多度津町立多度津小学校

第51回特別研究指定校

研究課題

ICTを有効活用した個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実
~自己調整力向上のための授業デザインと学習環境の在り方~

2026年度04-07月期(最新活動報告)

最新活動報告
本年度は、研究主題「ICTを有効活用した個別最適な学びと協働的な学びの......

アドバイザーコメント

吉崎 静夫 先生
昨年度は、総合的な学習の時間に同一の大きなテーマのもと、グループごとに......

多度津町立多度津小学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 香川県 多度津町立多度津小学校
アドバイザー 吉崎 静夫 日本女子大学 名誉教授
研究テーマ ICTを有効活用した個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実
~自己調整力向上のための授業デザインと学習環境の在り方~
目的
  • ・Well-beingの向上
  • ・全ての児童の学習権の保障
現状と課題 本校は通常学級に在籍する特別な支援を要する児童や家庭環境が複雑な児童、外国にルーツをもつ児童が多く、学力が二極化している。昨年度は「個別最適な学び」「協働的な学び」をキーワードに研究に取り組んだ。その結果、授業の中で児童が自己選択・自己決定する場面が増え、学習の個性化が図られ、学習に対する意欲の向上が見られた。
一方で、多様な考え方に触れ、思考を深める等の協働的な場面が少なかったという課題が残った。
学校情報化の現状 本校では、1人1台のタブレット端末が活用可能で、校内のどこからでもWi-Fiに接続できる環境が整備されている。しかし、教職員によってICT活用への意識やスキルに差があり、授業での積極的な活用にはまだ課題が残る。校務の情報化についても、昨年度からDX化を推進しているが、機器やネットワーク環境などのハード面での整備が不十分な部分がある。
今後は、教職員のICTスキル向上を図るとともに、児童の情報活用能力を育成するための系統的な情報教育の体制を整えることが喫緊の課題である。
取り組み内容 昨年度の成果と課題を踏まえ、ICTを効果的に活用して、児童一人一人の理解度や特性に応じた最適な学びの環境を提供するとともに、対話や協働を通じた学びを促進する授業づくりを進める。また、教育DXの視点から、学習データを活用したフィードバックや学習方略の可視化、アンケート結果の活用により、児童の認知能力・非認知能力の向上を図る。さらに、児童が自らの学習を振り返り、課題を発見しながら自己調整していく力を育成する。協働的な学びの土台として、異なる意見や考えを尊重できる文化を育む「安心できる学級づくり」にも重点的に取り組む。
成果目標
  • ・児童の「自己調整力」および「他者と協働する力」についての意識調査を実施し、全体で10%以上の向上を目指す。
  • ・Q-U調査の「学校生活不満足群」の該当者を0にする。
  • ・児童による振り返り活動において、記述量と記述内容の観点数の増加を図る。
助成金の使途 電子黒板、プロジェクター他
研究代表者 大西 孝敬
研究指定期間 2025年度~2026年度
学校HP https://www.tadotsu.jp/tadotsusyo/
公開研究会の予定 1月28日(水)公開研究会(低・中・高学年 各1本ずつ授業公開)

本期間(4月~7月)の取り組み内容

【4月】

  • ・本年度の研究主題「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」について全職員で共有し、研究を推進していくことを確認した。
  • ・今年度は、自己調整学習(単元内自由進度学習・複線型授業)による授業実践を通して、子供たちの非認知能力の育成を目指す。
  • ・本校の研究に対し、日本女子大学名誉教授・吉崎静夫先生よりご指導をいただいた。
  • ・そのご助言を踏まえ、本年度の研究内容を見直すとともに、本校における「探究的な学び」の進め方について職員間で協議した。

【5月】

  • ・子供たちの非認知能力の変容を確かめるため、第1回アンケートを実施した。アンケートは、先進的に実践していた香川大学教育学部附属坂出小学校の様式を参考にしつつ、本校用にFormsで再構成して行った。
  • ・6月・7月に実施予定の校内研究授業に向けた事前研修会を開催した。6月は4年理科「電流のはたらき」を単元内自由進度学習として、7月は5年国語「書き手の意図を考えよう(新聞記事を読み比べよう)」を複線型授業として、いずれも自己調整学習の手法で授業を行った。

【6月】

  • ・6月11日(水)、研究アドバイザーである吉崎静夫先生をお招きし、研究授業を実施した。4年理科「電流のはたらき」において、児童が自ら学習計画を立て、主体的に取り組む自己調整学習の授業を公開した。
  • ・授業後には、本校教員のほか、県教育センターや他校の先生方と協議を行い、今後の授業づくりの方向性について校内で検討を重ねた。
  • ・研究討議後、当日の授業及び本校の研究の方向性について吉崎先生よりご指導をいただいた。
〇授業実践
4年:理科「電流のはたらき」(自己調整学習)

 本単元では、児童が自ら学習計画を立て、自分のペースで学習を進める「単元内自由進度学習」に取り組んだ。ねらいは、児童の主体的な学びを引き出すとともに、非認知能力や課題解決力を育むことであった。導入時には、単元全体の見通しを提示し、課題一覧表や進度チェックカードを活用することで、児童一人ひとりが自分で学習の進め方を考えられるような仕組みを整えた。また、一人一人実験ができることで、体感的に電流の働きを感じられる機会を増やした。

【7月】

〇授業実践 5年国語「書き手の意図を考えよう(新聞記事を読み比べよう)」

 本単元では、単元のゴールを定め、そこに至るまで自己選択の場面を多く取り入れた「複線型授業」の形態をとった。自分たちが取材を受けた新聞記事の見出しを考えるという単元を貫く問いを設定することで、児童が主体的に教材と関わることを目指した。

 また、児童が興味をもった記事を自由に読み比べたり調べたりし、その内容を共有する活動を繰り返すことで、新聞への理解を深めながら、読み取る力を高められるようにした。さらに、学習アプリ上に複数のワークシートを用意し、児童が自分の興味や能力に応じて取り組む課題を選べるようにした。

 自分たちが考えた見出しが実際に四国新聞に掲載されることを伝えることで、児童の学習意欲を高め、継続的な学びにつなげるようにした。

アドバイザーの助言と助言への対応

【4年理科】

  • ・コース選択型学習として、児童のの興味関心に対応していた。
  • ・自己選択して進めているので子供が主体的に取り組んでいる姿が多く見られた
  • ・環境面での支援があり、困っている子も、進んでいる子も学習できる場面があった。
  • ・全てを子供に委ねてしまうと、認知能力が正しく付いているのかが疑問である。(知識理解の面は1番に考える必要がある。)
    →部分的に委ねられる(どこを何時間については単元による)自由進度学習の在り方の検討
①研究計画(カリキュラムの作成)について
  • ・個別最適な学びと協働的な学びのバランスを考えた、いくつかのパターンを考えてみてはどうか。
    →個別最適と協働を一体的に行うことを目指し、どこまで委ねるのか、何を環境面で整備するのかを検討していく。
  • ・他校が今後参考にしていけるようなカリキュラムづくりをしてほしい。
  • ・総合的な学習の時間で探究的な学びを深化していく。
②先進校の実践について
  • ・瀬戸SOLAN学園、越ヶ谷市立越ヶ谷小学校等のカリキュラムの紹介。
    →夏休みに瀬戸SOLAN学園への視察
  • ・明確なカリキュラムをもつ事で学校全体に広がっていく。
    →全職員でのカリキュラムの見直し

本期間の裏話

〇多度津小学校で何ができる?

 本校は、日本一小さな県の小さな町にある公立小学校である。特別研究指定校に選ばれたと聞いたとき、これまでの実践校の様子を拝見させていただくと、「果たして自校にこのような研究ができるのだろうか」「何から始めればよいのだろうか」という不安が先立った。昨年度までは「子供が主語になる授業」を目指し、自己選択の場を増やす研究に取り組んできたため、それを発展させていこうと考えてはいたものの、4月には研究の対象を広げすぎてしまい、方向性が定まらないまま迷走してしまった。

 加えて、学校行事等による多忙さもあり、教職員間での共通理解が十分でないまま1学期が過ぎてしまい、研究としての成果が見えにくいものとなってしまったことは否めない。

 そうした中で、県教育センター、県教育委員会、町教育委員会など、多くの方々と連携する中で、「多度津小学校として本当に取り組むべきことは何か」を見つめ直す機会を得ることができた。計画を再構築し、研究内容を整理したことで、教職員の共通理解も進み、全員でカリキュラムの見直しから着手しようと始動した。ようやく研究がチームとして一体感を持って動き出したと実感している。

本期間の成果

〇6月11日 自己調整学習(単元内自由進度学習)

■ 学習への取り組みの変化
  • ・自分なりの目標を立て、振り返りながら学習に取り組む姿が見られるようになった。
  • ・学習に対する意欲や態度に、肯定的な変容が見られた。
■ アンケート結果の変化
  • ・「目標を立てて、それを目指して頑張っている」と回答した児童:38% → 71%
  • ・「人から言われなくても、自分から進んで学習している」と回答した児童:42% → 71%

今後の課題

〇6月11日 自己調整学習(単元内自由進度学習)

■ 課題の現状
  • ・自分で計画を立てたり、学習に向かうきっかけを見つけたりすることが難しい児童がいた。
  • ・何から手をつければよいかわからず、1時間を手つかずで終えてしまう児童の姿が見られた。
  • ・児童間の進度の差が広がり、互いに学び合う機会が減少。
  • ・協働的な学びの効果が十分に発揮されなかった。
■ 課題への対応策・工夫
  • ・児童が自分で学習を進めることを前提としつつ、学習のスタートを支援する工夫が必要。
  • ・その日の学習の「めあて」と「最初の行動」を全体で共有する。
  • ・自由進度であっても、学習内容を段階的に提示することで、自分の位置を把握しやすくする。
  • ・毎時間の終わりに学び方や工夫をふり返る時間を設け、ペアやグループで共有する。
  • ・他者の姿から刺激を受け、新たな学びにつなげる機会をつくる。

〇総合的な学習の時間のカリキュラムの見直し

今後の計画

  • ・夏休み中に全教職員でのカリキュラムづくり
  • ・瀬戸SOLAN学園、葛飾区立東金町小学校、関西ICT展への視察
  • ・非認知能力を育成する自己調整学習の実践・研究授業(2年・4年・6年)

気付き・学び

  • ・自己調整学習をどこで取り得れられるのか、カリキュラムを見直し、単元化を進める必要があると感じた。

成果目標

  • ・全学年の国語・算数・社会・理科(生活科)における、自己調整学習を活用できる場面の抽出と、それに基づく単元計画の立案(カリキュラムの作成)
アドバイザーコメント
吉崎 静夫 先生
日本女子大学
名誉教授 吉崎 静夫 先生

 本校は、「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」という全国すべての学校にとっても必須の研究課題に挑戦している。そして、本校は、香川県の普通の公立小学校であるだけに、その研究成果は多くの学校でも大いに参考にできるものであり、その影響は大きいと期待される。

●本期間の研究成果

(1)2025年6月11日に本校を訪問した際に、4年理科「電流のはたらき」の授業を見学した。本単元では、児童が学習方略を獲得し、自ら学びに向かう力を育成することねらいとして、「単元内自由進度学習」が取り入れられていた。単元の導入では、モーターカーが坂道を登る様子や、直進のみでバック走行ができない様子などが提示されていた。さらに、「エンジニアコース」(制作から原理追究するコース)と「研究者コース」(原理追究から制作へ向かうコース)という2つのコースが設定され、「必修の内容・方法(かならずやり終える学習)」と「選択の内容・方法(自分で決めて行う学習)」という学習ガイドブックが用意されていた。実によく考えられた授業デザイン(単元構成)であった。そのため、児童も意欲的、主体的に学習に取り組んでいた。

 ただし、次のような課題も見られた。「自分で学習計画を立てることが難しい児童がいた」「何から手をつければよいかがわからず、1時間手つかずで終えてしまう児童がいた」「実験よりも教科書に書かれている原理で結果をまとめている児童がいた」「協働的な学びの効果があまり見られなかった」などであった。このような課題がみられた主な原因は、「単元全体を自由進度学習で展開しているため、直列回路や並列回路についての共通理解の時間が十分には確保されていなかった」ためではないかと思われる。単元全体が7時間で構成されているなら、せめて前半の3時間は「共通学習」にして、後半の4時間を「自由進度学習」にするといった、「共通と自由選択のバランス」が必要だったのではないかと思われる。

 しかし、この実践の成果と課題は、本校がカリキュラム構成と授業デザインを改善するうえで、とても貴重なものであった。

(2)県教育委員会、県教育センター、町教育委員会などとの連携のもとで、本校の研究体制が整備されたため、教職員の共通理解が進み、実践研究に意欲的に取り組むことができている。とりわけ、パナソニック教育財団の特研校の先輩にあたる瀬戸SOLAN学園初等中等部や葛飾区立東金町小学校を視察して、探究学習のためのカリキュラム構成や授業デザインについて意欲的に学ぶ姿勢は高く評価できる。

●今後の課題と期待

(1)総合的な学習の時間を中核として「探究学習のためのカリキュラム」を構成してほしい。その際、3学年から5学年は、環境、食糧、国際、地域などを共通テーマに協働で探究学習を行い、6学年は「総合的な学習の時間の卒業研究」として個々の児童の興味関心にもとづく個人探究学習を行ってほしい。前者は「協働的な学び」にウエイトがあり、後者は「個別最適な学び」にウエイトがある。

(2)授業デザインにあたっては、「つながり」と「組み合わせ(バランス)」を考慮してほしい。

 前者は、「日常生活と教室での学習とのつながり」と「教科間のつながり」である。例えば、4学年算数「垂直と平行、四角形」において、学区の地図を利用して、道の交わり方や土地の形について考えさせる。このように、身の回りのものから、垂直と平行、四角形を考えさせるわけである。まさに、日常生活と図形学習とのつながりを授業デザインする。さらに、6学年算数において、児童が立体の重要な側面(辺、面、頂点)に着目する「立体当て伝達ゲーム」を教師が構想すれば、児童は国語などで培った「言語能力」を算数で活用することができる。

 後者は、「共通と選択の組み合わせ」と「リアルとデジタルの往還」である。例えば、単元の前半はクラスみんなで「共通学習(協働的な学び)」を行い、単元の後半で「診断テスト」を行い、その結果にもとづいて、「復習(補充)コース」と「発展(応用)コース」に分かれて「習熟度別学習(個別最適な学び)」を行う。あるいは、単元の前半はクラスみんなで「共通学習(協働的な学び)」を行い、単元の後半で児童の興味・関心や学習タイプに対応するためのコース選択学習(自由進度学習、複線型授業などの自己調整学習)を行う。このように、大事なことは「共通と選択のバランス」である。さらに、リアルな活動をデジタルで支える授業デザインである。例えば、前述した「立体当て伝達ゲーム」ののち、「AIドリルでの立体学習」や「NHK for School教材での立体学習」を行うのである。

本期間(8月~12月)の取り組み内容

【7・8月】

〇葛飾区立東金町小学校 校長 河村麻里 先生・日本体育大学 助教 豊田大登 先生を招聘しての研修「東金町小学校の取組について」

 パナソニック教育財団特別研究指定校の先輩校である葛飾区立東金町小学校より、河村校長先生および豊田先生をお招きし、特別研究指定校としての具体的な取組についてご講話いただいた。カリキュラムの作成過程や、研究の方向性の明確化、校内での共通理解の深め方など、今後の本校の研究推進に向けて参考となる内容ばかりであり、職員が抱えていた多くの不安や疑問を解消する貴重な機会となった。

〇自己調整学習を推進する単元計画の作成

 自己調整学習の授業実践を推進するため、各学年において学期に1回、自由進度型や複線型などを位置付けた単元計画を作成した。対象教科は、高学年で国語・算数・社会・理科、低学年では国語・算数・生活とし、それぞれ1単元分を選定している。これらの単元計画を基に、自己調整学習の実践を含む年間指導計画の構築を進めているところである。

〇「NEXT GIGAスタートダッシュセミナー」での実践報告

 本年度、本校は香川県の「令和7年度NEXT GIGA研究委託事業」の重点校に指定され、香川県教育センターで開催された「NEXT GIGAスタートダッシュセミナー」において実践報告を行った。セミナーには校種や立場の異なる約200名の教育関係者が参加しており、本校の取組を県内に広く発信することができた。

〇関西教育ICT展への参加

 8月7・8日に大阪府で開催された「関西教育ICT展」に、校長・教頭・教員2名が参加した。第49回特別研究指定校である葛飾区立東金町小学校や瀬戸SOLAN学園初等・中等部をはじめ、先進実践校の研究発表を聴き、本校の研究の方向性を確認するとともに、今後の計画や目標を考える大きなきっかけとなった。

〇瀬戸SOLAN学園初等・中等部視察報告・「多小っ子プロジェクト(協働探究)」「多小っ子ラボ(個人探究)」のカリキュラムの作成

 本校から瀬戸SOLAN学園初等・中等部の「SOLANまなリンク」に参加した教員による視察報告会を行った。報告会を通して、本校の課題であったカリキュラム作成において、何をどのように体系化していくのかという指針を全職員で共有することができた。この成果を基に、本校独自の「多小っ子プロジェクト(協働探究)」「多小っ子ラボ(個人探究)」の年間カリキュラムの原型を作成した。

【9月~10月】

〇アドバイザーによる授業視察(10月10日)

<研究授業実施一覧>

学年 教科 単元名
生活科 せかいでひとつ わたしのおもちゃ
算数科 面積
算数科 面積
〈2年 生活科〉

 1年生を招いて「おもちゃまつり」を開くためにおもちゃを改良する学習を行った。児童は「性能」「外見」「遊び方」の3つの観点から工夫を加え、おもちゃをよりよくしていった。似たおもちゃを選択した児童でグループを作ることで、自然と交流が生まれ、友達の意見を取り入れながら試行錯誤する姿が見られた。

〈4年 算数科〉

 多度津町内の小学校の校舎や運動場の面積を図形化し、既習の方法を活用して面積を求める授業を行った。複雑な形の図形でも、長方形や正方形に分けることで面積を求められることを基に、児童が自ら図形を選択し、友達と協力しながら考えを深めた。話し合いの中では、分け方の工夫を比べ合ったり、より簡単に計算できる方法を提案したりする姿が見られ、互いの考えを参考にしながら学びを広げていった。

〈5年 算数科〉

 三角形や平行四辺形の面積の求め方を学習した後、等積変形や倍積変形の考え方を活用して台形やひし形の面積の求め方を考えた。自由進度型の学習形態を取り入れ、学ぶ順番や場所、学ぶ相手を児童が自己選択できるように環境を整えたことで、主体的に学習に取り組む姿が見られた。

【11月】

〇第51回全日本教育工学研究協議会全国大会への参加

 本大会では、自己調整学習と対話的な学習デザインに基づく公開授業や研究発表が行われ、児童が自ら学びを語る文化や形成的評価、付箋による振り返りなど学習過程を可視化する取組が印象的であった。特に生成AIは、思考整理やルーブリック作成、振り返り支援など「学びの伴走者」としての活用が提案され、児童は自ら評価基準を作成し思考を深めていた。一方、成果の最終判断は教師が担う重要性が示され、AI活用と教育専門性の役割分担が求められる。本校でも探究的な学びの質を高める観点から、AI活用の在り方について研修を深め、効果的な実用につなげたいと考えている。

【12月】

〇「香川の教育づくり発表会」への登壇

 12月末開催のため、次回報告書に詳細を記載予定。

アドバイザーの助言と助言への対応

【2年授業】

  • ・「1年生を招いておもちゃ祭りをする」という明確なゴールが設定されていたことで、児童が共通の目的をもって意欲的に学習に取り組んでいた。
  • ・おもちゃのバリエーションが豊富であり、それぞれに工夫を凝らす姿が見られた。また、うまくいかない場面でも粘り強く試行錯誤するなど、自己調整の姿が見られた。
  • ・おもちゃ作りの観点を常に提示しておくことで、「面白さ」に偏ることなく、目的意識をもって活動を進めていた。
  • ・自己調整学習の視点から見ると、「誰と行うのか」「別の方法はないのか」といった学習方略を意識させることが今後の課題である。うまく動かないときにどのように改善する かの手立てを児童自身がもてるようにしたい。また、「うまくいっていないな」と気付けるメタ認知を育てる必要がある。
  • →今後は、児童の学習方略の幅を広げ、より深い学びへとつなげていくための学び方を獲得させたい。そのために、学習の途中段階で形成的評価を取り入れ、児童が自らの学びを振り返りながら改善できるよう支援していく。

【4年授業】

  • ・地域の学校という生活に根ざした課題について考えることで、生活と学びが結びつき、学びの有用性が感じられた。
  • ・基礎的な学習を一斉に行い、応用的な課題を個別に取り組ませるという単元構成が効果的であった。
  • ・課題選択学習や自己調整学習が展開され、児童一人一人が成功体験を積むことができていた。
  • ・一方で、グループごとに学校を選択し、一律の方法で面積を求めていたため、学力の高い児童が確認作業に多く関わる場面が見られた。これらの児童が自分の力をさらに発揮できるよう、発展的な課題設定や支援の工夫が求められる。
  • →今後は、学力の高い児童も主体的に学びを深められるような学習環境を構成するとともに、他の方法でも面積を求められないかを探究する個人学習の時間を設けるなどして、より個別最適な学びの深化を目指していく。

【5年授業】

  • ・導入の「国取り合戦ゲーム」で興味・意欲を高め、学びへの動機づけができていた。
  • ・共通の基礎学習後に自由進度・選択学習を展開し、応用課題も豊富で、個別最適な学びが実現していた。
  • ・習熟度差があっても、個々のペースで進められる構成となっていた。
  • ・ICTを効果的に活用し、ヒントや振り返りが整理されていた。
  • ・ペアの組み合わせや学び方(個人・ペア、紙・タブレット)の選択理由を児童自身に意識させたい。
  • ・協働的な学びの場面を意図的に位置付け、他者援助の仕方を考える時間を設けたい。
  • ・振り返り内容の分析(頻出語など)を通して授業改善の手がかりを得ることも有効。
  • ・ヴィゴツキーの発達の最近接領域の視点から、誰がどのように支援(足場かけ)を行うのかを明確にしたい。
  • →協働的な学びをより効果的にするため、学習前に「誰と・どのように学ぶか」を意識してペアを組む時間を設ける。仲の良さだけでなく、得意分野や学習方略の違いを踏まえて組み合わせることで、互いの強みを生かした学びが期待できる。活動後にはペアの関わりを振り返り、どのような組み方が自分の学びを深めたかを考える機会を設定し、次の学習に生かせるよう支援する。

本期間の裏話

◎横のつながり

 本期間は夏季休業中であったこともあり、多くの学校と積極的に情報共有を行うことができた。取組内容にも記載したとおり、瀬戸SOLAN学園初等・中等部および葛飾区立東金町小学校への視察を実施するとともに、東金町小学校の先生方を本校にお招きし、講演を行っていただいた。また、オンライン上では、香川県立観音寺第一高等学校や八王子市立高嶺小学校との情報交換会も行った。さらに、県内においても「NEXT GIGAスタートダッシュセミナー」以降、複数の先生方からご連絡をいただき、キックオフ会でつながった先生方とも継続的に情報交換を行うことができた。

 これらの交流を通して、本校がこれまで抱えていた課題がより明確になるとともに、本校の研究の取組を他校に発信する機会ともなった。校種や地域を超えて、「子供の学びのために」という共通の目的のもと、率直かつ前向きな議論ができたことを大変うれしく感じている。今後も本校から積極的に情報を発信するとともに、他校の実践や知見を柔軟に取り入れながら、研究をさらに深めていきたい。

本期間の成果

  • ・自己調整学習の授業実践の蓄積
  • ・探究的な学習のカリキュラムの原型作成
  • ・県内外での授業視察

今後の課題

  • ・自己調整学習・探究的な学習のルーブリックの作成
  • ・協働探究・個人探究の実践

今後の計画

  • ・自己調整学習・協働探究の授業実践
  • ・本年度の研究のまとめ
  • ・県内外への成果の普及

気付き・学び

 本期間の取組を通して、自己調整学習の実現には、授業形態や活動構成を変えるだけでは不十分であり、児童自身が「どのように学びを進めるのか」を言語化し、振り返る機会を意図的に設ける必要があることを改めて実感した。また、先行実践校との交流は、本校の課題を明確にし、研究の方向性と共通言語を職員で共有するうえで大きな手がかりとなった。今後は、形成的評価や協働の在り方を丁寧に位置付けながら、日々の授業改善へ確実に落とし込んでいく。

成果目標

  • ・自己調整学習・協働探究の授業実践
  • ・協働探究・個人探究のルーブリックの作成
  • ・非認知能力アンケート結果分析
アドバイザーコメント
吉崎 静夫 先生
日本女子大学
名誉教授 吉崎 静夫 先生

 この期間、積極的に研究発表会(関西教育ICT展、全日本教育工学研究協議会全国大会)に参加して先進校の実践研究を学ぶとともに、県内の研究会(NEXT GIGAスタートダッシュセミナー、香川の教育づくり発表会)で、実践報告を行っている。着実に、特別研究指定校として、実践研究を積み重ねている。

●本期間の研究成果

(1)自己調整学習(自由進度型や複線型の学習)の単元計画を作成し、実践している。各学年において学期に1回程度の計画であり、教職員にあまり無理をさせない取り組みである。

(2)先進校(瀬戸SOLAN学園初等中等部)の「探究学習のカリキュラムと実践」を参考にしながら、本校独自の「多小っ子プロジェクト(協働探究)」と「多小っ子ラボ(個人探究)」のカリキュラム作成に取り組み、年間計画を作り上げている。

(3)10月10日(金)にアドバイザー訪問を行った。その際、2年生活科「せかいでひとつ わたしのおもちゃ」、4年算数科「面積」、5年算数科「面積」の授業を見学し、授業者にアドバイスを行った。学校の活動報告書にあるように、2年生活科の授業において、①「1 年生を招いておもちゃ祭りをする」という明確なゴールが設定されていたことで、児童が共通の目的をもって意欲的に学習に取り組んでいた。②おもちゃのバリエーションが豊富であり、それぞれに工夫を凝らす姿が見られた。③おもちゃ作りの観点を常に提示しておくことで、「面白さ」に偏ることなく、目的意識をもって活動を進めていた。なお、自己調整学習の視点から見ると、「誰と行うのか」「別の方法はないのか」といった学習方略を意識させることが今後の課題である。そして、4年算数科の授業において、①「市内の学校の施設等の面積比較」という生活に根ざした課題について考えることで、生活と教科学習が結びつき、学びの有用性が感じられた。②基礎的な学習内容を一斉授業で行い、応用的な課題を個別に取り組ませるという単元構成が効果的であった。ただし、グループごとに面積比較を行う学校を選択し、グループ内では一律の方法で面積を求めていたため、学力の高い児童が計算結果の確認作業に多く関わる場面が見られた。これらの児童が自分の力をさらに発揮できるよう、発展的な課題設定や支援の工夫が求められる。さらに、5年算数科の授業において、①単元の導入の「国取り合戦ゲーム」で興味・意欲を高め、学びへの動機づけができていた。②共通の基礎学習後に自由進度・選択学習を展開し、応用課題も豊富で、個別最適な学びが実現していた。ただし、ペアの組み合わせや学び方(個人・ペア、紙・タブレット)の選択理由を児童自身に意識させることが必要である。

 このように、1学期に訪問した際にアドバイスしたことが、単元計画や授業実践に的確に取り入れられていた。

●今後の課題と期待

(1)本校独自の「多小っ子プロジェクト(協働探究)」と「多小っ子ラボ(個人探究)」のカリキュラム(年間計画)にもとづいて、授業実践をできるだけ早く行う必要がある。そして、それらの実践を評価し、カリキュラムの改善を行うことが求められる。

(2)自己調整学習の単元計画は、今回のアドバイザー訪問の際に見せていただいたように、「共通と選択の組み合わせ」を基本としてほしい。例えば、単元の前半はクラスみんなで「共通学習」を行い、単元の後半で「診断テスト」を行い、その結果にもとづいて、「補充(復習)コース」と「発展(応用)コース」に分かれて「習熟度別学習(個別最適な学び)」を行う。あるいは、単元の前半はクラスみんなで「共通学習」を行い、単元の後半で児童の興味・関心や学習タイプに対応するための自己調整学習(自由進度型の学習、複線型の学習など)を行う。このように、大事なことは「共通と選択のバランス」である。

(3)教科学習や探究学習(協働探究、個人探究)において、児童が自分の考えを広げ、深めるための一方策として「生成AI」を活用することを検討してほしい。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

〇「多度津小学校特設サイト」の作成

 日本体育大学特任助教 豊田大登先生にご協力いただき、「多度津小学校特設サイト」を立ち上げた。本校の研究や実践のまとめ等を掲載し、県内外に本校の取組を普及する方法の1つとなった。

〇香川の教育づくり発表会での実践発表

 本校の研究内容や本年度の授業実践について発表を行った。約100人ほどの参加者がおり、討議の中では、「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実をどの様に実現していくのか」「子供一人一人の探究の進み具合をどのように見取っているか」「振り返りをどのように次時につなげているか」といった点など、多くの質問をいただき、本実践への関心の高さを感じた。

〇令和7年度 多度津町立多度津小学校公開研究会

学年 教科 単元名
2年 生活科 これまでのわたし これからのわたし
4年 社会科 わたしたちの県のまちづくり~目指せ!16市町の観光大使~
5年 体育科 オープンスタイルバレーボール~自己選択がチームを変える~
6年 総合的な
学習の時間
卒業プロジェクト~私たちが学校を笑顔に~
〈2年 生活科〉

 1・2年生の生活を振り返り自分の成長を実感したことを出発点に、「生まれた頃の自分はどうだったのか」という問いを立て、家族へのインタビュー活動を行った。録音した音声や写真、思い出の品をICTも活用しながらアルバムに整理し、多くの愛情に支えられてきた自分の歩みを再構成した。さらに、感謝を伝える動画や手紙づくりに取り組み、友達同士で助言し合う対話的な学習を通して表現力を磨いた。本実践により、身近な人への感謝と主体的に学びを深める態度が育った。

〈4年 社会科〉

 香川県の16市町(3年次に既習のため多度津町を除く)の魅力を探究し、「観光大使」として発信することを本単元のゴールとして設定した。本時では、PR資料作成に向けた情報収集を行った。子供たちは、「まちづくり」につながる資料をもとに、自然・産業・人々の思いなどについて多角的に読み取りながら情報を集めていた。その際、文字・写真・動画・音声など多様な資料の提示方法の中から自分に合ったものを選択したり、生成AI(Gemini)を“壁打ち相手”として活用しながら学び方を再確認したりする姿が見られた。

〈5年 体育科〉

 子供たちとルールを話し合って決める中で、全員がボールに関わる状況を作り、「連携」を考える必然性を生み出した。学習では「実践→動画分析→課題発見→作戦立案」のサイクルを繰り返し、動画で動きを客観視することで納得感のある課題解決につなげた。さらに手本動画や作戦ボード、技能別の練習場所を用意し、自分たちで必要な練習を選べる環境を整備。子供たちは主体的に作戦や練習方法を工夫し、技能向上と協力する態度の成長が見られた。

〈6年 総合的な学習の時間〉

 お世話になった人々への感謝の気持ちをもとに、子供たちは校内の課題を自ら発見し、倉庫整理や縄跳び台製作、カーテン修繕、下級生への授業など具体的な解決策を協働で実行した。企画書やガントチャート、ルーブリックを活用して自己調整を促し、主体的な探究を支援。受動的だった子供たちが自ら調整や提案を行う姿へと変容し、生涯にわたり学び続ける力の育成につながった。

アドバイザーの助言と助言への対応

〈全体〉

  • ・低学年から高学年まで幅広く研究が行われており、全校体制で取り組めているのがよい。
  • ・振り返りを活用して、メタ認知→動機付けにつなげられている。
  • ・公立学校としてこれからも「どこでもできる」ということを普及してほしい。

〈2年 生活科〉

  • ・自分のことを詳細に振り返り、表現物にうまくまとめていた。
  • ・協働する姿が多く見られた。

〈4年 社会科〉

  • ・一人一人に「観光大使」というワッペンをつけることで意識の向上につながった。
  • ・各市町について、細やかな資料が準備されていた。そのことで、児童が主体的に学びに向かう姿勢が多く見られていた。

〈5年 体育科〉

  • ・試合や練習の様子を録画した映像からのリフレクションができており、そこから次の作戦につなげるという自己調整する姿が見られた。

〈6年 総合的な学習の時間〉

  • ・ニーズや素朴な疑問から課題を設定していたことで、切実な目的意識が見られ、達成に向けて意欲的に活動していた。
  • ・本年度の活動・成果を他の学年に伝えることで、つながりが生まれる。

本期間の裏話

◎チームで取り組んだ授業づくり

 今回の授業づくりは、単元全体の構想から指導案作成、授業準備に至るまでをチームで行った点が大きな特徴である。きっかけは、単元全体を見通した授業づくりを進めるにあたり、授業者や学年団だけでは負担が大きいという課題意識からだった。そこで学年の枠を解体し、教科の専門性を生かしたチームを編成して取り組むこととなった。

 しかし、実際に動き始めるとすぐに難しさに直面した。今回の単元は、総合的な学習の時間を活用した協働探究や、各教科で習得した知識・技能を活用する学習であったため、単元そのものが長い時間を要するものになっていた。そのため、スタートからゴールまでの明確なビジョンをもつことが難しく、構想段階では手探りの状態が続いた。

 転機となったのは、指導案検討や環境整備を何度も繰り返したことに加え、同じ単元内の授業を指導者の先生に参観していただいたことであった。第三者の視点から助言をいただくことで、これまで漠然としていた課題が明確になり、そこから一気に単元の方向性が定まっていった。

 チームで取り組んだことのよさは、日々の動きの中にも表れていた。Googleチャットを活用し、気付いたことやアイディアを即時に共有することで、共通理解を図りながら機動的に準備を進めることができた。また、環境整備や教材準備を分担したことで、一人一人の担当部分がより丁寧に精査され、結果として授業の質の向上につながった。

 何より大きかったのは、苦楽を共有しながら取り組めたことである。全員が単元全体を説明できるほど深く関わることができ、「いつでも誰にでも相談できる」という安心感の中で準備を進められたことは、チームで授業づくりを行ったからこそ得られた財産であった。

本期間の成果

  • ・「多度津小学校 特設サイト」の開設にあたり、これまでの授業実践を体系的に振り返ることができた。授業のねらいや手立てを整理し要点を明確にすることで、本校の実践の特色や研究の視点を言語化し、校内外へ発信する基盤を整えることができた。また、この過程自体が授業改善につながる有効な振り返りの機会となった。
  • ・香川の教育づくりにおける実践発表を通して、本校の研究の取組を県内に広く発信することができた。実践の具体や研究の視点を共有することで、他校との情報交流や波及につながる機会となった。また、発表準備の過程で実践を再整理したことにより、自校の成果と課題を改めて明確に捉えることができ、参会者からの意見や助言を今後の研究推進に生かす方向性を見出すことができた。
  • ・公開研究会では4本の授業実践を通して研究の取組を発信し、多くの参加者と協議を行うことができた。授業後の討議やフィードバックを通して、多様な視点から実践を見直す機会となり、研究の成果と課題の両面を具体的に把握することができた。これにより、今後の研究の方向性がより明確になり、授業改善につながる具体的な示唆を得ることができた。

今後の課題

・非認知能力の評価方法

→非認知能力の向上については、年間3回実施したアンケート結果から、数値上の大きな変容は見取れなかった。分析の結果、児童の回答は全体的に高い水準で推移しており、いわゆる「頭打ち」の状態にある可能性が考えられる。本校児童はもともと自己肯定感が高い傾向にあり、そのこと自体は望ましい姿である一方で、数値による成果として変容を示すことの難しさが明らかとなった。

 また、アンケートによる測定では、日常の学習場面における粘り強さや自己調整の工夫といった具体的な行動の変化までは十分に捉えきれていない可能性もある。今後は、非認知能力を包括的に捉えるのではなく、「自己調整学習」や「探究的な学習における学び方の工夫」など、より焦点化した観点を設定し、ルーブリックや振り返りの記述分析、教師の見取りなど複数の方法を組み合わせて変容を捉えていく必要がある。

今後の計画

  • ・非認知能力アンケートを含む児童の変容を捉える方法の再検討を行う。
  • ・個人探究実践のために、個人探究部会のメンバーでカリキュラムやガイダンス資料、ルーブリック等を見直し、次年度から運営できるように細かな整備を行う。
  • ・協働探究のカリキュラムを整備し、4~6年生は35時間で実践できるように引き継ぎ資料を作成する。

1年間を振り返って、成果・感想・次年度への思い

 特別研究指定校として、「一公立校として何ができるのか」を問い続けながら始まった本研究であったが、1年間、明確な目標を共有し組織的に取り組んできたことで、教職員一人一人の授業観や指導観に変容が見られ、学校全体としての指導力向上につながった。その成果は日々の授業改善にも着実に表れ始めている。

 次年度は、本年度の成果と課題を整理した上で、カリキュラム・マネジメントの視点も取り入れながら、探究的な学習のさらなる充実に向けた研究を一層推進していきたい。

成果目標

  • ・自己調整学習・協働探究の授業実践
  • ・協働探究・個人探究のルーブリックの作成
  • ・非認知能力アンケート結果分析
アドバイザーコメント
吉崎 静夫 先生
日本女子大学
名誉教授 吉崎 静夫 先生

 この期間、「多度津小学校特設サイトの立ち上げ」「香川の教育づくり発表会での実践発表」「多度津小学校公開研究会」が行われ、県内外に多度津小学校の実践研究を発信することができた。このように、パナソニック教育財団の特研校(1年目)としての役割を十分に果たすことができた。

●本期間の研究成果

(1)リアル(対面)での「実践研究の公開」とデジタル(ネット)での「実践研究の公開」

「リアルをデジタルでささえる」ことが、本校では実践研究の発信(公開)に具現化されている。

 リアル(対面)での「実践研究の公開」は、約140名の県内外の教育関係者の参加をえて、1月28日(水)に「多度津小学校公開研究会」として行われた。4つの公開授業、授業討議会、講演が行われた。公開授業の内容と児童の様子は、活動報告書に詳細に記述されている。それぞれの授業実践の特長は、以下の通りである。

「2年 生活科」
  1. ①自分のことを詳細に振り返り、そのことが表現物にうまくまとめられていた。
  2. ②協働する姿が多く見られた。
「4年 社会科」
  1. ①児童一人一人が「観光大使」というワッペンをつけることで、担当する各市町の意識向上につながっていた。
  2. ②各市町について、細やかな資料が準備されていた。そのことで、児童が主体的に学びに向かう姿勢が多く見られた。
「5年 体育科」
  1. ①試合や練習の様子を録画した映像からのリフレクションができており、そこから次の作戦につなげるという自己調整する姿が見られた。
「6年 総合的な学習の時間」
  1. ①ニーズや素朴な疑問から課題を設定していたことで、切実な目的意識が見られ、達成に向けて意欲的に活動していた。
  2. ②本年度の活動・成果を他の学年に伝えることで、学年間のつながりが生まれた。

全体を通して、次のような特長が見られた。

  1. ①低学年から高学年まで幅広く研究が行われており、全校体制で取り組めているのがよい。
  2. ②振り返りを的確に活用して、メタ認知が動機付けにつなげられている。
  3. ③普通の公立学校としての実践研究だけに、「どこの学校でもできる」ということが確かめられた。

 デジタル(ネット)での「実践研究の公開」としては、日本体育大学の豊田大登先生の協力をえて、「多度津小学校特設サイト」を立ち上げたことである。そのサイトでは、本校のカリキュラム(習得、活用、協働探究、個人探究)の特徴や授業実践の事例が紹介され、県内外に本校の取組を知っていただく有効な方法となっている。

 今後も、リアル(対面)とデジタル(ネット)の両面から、本校の実践研究を発信し続けてほしい。

(2)教科学習や探究学習での「生成AI」の活用

 学校の活動報告書にもあるように、4年社会科「わたしたちの県のまちづくり」において、文字・写真・動画・音声など多様な資料の中から自分に合ったものを選択したり、生成 AI(Gemini)を“壁打ち相手”として活用する児童の姿が見られた。前回のアドバイス事項である「教科学習や探究学習(協働探究、個人探究)において、児童が自分の考えを広げ、深めるための一方策として生成AIを活用することを検討してほしい」が、早速に実践された。

●今後の課題と期待

(1)本校独自の「多小っ子ラボ(個人探究)」の年間計画を整備し、次年度から確実に実践できるように準備してほしい。

 その際、「各教科に準拠したやってみたいことを追究する学習」という本校の基本コンセプトを大切にしながらも、教科の枠組みにとらわれないテーマを設定する児童の思い(ねがい)も大切にしてほしい。

(2)「非認知能力の評価」を一工夫してほしい。

 そのためには、評価方法を「日常のカリキュラムに組み込まれた評価(ポートフォリオでの児童の自己評価と教師による評価)」と「オンデマンド評価(アンケート調査、インタビュー調査など)」に分けて、整理してみる必要がある。その際、児童に育成したい非認知能力を「粘り強さ(失敗や困難に立ち向かうレジリエンスを含む)」や「メタ認知(自らの学習を振り返り、自らの学習課題に気づき、次の学習方略を考えること)」といった数個の資質・能力にフォーカスする必要がある。

(3)自己調整学習の単元計画は、「共通と選択の組み合わせ」を基本としてほしい。

 例えば、単元の前半はクラスみんなで「共通学習」を行い、単元の後半で児童それぞれの興味・関心や学習タイプに対応するための自己調整学習(自由進度型の学習、複線型の学習など)を行う。このように、大事なことは「共通と選択のハイブリッド型の単元構成」をデザインすることである。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

〇本年度の研究主題について

 本年度は、研究主題「ICTを有効活用した個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」を継続しつつ、サブテーマを「自己調整力向上のための授業デザインと学習環境の在り方」に刷新した。昨年度は非認知能力の変容を定量的に調査したが、本校児童は同能力が総じて高く、従来の枠組みではさらなる成長を捉えにくくなっていた。 この課題を踏まえ、本年度は児童が自ら問いを立てて追究する「探究学習」の充実を図るとともに、そのプロセスにおいて自らの学びをコントロールする「自己調整力」の育成に焦点を当てる。ICTを情報を集め協働するツールとしてだけでなく、自身の学びを振り返り、調整するツールとしても有効に機能させ、児童の探究活動をより主体的かつ自律的なものへと深めていく。

〇6年 算数科「分数×分数」 校内研究授業

 本単元では、第1時から第5時までは習得の授業を行い、第6・7時では、帯分数や小数、3口の数が混ざった計算を題材とし、児童自身が学習計画をもとに「何を・どこで・誰と」学ぶかを主体的に選択・決定して課題解決する活用の授業に臨んだ。つまずきのある児童には変換方法を掲示する「ヒントコーナー」や机間指導で個別に支援し、習熟した児童はオリジナル問題の作成や自由な座席移動を通して協働的に学びを深めた。終末にはスプレッドシートを用いて学び方や次時への展望を省察させ、自己の学習を能動的に調整する態度を養った。

【問題を自己選択する】

【友達と協働しながら考える】

〇個人探究の実践開始

 総合的な学習の時間に昨年度は、同一の大きなテーマのもと、グループごとに異なる課題について探究する「協働探究」を行ってきた。そこで得られた探究的な学び方を生かし、児童が自ら問い(テーマ)を設定し、その解決に向けて主体的に情報の収集や分析、まとめを行う「個人探究」を導入した(4~6年)。

 昨年度末からカリキュラムの整備や誰でも授業ができるように指導案や授業スライドを作成するなどの準備を行ってきた。職員の異動などもあり、年度初めに共通理解を行い、実践を行った。

【第1回(第1・2時/35時間)】4月17日実施

 4〜6年生の各担任より、探究学習の意義や進め方についてのガイダンスを行った。その後、児童はウェビングマップを活用し、自身の興味・関心を出発点としたマップを作成して探究テーマを設定した。さらに、選んだテーマに関して「既に知っていること」や「より深く調べてみたいこと」を洗い出し、次時における具体的な課題設定へとつながる活動を展開した。

【担任によるガイダンス】

【児童のウェビングマップ】

【第2回(第3・4時/35時間)】5月29日実施

 前回児童が設定したテーマに基づき、全体を6分野(①生き物・自然科学、②メディア・ゲーム・IT、③スポーツ・身体科学、④食文化・生活科学、⑤表現・技術・デザイン、⑥歴史・文化・国際)に分類した。これに伴い、教職員もそれぞれの専門や得意分野に応じて各担当に配置し、分野別の指導体制を構築して授業を展開した。

 本時はまず、課題設定を行うにあたり「どのような問いが探究的な学びとして適切であるか」について、具体的な事例を示しながら児童と共通理解を図った。その後、児童は各自で課題設定に取り組んだ。その際、自身のアイデアを深めたり問いを具体化したりするための伴走支援として、生成AIBIPLOGY(BIPLOGY「AIコンシェルジュ」)を効果的に活用させた。

 生成AIBIPLOGYとの対話や、そこから得たヒントをもとに問いが定まった児童から順次、担当教員との個別面談を実施して問いの吟味・精査を行った。問いが確定した児童は、ステップチャートを活用して今後の学習計画の作成へと進み、次時以降の情報収集フェーズにおいて「何をどのように調べていくか」という具体的な見通しを立てた。

【生成AIとの対話】

【担当教員との面談】

【第3回(第5・6時/35時間)】6月12日実施

 本時は、ステップチャートを活用した学習計画の作成を主体として活動を展開した。児童の間で計画作成の進度に少しずつ差が見られ始めたものの、それぞれが担当教員との面談で得たアドバイスをもとに、自身の探究プロセスを丁寧に見つめ直し、計画の精査・修正に取り組む姿が見られた。

 個人探究の実施後には、教職員が分野ごとに集まって実践内容の情報共有を行った。具体的には、自身が担当する児童の学習計画を互いに持ち寄り、次時以降の情報収集に向けて、それぞれの児童にどのような具体的な指導や支援が必要かについて多角的に話し合った。そのうえで、効果的だった指導アプローチや活用した教材についてカリキュラムへの加筆・修正を行い、次年度以降にもつながる指導実践の蓄積とカリキュラムマネジメントを推進した。

【ステップチャートによる学習計画】

【カリキュラムへの加筆】

【第4回(第7・8時/35時間)】6月19日実施

 本時は、前回までに作成したステップチャート(学習計画表)に基づき、具体的な情報収集活動を展開した。児童は、自ら立てた見通しに沿って主体的に活動に取り組み、本格的な探究フェーズへと移行する姿が見られた。

 各分野において、単なる文献やウェブサイトでの検索にとどまらず、体験や実験、データの分析を伴う多様な情報収集が行われた。例えば、生物分野ではハムスターが気に入るおもちゃを調べるために、様々な形状のおもちゃを自作して実際の反応を検証するための準備活動が見られた。また、スポーツ科学分野では、柔軟性を高めるアプローチに着目し、事前に長座体前屈で現在の記録を計測した上で、プランク等の様々な運動を実施し、その前後で記録がどのように変化するかを実際に測定して分析・検証する姿が見られるなど、各自の問いに応じた実践的な活動が展開された。

【実物を作成して実験準備を行う】

【実験・計測し、データを収集する 】

アドバイザーの助言と助言への対応

【個人探究 4回目(7・8時間目)】

〇探究や自己調整において戸惑い・不安を抱える児童への理解と支援
【助言】

 一般に、学力層が5段階中の「3・4」に位置する比較的学力の高い児童ほど、自由度が高くなると不安や戸惑いを感じ、構造化された(やることが決まっている)学習を好むため、探究学習を苦手とする傾向がある。一方で、5や1の児童は自由度の高い学習に意欲を示し、内容や方法を選択できることでモチベーションが高まる傾向がある。

 探究や自己調整で戸惑う児童への支援の基本は「メタ認知」にある。児童が自分自身の学びや状態をどのように見ているのかに焦点を当てることが重要である。

【対応】

 どのような傾向を持つ児童が不安を感じやすいのかを職員間で丁寧に見極め、単に自由放任にするのではなく、適切なヒントや支援といった足場かけを丁寧に行う。その上で段階的に委ねていく指導の構造化を意識する。また、振り返りシート等を通じて、児童自身が自分の学びの状態をメタ認知できるよう見取りを強化する。

〇本校の探究学習において「育てたい資質・能力」の明確化と評価
【助言】

 個人探究や協働探究というプロセスを通じ、多度津小学校として最終的にどのような力を育てたいのか(粘り強さ、計画力、コミュニケーション力、回復力など)を明確にする必要がある。同時に、各教科の授業で培った思考力や見方・考え方がこの探究活動の中で実際に活用されているかを見極め、それらをどのような方法で多面的に評価していくかを検討しなければならない。

【対応】

 目指す児童像の具現化に向けて、探究で育むべき資質・能力を整理する。今後の評価規準の作成において、単なる知識・技能の修得度ではなく、粘り強さや計画の調整力といった自己調整に関わる力をいかに見取り、フィードバックするか、検討する。

〇「オーセンティック(本物の)な学び」の追求と、日常の授業からの接続
【助言】

 探究が、児童の日常生活や社会のどこかと確かに結びついている「本物の学習(オーセンティック・ラーニング)」になっているかを常に意識する必要がある。また、探究は総合的な学習の時間のみで完結するものではない。日常の授業の終末における教員の意図的なつぶやきが、授業後の新たな問いや探究を生み出すきっかけとなる。

【対応】

 児童の問いが社会や生活の実態から乖離しないよう伴走支援を行うとともに、学年末には、各教科の中で、どのような資質能力や見方・考え方を身に付けておくのか整理しておく。

〇探究における教員の関わり方・伴走者としての在り方
【助言】

 教員の役割は、指示や答えを提示する「指導者」ではなく、相談に乗り、適度なヒントを与えながら、徐々に足場を外していく「伴走者」である。考えて実行するのはあくまで児童本人である。教員自身も、児童とともに不思議がり、ともに疑問を持ち、ともに考える存在であるべきである。

【対応】

「子どもに委ねる」という定義を、何も教えないことではなく、「必要なヒントや支援を与えた上で委ねること」であると職員間で確認した。第3回以降の実践に見られる分野別ミーティングをさらに活性化させ、教員自身もチームとして楽しみながら子供に伴走するマインドを醸成していく。

本期間の裏話

〇「多小っ子ラボ」の本格始動と指導体制の構築

 昨年度、全員でカリキュラムの見直しから着手しようと始動した本校の研究であるが、今年度はそれを具現化する「多小っ子ラボ(個人探究)」がいよいよ本格的に始まった。児童が設定したテーマは非常に多岐にわたり、これらにどのように向き合い、どのように問いの質を高めていくかという指導体制の構築には苦心した。そこで今年度は、教職員が学年の枠を越え、それぞれの専門や得意分野に応じて6分野に分かれて担当する体制をとった。さらに、児童の問いを具現化するための伴走支援として生成AIを活用するという、新たな試みも導入した。

 まだまだ始まったばかりで、確固たる手応えや成果と言えるものはまだない。しかし、昨年度のように迷走したり孤立したりするのではなく、教職員全員がひとつのチームとなり、子供たちの学びを支えるために「どう授業をつくっていけばよいか」を一緒に悩み、真剣に考えようとしている。その全員の姿勢とチームとしての歩みに、何よりの心強さを感じている。

本期間の成果

〇研究ビジョンの共有と浸透

 全職員で今年度の研究ビジョン(「自己調整学習」および「個人探究(多小っ子ラボ)」)を共有し、目指すべき方向性についての共通理解を図ることができた。

〇年間カリキュラムの構築と円滑な指導の開始

 個人探究(多小っ子ラボ)の年間カリキュラムの骨子を策定したことで、見通しを持った組織的な指導体制を整え、初期段階の活動を極めて円滑に始動させることができた。

〇研究授業を通じた具体的な授業イメージの構築

 6年算数科における研究授業の実施を通じ、ICTを効果的に活用した自己調整学習の具体的な授業デザインや指導法のイメージを、職員間で広く共有・具現化することができた。

今後の課題

〇日常の授業における自己調整学習の単元化とカリキュラムの見直し

 6年算数科の実践において自己調整学習の在り方のビジョンが共有された一方、こうした自己調整学習を他の学年や教科のどこで、どのように取り入れられるかの精査はこれからである。今後は、日常の授業から児童の「もっと知りたい」という探究心を生み出す授業デザインを意識しつつ、学校全体のカリキュラムを見直し、単元化を組織的に進める必要がある。

〇探究的な学習に対して戸惑いや不安を抱える児童への足場かけの具体化

 吉崎先生の助言にもあったように、自由度が高くなると戸惑いを示す児童に対し、どのような具体的な支援が必要かを見極めなければならない。完全に子どもに委ねて孤立させるのではなく、適切なヒントや支援を与えた上で段階的に委ねていくための、教員の具体的な関わり方の技術を蓄積していく必要がある。

〇メタ認知を促す振り返りの充実と、児童の変容を多面的に見取る評価規準の構築

 児童が自らの学びを客観的に見つめるメタ認知の力を育てるため、児童自身の振り返りの質をどう高めるかが課題である。同時に、探究学習や自己調整学習を通じて「本校として最終的にどのような資質・能力を育てたいのか」を明確にしたい。

今後の計画

  • ・全学年における自己調整学習の場面抽出と単元計画の作成
  • ・公開研究会に向けた自己調整学習及び個人探究の準備(授業案)

成果目標

  • ・全学年の国語・算数・社会・理科(生活科)における、自己調整学習を活用できる場面の抽出と、それに基づく単元計画の立案(カリキュラムの作成)
アドバイザーコメント
吉崎 静夫 先生
日本女子大学
名誉教授 吉崎 静夫 先生

 昨年度は、総合的な学習の時間に同一の大きなテーマのもと、グループごとに異なる課題について探究する「協働探究」を行った。そこで得られた「探究的な学び方」を生かし、児童が自ら問い(テーマ)を設定し、その解決に向けて主体的に情報の収集、整理・分析、まとめ・表現を行う「個人探究(多小っ子ラボ)」が今年度4月から4~6年生でスタートした。

●本期間の研究成果

(1)「多小っ子ラボ(個人探究)」の年間計画の整備と実践

「探究学習」に関して、総合的な学習の時間を使って、隔週ごとに2コマ(45分連続の90分間)の「個人探究(4年生以上が自分の好きなことや興味があることをテーマに設定して、探究学習を展開する)」と「協働探究(学年ごとに共通のテーマを設定して、探究学習を展開する)」が交替で行われることになった。このように、「個人探究」と「協働探究」を交替で行うことは、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の両全という意味でも価値がある。

(2)教科での「自己調整学習」

 前回の訪問の際にアドバイスした「自己調整学習のあり方(単元の前半はクラスみんなで共通学習を行い、単元の後半で児童それぞれの習熟度、興味・関心、学習タイプに対応するための自己調整学習を行うこと)」をふまえて、6年算数「分数」の授業で「自己調整学習」が行われた。このように、大事なことは「共通と選択のハイブリッド型の単元構成」をデザインすることである。

●今後の課題と期待

(1)探究学習や自己調整学習において戸惑い・不安を抱える児童への支援

 探究学習や自己調整学習で戸惑う児童への支援の基本は「メタ認知」にある。児童が自分自身の学びの状態をどのように見ているのかに焦点を当てることが重要である。

 どのような傾向を持つ児童が不安を感じやすいのかを職員間でていねいに見極め、単に自由放任にするのではなく、適切なヒントや支援といった足場かけを行う。その上で段階的に児童に委ねていく指導(足場はずし)を意識する。また、振り返りシート等を通じて、児童自身が自分の学びの状態を的確にメタ認知できるよう見取りを強化する。

(2)本校の探究学習において「育てたい資質・能力」の明確化と評価

 個人探究や協働探究というプロセスを通じ、多度津小学校として最終的にどのような力を育てたいのか(課題発見力、計画力、情報活用力、粘り強さ、コミュニケーション力、回復力など)を明確にする必要がある。同時に、各教科の授業で培った知識・技能や見方・考え方(思考力)がこの探究活動の中で実際に活用されているかを見極め、それらをどのような方法で多面的に評価していくかを検討しなければならない。

(3)「オーセンティックな学び(真正な学び)」の追求と、日常の教科の授業からの発展

 探究学習が、児童の日常生活や社会のどこかと確かに結びついている「本物の学習(オーセンティック・ラーニング)」になっているかを常に意識する必要がある。また、探究は総合的な学習の時間のみで完結するものではない。そのためには、日常の教科学習においても、「教科と日常生活とのつながり」や「ある教科と他教科とのつながり」を意識した授業デザインと授業実践を心がける必要がある。さらに、授業の振り返りにおいて、児童に「今日学んだことが日常生活や社会とどうつながるのか」を意識させる必要がある。また。授業の終末における教員の意図的なつぶやきが、授業後の児童の新たな問いや探究を生み出すきっかけとなることも考えておく必要がある。