北海道高等学校遠隔授業配信センター

第52回特別研究指定校

研究課題

遠隔授業が抱える課題「学習の動機づけ」と「生徒の見取り」に対する効果的アプローチの検討
~多様な学びの環境を整え、「夢は地元で掴み取る」ことを遠隔授業からサポートする~

2026年度04-07月期(最新活動報告)

最新活動報告
T-baseでは、「遠隔授業が抱える課題「学習の動機づけ」と「生徒の見取り」に......

アドバイザーコメント

重田 勝介 先生
北海道高等学校遠隔授業配信センター(以下、T-base)は、高校教育における......

北海道高等学校遠隔授業配信センターの研究課題に関する内容

都道府県 学校 北海道 北海道高等学校遠隔授業配信センター
アドバイザー 重田 勝介 北海道大学 教授
研究テーマ 遠隔授業が抱える課題「学習の動機づけ」と「生徒の見取り」に対する効果的アプローチの検討
~多様な学びの環境を整え、「夢は地元で掴み取る」ことを遠隔授業からサポートする~
目的 これまでの遠隔授業の取組やパナソニック教育財団一般研究助成2年間の取組を整理すると、①高等学校における遠隔授業の実践・研究そのものが不足している、②遠隔授業に関する先行研究が指摘する「遠隔授業は学習の動機が低下しやすい」ことへどう対応するか、③遠隔授業において生徒の活動状況の見取りが困難である、という課題が未だ解決されていない現状にあることがわかる。
こうした課題の克服に向け、生徒が遠隔授業においても高い動機づけを維持する方法を検討し、かつ生徒の活動を配信側教員が見取ることができるシステムの開発をT-base全体で行なっていく必要がある。このような授業改善に向けた取組が、遠隔授業における生徒の自己調整学習能力を高めることに繋がり、ひいては遠隔授業においても多様で質の高い授業を展開することに繋がると考える。
そこで本研究では、遠隔授業における生徒の学習への動機づけと学習の見取りを中心に授業改善を実施し、遠隔授業においても多様な学習活動が実施可能であることを明らかにすると同時に、需要が増加する遠隔授業の可能性を発信していくことを目的とする。
現状と課題 【現 状】
  • ・北海道大学重田勝介先生との事前打ち合わせを実施し、計画を再構築している段階である。現時点では、今年度4月〜7月で現状のセンターにおける遠隔授業の課題の分析(実践レポート等の分析から、遠隔授業における「困り感」の集約)を実施し、その後8月〜11月にかけ、単元レベルでの「自己調整学習」の実施、12月〜3月で授業の分析を計画している。次年度については、年間を通じて生徒の自己調整学習を育むことができるような授業デザインのもと授業を実践する。
  • ・過去4年間の授業実践レポート、「授業研究ルーム」のチャット内容を分析したところ、①意思疎通と「見取り」の困難さ、②技術的・設備的トラブル、③学習意欲の維持、④合同授業・他校間交流の難しさ、⑤実験・実技教科の制約という課題が析出され、これまでの課題感とズレがないことが確認された。前年度パナソニック教育財団一般研究助成活動報告書でも実施・報告した通り、これまでのアンケート結果から映像や音声などのハード面は授業成立における衛星要因であり、授業の動機づけ要員にはならないことが示唆された。そのため①と③の項目を中心に、授業改善へ取り組むことを確認した。
  • ・授業の「困り感」については、今後教員向けアンケートを実施し、教科性の側面まで含めて蓄積を図る。その上で適切な手法を用いて分析を実施する。
【課 題】
  • ・学校全体を巻き込む、という視点からセンター教員全体での「困り感」の集約を実施し、それを踏まえて外部講師の招聘(6月オンライン、7月以降対面)を行い、個人の授業改善へとつなげたいと考えているが、個人の授業改善へ至るまでにハードルを感じる側面もある。先生方が授業改善に向けて取り組みやすい環境を作るためには何ができるか。
  • ・「学校全体」で取り組むために必要なことは何か。
  • ・4月〜7月の分析について、現状は生成AIを用いた分析を想定しているが、研究の目的や実践内容に関わる側面もある。分析の仕方・方法について専門家、大学の先生に相談できないか。
  • ・公開研究会の実施について、その方法を含め、今後どうしていくべきか知りたい。
  • ・外部サーバーの活用に向けて、どのようなルールづくりをするか、北海道教育委員会との連携を図るのか。この場合現場からのボトムアップでの産官学連携に近い形式になる。こうした事例が過去にあるか、連携をしていく場合には、どのような方法が適切なのか、知りたい。
学校情報化の現状 遠隔授業であり、ICTを使うことに教員集団として抵抗感はほぼない。個人情報を伴うデータ以外は、生成AIの活用含め、校務においても情報化が進んでいる。
取り組み内容
  1. (1)教師の「困り感」集約・分析(授業実践レポート・「授業研究ルーム」チャット・教員向けのアンケート実施)
  2. (2)自己調整学習に関わる論文講読等の定期的な勉強会の開催
  3. (3)自己調整学習の理論に基づく単元デザイン、授業公開、授業後の合評会
  4. (4)質問紙(SRQ-A、MSL-Q)を用いた量的分析と質的分析
  5. (5)生徒の活動を見とるためのアプリケーション開発とその実施(生徒の手元を見る、オンラインでの協働的な学び)
  6. (6)自己調整学習に関わる外部講師(伊藤崇達教授)の招聘
  7. (7)北海道大学と連携したT-baseコンソーシアムの開催とその際の研究進捗状況の報告。
  8. (8)全教員による公開授業実施と遠隔授業実践レポートの執筆
成果目標
  1. (1)遠隔授業の「困り感」を集約し、その内容を分析することができている。
  2. (2)質問紙を用いた調査において、効果量として有意な数値の向上(0.4)が認められる(生徒の学習の動機づけ等)
  3. (3)動機づけと見取りを重視した授業・単元の開発(1年目は3単元、2年目は年間を通じて実施)
  4. (4)生徒の活動の見取りと協働的な学びを実践するためのアプリケーションや機材器具の開発(2つ以上)
助成金の使途 NEE・全日本教育工学研究協議会旅費、講師旅費・謝礼、書画カメラ、ハイスペックパソコン、PCモニター、遠隔授業用ロボット作成費、サーバーレンタル料他
研究代表者 千葉 康平
研究指定期間 2026年度~2027年度
学校HP https://www.t-base.hokkaido-c.ed.jp/
公開研究会の予定 2026度の内容については学会発表の予定はないが、2025度の実践内容を11月実施予定のJAETにて発表をする予定

本期間(4月~7月)の取り組み内容

(1)概況

◯実践・研究の目的

 T-baseでは、「遠隔授業が抱える課題「学習の動機づけ」と「生徒の見取り」に対する効果的アプローチの検討」という研究課題のもと、実践・研究を進めてきました。研究の出発点としては、これまで遠隔授業に携わってきた経験から、「生徒の活動の見取り」と「学習の動機づけ」に課題があるのではないかという仮説があり、その改善が結果的に自己調整学習を支える授業づくりにつながる、という見通しを持って、本実践課題を設定しています。より具体的に言えば、遠隔授業では、生徒の活動やつまずきが見えにくく、教師による即時的な支援やフィードバックが難しくなります。そのことが、生徒自身の学習状況の把握や方略の修正を難しくし、生徒の自己調整学習能力の発達にも影響を与えると考えています。また、遠隔授業では、休み時間や放課後などの教師との関係性を作る時間が少ないことや授業中にも教師の存在感を感じづらいことなどから、授業参加の実感が弱まりやすく、結果としてそれらが学習の動機づけの低下にも関わると想定しています。だからこそ、「見取り」と「動機づけ」に焦点を当てて、遠隔授業の実践・研究を進めています。

 この4月からの期間は、その仮説をすぐに実践へ移すというよりも、まず過去の実践レポート、授業研究チャット、教員アンケートなどを整理・分析し、研究の前提となる課題認識をエビデンスに基づいて確認する時期として、取り組みを進めてきました。

◯実践・研究に関わるスケジュール

 大まかに、以下のようなスケジュールで進めてきました。(2)以降で内容の詳細を、特に研究の目的に応じながら提示させていただきます。

前年度 研究申請書作成からはじめ、自己調整学習に関わる事前学習や授業公開を実施。
04/09 パナソニック教育財団事前訪問・打ち合わせ
04/10 遠隔授業における困り感の集約:実践レポートと授業研究チャットの分析
05/12 パナソニック委員会メンバー募集
05/26 遠隔授業実態調査アンケートの実施
05/29 助成金贈呈式、スタートアップセミナー
06/01 第1回学習会 「ARCSモデル」について
06/08 第2回学習会 「期待×価値理論」について
06/17 第2回T-baseコンソーシアム
06/22 第3回学習会 「自己決定理論」について

(2)研究計画の見直し、研究の進め方について

 以下2つは、研究の計画や進め方の変更に関わる部分になります。事前計画通り進めるのではなく、アドバイザーである北海道大学の重田勝介教授との相談の上、実態や目的に応じながら、研究計画を変更しつつ、実践・研究を進めております。

①パナソニック教育財団事前訪問・打ち合わせ

 事前訪問では、研究の出発点として、エビデンスに基づいた課題となっているのか実際に遠隔授業をされる先生方の困り感分析から始めよう、というアドバイスのもと、全体の計画を修正し、どうT-baseの先生方へ波及させながら取り組んでいくか、再度構想を練る時間となっていきました。また北海道における遠隔自己調整学習に関わる先行研究なども紹介していただきました。

②パナソニック教育財団助成金贈呈式・スタートアップセミナー

 助成金贈呈式では、昨年度の一般研究助成にて優秀賞をいただいた「遠隔授業における「個別最適な学び」の確立に向けた動画教材作成と反転授業・学習の実施を中心に」についてポスターセッションを実施させていただいた後、スタートアップセミナーにて、複数の研究者、複数の特別研究指定校から、研究を進めるに当たってのアドバイスを頂戴しました。以下は頂戴したアドバイスの一部です。これらに基づきながら、再度実践研究の進め方や研修の計画などを修正し、取り組みに活かしていくことができました。またこの場では多くの先生方や研究者の方々と知り合うことができ、実際に研修の資料をいただくこともあるなど、収穫の多い時間になったと思います。

(頂戴したアドバイス)

◯研究を進めるに当たって
  1. ①研究の何に焦点化するか、フォーカスを当てるのか。取り組みたい内容が多い現状にあるので、それを精査していくことが必要。実現可能性のある研究を進める。
  2. ②「こどもたちのこうなりたい」も重要だが、研究をするに当たって「評価」する部分をしっかりと設定すること。
  3. ③全国のモデル、参考になるような取り組みを進めていくこと。
  4. ④研究課題に応じて成果は変わる。自分たちの研究に合った成果を提示できるように。
  5. ⑤生徒の変容だけではなく、教師の変容とノウハウの蓄積も大事な成果である。
  6. ⑥特別研究指定校は2年間。2年間という期間を有意義に使えるように。
◯教員集団への波及、取り組みに参加をする先生方をどう増やしていくかについて
  1. ①参加のハードルをどこまで下げるか。研究に必要な要素を絞りつつ、先生方が「自分もそれならできる」という部分を作っていくことが大切。
  2. ②授業の手応えを同僚の教員へ波及させていく。特に子供の変化を実感してもらうことが先生方の価値観を揺さぶることにつながる。少しずつ仲間を増やすことができるように取り組みを進めていく。
◯研修について
  1. ①ARCSモデルに関わる研修について
    …単に解説をするのではなく、先生方の工夫や子どもが興味をもったという場面を共有するところから始めるのが良い。

(3)遠隔授業の課題を整理する

 事前訪問・打ち合わせの中であった通り、根拠のある研究を行っていくためにも、過去の実践を整理し、そこから遠隔授業において先生方が抱えている課題は何か、研究の方向性を定めるために実施をしました。

①実践レポート集・授業研究チャット分析 ※実践レポートはこちら

 T-baseでは毎年、次年度の引き継ぎや実践を広く公開していく目的のもと、「実践レポート集」を作成しています。また授業の中での工夫や気づきをchat上にて共有しております。それらのデータについて分析したところ、以下のような課題が遠隔授業にはあると整理することができました。

1:意思疎通と「見取り」の困難さ 2:技術的・設備的トラブル
3:学習意欲の維持        4:合同授業・他校間交流の難しさ
5:実験・実技教科の制約

 このような課題が析出され、これまでパナソニック委員会を中心に感じていた課題感とズレがないことが確認されました。前年度パナソニック教育財団一般研究助成活動報告書でも報告した通り、これまでのアンケート結果から映像や音声などのハード面は授業成立における衛生要因であり、授業の動機づけ要員にはならないことを確認しています。そのため1と3の項目を中心に、授業改善へ取り組むことを確認しました。

※授業実践レポートリンクと「授業研究ルーム」チャットの画面

②遠隔授業における実態調査アンケートの実施 →詳細はこちら

 遠隔授業における「課題」をエビデンスをもとに明らかにするため実施しています。質問項目は以下の通りです。

番号 項目
x1 生徒が手元のノートやワークシートに書き込んでいる内容や手元の細かな動きをリアルタイムで把握することに困難を感じる。
x2 画面越しのため、生徒が「間違えたくない」という心理的障壁を感じているようで、発言や反応が乏しくなりがちである。
x3 授業前後や休み時間のちょっとしたやり取り(隙間時間)がなく、個別の生徒へのきめ細かなフォローがしにくい。
x4 下位層の生徒のつまずきを見逃しやすく、学力層によって学習意欲や成果の差が広がっていると感じる。
x5 対面授業に比べて意思疎通に時間がかかり、予定していた授業進度よりも遅れてしまう。
x6 ハウリングや音声の途切れ、ノイズによって授業が中断したり、聞き取りにくかったりすることがある。
x7 ネットワークの不安定さや、使用しているアプリ(zoom, FigJamなど)のフリーズにより、学習が停滞することがある。
x8 学校によって端末のスペックやOS(iPad、Chromebookなど)が異なり、一斉の操作指導が難しい。
x9 遠隔授業のためのデジタル教材や動画の準備、事前の接続確認などに、対面授業以上の多大な時間と労力を要している。
x10 教科の特性(国語や書道の「縦書き・手書き」など)をデジタルツール上で再現することに限界や不便さを感じる。
x11 理科の実験などを遠隔で行う際、現場に専門教員がいないことによる安全管理の保証に不安を感じる。
x12 複数校を同時につなぐ合同授業において、学校間の学力差や温度差、行事予定のズレが運営の妨げになっている。
x13 現在の授業で特に困っていることを選択してください(複数選択可)
x14 具体的な状況やエピソードがあればご記入ください。
x15 ご自身の教科の内容に関して、遠隔授業特有の困り感があればご記入ください。
x16 今後必要だと感じる支援を選択してください。

↓主として今回の研究に関わる結果部分はこちら。

1 改善がほとんど進んでいないと考えられる課題
4 現在の授業で特に困っていること

 科目ごと等、今後夏休みなどの時間を使いながら、より詳細な分析を実施していく予定ですが、「見取り」、「学習の動機づけ」について、遠隔授業を実施している教員が課題感を持っていることが明らかとなりました。これらの結果は、北海道において過去実践された、遠隔授業における自己調整学習の研究や実践の蓄積と矛盾するものではなく、よりエビデンスに基づく形で、実践・研究が進めていける結果が出たと考えております。

(4)理論を実践へ繋げる、実践・研究の成果報告、進捗状況

①定期的な学習会の開催

 生徒の学習への「動機づけ」を高める実践を進めていくため、6月は、生徒の学習への「動機づけ」を高めるために、T-base全体の基盤となる考え方について共有しました。

第1回 ARCSモデルについて 資料はこちら  
第2回 期待x価値理論について 資料はこちら   
第3回 自己決定理論について  資料はこちら  
第4回 (予定)達成目標理論について

 まずは7月までを目途に学習会を継続し、基本となる考え方を共有していきます。そして授業実践や授業公開へと繋げていくことができるように進めていく予定です。

②T-baseコンソーシアムの実施

 T-baseでは、月に1回程度、北海道大学の重田勝介先生をお招きし、T-baseコンソーシアムを開催しています。今回は、パナソニック教育財団のアドバイザー訪問に併せて開催しました。これまで学習を進めてきた理論を実践へと繋げていく場として、佐藤崇力教諭と後田教諭の自己調整学習に関わる授業公開や、実践の進捗状況に関する報告を実施しました。

※T-baseコンソーシアムの様子

◯公開した授業の内容

【授業実践①】

①科 目:数学Ⅰ(合同授業)

②内 容:命題と条件(単元の最初)

③ポイント

  • ・導入で価値付け。
  • ・Kahoot!で時間短縮を図ります。
  • ・目標と方略を設定し、FigJam上で遂行していきます。(福島はペンあり)
  • ・足場かけをたくさん用意しているので解説はほぼなしですが、確認しながら進める予定です。
  • ・課題ごとにプチ振り返りで自己調整学習のサイクルを意識。
  • ・最後、振り返りからポートフォリオ化ですが、時間足りずに次回に持ち越しそうです。

※生徒が個別に進めていくfigjamワークシートの中身

【授業実践②】

①科 目:物理

②内 容:円運動

③ポイント:
(1)日頃実践している自己調整学習型の実践です。
(2)普段の授業の公開になりますのでご容赦願います!

※生徒の方略使用や学習の見通しを見取るためのワークシートの一部

③自己調整学習に関わる授業公開の実施

 T-baseでは、日々授業公開を実施しています。徐々に自己調整学習や、ARCSモデルに基づく授業公開が増えていることから、徐々に学習会まで学んだ理論が広がっていっている、という実感を持っています。

アドバイザーの助言と助言への対応

(1) 「遠隔授業の課題」についての再整理

→実践レポート・授業研究チャット・遠隔授業実態調査アンケート等、課題について整理・ 共有を図ることができたと思います。 特に外部から持ち込んだ課題設定ではなく、組織内にすでに蓄積されているデータやナレッジから出発し、実践者の視点で研究課題を見出すことができました。今後は教科、経験年数、授業形態、使用ツールなどの観点から、どのような条件でどの課題が強く表れるのかを分析していくことが必要だと判断しています。

(2)なんのために遠隔授業において生徒の活動を「見取る」のか

→自己調整学習能力を高めるためにも、遠隔授業においては、「何を・どのように見取るのか」という視点が必要であることを T-base コンソーシアム含め、提示することができたと思います。

本期間の裏話

 慌ただしい4月〜6月の中で、自分たちで新しい研修を提案し、実施していくのはなかなかにハードでした。助成金で研究に関わる書籍を購入し、それらを踏まえてまとめながら、実際の授業をもとにしたワークショップを作っていくのは本当に大変ですが、その分学びも多いです。パナソニック委員会で協力しながら、頑張って進めようと思います。

 スタートアップセミナーでは、「北海道高等学校遠隔授業配信センター」とはそもそも何か、というところに、質問が集中してしまいました。まずは多くの方にセンターを知っていただくことができた、というのも一つの成果かもしれません。外から見ると不思議なことをしている組織に見えるかもしれませんが、北海道の地方の高校生のためにも、ということで日夜授業研究・授業実践に励んでおります。

 また昨年度の実践にも関わる話になりますが、パナソニック教育財団実践研究助成一般助成表彰にて2年連続で優秀賞に選んでいただいたことは非常に嬉しい出来事でした。T-baseの先生方全員の協力はもちろんですが、主体となって進めてきたパナソニック委員会としても、これまでなかった2年連続での表彰ということで、喜びもひとしおでした。

本期間の成果

(1)遠隔授業における「課題」とは何か、課題の再整理

 アンケート等含めエビデンスに基づきながら、遠隔授業における「課題」とは何か、明らかにすることができたと考えています。重田教授に紹介していただいた先行研究とも矛盾することがない結果が出ており、自分たちの研究を進めていく方向性、特に「学習の動機づけ」と「生徒の活動の見取り」が遠隔授業において重要であること、この方向性で進めていくことの重要性について、再確認をすることができました。

(2)遠隔授業において自己調整学習能力を高める工夫を取り入れた授業実践の蓄積

 理科・数学を中心にしながら、徐々に遠隔授業において自己調整学習能力を高めるための授業実践を進めることができています。長期的な目標は単元レベルでの実施になりますが、まずは日々の授業の中に、自己調整学習能力を高める工夫を取り入れ、授業実践をより増やしていこうと思います。先生方の授業公開含め、自己調整学習に関わる考え方や理論が徐々に波及してきている段階であり、こうした点も成果としてあげることができると考えます。

今後の課題

(1)実践・研究の波及について

 自己調整学習という視点をすぐに取り入れ、授業の中に組み込んでいくことはなかなか簡単なことではなく、学校全体での取り組みから、教員個人の授業改善まで繋げていくことに、ハードルがまだまだ高いと感じています。先生方が授業改善に向けて取り組みやすい環境を作るためには何ができるか、どこから始めていくことが良いのか、今後の課題の一つとしたいです。

(2)外部サーバーの活用に向けて、どのようなルールづくりをするか

「見取り」のために生成AIを活用したアプリケーションづくりを進めています。一方で生徒個人が記入した内容などについては、どのサーバーに情報を保存するかなど、個人情報の管理を含め、多くの課題があると考えています。今後進めていく上では、北海道教育委員会との連携をどう図るのか、現場からのボトムアップでの産官学連携に近い形式になりますが、こうした事例が過去にあるか、連携をしていく場合には、どのような方法が適切なのか、考えていきたいと思っております。

今後の計画

 次の4ヶ月については、理論についての学習を継続しつつ、遠隔授業において生徒の自己調整学習能力を高めるような授業の蓄積を目指します。外部講師も依頼しながら、センター全体で取り組んでいくために、以下のことを中心に実施していきます。

  1. (1)学習会の継続
    …基盤となる考え方を共有し、授業公開やその後の事後検討会に、学習会で得た視点をもとに議論を行っていきます。
  2. (2)動機づけを高めるための授業実践・授業公開・単元レベルでの取り組みの実施
    …学習会での理論をもとに、授業実践を進めていきます。広く全体へ公開しながら、各教科ごと取り組みを整理していきます。
  3. (3)「評価」について
    …どの質問紙を用いるか、「成果」として何を提示するか。基本的には(SRQ-A、MSL-Q)を用いた量的分析と質的分析の手法について、全体で検討しながら進めていきます。
  4. (4)現在進めていることの継続実施。特に「見取り」に向けた取り組みも進めます。

成果目標

  1. (1)遠隔授業の「困り感」を集約し、その内容を分析することができている。
  2. (2)質問紙を用いた調査において、効果量として有意な数値の向上(0.4)が認められる(生徒の学習の動機づけ等)
  3. (3)動機づけと見取りを重視した授業・単元の開発(1年目は3単元、2年目は年間を通じて実施)
  4. (4)生徒の活動の見取りと協働的な学びを実践するためのアプリケーションや機材器具の開発(2つ以上)
アドバイザーコメント
重田 勝介 先生
北海道大学
教授 重田 勝介 先生

北海道高等学校遠隔授業配信センター(以下、T-base)は、高校教育における国内最大の遠隔授業配信拠点であり、令和8年度は道内各地の受信校35校の受信校に対して、遠隔授業やメタバース空間を使用した授業を実施しています。道立高校においては、地域の小規模校を中心に教員が少ないことなどにより、大学進学等の進路希望に対応した教科・科目の開設が困難な状況があります。また、大学進学を目指す郡部の中学校における卒業者の多くが、住み慣れた地域を離れ、都市部の高校へ進学している実態もあります。このような状況の中、道内のあらゆる地域に住まう高校生が、地元で学びながら、彼らの多様なニーズに対応した教育を受ける機会を得る必要があります。T-baseはこのような現状と課題を踏まえて、道内のどの地域においても、自らの可能性を最大限に伸ばしていくことのできる多様で質の高い高校教育を提供するため、遠隔授業の配信機能を集中化した配信拠点を設置して、地域の小規模校に対して、大学進学等に対応した教科・科目を計画的かつ継続的に配信しています。

T-baseでは、遠隔授業が抱える課題「学習の動機づけ」と「生徒の見取り」に対する効果的アプローチの検討」という研究課題のもと、実践・研究を進めています。遠隔授業は地理的・時間的制約を超えて教育機会を拡張しうる利点がある一方で、対面授業と比べて学習者の自律性が求められることから、道内各地で学ぶ生徒の多様性を踏まえた学習の動機づけに配慮することが必要です。また、T-baseの教師と生徒が関わることは基本的に授業時間中に限られることから、授業時間中における生徒の見取りを充実させ、生徒の状況や学習に関わる困りごとを聴取することが大変重要です。

これまでの活動期間中において、T-baseでは遠隔授業実態調査アンケートを行うことにより、教師が生徒の学習の動機づけや生徒の見取りに関する困り感を収集し、T-base全体としての課題感を把握することに努めました。このような取り組みは、組織全体としての取り組みが求められる本助成事業を成功に導くための、重要な最初のステップと捉えられます。T-baseでこれまで実施された授業事例のデータや実践の蓄積によるエビデンスと合わせて、本アンケートの結果を参照しつつ、2年間にわたる活動を着実に進められることを期待いたします。

またT-baseでは、定常的に教師や外部の有識者を交えた勉強会を実施しています。このような取り組みは現場における教育に関わる知恵やノウハウを共有するために有用であるだけでなく、事例報告を担当する教師にとっては、日々の教育実践を振り返る貴重な学びの機会となります。日々の業務等でご多忙の中、このような勉強会を継続的に行うことには多大なるご苦労があることとお察しいたしますが、可能な範囲で勉強会を継続いただき、本助成事業で得られた知見を培い、共有する場としていただければ幸いです。