2025年度(第51回)実践研究助成 一般助成の優秀な研究成果報告書を紹介します。
※実践研究助成の助成校は研究計画に即して実践研究に取り組み、その成果を研究成果報告書にまとめます。当財団では、一般助成校の研究成果報告書の内容等を評価し、優れたものを表彰すると同時に、当該学校の実践の特長等を実践研究助成の専門委員が解説しています。一般助成校による実践研究の成果をより多くの方々に、より分かりやすくお伝えいたします。
2025年度(第51回)実践研究助成 一般助成の優秀な研究成果報告書を紹介します。
※実践研究助成の助成校は研究計画に即して実践研究に取り組み、その成果を研究成果報告書にまとめます。当財団では、一般助成校の研究成果報告書の内容等を評価し、優れたものを表彰すると同時に、当該学校の実践の特長等を実践研究助成の専門委員が解説しています。一般助成校による実践研究の成果をより多くの方々に、より分かりやすくお伝えいたします。
大﨑 理乃 東北大学 准教授
小島亜華里 奈良教育大学 特任准教授
坂井 聡 香川大学 教授
佐藤 和紀 信州大学 准教授
瀬戸崎典夫 長崎大学 准教授
泰山 裕 中京大学 教授
遠山紗矢香 静岡大学 准教授
登本 洋子 東京学芸大学 准教授
水内 豊和 島根県立大学 准教授
三井 一希 山梨大学 准教授
脇本 健弘 横浜国立大学 准教授
(五十音順)
信州大学准教授 佐藤和紀
長崎大学准教授 瀬戸崎典夫
パナソニック教育財団は、これまでに有益な実践事例に助成を行い、その実践知を社会に広く共有することで、ICT活用の推進と教育課題の改善を支援してきました。2025年度、第51回一般助成を受けた学校(以下、一般助成校)は、70件(小学校22件、中学校13件、義務教育学校・小中一貫校3件、高等学校10件、中等教育学校・中高一貫校6件、特別支援学校7件、教育委員会・教育センター0件、複数校の研究者による教育研究グループ9件)でした。この70件分の研究成果報告書を加えますと、合計して3,580件の実践研究の知見が蓄積されたことになります。
昨年度に引き続き、次の5つの観点から研究成果報告書を総合的に評価しました。
評価委員会における審議の結果、「優秀賞」5件、「奨励賞」5件が選出されました。「優秀賞」は、根拠となるデータと評価がなされ、研究成果報告書として参考になるようなまとめ方となっており、社会的に有意義で優れた実践例として評価された研究です。「奨励賞」は、いくつかの観点で特に秀でた工夫が認められた実践研究が選出されました。今回の優秀賞・奨励賞を受賞された各校の実践研究には、生成AIをはじめとするテクノロジーを単なる効率化や利便性のための道具ではなく、子どもや教職員の思考を深め、主体性を引き出すための学習ツールとして位置づけ直そうとする姿勢が共通して見られます。これらの実践は、「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」の基本方針や、次期学習指導要領の改定に向けた個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実、そしてウェルビーイングの視点に立った教育の議論に対しても、重要な示唆を与えています。
【多様な課題へのアプローチ】
各校の実践は、学校現場が直面する様々な課題に取り組んでいます。例えば、重度の障害のある子どもたちの「主体的な学びを引き出すための教師の伴走」、知的障害のある生徒が生成AIを活用して行政資料を読み解き「市議会への提言につなげる社会参画」、英語パラグラフ・ライティングにおける「反復的・即時的・個別最適化フィードバックの仕組みの構築」、生成AIを思考ツールとした「統計的思考力向上のためのデータサイエンス教育」などが提案されています。さらに、特別活動における話合い活動の充実を課題とし、生成AIを個別の思考支援ツールに位置づけ、根拠や具体性を意識しながら意見を深めていく学びを丁寧に構想した実践も注目されました。多言語・多文化な背景を持つ児童の存在を起点とした「学校全体の授業改善と自己肯定感の育成」、地域の実情を踏まえた「米作り体験とプログラミング学習を結び付けた探究」、生成AIを「思考を支えるメンター」として位置付けた「教職員の働きやすさと働きがいの向上」、給食という日常的なテーマを軸とした「学校間・国際交流を通じた地域理解学習」など、具体的な教育課題に対してテクノロジーを活用した解決策を提案しています。
【テクノロジーの効果的な活用】
生成AIは、本年度の受賞実践において多様かつ高度な位置づけのもとで活用されています。教職員研修の場面では、生成AIが「思考を支えるメンター」として位置付けられ、AIに任せる部分と人が担う部分を明確に区別しながら、AIの出力を批判的に捉える姿勢が重視されています。中等教育段階では、生成AIが思考の省略や過度な依存を生まないよう、思考過程を可視化するワークシート、統計的思考を整理するプロンプト教材、学習過程を共有する協同的な学習環境という三つの具体的な手立てとともに用いられ、AIを使う前に自分で考え、その後にAIとの対話を通して視点を広げる学習の流れが構築されています。学級会に向けた準備や振り返りの場面でAIを活用し、生徒が自らの意見を多角的に見直すためのパートナーとして位置づける工夫も見られました。また、大規模言語モデルのAPIを活用して英文に即時的かつ反復的にフィードバックを行う仕組みが開発され、文法訂正という表層的な修正にとどまらず、構成・論理・内容展開・修正方略といった多面的な支援が実現されています。さらに、知的障害のある生徒のために、先輩や地域住民の特性を再現し、生徒の理解や表現を支えるツールとして活用された事例も見られました。
加えて、1人1台端末と電子掲示板を活用した全国7校と台湾を結ぶ継続的なプロジェクト型学習では、デジタルの利便性とアナログの体験価値を融合させ、児童の手描きイラストを3Dプリンタでアクリルキーホルダー化し、QRコードからデジタルスライドへ誘導するなど、学校内の学びを地域社会へ開く独創的な発信手法が開発されています。多言語・多文化な背景を持つ児童の母文化・母語を肯定的に価値づけ、その学びをICTで可視化する取り組みも、児童が自身の強みを自覚し、自信を持って社会と関わるためのツールとしてICTが機能する好例となっています。また、炊飯条件を調整し、結果を踏まえて再度炊飯を試す仮説検証型の実践など、身近な機器を活用したプログラミング的思考の育成も特筆されます。
【学習者中心の学びと個別最適な学びの追求】
多くの実践で、子ども一人ひとりの実態を的確に把握し、潜在的な力を引き出して、その子なりに主体的に学習へ参加できるようにするための工夫が見られます。重度の障害のある子どもについては、教師の役割を「気付きの構築者」「意味づけの読解者」「学びの展開者」として言語化し、子どもが発する微細なサインを「学び」として価値づけ次の展開へと広げる視点が示されました。多言語・多文化な背景を持つ児童については、支援対象としてではなく、学校全体の授業改善の起点として捉え直す視点が提示されています。生成AIとの対話を通じて自らの考えを構成し直すことで、発言に消極的だった生徒が自信を持って挙手する姿が見られるなど、情意面での顕著な変容も確認されています。生成AIによるフィードバックを通じて、生徒の英語ライティングの得点が有意に向上するだけでなく、「自信」の顕著な上昇が確認された事例や、教職員の「働きやすさ」「働きがい」「成長実感」の向上が定量的に確認された事例など、認知面・情意面の両面における成果が示されています。一方で、知的障害のある児童生徒が日常的な意思決定の場面で系統的に積み重ねる必要性についても、批判的な視点からの指摘がなされており、今後の方向性として示唆に富むものとなっています。
【研究・報告書の質の高さと実践への貢献】
これらの実践は、新しい技術や方法を導入するだけでなく、その効果を質問紙調査、統計的思考力テスト、意識調査、記述量の変化、挙手人数、インタビュー、実践記録といった多様な評価手法を用いて多角的かつ客観的に検証しており、研究の質が担保されています。特に、量的なデータによる効果量の提示と、質的なデータによる学びのプロセスの記述を組み合わせる姿勢は、報告書としての信頼性を高めるとともに、他校が実践を参照する際の手がかりにもなっています。また、複数校の教員がひとつの研究組織として連携する取り組みや、小学校と中学校の教員が共に授業をつくることを目的とした「小中Umi合同研修会」の提案、持続可能な運営体制など、実践を支える組織的・社会的な視点も重要な要素となっています。さらに、教員の活用意識を高め、校内実践を学校全体の組織的な取組へと接続しようとする発展性についても高く評価されました。
【今後の展望】
最後に今後の展望として、これらの受賞実践は、生成AI時代における学びの在り方の再構築、教職員の働き方改革と働きがいの両立、多様性を力に変える学校文化の醸成、特別支援教育における自己選択・自己決定や社会参画の支援、地域・国境を越えた学校間連携を通じた「社会に開かれた学び」の具現化など、今後の学校教育が目指すべき方向性に対し、具体的な方法論と重要な示唆を与えています。ツールやプロンプト教材の公開を通じた他校への展開、生成AIを活用した学びの長期的な影響の検証、日常生活における意思決定支援への応用、持続可能な交流プラットフォームのさらなる拡大など、今後の研究や実践の進展が期待されます。これらの受賞実践が、全国の学校現場における教育DXをさらに加速させる一助となることを期待しています。
本実践は、「人×自然×AI」の調和を基軸に、教職員の働きやすさにとどまらず、「働きがい」や教職員の探究的姿勢の向上を目指した点に大きな価値があります。特に、生成AIを単なる業務効率化のツールとしてではなく、「思考を支えるメンター」として位置付け、その活用を校内研修や教職員の「大人の自由研究」に組み込んだ実践は先進的であり、AI活用の新たな方向性を示しています。また、自己認知や自己開示を促す対話的な研修設計により、心理的安全性の高い職場環境の形成を図っている点も注目に値します。
教職員自身が探究者となる実践を通して、AIと対話しながら仮説・検証・省察を行うプロセスを具体的に示しており、教職員の学びの在り方そのものを問い直す内容となっています。さらに、AIに任せる部分と人が担う部分を明確に区別し、AIの出力を批判的に捉える姿勢を重視している点は、生成AI時代において重要な示唆を含んでおり、授業への展開も期待できます。
成果として、質問紙調査による定量的な分析において「働きやすさ」「働きがい」「成長実感」のいずれも向上が確認されており、とりわけ「働きがい」の顕著な伸びは、AI活用が教職員の内面的な意識変容に寄与していることを示しています。また、インタビューや実践記録を用いた質的な分析とあわせて、研究としての信頼性も担保されています。さらに、AI活用を契機として教職員間の対話が活性化し、協働的な学びの文化が醸成された点も重要な成果であると考えられます。
教職員の働き方改革と学びの質の向上を同時に実現しようとする本実践は、今後の学校教育におけるAI活用のモデルとなり得るものであり、他校への波及可能性も高いと考えられます。以上の点から、本研究は優秀賞にふさわしい優れた実践であると評価します。今後のさらなる発展も期待しています。
本実践は、生成AIを学校教育の中でどのように位置付けるべきかという重要な課題に対して、極めて示唆に富む報告でした。特に、生成AIを単なる「答えを得るための道具」ではなく、生徒の思考を整理し、深めるための学習ツールとして定義している点が高く評価されました。近年、生成AIの教育利用が急速に広がる一方で、思考の省略や過度な依存が懸念されていますが、本実践研究は、その課題に向き合い、授業設計によって乗り越えようとしている点に大きな価値があると思われます。
また、「①思考過程を可視化するワークシート」、「②統計的思考を整理するプロンプト教材」、「③学習過程を共有する協同的な学習環境」という三つの手立ては、いずれも生成AIの活用を支える具体的かつ実践的な工夫として非常に優れています。特に、AIを使う前に自分で考え、その後にAIとの対話を通して視点を広げるという学習の流れは、主体的な学びを保障する上で重要であり、他校への展開可能性も高いと判断されました。
さらに、t検定の理解を支援する穴埋め形式のプロンプト教材は、統計的思考力の育成において独創性のある取り組みとして、高く評価されました。計算結果の理解にとどまらず、説明変数と目的変数の設定や研究設計の妥当性にまで踏み込ませている点は、データサイエンス教育として非常に興味深い実践です。実践事例の様子も丁寧に記述されており、生徒がどのように思考を深め、探究活動を前進させていったのかが具体的に伝わってきました。また、本報告では生徒の変容を質的に示すだけでなく、統計的思考力テストや意識調査の結果を用いて量的に検証している点でも、報告書としての完成度の高さが評価されました。特に、「根拠をもって説明する力」において有意な向上と中程度の効果量が示されたことは、本実践の教育的効果を裏付ける重要な成果とも言えます。
北海道高等学校遠隔授業配信センターは、地方における教育機会の確保と遠隔教育における「個別最適な学び」の実現を目指して、「遠隔授業における『個別最適な学び』の確立に向けた動画教材作成と反転授業・学習の実施を中心に」という研究課題に取り組みました。特に、継続的な実践研究である強みを生かしたデータ分析に基づく取り組みや、報告書のまとめ方の工夫などが、他校の実践研究の参考になるとして、昨年に引き続き優秀賞の授与が決定されました。
本実践研究は、データ分析に基づく遠隔授業実施の検討と、対面授業と遠隔授業における反転授業の違いの解明という2つのテーマで行われました。第1のテーマでは、過去のアンケート分析の結果から、学習の成長実感にはICT環境の整備以上に、「目標設定」や「興味関心」を引き出す授業の質が重要であると報告されています。第2のテーマでは、テーマ1の結果に基づいた「『協働的な学び』と遠隔反転授業を組み合わせた実践」を通して生徒の理解度が向上したこと、授業に関するアンケート結果では先行研究における対面授業の結果と大きな差がなかったことが示されています。これらの結果から、遠隔授業では音声・映像などの環境要因よりも授業の質が重要であり、反転授業は遠隔授業においても知識の定着や生徒の考えを深める上で有効な手法であると結論づけています。
審査では、まず、過去の実践研究データの効果的な利用を試みた点が高く評価されました。具体的には、3年間にわたって収集された801名分のアンケート分析は、過去に実施したアンケート結果が有効に活用されていないという課題意識から行われたものであり、継続的な実践研究の中で批判的に活動を検証し、その課題解決に取り組んだことが評価の対象となりました。さらに、報告書については、目的や内容が整理されていることに加え、本実践研究で明らかになった課題を示すことで、今後の実践研究の視座を提供している点が高く評価されました。
これらのことから、2年連続となる優秀賞受賞にふさわしい取り組みであるとの評価に至りました。
柏メディア教育研究会による本実践は、「給食」という日常的なテーマを入り口に、単発で終わりがちな学校間交流を継続的なプロジェクト型学習へと見事に転換させた優れた事例です。全国7校と台湾の学校を結び、1人1台端末と電子掲示板を活用して時間や距離の制約を超えた交流環境を構築した点は、これからの交流学習のモデルとなります。400件超の投稿から生まれた対話により、児童が他地域との比較を通じて自地域の特色を深く再認識していくプロセスは、地域理解学習を構想する上で大いに参考になります。
特に注目すべきは、デジタルの利便性とアナログの体験価値を融合させた表現・発信活動です。学びをまとめたデジタルスライドの作成にとどまらず、手描きイラストを3Dプリンタでアクリルキーホルダー化し、裏面の二次元コード(QRコード)からスライドへ誘導する仕組みを構築しました。この作品を「ガチャ(カプセルトイ)」に入れて地域住民に体験してもらう発信手法は、学校内の学びを地域社会へ効果的に開き、児童に「自分の学びが社会とつながっている」という実感や自己有用感を育む見事な仕掛けです。
大規模な交流を支えながら、教員の負担を軽減する持続可能な運営体制を整備した点も重要です。教員間チャットでの進捗共有やオンライン会議による方向性のすり合わせなど、無理なく実践を継続する枠組みが機能したからこそ、台湾へのシームレスな交流拡張が実現しました。「給食紹介・交流・表現・社会発信」の循環を確立し、次世代の協働力と創造力を育む本実践は、今後の学校間連携のあり方として有益な知見を提供しています。
「給食」という共通の食文化を軸に、地域や国境を越えて子どもたちの想いが繋がる本プロジェクトが、次世代の「社会に開かれた学び」を先導する持続可能なプラットフォームとして、今後より多くの学校や地域を巻き込み発展していくことを心から期待しています。
かながわトリプルアイPROJECTの実践は、実態差の大きい重度障害のある子どもたちの主体的な学びを、ICTの活用と教師の「伴走」によって見事に引き出した、極めて価値の高い研究です。
本実践を高く評価する理由は大きく三点あります。
一点目は、ここまで実践と理論を往還しながら探究を深めている点です。特別支援教育におけるICT活用は、ともすれば自立活動の視点に偏りがちですが、本実践では各教科の「見方・考え方」を深めるためのツールとしてICTを位置づけています。子どもの実態を的確に把握し、「できる」を増やすだけでなく、潜在的な力を引き出して、その子なりに主体的に学習へ参加できるようにしている点に、この実践の大きな意義があります。
二点目は、教師の役割を「伴走者」として具体化し、「気付きの構築者」「意味づけの読解者」「学びの展開者」という3つの視点を提示した点です。教師がよかれと思って子どもの思っていることを想像し、その結果、様々な活動を「代行」してしまうということが問題であるという点には深く共感します。子どもが発する微細なサインを「学び」として価値づけ、次の展開へと広げる教師の専門性を言語化した本実践は、重度の障害のある子どもたちの教育における新たな方法の理論を示したものとしても大変重要です。
三点目は、このような探究的な取り組みを、先生たちの所属する学校が異なるにもかかわらず、ひとつの研究組織として明確な問題意識をもって進めている点です。
個別の困難さに寄り添う丁寧なアセスメントとテクノロジーの力、そして学校の枠を超えた教師の深い人間理解と連携が見事に融合した本実践は、共生社会の実現に向けた確実な一歩です。今後、他教科への展開など、さらなる研究の発展を心より期待しています。改めて、素晴らしい実践をありがとうございました。
本研究は、地域の実情を踏まえつつ、農業体験とプログラミング学習を結び付けた点に大きな特色がある実践です。学区内に身近な農地が少ないという制約を踏まえて、米作り体験や食育活動にICTを組み合わせることで、児童にとって実感を伴う学びを創出していた点が高く評価できます。また、「おいしいごはんを炊く」という生活に根差したテーマを設定したことで、学習への動機付けが継続しやすい構成となっていました。
実践では、パナソニック株式会社のプログラマブル炊飯器を活用し、炊飯条件を調整しながら味や食感の違いを確かめる活動が行われていました。特に、1回目の炊飯結果を踏まえて改善点を話し合い、条件を見直したうえで再度炊飯を試す機会が設けられていたことは、本実践の大きな特徴です。このプロセスにより、児童は結果を振り返りながら考えを改善する、プログラミング的な仮説検証を体験することができていました。さらに、地域の農家や企業、保護者との連携を通じて、学びが学校内に閉じない点も大きな強みでした。
これらの活動は、食育や総合的な学習の時間にとどまらず、操作と結果を因果的に対応付けることや、児童同士での協働的な学びを実現することにもつながっています。実食を伴う発表やアンケートによる効果測定を行っている点からも、学習評価に対する研究姿勢がうかがえます。今後は、この「改善して再挑戦する学習過程」を、他校でもできるような学習の流れとして記述することで、本校の実践がより広く共有され、汎用性の高い実践モデルとして発展していくことが期待されます。
本実践研究は、多言語・多文化の背景を持つ児童を支援対象としてではなく、学びを豊かにするための学校全体の授業改善の起点として捉え直すことで、すべての児童の自己肯定感の向上に繋げることを目指した取り組みです。
本実践では、多言語・多文化な背景を持つ児童が母文化・母語を生かして学ぶことを肯定的に価値づけ、その学びをICTで可視化したことで、ICTが単なる情報伝達の手段としてだけではなく、児童が自身の強みを自覚し、自信を持って社会と関わるためのツールとして機能しています。そうした、強みへの関心や着目が、自己肯定感を持つ児童の増加や自己否定的な回答の減少という、量的・質的両面での分析成果にも繋がっています。
また、小中連携の研修のあり方についても従来の形式的な様式を批判的に捉え、小学校と中学校の教員が共に授業をつくることを目的とした、「小中Umi合同研修会」という新しい形を提案し、挑戦しています。
多言語・多文化な背景を持つ児童が、国際室で培った主体的な学び方を在籍学級へと波及し、全児童に開かれた交流の場として発展し、学校全体が変容していくプロセスを明らかにした本実践は、多様性を力に変えるこれからの教育の在り方として、大変示唆に富んだ実践といえます。
児童だけでなく教員一人ひとりが、多様な他者と学ぶよさや価値を共有できる持続可能な環境づくりに向けて、今後の更なる発展が期待されます。
栗東市立栗東中学校の実践研究は、特別活動における話合い活動の充実という課題に対して、生成AIを個別の思考支援ツールとして位置付け、生徒が自分の考えを見直し、根拠や具体性を意識しながら意見を深めていく学びを丁寧に構想した点に大きな意義があります。
特に、学級会に向けた準備や振り返りの場面で生成AIを活用し、生徒が自分の意見を見直しながら考えを深めていけるようにした点は、本実践の意義ある工夫といえます。また、AIによる採点結果、学級会カードの記述の変化、生徒アンケート、挙手人数、議論の広がりなど、複数の視点から成果を捉えようとしている点も高く評価できます。学級会カードの記述量の増加にとどまらず、他者の視点を踏まえて意見を構成しようとする姿や、議論をより多角的に広げようとする姿が見られたことも注目されます。実践を通して、もともとの記述の状況に応じて異なる変化が見られたことや、発言に消極的だった生徒が自信をもって挙手する姿が見られたことは、本実践の意義を示すものといえます。さらに、教員の活用意識や校内実践の広がりにもつながっており、研究成果を学校全体の取組へ接続しようとする発展性も認められます。生成AIを効率化の道具にとどめず、学びを支える存在として位置付けている点にも今日的な価値があり、特別活動の実践として他校に具体的な示唆を与える研究成果報告書として高く評価できます。今後のさらなる展開に期待します。
本研究は、生成AIを単に利便性の高い単発的な教材としてではなく、大規模言語モデルのAPIを用いて、生徒の英語パラグラフ・ライティングをどうすれば高められるか、反復的・即時的・個別最適化フィードバックの仕組みとして検証を試みたものです。
本研究で開発された仕組みは、生徒の英文に対して即時的かつ反復的にフィードバックを行い、生徒はその助言をもとに再考し、修正を繰り返しながら、清書まで進めることができるようになっています。また、本研究は、生徒1人1台の端末環境を最大限活かし、ライティング指導にとどまらず、生成AIを活用したフィードバックが、どのような条件のもとで学習成果の向上と授業改善に資するのかについても検証を試みています。
本研究の結果、英語ライティングの得点の有意な向上だけでなく、生徒の「自信」の顕著な上昇が確認されました。それだけでなく、生徒は、生成AIによるフィードバックは、文法訂正という表層的な修正だけでなく、構成や論理、内容展開や修正方略といった多面的な支援を受けられたと捉えていることも明らかになりました。
このように、授業改善の具体的な課題や改善過程まで含めた本研究は、今後AIの導入を検討する他校にとっても指針になることが期待される点においても、研究の意義が認められます。これからの学習や授業におけるAI活用の在り方を先導する意義深い研究であると評価するとともに、今後の継続的な研究を期待いたします。
本実践は、知的障害のある生徒自身が生成AIを用いて、障害特性から容易ではないような行政資料を読み解き、考えを整理し、市議会での提言へつなげた点に意義があります。
AIを教員の代替ではなく、先輩や地域住民のgemで再現し、生徒の理解や表現を支えるツールとして位置づけたことは、ウェルビーイングを志向した知的障害教育における生成AI活用の一つの可能性を示したものとして評価できます。ただし、本実践が優れた実践として多くの特別支援教育関係者に読まれることを踏まえるなら、あえて課題も呈しておきます。市議会での提言は高等部段階の学習として「生活年齢に即した意義をもつ」一方、実践としてはイベント的になりやすく、生徒の考えや行動に対するフィードバック、つまり政策への反映はもちろんのこと、提言へのコメントですら、即時的・具体的に返ってくることは期待できません。そのため、知的障害のある児童生徒が「自分が選んだ」「伝えた」「それによって何かが変わった」と実感する経験としては十分とは言い難いです。生成AIを活用した自己選択・自己決定の育成は、社会的な意見表明の場面だけでなく、学校生活・家庭生活・地域生活の中で、「選ぶ」「伝える」「頼む」「断る」「振り返る」といった日常的な意思決定を支える実践として位置づける必要があります。今後は、小学部段階からAIの助けを借りながら自分の希望を整理し、選択し、その結果を具体的に受け止める経験を意識的・系統的に積み重ねる実践が増えていくことを期待します。
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