成果報告会

パナソニック教育財団
平成29年度
成果報告会

開催日 平成29年8月1日

ICTを活用した「主体的・対話的で深い学び」とは何か 15団体が発表

8月1日、東京・有明のパナソニックセンター東京におきまして、パナソニック教育財団が主催する平成29年度 実践研究助成 成果報告会が開催されました。会場には、全国各地の助成校、選考委員・専門委員の先生方など約130名にお集まりいただき、これまでに助成を受けた学校・団体の成果報告、研究成果報告書 優秀校の表彰、財団の専門委員の先生方によるパネルディスカッション、グループディスカッション&情報交流会等が行われました。当日の模様を、映像を交えてお伝えします。

挨拶

主催者挨拶

新しい学習指導要領の先端を行く助成校の取り組み

小野 元之 パナソニック教育財団 理事長

私どもの実践研究助成は今年で43回目を迎えました。新しい学習指導要領が今まさに動き出そうとしていますが、その中でも情報の活用能力、コンピュータを活用した学習活動の充実、コンピュータでの文字入力の習得やプログラミング的な思考の育成、アクティブラーニングが大事なこととして示されています。
助成校の皆様はその先端を切って、地域や学校の実状を踏まえながら新しい指導要領が目指す方向に日々努力をされているわけです。今後とも、大学の先生方のご意見を踏まえながら、実践研究の成果の定着と普及を継続的に実施し、発展的に伸ばしていくよう努めていただければと思っています。

来賓ご挨拶

情報活用能力は学習の基盤となる資質・能力

梅村研 文部科学省生涯学習政策局 情報教育課 課長

パナソニック教育財団には、学校における教育の情報化の発展・普及に多大なるご尽力をいただき、厚く御礼申し上げます。本成果報告会を通じて、ICTを効果的に活用して教育上の課題の改善に取り組む実践事例に触れられることを楽しみにしております。
小・中学校の新学習指導要領では情報活用能力を学習の基盤となる資質・能力と位置づけており、先般閣議決定された骨太方針や未来投資戦略にも教育の情報化が盛り込まれています。助成校の皆様には、本日ご報告いただく成果を学校で共有されることを通じて、地域にも広げることを意識しながら、優れた実践事例の創出につなげていかれるものと期待しています。

第42回一般助成研究成果報告書 優秀校表彰式

表彰式

第42回一般助成研究成果報告書の優秀校の表彰式が行われました。研究成果報告書は専門委員の先生方に評価していただき、74団体の中から選ばれた14団体を表彰しました。最優秀賞の御所市立名柄小学校には特別指定校として9月より研究活動を推進していただきます。

全体講評

専門委員の木原俊行 大阪教育大学 教授は全体講評として「R-PDCAサイクルに基づいて発展する実践研究は継続・発展させることが大事で、自分たちの取り組みを見つめ直す機会となる研究成果報告書の作成も、その仕組みの一つ」と話されました。
また長谷川元洋 金城学院大学 教授は、実践研究の特徴として「新学習指導要領を意識したものが多く、主体的・対話的で深い学び、カリキュラム・マネジメント、他校とのネットワーク、特別の支援を要する子どもへの配慮」が目立ったことを挙げました。

Skypeのライブ授業で学習参画意欲が向上

最優秀校 御所市立名柄小学校

全校児童58人と児童数が少なく、意見を言うのが苦手な子どもたちの課題を解決するためにSkypeを使って、他校との遠隔合同授業、工場へのバーチャル見学、ニュージーランドの小学校との交流を通した「生きた外国語活動」を展開しました。また、6年生の修学旅行では広島での平和活動の集いを在校生と一緒に行いました。ライブ授業全体の成果としては児童の学習参画意欲の向上と、教師のICT機器への抵抗感が薄らいだことが挙げられます。コミュニケーションについて再考すべき点があることと、授業の効果を評価できる指標をつくることが今後の課題です。

第41回特別研究指定校 成果報告(助成2年終了)

第41回 特別研究指定校として2年間の研究を終えた6校が、成果報告を行いました。

協働学習を通して児童が自主的・自発的に発信

札幌市立厚別東小学校

本校児童の実態として自分の考えを進んで発表する力や、意見の交流から問題を解決しようという力が弱いという課題がありました。そこで今回、iPadを中心としたICT機器を使った協働学習を行いました。4年生は地域にある森林公園の四季のよさを伝えるために、2人に1台のタブレット端末を使ってデジタルリーフレットをつくり、5年生は動画で年長さんに学校のよさを伝えるCMづくりをしました。
さらに、クラブ活動や委員会でもiPadを活用しました。成果としてはタブレット端末の活用頻度が向上し、児童発信による自主的・自発的活動を増やすことができました。また、ルーブリックや授業チェックシートを用いたことで改善項目をはっきりさせることもできました。

黒板を子どもに渡したことで自己肯定感が高揚

大阪市立堀江小学校

平成27年度はICTを活用した協働学習から思考力・判断力・表現力を育む授業の創造を試みましたが、教師主導の授業を行ってきたことに気づき、次年度は黒板を子どもに渡し、12本の公開授業を行いました。
4年生の「災害から暮らしを守る」では6年生から地震・津波の話を聞いた後に4年生がメカニズムをタブレットで調べ、起震車体験をして、他学年の児童にもアンケートを行い、結果をExcelでグラフ化。さらに子どもたちのほうから、防災フォーラムを開催したいとの提案をしてくれました。成果としては児童の主体的な姿が見られ、効果的なICT活用ができるようになり、協働的解決力が身につき、自己肯定感が高揚しました。論理的思考力を育成することが今後の課題です。

アクティブ・ラーニングモデルを校外へ波及

芦屋市立精道小学校

本校は、子どもたちが主体的に学び、考えを深めて広げ、わかりやすく相手に伝えることができるようになるために、「精道小アクティブ・ラーニングモデル」の開発と、学習指導案の工夫・改善を行いました。さらにICTの常設化、ICTミニ研修会の開催、授業研究協議会でのタブレット端末の使用によって、教員のICT活用指導力の向上にも取り組みました。
こうして実践した授業の事例を芦屋市の「タブレット利活用探求チーム」のパンフレットや兵庫県教育委員会ホームページに掲載してもらうことで、芦屋市・阪神地区・兵庫県全体への波及も図ることができました。今後の展開としては教員の入れ替わりへの対応、ベテランから若手の先生への実践知の継承を考えています。

プラスワン授業で「育てたい力」をつける

文京区立第六中学校

本校は平成26年度に実践研究助成の一般助成校となり、今回の研究の足がかりとなりました。生徒には、協働して問題解決を行う機会が少ないという課題がありました。そこで1年目は言語活動に着目し、教科の特性に合わせた「育てたい力」を育む授業の検討と実践を行い、2年目は教科横断的な言語活動活性化のポイントを「プラスワン授業」として繰り返しました。
たとえば理科では実験結果を生徒がICT機器で効率的にまとめる授業を行い、音楽と技術では連携してCM制作に取り組みました。成果としては、発表する機会の増加や各教科の「育てたい力」を意識した授業の実践、ICT活用の工夫が見られました。今後は学習効果の検証と、より効率的・効果的なカリキュラムの検討を行ってまいります。

ICT活用の授業デザインで主体的な学びを実現

板橋区立中台中学校

本校では基礎・基本の定着を狙いとした放課後補習教室や家庭学習課題の提示を行ってきました。さらに、ICT活用の授業デザインによって、主体的に学ぶ楽しさや達成感、成就感が得られることを目指しています。国語では、詩の朗読をする自分たちの動画を見て改善点を話し合い、タブレット端末に書き込みました。
理科では動物の特徴をタブレット端末で分類。グループごとに分類方法が異なることから、互いの考えを理解することができました。研究実践報告会の来校者へのアンケートでは「基礎的な知識・技能を身につける」「興味関心をもち、積極的に取り組む」など多くの項目で肯定的評価が80%を超えました。引き続き、教科センター方式でICTをどう活用していくかを考えていきます。

一人ひとりがもつ力を引き出すアクティブラーニング

大阪府立東百舌鳥高等学校

2年前、本校にはどのような生徒に育てたいかという明確なビジョンがなく、それぞれの取り組みが単発で終わっていました。そこで、トータルプラン委員会をつくり、一人ひとりがもつ力を引き出し伸ばす授業改革を行いました。アクティブラーニングルームをつくり、2年目からはBYODにも取り組みました。
アクティブラーニングの実践は一般化したモデルに落とし込み、「東百舌鳥スタイル」を確立。本校生徒が「高校生ICT Conference」で代表として各省庁に提言を行う、本校での教育実習を希望する卒業生が増えるといった成果が出ています。さらに、アクティブラーニングを学力向上につなげるためには、どのような力をつけさせればいいのかを考えていきたいと思います。

パネルディスカッション

テーマ  ICT活用による『主体的・対話的で深い学び』

パネルディスカッション
・コーディネーター
 堀田博史 園田学園女子大学 教授
・パネリスト
 影戸誠 日本福祉大学 客員教授
 中川一史 放送大学 教授
 永田智子 兵庫教育大学 教授
 村松浩幸 信州大学 教授
パネルディスカッションを動画でみる

求められるのは波及効果まで考えた研究設定

堀田博史 園田学園女子大学 教授 

「アクティブラーニング」をキーワードとした応募が昨年度は462件中136件、今年度は384件中171件ありました。来年度は「主体的・対話的で深い学び」をキーワードにした応募が増えると思われます。そこを踏まえて、今日は先生方に、これまでの実践事例の中からベスト3を推薦していただきたいと思います。
まずは私のベスト3として、主体的な学びの視点から、芦屋市立精道小学校の6年生の社会を紹介します。資料集やタブレットで源頼朝について調べ、最後に頼朝の人柄などを評価し、議論を経て頼朝のレーダーチャートをつくるというものです。
深い学びの例としては、同じく精道小6年生の算数の授業を挙げたいと思います。グループごとにボールを投げ、その飛距離データから誰を何番目にすれば勝てるかを議論し、みんなが納得する数値を導き出すというものです。対話的な学びとしては、愛媛県の幼稚園の子どもたちが遠足で撮ったタブレットの写真を見ながら園長に語りかけ、遠足の新聞をつくるという授業がありました。
全体を通して、成果物が今後ICT活動をしていく学校に影響を及ぼすことを考えれば、授業だけの評価ではなく波及効果も考えた研究設定が必要だと感じました。

いい実践事例に必要な3つの条件

中川一史 放送大学 教授

私は、①問題解決に子どもが追い込まれる、②説明する羽目になる、③児童・生徒がICTになじんでいる、という3つの場面が見られた3つの実践事例を推薦したいと思います。
札幌市立厚別東小学校の授業では、デジタルリーフレットをブラッシュアップする場面で、子どもたち自身が課題を感じ、それを直さなくてはいけないと自覚し、「深い学び」とは何かを考えさせられました。
宮古島の中学2年生の外国語の授業では、生徒がグループに分かれ、Skypeでつながったネーティブの講師に宮古島の観光地を英語で紹介していました。詰まるとグループの仲間に助けられながらではありますが、公立の中学2年生がネーティブの方と一対一で、一人残らず軽やかに対話している授業は初めて見ました。そして鳥取の中学校では、金星の満ち欠けの授業で、子どもたち自身がタブレット、教科書、模型、紙のワークシートと、使いやすいツールを選択して説明している姿が印象的でした。

先生自身が主体的・対話的で深い研究を

村松浩幸 信州大学 教授

私が2年間関わった文京区立第六中学校の授業の中から、各教科の見方・考え方を意識した教科の指導法が特徴的な3つの授業を推薦したいと思います。
第3位は理科の授業です。データをもとにグループで議論し、科学的に推論していくという授業で、細胞の単元では分裂の特徴を観察・記録し、類似点や相違点を考えました。
第2位は技術と音楽が連携した授業で、ACジャパンのCMを分析し、自分たちはどんな人にどんなメッセージを伝えたいのかを考えました。分析から解決すべき課題を設定して要件を定義していくというのは、ものづくりに共通する基本的な考え方です。
第1位は先生方の取り組みです。何のために活動するのか、それが将来の子どもたちにどう生きるのか議論を重ね、さまざまなワークシートをつくられていました。その努力が、生徒たちの笑顔あふれる対話的で非常にいい授業につながっていました。主体的・対話的で深い学びを実現するには、先生方自身が主体的・対話的で深い研究をすべきだと思います。

ルーブリックを共通理解し、学びを深める

永田智子 兵庫教育大学 教授

私は、自分が関わった大阪市立堀江小学校の公開授業の中から、3パターンの授業をご紹介したいと思います。
1つ目は6年生の社会です。「幕府の政治と人々の暮らし」の中で、タブレット端末で探した資料に基づいて各地の大名の思いを考えました。
自分の考えを形成し、グループで話し合い、学級全体で意見を交流することで、自分の考えを広げたり深めたりすることができました。2つ目は4年生の総合的な学習の時間で、「減災を考えよう」というテーマで調べ学習の成果を発表しました。発表を聞いて自分と他人の考えを比べるというものですが、ルーブリックを先生と児童が共通理解し、そこを目指して学びを深めているのが特徴的でした。
3つ目は5年生の総合的な学習の時間です。「はじめようプログラミング」という授業で、試行錯誤しながら車を動かしました。リアルな掲示板を用意したことで、グループ内だけでなく、グループ間でも協力しながら問題解決をする姿が見られました。

主体的に考えアウトプットする授業で、黒板を児童の手に

影戸誠 日本福祉大学 客員教授

いろいろな学校を見てきましたが、私が考えるベスト3の1つが大阪府立東百舌鳥高等学校です。一人ひとりのトライ&エラーが設定されており、生徒とのインタラクションを図っていく中で、ソフトウェアがきちんと使われていました。
主体的とは誰も見ていないところで自ら判断する力を身につけることですから、生徒が主体的になれば学習が深まるだけでなく、日常生活も変わってきます。2つ目が、ICTを活用した国際連携によるアクティブラーニングに取り組んでいる大阪市立東高等学校です。中川先生のお話にあった「説明する羽目になる」ということを国際的に展開し、英語でのやり取りを積み重ねることで、いろいろな事例をつくっています。
そして最後が、大府市教育委員会が展開している「大府スタイル」で、「だいたいわかった」を超える深い学びやビッグデータの活用などを進めています。このように、主体的に考えてアウトプットする羽目になるような授業が展開されれば、黒板が児童の手に渡るのではないでしょうか。

第42回 特別研究指定校 中間報告(助成2年目)

特別研究指定校の助成期間は2年です。今年2年目となる第42回特別研究指定校6校が中間報告を行いました。

プレゼンテーションで思考力・判断力・表現力を育む

古河市立上大野小学校

1人1台のタブレット端末を使って児童がプレゼンテーションを行い、情報を収集・編集・発信する過程の中で思考力・判断力・表現力を身につける授業のあり方を研究しました。プレゼンテーションを難易度によって3つのランクに分け、地域の発表会などにも参加させたところ、発表に対する意欲や自信が高まりました。
さらに、プレゼンのレベルを測る「マスター・オブ・プレゼンテーション制度」を設け、今後は話が聞き手に伝わっているかどうかも含めて評価していく予定です。

BYOD社会に向けて、スマートディバイスを活用

大阪教育大学附属平野小学校

内閣府の調査によれば、5割以上の小学生がインターネットを利用しています。このことから近未来のBYOD社会の到来を予測し、スマートディバイスの効果的な教育的利用を研究することになりました。まずはiPod touchを50台導入し、3年生以上の生徒に1人1アカウントを配布。
各学期の先生方の実践を「実践事例集」としてまとめました。今後はPTAと連携しながら家庭にある私的ディバイスの利用を広げていくことで、BYODに近づけていけたらと考えています。

“かく活動”を精選し、より深い学びへ

広島市立藤の木小学校

昨年度は、各教科で自分の考えを表現する“かく活動”を採り入れる実践を、ICTを活用して行いました。これまでの“かく活動”を融合させて学習過程モデルを構築し、本年度も研究を進めています。子どもたちは1人1台のタブレットに書き込んだり、情報を呼び込んで自分の考えをまとめたりしています。
今後はより深い学びを創造できるよう、思考活動である“かく活動”の内容を精選し、“藤の木かくスキル”の構築を目指していきます。

動画を活用した反転授業で予習を習慣化

篠山市立丹南中学校

本校では、予習をして授業に臨めば主体的な学習態度が身につき、学習の定着度も深くなるのではないかとの考えに基づき、予習の習慣化を目指した授業実践に取り組んでいます。学校のホームページに予習動画をアップして反転授業を行ったところ、予習をするようになった生徒は復習もするようになることがわかりました。
市内の5中学で協同して教材をつくり、共有するシステムの構築も進んでおり、早ければ2学期から運用が開始される予定です。

ICTで身につける「21世紀型学習スキル」

神奈川県立生田高等学校

ICTを文房具のように当たり前に使い、自らを表現できることを目標にした「21世紀型学習スキル」の育成と実践に取り組んでいます。1年目はいろいろな授業でICTを使った「問題解決型協働学習」を行い、昨年度末にはICT利活用研究プロジェクトチームを発足させました。
主体的・対話的な学びは定着してきましたが、これからは深い学びを充実させていくのと同時に、ICT活用の効果についても検証を進めていきたいと思っています。

キャリア発達を促す授業モデルにICTを利活用

岐阜県立郡上特別支援学校(特別指定校)

平成27年度の一般実践研究成果報告書の評価から特別指定校へと研究を前進させていただきました。障害程度にかかわらず生徒が自立できる授業実践をしています。事前学習・喫茶営業・事後学習とパッケージ化された授業モデルでは動画やアプリを活用。
生徒自身が映像を見て自分を客観視することで改善が促され、学びの満足度を深めることができました。わかりやすい授業とICT利活用を通し、キャリア発達が促されていくのを感じています。

平成28年度 共同研究 成果報告

ICTを活用した反転学習モデルの開発と効果の検証

埼玉県立総合教育センター 大沼潤一 氏

昨年度から、先生方がパソコンで動画をつくり、YouTubeにアップしたものを生徒がワークシートを使いながら自宅で視聴し、授業で動画を見直しながら先生方と子どもたちが話し合いを進めていく「反転学習モデル」を開発し、中学・高校の先生方120名に研修を行い、効果を検証してまいりました。
大宮武蔵野高校では生徒が動画とプリントと教科書を自分でチョイスしながら自発的に学習へ向かう様子が見られるようになり、鴻巣女子高校では保育の授業において、子どもの発達の段階を動画にすることで議論が活発化しました。授業時間の有効活用が図れたことで発展的な課題にも取り組めるようになり、定期考査の結果からは定着度の高まりも示唆されました。

三者協定による教員研修の充実とICT活用の促進

墨田区教育委員会 渡部昭 氏

平成27年度11月にパナソニック教育財団、横浜国立大学、墨田区で三者協定を結び、校内研修会への研究者の派遣、全校で年2回の「学校情報化認定」の実施、ICT活用のDVD(実践編・研修編)作成を行いました。
成果としては、校内研修会に大学の先生方に来ていただいたおかげで教員のICT活用指導力が向上し、授業改善のきっかけになりました。また、「学校情報化認定」を実施したことで、各学校の立ち位置や弱点が理解できるようになりました。私たち事務局もこのプロジェクトを通じて、各学校に今まで以上に深く関わることができるようになりました。

総評

今日のヒントを多様化の時代に活かす

パナソニック教育財団 評議員
日本女子大学 教職教育開発センター
吉崎静夫 所長・教授

日本の子どもは複数のウェブページの情報を関連づけて問題解決に活かすのが苦手だとされています。今日の発表の中には、ヒントがたくさんありました。学校と家庭の学びをどうつなぐか、学校と他の学校をどうつなぐか、教科間をどうつなぐかといった事例です。
子どもが対話の学びを自分の中でどうつなげるか。これが深い学びの本質なのだと思います。今はまさに多様化の時代です。どれだけ相手の立場に立って情報発信できるかが最大の課題です。今日の多大なヒントを、ぜひそこに活かしていきたいと考えております。

グループディスカッション・交流会

成果報告会のあとは会場を移し、助成校の皆さん、アドバイザーの先生方、パナソニック教育財団関係者によるグループディスカッションと交流会の時間が設けられました。
初めに、美馬のゆり先生(公立はこだて未来大学教授)が「日本人はアイデア、ビジョン、インパクトが弱いといわれていますが、子どもたちが育った先にどういう社会を実現してほしいのかというところまで、私たちは考えていかなければいけません。
これからも日々いい実践をしながら、それを共有し、高め合っていければと思います」と挨拶。会の終わりには、特別研究指定校5校の先生方による感想と決意表明が披露されました。

感想と2年間の決意
第42回特別研究指定校

長岡京市立長岡中学校

本日は10人という大所帯で参加しました。たくさんの報告を聞き、自分たちにできるのか不安にもなりましたが、チーム一丸となって成果を出したい。グループディスカッションも非常に参考になりました。

大阪初芝学園はつしば学園小学校

これから2年、今日の発表に負けないように頑張っていきたい。本校は私学ですが地域との結びつきが強く、ICTの活用を通じて地域への還元や、地域との交流ができればと考えております。

北海道教育大学附属函館中学校

先生方と子どもたち両方にとって、いい研究でなければならないということ。そして、きちんとデータを取って成果を出し、ほかの方々の参考にならなければならないということを強く感じました。

川崎市立川崎高等学校附属中学校

本日は貴重なお話をありがとうございました。先生方の言葉から、質的・量的データを提示し、それを活かさなければ「研究」とは呼べないのだということを改めて思いました。

愛知県立みあい特別支援学校

本日の成果報告会は非常に勉強になり、身の引き締まる思いがしました。本校は今年度、ペッパーを使った研究に取り組んでいます。2年後の発表では、本日報告された皆さんに負けない成果をあげられるように頑張ります。