2022年度(第48回) 助成金贈呈式・スタートアップセミナー

2022年度(第48回) 実践研究助成
助成金贈呈式・
スタートアップセミナー

開催日 2022年5月27日(金)
オンライン開催
オンライン集合写真

2022年5月27日、2022年度(第48回)実践研究助成 助成金贈呈式を行いました。コロナ禍の折、3年連続のオンラインでの開催となりました。この日は、助成先や専門委員の先生方にはZoomで、ご来賓の皆様や財団関係者の方々にはYouTubeのライブ配信でご視聴いただきました。今年度は特別研究指定校4件と一般助成72件が助成を受けられます。

第1部の助成金贈呈式では、主催者挨拶、文部科学省ご祝辞、選考講評、助成先代表抱負に続いて、前年度の「研究成果報告書」優秀賞3校が実践事例を発表しました。

第2部のスタートアップセミナーでは、専門委員と助成先の先生方が14のグループに分かれ、グループディスカッションを行いました。並行して、オンラインサポートを希望する一般助成18校はキックオフミーティングを実施しました。

第1部 助成金贈呈式

主催者挨拶

写真:小野理事長

「GIGAスクール構想」の実現が問われる
2022年度は大きな節目の年

パナソニック教育財団 理事長 小野 元之

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新型コロナがなかなか収束に至らず、大変厳しい状況が続く中、本日は多くの皆様にご参加いただき、誠にありがとうございます。2022年度は特別研究指定校が4件、一般助成が72件、合わせて76件への助成が決まり、これまでの助成件数はのべ3,346件となりました。

この2022年度は大変大きな節目になると、私どもは考えております。2020年度の小学校から始まった新しい学習指導要領が高等学校でもスタートし、コロナ禍と共に動いている「GIGAスクール構想」も実を挙げていく段階に入っています。

従来、財団の助成事業はICTの利活用を進めるために、ハード面での整備が強かった部分もありますが、これからは目の前にあるICTをいかに活用していくか、「GIGAスクール構想」を具体的にどう実現していくかが重要になってくるのではないかと感じています。財団としても、こうしたニーズの変化に的確にお応えできる活動を推進していきたいと考えています。

文部科学大臣 末松 信介 様よりご祝辞

写真:山田哲也氏

社会が劇的に変わり、予測困難な時代にこそ必要な
ICTを活用し、未来を切り拓く人材の育成

文部科学省 初等中等教育局
修学支援・教材課 課長
山田 哲也 氏(代読)

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文部科学省 末松 信介 大臣の祝辞を代読します。

このたび助成を受けられる76の学校及び研究グループの皆様、おめでとうございます。本取り組みに関わられている皆様、日頃より教育の情報化の推進に多大なるご尽力をいただき、厚く御礼申し上げます。

IoTですべての人とモノがつながり、知識や情報が共有され、新たな価値が生み出されるソサエティ5.0時代が到来し、社会の在り方が劇的に変わり、予測困難な時代を迎えている現代において、ICTを活用し、社会のイノベーションを通じて未来を切り拓く、創造性に富んだ人材の育成は重要な課題となっています。

文部科学省では「GIGAスクール構想」の実現として、児童生徒1人1台端末の整備等に必要な予算を計上し、概ね全国の小中学校で本格的な活用が始まっています。次に必要なのは、学校でのICTを活用した優れた実践の蓄積と共有です。皆様方にはぜひ先導者として、その成果を発信・共有していただきたいと思います。文部科学省としても、すべての子どもたちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びの実現を目指し、ハード・ソフトの両面で「GIGAスクール構想」に取り組んでまいります。

選考講評

写真:赤堀侃司氏

STEAM教育やSDGs、データサイエンスなど
より深くなった研究課題のキーワード

東京工業大学 名誉教授/選考委員長 赤堀 侃司 氏

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今回の応募数は一般助成が261件、特別研究指定校が21件の合計282件で、前年比105%となっています。49人の専門委員の先生方が審査した申請書を、私も含めた5人の選考委員がさらに厳正に選考します。選考項目に基づいた、きめ細やかな審査を行った結果、一般助成72件、特別研究指定校4件の合計76件が助成先として選ばれました。倍率は3.7倍と極めて高く、助成先の皆様には誇りをもっていただきたいと思います。

申請書を見ると、キーワードもより深くなっています。日本の教育課程ではまだまだと思われるSTEAM教育やSDGs、データサイエンス、そして3DプリンタやVR、ARなど、最近のトレンドを採り入れたものも数多く見られます。助成先の皆様はぜひパイオニアとして、一歩進んだ研究課題に取り組み、その成果を他の学校や社会に発信し、地域や近隣の学校に広げてください。そうすることが、日本の学校全体の底上げにつながるのではないかと思っています。ご関係者の皆様には、引き続きのご支援とご協力をお願いいたします。

助成先代表抱負

写真:佐々木雅哉先生

知識技能に光を当て、国語の学力の底上げを図る

【特別研究指定校】
札幌市立星置東小学校
佐々木 雅哉 先生

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今回の研究テーマは、「思考し自らの課題を解決する『文字学習』から掘り起こす国語の力」です。先行研究が多くなく、あまり注目されない分野です。文字・漢字・書写などの国語の知識技能は画一的な指導に陥りがちな領域で、ここに光を当て、ICTの力を借りながら、効果的で豊かな文字の学習をすることで、国語の学力の底上げを図れるのではないかと考えました。この2年間、多くの視点からのご教授をいただければ幸いです。

写真:赤池夏樹生

地域と連携し、加計呂麻島の特色を活かす

【一般助成校】
鹿児島県大島郡瀬戸内町立諸鈍小中学校
赤池 夏樹 先生

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本校は奄美大島の加計呂麻島にある小規模の小中併設校です。地理的な制約にとらわれることなく、ICTを活用し、児童生徒の教育活動や職員研修、地域と連携した行事等への参画に取り組むことが研究の目標です。地域の方々に、本校の取り組みや児童生徒の学習成果を効果的にお伝えし、さらに、伝統芸能の様子を映像で記録・保管・共有できればと考えています。加計呂麻島の特色を活かした教育活動を目指して取り組んでまいります。

パネルディスカッション 
―前年度の「研究成果報告書」優秀賞3校による事例発表-

<コーディネーター>

東京学芸大学 教授      北澤 武 氏

<コメンテーター>

信州大学 准教授       佐藤 和紀 氏

帝京大学 准教授       水内 豊和 氏

<発表校>

浜松市立雄踏小学校      菊地 寛 先生
(現・浜松市立浅間小学校)

京都橘中学校・高等学校    長谷川 卓也 先生

神奈川県立相模原中央支援学校 向田 昌樹 先生

前年度の「研究成果報告書」の中から優秀な研究実践として表彰された11件(優秀賞6件・奨励賞5件)を代表して、3校に実践事例を発表していただきました。その後、専門委員の先生方からコメントをいただき、最後に質疑応答の時間を設けました。


写真:北澤武氏

研究成果報告書を評価する5つの観点

東京学芸大学 教授 北澤 武 氏

研究成果報告書の評価について、ご説明します。今回は「①研究内容・活動の創意工夫、②研究成果の説得性、③研究内容の適用可能性、④実践の批判的検討、⑤表現の工夫」という5つの観点で評価し、優秀賞6件、奨励賞5件を選ばせていただきました。

優秀賞は、根拠となるデータがあり、評価がなされ、研究成果報告書として参考になるまとめ方となっていて、社会的に有意義で優れた実践例として評価される研究が選ばれました。そして奨励賞は、いくつかの観点で特に秀でた工夫が認められた研究が選ばれました。本日は優秀賞6件の中から、3校の先生にご発表いただきます。


写真:菊地寛先生

STEAM教育を念頭に置いた、ものづくりを通して
情報活用能力を育成し、問題解決能力を考察

浜松市立雄踏小学校 菊地 寛 先生(現・浜松市立浅間小学校)

研究成果報告書

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本校は3年間、プログラミング教育の実践研究を行ってきました。その中で、教科横断的に情報活用能力を育成するには、ものづくりが有意義なのではないかとの知見を得ました。そこで6年生を対象とし、STEAM教育に取り組むことにより、問題解決において児童がどのように変容するかを明らかにすることにしました。研究の内容は以下の3つです。

①問題解決学習において、発達段階に合わせた付けたい力を設定する。

②STEAM教育を念頭に置いた、ものづくりを中核としたカリキュラム・マネジメントを行う。

③付けたい力をはっきりさせて、学習評価を行う。

「雄踏未来プロジェクト」と題して、総合的な学習の時間を中心に、理科や算数科、家庭科においても情報活用能力を育成する単元構想を立てました。たとえばあるチームはScratchを使って、町の観光を盛り上げるデジタルマップをプログラミングで作成。情報活用能力を育成するために、各チームには必要な情報をGoogle Classroomで提供しました。

成果としては、児童に付けたい力を教師が設定し、STEAM教育を念頭に置いたカリキュラムをつくれるようになりました。学習評価については、質問紙調査の結果、児童が複数の情報を収集し、友達と対話しながら、追究活動を行えるようになったことがわかりました。

●佐藤 和紀 氏のコメント

本校の特徴は次の3点に現れていると思います。

「①研究内容・活動の創意工夫」

カリキュラム・マネジメントがきちんとなされていて、ものづくりという考え方を中心にプログラミング教育を実施しています。

「②研究内容の適用可能性」

報告書にも実践が明確かつ具体的に記述されていて、他の学校にも大変参考になるところが高く評価されたのだと思います。

「③実践の批判的検討」

「情報活用の実践力尺度」や「探求的な学習による資質・能力」を測る質問紙調査を学習の前後に計画的に実施し、実態を踏まえて、子どもたちの学びを考察しています。


写真:長谷川卓也先生

プログラミングによるAR開発に伴う
関心意欲の高まりと学習効果を明らかに

京都橘中学校・高等学校 長谷川 卓也 先生

研究成果報告書

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昨今のARの普及や新学習指導要領における情報Ⅰの必履修科目化、2020年度以降に入学した全生徒がiPadを所持していることを踏まえ、本研究では、プログラミングによるAR開発の実施に伴う関心意欲や学習効果、課題を明らかにすることにしました。

まずはロボットプログラミング部の活動で、本校のゆるキャラ「たちばにゃん」と記念撮影できるARアプリを開発し、文化祭で発表。生徒や教員などが100枚以上を撮影しました。生徒の感想からは興味関心が感じられましたが、開発したアプリを生徒のiPadにインストールできず、ARアプリから、ブラウザで利用できるWebARの開発へと転換しました。

続く高校1年生の授業では、クラスごとに水族館や動物園などのAR展示会を企画し、一人ひとりが3DCGのコンテンツと、それを表示させるWebページをつくりました。コロナ禍の影響で、私がプログラミングの見本を示す形になったのは残念でしたが、生徒の振り返りからは、過去に行った数独パズルのプログラミングより興味関心の高さがうかがえました。

京都府私立中学高等学校情報科研究会に評価してもらったところ、AR開発は情報デザインやプログラミング、問題解決など、複数の単元を横断した学習効果をもたらすという評価の一方で、生徒が意義や目的を見失わない指導の在り方が課題として挙げられました。

●北澤 武 氏のコメント

本校の特徴として、3つの観点を挙げたいと思います。

「①研究内容・活動の創意工夫」

ARのプログラム開発や、今年度から始まった高等学校の情報Ⅰに着目した点にオリジナリティを感じます。

「②研究成果の説得性」

過去に実施した数独パズルのプログラミングより生徒の活動意欲が高いことを、数値データに基づいて明らかにした点が高く評価できます。

「③実践の批判的検討」

実践の課題と改善策が具体的に記載され、プログラミング教育の視点からも参考になります。


写真:向田昌樹先生

音声で操作できるAIスピーカーを活用し
学習や日常生活の課題を解決できるか検証

神奈川県立相模原中央支援学校 向田 昌樹 先生

研究成果報告書

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本校には4部門・4学部があり、車椅子を使用する生徒が多い肢体不自由教育部門には、知的な遅れは軽度でも手指の動きに困難さがあったり、移動に制限があったりする生徒が複数名います。そこで、音声で操作できるAIスピーカー「Amazon Echo Show8(以下アレクサ)」を活用することで、学習や日常生活の課題を解決できるか検証することにしました。

肢体不自由教育部門高等部1年の生徒は、日常的な会話はできますが、話す声が小さく、返答に時間がかかったり、話に意識が向いていなかったりすることがありました。そこで、朝の会で係活動として担当している天気の発表に、アレクサを活用しました。

その結果、アレクサから今日の天気を集中して聞き取ろうとし、その内容を正確に、聞き取りやすい声で発表できるようになりました。取り組み当初の9月初旬は発表に62秒かかっていたのが、1月下旬には26秒で発表できるようになりました。アレクサを日常的に活用するようにもなり、調べ物や余暇のツールとして活用の幅が広がりました。

音声のみで活用できる楽しさや、伝わったという達成感を味わうことで、話すことに自信がもてるようになったのではないかと考えています。アレクサを使って、友達や教員と関わる研究についても検討したいと思います。一方で、課題によっては教員の言葉かけが必要で、生徒に寄り添ったサポートがあってこそ成り立つことも多いと感じました。

●水内 豊和 氏のコメント

特別支援教育の分野では、ICTは昔から学習や生活に不可欠なツールとして活用されてきましたが、ただ端末があればいいわけではなく、それぞれの子どもの興味関心や支援ニーズ、認知や運動面の状態などとの適合が非常に重要です。

本校は、対象生徒の心理検査や発達検査、身体面の状態の把握も丁寧に行っていますし、AIスピーカーである必然性も感じられました。学習場面での活用と教育的成果の客観的・定量的な評価を行った上で、生活や家庭の中にも導入しています。何よりも、生徒にとってのAIスピーカーのある生活の有用感が、多角的に報告されている点が高く評価できます。


●全体ディスカッション

質問「今回の研究に学校全体で取り組むために、どのような工夫をしましたか?」

菊地 先生「校内研修を年3回、計画的に行いました。あとは6年生の実践の際にGoogleのスプレッドシートを使って、先生方が何をしたか書き込んでもらい、私がコメントをすることで、どこで何をしているか、どんな力をつければいいか、共有できるようにしました」

長谷川 先生「この取り組みをオープンキャンパスとつなげて広報部と連携したり、文化祭とつなげて生徒指導部と連携したり。いろいろな部の職員と立ち話の中で、『こういうことをやりますよ』と日常的に話しながら進めたことで、学校全体に広まったのだと思います」

向田 先生「本校ではプロジェクトチームを立ち上げて、AIスピーカーと視線入力の先行研究と推進を進めてきました。さらに、実践事例をHPに掲載することで保護者に発信したり、プロジェクトチームのマスコットキャラクターを生徒に依頼したりすることで、学校全体の取り組みとしていきました」

第2部 スタートアップセミナー

パナソニックの学校向けの支援プログラム紹介

人材育成(学び支援)として提供している3つのプログラム

パナソニックオペレーショナルエクセレンス株式会社
企業市民活動推進部 無電化・学び支援ユニット
多田 直之,澤田 亜矢

パナソニックは、貧困の解消・環境活動・人材育成(学び支援)という3つの重点テーマで企業市民活動に取り組んでいます。人材育成(学び支援)では、3つのプログラムを用意しています。

「Kid Witness News」は小中高の児童生徒を対象に、映像制作を通じて創造性やコミュニケーション能力を高め、チームワークを育むプログラムで、撮影機材の無償提供や撮影手順のレクチャーもしています。最優秀作品はグローバルなサミットにもご参加いただけます。「パナソニックキッズスクール」では、小中の児童生徒が自ら学べるコンテンツをサイト上に用意しています。SDGsや台風、地球などについて興味深く学べる内容となっています。「私の行き方発見プログラム」は中学生を対象に、多種多様な役割をもって働くことや、自分らしい“行き方”を考えてもらうキャリア教育プログラムで、50分のデジタル教材を4つ提供しています。さらに、パナソニックの社員によるオンラインでの出前授業も行っています。詳しくは、企業市民活動のホームページをご覧ください。

Kid Witness News(対象:小中高の児童・生徒)

パナソニック キッズスクール(WEBサイト)(対象:小中の児童・生徒)

私の行き方発見プログラム(対象:中学生の生徒)


探求学習にも活用できるパナソニックセンター

パナソニックオペレーショナルエクセレンス株式会社
パナソニックセンター東京
高沢 佳代子

パナソニックセンター東京は東京・有明にある、グローバルな総合情報受発信拠点です。1階はソーシャル・コミュニケーションフロアとして、イベントスペースのほか、当社の環境やリサイクルの取り組み、SDGsなどについて展示したスペースがあります。2・3階のAkeruEでは創造的な学びやSDGs、STEAM教育をテーマとした探求学習を提供しています。クリエイターによるアート作品と原理展示、自分のひらめきを形にするモノづくり体験、動画制作体験などのエリアもあります。

当施設はパナソニックの「物をつくる前に人をつくる会社」という企業理念のもと、次世代育成支援として運営しています。修学旅行や校外学習などの訪問先として、ぜひご活用ください。自由見学の基本プログラムと、オプションプログラムをご用意しています。詳しくはホームページをご覧ください。

学校・教育団体向けご見学内容

AkeruE アケルエ

パナソニックセンター東京


●財団からのご案内

パナソニック教育財団 事務局長 関戸 康友

助成先へのサポート策や、お役立ち情報をいくつかご案内します。

(1)「プレゼンテーションコンクール2022」では、小中の児童生徒に3分間のプレゼンテーション映像をつくっていただき、ICTを活用した学びの成果発表の場としてもご活用いただいています。

(2)「オンラインセミナー『極意講座』」は、学校現場のミドルリーダーを対象としたオンラインセミナーです。タイムリーなテーマを取り上げ、助成先の皆様にも視聴参加いただけます。

(3)「一般助成校オンラインサポート」には、今年は18校が参加します。6人のサポーターの先生方が、2カ月に1度のレポートやチーム単位のオンラインミーティングなどを通して、各学校の助成をお手伝いします。

(4)2022年度成果報告会は、8月4・5日に関西教育ICT展と併催する形で行われ、特別研究指定校2校が事例を発表します。

プレゼンテーションコンクール

オンラインセミナー『極意講座』

グループディスカッション

グループディスカッションは昨年に続いて、Zoomミーティングのブレイクアウトルーム機能を利用して行われました。特別研究指定校1グループと一般助成13グループの14グループに分かれ、助成先の先生方が研究概要を発表。それぞれのグループには専門委員の先生方にも加わっていただき、研究の内容をさらにブラッシュアップするための意見交換を行いました。その中から、特別研究指定校グループの意見交換の様子をご紹介します。


写真:岡島啓太先生

ICTを活用した「文字学習」の指導方法を確立

札幌市立星置東小学校 岡島 啓太 先生

★研究課題と取り組み内容はこちら

教師主導になりがちな文字指導にICTを活用することで、言葉に興味をもってもらい、国語科の学力や資質・能力の底上げにつなげることが研究の目的です。自信をもって自己表現するには、語彙を増やし、表現力やコミュニケーション能力の向上を図ることが必須だからです。そのために、国語科の知識及び技能領域を柱とした指導力の向上を目指します。

1年次には、これまでの実践から、文字指導の指導過程やICT機器の使用状況を洗い出し、課題を整理し、本校独自の文字学習指導法「ホシオキスタイル」を確立するためのパイロット版をつくり、来年の2年次につなげたいと思います。言葉・漢字・書写の3つのグループに分ける予定です。今年は全校研(校内研究会)を2回実施し、2年次には公開研究会を開催します。さらに、北海道書写書道教育研究大会においても、研究成果を発表する予定です。

●横浜国立大学 野中 陽一 氏のコメント

今まで紙ベースだったものをICTへ移行する際に、どんなツールを使って、どういう方法で行うのか考えることが、最初の段階で必要だと感じました。国語科の学力の向上につなげると言っている一方で、知識技能とかコミュニケーション能力とか、広範囲な表現になっているので、1年目と2年目で分けて、最初は基本的なところに焦点を当てて評価し、そこから高次な学力につなげるといったステップがあったほうがいいと思います。


写真:吉田崇先生,赤木隆宏先生

「人間道徳」の探求を通して、個性化教育カリキュラムを開発

国立大学法人香川大学教育学部附属高松中学校 吉田 崇 先生,赤木 隆宏 先生

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本校は、特別の教科 道徳と総合的な学習の時間の性質を併せもつ「人間道徳」という領域をつくり、カリキュラム研究を進めています。これまで、生徒が主体的に協働で問題解決を行う探求活動はできていましたが、生徒一人ひとりの個の力が伸ばしきれておらず、今年度は、ICT環境を活用した個性化教育の研究を進めていきたいと考えています。

「人間道徳」の中で出合った気づきや疑問をもとに、子どもたち一人ひとりが課題を設定。インターネット検索や現地調査、インタビュー、アンケートなどを通して探求し、2カ月に1度はゼミを開催して、そこで教師や大学生、地域の人とオンラインで意見交換します。最後の発表会では探求の成果をプレゼンし、パソコンに蓄積した学習の足跡を振り返ることで、よりよい学びを追究できる人間に成長するのではないかと期待しています。毎週水曜日に校内研修会を行い、11月に公開研究会を予定しています。

●関西大学 小柳 和喜雄 氏のコメント

今回の研究は自由研究にも近づいていくような気がしていて、そうなると研究計画書を書くことが重要になってきます。計画書の枠組みに沿って進めると研究が浅くならず、みんなで論議を積み上げて、内容を豊かにしていくことができます。2年間あるので、ポートフォリオをエビデンスとしながらも、子どもたちの個性化教育を行うためには、どんな研究計画書をつくれば意味のあるものになるのか、考えながら進めるといいと思います。

●日本女子大学 吉崎 静夫 氏のコメント

私は、OECDのEducation2030プロジェクトの「エージェンシー」という概念はとても大事なものだと考えています。世界が変化する中で目標を決め、計画を立て、振り返りながら主体的に進んでいく。この時に必要なものが3つあって、1つは、変化に対しても臆病にならずに進むチャレンジ精神。もう1つは、子ども自身が自分の学習をどう可視化し、振り返れるかというリフレクション。そして最後がレジリエンス(回復する力)です。本校の場合も個性化教育を通じて、どんな資質・能力を育てたいのか、ぜひ模索してほしいと思います。


写真:綿田奈月先生

産業高校の4分野が特技を活かし、地元チームの集客を考える

東京都立八王子桑志高等学校 綿田 奈月 先生

★研究課題と取り組み内容はこちら

本校は産業科の高等学校で、デザイン・クラフト・システム・ビジネスという4分野に分かれています。自分らしい生き方を主体的に判断・実行できる「未来の産業人」を育てるために、モノづくりから流通まで複合的に教えています。来年度からは、産業イノベーションという新科目を設置する予定です。

今年度の1年生から導入した1人1台端末を活かして、4分野が協力し、地域貢献として、地元プロバスケットボールチームの集客の提案や販促ツールの試作を行うことにしました。チームからの提案で、試合会場で配布するプログラムの作成やチームの動画の撮影・編集などの案が浮上しています。7月には選手を招いて、プロジェクトの立ち上げ式を行います。校内研究会は定期的に開催し、年度末には公開研究会を開催する予定です。

●北海道教育大学 姫野 完治 氏のコメント

子どもたちが未来の社会をどう考えるかということを抜きにして、産業イノベーションはできないと思います。今の形でも、子どもたちは興味をもってプロジェクトに取り組むと思いますが、そこから先の未来の社会をどう創造するのか、産業イノベーションにどうつなげていくのか、4分野の先生が集まってカリキュラム・マネジメントをしておかないと、いろいろな人と組んで、ただ3年間のプロジェクトを終えるだけではもったいない気がします。

●明治大学 岸 磨貴子 氏のコメント

1年生の時に下準備として、自分には何ができるのか、自分の強みは何なのかを明らかにして、これができるというツールを手にしてから、2年生になって、4分野合同の産業イノベーションのプロジェクトに参画するというプロセスが、教育的にも実践的にも面白いと思いました。地域のチームとつながったり、分かれていたクラスがつながったり。つながる必然性をつくるプロジェクトを通して、生徒の意識がどう広がっていくのか楽しみです。


当日校内行事のため欠席となった、国立大学法人神戸大学附属小学校の

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オンラインサポートキックオフミーティング

今回も、グループディスカッションと並行する形で、「オンラインサポート」キックオフミーティングを実施しました。「オンラインサポート」は、希望する一般助成校を対象とした実践研究活動の支援策として4年目の取り組みとなります。

助成先が日々の実践研究活動を推進する上で出てくる課題や疑問などについて、サポーターを務める専門委員がオンラインコミュニケーションツールを活用してアドバイスしたり、あるいは他の助成先も交えての協議などを行うことで、より良い実践と研究成果を上げることを目指す取り組みです。

サポーターと助成先のやり取りにはSlackやZoom、Googleドライブなどのデジタルツールを活用し、学校間でも自由に情報交換できます。

本年度は、昨年に引き続きご指導をいただく6名の専門委員と18校の学校により「オンラインサポート」が推進されています。

<サポーター>(五十音順)

  • 木原 俊行 氏(大阪教育大学 教授)
    サブリーダー
  • 今野 貴之 氏(明星大学 准教授)
  • 中橋 雄 氏(日本大学 教授)
  • 長谷川 元洋 氏(金城学院大学 教授)
    リーダー
  • 水内 豊和 氏(帝京大学 准教授)
  • 山本 朋弘 氏(中村学園大学 教授)