北海道教育大学附属函館中学校

第43回特別研究指定校

研究課題

他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる生徒の育成を目指して

2017年度08-12月期(最新活動報告)

「『情報活用能力』育成のためのカリキュラム表」を「可能性がある単元」から「必ず育成を目指す単元」へと......

アドバイザーコメント

7月に本校を訪問したときに、私が指摘した5つのコメントを真摯に受けとめて対応しようとする姿勢を評価したい。

北海道教育大学附属函館中学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 北海道 北海道教育大学附属函館中学校
アドバイザー 吉崎 静夫 日本女子大学教職教育開発センター所長・教授
研究テーマ 他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる生徒の育成を目指して
目的 高度に情報化した社会では、必要な情報を収集する能力だけでなく、情報を自ら発信・伝達できる能力や、個人の卓越したICT機器の操作技術に加えて他者と協働して課題を解決する力が求められる。このような能力の育成に資する各教科等間の連携を実現するカリキュラム開発及び授業実践の蓄積を本研究の目的とする。
現状と課題
  • 一人一台のタブレットPC環境によって、インターネットを利用してより信頼性の高い情報収集を行うことができる。
  • アプリ等を活用して画像・動画編集ができる
  • 他者と協働して情報に関わる(収集、発信・伝達)学習活動が少ない。
  • 教科等を横断して情報を発信・伝達する能力の育成を目指す教育活動が、意図的・計画的に取り組まれていない。
学校情報化の現状 一人一台タブレットPC貸与(平成25年度〜)
データによる教材の配布・回収等
取り組み内容
  • ① 最終的な目標とする『他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる生徒』の具体的な姿と、それらを構成する要素を設定する。
  • ②「『他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる生徒』育成のカリキュラム表」(仮)を研究部が中心となって作成するとともに、各教科担当者からこれまでの授業実践での取組や今後の取組の可能性に関するヒアリング調査を行い、「カリキュラム表」(仮)の改善を図る。
  • ③「カリキュラム表」(仮)に基づいて各教科の授業実践に取り組み、効果検証を行う。
  • ④ 特に重点化する取組として、生徒が、クラウドを活用し、情報を発信・伝達する学習活動のある授業を各教科において計画・実践する。
  • ⑤ ③及び④の実践等に基づいて②を行い、再度③及び④に取り組むという検証改善サイクルを重視する。
成果目標
  • ① 生徒がICTを活用した協働型授業において、他者との協働により、さまざまな状況を考慮しながら学習した事柄を整理するとともに、最も適した方法で発信・伝達できるなどの(情報活用)能力を効果的に育むカリキュラムや新たな授業デザインを開発・提案する。
  • ② ICTの特長であるテキスト以外の絵、グラフ、映像等を含めた成果物データを蓄積・共有することや、時空を超えた学習環境で協働学習を可能とする利点を、今求められている「主体的・対話的で深い学び」を実現する授業改善の視点から明らかにする。
  • ③『他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる生徒』の育成に特に適している各教科の単元等を明らかにするとともに、その単元の指導計画等の具体例を示す。
助成金の使途 Chromebook、先進校視察、デジタルカメラ
研究代表者 郡司 直孝
研究指定期間 平成29年度~30年度
学校HP http://www.hokkyodai.ac.jp/fuzoku_hak_chu/
公開研究会の予定 教育研究大会:6月9日(金)・10日(土)
教科研究会:平成29年10〜11月
北海道教育大学函館校ウインターフェス

研究課題と成果目標

研究課題 他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる生徒の育成を目指して
成果目標
  • 生徒がICTを活用した協働型授業において,他者との協働により,さまざまな状況を考慮しながら学習した事柄を整理するとともに,もっとも適した方法で発信・伝達できるなどの(情報活用)能力を効果的に育むカリキュラムや新たな授業デザインを開発・提案する。
  • 成果をより確かなものとするために,教育効果の検証を確実に実施する。そのための生徒の変容を見取る学習評価の工夫改善を図っていく。生徒による質問紙調査における回答傾向の分析を中心に,発信・伝達するために作成した成果物またはデータとして蓄積し,それらを振り返る評価機会を数度設定するとともに,自らもしくは生徒相互の変容を評価するなどの活動の工夫を行うことにより,目標の達成状況を確認する。また,学校祭等の学校行事や他関係機関が主催するイベントやコンクール等において,全生徒が何らかの方法(プレゼンテーション,ポスター発表等)で成果物の発表を行う機会を設定することで,授業の枠外における「他者と協働し,情報を整理・発信・伝達する」能力の高まりを客観的に把握する。これらの評価を分析することで研究内容の改善を図り,より効果的な教育計画,教育方法のより深く確実な成果を得る。

本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応

[本期間(4~7月)の取り組み内容]
  • おおよそ「研究実施計画」に基づいて実施しているが,以下の点については,アドバイザー等より頂戴したご助言に基づいて変更を行なっている。
    • 1)「研究実施計画」において示した「カリキュラム表」は,「『情報活用能力』育成のためのカリキュラム表」の一部として示すこととした。
    • 2)計画では各教科担当者からのヒアリング調査によって,具体的な授業実践等を抽象化した「カリキュラム表」を作成する予定であったが,まずは研究担当者が中心となって取り組むべきとのご助言に基づいて整理・作成を行なった。
    • 3)本校教育研究大会において,本研究に関する取組の概要を説明するとともに,研究計画・改善計画を掲示・配布して周知を図った。
    • 4)質問紙調査は,電子的な集計体制(具体的には,googleフォームによる回答)を整備するために,全体としては実施できていない。ただし,教科によっては紙ベースで実施している。
  • その他については,以下「※アドバイザーの助言と助言への対応」で詳しく述べる。
本校教育研究大会でのICTを活用した授業(国語科)
本校教育研究大会でのICTを活用した授業(国語科)
本校教育研究大会・全体会での本研究に関する説明の様子
本校教育研究大会・全体会場で拡大掲示した「研究概要」及び「改善計画」
アドバイザーの助言と助言への対応

■アドバイザーの助言

  • ①研究の成果と課題を明確にするために,最終的に目指す姿(例として,協働できる力を高めるのか,個人の力を高めるのか)を明らかにした上で,評価方法の検討(国際調査やパフォーマンス課題等)に取り組む必要がある。
  • ②各種調査から課題とされる部分にアプローチする研究であると良い。
  • ③研究の過程を明らかにし,変化の理由や根拠を明確にすることで,他校が実践の参考とすることができる。
  • ④各教科の授業実践という具体を抽象化して,育成を目指す資質・能力の発展モデルを示したり,指導の展開を示せると良い。
  • ⑤研究部が中心となり先行研究(特に小学校の取組)から,すでに成果となっていることと,今後解決すべきことを整理して取り組むとよい。
  • ⑥情報活用能力の育成において,ICTを活用する意義のあるものと,ICTでなくともよいところを明確に示せると良い。

■助言への対応

④⑤について

  • 研究担当者が,中教審答申(平成28年12月21日)「別紙」に示された「情報活用能力を構成する資質・能力」(p.7-8「別紙3−1」)を各教科担当者に提示した。
  • 各教科担当者は,担当する教科の全単元において,いずれの単元でどの資質・能力の育成を目指すことができるかを考え,整理した(本校研究における「資質・能力シート」)。また,研究担当者が「総合的な学習の時間」のものを作成した。
  • 「資質・能力シート」に基づいて,研究担当者が「『情報活用能力』育成のためのカリキュラム表」を作成した。

②について

  • 中教審答申「別紙」では,「問題の発見・解決に向けて情報技術を適切かつ効果的に活用する力(相手や状況に応じて情報を適切に発信したり,発信者の意図を理解したりすることも含む) 」と示されていたものを,本研究推進のために,括弧内の文言を1つの資質・能力として独立させた。
  • 研究協議会において,各種調査等で特に課題となっている事柄に対応して,「情報に関する法・制度やマナーの意義と情報社会において個人が果たす役割や責任についての理解」「複数の情報を結びつけて新たな意味を見出したり,自分の考えを深めたりする力」「情報モラルや情報に対する責任について考え行動しようとする態度」の育成に重点的に取り組むことを確認した。

①③⑥について

  • 本研究が教職員全員の参画によるものとするために,本研究において育成を目指す生徒の姿等をどのようにおさえるかについて,先行研究や他校の実践研究を踏まえつつ,私たちの言葉で明らかにすることを目指し,7名で構成する「『情報活用能力』部会」を設置した(なお,7名はおよそ本校教諭の半数であり,残り半数は本校研究において育成を目指すもう一つの資質・能力である「市民として求められる資質・能力」について検討する部会を構成している)。

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

本研究の中心的なツールである
Chromebookを活用した授業のようす

  • 実際に手元にChromebookを置いて活動する生徒の学習意欲は大変高く,進んで学習活動に取り組む姿が見られた。
  • 導入したChromebook全機の初期設定を業者へ委託せず,本校教員で行うこととしたため,複数教員の協力のもとではあったが多くの時間を要した。
  • 情報活用能力を効果的に育むカリキュラムを設計するにあたり,中学校独特の「教科の壁」を乗り越えることができるものをどのように構築するかの検討に多くの時間を要した。

成果

  • 資質・能力を切り口として研究に取り組むという方向性によって,全校的(すべての教科等)に実践研究に取り組む方向性を築くことができた。
  • 「『情報活用能力』育成のためのカリキュラム表」を作成したことによって,本校の各教科等の取組の有無や濃淡を大まかに把握することができた。また,この表を活用することで,系統的な資質・能力の育成のための手立てを検討することができると考えている。

今後の課題

  • ご助言いただいたように「発信」のためには,その前段階の情報に関する多くの資質・能力が育まれていることが不可欠であり,そのためには広く「情報活用能力」の育成について本校研究と関連させて取り組んでいくことが必要である。そして,その中から「他者と協働して情報を整理・発信・伝達」するという部分に特化したカリキュラム構築を行うという,「広く捉えてから特化する」という研究推進が必要である。
  • 授業実践の蓄積は各教科等に任せている部分が大きく,継続的な取組とすることができるか,また研究担当者として,「継続的な取組」をいかに確保していくか,具体的な方策を採る必要がある。
  • 教育研究大会で実感してことであるが,「『情報』=ICT」という理解が広がっている。またそうした理解は本校教員の一部にも見られる傾向があり,そうした誤解をいかにして解いていくかを検討する必要がある。

今後の計画

  • 「『情報活用能力』部会」の議論を9月末まで継続的に実施し,本校研究及び本研究に資する成果を得る(定義,生徒の姿,資質・能力の文言の整理等)
  • 「『情報活用能力』部会」での議論に基づいて,当部会において12月末までに「他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる」力を測るための調査問題を作成し,今年度中に実施する。可能であれば,各種調査との比較・分析等を行いたい。なお,問題作成に関しては,北海道救育大学等の教員が参画する予定である。
  • 本研究における「他者と協働して情報を整理・発信・伝達」する重要なツールであるChromebookの活用に係るスキル等に関する指導を1学期中に行うとともに,2学期からは各教科等の授業において活用する。

気付き・学び

  • タイピングの速度による個人差によって,生徒が情報を整理・発信できる量に大きな差が生じていることが明らかになった。具体的には,一定時間で入力できる文字数の違いによって,生徒が表現できる量が決まってしまい,結果として紙ベースの取組であればより豊かな表現(整理・発信)が可能であったはずの生徒が,ICTを活用することでそれができなくなってしまうという状況が見られた。そのため,ICTでなければならない学習活動をより意図的・計画的に構成することが必要であると考えた。また,ICTを活用することで情報の蓄積や管理が容易になることで,生徒の変容を(生徒と教師の両者が)具体的な姿から把握できるという良さも明らかとなった。
  • タイピングの速度に個人差があるという課題に対しては,適宜補習を実施することで個人差の是正を図るとともに,豊かな表現(整理・発信)を実現するための技能習得を目指していくことが必要であると考えた。
アドバイザーコメント
日本女子大学 吉崎静夫 先生

本校の研究テーマ「他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる生徒の育成を目指して」は、わが国の児童・生徒の情報活用能力の実態を考えたときに大きな意義がある。というのも、文科省が実施した情報活用能力調査によれば、「小学生、中学生とも、整理された情報を読み取ることはできるが、複数のウェブページから目的に応じて、特定の情報を見つけ出し、関連づけることに課題がある。また、受け手の状況に応じて情報発信することに課題がある」ということである。そして、本校の研究テーマは、後者の課題を解決しようとするものである。

 

そのために、本校では、まず「情報活用能力」育成のためのカリキュラム表の作成に取り組んでいる。今後は、各教科や総合的な学習での授業実践・評価をふまえて、そのカリキュラム表を加筆・修正し続ける必要がある。それが、まさに形成的評価にもとづくカリキュラム開発である。

 

次に、生徒の変容を見取る学習評価の工夫改善を図ろうとしていることが、本研究の特徴である。ただし、そのための質問紙調査はいくつかの教科において紙ベースで行われているが、電子的な集計体制(googleフォームによる回答)の整備は今後の課題である。

 

さらに、生徒が他者と協働して情報を発信する際に、生徒が「他者」をどのように意識しているのかを、授業実践・評価を通して明らかにすることが、本研究のポイントとなる。そして、本校が構想している「情報活用能力を育てる授業」の実践を通して、生徒が情報発信する相手(他者)の状態を的確に意識できるようになれば、それはわが国の情報教育に多大な貢献をすることになる。というのも、ネット社会で問題になっている「匿名性」や「責任性の欠如」といった情報モラルの問題に貴重な示唆をあたえることになるからである。本校の研究の発展に大いに期待したい。

本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応

■[本期間(8~12月)の取り組み内容]

  • 研究実施計画のうち,カリキュラム表の改善や授業実践の蓄積等については,おおむね実施できている。また,先進校視察に関しては,本校が導入しているChromebookの活用に関する先進校視察(東北学院中学・高等学校)を実施している。また,カリキュラム構築に関するヒアリング調査(つくば市教育局総合教育研究所)を実施している。
  • 以下については,研究実施計画に示していないが,取り組んでいるものである。
    • ①パナソニック教育財団が提供するアーカイブでの「実践研究DB」において,情報発信に関する先行研究を調査している。
    • ②論文検索サイトを活用して情報活用能力のカリキュラム構築に関する先行研究を調査している。
    • ③多くの学校で活用できる研究推進のために,函館市立赤川中学校との共同研究を行うこととし,2017年9月14日(木)に関係者との打ち合わせを行った。
  • 研究実施計画のうち,以下の点については今後継続して取り組む必要がある。
    • ①「『情報活用能力』部会」での議論に基づいて,当部会において12月末までに「他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる」力を測るための調査問題を作成し,今年度中に実施する予定であったが,効果検証のための方策や手段を定めるまでには至っていない。
    • ②7月に実施する予定であった生徒への質問紙調査についても,1)と同様に,質問項目を定めるまでには至っていない。
  • その他については,下記「助言への対応」で述べる。

アドバイザーの助言と助言への対応

■アドバイザーの助言

  • ①相手意識に基づいた情報発信のためには,生徒たちにいかに「当事者性」(情報発信場面における当事者としての意識)を持たせるのかが重要であり,擬似の「相手意識」ではなく,本当の「相手」とするための方策(特別な場を設ける,本当の「相手」からの評価を受ける等)を検討する必要がある。
  • ②「どのような人間を育てたいのか」について,少なくとも中学校3年間としての目標を設定することが必要である。とくに本校において育成を目指す「市民として求められる資質・能力」と「情報活用能力」をどのように関連づけていくのかを検討しなくてはならない。
  • ③「情報活用能力」について,小学校と中学校とでどのように分担し,どのように連携していくのかを明らかにしていかなくてはならない。
  • ④本校が策定したカリキュラム表(ver.3)を簡易で見やすいものへ改善していくことが必要である。
  • ⑤コンピュータを用いたテスト(CBT)にどのように対応していくのかを検討する必要がある。具体的には,タイピングの技能が低いことによって,生徒の思考を表現することが制限されてしまうおそれがある(入力スピードが遅いがゆえに表現が乏しくなる,文字数が不足するおそれがある)。それをいかに克服していくかを検討する必要がある。

■助言への対応

①について

研究授業の様子(美術科 11月13日)

  • 美術科において,附属学校園敷地内でのパブリックアートに関して,生徒が「見る人の立場」という擬似的な「相手」に立った上で,専門家(本校における生徒や教員とは異なる「他者」。具体的には北海道立函館美術館職員及び北海道教育大学教員。)から助言を受けるという単元構成を試みた(2017年11月13日のアドバイザー訪問時にその中の1単位時間を公開した)。この単元構成の試みを通して,本研究課題における「他者」を生徒同士に限定するのではなく,広く校外に求めることによって,相手意識のある情報を整理・発信に実現性を検討していきたい(多様性のある「他者」による「相手意識」のある情報の整理・発信)。

②について

  • 本校として「どのような人間を育てたいのか」に関する議論を深めることができていない。また,「市民として求められる資質・能力」と「情報活用能力」との関連に関する議論も深めることができていない。

③④について

  • 2018年2月16日(金)に本校と北海道教育大学附属函館小学校が開催する「平成29年度授業力向上セミナー」において,情報活用能力のうち,とくに本研究において取り組んでいる「相手意識を持った情報発信」に関する小学校と中学校のカリキュラム表を公開する予定であり,附属函館小学校でも同一の様式への整理を行なっている。なお,セミナー当日には「相手意識を持った情報発信」に関する小学校(英語科)と中学校(国語科)の授業を公開する予定である。
  • 小学校と中学校との分担・連携をカリキュラム表に整理していくにあたり,本校が6月に作成した「『情報活用能力』育成のためのカリキュラム表(ver.3)」の様式を大幅に改定した(ver.4)。具体的には,形式について,これまで縦軸に資質・能力,横軸に教科等としていたものを,横軸を月にした。また内容面については,ver.3では「育成することができると考える単元」を示していたが,ver.4では,「必ず育成を目指す単元」のみを示すこととした。漠然と育成の可能性を示した表から,一気に絞り込みをかけ,授業実践の蓄積や小学校との表に関する協議を通して,徐々に単元を加除する方針である。また,この表には単元名のみではなく,大まかな学習内容等も記載する予定である。
  • 改善した「『情報活用能力』育成のため
    のカリキュラム表(ver.4)

⑤について

  • タイピングに関する技能の向上を目指し,第1学年を対象として夏季休業中の課題として,タイピング技能向上を図ることが期待できるインターネット上のサイトを紹介し,自宅にキーボード型PCを有する者の自主的な取組を促した。
  • 10月31日(火)に第1学年生徒を対象にした調査では,5分間での文字入力数は,平均105.2文字であった。また,12月11日に同生徒を対象とした調査では,5分間での文字入力数は,平均144.2文字であった。
  • さらなるタイピングに関する技能の向上を目指し,1人が常にChromebookを所持することが実現した11月7日(火)以降は,第1学年において,Benesseが提供する「Benesseマナビジョン」の無料タイピング教材での「タイピングの基礎練習」を毎朝(8:15〜8:20)実施することとした。なお,1週間または2週間に1回のペースで各自がP検無料模擬試験に挑戦し,その結果をクラウド上の表計算ソフトに記録させることとした。

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

  • 生徒1人が常にChromebookを所持することが実現したことで、ChromebookやG suite for educationを授業だけではなく、学級活動など様々な場面で積極的に活用する教員が多く見られた。そのため、職員室内においても、授業に関する会話やChromebookの活用に関する会話が頻繁に交わされるようになっており、お互いの実践や活用から学び、自らの実践でも取り入れようとする雰囲気が醸成されている。

成果

  • 「『情報活用能力』育成のためのカリキュラム表」を「可能性がある単元」から「必ず育成を目指す単元」へと大きく振ることによって,教科担当者が担当する教科における情報活用能力の育成を意識的に取り組むことができると考えている。また,このことによって,教科が育成するべき資質・能力や特定の教科が育成を担うべき情報活用能力についての資質・能力,学校教育全体を通じて育むべき情報活用能力についての資質・能力を明らかにすることができるのではないかと考えている。
  • 附属函館小学校との共同研究な開始によって,小学校と中学校での特に相手意識に立って情報発信に関するカリキュラム構築への第一歩を踏み出すことができた。また,近隣公立中学校との共同研究によって,多くの学校が活用できる研究推進を展開することができると考えている。

今後の課題

  • PDCAサイクルにおけるP(計画)とD(実行)に関する取組に比べ,C(評価)とA(改善)に関する取組を充実させることに課題がある。具体的には,年度始めに作成した年間指導計画や単元の指導計画は整備されているものの,どのような授業が実際に行われ,どのように改善したのか,に関する協議・共有が十分に行うことができていない。研究担当者のみではなく全教職員による研究推進の実現を目指す上で,担当者及び教科担当者による授業実践の蓄積や改善を着実に展開していくための方策や条件を検討・実施していく必要がある。
  • 具体的には,いかなる検査や質問を行うことで生徒の実態や,研究に関する取組の適切性を評価することができるのかを検討することや,先行研究を調査することが十分ではないため,効果検証の方策や生徒への質問紙調査の方向性を明らかにしなければならない。
  • 本研究課題に含まれる「他者」「情報の整理」「情報の発信」という語句を整理したり,関係性を明らかにしたりすることが必要である。

今後の計画

  • 本校として目指す「どのような人間を育てたいのか」に関する議論を行い,明らかにする。
  • 各教科担当者が,情報活用能力のうち,自ら担当する教科に関して「必ず育成を目指す単元」を明らかにして,それに関する授業実践の蓄積や,指導計画等の整備を行う。
  • 「『情報活用能力』部会」を中心として,当部会において12月末までに「他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる」力を測るための方策等を検討し,今年度中に方向性を明確にする。この議論においては,北海道教育大学等の教員が参画する。
  • タイピングに関する技能向上のための取組を継続し,一定期間ごとにその変化を追跡する。

気付き・学び

「探究」(総合的な学習の時間)での
訪問調査の計画立案にChromebook
を活用する様子

  • 1人が常にChromebookを所持することが実現したことで,ChromebookやChromebookを活用することが,生徒の日常生活の一部となっている。例えば,『探究』(総合的な学習の時間)では,授業者が想定していない場面でChromebookを活用し,よりよく情報を収集しようとする姿が見られた。また,本校が活用する,G suite for educationのクラウド機能を活用して,収集した情報を生徒どうしが共有(発信)する姿も見られている。このような生徒の自主的な活用を,今後の学習活動につなげていくことが必要であると考えている。

成果目標

①年度内:
「『情報活用能力』部会」において「他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる」力を測るための方策等を検討し,方向性を明確にする。可能であれば年度内に明確になった方向性に基づいた具体的な方策を実施する。

②年度内:
具体的な授業実践の継続・蓄積や北海道教育大学附属函館小学校,近隣公立中学校との協議等に基づいて,「資質・能力シート」や「『情報活用能力』育成のためのカリキュラム表」の改善,「『他者と協働して情報を整理・発信・伝達』するという部分に特化したカリキュラム」の充実に取り組む。作成したカリキュラムについては,北海道教育大学,北海道教育大学附属函館小学校,近隣公立中学校等を始め広く意見を受ける機会を持つ。

③年度内:
タイピングに関する技能の確実な習得を目指す。具体的には5分間で400文字程度の入力ができるよう実態の把握と補習等の実施に取り組む。

アドバイザーコメント
日本女子大学 吉崎静夫 先生

     7月に本校を訪問したときに、私が指摘した5つのコメントを真摯に受けとめて対応しようとする姿勢を評価したい。そして、できたこと、まだできていないことを冷静に振り返っていることも好感がもてる。指定校とアドバイザー及び財団との良好な関係が維持できている。
     助言した5つの事柄を中心にコメントする。

  • ①相手意識に基づいた情報発信のためには、生徒たちにいかに「当事者性」(情報発信場面における当事者としての意識)を持たせるのかが重要であり、擬似の「相手意識」ではなく、本当の「相手」とするための方策(特別な場を設ける、本当の「相手」からの評価を受ける等)を検討する必要がある。
  • →本校の報告にあるように、美術科において、附属学校園敷地内でのパブリックアートに関して、生徒が「見る人の立場」という擬似的な「相手」に立った上で、専門家(本校における生徒や教員とは異なる「他者」、具体的には北海道立函館美術館職員及び北海道教育大学教員)から助言を受けるという単元構成を試みている。このことは、本研究課題における「他者」を生徒同士に限定するのではなく、広く校外に求めていることから、一定の評価ができる。ただし、情報発信する他者が「見る人の立場」という疑似的な「相手」にとどまっている点は課題である。実態のある「本物の他者」を相手とする実践が期待される。

  • ②「どのような人間を育てたいのか」について、少なくとも中学校3年間としての目標を設定することが必要である。とくに本校において育成を目指す「市民として求められる資質・能力」と「情報活用能力」をどのように関連づけていくのかを検討しなくてはならない。
  • →「市民として求められる資質・能力」と「情報活用能力」との関連について議論が深められていないのは残念である。ネット社会を生きる生徒たちにますます求められる「情報モラル」や「情報批判力」などをキーワードに議論を深化させることが期待される。

  • ③「情報活用能力」について、小学校と中学校とでどのように分担し、どのように連携していくのかを明らかにしていかなくてはならない。
  • →附属函館小学校との研究面での連携が進んだことは大いに評価できる。

  • ④本校が策定したカリキュラム表(ver.3)を簡易で見やすいものへ改善していくことが必要である。
  • →次のような一定の成果が認められる。形式について、これまで縦軸に資質・能力、横軸に教科等としていたものを、横軸を月にしている。また内容面については、ver.3では「育成することができると考える単元」を示していたが、ver.4では、「必ず育成を目指す単元」のみを示すこととしている。こうすることで、漠然と育成の可能性を示していたものから、育成が確実なカリキュラム表が作成されつつある。

  • ⑤コンピュータを用いたテスト(CBT)にどのように対応していくのかを検討する必要がある。具体的には、タイピングの技能が低いことによって、生徒の思考を表現することが制限されてしまうおそれがある(入力スピードが遅いがゆえに表現が乏しくなる、文字数が不足するおそれがある)。それをいかに克服していくかを検討する必要がある。
  • →一人一人が常にChromebookを所持することが実現したことで、生徒のタイピング技能が飛躍的に進歩することが期待できる。

     今後の課題としては、「他者(仲間)と協働して情報を収集・整理したり、他者(多様な相手)を意識して情報発信・伝達する学習活動」を積み重ねるとともに、それらの学習活動が生徒の資質・能力にどのような効果をもたらすのかを、生徒へのインタビュー調査と質問紙調査で明らかにする必要がある。