札幌市立星置東小学校

第48回特別研究指定校

研究課題

思考し自らの課題を解決する「文字学習」から掘り起こす国語の力
~文字の指導[知識・技能]の領域に、ICTをいかに活用していくべきか~

2022年度01-03月期(最新活動報告)

最新活動報告
各学年で行った授業実践の成果と課題を集約し、そこから来年度に全校で......

アドバイザーコメント

姫野 完治 先生
特別研究指定校として活動を開始してから半年が経過し......

札幌市立星置東小学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 北海道 札幌市立星置東小学校
アドバイザー 姫野 完治 北海道教育大学 教授
研究テーマ 思考し自らの課題を解決する「文字学習」から掘り起こす国語の力
~文字の指導[知識・技能]の領域に、ICTをいかに活用していくべきか~
目的
  1. 1.教師主導になりがちな文字指導の領域にICTを利活用し、「思考する文字の学習」を実現することで、国語科の学力、資質・能力を底上げすること。
  2. 2.言葉への興味、活用できる語彙を増加させていくとともに、言葉の豊かさに目を向けていく学習を構築すること、またそのための指導力を身に付けること。
現状と課題 これまでほとんど手つかずの領域であることから、児童の変容をどう考え、成果をどう測るかについてアドバイザーの助言を得て再構成し固めてからスタートしているところ。またこの研究推進の過程を、全職員で共通理解することが当面の課題。
学校情報化の現状 市の配備計画に基づいた整備(一人一台端末や各教室の wi-fi 環境等)が完了している。今後はこれらをどう活用していくかが問われるという認識で一致している一方、限られた学校予算でこれら多くのICT機器を維持・保守・更新をしていけるのかが不安である。教育活動に欠かせない他の消耗品に、手が回らなくならないか。
取り組み内容
  1. 1.1年次は、これまでの実践から、文字指導の指導過程やICT機器の使用状況を洗い出して課題を整理する。アドバイザーや民間教育団体等からの教示を得て、今後の研究計画を再構成していくための素材を多く抽出していく。
  2. 2.文字学習の汎用的指導方法「ホシオキスタイル」の完成に向け、試行、実践、精査、課題抽出等を重ねてパイロット版をつくり、2年次につなげる。
成果目標
  • ・子ども達に文字・漢字を正しく整えて書く力を付け、獲得する語彙の数を増やす。それにより、自己を表現する自信につなげ、表現力、コミュニケーション能力を向上させることで国語科の学力を示す指標を上げる。
  • ・画一的、受動的だった文字指導、文字の学習から脱却し、ICTを最大限活用した効果的な学習を創造していける授業構築の眼を養うなど、国語科の[知識及び技能]領域を柱とした指導力の向上。
助成金の使途 授業記録・教材提示用ビデオカメラ、移動用大画面モニター、移動用書画カメラ、共同研究者謝金、北海道書写書道教育研究大会(帯広大会)参加旅費、成果報告集(スタディレポート)印刷・製本他
研究代表者 佐々木 雅哉
研究指定期間 2022年度~2023年度
学校HP https://www.hoshiokihigashi-e.sapporo-c.ed.jp
公開研究会の予定 2年次に公開研究会を開催。また、北海道書写書道教育研究大会において、本研究について発表予定。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

●「ホシオキスタイル」のイメージを固めなければ!

・重点は…文字や漢字、言葉、書写などにかかわるカリキュラムの見直し→教科間、学年間の学習のつながりを明らかにし、国語科の学習に限定することなく学びを広げていくことができるように。

…ルーブリックを活用したデータの蓄積→年間を通じてルーブリックを活用し、データを蓄積する。また、保護者、児童の実態を分析することで、学習への意欲の変化(我々の取組と照らして)を見ていく。

…ICTの活用。効率化、最適化のために。目標、目的に合った機器、アプリの選択→アプリの開発ではなく、既存のものから使えそうなもので試行。

…課題設定と協働的な学びを。→子どもたちが主体的に学びに向かい、その活動を通して力を付けることができるような課題設定を工夫する。自分と他者の考えを比較したり、共有したりする場面を適切に設けることで、学びが深まっていくと考える。協働的な学習を通して、児童自身が思考しながら知識、技能を獲得していくことを目指す。ICT活用と関連。

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ●ひとまず、今後進めることについては整理できたのかと思います。先生方に実践してもらうことは決まっていますので、それと並行して、まずはカリキュラムマップづくりになるのでしょうか。これが決まると、全体がはっきりしてくるのでは。
  • ●ルーブリックとありますが、私のイメージでは、「自己調整学習」の方が合っているかも。ルーブリックは、あくまでも教師側が設定する基準。それに併せて子どもが自己評価し、その変容過程を子ども自身がメタ認知して、次の課題を創り出そうっていうことですね。これについては、勉強会などするといいかも。

→研究部での侃々諤々

本期間の裏話

  • ●アドバイザーの姫野先生には、微に入り細かく相談させていただいています。迷いながら進んでいる我らに、明確な羅針盤を与えてくださっています。そんな姫野先生から嬉しいメールの一言が。
    「…さっそく研究部で検討されていたとのこと、さすが若い先生方のパワーは素晴らしいですね…」
    我々のモチベーションはますます上がりました。

本期間の成果

  • ●ICTの活用が、より積極的に。何より子どもたちは何の抵抗もなく。
  • ●抵抗がある、どころか、使いやすいように自分なりにカスタマイズを。
  • ●「ことば」を大切にするとは何かが、学習を重ねる度になんとなくわかってきた。子どもたちにも、先生方にも。

→言葉の学習へのICTの刺さり方。教師が考えるより、子どもたちは親和させている。

今後の課題

  • ●研究内容をさらに絞ろう。ゴールをクリアにしていこう。
  • ●その上で、地道に実践していこう。
  • ●使えそうなアプリを探っていこう。

今後の計画

【1年目=今年度】

[研究部として]

  • ・学びの地図(カリキュラムマップ)の作成
  • ・さらなるICTの活用
  • ・アンケート分析
  • ・ホシオキスタイル(全体像)の共有
  • ・全校研、実践研究発表会に向けて

[教職員]

  • ・作成したマップによる授業構築
  • ・ルーブリックの活用

気付き・学び

  • ●研究内容を絞っていくほど、実践をやりやすくなる。
  • ●教員の数が集まれば集まるほど、文殊の知恵となる。本校は、それに最適な学校の規模と、先生方の勢いがある。

成果目標

  • ・子どもたちに文字・漢字を正しく整えて書く力を付け、獲得する語彙の数を増やしたい。
  • ・画一的、受動的だった文字指導、文字の学習から脱却し、ICTを最大限に活用した効果的な学習を創造していける授業構築の眼を養い、指導力を向上させる。
アドバイザーコメント
姫野 完治 先生
北海道教育大学
教授 姫野 完治 先生

 札幌市立星置東小学校は、児童数730名、学級数25学級、教職員数40名の、札幌市内では比較的規模の大きな小学校で、今回初めてパナソニック教育財団による特別研究指定校に採択された。

 国語科における漢字の定着や活用できる語彙の不足に対して問題意識を持ち、文字や漢字を自分のものとして自由に操り表現し、語彙として活動できる子どもを育てたいと考え、そこにICTを利活用できないかと2年間の研究計画を立てている。文字の定着というと、ともするとICTを活用したドリル学習に偏りがちになるところを、そうではなく「思考し自らの課題を解決する」ことに重点を置いているところに星置東小学校の独自性がある。

 4月の打ち合わせ、7月11日の授業公開を参観すると、子どもたちは日常的にタブレットを教育活動に使い、特に抵抗なく使用できている。ここに、どのような形で本研究の取組みを組み込めるかが、今後の研究を進める上でカギになる。2年目に提案予定のホシオキスタイルを明確にすることは今後の課題と言えるが、そこに向けて、すでにカリキュラム・マップや自己評価表の作成に取り組み始めていることは、今後の研究を進める上で基盤となると考える。若手教師が揃う研究部と、それをまとめる管理職が一緒になって研究を進めている様子から、これからのさらなる研究推進が期待される。

 特別研究指定校の場合、2年間という中長期で研究を進められる良さがある。当初の計画を基盤としつつ、新しいことにもぜひチャレンジして、他校でも生かせる学びのモデルが作成されることを期待したい。

本期間(8月~12月)の取り組み内容

  • ・3つのグループ(言葉、漢字、書写)に分かれて授業づくりを行い全学年が授業実践を行った。学習の目標とする知識・技能を身に付けるための手立てとして、ICTだからこそできること(ICTの特性)をどのように活用していくべきか授業検討を重ねてきた。
  • ・3年生(書写グループ)、4年生(漢字グループ)はパナソニック教育財団、アドバイザーの姫野先生を招いて全校研を行った。
  • ・全校研後、今後の方向性、来年度に向けて整えていきたいと考えているカリキュラム・マネジメントの方向性、自己調整学習につながるルーブリックの質問項目を中心にご助言をいただいた。

→ ICTの特性を見極めながらの書写学習(書写グループ)

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ・どの授業もICTのよさを生かした授業になっていた。
  • ・授業後の検討が活発に行われる教職員の雰囲気が素晴らしい。
  • ・自己調整学習を進めていくためには、今までの学びを蓄積しておき子どもたちがいつでもそれをふりかえることができるような仕組みを作っておくのも方法の一つである。
  • ・カリキュラム・マネジメントの形式を見直したほうがよい。文字学習を通して本研究で目指す目標を明確にし、それに焦点を当てていくと目標の系統性、6年間のつながりが分かりやすくなる。

本期間の裏話

  • ・どの学年も初めての研究内容に試行錯誤しながら、授業づくりを進めている。「なぜそこをデジタルで行うのか、アナログではだめか」子どもにとってプラスになる活用方法を模索した。
  • ・カリキュラム・マネジメントの整備に苦労した。一度整えたが、研究内容に沿わず、何度か作り直している。姫野先生からアドバイスをもらった後、作り直すとメールに「ばっちり」の言葉があった。研究部の皆、とても喜ぶ。

本期間の成果

  • ・ICTの効果的な活用の仕方について、授業づくり、授業実践、全校研を通して教職員全体で知識を深め、共有することができた。
  • ・カリキュラム・マネジメントなど、今後の研究の方向性を確認することができた。

→ 研究部のまとめ/成果まとめと今後の方針

今後の課題

  • ・文字学習で目指す目標を明確化、子どもの姿とつなげるための方法を考察
  • ・教育課題に沿った(本研究の趣旨に則った)カリキュラム・マネジメントの整備をいかにしていくか

今後の計画

  • ・今年度の実践から成果と課題を出し、ホシオキスタイルにつながる学習方法、ICTの活用方法の提案
  • ・児童アンケート、保護者アンケートの実施、前回アンケート結果との比較
  • ・教職員アンケートを実施、結果を受けて来年度の研究推進の方法を改善

気付き・学び

  • ・ICTの手立てを有効なものにするためには、これまで同様に実態に合わせた課題の設定や教材化が重要なことを改めて実感

↑ 言葉グループの全校研

成果目標

  • ①本校の独自の文字学習に関するカリキュラム・マネジメントの作成
  • ②目標①を全校で実践することを通して、研究課題の解決、文字学習がめざすところの「ひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字など正しく書くことができる。書く際の原理・原則を理解することができる」「言葉の力をつけることができる(言葉を使いこなす)」児童の育成(子どもの姿で体現?)

●グループ内(言葉・書写・漢字)研修の様子

↑ 漢字グループ

↑ 書写グループ

アドバイザーコメント
姫野 完治 先生
北海道教育大学
教授 姫野 完治 先生

 特別研究指定校として活動を開始してから半年が経過し、若手教師が中心となって運営する研究部を核として、学校全体で実践研究に取り組む様子が垣間見られる。11月に行われた公開研究会では、文字学習にどのようにICTを活用するかについて各学年で検討してきた成果が授業実践として提案された。ICTを活用することにより、子どもが自主的に自己の学びとモデルを比較し、違う方法を試すなど、一斉指導でありながら、個々の子どもが自分の課題に応じた学びを探索する様子が見られた。そこでは、個々の学びのプロセスや特性をふまえたユニバーサルデザイン化された授業が実現されていた。授業後の検討会では、それぞれの授業の目標に向けた検討のみならず、思考し自らの課題を解決する上で、ICTがどのように機能していたのかが、活発に協議された。

 その一方で、研究会後に行われた話し合いの場では、研究部が創造したカリキュラム・マネジメントがコンテンツ・ベースとなっており、せっかくの「思考し自らの課題を解決する力の育成」とうまく接続しておらず、カリキュラムの体系が明確化されていないことがわかった。その点についてアドバイスを行ったところ、研究部の先生方の目の色が変わり、形式的なカリキュラム・マネジメントではなく、真にホシオキスタイルの開発につながるカリキュラム・マネジメントを創造したいと再検討の場がもたれた。しかも、研究部が作成したカリキュラム・マネジメントの枠組みを骨格として、さらに各学年・教科で細部を作り上げていくことになった。2年間の計画の中で、1年目の後半にカリキュラムの基盤が完成したのは、次年度に向けてとても大きい。思考し自らの課題を解決する力を育成するための文字学習の具体的実践が蓄積され、多くの学校のモデルとしてホシオキスタイルが明示化されることを、今後も期待したい。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

  • ・各学年で行った授業実践の成果と課題を集約し、そこから来年度に全校で取り組む活動、学習内容を考えた。
  • ・児童・保護者アンケート(2回目)を実施。実践を通して児童がどのように変容したかを分析した。
  • ・ルーブリックの分析を行い、年間を通して行った実践の効果を調べた。
  • ・「学びのマップ」の原案を作成。
  • ・今年度の学校研究について教職員にアンケートを行い、来年度の研究体制の原案を作成した。

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ・「学びのマップ」について、文字学習に他教科を関連させることが本研究の独自性につながることをアドバイスいただいたため、学びのマップを再構築していくことにした。
  • ・児童、保護者に行うアンケート、授業実践後のルーブリックの実施方法についてアドバイスをいただいたものを来年度に生かす。

本期間の裏話

  • ・姫野先生から、「研究部がいきいきと研究実践していて素晴らしい」とほめていただくことが何よりうれしく励みになっている。
  • ・野のものとも山のものともならず焦っていた「スタイル」が徐々に形になっていくことも、大きな喜び。
  • ・物置のような狭小スペースで侃々諤々とやっている研究部が頼もしい。

研究部の構想跡

本期間の成果

  • ・(ひとことですが)今年度の成果と課題が明らかになり、来年度の方向性が見えてきたこと
  • ・視界がはっきりしてきたこと

今後の課題

  • ・「学びのマップ」完成
  • ・特別研究指定校の2年目として、4月からスムーズに研究をスタートできるように教職員全体でホシオキスタイルを理解、共有し実践できるようにすること
  • ・公開研究会の計画

今後の計画

  • ・3月…来年度の学校研究について職員に提案、共有
  • ・4月…2年目の研究スタート
       年間計画作成
       ホシオキスタイル本格始動

1年間を振り返って、成果・感想・次年度への思い

  • ・文字学習×ICTという未知の世界に飛び込み、研究部、教職員一同で手探りの状態からスタートした1年だった。
  • ・慣れないことも多く、悪戦苦闘していたが、姫野先生からのアドバイスのおかげでここまでやってこれた。
  • ・星置東の子どもたちにとってよりよい学びになるよう教職員が互いにアイデアを出し合いながら授業づくりを行うことができた。
  • ・年間の取組を通じて、子どもたちには「主体的な文字学習」の種をまくことができたのではないかと感じている。
  • ・来年は、ついにホシオキスタイルが本格的に動き出す。子どもの育ちにつながる研究を引き続き行っていく。

漢字グループ

書写グループ

ことばグループ

成果目標

  • ・本校独自の文字学習に関するカリキュラム・マネジメントの作成 「ホシオキスタイル」の全体像を構築
  • ・全校での実践を通して、文字学習が目指すところに向けての児童の育成「正しく書く」、「文字を書くための原理・原則を理解する」、「言葉を使いこなすための素地を体得する」
アドバイザーコメント
姫野 完治 先生
北海道教育大学
教授 姫野 完治 先生

 札幌市立星置東小学校では、国語を始めとする文字学習におけるICT活用を中心的な研究テーマとして位置づけている。採択当初は、申請の中心的な役割を担った校長と、実際に研究を推進する研究部の間で、研究テーマについて認識に若干差があり、どのように進めるか喧々諤々協議を行う場面もあったが、若くやる気のある研究部を中心として、改めて研究の進め方や中心テーマを検討し、具体的な研究活動が推進され始めた。文字学習におけるICT活用というと、ともすると国語の授業、しかも新出漢字の学習のみに限定されてしまうことも想定されるが、星置東小学校では、国語や書写の授業はもとより、他教科との関連も見据えて、カリキュラム・マネジメントの視点で学習を進めようとしている。11月に行われた公開研究会に向けて、研究の主眼となっているホシオキスタイルの原型を構想し、それを授業実践として具現化したことにより、授業後の協議会はとても活発な議論が行われた。3学期に児童と保護者を対象として行ったアンケート調査においても、こういった取組が成果に表れてきている。

 次年度に向けて、研究の主題にもなっている「思考し自らの課題を解決する」を、文字学習の中で実現するための手立てのモデル化が重要になってくると考える。1年目に作り上げたホシオキスタイルをさらに具体化し、教材データやICTを活用した授業づくりを、各学年で推進、蓄積し、その関連を見える化することによって、他校への波及効果にもつながる。そのためにも、2年目を迎えるこの時期に、いかに研究を進める仕組みと仕掛けを構築し、共有するかが重要となる。星置東小学校の研究の原動力である若手研究部を中心として、ますます研究を深め、子どもたちの学びにつながっていくことを期待している。