八王子市立高尾山学園

第44回特別研究指定校

研究課題

不登校特例校におけるICTを活用した思考力・判断力・表現力の育成
~主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善~

2018年度04-07月期(最新活動報告)

最新活動報告
モニターとアップルTVを常設し、iPadを教員に貸与したことにより、教師が......

アドバイザーコメント

福本徹先生
高尾山学園は「基本情報」にもあるように、不登校の児童生徒を対象とした学校です。......

八王子市立高尾山学園の研究課題に関する内容

都道府県 学校 東京都 八王子市立高尾山学園
アドバイザー 福本 徹 国立教育政策研究所 総括研究官
研究テーマ 不登校特例校におけるICTを活用した思考力・判断力・表現力の育成
~主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善~
目的 児童・生徒の不登校状態に応じて、人間関係形成能力の育成と適切な学習支援を行い、生きることへの自信と社会的自立を獲得することを目的とする。 
現状と課題

(1)現状

小・中学校が併設された不登校特例校である。不登校の改善に取り組んでいるが、平成28年度の登校率は65%、29年度は68%であった。再び不登校状態になり、学校に通えない児童・生徒もいる。

(2)課題

  • ①児童・生徒に多様な体験をさせ、「これっておもしろい」「学ぶって楽しい」を経験させ、学びに向かう力を育てる。
  • ②児童・生徒の興味・関心、学習履歴に応じ、適切な学習支援を行い、登校意欲を高める。
  • ③市の規則により、普通教室で外部に接続できるPCが3台のみ。購入したiPadも外部への接続が禁止されている。そのために試したい授業があってもできない。
学校情報化の現状 「平成29年度実践研究助成(一般)」の助成を受け、情報化の推進体制が整い、普通教室におけるICT環境整備が進んだ。
取り組み内容

(1)教科指導におけるICT活用

  • ①普通教室におけるICT環境の整備
    主体的・対話的で深い学びを展開できる環境整備に取り組み、登校意欲を育む。
  • ②発達障害のある児童・生徒に対するICTを活用した支援
    デジタルコンテンツやアプリを授業で積極的に活用し、学習意欲を高める。
  • ③「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
  • ④不登校状態にある児童・生徒へ「教育の機会確保」として授業動画配信の可能性を探る。
成果目標

(1)成果目標

  • ①登校率の向上
    普通教室におけるICT環境整備が進み、子供の主体性が育まれ、平成29年度は68%だった登校率を、平成30年度には70%、平成31年度には72%にする。
  • ②ICT活用による学力向上
    発達障害のある児童・生徒に対するICTを活用した支援を継続し、ICT活用が学力向上に効果があることを教員、児童・生徒、保護者が実感する。

(2)取り組み後の状況

  • ICT活用と登校率や授業参加率の関連が明らかになり、不登校の解消が進む。
助成金の使途 無線LANアクセスポイント、60インチモニター、軽量机、折り畳み式椅子、先進校視察、講師謝金
研究代表者 黒沢 正明
研究指定期間 平成30年度~31年度
学校HP http://hachioji-school.ed.jp/takao3g/
公開研究会の予定 不校特例校のため、関係者以外には原則非公開。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

本期間の取り組み内容

1.7月10日(火)
第1回目訪問アドバイス
 アドバイザー:国立教育政策研究所 総括研究員
 福本 徹 先生
研究授業13:30~14:15
5・6年合同 社会科 授業者 古澤 彰
「わたしたちの生活と食料生産」
*不登校特例校の強みを活かし、6年生は復習として授業に参加しました。

■ 単元の指導計画(4時間扱い)

休み時間や放課後を利用し、産地調べにたっぷり時間をかけました。

目標 学習活動
第0時 ○産地調べ ○事前にお店で撮った写真や, スーパーのチラシから農産物や水産物を都道府県ごとに地図の上に貼り付けて,産地マップを作る。
第1時 ①産地調べ【本時】 ○完成させた産地マップから, 気付いたことや考えたことを話し合う。
第2時 ②米づくり列島・日本 ○日本全国の6月の米作りの様子が分かる写真や米の収穫量の資料から,米の産地について,気付いたことや考えたことを出し合う。
第3時 ③農産物の産地 ○米以外の農産物や畜産物の主な産地と特色を調べる。
第4時 ④地図にまとめる ○これまで学習してきたことをもとに,毎日食べている食べ物を生産している主な産地についてまとめる。
本時の展開

▲この場面で交流が活発に行われた。
ポイントに○印をつけたかった!

本時の展開

  1. 1.完成した産地マップを児童へ見せる。
  2. 2.完成した産地マップから気付いたことを交流する。
    • ・一人調べ⇒産地の気付いたところをiPadで記録する。
    • ・調べて気付いたことを友達に伝える。
    • ・発表する。
  3. 3.普段食べている食料品が,様々な食料生産物があることに気付く。
  4. 4.学習のまとめをし, 次時へつなげる。
  5. 5.本時の学習をふり返る。

☆児童が着目したポイント

色々な種類の食料品が八王子に届いている。

秋田県は米。山形県は野菜・果物。青森県は米、野菜・果物、魚。岩手県は、米、野菜・果物の他に、魚、肉、乳製品もある。東北地方からは、色々な種類の食料品が八王子に届いている。

関東地方は多い。

関東地方は多い。特に野菜・果物が多い。

「どうして関東地方には野菜・果物が多いのだろう?」という疑問が出てくると学習課題につながる。指導の工夫が欲しい。

三重県にはシールが1枚も無い!

三重県にはシールが1枚も無い!

小学部の先生の中に三重県出身者が!三重県のこと、伝えたがっていました。これが学びのチャンス。活かせず、残念でした。

写真を見ながら、気づいたことや感じたことをまとめ、発表の準備をしました。

写真を見ながら、気づいたことや感じたことをまとめ、発表の準備をしました。隣の人と相談する姿も見られました。発表の練習にもなります。

写真をもとに気付いたことや感じたことを発表しました。

写真をもとに気付いたことや感じたことを発表しました。

2.授業を行う全教室にモニターとアップルTVを常設しました。先生方にiPadを1台ずつ貸与したところ、日常の授業での活用が活発になりました。

モニターとアップルTVを常設

3.出前授業「ライフプランニング」(ソニー生命)

出前授業「ライフプランニング」(ソニー生命)

4.その他

(1)教職員対象に高尾山学園(不登校特例校)理解研修を実施。4月5日(実施)
(2)次世代型教育推進センターのピクトグラムを活用し、「主体的・対話的な深い学び」の視点による授業改善の方向性を把握。→職員室前の廊下にピクトグラムを掲示。OJT月間①(5月)「対話的な学び」をテーマに全員が略案を作成。
(3)訪問アドバイス事前打ち合わせ 研究実施計画の確認。4月17日実施
(4)小学部での振り返り 6月14日実施
 ・算数に非常に学力差がある。→学年を解体した習熟度別学習に取り組む。
(5)視察:佐賀県武雄市立武内小学校 研究発表会 6月30日(土)
(6)授業の動画配信の先進校の実践研究
 →マイクロソフト認定教育イノベーター説明会に参加。
  ・Skypeを活用した授業。
  ・One noteを活用した宿題提出 等
(7)チエルの教材説明 7月3日実施
 ・基礎・基本 計算検定、国語検定
 ・フラッシュ教材
 ・動かして教える算数、見せて教える社会科
 ・基礎・基本習熟プリントパック(導入済み)←日常的に活用してみる。

アドバイザーの助言と助言への対応

【助言】

1.授業について

  • (1)学級で作成した「産地マップ」を写真に撮る活動
    • ①八王子で配られたチラシから産地を調べ、日本地図にシールを貼った地図はとても良い資料である。その資料を通して、注目したポイントを写真でとるときの会話が活発で、主体的に交流し、良い学びがたくさん見られた。
    • ②写真が記憶のトリガーになる。つまり、写真を見ながら説明ができる。一人でまとめ、その後グループで共有するというステップが大事。児童を前に出して発表する必要もない。
    • ③撮った写真のどこに注目したのか、注目したポイントを○で囲む等、写真に簡単な印をつけておくとグループで説明するときに思い出すことができる。これは大人も同じ。
    • ④シールが貼られていない県に注目している子供も多かった。たとえば三重県。では、三重県では何も生産していない訳ではない。流通コスト等の事情から、八王子よりも大阪等、関西方面に出荷されている。しかし、北海道のメロンや宮崎のマンゴー等はコストをかけても十分利益が上がるので、シールが貼られることになる。この点については、5年生の学習範囲を超えてしまう。指導者には、「産地マップ」は、八王子における食料生産物の実態であることを認識しておくことが重要である。
  • (2)写真も良いが、動画で見るのも良い。NHKやYouTubeのコンテンツ等で学習するのも有効である。「NHK for School」はよくできている。活用すると良い。

2.成果目標と評価方法

  • ① 一人一人に着目すると良い。4月と6月を比べてみる。
  • ② 前年の同じ時期と比べるのも良い。

3.タブレットPCの活用

 大勢に配布するのなら安いタブレットPCを購入する場合もある。本校の場合は、児童の人数が少ない。ならば、それなりの機能のあるPCの方が良い。他校の事例を見ても、児童がタブレットPCを壊したという報告はほとんど聞かない。貸与している学校の中には、タブレットPCの「貸与式」「返還式」等、儀式的に行い、児童の意識を高めている場合もある。参考にすると良い。

4.算数の習熟度別学習の展開

  • ① 「算数」というだけで、授業に参加しない児童には、「算数」という言葉を使わない。たとえば「高尾タイム」等、違う名称をつけ、子供たちを授業に参加させ、学習する内容は算数というやり方も試してみると良い。
  • ② 子供がどこまで理解をしているのかをしっかり評価することが大事。また、それぞれの単元において児童がつまずきやすい個所や身に付けておかなければならない技能等を指導者が把握して授業に臨むことが重要。例えば、「ものの長さ」を測ったり、比べたりするとき、「片方をそろえる」ということが身についているのか。そういったことを今後、研究していくと良い。
  • ③ 教科の構造によっても学習の仕方は異なる。好き嫌い別、関心別等、色々試してみると良い。

5.視察先

  • (1)パナソニック財団の研究指定校の中から探すと良い。
  • (2)例えば
    • ①新潟大学附属新潟小学校:複式学級がある。
    • ②広島市立藤の木小学校:フューチャースクール、学びのイノベーション事業
    • ③福島県新地町立新地小学校

6.佐賀県武雄市立武内小学校の紹介

【助言への対応案・次回までの課題】

  • 1.算数の習熟度別学習の展開
    • (1)名称を考える。
    • (2)好き嫌い別、関心別等、色々な形態を試してみる。
    • (3)10月26日の研究授業で、高尾山学園小学部算数授業の提案をする。
  • 2.タブレットPCの活用
    • (1)小学部児童、1人1台、タブレットPCを貸与に向け、貸与の仕方、約束などを決める。
    • (2)成果と課題を把握する。
  • 3.成果目標と評価方法
    • (1)一人一人の変化を把握する。→授業参加率を調べる。
    • (2)同じ時期の登校率を比べる。
  • 4.視察
    • (1)武内小学校の視察報告をする。本校でも取り入れられる点は導入を進める。
    • (2)パナソニック財団の研究指定校の中から、視察先を選び、視察を実施し、先進校の取り組みに学ぶ。

本期間の裏話

  • 1.全教室にモニターとアップルTVを常設し、先生方にiPadを貸与したところ、日常的に授業でのICTの活用が進み、児童・生徒の集中力が高まったこと。(これが授業参加率につながっていることを証明する指標を探しています。)ベテランの先生のICT活用がうまい。
  • 2.小学部で研究授業が実施できたこと。そこに中学部の先生方が参観されたこと。何より、児童たちが大勢の方々に見られながらも、授業のねらいに向かって学習を進めたことがうれしかった。
  • 3.贈呈式で知り合った武雄市立武内小学校に、本校の先生を視察に行かせることができた。視察成果の還元は今後の課題であるが、パナソニック財団の助成金を使用して、今後も先進校の視察に行き、指導力、学校経営力を高めていきたい。
  • 4.教員の人数が少なくても、共通の認識をもち、研究に取り組むことは、改めて難しいと感じた。手順を踏んでも、個人により認識の差が生じる。授業のレベルを上げていくことが本当に難しい。

本期間の成果

  • 1.モニターとアップルTVを常設し、iPadを教員に貸与したことにより、教師がICTを活用し始めた。
  • 2.モニターによる資料提示。焦点化したいところを拡大する。
  • 3.NHK for School の活用が活性化した。

今後の課題

  • 1.小学部算数における、学年(5・6年)を解体した習熟度別学習の実施。
     ・チエルの教材を活用したら可能か。
  • 2.不登校状態にある児童への学習指導。
  • 3.ICTを活用した主体的で対話な授業。
  • 4.メディアルームの整備。
  • 5.ICT活用能力(タイピング、検索等も含めて)を高尾山学園のつけたい能力としていきたい。

今後の計画

  • 1.「アップルクラスルーム」を使用できるように備品を整備する。
    ・小学部算数における学年を解体した習熟度別学習の実施。
  • 2.先進校の視察
  • 3.OJT月間②「主体的な学び」をテーマに全員が略案を作成、授業を公開
  • 4.メディアルームの整備

気付き・学び

  • 1.ICT活用はベテランの先生の方がうまい。そして、児童・生徒の方が操作が巧で、すぐに身に付く。
  • 2.学校に来ていない児童・生徒へのアプローチには、予想以上に可能性がある。ただし、本人が活用するかどうかが一番の課題。
  • 3.日本中には様々なICT活用に取り組み、実践報告をしている学校がたくさんある。本校に活用できるものは、積極的に取り入れてい行きたい。

成果目標

  • 1.登校率の向上

     普通教室におけるICT環境整備が進み、子供の主体性が育まれ、平成29年度は68%だった登校率を、平成30年度には69%、平成31年度には70%にする。

    ◇5月出席率 5年 47.6%  6年 64.3%
          中1-1 65.6% 2-1 80.0% 2-2 65.6%
          3-1 89.3% 3-2 66.0% 3-3 65.6%
          全校 70.5%(平成29年度69.2%)

  • 2.ICT活用による学力向上

     児童・生徒に対するICTを活用した支援を継続し、ICT活用が学力向上に効果があることを教員、児童・生徒、保護者が実感する。
    ☆学校評価

アドバイザーコメント
福本徹先生
国立教育政策研究所 総括研究官 福本 徹 先生

 高尾山学園は「基本情報」にもあるように、不登校の児童生徒を対象とした学校です。一般的に不登校の児童生徒は、小中学校の授業に出席していないために学習空白が生じている場合が多いことや、対人関係に難しさを抱えている場合がある、という特徴があります。高尾山学園もそうですが、文部科学大臣の指定を受けることで不登校児童の実態に配慮した柔軟な教育課程の編成が可能であり(学校教育法施行規則第56 条)、具体的な学習活動としては、不登校児童の学習状況に合わせた個別学習,グループ別学習,などの個々の児童生徒の実態に即した支援であるとか,学校外の学習プログラムの積極的な活用など指導方法や指導体制の工夫改善に努めることが求められます(総則第1章第4の2の(3)のイなど)。また、不登校は取り巻く環境によっては,どの児童生徒にも起こり得ることであり、「問題行動」と捉えるものではありません。共感的理解と受容の姿勢をもつことが,児童の自己肯定感を高めるためにも重要です。

 さて、学習空白が生じているというや、柔軟な教育課程の編成が可能であるということは、学習内容をベースにカリキュラムを編成し実行するというよりは、育てたい児童・生徒像、すなわち、資質・能力に基づいたカリキュラム編成と、わかりやすい授業や参加したくなる授業、すなわち、ICT等を用いた効果的なカリキュラム実行が求められます。参観した授業では、十分な活動と自分なりのまとめを行うために、ICT(タブレットPC)を用いて記録し閲覧する、ICTを用いて個人で考察し伝え合うといった、「主体的・対話的で深い学び」の視点に基づいた学習活動と、空間的な広がりや比較・分類といった社会的な見方・考え方を生かし、社会的な事象を多角的に把握し社会の課題を把握するための思考力の育成が図られた授業でした。

 今後は、タブレットPC上で動作する様々な教材等を導入して技能面の習熟を図るということですが、発達段階に応じたり、特別活動などの領域の内容を援用して、まとめて学ぶという可能性も見いだせるのではないでしょうか。

 いずれにしても、これからの教育課程を考えていくにあたって、大変参考となる研究であり、今後の進展に期待します。一緒に頑張りましょう。