川崎市立川崎高等学校附属中学校

第43回特別研究指定校

研究課題

未来をLEADする人材育成のためのカリキュラムマネジメント

2017年度04-07月期(最新活動報告)

育成すべき三つの能力の到達目標について検討が足りず、目標設定に至ったとは言えない状態で......

川崎市立川崎高等学校附属中学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 神奈川県 川崎市立川崎高等学校附属中学校
アドバイザー 木原 俊行 大阪教育大学教授
研究テーマ 未来をLEADする人材育成のためのカリキュラムマネジメント
目的 未来をLEADする人材である生徒たちに必要な能力を育成するため、教科横断的な視点をもってカリキュラム・マネジメントを行う
現状と課題
  • 前年度まで「主体的・探究的に学び合う集団の育成~学習を支える言語活動の質の向上と効果的なICT活用~」をテーマに共同研究を行い、各教科等における学び合いの形式やICT活用の場面について、実践を重ねてきたがその数としては多いとは言えず、学習効果を裏付ける客観的データや評価に関しては不十分である。
  • 生徒の実態として与えられた課題に向かう力はあるが、自ら問題を見つけようとしたり、更に学習を深めたり、粘り強く取り組もうとしたりする意識が十分あるとはまだいえない。
  • 数学に課題のある生徒が多い。(特に計算)
  • 開校から「未来をLEADする人材を育成する」と謳っているがその具体の姿や学年に応じてどのような能力をどのように育成していくかが曖昧なため、明確にする必要がある。
学校情報化の現状 ICT環境が整っており、活用もある程度できているが、系統だった指導に課題がある。
取り組み内容 「未来をLEADする人」に必要な三つの能力を「問題解決能力」「ICT活用能力」「ダイバーシティ・コミュニケーション能力」とし、これら三つの能力の育成に関わる研究チームをつくり、組織的に研究を進める。

「問題解決能力研究部」(問題解決能力、探究する力を育成)

  • 自ら課題を見つけ、主体的に思考、判断、表現する力を育成できる授業づくりを総合的な学習の時間を中心に各教科等で重点単元を設定して取り組む。

「ICT活用能力研究部」(情報活用能力育成)

  • 生徒のICT活用する情報活用能力を育成する。

ダイバーシティ・コミュニケーション能力研究部」(多様性を認め、人と関わる力を育成)

  • 人権感覚を豊かにし、多様性を認め、人と関わり合える力をつけるためにはどのような活動や学習を設定するとよいかを検討し、実施する。
※三つの能力の各学年での到達目標を検討し、それに基づいたカリキュラム・マネジメントを教科横断的な視点で行う。「主体的・対話的で深い学び」のための指導と評価の工夫を図る。また、カリキュラム評価を充実させる。
成果目標 「未来をLEADする人」の具体を「主体的に思考し、情報および情報手段を自ら選択・活用し、人との関わりを大切にしながら他者の思いや考えを受けとめて行動できる人」とし、そのために必要となる三つの能力の各学年の到達目標に迫っているという自覚をもつことができ、また行動につなげることができる。(能力が高まったという自覚がある)

  • 各能力の達成目標に対し、教員の目から見たルーブリック評価
  • 年度初め、年度末に実施する意識調査や生徒の活動中の様子、表現された学習成果物等の考察
  • 生徒の実態に合わせてカリキュラムの不断の見直しを図り、到達目標達成につなげる
助成金の使途 研究紀要印刷、電源保管庫、デジタル教材
研究代表者 和泉田 政德
研究指定期間 平成29年度~30年度
学校HP http://www.kaw-s.ed.jp/jh-school/
校内研究会と公開研究会の予定

校内研究会の予定

  • 平成29年度 5回
  • 平成30年度 5回

公開研究会、学会発表等の予定

  • 平成29年度 中間発表会 LEAD学習発表会他(学校公開日に合わせる)
  • 平成30年11月にJAET全国大会で2年間の成果を発表

研究課題と成果目標

研究課題 未来をLEADする人材育成のためのカリキュラム・マネジメント
成果目標
  • 「主体的・対話的で深い学び」を成立・充実させ、三つの能力(「問題解決能力」「ICT活用能力」「ダイバーシティ・コミュニケーション能力」)を育成するためのカリキュラム・マネジメントへの基本的な考え方への共通理解を図り、各教科等におけるカリキュラム・マネジメントを構想する。
  • 「未来をLEADする人」に必要な三つの能力育成に向けて、各学年等における到達目標を検討する。
  • 生徒のICT活用能力の現状を調査する。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

  • ・5月よりICT活用能力研究部および技術科の取り組みとして、1年生を対象とし、生徒のICTスキルの向上をねらいとしたタイピング練習を朝のe-ラーニングと技術科の帯の時間を使って実施した(現在も継続中)。
  • ・6月5日(月)に「未来をLEADする人」に必要な三つの能力の育成に向けて、各学年における到達目標を研究部ごとに検討した。
6月5日の各研究部における研究会議の検討内容

    問題解決能力研究部

    総合的な学習の時間を軸として考えた問題解決能力に関する各学年の到達目標(案)

中1到達目標 体験を重視して学び方を学び、自分の考えを発表することができる
中2到達目標 体験したことを基にして、自分と社会との結びつきについて考えたことを発表することができる
中3到達目標 体験したことを生かし、自ら考えたことを広く発信することができる

(「総合的な学習の時間」の各学年のテーマは1年「農業」「2年職業・商店街」3年「国際都市川崎」)

  •   研究部の中で、生徒の発達段階とLEADの内容を踏まえて仮の到達目標を考えてみたが、本校は中高一貫校で、ステージ制(中1,2がステージ1、中3,高1がステージ2、高2,3がステージ3)をとっているため、ステージごとの目標とした方がよいのではないかという意見も出た。今後、高校側との話し合いや研究部会をもち、最終的な到達目標を決定させていく。

ICT活用能力研究部

キーワードとして「打つ・つくる・発表する」(ステージごとの重点目標)

  • 打つ(自分の考えをICT機器を使って表現できる)
  • つくる(プレゼンソフトなどを活用して見やすく、わかりやすくまとめる)
  • 発表する(まとめたものを使って発表することができる。人に思いを伝えることができる)
  •  この中に情報モラル教育が入っていないので、ステージ1(中1,2)で指導する。

「情報活用能力の課題」でいうと

  • 2. キーボードでの文字入力
  • 5. 表やグラフの比較による分析
  • 6. 適切なグラフの作成(図や写真の加工や図やグラフの比較をさせて関連性をみる)
  •   以上の課題能力育成を中心にステージごとにスパイラルで行う。しかしステージごとの具体的な達成目標の決定までには至らなかったので今後さらに検討する。

ダイバーシティ・コミュニケーション能力研究部

  • ・ 積極的に他者と関わり合うことができる
  • ・ 他者との関わり合いを重視し、自らの考えを他者に伝えることができる
  • ・ 自らの考えをわかりやすく他者に伝えることができる
  • ・ 他者の思いや考えを受けて、自らの考えをわかりやすく伝えることができる
  • ・ 他者の思いや考えを受けて、自らの考えをわかりやすい言葉でわかるように伝えることができる
  • ・ 他者の考えを認め自らの考えを伝えることができる
  •   上記のような能力の育成を中学校から高校(各ステージ)へのスパイラルで行う。しかし、学年、ステージ等における具体的な到達目標の決定までには至らなかったので、今後さらに検討する。そこでは発達段階に応じた受信と発信のレベルに即した到達目標となるよう検討する。
  • 6月に全校生徒を対象としたタイピング技術調査を実施した。また、オンラインによる「コンピューターやタブレットに関する調査」を実施した。

「コンピューターやタブレットに関する調査」設問の一部

オンラインによる「コンピューターやタブレットに関する調査」の様子

  • 6月19日(月)にパナソニック教育財団・川崎市総合教育センター情報視聴覚センターよりアドバイザーを招き、午前中通常授業を参観していただき、午後から校内授業研究会および研究協議を行った。その後パナソニック教育財団の本校アドバイザーである木原先生に「カリキュラム・マネジメントの基本的な考え方」をテーマにご講演いただき、カリキュラム・マネジメントの進め方について研修した。

2年国語「附属中の魅力を6年生に
伝えよう」(ICTを活用したプレゼン
テーション)

授業研究会(問題解決能力・ダイバー
シティ・コミュニケーション能力)3年社会「私
たちがつくるこれからの社会」(対
立から合意へ)

本校アドバイザー木原先生による講
演会演題「カリキュラム・マネジメ
ントの基本的な考え方」

  • 7月20日(木)の研究会議で6月の校内研修会で学んだ「カリキュラム・マネジメントの基本的な考え」に基づき、各教科等におけるカリキュラムの見直しの図り方について再度共通理解を図った。そして各教科等や学年間、総合的な学習の時間との関連を確認したうえで、自分が担当する教科等のカリキュラムの見直しを8月に行う校内研修会までに行うこととした。また、今後の授業研究会の予定を確認した。

校内研修会で提示した「総合的な学習の時間」を軸とした、三つの能力育成に関わる2年国語のカリキュラム・ マネジメントの例 (黄=問題解決能力、青=ICT活用能力、緑=ダイバーシティ・コミュニケーション能力)

アドバイザーの助言と助言への対応

授業研究会後の研究協議における助言指導

  • 今回の研究に即した統一指導案の形式を確立する方向で。
  • 単元名のネーミング等は、生徒が共感しやすいかたちにするとよい。
  • あれこれと考えを巡らせる主体的な学びができていたが授業時間が45分と短く、合っていない感じがした。重点単元の共通理解を図り、カリキュラム・マネジメントするとよい。

助言への対応

  • 新しい指導案では教科として身につけさせたい力だけでなく、三つの力(「問題解決能力」、「ICT活用能力」、「ダイバーシティ・コミュニケーション能力」)に関わる目標と、その評価を入れるとともに、指導観も入れた形式とする。
  • 単元名のネーミングをはじめ、内容についても生徒の実態把握をもとに行っていく。そのためにも生徒との日頃の交流を大切にし、生徒の実態把握に努める。また、指導案検討も含め、第三者の目を取り入れて授業つくりを行っていく。
  • 学校事情により、45分時程を変えることはできないため、「知識・技能」に関する内容は反転授業で行うなどの方法も視野に入れて授業を構想する。または2時間続きの授業にするなどのカリキュラム・マネジメントを行って対応する。

講演会におけるアドバイザーの助言

  • カリキュラム・マネジメントを行う上で「教科横断的」という視点とともに、新学習指導要領の流れに沿って「主体的・対話的で深い学び」と「三つの資質・能力の育成」を外してはいけない。それプラス本校が育成すべきと考える三つの能力(「問題解決能力」「ICT活用能力」「ダイバーシティ・コミュニケーション能力」)の育成をいかに各教科等で行っていくかを具体的に考える必要がある。そのためにやるべきことは四つある
  • ①各教科等における三つの能力育成に関わる重点単元の設定(そのための他の単元との時間調整も含む)
  • ②教科や学年等をまたいだ授業の構想
  • ③三つの能力の現状と課題を明らかにするためにデータを取って分析
  • ④カリキュラムを発展させるためのサポーターや資料の発掘・検討

助言への対応

  • 重点単元の設定については教科ごとに学年の行事や総合的な学習の時間とのつながりを見出しながら検討する(①②④)
  • 三つの能力の現状と課題を明らかにしていくために、生徒へのアンケートを実施、分析する。(③)

本期間の裏話(うれしかったこと、苦心談など)

うれしかったこと

  • アドバイザーの木原先生にカリキュラム・マネジメントの基本的な考え方について非常にわかりやすいご指導をいただき、今後の研究への見通しを具体的にもつことができたこと。

苦心談・反省点

  • 研究を推進していくための研究会議の設定が難しく、検討すべきことを検討しきれずに本期間が終わってしまったこと。また、生徒のICT活用能力の調査は行ったが、分析が完全には終わらなかった。

本期間の成果

  • 校内授業研究会(社会科)と校内研修会を通して、カリキュラム・マネジメントを行う上で必要となる視点のもち方や含むべき要素について職員全体で共通理解を図ることができた。また、各教科等におけるカリキュラム・マネジメントをいかに行っていくか各自見通しをもつことができた。
  • タイピング能力調査の結果、ICT活用能力研究部としての取り組みが既に表れつつある。 (キーボード入力文字数/1分間 1年30.45字、2年43.99字、3年53.16字)

今後の課題

  • 育成すべき三つの能力の到達目標について検討が足りず、目標設定に至ったとは言えない状態であるため、今後さらに研究部ごとに検討を重ね、設定につなげていく。また、その目標に対する評価方法(ルーブリック)とその内容についても検討する。
  • 生徒に行ったICT活用能力調査結果および職員アンケート結果の分析を完了させ、分析結果を今後のカリキュラム・マネジメントに生かす。
  • 一人ひとりの教員が、三つの能力育成を意識した授業を展開していく。そのためにも、自分と同じ教科の教員、および関連する他教科の教員とカリキュラム・マネジメントに向けてさらに話し合いを重ね、授業つくりに生かす

今後の計画

  • 8月24日の夏季研修会で、各教科等で行った総合的な学習の時間を軸としたカリキュラム・マネジメントをもとに、教科間、学年間とのつながりについて考えを共有する。
  • 新しい共通指導案を用いた授業研究会の指導案検討を行う。
  • 9月27日の第2回訪問指導のときにはアドバイザーの木原先生に授業を参観していただいた後、カリキュラム・マネジメントの視点でご指導いただく。

公開授業研究会等の予定

11月25日(土)
  •  第43回JAET全国大会和歌山大会で研究発表(B「情報モラル」、C「教科指導におけるICT活用」
12月11日(月)
  •  中間発表会
    (公開授業)
    問題解決能力(総合的な学習の時間、社会)
    ICT活用能力(数学、技術)
    ダイバーシティ・コミュニケーション能力(道徳、英語)
    (講演会)
    対談または鼎談で行う予定
アドバイザーコメント
大阪教育大学 大学院連合教職実践研究科 教授 木原 俊行 先生

 平成29,30年度と,川崎市立高等学校附属中学校(以下,附属中学校)は,パナソニック教育財団の特別研究指定校として,実践研究を推進することとなった。同校は,その名のとおり,中高一貫教育を標榜する学校である。明るくて,素敵な校舎で,子どもたちがのびのびと学んでいる。附属中学校の子どもたちはそれぞれ,入学時に,タブレット端末を手にする。すなわち,いわゆるOne to one computingのICT環境が実現している。子どもたちは,指導者の指示がなくても,テキストとして,あるいはノートとして,さらには資料集として,タブレット端末を自主的に,主体的に活用している。

 中高一貫教育という新しい制度,モダンで機能的なデザインの建物や教室,そしてよく整備されたICT環境という好条件の下,附属中学校の教師たちは,カリキュラム・マネジメントの実践研究に着手した。そのステップは,他の学校におけるカリキュラム開発の営みの参考になる。まず,重点的に育成を図る資質・能力(問題解決能力,ICT活用能力,ダイバーシティ・コミュニケーション能力)を学校として定めている点に注目したい。それらが教科横断的な視点に基づく教育課程の編成の礎となるからだ。続いて,そうした資質・能力に即して,カリキュラム開発のためのPDCAサイクルを推進する組織(3つの研究部)を構成していることも望ましい。それは,各研究部の検討内容の明確化やその実践化をもたらしている。さらに,PDCAサイクルの取り組みに資するデータ(タイピング技術,コンピュータやタブレットの利用に関する調査)を確保している点も,すぐれている。
 なにより,附属中学校の教師たちは,カリキュラム・マネジメントに関する取り組みをフットワーク軽く進めている。例えば,筆者が6月下旬に助言した内容に,すでに1学期中に応じて,各教科等の年間指導計画の見直しを始めている。指導案の様式の改編にも着手しているし,反転授業の実施も視野に入れている。
 附属中学校におけるカリキュラム・マネジメントに関する実践研究は,緒についたばかりである。しかし,2年後の実りの豊かさを予想できる,よきスタートが切れた1学期であった。