北海道教育大学附属函館中学校

第43回特別研究指定校

研究課題

他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる生徒の育成を目指して

2018年度04-07月期(最新活動報告)

生徒の「情報を整理・発信・伝達できる」力を把握するために,質問紙調査における......

アドバイザーコメント

活動報告書に見られるように、研究の成果と課題が一段と明確になっている。

北海道教育大学附属函館中学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 北海道 北海道教育大学附属函館中学校
アドバイザー 吉崎 静夫 日本女子大学教職教育開発センター所長・教授
研究テーマ 他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる生徒の育成を目指して
目的 高度に情報化した社会では、必要な情報を収集する能力だけでなく、情報を自ら発信・伝達できる能力や、個人の卓越したICT機器の操作技術に加えて他者と協働して課題を解決する力が求められる。このような能力の育成に資する各教科等間の連携を実現するカリキュラム開発及び授業実践の蓄積を本研究の目的とする。
現状と課題
  • 一人一台のタブレットPC環境によって、インターネットを利用してより信頼性の高い情報収集を行うことができる。
  • アプリ等を活用して画像・動画編集ができる
  • 他者と協働して情報に関わる(収集、発信・伝達)学習活動が少ない。
  • 教科等を横断して情報を発信・伝達する能力の育成を目指す教育活動が、意図的・計画的に取り組まれていない。
学校情報化の現状 一人一台タブレットPC貸与(平成25年度〜)
データによる教材の配布・回収等
取り組み内容
  • ① 最終的な目標とする『他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる生徒』の具体的な姿と、それらを構成する要素を設定する。
  • ②「『他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる生徒』育成のカリキュラム表」(仮)を研究部が中心となって作成するとともに、各教科担当者からこれまでの授業実践での取組や今後の取組の可能性に関するヒアリング調査を行い、「カリキュラム表」(仮)の改善を図る。
  • ③「カリキュラム表」(仮)に基づいて各教科の授業実践に取り組み、効果検証を行う。
  • ④ 特に重点化する取組として、生徒が、クラウドを活用し、情報を発信・伝達する学習活動のある授業を各教科において計画・実践する。
  • ⑤ ③及び④の実践等に基づいて②を行い、再度③及び④に取り組むという検証改善サイクルを重視する。
成果目標
  • ① 生徒がICTを活用した協働型授業において、他者との協働により、さまざまな状況を考慮しながら学習した事柄を整理するとともに、最も適した方法で発信・伝達できるなどの(情報活用)能力を効果的に育むカリキュラムや新たな授業デザインを開発・提案する。
  • ② ICTの特長であるテキスト以外の絵、グラフ、映像等を含めた成果物データを蓄積・共有することや、時空を超えた学習環境で協働学習を可能とする利点を、今求められている「主体的・対話的で深い学び」を実現する授業改善の視点から明らかにする。
  • ③『他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる生徒』の育成に特に適している各教科の単元等を明らかにするとともに、その単元の指導計画等の具体例を示す。
助成金の使途 Chromebook、先進校視察、デジタルカメラ
研究代表者 郡司 直孝
研究指定期間 平成29年度~30年度
学校HP http://www.hokkyodai.ac.jp/fuzoku_hak_chu/
公開研究会の予定 教育研究大会:6月9日(金)・10日(土)
教科研究会:平成29年10〜11月
北海道教育大学函館校ウインターフェス

研究課題と成果目標

研究課題 他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる生徒の育成を目指して
成果目標
  • 生徒がICTを活用した協働型授業において,他者との協働により,さまざまな状況を考慮しながら学習した事柄を整理するとともに,もっとも適した方法で発信・伝達できるなどの(情報活用)能力を効果的に育むカリキュラムや新たな授業デザインを開発・提案する。
  • 成果をより確かなものとするために,教育効果の検証を確実に実施する。そのための生徒の変容を見取る学習評価の工夫改善を図っていく。生徒による質問紙調査における回答傾向の分析を中心に,発信・伝達するために作成した成果物またはデータとして蓄積し,それらを振り返る評価機会を数度設定するとともに,自らもしくは生徒相互の変容を評価するなどの活動の工夫を行うことにより,目標の達成状況を確認する。また,学校祭等の学校行事や他関係機関が主催するイベントやコンクール等において,全生徒が何らかの方法(プレゼンテーション,ポスター発表等)で成果物の発表を行う機会を設定することで,授業の枠外における「他者と協働し,情報を整理・発信・伝達する」能力の高まりを客観的に把握する。これらの評価を分析することで研究内容の改善を図り,より効果的な教育計画,教育方法のより深く確実な成果を得る。

本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応

[本期間(4~7月)の取り組み内容]
  • おおよそ「研究実施計画」に基づいて実施しているが,以下の点については,アドバイザー等より頂戴したご助言に基づいて変更を行なっている。
    • 1)「研究実施計画」において示した「カリキュラム表」は,「『情報活用能力』育成のためのカリキュラム表」の一部として示すこととした。
    • 2)計画では各教科担当者からのヒアリング調査によって,具体的な授業実践等を抽象化した「カリキュラム表」を作成する予定であったが,まずは研究担当者が中心となって取り組むべきとのご助言に基づいて整理・作成を行なった。
    • 3)本校教育研究大会において,本研究に関する取組の概要を説明するとともに,研究計画・改善計画を掲示・配布して周知を図った。
    • 4)質問紙調査は,電子的な集計体制(具体的には,googleフォームによる回答)を整備するために,全体としては実施できていない。ただし,教科によっては紙ベースで実施している。
  • その他については,以下「※アドバイザーの助言と助言への対応」で詳しく述べる。
本校教育研究大会でのICTを活用した授業(国語科)
本校教育研究大会でのICTを活用した授業(国語科)
本校教育研究大会・全体会での本研究に関する説明の様子
本校教育研究大会・全体会場で拡大掲示した「研究概要」及び「改善計画」
アドバイザーの助言と助言への対応

■アドバイザーの助言

  • ①研究の成果と課題を明確にするために,最終的に目指す姿(例として,協働できる力を高めるのか,個人の力を高めるのか)を明らかにした上で,評価方法の検討(国際調査やパフォーマンス課題等)に取り組む必要がある。
  • ②各種調査から課題とされる部分にアプローチする研究であると良い。
  • ③研究の過程を明らかにし,変化の理由や根拠を明確にすることで,他校が実践の参考とすることができる。
  • ④各教科の授業実践という具体を抽象化して,育成を目指す資質・能力の発展モデルを示したり,指導の展開を示せると良い。
  • ⑤研究部が中心となり先行研究(特に小学校の取組)から,すでに成果となっていることと,今後解決すべきことを整理して取り組むとよい。
  • ⑥情報活用能力の育成において,ICTを活用する意義のあるものと,ICTでなくともよいところを明確に示せると良い。

■助言への対応

④⑤について

  • 研究担当者が,中教審答申(平成28年12月21日)「別紙」に示された「情報活用能力を構成する資質・能力」(p.7-8「別紙3−1」)を各教科担当者に提示した。
  • 各教科担当者は,担当する教科の全単元において,いずれの単元でどの資質・能力の育成を目指すことができるかを考え,整理した(本校研究における「資質・能力シート」)。また,研究担当者が「総合的な学習の時間」のものを作成した。
  • 「資質・能力シート」に基づいて,研究担当者が「『情報活用能力』育成のためのカリキュラム表」を作成した。

②について

  • 中教審答申「別紙」では,「問題の発見・解決に向けて情報技術を適切かつ効果的に活用する力(相手や状況に応じて情報を適切に発信したり,発信者の意図を理解したりすることも含む) 」と示されていたものを,本研究推進のために,括弧内の文言を1つの資質・能力として独立させた。
  • 研究協議会において,各種調査等で特に課題となっている事柄に対応して,「情報に関する法・制度やマナーの意義と情報社会において個人が果たす役割や責任についての理解」「複数の情報を結びつけて新たな意味を見出したり,自分の考えを深めたりする力」「情報モラルや情報に対する責任について考え行動しようとする態度」の育成に重点的に取り組むことを確認した。

①③⑥について

  • 本研究が教職員全員の参画によるものとするために,本研究において育成を目指す生徒の姿等をどのようにおさえるかについて,先行研究や他校の実践研究を踏まえつつ,私たちの言葉で明らかにすることを目指し,7名で構成する「『情報活用能力』部会」を設置した(なお,7名はおよそ本校教諭の半数であり,残り半数は本校研究において育成を目指すもう一つの資質・能力である「市民として求められる資質・能力」について検討する部会を構成している)。

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

本研究の中心的なツールである
Chromebookを活用した授業のようす

  • 実際に手元にChromebookを置いて活動する生徒の学習意欲は大変高く,進んで学習活動に取り組む姿が見られた。
  • 導入したChromebook全機の初期設定を業者へ委託せず,本校教員で行うこととしたため,複数教員の協力のもとではあったが多くの時間を要した。
  • 情報活用能力を効果的に育むカリキュラムを設計するにあたり,中学校独特の「教科の壁」を乗り越えることができるものをどのように構築するかの検討に多くの時間を要した。

成果

  • 資質・能力を切り口として研究に取り組むという方向性によって,全校的(すべての教科等)に実践研究に取り組む方向性を築くことができた。
  • 「『情報活用能力』育成のためのカリキュラム表」を作成したことによって,本校の各教科等の取組の有無や濃淡を大まかに把握することができた。また,この表を活用することで,系統的な資質・能力の育成のための手立てを検討することができると考えている。

今後の課題

  • ご助言いただいたように「発信」のためには,その前段階の情報に関する多くの資質・能力が育まれていることが不可欠であり,そのためには広く「情報活用能力」の育成について本校研究と関連させて取り組んでいくことが必要である。そして,その中から「他者と協働して情報を整理・発信・伝達」するという部分に特化したカリキュラム構築を行うという,「広く捉えてから特化する」という研究推進が必要である。
  • 授業実践の蓄積は各教科等に任せている部分が大きく,継続的な取組とすることができるか,また研究担当者として,「継続的な取組」をいかに確保していくか,具体的な方策を採る必要がある。
  • 教育研究大会で実感してことであるが,「『情報』=ICT」という理解が広がっている。またそうした理解は本校教員の一部にも見られる傾向があり,そうした誤解をいかにして解いていくかを検討する必要がある。

今後の計画

  • 「『情報活用能力』部会」の議論を9月末まで継続的に実施し,本校研究及び本研究に資する成果を得る(定義,生徒の姿,資質・能力の文言の整理等)
  • 「『情報活用能力』部会」での議論に基づいて,当部会において12月末までに「他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる」力を測るための調査問題を作成し,今年度中に実施する。可能であれば,各種調査との比較・分析等を行いたい。なお,問題作成に関しては,北海道救育大学等の教員が参画する予定である。
  • 本研究における「他者と協働して情報を整理・発信・伝達」する重要なツールであるChromebookの活用に係るスキル等に関する指導を1学期中に行うとともに,2学期からは各教科等の授業において活用する。

気付き・学び

  • タイピングの速度による個人差によって,生徒が情報を整理・発信できる量に大きな差が生じていることが明らかになった。具体的には,一定時間で入力できる文字数の違いによって,生徒が表現できる量が決まってしまい,結果として紙ベースの取組であればより豊かな表現(整理・発信)が可能であったはずの生徒が,ICTを活用することでそれができなくなってしまうという状況が見られた。そのため,ICTでなければならない学習活動をより意図的・計画的に構成することが必要であると考えた。また,ICTを活用することで情報の蓄積や管理が容易になることで,生徒の変容を(生徒と教師の両者が)具体的な姿から把握できるという良さも明らかとなった。
  • タイピングの速度に個人差があるという課題に対しては,適宜補習を実施することで個人差の是正を図るとともに,豊かな表現(整理・発信)を実現するための技能習得を目指していくことが必要であると考えた。
アドバイザーコメント
日本女子大学 吉崎静夫 先生

本校の研究テーマ「他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる生徒の育成を目指して」は、わが国の児童・生徒の情報活用能力の実態を考えたときに大きな意義がある。というのも、文科省が実施した情報活用能力調査によれば、「小学生、中学生とも、整理された情報を読み取ることはできるが、複数のウェブページから目的に応じて、特定の情報を見つけ出し、関連づけることに課題がある。また、受け手の状況に応じて情報発信することに課題がある」ということである。そして、本校の研究テーマは、後者の課題を解決しようとするものである。

 

そのために、本校では、まず「情報活用能力」育成のためのカリキュラム表の作成に取り組んでいる。今後は、各教科や総合的な学習での授業実践・評価をふまえて、そのカリキュラム表を加筆・修正し続ける必要がある。それが、まさに形成的評価にもとづくカリキュラム開発である。

 

次に、生徒の変容を見取る学習評価の工夫改善を図ろうとしていることが、本研究の特徴である。ただし、そのための質問紙調査はいくつかの教科において紙ベースで行われているが、電子的な集計体制(googleフォームによる回答)の整備は今後の課題である。

 

さらに、生徒が他者と協働して情報を発信する際に、生徒が「他者」をどのように意識しているのかを、授業実践・評価を通して明らかにすることが、本研究のポイントとなる。そして、本校が構想している「情報活用能力を育てる授業」の実践を通して、生徒が情報発信する相手(他者)の状態を的確に意識できるようになれば、それはわが国の情報教育に多大な貢献をすることになる。というのも、ネット社会で問題になっている「匿名性」や「責任性の欠如」といった情報モラルの問題に貴重な示唆をあたえることになるからである。本校の研究の発展に大いに期待したい。

本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応

■[本期間(8~12月)の取り組み内容]

  • 研究実施計画のうち,カリキュラム表の改善や授業実践の蓄積等については,おおむね実施できている。また,先進校視察に関しては,本校が導入しているChromebookの活用に関する先進校視察(東北学院中学・高等学校)を実施している。また,カリキュラム構築に関するヒアリング調査(つくば市教育局総合教育研究所)を実施している。
  • 以下については,研究実施計画に示していないが,取り組んでいるものである。
    • ①パナソニック教育財団が提供するアーカイブでの「実践研究DB」において,情報発信に関する先行研究を調査している。
    • ②論文検索サイトを活用して情報活用能力のカリキュラム構築に関する先行研究を調査している。
    • ③多くの学校で活用できる研究推進のために,函館市立赤川中学校との共同研究を行うこととし,2017年9月14日(木)に関係者との打ち合わせを行った。
  • 研究実施計画のうち,以下の点については今後継続して取り組む必要がある。
    • ①「『情報活用能力』部会」での議論に基づいて,当部会において12月末までに「他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる」力を測るための調査問題を作成し,今年度中に実施する予定であったが,効果検証のための方策や手段を定めるまでには至っていない。
    • ②7月に実施する予定であった生徒への質問紙調査についても,1)と同様に,質問項目を定めるまでには至っていない。
  • その他については,下記「助言への対応」で述べる。

アドバイザーの助言と助言への対応

■アドバイザーの助言

  • ①相手意識に基づいた情報発信のためには,生徒たちにいかに「当事者性」(情報発信場面における当事者としての意識)を持たせるのかが重要であり,擬似の「相手意識」ではなく,本当の「相手」とするための方策(特別な場を設ける,本当の「相手」からの評価を受ける等)を検討する必要がある。
  • ②「どのような人間を育てたいのか」について,少なくとも中学校3年間としての目標を設定することが必要である。とくに本校において育成を目指す「市民として求められる資質・能力」と「情報活用能力」をどのように関連づけていくのかを検討しなくてはならない。
  • ③「情報活用能力」について,小学校と中学校とでどのように分担し,どのように連携していくのかを明らかにしていかなくてはならない。
  • ④本校が策定したカリキュラム表(ver.3)を簡易で見やすいものへ改善していくことが必要である。
  • ⑤コンピュータを用いたテスト(CBT)にどのように対応していくのかを検討する必要がある。具体的には,タイピングの技能が低いことによって,生徒の思考を表現することが制限されてしまうおそれがある(入力スピードが遅いがゆえに表現が乏しくなる,文字数が不足するおそれがある)。それをいかに克服していくかを検討する必要がある。

■助言への対応

①について

研究授業の様子(美術科 11月13日)

  • 美術科において,附属学校園敷地内でのパブリックアートに関して,生徒が「見る人の立場」という擬似的な「相手」に立った上で,専門家(本校における生徒や教員とは異なる「他者」。具体的には北海道立函館美術館職員及び北海道教育大学教員。)から助言を受けるという単元構成を試みた(2017年11月13日のアドバイザー訪問時にその中の1単位時間を公開した)。この単元構成の試みを通して,本研究課題における「他者」を生徒同士に限定するのではなく,広く校外に求めることによって,相手意識のある情報を整理・発信に実現性を検討していきたい(多様性のある「他者」による「相手意識」のある情報の整理・発信)。

②について

  • 本校として「どのような人間を育てたいのか」に関する議論を深めることができていない。また,「市民として求められる資質・能力」と「情報活用能力」との関連に関する議論も深めることができていない。

③④について

  • 2018年2月16日(金)に本校と北海道教育大学附属函館小学校が開催する「平成29年度授業力向上セミナー」において,情報活用能力のうち,とくに本研究において取り組んでいる「相手意識を持った情報発信」に関する小学校と中学校のカリキュラム表を公開する予定であり,附属函館小学校でも同一の様式への整理を行なっている。なお,セミナー当日には「相手意識を持った情報発信」に関する小学校(英語科)と中学校(国語科)の授業を公開する予定である。
  • 小学校と中学校との分担・連携をカリキュラム表に整理していくにあたり,本校が6月に作成した「『情報活用能力』育成のためのカリキュラム表(ver.3)」の様式を大幅に改定した(ver.4)。具体的には,形式について,これまで縦軸に資質・能力,横軸に教科等としていたものを,横軸を月にした。また内容面については,ver.3では「育成することができると考える単元」を示していたが,ver.4では,「必ず育成を目指す単元」のみを示すこととした。漠然と育成の可能性を示した表から,一気に絞り込みをかけ,授業実践の蓄積や小学校との表に関する協議を通して,徐々に単元を加除する方針である。また,この表には単元名のみではなく,大まかな学習内容等も記載する予定である。
  • 改善した「『情報活用能力』育成のため
    のカリキュラム表(ver.4)

⑤について

  • タイピングに関する技能の向上を目指し,第1学年を対象として夏季休業中の課題として,タイピング技能向上を図ることが期待できるインターネット上のサイトを紹介し,自宅にキーボード型PCを有する者の自主的な取組を促した。
  • 10月31日(火)に第1学年生徒を対象にした調査では,5分間での文字入力数は,平均105.2文字であった。また,12月11日に同生徒を対象とした調査では,5分間での文字入力数は,平均144.2文字であった。
  • さらなるタイピングに関する技能の向上を目指し,1人が常にChromebookを所持することが実現した11月7日(火)以降は,第1学年において,Benesseが提供する「Benesseマナビジョン」の無料タイピング教材での「タイピングの基礎練習」を毎朝(8:15〜8:20)実施することとした。なお,1週間または2週間に1回のペースで各自がP検無料模擬試験に挑戦し,その結果をクラウド上の表計算ソフトに記録させることとした。

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

  • 生徒1人が常にChromebookを所持することが実現したことで、ChromebookやG suite for educationを授業だけではなく、学級活動など様々な場面で積極的に活用する教員が多く見られた。そのため、職員室内においても、授業に関する会話やChromebookの活用に関する会話が頻繁に交わされるようになっており、お互いの実践や活用から学び、自らの実践でも取り入れようとする雰囲気が醸成されている。

成果

  • 「『情報活用能力』育成のためのカリキュラム表」を「可能性がある単元」から「必ず育成を目指す単元」へと大きく振ることによって,教科担当者が担当する教科における情報活用能力の育成を意識的に取り組むことができると考えている。また,このことによって,教科が育成するべき資質・能力や特定の教科が育成を担うべき情報活用能力についての資質・能力,学校教育全体を通じて育むべき情報活用能力についての資質・能力を明らかにすることができるのではないかと考えている。
  • 附属函館小学校との共同研究な開始によって,小学校と中学校での特に相手意識に立って情報発信に関するカリキュラム構築への第一歩を踏み出すことができた。また,近隣公立中学校との共同研究によって,多くの学校が活用できる研究推進を展開することができると考えている。

今後の課題

  • PDCAサイクルにおけるP(計画)とD(実行)に関する取組に比べ,C(評価)とA(改善)に関する取組を充実させることに課題がある。具体的には,年度始めに作成した年間指導計画や単元の指導計画は整備されているものの,どのような授業が実際に行われ,どのように改善したのか,に関する協議・共有が十分に行うことができていない。研究担当者のみではなく全教職員による研究推進の実現を目指す上で,担当者及び教科担当者による授業実践の蓄積や改善を着実に展開していくための方策や条件を検討・実施していく必要がある。
  • 具体的には,いかなる検査や質問を行うことで生徒の実態や,研究に関する取組の適切性を評価することができるのかを検討することや,先行研究を調査することが十分ではないため,効果検証の方策や生徒への質問紙調査の方向性を明らかにしなければならない。
  • 本研究課題に含まれる「他者」「情報の整理」「情報の発信」という語句を整理したり,関係性を明らかにしたりすることが必要である。

今後の計画

  • 本校として目指す「どのような人間を育てたいのか」に関する議論を行い,明らかにする。
  • 各教科担当者が,情報活用能力のうち,自ら担当する教科に関して「必ず育成を目指す単元」を明らかにして,それに関する授業実践の蓄積や,指導計画等の整備を行う。
  • 「『情報活用能力』部会」を中心として,当部会において12月末までに「他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる」力を測るための方策等を検討し,今年度中に方向性を明確にする。この議論においては,北海道教育大学等の教員が参画する。
  • タイピングに関する技能向上のための取組を継続し,一定期間ごとにその変化を追跡する。

気付き・学び

「探究」(総合的な学習の時間)での
訪問調査の計画立案にChromebook
を活用する様子

  • 1人が常にChromebookを所持することが実現したことで,ChromebookやChromebookを活用することが,生徒の日常生活の一部となっている。例えば,『探究』(総合的な学習の時間)では,授業者が想定していない場面でChromebookを活用し,よりよく情報を収集しようとする姿が見られた。また,本校が活用する,G suite for educationのクラウド機能を活用して,収集した情報を生徒どうしが共有(発信)する姿も見られている。このような生徒の自主的な活用を,今後の学習活動につなげていくことが必要であると考えている。

成果目標

①年度内:
「『情報活用能力』部会」において「他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる」力を測るための方策等を検討し,方向性を明確にする。可能であれば年度内に明確になった方向性に基づいた具体的な方策を実施する。

②年度内:
具体的な授業実践の継続・蓄積や北海道教育大学附属函館小学校,近隣公立中学校との協議等に基づいて,「資質・能力シート」や「『情報活用能力』育成のためのカリキュラム表」の改善,「『他者と協働して情報を整理・発信・伝達』するという部分に特化したカリキュラム」の充実に取り組む。作成したカリキュラムについては,北海道教育大学,北海道教育大学附属函館小学校,近隣公立中学校等を始め広く意見を受ける機会を持つ。

③年度内:
タイピングに関する技能の確実な習得を目指す。具体的には5分間で400文字程度の入力ができるよう実態の把握と補習等の実施に取り組む。

アドバイザーコメント
日本女子大学 吉崎静夫 先生

     7月に本校を訪問したときに、私が指摘した5つのコメントを真摯に受けとめて対応しようとする姿勢を評価したい。そして、できたこと、まだできていないことを冷静に振り返っていることも好感がもてる。指定校とアドバイザー及び財団との良好な関係が維持できている。
     助言した5つの事柄を中心にコメントする。

  • ①相手意識に基づいた情報発信のためには、生徒たちにいかに「当事者性」(情報発信場面における当事者としての意識)を持たせるのかが重要であり、擬似の「相手意識」ではなく、本当の「相手」とするための方策(特別な場を設ける、本当の「相手」からの評価を受ける等)を検討する必要がある。
  • →本校の報告にあるように、美術科において、附属学校園敷地内でのパブリックアートに関して、生徒が「見る人の立場」という擬似的な「相手」に立った上で、専門家(本校における生徒や教員とは異なる「他者」、具体的には北海道立函館美術館職員及び北海道教育大学教員)から助言を受けるという単元構成を試みている。このことは、本研究課題における「他者」を生徒同士に限定するのではなく、広く校外に求めていることから、一定の評価ができる。ただし、情報発信する他者が「見る人の立場」という疑似的な「相手」にとどまっている点は課題である。実態のある「本物の他者」を相手とする実践が期待される。

  • ②「どのような人間を育てたいのか」について、少なくとも中学校3年間としての目標を設定することが必要である。とくに本校において育成を目指す「市民として求められる資質・能力」と「情報活用能力」をどのように関連づけていくのかを検討しなくてはならない。
  • →「市民として求められる資質・能力」と「情報活用能力」との関連について議論が深められていないのは残念である。ネット社会を生きる生徒たちにますます求められる「情報モラル」や「情報批判力」などをキーワードに議論を深化させることが期待される。

  • ③「情報活用能力」について、小学校と中学校とでどのように分担し、どのように連携していくのかを明らかにしていかなくてはならない。
  • →附属函館小学校との研究面での連携が進んだことは大いに評価できる。

  • ④本校が策定したカリキュラム表(ver.3)を簡易で見やすいものへ改善していくことが必要である。
  • →次のような一定の成果が認められる。形式について、これまで縦軸に資質・能力、横軸に教科等としていたものを、横軸を月にしている。また内容面については、ver.3では「育成することができると考える単元」を示していたが、ver.4では、「必ず育成を目指す単元」のみを示すこととしている。こうすることで、漠然と育成の可能性を示していたものから、育成が確実なカリキュラム表が作成されつつある。

  • ⑤コンピュータを用いたテスト(CBT)にどのように対応していくのかを検討する必要がある。具体的には、タイピングの技能が低いことによって、生徒の思考を表現することが制限されてしまうおそれがある(入力スピードが遅いがゆえに表現が乏しくなる、文字数が不足するおそれがある)。それをいかに克服していくかを検討する必要がある。
  • →一人一人が常にChromebookを所持することが実現したことで、生徒のタイピング技能が飛躍的に進歩することが期待できる。

     今後の課題としては、「他者(仲間)と協働して情報を収集・整理したり、他者(多様な相手)を意識して情報発信・伝達する学習活動」を積み重ねるとともに、それらの学習活動が生徒の資質・能力にどのような効果をもたらすのかを、生徒へのインタビュー調査と質問紙調査で明らかにする必要がある。

本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応

■本期間(1月~3月)の取り組み内容

  • 研究実施計画のうち,カリキュラム表の改善や授業実践の蓄積等については,おおむね実施できている。
    • 以下については,研究実施計画に示していないが,取り組んでいるものである。
      • 1)パナソニック教育財団が提供するアーカイブでの「実践研究DB」において,情報発信に関する先行研究の調査を継続している。
      • 2)情報活用能力のカリキュラム構築に関する先行研究の調査を継続している。
      • 3)タイピングに関する技能の向上を目指し,毎朝のタイピングの練習を継続して実施している。5分間の平均文字入力数は,10月が105.2文字,12月が144.2文字,2月(2018年2月9日(金))が185.3文字であった。
    • 以下については,継続して取り組む必要がある。
      • 1)「情報活用能力」や「市民性」を切り口として,「本校としてのどのような人間を育てたいのか」に関する議論を深めるために,中核となる組織づくりが必要である。また,これらの議論を経て,「市民として求められる資質・能力」と「情報活用能力」との関連を明らかにしていきたい。
      • 2)「『情報活用能力』部会」での議論に基づいて,「他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる」力を測るための調査問題を作成し,今年度中に実施する予定であった。しかし,ご助言いただいたような調査(アドバイザーの助言⑤)を糸口にして取り組み始めることとし,当面は調査問題の作成は取り組まないこととした。そのため,「アドバイザーの助言」⑤に示した取組を具体的に実施していきたい。
      • 3)質問紙調査については,「助言への対応」⑤で述べた取組に代替させ,実施する。
    • その他については,下記「助言への対応」で述べる。

アドバイザーの助言と助言への対応

■アドバイザーの助言

  • ①一口に「情報」と呼ばれていても,情報は様々な属性や特性を有している。学校教育で言えば,具体的には,教科それぞれの「情報」の特性がある。これらを整理することで,教科としての特性と情報としての特性を関連させた理解や実践が可能になるのではないか。
  • ②他者を意識した情報の整理・発信が本質である。また,他者に情報を発信するときには,次に3点が重要である。1点目は,相手にとってその情報が必要なものであるという点である(相手の必要性)。2点目は,相手にとってその情報が興味や関心を持つものであるという点である(相手の興味・関心)。3点目は,相手の状況を踏まえた上で発信するという点である(相手の状況)。
  • ③一口に「他者」と呼ばれていても,「身近な他者」と「公共の他者」という二通りの「他者」があるのではないか。このように考えたとき,「他者を意識する」の「他者」についても,友人や家族,教員,先輩後輩のように身近で親密圏に位置する他者と,まったく普段は係わりのない(もしくはきわめて希薄な)第三者的で公共圏に位置する他者と分別して考えることも重要なのではないか。
  • ④カリキュラムの絞り込みや小学校・公立中学校との連携については重要であり,今後も継続していくことが必要である。また,作成するカリキュラム表は様々な学校において活用しやすいものとしていくことが大切であり,そうした意味で「広がっていく研究」を目指すべきである。
  • ⑤生徒の情報活用能力等がどのくらい向上したかを把握するための調査としては,完成版を求めるのではなく,まずは生徒が書いてみたもの(活動に関する感想や自由記述など)を整理するところからはじめてみるとよいのではないか(例えば,活動の感想を求めて,その中に「相手を考えて」という趣旨の記述がどの程度見られるか,など)。または,直接に「どんなことを考えて記述しましたか?」という項目のアンケートを実施したり,生徒と直接面識のない大学教員による面接による調査を行うなども考えられる。大切なことは,簡易なものから始め,それらをチェックして改善していくというボトムアップ式で調査方法を完成させていくということである。

■助言への対応

①④について

  • 本校が教科等横断的に育成することを目指している「情報活用能力」に関わるカリキュラム表として,「『情報活用能力』育成のためのカリキュラム表」(第4版)を作成した。特に第3版では,「育成することができると考える単元」を示していたが,第4版では,「必ず育成を目指す単元」のみを示すこととした。すなわち,漠然と育成の可能性を示した表から,一気に絞り込みをかけ,授業実践の蓄積や小学校との表に関する協議を通して,徐々に単元を加除する方針である。また,この表には第3版までのように単元名のみを記載するだけではなく,学習内容も記載した。この表は,次の2点のような意義を有すると考えている。
    • ①各教科が設定したある情報活用能力の育成を目指す学習内容に関する記述から,その教科が(意識的・無意識的に)把握している「情報」を抽出することで,教科それぞれの「情報」の特性と整理することができる。また,そのうち本研究の中核である「相手や状況に応じて情報を適切に発信したり,発信者の意図を理解したりする力」に関する各教科等の実践の蓄積や開発を進め,「相手意識のある情報発信」に関わる各教科等の「情報」を整理するための手がかりになるということ。
    • ②単に単元名を示すだけではなく,具体的な学習内容を示すことで,表を見た人がどのような授業を行うのかについて簡単にイメージすることができるようになる。そのため,小学校や公立中学校の教員との具体的な議論を助けるものであるとともに,今後カリキュラム表が,実践に密着した具体的に改善されていくことを助けるものであるということ。

②について

  • 第1学年で取り組んでいる「探究」(総合的な学習の時間)では,生徒がグループを形成し,そのグループの課題意識に基づいて設定したテーマに関する情報の収集や整理・分析等を踏まえて,発表を行った。この発表における発表物の作成及び発表練習に当たっては,お示しいただいた3点のうち,とくに,「相手の興味・関心」や「相手の状況」を意識したものとなるように繰り返し指示を行うとともに,これらの視点に立って指導や助言を行なっている。この実践をきっかけとして,他者に情報を発信するための3点に関する研究実践の構築を考えている。

③について

  • ②で述べた第1学年「探究」の発表は,本校第1学年生徒や保護者,附属函館小学校の児童という「身近な他者」を「相手」として設定している。この実践が顕著な例であるように,学校における「発表」等の場面はいわば模擬的な状況で実施されることが多く,意識しなければ「身近な他者」のみを「相手」とすることに終始する実践が蓄積されていくと考えた。そこで,国語科において,作文に関する授業として,「公共の他者」をも射程に含めた授業実践を試みた(2018年2月16日のアドバイザー訪問時に公開した)。
    具体的にこの実践は,学級の文集という基本的に「身近な他者」のみが目にする媒体に掲載するための作文を指導するものであるが,同時に単元のはじめに生徒に対して,「公共の他者」としてのコンクールへの出品に含みを持たせるような意識付けを行なっている。このことによって,単に内輪に向けた作文としてではなく,日常では全く関わりのない「他者」を「相手」とした情報の発信やそのための情報の整理・分析が可能になるのではないかと考えた。この授業実践の試みを通して,「公共の他者」についての相手意識のある情報を整理・発信に実現性を検討する。

⑤について

  • ⑤に関する具体的な実践研究として,第1学年が1年間取り組んだ「探究」についての発表を終えた後,生徒による自己評価を行なった。ここでは回答の項目として,「『探究発表会』(2月21日)においてあなたが発表するとき,どのようなことに気をつけましたか?具体的に答えてください。」という質問を行い,生徒の記述を整理・分析した。その結果,104名の生徒のうち45%(47人)が,「相手」や「聞いている人」という語を使用して回答していた。また本会は,保護者と附属函館小学校6学年児童等にも参加いただいたため,より「相手」を具体的に「小学生」や「親」「保護者」という語を使用し,それらの人たちに合うような発表方法を模索した姿が見られた。しかし,そうした回答のほとんどは,「目を見て話した」や「身振り手振りをつけて話した」というように,「発表」という場面での相手意識に終始するものであった。今後は,「整理・分析」など,内容及びその構成を構築する場面においても,相手意識に立脚した取組とすることができるような指導や手立ての検討や開発が求められると考えている。
    さらに今後は,面接による調査についても具体的な方法等を大学教員と協議し,今年度中に少なくとも1回は実施する。

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

  • タイピング技能向上に向けた継続的な取組の成果として,着実にその技能が向上していることが平均入力文字数の推移から明らかとなっていることは,大きな喜びであった。今後は,ただ単に多く打てれば良いという意識に流されることのないよう,できるだけ正しい指遣いでの入力や技能向上への意欲付けを図っていく指導にも取り組んでいきたい。
  • 小学校との9年間を見通した「『情報活用能力』育成のためのカリキュラム表」整備の第一歩を踏み出せたことは大きな出来事であった。今後は,本表を入口として附属函館小学校とはもちろん,近隣の公立小中学校とも議論を重ね,広く活用いただけるカリキュラム表作成を目指していきたい。
  • 多くの方々と議論を続ける中で,ICT活用と情報活用との関係性をどのように捉えるかについて,共通理解を得ることに苦労した。「機器がなければ」というような誤解も多く,「情報活用能力」がすべての学習の基盤となる資質・能力であることや,とくに本校が取り組んでいる「相手意識」のある情報発信のためには学校教育全体で取り組んでいく必要があることが理解されるような実践研究を目指していきたい。

成果

  • とくに意識せずに「他者」を設定した場合,その多くは「身近な他者」に終始してしまうことが明らかとなった。そのため,意図的に「公共の他者」を「相手」として設定することを意識することが必要である。しかし,「公共の他者」を「相手」とすることは,十分な準備や環境の設定等が不可欠であり,さらには,年間に多くを実施することはきわめて難しい。そのため,「公共の他者」を「相手」として設定できるような機会がどの程度あるのかということを学校全体として把握することが重要であると考える。また,「身近な他者」を対象とする際にも,①「親密圏にある者に対してよりよく情報を発信する資質・能力を向上させる」という点だけではなく,②「『公共の他者』に情報を発信できるようになるための段階の1つとして,「身近な他者」を位置付ける」という順序性を意識することも授業者には求められると考えた。
  • 生徒の情報活用能力の状況を把握するためには,信頼性や妥当性等が保障されるような調査方法を開発することや実施することのみが重要であると考えていたが,そうした「スマートな」方法だけではなく,生徒の記述を蓄積して分析することや,面接を通して一人一人の声に耳を傾けるというような,いわば「泥臭い」方法も大切にするべきであると考えた。

今後の課題

  • (前回からの継続)PDCAサイクルにおけるP(計画)とD(実行)に関する取組に比べ,C(評価)とA(改善) に関する取組を充実させることに課題がある。具体的には,年度始めに作成した年間指導計画や単元の指導計画は整備されているものの,どのような授業が実際に行われ,どのように改善したのか,に関する協議・共有が十分に行うことができていない。研究担当者のみではなく全教職員による研究推進の実現を目指す上で,担当者及び教科担当者による授業実践の蓄積や改善を着実に展開していくための方策や条件を検討・実施していく必要がある。
  • 「『情報活用能力』育成のためのカリキュラム表」(第4版)によって,情報活用能力全体に対する強化等のアプローチを整理することができたため,研究2年目に向けては,とくに本研究のテーマである「相手や状況に応じて情報を適切に発信したり,発信者の意図を理解したりする力」を育成する授業構築等に重点的に取り組んでいく必要がある。

今後の計画

  • (前回からの継続)本校として目指す「どのような人間を育てたいのか」に関する議論を行い,明らかにする。
  • 各教科担当者が,情報活用能力のうち,とくに相手や状況に応じて情報を適切に発信したり,発信者の意図を理解したりする力」について,自ら担当する教科に関して育成に取り組むことのできる単元の明確化や,それに関する授業実践の蓄積,各々の指導計画等の整備を行う。
  • 各教科担当者の授業実践において「他者」に情報を発信することを位置づけている場合,その「他者」が「身近な他者」であるか「公共の他者」であるかを明らかにした上で実践を蓄積する。また,「身近な他者」であった場合には,真に「身近な他者」を「相手」とするのか,「公共の他者」をも射程に含む「相手」なのかを明らかにした上で実践を蓄積する。
    さらには,「公共の他者」に対して情報を発信するような機会が実際にどの程度あるのかについて,聞き取り調査を行う。
  • (前回からの継続)タイピングに関する技能向上のための取組を継続し,一定期間ごとにその変化を追跡する。

1年間を振り返って,成果・感想・次年度への思い

  • 今年度は主に第1学年を研究の対象として設定し,国語科2回,美術科1回を,本研究指定に係る公開授業として実施した。これら公開授業やその後の協議会,とくに吉崎先生から頂戴するご指導では,その都度その都度の新たな課題をご教示いただきことができ,次のご訪問日までにそれらを乗り越えるための方策を検討し,実施するというサイクルで研究に取り組んできた。
  • 研究1年次の成果と課題は上述の通りであるが,学校研究と並行させて実施してきたことも手伝って,本校教員間における「情報活用能力」についてのイメージやその育成についても,おおよそ共有化が図られている状況にあることは一つの成果であると考えている。
  • 研究2年次に向けては,1年次の課題を克服するための取組が中心とはなるが,最終的には本校が取り組んできた研究成果を,どのようにして整理していくかについても十分な検討を行う必要があると考えている。具体的には,単に冊子を作成して頒布するのではなく,より広く,より多くの学校で少しでも活用いただけるような研究成果の還元方法を考えていく必要があると考えている。

成果目標

①年度内:
生徒の「他者と協働して情報を整理・発信・伝達できる」力を把握するために,質問紙調査における生徒の記述や面接による生徒の声を収集し,それを分析する。結果として,発表物の作成や発表において「気を付けたこと」として,「他者」を意識する旨の記述が半数程度から得られることを成果目標とする。

②年度内:
具体的な授業実践の継続・蓄積や北海道教育大学附属函館小学校,近隣公立中学校との協議等に基づいて,「資質・能力シート」や「『情報活用能力』育成のためのカリキュラム表」の改善,「『他者と協働して情報を整理・発信・伝達』するという部分に特化したカリキュラム」の充実に取り組む。作成したカリキュラムについては,北海道教育大学,北海道教育大学附属函館小学校,近隣公立中学校等を始め広く意見を受ける機会を持つ。また,カリキュラム表は,北海道教育大学附属函館小学校との同一の形式で9年間の見通しを持つことができるものの第1版を完成させる。

③年度内:
タイピングに関する技能の確実な習得を目指す。具体的には5分間で400文字程度の入力ができるよう実態の把握と補習等の実施に取り組む。

アドバイザーコメント
日本女子大学 吉崎静夫 先生

     本校が、アドバイザーの助言を真摯に受けとめて、研究テーマに取り組んでいる姿勢を高く評価したい。その結果、活動報告書に見られるように、研究の成果と課題が明確になっている。
     まず、研究成果は次の通りである。

  • (1)情報活用能力を、「他者と協働して情報を整理・発信・伝達する能力」と「発信者の意図を理解する能力」の両面からとらえている。つまり、情報の発信者と受信者という複眼的視点から情報活用能力の育成にアプローチしている。このことは、他者と協働する際に重要なことである。
  • (2)「他者を意識した情報発信」において、友人や家族、教員、先輩後輩など、身近な親密圏に位置する「身近な他者」と、まったく普段は関わりのない「公共の他者」の両方を射程に入れて実践研究している。例えば、平成30年2月16日に公開された第1学年・国語科「作文」の授業において、「学級の文集」という基本的に「身近な他者」のみが目にする作文であったものを、「公共の他者」としての作文コンクールへの応募を意識づけている。さらに、その授業において、教科担任教員が生徒の作文に対する個別指導を行っているときに、別室にいる同僚教員(現在、教職大学院に在籍中)がgoogleのソフトを使ってネット上で他の生徒にアドバイスをしていた。新しい形態のティームティーチングであり、注目に値する。今後は、学外の専門家にネット上で協力いただくことも考えられる。
  • (3)附属函館小学校との連携によって、小中9年間の「情報活用能力育成カリキュラム」が検討され、形になってきたことである。このことは、わが国の学校教育にとってとても有意義なことである。
  • (4)授業後の生徒の感想や自由記述を整理・分析していることである。ここから、授業改善のためのヒントを得たり、情報活用能力を評価するための質問項目作成につなげてほしい。
  • (5)生徒のタイピング技能が確実に向上していることである。
  •  次に、研究課題は次の通りである。

  • (1)各教科が取り扱う「情報の特性」を再考する必要がある。例えば、言語系教科、理数系教科、社会系教科、芸術系教科、技能系教科などによって、取り扱う「情報」にどのような違いがあるのか、また共通するものは何なのか。その上で、教科横断的に育成することを目指す「情報活用能力」を再考してほしい。そのことが、「情報活用能力カリキュラム」の改善につながる。
  • (2)生徒の情報活用能力がどのくらい向上したのかを把握する調査を、インタビュー調査と質問紙調査によって本格的に行うことである。
  • (3)近隣公立中学校との連携によって、本校の研究を横に展開することである。次期学習指導要領では、各教科の基盤となる資質・能力として、言語能力とともに情報活用能力が特記されている。そのためにも、公立学校への普及が求められる。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

本期間(4月~7月)の取り組み内容

教育研究大会・公開授業の様子(外国語科)

  • 研究実施計画のうち,カリキュラム表の改善や授業実践の蓄積等については,おおむね実施できている。
  • 6月15日(金)に開催した本校教育研究大会(約200名参会)において,本研究に関する取り組みの概要を説明するとともに,研究1年次の活動報告書を掲示して周知を図った。
  • 以下については,研究実施計画に示していないが,取り組んでいるものである。
    • 1)「J-STAGE」を活用し,情報活用能力のカリキュラム構築や他者を意識した情報の発信に関する先行研究の調査を継続している。
  • 以下については,継続して取り組む必要がある。

    理科研究授業(5月24日)での
    「他者との協働」の様子

    • 1)本研究課題のうち,研究1年次は「情報を整理・発信・伝達」に特化した研究に取り組んできたため,研究2年次は「他者と協働して」に関する実践研究に取り組んでいく予定である(平成30年5月24日に公開した理科の研究授業では,他者と協働する学習活動の在り方に関する検討を行った)。また,この研究授業及び事後検討を踏まえて,研究2年次における「他者との協働」に関する実践研究の方向性を明らかにする(「■助言への対応」「⑧について」で詳述)。
    • 2)「情報活用能力」と「市民として求められる資質・能力」との関係性について,再整理を検討している。例えば,「市民として求められる資質・能力」には,知識・技能において「調査や諸資料から情報を効果的に調べまとめる技能」を設定している。このように,「市民として求められる資質・能力」と「情報活用能力」とには,重複するものや関連の強いものがあると考えている。そのため,これまで平面上で表として個別に整理していた資質・能力を再整理しなくてはならないと考えている。
    • 3)「情報活用能力」や「市民性」を切り口として,「本校としてのどのような人間を育てたいのか」に関する議論を深めるために,中核となる組織づくりが必要である。また,これらの議論を経て,「市民として求められる資質・能力」と「情報活用能力」との関連を明らかにしていきたい。(継続)
  • その他については,下記「助言への対応」で述べる。

アドバイザーの助言と助言への対応

■アドバイザーの助言

  • ①前回の公開授業(平成30年2月16日)では,第1学年・国語科「作文」の授業において,「学級の文集」という基本的に「身近な他者」のみが目にする作文であったものを,「公共の他者」としての作文コンクールへの応募を意識付けていた。このように,「他者を意識した情報発信」において,友人や家族,教員,先輩後輩など,身近な親密圏に位置する「身近な他者」と,普段はまったく関わりのない「公共の他者」の両方を射程に入れて実践研究している。今後は,学外の専門家にネット上で協力いただくことも考えられる。
  • ②附属函館小学校との連携によって,小中9年間の「情報活用能力育成カリキュラム」が検討され,形になってきている。今後はその充実を図る必要がある。
  • ③授業後の生徒の感想や自由記述の整理・分析を継続し,ここから,授業改善のためのヒントを得たり,情報活用能力を評価するための質問項目作成につなげてほしい。
  • ④生徒のタイピング技能が確実に向上している。
  • ⑤各教科が取り扱う「情報」がどのような特性を持っているのか,整理する必要がある。教科ごとによって取り扱う「情報」には特性があるとともに,それぞれの共通点や相違点を整理することが大切である。その上で,教科横断的に育成することを目指す「情報活用能力」を再考してほしい。
  • ⑥生徒の情報活用能力がどのくらい向上したのかを把握する調査を,インタビュー調査と質問紙調査によって本格的に行う必要がある。
  • ⑦近隣公立中学校との連携によって,本校の研究を横に展開していく必要がある。
  • ⑧研究1年次は「他者を意識した情報発信」に注力したため,研究2年次は「他者との協働」に重点を置いた研究に取り組んでほしい。他者と協働することは,これまでに学習したことを組み合わせたり,批判的に捉えたり,論理的に再構築したりすることを可能にする。こうした学習活動を踏まえることで情報は「整理」されていくことになる。この時「協働」には,「振り返る/見直す」協働と,「生み出す」協働があることに踏まえる必要がある。

■助言への対応

①について

①について

社会科授業での「他者を意識した情報発信」
を伴う学習活動の様子

  • 研究1年次では主に「他者を意識した『情報の発信』」に注目した実践研究に取り組んだ。その成果として,ご助言いただいたように一口に,「他者」と呼ばれていても,「身近な他者」と「公共の他者」という二通りの「他者」があるということ,「他者を意識する」の「他者」についても,友人や家族,教員,先輩後輩のように身近で親密圏に位置する他者と,まったく普段は係わりのない(もしくはきわめて希薄な)第三者的で公共圏に位置する他者と分別して考える必要がある,ということが明らかとなった。また,この「他者の二面性」を十分に踏まえた上での授業構築によって,「他者を意識した『情報の発信』」に資する活動に取り組むことができることが明らかとなった。さらに,様々な教科等の授業において「他者を意識した情報発信」を伴う学習活動が展開されている。
  • 「学外の専門家によるネットを介した協力」については,具体的な検討・実施は実現できていない。しかし,カリキュラム・マネジメントにおける「教育活動に必要な人的・物的資源等を,地域等の外部の資源も含めて活用」する手段の一つとして,「公共の他者」にネットを介して協力いただくような授業スタイルを提案できるような実践研究に取り組みたい。
  • 「他者を意識する」と言っても,「身近な他者」と「公共の他者」というような話者との関係性という捉えだけではなく,「他者がどのような状況にあるのか」というように,「他者の状況を意識(配慮)する」(聞く意欲の高低,年齢等)ことも含めた実践研究が必要であると考えている。

②について

  • 附属函館小学校との連携による小中9年間の「情報活用能力育成カリキュラム」は,今後も議論を継続し,よりよいものへと高めていく必要がある。一方で,今年度はこれまで附属函館小学校と中学校とで取り組んできた授業力に関する実践研究を,附属函館幼稚園,附属特別支援学校を含めた四校園で実施する予定である。この場を活用し,「他者を意識した情報の発信」に関して,幅広く実践を収集するとともに,本校の実践研究に活用していきたい。また,昨年度作成した「情報活用能力育成カリキュラム」に関して,様々な学校種からの意見を得る機会によって,より充実したものにしていきたい。

③について

  • 今年度の学校研究は,「カリキュラム・マネジメントを支える『評価』の工夫」と設定している。主な研究内容としては,カリキュラムを評価するための一つとして,生徒による自己評価をすべての単元において実施する。ここでは,主にその単元で育成を目指す資質・能力に基づいて設定した評価規準を質問項目とするが,単元や単位時間の授業に対する生徒の感想や自由記述の欄を設定し,その収集を図りたい。そして,生徒の記述状況を整理・分析し,ここから,授業改善のためのヒントを得たり,情報活用能力を評価するための質問項目を作成することに活用したい。

④について

④について

朝5分間のタイピング練習の様子

  • 生徒のタイピング技能については,概ね順調に向上している(2017年10月:105.2文字,12月:114.2文字,2018年2月:185.3文字,5月:259.6文字)。しかし,本校が利用している無料タイピングソフトは,正しい指使いの習得には効果があるものの,一定の時間の中でより多くの文字数を入力するという技能の向上には不向きであることが明らかとなった。また,昨年度11月からの実施によって,ソフトや活動そのものに対する関心が低くなる様子が見られた。そこで,4月からは,月曜日に新聞記事を利用して作成した文章例を提示し,それを正しく転写入力する活動を朝の5分間に行っている。この活動では,入力する文字数をより多くできる技能の向上を図るとともに,新聞記事を利用することで文章の構成や展開に関わる理解を深めることを目指している。なお,この活動は金曜日まで毎日継続して取り組むとともに,金曜日にはその入力した文字数を専用の表計算ソフトに入力し,自身の変容を把握できるようにしている。最終的には5分間で400文字の入力を目標とする。

⑤について

⑤について

教員を対象に実施しているアンケート調査

  • これまでは,全員が顔を合わせ,一堂に会した場での議論を予定し,その機会の設定を試みたが,そのような時間を確保することはできなかった。そこで,Google Formを活用し,本校教員を対象にして,「あなたが担当する教科では,どのような『情報』を扱っていますか?」「あなたが担当する教科の『情報』を学ぶことは,『市民』としてどのようなことに役立ちますか?」という2つの質問対する記述を自由記述で求めている。7月下旬を回答期限としており,ここでの回答を分析・整理し,今後の教科等横断的な取り組みの一助としたい。

⑥について

  • 第1学年が1年間取り組んだ「探究」(総合的な学習の時間)についての発表を終えた後,生徒による自己評価を行なった。ここでは回答の項目として,「『探究発表会』(2月21日)においてあなたが発表するとき,どのようなことに気をつけましたか?具体的に答えてください。」という質問を行い,生徒の記述を整理・分析した。その結果,104名の生徒のうち45%(47人)が,「相手」や「聞いている人」という語を使用して回答していた。また本会は,保護者と附属函館小学校6学年児童等にも参加いただいたため,より「相手」を具体的に「小学生」や「親」「保護者」という語を使用し,それらの人たちに合うような発表方法を模索した姿が見られた。しかし,そうした回答のほとんどは,「目を見て話した」や「身振り手振りをつけて話した」というように,「発表」という場面での相手意識に終始するものであった。今後は,「整理・分析」など,内容及びその構成を構築する場面においても,相手意識に立脚した取り組みとすることができるような指導や手立ての検討や開発が求められると考えている。
  • 昨年度中に実施することを予定していた,大学教員による面接による調査を実施することができなかった。そのため,1学期から夏季休業中の実施を目指して調整していきたい。

⑦について

  • 本研究の横の広がりを目指す一つの方策として,本校研究が今年度より実施する共同研究者を活用する。これまで本校は,研究に関わって「共同研究者」(本学教員または近隣中学校長),「助言者」(主に指導主事)を設定してきた。しかし実際は,教育研究大会で公開する授業に特化した「共同研究」や「助言」であった。今年度からは,「助言者」を廃止するとともに,継続的な研究への関わりを求めることを目指して「共同研究者」を本学教員と公立中学校教員の2名体制とすることとした。このうち,公立中学校教員については,本研究にも深く関わっていただくように進めていきたい。

⑧について

  • ご助言いただいたキーワード等を活用して,「他者との協働」が「他者を意識した情報発信」にどのようにつながっていくのかを図式化し,単元構築や授業実践の際の根拠となるように整理したい。なお,第一案は以下の通りである。
⑧について

本期間の裏話(うれしかったこと、苦心談 など)

  • 教員の異動がなかったことによって,研究1年次の取り組みを継続した授業実践等に4月当初から取り組むことができている。とくに1年生は,入学とほぼ同時期に一人が一台のChromebookを常時所持する環境を整備することができたため,昨年度よりも時期を前倒した指導を実施することができている。
  • ChromebookやG suite for educationに関しては,生徒による多様な活用が進んでいる状況にある。継続的な情報モラル教育の展開の必要性を感じるとともに,単に機器を遠ざけるだけではない指導の具体を考えていかなければならないと感じている。
  • 教員間の日常会話の中で,「他者を意識した情報発信」について,話題となることが多くなっている。このとき,「他者」を「身近な他者」と「公共の他者」に分類したことが授業構築の一助となっていることを感じる。「他者との協働」についても,同様の展開を実現できるよう取り組んでいかなければならないと感じている。

本期間の成果

  • 「他者がどのような状況にあるのか」というように「他者そのもの状況を意識する」(聞く意欲の高低,年齢等)ことも含めた実践研究が必要である。
  • 生徒のタイピング技能のさらなる向上のため,新たに新聞記事を利用した転写入力の活動により,意欲的にタイピング技能の向上を目指す姿が見られている。
  • 第1学年が1年間取り組んだ「探究」の発表に関する生徒による自己評価の結果,発表時に気を付けたこと(自由記述)として,104名の生徒のうち45%(47人)が,「相手」や「聞いている人」という語を使用して回答していた。また本会は,保護者と附属函館小学校6学年児童等にも参加いただいたため,より「相手」を具体的に「小学生」や「親」「保護者」という語を使用し,それらの人たちに合うような発表方法を模索した姿が見られた。これらは他者を意識した情報発信に関する成果の一つであると考える。
  • 学校研究における共同研究者が継続的に本校の研究に関わっていただくことによって本校の研究を広げるための仕組みを構築することができた。今後は実際に継続的となるような工夫が必要である。

今後の課題

  • (前回からの継続)PDCAサイクルにおけるP(計画)とD(実行)に関する取り組みに比べ,C(評価)とA(改善)に関する取り組みを充実させることに課題がある。具体的には,年度始めに作成した年間指導計画や単元の指導計画は整備されているものの,どのような授業が実際に行われ,どのように改善したのか,に関する協議・共有が十分に行うことができていない。研究担当者のみではなく全教職員による研究推進の実現を目指す上で,担当者及び教科担当者による授業実践の蓄積や改善を着実に展開していくための方策や条件を検討・実施していく必要がある。なお,本件については,今年度の学校研究のテーマとして取り組んでいる。
  • (前回からの継続)「情報活用能力」や「市民性」を切り口として,「本校としてのどのような人間を育てたいのか」に関する議論を深めるために,中核となる組織づくりが必要である。また,これらの議論を経て,「市民として求められる資質・能力」と「情報活用能力」との関連を明らかにしていく必要がある。
  • 研究1年次の成果と課題を踏まえながらも,研究課題にあるように「他者を意識して情報発信するための『他者との協働』」の在り方に関する実践研究に取り組む必要がある。
  • 第1学年が1年間取り組んだ「探究」の発表時に気を付けたこととして,45%(47人)が,「相手」や「聞いている人」という語を使用して回答していた。しかし,そうした回答のほとんどは,「目を見て話した」や「身振り手振りをつけて話した」というように,「発表」という場面での相手意識に終始するものであった。今後は,「整理・分析」など,内容及びその構成を構築する場面においても,相手意識に立脚した取り組みとすることができるような指導や手立ての検討や開発が求められると考えている。
  • 「他者がどのような状況にあるのか」というように「他者そのもの状況を意識する」(聞く意欲の高低,年齢等)ことも含めた実践研究が必要であると考えている。

今後の計画

  • (前回からの継続)本校として目指す「どのような人間を育てたいのか」に関する議論を行い,明らかにする。また,「市民として求められる資質・能力」と「情報活用能力」との関連を明らかにしていく。
  • (前回からの継続)タイピングに関する技能向上のための取り組みを継続し,一定期間ごとにその変化を追跡する。
  • 各教科担当者が,情報活用能力のうち,とくに「相手や状況に応じて情報を適切に発信したり,発信者の意図を理解したりする力」について,自ら担当する教科に関して育成に取り組むことのできる単元の明確化や,それに関する授業実践の蓄積や,指導計画等の整備を行う。また,そのために「他者と協働する」カリキュラム構築に取り組む。
  • 「他者がどのような状況にあるのか」というように「他者の状況を意識する」(聞く意欲の高低,年齢等)ことも含めた実践研究に取り組む。

気付き・学び

  • 「学外の専門家によるネットを介した協力」については,カリキュラム・マネジメントにおける「教育活動に必要な人的・物的資源等を,地域等の外部の資源も含めて活用」する手段の一つとして,「公共の他者」にネットを介して協力いただくような授業スタイルを提案できる可能性があるのではないだろうか。
  • タイピング技能の向上については,自らの考えや思いを入力したり,既存の文章を要約して入力したりすることについて,5分間で400文字以上を入力できることを最終的な目標として設定している。そのため,単に文字を転写するだけではない取り組みを検討し,実施する必要がある。

成果目標

①1学期:
生徒の「情報を整理・発信・伝達できる」力を把握するために,質問紙調査における生徒の記述や面接による生徒の声を収集し,それを分析する。結果として,発表物の作成や発表において「気を付けたこと」として,「他者」を意識する旨の記述を70%程度得る。

②夏季休業:
本校教員が考える各教科の「情報」の特性を整理・分析し,教科等横断的な具体的な取り組みを計画する。

③2学期:
「他者との協働」が「他者を意識した情報発信」にどのようにつながっていくのかを図式化するとともに,「他者を意識した情報発信」のための「他者との協働」を明らかし,授業実践を蓄積する。

④年度内:
具体的な授業実践の継続・蓄積や北海道教育大学附属函館小学校,近隣公立中学校との協議等に基づいて,「資質・能力シート」や「『情報活用能力』育成のためのカリキュラム表」の改善,「『他者と協働して情報を整理・発信・伝達』するという部分に特化したカリキュラム」の充実に取り組む。作成したカリキュラムについては,北海道教育大学,北海道教育大学附属函館小学校,近隣公立中学校等を始め広く意見を受ける。また,カリキュラム表は,北海道教育大学附属函館小学校との同一の形式で9年間の見通しを持つことができるものの第2版を完成させる(さらには,附属函館幼稚園による幼稚園段階でのカリキュラム表を含める)。

⑤年度内:
タイピングに関する技能を確実に習得させる。具体的には5分間で400文字程度の入力ができるよう実態の把握と補習等を実施する。

アドバイザーコメント
日本女子大学 吉崎静夫 先生

活動報告書に見られるように、研究の成果と課題が一段と明確になっている。
まず、研究成果は次の通りである。

  • (1)研究1年次では主に「他者を意識した『情報の発信』」に注目した実践研究に取り組んだ。その成果として,一口に,「他者」と呼ばれていても,「身近な他者」と「公共の他者」という二通りの「他者」があるということ,「他者を意識する」の「他者」についても,友人や家族,教員,先輩後輩のように身近で親密圏に位置する他者と,まったく普段は係わりのない(もしくはきわめて希薄な)第三者的で公共圏に位置する他者と分別して考える必要がある,ということが明らかとなった。また,この「他者の二面性」を十分に踏まえた上での授業構築によって,「他者を意識した『情報の発信』」に資する活動に取り組むことができることが明らかとなった。さらに,様々な教科等の授業において「他者を意識した情報発信」を伴う学習活動が展開されている。
  • (2)キーワード等を活用して,「他者との協働」が「他者を意識した情報発信」にどのようにつながっていくのかを図式化できている。そして、この図式化は単元構築や授業実践の際の根拠となると評価できる。
  • (3)本研究の横の広がりを目指す一つの方策として,今年度より公立中学校教員を共同研究者として活用できている。これまで本校は,研究に関わって「共同研究者」(本学教員または近隣中学校長),「助言者」(主に指導主事)を設定してきた。しかし実際は,教育研究大会で公開する授業に特化した「共同研究」や「助言」であった。今年度からは,「助言者」を廃止するとともに,継続的な研究への関わりを求めることを目指して「共同研究者」を本学教員と公立中学校教員の2名体制とすることとした。このうち,公立中学校教員については,本研究にも深く関わっていただくように依頼した。
  • (4)4月からは,月曜日に新聞記事を利用して作成した文章例を提示し,それを正しく転写入力する活動を朝の5分間に行っている。この活動では,入力する文字数をより多くできる技能の向上を図るとともに,新聞記事を利用することで文章の構成や展開に関わる理解を深めることを目指している。なお,この活動は金曜日まで毎日継続して取り組むとともに,金曜日にはその入力した文字数を専用の表計算ソフトに入力し,自身の変容を把握できるようにしている。最終的には5分間で400文字の入力を目標としている。

 次に、研究課題は次の通りである。

  • (1)「他者を意識する」と言っても,「身近な他者」と「公共の他者」というような話者との関係性という捉えだけではなく,「他者がどのような状況にあるのか」というように,「他者の状況を意識(配慮)する」ことも含めた実践研究が必要である。
  • (2)附属函館小学校との連携による小中9年間の「情報活用能力育成カリキュラム」は,今後も議論を継続し,よりよいものへと高めていく必要がある。一方で,今年度はこれまで附属函館小学校と中学校とで取り組んできた授業力に関する実践研究を,附属函館幼稚園,附属特別支援学校を含めた4校園で実施する予定である。
  • (3)今年度の学校研究は,「カリキュラム・マネジメントを支える『評価』の工夫」と設定している。主な研究内容としては,カリキュラムを評価するための一つとして,生徒による自己評価をすべての単元において実施する必要がある。ここでは,主にその単元で育成を目指す資質・能力に基づいて設定した評価規準を質問項目とするが,単元や単位時間の授業に対する生徒の感想や自由記述の欄を設定し,その収集を図る。そして,生徒の記述状況を整理・分析し,ここから,授業改善のためのヒントを得たり,情報活用能力を評価するための質問項目を作成する必要がある。
  • (4)昨年度は「情報を整理・発信・伝達」に特化した研究に取り組んできた。そこで本年度は「他者と協働して」に関する実践研究に本格的に取り組む必要がある。そのために、平成30年5月24日に公開した理科の研究授業は,他者と協働する学習活動の在り方に関する検討を行うための1つの実践事例であった。