東京学芸大学附属小金井小学校

第45回特別研究指定校

研究課題

通常学級におけるインクルーシブ教育を実現するICT活用の研究
~学びの多様性を拓く未来の教室づくり~

2019年度04-07月期(最新活動報告)

最新活動報告
第2回東京学芸大学附属小金井小学校ICT×インクルーシブ教育セミナー「ICTに......

アドバイザーコメント

田村順一先生
今期間は、小金井小学校における特別研究の第一期と言えるが、すでに方向性は固まっており、......

東京学芸大学附属小金井小学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 東京都 東京学芸大学附属小金井小学校
アドバイザー 田村 順一 帝京大学 教授
研究テーマ 通常学級におけるインクルーシブ教育を実現するICT活用の研究
~学びの多様性を拓く未来の教室づくり~
目的 通常学級におけるインクルーシブ教育を実現するためのICTの活用法を明らかにする。
現状と課題 2016年に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が施行され、国公立の学校では個々の教育的ニーズに合わせた支援が提供されるようになった。現在では、特に学習に困難を抱える児童に対するICTを活用した支援が期待されているが、通常学級における研究は十分ではない。
本校がこれまでに取り組んできた平成25〜26年度の文部科学省「インクルーシブ教育システム構築モデル事業」や平成30年度の文部科学省「学習上の支援機器等教材活用評価研究事業」等での実績を踏まえ、「ICTを活用して適切な支援を行うことにより、通常学級でのインクルーシブ教育を実現していくこと」についての研究を進め、その実現方法や必要性を広く社会に訴えていくことは、共生社会の実現に向けた重要な取組みであると考えている。
学校情報化の現状 自治体等からの支援は無く、予算状況が厳しいので、外部資金の獲得状況に応じて少しずつ整備を進めている。
取り組み内容
  1. ICTを活用した支援のベースとなる「ICT×インクルーシブ教育」教室の整備。
  2. 通常学級において読み書きに困難を抱える児童へのICTを活用した困りごとの把握(タブレット版読み書きアセスメントの活用)と、それに基づく支援方法の確立。
  3. 学習者用デジタル教科書を、学習に困難を抱えた児童への支援ツールとして機能させる授業の設計と公開。
  4. コミュニケーションに困難を抱えた児童へのICTを活用した支援。
    ①インタラクティブプロジェクション機器
    ②AIスピーカー,AIロボット
    ③学級内SNS,グループチャットツール
成果目標
  1. 「ICT×インクルーシブ教育」教室の構築と稼働、インクルーシブ教育に適したICT環境の明確化→利用実績のレポート
  2. PC版読み書きアセスメント活用のガイド作成→他校での実施による普及
  3. 公開授業及び協議会の実施によりデータを蓄積し、その分析から効果的な授業設計方法を構築→学術誌への論文投稿または書籍化
  4. ①〜③のデバイスについて、コミュニケーションに困難を抱えた児童への影響の測定と有効な活用方法の確立→学術誌への論文投稿
※全体を包括した報告書を作成予定
助成金の使途 電子黒板、ネットワーク対応レーザープリンター、レーザープリンタートナー、旅費、講師謝金他
研究代表者 鈴木 秀樹
研究指定期間 2019年度~2020年度
学校HP http://www.u-gakugei.ac.jp/~kanesyo/
公開研究会の予定
  • ICT✕インクルーシブ教育セミナー
     (7月13日,於日本マイクロソフト品川本社)
  • 研究発表会(1月25日)
  • PCカンファレンス(8月8日)
  • 日本教育大学協会研究集会(10月5日)他

本期間(4月~7月)の取り組み内容

  • ・「ICT×インクルーシブ教育」教室の整備。
  • ・国語科における学習者用デジタル教科書の活用を軸としたインクルーシブ教育を実現する授業の開発と実践。
  • ・WizeFloorを教科指導で活用
  • ・PC版読み書きアセスメント等実施による児童の学習に関する困りごとの把握。
  • ・オンラインチャットツール(Microsoft Teams)を活用したコミュニケーション支援の環境構築
  • ・AIスピーカー、ロボット、HylableDASを活用したコミュニケーション支援開始。
  • ・第2回東京学芸大学附属小金井小学校ICT×インクルーシブ教育セミナー「ICTに学びを救われる子はあなたのそばにいる」を開催。プログラムは以下の通り。

公開授業

  • 4年国語「ウナギのなぞを追って」(支援ツール:タブレットPC、学習者用デジタル教科書)/東京学芸大学附属小金井小学校 教諭 大塚健太郎
  • 6年国語「『鳥獣戯画』を読む」「この絵、私はこう見る」(支援ツール:タブレットPC、学習者用デジタル教科書、Office 365)/東京学芸大学附属小金井小学校 教諭 鈴木秀樹

協議会

講師/放送大学 教授 中川一史氏

セミナー&ワークショップ

  • 「読み書きに困難を抱えた子どもの学びを支えるICT」
    /島根県松江市意東小学校 教諭 井上賞子
  • 「タブレットPCを紙と鉛筆にして学ぶ」
  • 「授業でのつまずきをICTで救う(社会)」
    /東京学芸大学附属小金井小学校 教諭 岸野存宏
  • 「授業でのつまずきをICTで救う(理科)」
    /東京学芸大学附属小金井小学校 教諭 三井寿哉氏
  • 「『困った!』が言えない子どもへのロボットによるコミュニケーション支援」
    /東京学芸大学附属小金井小学校 養護教諭 佐藤牧子

パネルディスカッション

  • /放送大学 教授 中川一史
  • /東京大学先端科学技術研究センター 特任助教 平林ルミ
  • /東京学芸大学教職大学院 教授 藤野博
  • (モデレーター:東京学芸大学附属小金井小学校 教諭 鈴木秀樹)

アドバイザーの助言と助言への対応

〇WizeFloorを用いた誰でもが楽しく取り組める教育システムに期待したい。

  • →5月に女子美術大学アート・デザイン表現学科のヒーリング表現領域とメディア表現領域の合同授業内で、身体活動やコミュニケーションを活発にするコンテンツの共同開発を行い、児童が試作を体験し、コンテンツ内容について検討した。
  • →6月に6年生が総合の授業で、Wizefloorを活用して、小学校生活におけるけがの防止(学校内のけが、登下校、犯罪被害等)について、プログラムした。プログラムした内容を1年生の特別活動の時間を用いて紹介し、共同で体験的にけがの防止について学習した。
  • →8月にデンマークのAlexandra社を訪ね、WizeFloorの教育利用について意見交換を行うと共に教育利用の実態について視察・調査を行う。

〇安価な単焦点型の電子黒板機能を持つプロジェクタで代替できるものかどうか、少し研究してみてはどうか。

  • →AGC株式会社からinfoverre TOUCH 5台を寄贈していただくことになった。フロアプロジェクションではなく、テーブル型のディスプレイだが、コミュニケーション支援ツールとしては可能性を感じるので研究を進めたい。

〇支援の方向性を確認するためにもアセスメントも可能な限り取り入れられると良い。

  • →専門機関と連携しWISC、文字の読み書きに対してのアセスメントを実施し困難さに応じた支援を検討・実施した。
  • →東京学芸大学藤野博教授の助言により日本版CCC-2(子どものコミュニケーションチェックリスト)を実施し、ICTを活用した支援を検討・実施した。

本期間の裏話

協力企業(日本マイクロソフト株式会社)と連携して学外の会場で200人規模のセミナーを開催するのには相当なエネルギーを必要とする。特に申し込み受付を開始した6月以後は、毎週月曜のWEBマガジンの発行、週1回のSkypeミーティング、各種事務作業と並行して公開授業やプレゼンテーションの準備を進めなければならず、かなり忙しくなったが、当日多くの来場者を迎えてセミナーを開催できたこと、それが好評をもって迎えられたことで報われるのを感じた。何より、子どもたちが公開授業を楽しみ、大勢の参観者の中でも臆することなく学習を進めていた姿は感動的ですらあった。

本期間の成果

  • ・第2回東京学芸大学附属小金井小学校ICT×インクルーシブ教育セミナー「ICTに学びを救われる子はあなたのそばにいる」を開催(参加者約200名)。「ICTを活用してインクルーシブ教育を実現する」というコンセプトについて公開授業を中心に据えたセミナーによって広く社会に問う契機とすることができた。
  • ・ロボット(ソータ/Vstone株式会社)を活用したコミュニケーション支援を開始し、一定の成果をあげることができた。またHylableDASを活用して児童の話し合い活動の分析を可視化することによりコミュニケーション支援の基礎とすることができた。

今後の課題

  • ・ロボットによるコミュニケーション支援には大きな可能性を感じるが、Wi-Fiの設定がセンシティブでロボットがなかなか起動しない時があり苦労した。これに代表される機器のオペレーションについては更にスムーズな運用を目指して改善していかなければならない。
  • ・同時に進めている文科省事業のうち、個別支援については概ね軌道に乗ってきたが、教科指導上のつまずきに関する研究・実践はまだまだこれからである。来年1月25日の研究発表会を一つのゴールと定め、国語・社会・理科・総合的な学習の時間について「ICTでつまずきを救う」ことの研究を進めていきたい。

今後の計画

  • 08月 コンピュータ利用教育学会PCカンファレンスでポスター発表。
  • 10月 全国教育大学協会研究集会で口頭発表。
  • 11月 東京学芸大学教育フォーラム2019で講演。
  • 12月 ATACカンファレンス 2019で口頭発表及びポスター発表(予定)。
  • 01月 東京学芸大学附属小金井小学校研究発表会でICTを活用してインクルーシブ教育を実現する公開授業を実施。
  • 03月 CIEC研究会報告集または東京学芸大学紀要で論文発表。

気付き・学び

ICT✕インクルーシブ教育セミナーの公開授業後の授業協議会では、時間が足りなくてフロアからの意見をもらうことができなかった。試験的に、当日参観したマイクロソフト認定教育イノベーターの先生方とFacebookグループを作り公開授業について議論しているが、これが非常に活発で中身の濃い議論が展開されている。授業研究は公開授業をやって終わり、ではないので、こうした形で継続して議論できるような環境を作ることも意味があるのではないかと感じている。今後の研究課題としたい。

成果目標

通常学級におけるインクルーシブ教育を実現するためのICTの活用法として以下を明らかにする。

  1. 1. 学習者用デジタル教科書を学習に困難を抱えた児童の支援ツールとして機能させるための授業設計方法。
  2. 2. コミュニケーションに困難を抱えた児童をICT(①インタラクティブプロジェクション機器,②学級内SNSやグループチャットツール,③ロボット)の活用によって支援する方法。
  3. 3. 通常学級において読み書きに困難を抱える児童へのICTを活用した困りごとの把握と支援の方法。
アドバイザーコメント
田村 順一 先生
帝京大学
教授 田村 順一 先生

1.研究期間  令和元年4月~7月

2.今期間の取り組みの意味付けについて


  • ・今期間は、小金井小学校における特別研究の第一期と言えるが、すでに方向性は固まっており、インクルーシブ教育の実現に向けたいくつかの実践が行われた。
  • ・一つ目は6月4日の学校訪問時に授業観察したWizeFloorによる実践であったが、この日は機器の調子も悪く、意図したような活動につながらなかった。
  • ・このWizeFloorを今後も研究活動のメインにするかどうかについて協議したが、メーカーの協力体制や機器の安定性に課題はあるものの、ユニークな機器活用の実践としてなんとか継続できないか検討課題とした。
  • ・この期間のハイライトとなる実践は、7月13日に品川のマイクロソフト株式会社で行われた公開授業とセミナーの開催である。
  • ・ここでは、4年生と6年生によるタブレットPC、デジタル教科書を使った授業が行われ、その後セミナー、ワークショップ、パネルディスカッション等が行われたが、多岐にわたる豊富な情報量で、参加者も満足いくものであったように思われる。

3.本期間の取り組み・成果の評価

  • ・WizeFloorの活用に関しては、今後も継続的にメーカーからの協力が得られることを期待したい。単焦点型の電子黒板の応用で同様の試み(床に投影し、子どもらが手で行うだけではなく全身で入力操作ができる)ができないかは検討の余地はあると思われる
  • ・本校で取り組んでいる「インクルーシブ教育」の理念が、一部の配慮を必要とする児童への対応と行った狭義のインクルーシブ教育概念ではなく、学級の児童一人一人の個性や違いを尊重し、個々の優劣ではなくどの子をも置き去りにしないというインクルーシブ教育本来のイメージを尊重していることが明らかになり、より本質に近づいたものとして評価される。
  • ・公開授業では、児童らが大勢の参観者にもかかわらず慣れた様子で授業に臨み、機器の操作や発表も動じずに行っていたことは、流石に日常の教育活動が充実したものであることを伺わせた。
  • ・セミナーやワークショップは企業の協力も上手に使い、充実したものであった。
  • ・井上賞子先生による「読み書きに困難を抱えた子どもの学びを支えるICT」の講演は、豊富な実践から多くの参加者に感銘を与えていたようである。

4.今後の課題・期待

  • ・WizeFloorに決してこだわる必要はないのだが、本研究の一つの目玉として何らかの継続が期待できるとよい。
  • ・デジタル教科書やコミュニケーションツール等を活用したICT機器を活用した支援も十分に実績を上げており、多様な試みも成果を上げつつある。
  • ・しかしながら特別研究として行うためには、ある程度独自性ある取り組みも望ましいと思われ、WizeFloorに限らず誰でもが楽しく取り組める教育システムに期待したいところである。
  • ・学校としての総合力や、マイクロソフトをはじめとする各企業の力を活用するノウハウも高く持ち、豊富な実力が垣間見られた公開授業であり、実践であった。

5.他校の参考になる助言など

  • ・インクルーシブ教育に関する相対的な取り組みは、よく考えられていて共感できる部分が多々あった。
  • ・担当の鈴木教諭をはじめ、桁外れに力を持った教員が複数おり、研究の全体を牽引している感じがするが、付属校のよいところとしてそれらの積極的な実践が支援され、学校全体の取り組みとしてまとまっているところが長所としてあげられる。
  • ・会話型ロボット(ソータくん)を用いた指導が今後どのように発展していくのか、興味深く見守りたい。