LCAグループ 学校法人SOLAN学園 瀬戸SOLAN小学校

第49回特別研究指定校

研究課題

習得ー活用ー探究の3つの学びの場の相互作用を目指したカリキュラムの提案
~学習環境デザインの視点から~

2023年度04-07月期(最新活動報告)

最新活動報告
研究の方向性について、研究推進委員会(月1回第1木曜日)を開催し、担当を明確にし......

アドバイザーコメント

吉崎 静夫 先生
本校は、開校3年目の新しい学校で、1年生から5年生が在籍している......

LCAグループ 学校法人SOLAN学園 瀬戸SOLAN小学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 愛知県 LCAグループ 学校法人SOLAN学園 瀬戸SOLAN小学校
アドバイザー 吉崎 静夫 日本女子大学 名誉教授
研究テーマ 習得ー活用ー探究の3つの学びの場の相互作用を目指したカリキュラムの提案
~学習環境デザインの視点から~
目的 本研究テーマは、「習得―活用―探究の3つの学びの場の相互作用を目指したカリキュラムの提案」である。2年間取り組んできた授業実践を元にカリキュラムの有用性及び課題を精査し、授業マニュアルを作成する。それを元に授業を実施し、カリキュラムの効果を検証することを目的とする。
現状と課題 (現状)
「習得―活用―探究」の3つの学びの場の授業を実践しながら、授業ガイド作成へ向けて、記録の蓄積をしている。また、カリキュラムの有用性及び課題の精査のために、3つの学びに対して子どもがどのように認識しているかアンケートを実施し、その分析に取りかかろうとしている。
(課題)
・カリキュラムの効果検証にあたっては,ポートフォリオに記録された児童の学びの姿から「習得―活用―探究」のカリキュラムの相互作用について明らかにするための具体的な方法について
・子どものアンケート分析から抽出児を選択し、インタビューを実施しようと考えているが、その選択の視点やインタビューの内容について
学校情報化の現状 先生たちの意識も高く、情報活用能力の育成へ向けて、中学校までの体系化を考案中である。
取り組み内容 教科指導では、iPad を学習用具の一つとして自然に活用できている。基礎的なタイピングやプレゼン等、校内でのコンテストを開催し、子どものスキル上達を目指している。ペーパレスを目指し、会議等では、全員がPC画面及びモニターを閲覧しながら話し合いを進めている。中学校設置へ向けて、情報と探究担当者メンバーで、どのような体制作りをするか検討している。
成果目標 (成果目標)
・「習得―活用―探究の3つの学びの場の相互作用を目指したカリキュラム」授業ガイド作成へ向けて、3つの学びのそれぞれの単元計画、指導案、成果と今後の課題などの記録を蓄積し、次年度、その実践を修正し授業実践し、ガイドブック完成を目指す。
(取り組み後の状況)
・だれもが授業ガイドを活用して授業の質を高めていくだけではなく、他校への情報提活動にも取り組む。
助成金の使途 Meeting Owl Pro MTW200、16インチMacBook Pro、全日本教育工学協議会等参加費、研究者招聘、授業マニュアル完成版の印刷等
研究代表者 三宅 貴久子
研究指定期間 2023年度~2024年度
学校HP https://www.seto-solan.ed.jp/
公開研究会の予定 2023年8月2日(水)教員対象研修会を実施。その際、1~5年までの探究学習の授業公開を予定。
2024年1月27日(土)第3回研究発表会を実施。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

(4月)

  • ・研究の方向性について、研究推進委員会(月1回第1木曜日)を開催し、担当を明確にし、2年間の研究の流れについて詳細を検討。その後、研究全体会議を実施し、目的・内容・ゴールについて共通理解した。研究日は毎週木曜日に設定。
  • ・各学年で、習得部会、活用部会、探究部会に分かれていただき、部会でメンバーの確認と部会で取り組む内容について確認。
  • ・開校当初から関わっていただいている鳴門教育大学の研究者を招聘し、2年間取り組んできた授業実践を元にカリキュラムの有用性及び課題を精査することについて、具体的な内容を検討。
  • ・子どもの成績データや成果物等を e-ポートフォリオと関連できる仕組みを設計する。(主に習得・活用学習において)
  • ・本校独自のe-ポートフォリオシステムの活用について、昨年度の反省をもとに活用の改善を検討した。話し合った結果、次の時間までには個々の子どもへのフィードバックが確実にできるように共通理解を図る。

(5月)

  • ・5月10日(水)、2年間関わっていただいている鳴門教育大学の泰山先生に来ていただき授業研究会を実施。1年の国語、3年の国語、2年の探究の授業の研究授業を実施し、指導・助言をいただいた。1、3年の国語は新採用2年目の若手教師が挑戦をした。授業は習得と活用の授業である。両教師の授業とも、教師が子どもと対話を重ねて授業を展開しているところは評価できた。しかし、授業参観者から、授業のねらいとルーブリックが子どもの実態とずれていたのではないかという指摘もあり、習得と活用の授業のねらいの設定について議論し、共通理解した。

(1年の国語「はなのみち」の授業風景)

(6月)

  • ・6月7日研究のアドバイザーである吉崎先生をお招きして授業研究を実施。
    5年情報、4年プロジェクト、3・4・5年の探究を公開し、指導・助言をいただいた。
    授業公開後、放課後に全体研究を実施し、吉崎先生の本校の研究に対するご意見をお聞きした。研究構想図について、カリキュラムの特色、学習環境の視点、授業の特長、評価の特長などを整理していただき、21世紀型スキルについてのお話を伺い、全教員で学習した。

(5年の情報の授業風景)

  • ・全体研究の場で、習得―活用―探究の3つの学びの往還をどのようにみとっていくか、全体で協議後、部会に分かれて話し合った。また、探究における子どもたちのまなポートの記述について、どのように蓄積されているかを昨年度のものを閲覧し、整理した。

(7月)

  • ・各部会に分かれて、研究授業の計画や実施された研究授業の振り返りを実施。
  • ・探究部では8月2日の教員研修会について授業内容の検討。また、今回は、参加者の先生方に対して、探究の授業支援に参加したい方は意思表明をしていただいた。その先生方とのオンラインミーティングについて計画

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ・6月の訪問時に、「①研究のグランドデザインを作成すること」、「②習得、活用、探究の3つの学びに対する児童の認識を調査すること」、③「指導案の書き方」についての3点について指導・助言をいただいた。①については、ある学校の研究のグランドデザインを参考にしながら現在作成中である。②については2−5年の児童にアンケートを実施し、3つの学びの違いについて子どもはそれぞれの学びの質について概ね理解はできていた。そして、探究活動の質の高い児童ほどその関連に自分なりの意味づけをしていることが明らかになった。今後、探究に対する学びの特長のある子どもに対してインタビューを実施する。③については、現在部会で検討中である。吉崎先生からは、本校が考えている5つの学習様式、例えばモジュールの習得学習とか、プロジェクトとしての活用の学習などについて、それぞれの学習時間、学習環境等がよくわかるように指導案に明記した方が良いのではないかと言う助言であった。

本期間の裏話

  • ・研究アドバイザーである吉崎先生が探究の 授業を参観されている時、3年生のある子どもが先生のところへ行き、話しかけたようである。その子どもは、ずっと吉崎先生に自分の探究のテーマ「戦争はどうしたら終わるのか」について語っていた。話終わった後、その子どもはとても満足した表情であった。聞いてみると、「ちがう視点で話が聞けたし、話をして自分の考えが整理できた」と話していた。「探究は自分で創る学習」と日々子どもたちと共通理解をしてきた。そのことが、行動としても表れていることがうれしかった。

本期間の成果

  • ・全教職員が研究の方向性を理解し、実践研究に取り組むことができた。また、吉崎先生のお話が大変勉強になり、全教職員が授業実践に力を入れていることが一番よかったと考えている。研究部だけの研究ではなく、学校全体の教職員が個々の目的意識を持って、全体で目指す方向へ取り組んでいけたらと考える。

今後の課題

  • ・研究のグランドデザインの完成
  • ・授業ガイド作成へ向けて素案作り
  • ・指導案の形式についての検討

今後の計画

  • ・研究者を招聘し、各部会で精査してわかったことの情報交換をし、授業ガイドの素案を検討する。
  • ・8月2日の教員研修会へ向けて準備を進め、当日は他校の先生方と探究学習を支える教員の資質・能力について議論する。
  • ・一人一回の公開授業の準備。その際、事前の指導案検討、模擬授業及び授業後の振り返りの会を実施する。
  • ・10月27・28日の第49回全日本教育工学研究協議会全国大会で発表するための原稿作成。
  • ・11月4・5日の日本教育メディア学会第30回年次大会で発表のためのテーマ設定。

気付き・学び

  • ・8月2日のパネリストの打ち合わせのミーティングの中で、吉崎先生から総合的な学習が導入されたときに関わっていた研究開発校での子どもや教師の意識について研究の視点からお話を伺った。子どもも教師も全員が探究を得意とするわけではなく、苦手な子どもも得意な子どももいる。その前提において、なぜSOLANは探究学習を軸としたカリキュラムを推進しているのかについて、今一度考案した当時のことを思い起こした。「グローバルシチズンシップの育成」という教育理念のもと、「自立・自律」した子ども像を目指している本校にとって、探究学習は目指す子ども像に子ども自らが変容していく学びの場であることを再確認した。一方で、他校の先生方に対してきちんとした説明ができるように、言語化していく必要性も感じた。

成果目標

  • ・「習得―活用―探究の3つの学びの場の相互作用を目指したカリキュラム」を授業ガイドという成果物と共に提案することで、他校の実践の手がかりを提供できることを目標としている。その実現へ向けて、これまでの実践を振り返り、成果と課題を整理する。本校のカリキュラムを実践してきた教員の経験や子どもの実態をこれまでの成果物をもとに振り返りながら、有用性や課題を洗い出し、授業ガイド作成のための視点として整理する。
アドバイザーコメント
吉崎 静夫 先生
日本女子大学
名誉教授 吉崎 静夫 先生

 本校は、開校3年目の新しい学校で、1年生から5年生が在籍している。そして、e-ポートフォリオを中核とする実践研究で、パナソニック教育財団の一般研究助成を2年間にわたって受けた。今回は、その研究成果をふまえて、「習得―活用―探究の3つの学びの場の相互作用を目指したカリキュラムの提案~学習環境デザインの視点から~」という研究課題に挑戦している。

 本校は、「グローバルシチズンシップの育成(世界の抱える問題を自分の問題として捉え直し、他者と協働的によりよく解決するための方策を考え、持続可能な社会を創るために自ら行動する世界のリーダーとしての志をもつ人間の育成)」という建学の精神にもとで、「探究学習」「英語教育」「ICT教育」という3つの軸を学校教育の基本としている。

●本期間の研究成果

(1)「習得―活用―探究」にもとづく5つの学びの様式が次第に確立されつつある。それらは、①個別の知識の習得(スキル・リテラシー学習)、②活動を通した概念的・手続き的知識の習得(教科学習1)、③各教科の見方・考え方の活用(教科学習2)、④協働での問題解決学習(プロジェクト学習)、⑤個々の興味・関心にもとづく課題発見・解決学習(探究学習)である。そして、これらの5つの学びの様式が本校の目指すカリキュラムの中核であり、①と②が「習得」、③と④が「活用」、⑤が「探究」にそれぞれ位置づけられる。

(2)本校の研究体制(研究推進委員会と部会)が整備されたために、全教職員が研究の方向性を理解し、実践研究に意欲的に取り組むことができている。

(3)学習環境デザインのための視点が次第に明確になっている。それらは、①ひと(仲間、教職員、保護者、外部人材)、②もの(実物、ICT、図書)、③場所(教室、ラーニングコモンズ、学外施設・機関)、④時間(モジュール制にもとづく時間割)などである。

 2023年6月7日に本校を訪問した際に、3年生から5年生全員が参加する「探究学習(SOLAN学習)」の授業を見学した。そこには、3年生以上を担当する教員、10数名の保護者、数名の大学教員と大学生が参加していた。特に印象に残ったのは、保護者が学習サポーターとして一人一人の児童(必ずしも自分の子どもではない)に寄り添っている姿である。まさに、子どもと一緒に悩みながら、共に学んでいる姿勢である。

●今後の課題と期待

 基本的には、本校の活動報告書に記述されている「今後の課題(①研究のグランドデザインの完成、②授業ガイド作成に向けての素案づくり、③指導案の形式についての検討)」の通りである。さらに加えるとすると、「学習評価の枠組みづくり」を行ってほしいということである。例えば、ルーブリックやe-ポートフォリオのような「日常のカリキュラムに埋め込まれた評価」と、アンケート調査や学力調査のような「オンデマンド評価」を組み合わせた「評価の枠組み」を考えてほしい。