2026年度(第52回)助成金贈呈式・スタートアップセミナー

開催日 2026年5月29日(金)
場 所 KFC Hall&Rooms
      (東京都墨田区)

2026年5月29日、2026年度(第52回)実践研究助成 助成金贈呈式・スタートアップセミナーを開催しました。会場には助成先や専門委員の先生方、ご来賓の方々約120名にお集まりいただきました。

第1部の助成金贈呈式では主催者挨拶、文部科学省様からのご祝辞とご講演、助成先代表による抱負、選考委員長のお話、前年度の実践研究助成 助成先8校によるポスターセッション、パナソニックグループの学び支援プログラムのご紹介が行われました。

第2部のスタートアップセミナーでは、今年度の助成先の皆様と専門委員の先生方が19のグループに分かれて、実践研究の内容について協議するグループディスカッションを行いました。

第3部の交流会では、助成先の皆様と専門委員の先生方との交流の機会を設けました。「GIGAスクール構想」によって整備されたICT環境をどう活かしていくのか、生成AIを始めとする新しい技術を学校現場にどう取り入れていくのかなど、活発な議論が行われました。

第1部 助成金贈呈式

主催者挨拶

写真:小野理事長

生成AIを始めとする技術革新が進む中
改めて問われる、目指すべき教育と社会

パナソニック教育財団 理事長 小野 元之

文部科学省におかれましては、次期の学習指導要領の改訂に向けた論点整理を経て、各教科における議論が活発に進められております。GIGAスクール構想も第2期に入ったことを踏まえて、1人1台端末をどのように有効に活用し、個別最適な学びと協働的な学びをうまく組み合わせていくかが重要になってくると思われます。

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昨今、世の中を席巻している生成AIを始めとする技術革新が急速に進む中で、どのような教育や社会を目指しているのかが改めて問われております。ICTの活用は、子どもたちが自ら考え、仲間と協働しながら課題を解決する大きな助けになるだけでなく、校務の改善等にも活用していくことが必要ではないかと思っております。

パナソニック教育財団は2023年に50周年を迎え、これまでに、全国の初等中等教育機関数の約10%に当たる約3,600校に実践研究助成を差し上げてまいりました。助成金だけでなく、財団の専門委員である大学の先生方の専門的なサポートが受けられることが特徴です。オンラインサポートにも、すでに18校の皆様から、お申し込みをいただきました。また、ICTを活用した学習の発表の場として、プレゼンテーションコンクールも実施しております。そして来年の春には、研究成果報告書をおまとめいただいて、全国の学校の参考にしていただきたいと考えております。

これからも微力ではございますが、子どもたちの情報活用能力の抜本的な向上へお役立ちができるように進めてまいります。

文部科学大臣 松本 洋平 様よりご祝辞

写真:浅原 寛子氏

効果的な実践事例の創出と横展開を通して
個別最適な学びと協働的な学びを一体的に実現

文部科学省 初等中等教育局
参事官(デジタル学習基盤担当)
浅原 寛子 氏(代読)

このたび、助成を受けられることとなった学校及び研究グループの皆様、誠におめでとうございます。ICTの進化やネットワーク化により経済や社会の在り方、産業構造が急速に変化する大変革期Society5.0が到来し、ICTを最大限に活用して、未来社会を担う子どもたちが多様な課題を主体的に解決する力を育む環境づくりが重要になっています。

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現在、中央教育審議会では次期学習指導要領に向けた検討が進められています。学習の基盤となる資質・能力として情報活用能力が位置づけられ、抜本的な向上を図る方策についても議論されています。文部科学省はGIGAスクール構想による1人1台端末環境を始め、デジタル技術の活用を前提とした新しい学びを今後も着実に推進してまいります。

一方で、ICTを活用した先進事例は数多く創出されているものの、1人1台端末の利活用の状況には自治体間・学校間で差が見られます。効果的な実践事例を創出し、横展開を進めるとともに、自治体等に対する伴走支援を充実させ、誰一人取り残されない学びの実現に向けて取り組んでまいります。

本日お集まりの皆様には、ICTを活用した教育のさらなる可能性をご探究いただくとともに、それぞれの地域や学校、教育関係機関へと成果を発信いただきたいと考えています。このような取り組みの広がりが、全国規模でのICT活用の質的向上と持続可能な教育の実現につながると確信しています。文部科学省も引き続き、すべての子どもたちの可能性を最大限に伸ばす個別最適な学びと協働的な学びの一体的な実現に向け、ハード・ソフトの両面から、GIGAスクール構想のさらなる推進に取り組んでまいります。

ご講演

写真:浅原 寛子氏

GIGAスクール構想の推進について

文部科学省 初等中等教育局
参事官(デジタル学習基盤担当)
浅原 寛子 氏

実践研究に取り組む先生方に向けて、文部科学省の豊富なデータをもとに、ご講演いただきました。初等中等教育に関して、今どんな議論が進んでいるのか、学習指導要領改訂の議論では、情報活用能力に関して何が論点となり、GIGAスクール構想は今後どうなっていくのか、さらに生成AI利活用や校務DXの推進についても、現状をご発表いただきました。

1.初等中等教育に関する最近の政策動向

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今後の少子化と産業構造のギャップを念頭に、さまざまな政策が議論されています。2040年には生産年齢人口が約1,100万人不足するという予測があり、生成AIやロボットによる自動化の影響で、事務・販売・サービスなどの従事者に約300万人の余剰が生じる一方で、AIやロボットの活用を担う人材が約326万人不足する可能性が指摘されています。そんな中で、子どもたちに、どのようにして情報活用能力を身につけ、人材育成を進めていくかが議論の中心になっています。最近の動向は次の3つです。

①高校教育改革

文部科学省は今年2月、高校教育改革に関する基本方針(グランドデザイン)を示し、公立高校の役割について議論しています。高等学校教育改革促進基金を創設し、各都道府県と連携しながら、アドバンスト・エッセンシャルワーカーの育成支援、理数系人材の育成支援、多様な学習ニーズに対応した教育機会の確保に対する支援を進めています。

②デジタルな形態を含む新たな教科書の導入に向けた制度改正

現在、学校での使用義務や検定・採択・無償給与となるのは紙の教科書だけです。学校教育法を一部改正することで、紙中心の学習環境にデジタルを取り入れ、英語でネイティブの音声を聞いたり、理科の実験の動画を見たり、数学の図形を画面上で動かしたりすることが可能になります。紙かデジタルかの二項対立ではなく、紙とデジタルのベストミックスを追究していくことが大事だと考えています。

③学校における働き方改革

また、文部科学省では、学校における働き方改革も進めています。今年4月から施行されている、いわゆる給特法は先生方の処遇を改善することが大きな目的ですが、働き方改革推進法とも言えるのではないかと思っています。すべての教育委員会に、働き方改革推進計画を定めていただくよう、お願いしています。

2.情報活用能力の抜本的向上~学習指導要領改訂の議論から~

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現在、中央教育審議会で次の指導要領改訂に向けた議論が進められ、情報活用能力の抜本的向上を図る方策、質の高い探究的な学びの在り方、文理横断・文理融合の観点からの改善の在り方、生成AIの利活用を含む今後の外国語教育の在り方などが論点となっています。

情報活用能力育成に関する課題としては、学習指導要領上の位置づけが明確でなく、小学校では総則で取り扱われ、各教科で取り組むとしながらも、コンピュータやネットワークの仕組みの理解が扱われておりません。中学校においても同様です。生成AIなどの先端技術に関わる内容も明確に位置づけられておらず、学校間で大きな取り組みの差が見られます。小・中・高を通じて、情報活用能力を体系的に育成することが課題で、枠組みが議論されています。具体的には、小学校の総合的な学習の時間に情報の領域を新たに設け、探究的な学びの中に情報を位置づけ、中学校に情報・技術科を創設し、高校の情報科につなげていきます。

情報活用能力の「活用」を中核的な構成要素と位置づけ、その力を発揮するために「適切な取り扱い」と「特性の理解」が必要で、小・中・高を通して、発達段階に即した学習活動を検討すべきである、といった議論がワーキンググループで行われています。

初等中等教育における教育過程の基準等の在り方について(諮問):文部科学省>

教育課程部会 情報・技術ワーキンググループ:文部科学省>

3.学習指導要領改訂を見据えたGIGAスクール構想の今後

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GIGAスクール構想は令和6年度から第2期となり、端末の更新も今年度中に約95%が終了する見通しです。必要なネットワーク速度を確保済みの学校も、令和10年度には約95%に達する見込みです。これをより深い学びに、どうつなげていくかが課題です。

全国学力・学習状況調査の結果によれば、児童生徒同士がやり取りをする場面、自分の考えをまとめて発表・表現する場面、自分の特性や理解度に合わせて取り組む場面、協働的な学び、主体的な学び、個別最適な学びにおける活用がまだ十分ではありません。一方で、9割以上の学校が「ほぼ毎日」「週3回以上」活用している状況です。ICT機器を使って情報を整理できる児童生徒ほど、各教科の正答率・スコアが高い傾向も見られます。

文部科学省でもさまざまな事例を集め、気軽に参加できる公開学習会などを開催し、「StuDX Style(スタディーエックス スタイル)」というウェブサイトで紹介しています。また、GIGA StuDX推進チームでは、現場の先生方にさまざまな端末の効果的な活用方法を発信していただいています。

StuDX Style(スタディーエックス スタイル):文部科学省>

4.生成AIの利活用

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文部科学省は、初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドラインを策定し、人間中心の生成AIの利活用であることを原則として掲げています。

教職員の方々に使っていただく場合は、校務の効率化や質の向上といった面で、働き方改革につなげていくことが期待されます。学校のホームページや学校だよりの原案を作成したり、外国にルーツをもつ子どもたちの保護者の方々に即した言語でコミュニケーションを取る、といったことが考えられます。一方で、児童生徒の学習活動については、発達の段階や情報モラルの育成などの状況にも留意しながら、リスクや懸念に対策を講じた上で利活用を検討すべきだとしております。教育活動の目的を達成する観点から、効果的かどうか吟味することが必要であるということです。

文部科学省ではパイロット校事業を行い、さまざまな実践事例が生まれてきています。これらを横展開しながら、効果的に使っていただけるよう、発信を進めていきたいと考えております。

学校現場における生成AIの利用について:文部科学省>

5.教育データの利活用・校務DXの推進

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校務における業務時間の削減の事例もありますので、ご参考にしていただければと思っております。文部科学省は安心・安全に学校現場でAIを使っていただけるように、教育分野に特化したAIの開発実証を、現場の先生方のご意見をうかがいながら進めてまいりたいと考えています。

自治体の事例紹介:文部科学省>

※文部科学省ホームページに掲載されている実践動画や研修動画、資料はこちらをクリックください。

奨励状授与・助成先代表抱負

写真:京都市立藤城小学校 写真:京都市立藤城小学校 大松有香先生

AIを思考のパートナーとし、教師の専門性を向上

【一般助成】
京都市立藤城小学校
大松 有香 先生

本校では、教師の専門性向上に焦点を当て、研究・研修を重ねてきました。これまでの事後研究会では、授業者の印象や教師の記憶に頼り、議論を深めにくい現状がありました。そこでAIによる発話分析を取り入れ、教師の言葉を客観的なデータに変換するデータ駆動型の事後研究会への転換に挑戦します。私たちはAIを思考のパートナーとして、客観的なデータをもとに、事実から目をそらさず、素直な心で向き合いたいと考えています。本日いただいた助成を糧に、子どもたちと教師自身がともに学び続け、未来を切り拓く学校づくりに精進することを誓い、決意の挨拶といたします。

選考委員長のお話

写真:赤堀侃司氏

実践の中に活かせる研究を

東京科学大学(旧・東京工業大学)名誉教授/選考委員長 赤堀 侃司 先生

今年は、特別研究指定校には14件の申請があり、4件が採択され、一般校には210件の申請があり、65件が採択されました。全体では224件のうち69件で、3倍以上の倍率ですから、ここで採択されたことは本当に大きな成果だと思います。

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特に伸びたテーマは探究学習です。それから、次期学習指導要領の柱となることを見越して、情報活用能力の申請も増えています。生成AI関連の申請は、2年前の4%から今年は18%に増えました。助成金の用途としては、2021年度は最も多かったのが備品で64%でしたが、GIGAスクール構想で、1人1台端末が実現したことで、2021年度は6%だった旅費が2026年度には18%に増えました。先進の学校や学会の研究を見て、備品を実践に活かす方向へとシフトしてきたからだと思います。

私は5年前から教育センターのアドバイザーとして、ボランティアで学校を訪問してきましたが、研究と実践が自分の中でなかなか結びつかず、ようやく、それらしいコメントが言えるようになってきました。実践の中に活かせる研究をしようというのが、まさにパナソニック教育財団の本音で、今の日本の教育が求めていることでもあります。そのノウハウを、これからもっと広げていっていただきたいと思います。

2025年度(第51回)実践研究助成 助成先によるポスターセッション

発表校一覧

写真:発表校一覧

今年は新たな試みとして、ポスターセッションを行いました。2025年度の実践研究助成を受けられた8校の助成先の皆様に、それぞれの会場で、研究成果について、25分間の発表を2回行っていただきました。その模様を一部、お伝えします。


写真:三堀正貴先生

肢体不自由のある児童生徒の視点で
介助の「ここちよさ」を可視化

広島県立福山特別支援学校 三堀 正貴 先生

<研究成果報告書>

重度重複障害のある児童生徒が多く在籍する広島県立福山特別支援学校では、介助や支援の技術が口頭や実技指導頼りで細かなニュアンスが伝わりにくく、習得に時間もかかることが課題でした。そこで、昨年度は介助動作の動作解析システムを構築し、今年度は介助される児童生徒の視点で、「ここちよさ」を可視化して検証することになりました。会場に実際に体圧分散を測定できる機器を用意し、助成先の先生方は交代でいすに座って、体圧の高い部分にポジショニングクッションを入れてもらい、体圧が分散されていく様子をモニターで確認していました。


写真:井上賞子先生

読み書きに困難を抱える子どもが
力を発揮するためのICT活用を検証

松江市立島根小学校 井上 賞子 先生

<研究成果報告書>

本校の通常学級には、特別な支援を要する児童が少なくありません。しかし従来の学校現場では、全員に同じ条件を課す「過度な平等観」が根強く、特にテストでの配慮が躊躇されてきました。これは、読むことや書くことに困難のある児童に対して、テストを受ける前提となる「情報を正しく受け取る力」や「自分の考えを出力する力」への支えがない状態で評価を行っていることに他ならず、本来提供されるべき合理的配慮が機能していないという大きな課題がありました。

そこで、そうした子どもたちが本来の力を発揮できるよう、ICTをテスト場面で活用する実践に取り組みました。

児童Aさんのケースでは、事前に録音しておくことで、シールを専用ペンでタップするだけで読み上げてくれる「音声ペン」の導入や、専用サイト「もじソナ」などの活用を通じ、情報入出力のバリアを取り除くことで、Aさんが持っている力を発揮できる環境を整えることができました。


写真:山根真一郎先生

生成AIを使ってみる文化を醸成し
教育DXの新たな価値を創造

守山市立守山南中学校 山根 真一郎 先生

<研究成果報告書>

守山市立守山南中学校では、教員の生成AIやICT活用に対する心理的抵抗を低減するために、まずは使ってみる文化を醸成することで、教育DXの新しい価値を生み出そうと考えました。そこでシステムの導入によって、1年目は業務改善に取り組み、年間450時間以上の業務を削減。2年目は研修を通じて、教員が日常的に生成AIを使える土台を整え、校内にAIについて気軽に学べるスペースをつくり、校務に使える独自のアプリも開発しました。そして3年目の今年度は、教員からの要望を受け、授業で生成AIを活用する方法について研究する実践を進めています。


写真:空野剛先生

地域と協働した探究活動「探Q」
生成AIを活用し、即時にフィードバック

愛媛県立伊予高等学校 空野 剛 先生

<研究成果報告書>

愛媛県立伊予高等学校では、地域と協働した探究活動「探Q」が、入学してくる生徒たちの志望理由にもなっていますが、教員が生徒一人ひとりに、即時にフィードバックを返すのが難しいことが課題でした。そこで、生成AIの活用を提案。ガイドラインを整備し、企業と協働して、生成AIを使った探究支援の振り返りアプリ「LoooQ」を開発しました。生成AIによる即時フィードバックが、生徒一人ひとりの振り返りの習慣化や次の行動への意識づけにつながり、探究活動のサイクルをより深めることにつながったとのことです。


パナソニックの学校向け支援プログラムの紹介

写真:北原沙央里氏

子どもたちの学びを支援する学校向けプログラム

パナソニックホールディングス株式会社
企業市民活動担当室
北原 沙央里

パナソニックグループは社会課題の解決に向けて、貧困の解消、環境、人材育成(学び支援)という3つの重点テーマを掲げ、企業市民活動に取り組んでいます。本日は、皆様と特に関連のある学び支援のプログラムを2つ、ご紹介します。

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1つ目の「キッド・ウィットネス・ニュース」は小・中・高の子どもたちを対象とした映像制作のプログラムで、創造力やコミュニケーション力、チームワークの醸成が目的です。完成した作品は日本のコンテストでの審査を経て、グランプリを受賞した作品は、世界10カ国が参加するグローバルコンテストに出品されます。自分の思いをどう表現すれば人に伝えることができるのか、時間をかけて、じっくり取り組むことができる活動です。

そして、もう1つが「みんなで“AKARI”アクション」の子どもたちによる特別企画です。無電化地域の現状を学ぶとともに、使い終えた本やCDを集めていただき、その収益をパナソニックがソーラーランタンに換えて現地に届けます。と同時に、現地の子どもたちと手紙で交流する機会を設けています。子どもたちが、自分の行動が誰かの役に立つことを実感し、社会課題を自分事としてとらえるきっかけとなります。総合学習の時間などに、ご活用いただければ幸いです。ぜひ、ご検討ください。

パナソニックの企業市民活動

キッド・ウィットネス・ニュース(KWN)

みんなで“AKARI”アクション – サステナビリティ – パナソニック ホールディングス

第2部 スタートアップセミナー

グループディスカッション

写真:グループディスカッション

第2部では、特別研究指定校と一般助成先が19のグループに分かれて、グループディスカッションを行いました。それぞれのグループには専門委員の先生方にも加わっていただき、最初に、助成先の先生が研究概要を発表。その内容をさらにブラッシュアップするために、専門委員の先生や助成先の先生方が意見を出し合い、今後の活動方針について話し合いました。その中から、生成AIやデジタルポートフォリオを活用した研究に取り組んだ、佐藤 幸江 先生(放送大学)のグループの様子をご紹介します。


生成AIや地域と対話し、先端機器で思いを形にする「共創の時間」

久喜市立久喜小学校 林 大輔 先生

本校は、教科横断型の探究活動を通じた人と生成AIの協働的な創造を「共創」と位置づけ、今年度より教育課程特例校を申請し、「共創の時間」を140時間設定しました。情報を扱うAIタイムで知識をしっかり学び、後半のアウトプットでは、地域や友達、教師、保護者、そして生成AIを対話の相手として位置づけた学びをどの教科でも行い、自分の考えを整理し、相手に応じた多様な表現を豊かに行っていくことを意識しました。さらに、意図的にものづくりを取り入れ、3Dプリンタやレーザー・ブレード加工機、ドローンなどの先端機器を使って、思いを表現していきます。

共創の時間には、地域に根差した体験的な活動として、教師が発掘してきた地域の人材と1年をかけて交流し、実社会を動かす提案をします。子どもたちの言語能力の変容・先端技術による表現・社会とのつながりという3つの項目に関して、児童の視点のルーブリックと教師の見取りの視点のルーブリックを設定しています。

●他校の先生方との質疑応答

Q「物ありきのカリキュラムにも見えました。子どもたちが創造したいものが、先端機器を使わないものだった場合は、どうするのですか?」

林 先生「子どもたちからの提案で出てこなかった先端機器は使いません。しかし、AIタイムの中で、事前に先端機器や技術を子どもたちが体験することが大切だと捉えています。事前に学校で学ばなくては、自分たちが行いたい表現活動を検討する際に発想も出てこないし、先生たちが使い方を知らないと指導や先端機器を用いた表現活動の良さを伝えることもできないので、先生たちは育てたい子どもたちの資質・能力を一番大事に考えながら、そのために適した題材は何なのか、話し合いを重ねています」

●放送大学 佐藤 幸江 先生のコメント

先進的なものとリアルなことの融合を目指した取り組みとして評価できます。ただ、1年しかない研究なので、皆さんに普及したいところを絞ったほうがいいと思います。「共創」の定義を明確にし、どうなったら実現したと言えるのか、先生方と共通理解をしていくことも必要です。加えて、情報活用能力をどのように体系化していくのかがあると、普及させやすいのではないかと思いました。


生成AIを活用し、問いを立て、社会的アクションにつなげる

学校法人賢明学院 賢明学院小学校 榎本 裕司 先生

本校は全校児童230人ほどの私立の小学校です。探究学習が、よくある調べ学習で終わってしまうことと、子どもたちの成果物に対する個別フィードバックに時間がかかり、教師の負担になっていることが課題でした。そこで、児童が自分で問いを立て、根拠をもって考え、社会的アクションにつなげることが必要だと感じ、生成AIとの対話を通じて解決しようと考えました。

昨年、6年生の理科の授業では、子どもたちが、プールの中に生えていた藻に気泡がついていることに気づき、光合成と水溶液の学習を応用することで、藻が海洋酸性化を中性に近づけることができるのではないかと提案しました。そこで、みんなで炭酸水を使って実験を行った授業実践の研究が国際学会で採択され、今年3月に発表を行いました。そして本年度から本校では15分間の「KENMEI Time」という時間を設け、5・6年生には週4回の帯時間の中で、月曜日には問いづくりのスキルを、火曜日にはキーワード(タグ)を選択し、木曜日は自分の主張を書いて、金曜日に子どもたち同士で共有するマイクロトレーニングを実施しています。そこで今回、生成AIは、児童の考えを深めるために問いを返す壁打ち相手として使っています。評価方法は、全国学力調査の質問紙からインテントとアクションに関わる質問を抽出して、アンケートの結果を今年4月と来年3月で比較。子どもたちの成果物についても、ルーブリック化していきたいと思っています。

●他校の先生方との質疑応答

Q「身近な事象から、子どもたちが問いを生み出すのは難しい。先生の手腕も試されるのではないですか?」

榎本 先生「ゼロから問いを見つけるのは難しくて、結局、教科書のコラムに甘えてしまっています。子どもたちが問いを抱きやすい場所に連れていくことも必要になってくると思っています。子どもたちに細かく問いかけないと、社会的アクションまでつなげるのは難しく、そのためのエンジンとして、15分のマイクロトレーニングで探究学習のスキルを身につけさせています。」

●放送大学 佐藤 幸江 先生のコメント

限定された範囲の中でエビデンスを出そうとしている、わかりやすい研究だと感じました。「Intent-Action Gap」を小学生に適用する場合、「なぜ乖離が生じるか」理論的な背景の整理が必要です。例えば、「知識不足なのか」「方法がわからないのか」「意欲はあるが機会がないのか」で手立てが違ってくるのではないでしょうか。賢明タイムに問いを立てる学習をして、理科の時間に実践するというように、縦で関係性を見ていくことも大事です。子どもたちの思考を浅くさせないように、生成AIの壁打ちの質をどう保証していくかも検討してみてください。


小中7年間の個別探究の学びをポートフォリオに蓄積

岩見沢市立第二小学校 黒坂 俊介 先生

地域の小学校と中学校で、総合的な学習の時間が行事に偏りすぎていたので、まずは小学校でゼミ形式の探究的な授業を試して、中学校でも継続できるように、今年から小学校と中学校をつなげて個別探究的な授業を始めることになりました。どんな問いや仮説を立て、どんな本を調べ、誰にインタビューしたかといった探究の流れを可視化した「探究マップ」をつくり、同じゼミ内の友達や過去の先輩の記録も見られるようにしていきます。

さらに専門家の相談窓口もつくって、保護者や地域の人に登録してもらい、子どもたちがLINEで質問できるようにしたいと思っています。AIには、その回答を、子どもたちのモチベーションが上がる形に修正するサポートをしてもらいます。以上のような小学3年生から中学3年生までの7年間の蓄積をデジタルポートフォリオとして残すために、現在アプリを開発しているところです。ルーブリックに関しては、自己評価をグラフで視覚化し、先生からの評価や振り返りのコメントも蓄積できるようにしていきます。

●他校の先生方との質疑応答

Q「小3から中3までの1人1人に合った深い学びにしていくのも、それぞれのルーブリックを設定するのも、教師にとっては大変な作業になるのではないでしょうか?」

黒坂 先生「ゼミ形式で、小学3年生から6年生までをまとめて縦割りにしているので、6年生との間に知識の差があって、ただの調べ学習になりかねない3年生に、どのように整理分析をさせていくか、悩んでいるところです。教師に向けた校内研修も22回行う計画で、うち9回は小中合同ですが、そこで年齢層の高い教員の探究学習に対する意識改革をどれだけできるかが、成功のかぎを握っているのではないかと考えています」

●放送大学 佐藤 幸江 先生のコメント

7年間の連続性という課題に正面から向き合ったところに、この研究の価値があります。この研究を市全体にどう横展開していったか、研修で先生方がどう変わったかも記録することが大切です。小・中の連続性は、単に『ポートフォリオを引き継ぐ』というだけではなく、中学校の先生が『そのポートフォリオをどう読み、どう授業に活かすか』という活用のプロセス設計が重要になってくるでしょう。また、成果目標に子どもの指標を加えると、さらに良い研究になると考えます。

第3部 交流会

第2部の終了後には、交流会の時間が設けられました。

冒頭で、専門委員長の四天王寺大学 木原 俊行 先生から、「今日は体育会系の運動部のような勢いで、いろいろなことを求められたと思います。それに応えられた助成先の先生方、お疲れ様でした。それが、これからも続いていくと思いますが、ハードなだけに得るものは大きいと思います。私はこの取り組みに何十年も参加してきましたが、そのことだけは保証できます。一般助成先の皆様は1年間、特別研究指定校の皆様は2年間重ねた取り組みが、地域や全国の学校に普及していくことを願っています」と、挨拶がありました。

助成先の先生方は、「自分たちの研究が、ほかの学校の先生にも使いやすいものとなるように努力していきたい」「助成後に何が残せるか考えながら、頑張っていきたい」「本校の研究会に足を運んでください」などと、思い思いに抱負やメッセージを述べました。

そして会場では、助成先の皆様や専門委員の先生方が、この日の事例を振り返りながら、情報や悩みを共有し、交流を深める様子がうかがえました。