読みに困難を抱えている児童には読み上げ機能が効果的」といった辺りのことは当然として、書き込み機能等を活用することで児童が没頭する学習活動を授業に組み込むこと、そのために授業デザイン(特に教師の出どころ)について大きな変革が必要であること等はかなり確立できたと考えている。授業公開はなかなか難しいかもしれないが、ムービー等を活用して明らかにしていきたい。

2. コミュニケーションに困難を抱えた児童をICT(①インタラクティブプロジェクション機器,②学級内SNSやグループチャットツール,③ロボット)の活用によって支援する方法。

  1. ①WizeFloorは、思わず身体を動かしたくなるような活動場面を作ることができるだけでなく、児童の課題に応じた体験をスモールステップで提供することができる。これにより安全欲求から社会的欲求、承認欲求の実現といったステップアップをサポートできることが明らかになってきた。遊びを通してあらゆる感情を出せるような場を作ることは、なかなか他のICT機器ではできないことであり、そこに道筋をつけられたことは大きな成果であると考えている。アプリケーション作成については、大学生や大学院生の学習支援員の発想、アイディアなども取り入れて作成した。今後、教員だけでなく、教員養成系大学の学生の実践的な学びの機会につなげるような環境を考えていきたい。
  1. ②主にTeamsのチャネルにおけるコミュニケーションについて様々な学びを得ることができた。色々あるが、大きかったのは「炎上」の教育的価値を見いだせたことではないだろうか。児童がICTの扱いに長けてくると、教科の課題に取り組む中でもつい真剣になって炎上してしまうことがある。だが、そういった時こそ、オンラインでのコミュニケーションについて学ぶ好機であり、その価値を見出すことができたのはGIGAで様々な不安を抱える学校への大きなアドバイス要因になっている。
  2. ③ロボットについては、なかなか思った通りの成果をあげることができなかった。まだまだ動作が安定しないことに加え、コロナウィルスの感染症対策等で自由に児童に使わせることができなかったりすることもあり、なかなか成果をあげることが難しかった。そんな中でも「人よりもロボットの方が安心できる」場面があることは、学習場面や心理的なかかわりの中で見えてきた。今後も継続して可能性を追求していきたい。

3. 通常学級において読み書きに困難を抱える児童へのICTを活用した困りごとの把握と支援の方法。

本校においては、タブレット版読み書きアセスメントhttps://www.dik-uni.com/koik/の活用は完全に定着したと言っていい。表示されたカードの中で正しいものを選んでタッチしていくだけなので、児童が操作に迷うことはなく、検査が終わると、即座に結果が表示られる上、結果は、ただ成績が示されるだけでなく、その子のどこに困難があり、どんな分野で丁寧な配慮が必要かのアドバイスも表示される。これを元に、その子に対してどういった支援が有効であるかを考えやすくなる。広く知らしめたい手法である。

今後の課題

1.2年間の成果の発信

  1. (ア) オンラインセミナー「Side by SideのICT活用」の定期的な開催
  2. (イ) ICT×インクルーシブ教育セミナーvol.4の開催(11月6日)
  3. (ウ) 学会における発表
  4. (エ) メディアからの取材に積極的に応じる

2.実証研究の継続

  1. (ア) WizeFloorの活用(個別・集団)
  2. (イ) 学習者用デジタル教科書の活用
  3. (ウ) プログラミングを苦手とする児童への効果的な指導の開発

2年間を振り返って

 2年間の研究期間のうち、まるまる1年間はコロナウィルス禍での実施になってしまった。どこの学校でもそうだと思うが、コロナウィルス対応には、かなり神経を使うし、相当のマンパワーを割かれる。本研究の中で大きなイベントとして計画していた公開授業はできなくなったし、そもそも休校や分散登校、時差登校など、児童の登校そのものが不規則になってしまったのでトライしようと考えていたことを実施する時間が奪われてしまった面は否めない(ロボットの活用などはもっと進めたかった)。そういう意味では、当初やりたかったことをやり切れなかった2年間と言わざるを得ない。

 しかし、コロナウィルス禍であってもできることは何か、コロナウィルス禍だからこそやるべきことは何かを真剣に考えた結果、本校に関して言えば想定していたこと以上の成果をあげられたとも言えるのではないかと考えている。

 2020年3月の休校の際、本校は特段の手当てをせずに休校に入った。この「何もしなかった3月」の反省がその後に活きたのである。「4月からTeamsを活用して学習支援を行いましょう。」という提案に誰も反対しなかったのは、ICTが本校の教員の「子どもたちと繋がりたい」という想いの受け皿になれたからに他ならない。ここから本校教員のICT活用は(学校は閉じているのに)飛躍的に進んだわけだが、その中で見えてきたのが「Face to Faceの教育から、学びのSide by Sideへ」というコンセプトである。

 ICTを活用したオンライン教育では、学びの主導権は子供にある。であれば、教員は「指示しよう」とか「掌握しよう」といったことから発想を切り替えて、「学んでいる子供に寄り添おう」と思わねばならない。これが「学びのSide by Sideへ」ということなのだが、これはICT×インクルーシブ教育においてはずっと大切にしてきたことであり、それがついに一般的なことになりつつあるのではないかと感じている。

 今後も「Face to Faceの教育から、学びのSide by Sideへ」というコンセプトを大切にして実践・研究を続けていきたいと考えているが、そこに価値があると絶対の自信を持てるようになったことが、2年間で一番の成果かもしれない。

成果目標

 通常学級におけるインクルーシブ教育を実現するためのICTの活用法として以下を明らかにする。

  1. 1. 学習者用デジタル教科書を学習に困難を抱えた児童の支援ツールとして機能させるための授業設計方法。
  2. 2. コミュニケーションに困難を抱えた児童をICT(①インタラクティブプロジェクション機器,②学級内SNSやグループチャットツール,③ロボット)の活用によって支援する方法。
  3. 3. 通常学級において読み書きに困難を抱える児童へのICTを活用した困りごとの把握と支援の方法。
アドバイザーコメント
田村 順一 先生
帝京大学
教授 田村 順一 先生

1.活動機関  2021年1月~3月

2.今回の取り組みの意味付けについて

  • ・オンラインセミナー「Side by SideのICT活用」2月6日が行われた。
  • ・本校は、対外に積極的に情報発信することを通じて研究を進めているようなところはあるが、それは日常的に様々な課題に取り組み続けているから、頻繁に情報が発信できると言うことでもある。
  • ・今回は対面でのセミナーを開催することができず、オンラインによるものであったが、多くの参加者があり、本校の研究内容が伝わったのではないかと思う。

3.本期間の取り組み・成果の評価

  • ・改めて全国の多くの教育関係者が本校の実践に注目していることがわかった。
  • ・授業実践など、生の姿を見せられないことは残念であったが、豊富な情報で満足いただけたのではないかと思う。
  • ・特に天井取り付け型になったwize-floorは、児童の楽しんでいる姿のビデオを見ても、今後の活用が楽しみである。

4.2年間の研究を通して

  • ・この2年間のうち、かなり長期間においてコロナ禍による予想外の不便を被り、研究としては気の毒な結果となった。
  • ・しかし、危機は連帯を生むという言葉の通り、遠隔による学習の保障のため、なかなかICTに取り組めなかった他の先生方も、唯一で効果的な手段として全校を上げてICTを活用した実践に向かうことができたことは収穫でもあった。
  • ・ICTは基本的に様々な不便や制約を補ってくれる道具でもある。コロナ禍による学校教育の危機を、ICTが補ってくれた面は確かにあるだろう。
  • ・直接手を貸せないため、かえって個々の児童の特性や課題が見えるようになり、遠隔による支援、学校再開後の支援にも役立った面もあり、災い転じて福となった面もある。
  • ・さて、当初期待していたwize-floorだが、関係者の努力もあり、天助固定型の新型となって利活用のめどがついたのが、研究期間の終了間際であった。
  • ・今後、様々な活用方法が考えられ、個別の支援を必要とする児童ばかりでなく、様々な学年を超えたコミュニティの場として活用が期待される。
  • ・発達障害系の課題が想定される何人かの指導に当たっては、特別支援教育コーディネータでもある佐藤養護教諭が、適切なアセスメントを経て、個に応じた取り組みを行った。
  • ・そのために期待していたお話ロボット(Sotaくん)をあまり活用できなかったようだが、これからも人前で話すことが苦手な児童の身代わりとして活用を進めていただきたい。
  • ・本校における「インクルーシブ教育」の推進は、こうした個々の児童に対する配慮に加えて、クラス全体の児童がお互いを認め合い、一人一人の違いを理解して、ともに学習を進めるという、基本的な営みを、ICTを活用することで個々の意見を可視化し、共有する体験を多く取り入れることで実現してきた。
  • ・決して劇的な実践があるわけではないが、日常に当たり前にICT機器があり、それを使うことも個々の自由という、個の自由な選択を元にした実践は、今後のICTを用いた教育、インクルーシブな教育の原点を示したものと評価する。
  • ・今後GIGAスクール構想により、児童生徒のICT環境は一気に進むと思われるが、我が国の教育のある意味過去を引きずってきたところとして、一律に同じことをさせようという「一斉指導」あるいは形式を重んじる平等主義といったものがICTを使った指導場面でも起こりそうな気がする。しかし、あくまで道具であるICT機器は、個々の児童生徒が必要と感じているからこそ使うことに意味があるのであって、その便利さを知らせ、機能を理解させた上で、使う、使わないは個人が判断すれば良いことである。
  • ・インクルーシブ教育を、障害のある児童生徒に対する教育と誤解している教育関係者は多いと思うが、基本は多様な児童生徒がいて、その個々に応じた支援方策があり、それをお互い認め合って学校生活を送ることがインクルーシブ教育の本当の意味と考える。
  • ・本校の実践は、まさしくそうしたインクルーシブ教育の本質を実践しているものと考える。
  • ・また、そうした実践を行うに当たり、機器の整備はもちろん重要であるが、同時にそれを支える人的資源というか、本校に常時いてくれるICT教育支援員のような方の存在は大きい。GIGAスクール構想も機器の台数ばかりでなく、それを支える人的資源にも配慮してほしいものである。
  • ・さて、私は障害のある児童生徒にとって、ICTは「スタンド・バイ・ミー」の関係と呼んでいる。いつでも困ったときに身近にあって、生活を支援してくれる道具という意味だが、これだと支援する側、される側という関係図となる。
  • ・ところが、本校の鈴木教諭が提唱する、Side by Sideという関係図は、いつでもそばにいて、どちらが支援者でもよい関係。すなわち相互支援のお互い様の関係を指しているように思われる。通常の学級で学ぶ児童生徒の場合、誰が上でも下でもないのであって、ICTも、先生も、友達も、あるときは助け、またあるときは助けられる関係でいいのである。それらをあたり前に実践している本校の児童の姿を見る中で、改めてインクルーシブ教育の本質を見せていただいたように思う。

5.他校の参考になる助言など

  • ・いつも言うことだが、セミナーや実践発表で断片的に本校の実践を見ている人は、充実した機器や環境に目がいき、付属だからとか、環境に恵まれているからできるのだと誤解しがちである。
  • ・2年間定期的に実践を拝見していて、そうではなく、児童らに何かを伝えたい、よりよい学校生活を誰をも置き去りにすることなく、例外なく送らせたいという願いがあって、それに呼応する形で協力者が現れ、機器が集まっているのである。
  • ・特別なことをして終了後継続できなくなる研究ではなく、日常の教育活動を見直し、整えていく基本に立った実践の2年間であったと思う。