岐阜県立郡上特別支援学校

第42回特別研究指定校

研究課題

卒業後の自立まで見据えたキャリア発達を促すICTツール
~作業学習におけるタブレットPCを用いた支援アプリの開発と授業実践による効用の検証~

2017年度1-3月期(最新活動報告)

喫茶サービスにおける授業モデルは、事前学習、喫茶営業、事後学習の学習展開でICTツールが、キャリア発達を......

アドバイザーコメント

知的障害のある児童生徒の心理的特性として抽象的思考の困難さが挙げられる。日常生活における具体的経験の積み重ね、

岐阜県立郡上特別支援学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校名 岐阜県立郡上特別支援学校
アドバイザー 金子健 明治学院大学名誉教授
研究テーマ 卒業後の自立まで見据えたキャリア発達を促すICTツール
~作業学習におけるタブレットPCを用いた支援アプリの開発と授業実践による効用の検証~
目的
  • ICTツールにより作業学習を支援することで、生徒が自分の役割に自信を持ち、主体性の連鎖を育むように導く。
  • ICT利活用の有用性を地域に啓発し、卒業後の生徒が自立して生活していける環境の普及を目指す。
現状と課題
  • 本年度、高等部全生徒が喫茶サービスを学習するにあたり、生徒個々の実態に合わせた支援が必要であるが、現状ではその支援内容について、ICTを利用するかどうかを含め、明確にしていない。
  • ICTを活用することによって、具体的にキャリア発達の視点からどのような効果が得られたのか十分に評価できていない。
  • 現状の接客支援アプリは、オーダーを取った後の業務手順について、補えていない。
  • 生徒の卒業後の実態に合わせた指定障害福祉サービス事業所で支援アプリ(接客支援アプリ、レジアプリ)が利用できるような環境ができていない。
  • 本取組で利用中のシステムの一部であるレジアプリは、他の作業班での作業販売でも活用できそうではあるが、現状は、喫茶以外での利用を想定していない。
学校情報化の現状 校務文書に関する業務、教職員間の情報共有、服務管理上の事務、施設管理等を補っている校務支援システムとしてdesknet‘s NEOを活用している。
取り組み内容
  • 調理班、縫製班、木工班では、どんなことができて、喫茶サービスで活躍するにはどのような役割で、どのような支援が有効かを明確にする。
  • ICTを活用した喫茶サービスで学習した卒業生をインタビューし、その経験がどのように卒業後の生活と職場で結びついているのか調査する。
  • すべての生徒に対応するため、記憶・知的認知処理の障がいに対する支援を目的に、オーダーを取った後の業務手順を、同じ接客支援アプリ内で一貫した表示内容にしたり操作性の改良を行う。
  • 指定障害福祉サービス事業所が支援アプリ・システムを導入できるような環境をつくる。また、他校でも応用できるよう本校の実践を紹介していく。
  • レジアプリの機能のみ作業販売でも利用できるように、操作方法の改良や構成情報機器(ノートパソコン、無線ルーター、レシートプリンタ、タブレットPC等)の簡素化など、システムの改善行う。
成果目標
  • ICTの利活用を前提に、すべての生徒が喫茶サービスで活躍できるようにする支援方法を取りまとめ、次年度にも利用できるようにする。
  • ICTを活用した喫茶サービスで学習した生徒や関係者に対し、本取組が生徒一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要となる能力や態度を育てているのかを検証する。
  • 本校喫茶サービスの接客業務が接客支援アプリ、レジアプリを使用することで、すべて補うことができ、コミュニケーションスキルの育成に寄与することが期待される。
  • 地域の指定障害福祉サービス事業所や他校に向けた成果情報の発信を行い、ICT導入の活動が広がることを目指す。
  • すべての作業班でレジアプリを活用する環境を整える。特に、現状android版のレジアプリをiPadでも動作可能にする。
助成金の使途
  • パソコン
  • タブレット
  • プロジェクター
  • レシートプリンタ
研究代表者 伊藤 史
研究指定期間 平成28年度~29年度
学校HP http://school.gifu-net.ed.jp/gujyou-sns/
公開研究会の予定
  • 12月のATACカンファレンスでのポスター発表。

研究課題と成果目標

研究課題
  • 本年度、高等部全生徒が喫茶サービスを学習するにあたり、生徒個々の実態に合わせた支援が必要であるが、現状ではその支援内容について、ICTを利用するかどうかを含め、明確にできていない。
  • ICTを活用することによって、具体的にキャリア発達の視点からどのような効果が得られたのか十分に評価できていない。
  • 現状の接客支援アプリは、オーダーを取った後の業務手順について、補えていない。
  • 生徒の卒業後の実態に合わせた指定障害福祉サービス事業所で支援アプリ(接客支援アプリ、レジアプリ)が利用できるような環境ができていない。
  • 本取組で利用中のシステムの一部であるレジアプリは、他の作業班での作業販売でも活用できそうではあるが、現状は、喫茶以外での利用を想定していない。
成果目標
  • 成果目標1:『すべての生徒が活躍でき』『キャリア発達を促す』喫茶サービスの授業モデル構築
    • 以下、3つの構成要素の機軸により、キャリア発達を促す喫茶サービスの授業モデルを構築する。この授業モデルを実践することで、障がいの状況に関わらず、すべての生徒が活躍し、キャリア発達を促す(生徒が役割を理解し主体的に行動し、成長や課題に気づき、なりたい自分の将来のイメージをもち改善しようとし、自分の役割に自信をもつ)ことができる。
    • ①構成要素1:個々の実態に合わせた「役割」と「支援」の明確化
      特に「強み」に着目したアセスメントに基づき、個々の実態に合わせた「役割」と「役割を果たすために必要な支援(ICTの利活用を前提とする)」と「効果的な支援の時機・瞬間」を明確にする。
    • ②構成要素2:主体的な役割遂行を実現するためのタブレットPCによるデジタル化された支援ツールの整備・管理(支援環境の整備)
      喫茶サービスを行うにあたりデジタル化された必要な支援ツール(教材)を整備し、どのタブレットPCでも閲覧できるように累積・管理する。支援ツールの一つとして、オーダーを取った後の業務手順についても補い、すべての接客手順をナビゲーションできる「接客支援アプリ」を開発する。役割遂行に必要な支援ツールが整備されていることで、生徒が、必要な時機・瞬間に、必要な支援ツールだけを選択し活用する中、主体的に役割を果たし、個々のキャリア発達を促すことができる。
    • ③構成要素3:課題解決的な学習と個々のタスク管理
      「喫茶サービス実施中の動画による即時評価」「終礼時の当日の映像視聴とミーティング(気づきの交流)」「Webカメラ等で録画した映像を活用した事前・事後学習」など、ICTを利活用した課題解決的な学習を行う。特に、本研究では、事前学習→喫茶営業→事後学習の一連の課題解決的な学習の流れを、授業モデルの中核として確立する。また、個々のタスク(役割・課題)管理を行い、自分の役割や目標(マイク録音)、それに対する評価(動画等も含む)と改善点、次への課題などを時系列で記録し、累積する。累積したタスクを、生徒と教師の対話の中で適宜活用し、生徒が自身を客観的に捉え、主体的に自らの成長や課題に気づき、改善していこうとする中で、キャリア発達を促すことができる。
  • 成果目標2:レジアプリの機能をより汎用性の高いアプリへと開発
    • レジアプリの機能について、本研究で利用中のシステムの一部であるレジアプリを、すべての作業班で活用できる環境を整えることで、これまでレジを担当できなかった生徒ができるようになる。また、現状android版のアプリをiPadでも動作可能にすることで、他校や事業所での導入が検討しやすくなる。そこで、社会福祉法人郡上市社会福祉協議会のみずほ園にて試験導入することによって、利用者の効率、効果、充足するようなGUIやそれを補う情報機器によって、ユニバーサルデザインされた完成度の高いレジアプリになると考える。

本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応

本期間(8月~12月)の取り組み内容

スケジュール表

【事前学習】

すべての生徒が活躍できる役割を明確にするため、事前学習で、接客、レジ、洗い物、ドリンク、デザートセット等を接客支援アプリ、レジアプリ、デジタル化された支援ツールを使用した。

模擬喫茶の様子

ドリンクの提供確認

レジアプリの活用

レジアプリの追加機能

食器の洗い方・拭き方動画

接客支援アプリのナビゲーション化

【事後学習】

事後学習は、Webカメラで録画したホールの様子をポータブル超短焦点プロジェクターより、ホワイトボードに映し、生徒の動きやポイントとなる箇所にマルや矢印をつけ注目してほしいところに印をつけた

アドバイザーの助言と助言への対応

    ■アドバイザーの助言

  • 支援者が外部におり、バックアップ体制がしっかりしている。学校間で完結することがなく、進められている。
  • 長期的な見通しの中で、今何をするのか、スタートとゴールを工夫できると良い。めあてと見通しを持った生き方を学べると良い。
  • 試行錯誤して自己肯定感を身につけ、卒業後自信を持って社会へ出ていくことについて、ICTを活用してより実感できる形で、コミュニケーション力やいろいろな力が身についている。
  • 評価の方法について、計画のままで良いか、検討していただきたい。アセスメントを行うのか、事例として一人をモニタリングしていくのも良い。客の評価も参考になると思う。
  • 会議について、目的は何なのかはっきりしない。提出された書類に基づいて、今の課題や目的を明確にして、進行すべきである。
  • ■助言への対応

  • 再度、学校として今回の研究を受け止め、全校体制として行えるよう、共通理解を図っていく。
  • 汎用性の高い研究を目指しているが、波及効果や2年後の資源となるベース作りをもっとシンプルに、どうこの研究を進めていくのか、もういちど検討したい。次回、研究のスケジュールを提示して、アドバイスをいただきたい。

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

研究協議会の中で、いろいろなことを盛り込まず、「シンプルでいいよ」との助言を頂き、スルーラインが明確になりました。

成果

  • 事前学習では、他の作業班も参加することで、普段、気づけなかった自分に気がつくことができた。
  • 接客の完全ナビゲーション化によって、内面的な課題意識に取り組むことができた。したがって、接客の所作や表情、客とのコミュニケーションなど、もてなすことへの意欲・関心を高めることができた。
  • 喫茶サービスでは、事前学習で取り組んだ内容に、戸惑いながらも主体的に行動したり、仲間と相談したりする姿がみられた。
  • 事後学習では、ポータブル超短焦点プロジェクターとホワイトボードの組み合わせで、注目すべきことをマーカーに書き示すことができることで、動画視聴により興味がわき、自分自身の新たな視点や仲間の様子に興味関心がわくようになった。

今後の課題

  • 支援ツールのタブレットPCを用いた累積方法の確定、および生徒が自分で活用できるように整備・管理。
  • 福祉サービス事業所へのICT研修会におけるレジアプリの説明と普及活動。

今後の計画

  • デジタル化された支援ツールの開発。
  • タスク管理を行うための支援ツールの検討。
  • 普及に向けて、社会福祉法人郡上市社会福祉協議会にてICTを活用した講習会。

気づき・学び

 社会環境の変化に対応し教育の現代的な役割を担うキャリア教育に関連し、中央教育審議会の報告において、「ⅰ)何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能)」、「ⅱ)知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)」、「ⅲ)どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力、人間性等)」として整理している。

 この研究において、ⅰ)及びⅱ)をタスク管理し、生徒の必要とする時機・瞬間に提示する。ⅲ)は、個別の支援・指導をする際、生徒が課題に対して、動画を視聴しながら言語促進し、生徒自ら気付くヒントを与えたり、待ったりすることで、主体的に気付き、誰かと関わり気付く経験を積むことが重要になると思われる。また、生徒同士で、課題に対してのお互いの内容を知ることで、目的は個別だが喫茶サービスという共通の活動によって、進化・発展する知の総合開発・総合創出を実現することに繋がる。

 3つの柱(ⅰ)ⅱ)及び)ⅲ))をICT利活用によって、適切な文脈と時機・瞬間に合わせて、「今」という協同するフィールドがキャリア教育の重要な視点だと考えられる。

アドバイザーコメント
明治学院大学 名誉教授 金子 健 先生

本校の研究テーマ、取り組みの意義

知的障害特別支援学校高等部では、卒業後の自立的な社会参加を目指した教育が重要な意義を持っている。 作業学習を中心とした教育課程において、より実践的・具体的な活動を用意することで生徒にとって目当てを自覚的に理解し課題解決に向けての見通しを持ちやすくなる。知的障害児の教育では、長い歴史の中で経験的にその意義を確認してきている。まさにアクティブラーニングである。

 

知的障害のある生徒の卒業後の進路として、かつては製造業が主であったが近年は第三次産業とりわけ接客などのサービス業への就職も多くなっている。その背景には社会の産業構造の変化があり、就労機会の拡大は喜ばしいことではあるが、知的障害の特性として対人コミュニケーションや臨機応変の対応が苦手であり、その改善・克服が教育の課題となっている。

 

このような状況の中で、ICTの活用は大きな教育効果をもたらすものとして期待されている。

 

本期間の取り組み・成果の評価

高等部の作業学習の一環として、喫茶サービスを取り入れている。その活動において支援アプリを導入することで、スムーズな接客とレジでの確実な金銭授受を体験することを導入した。活動を映像記録し、活動後に生徒自身もそれを視聴することで、フィードバックが可能である。経験的にその効果は実感できるが、成果の客観的な評価については今後の課題である。

 

今後の課題・期待

体験的な学習によって、どのような能力がどの程度獲得されるのか、認知発達の各側面と照らして何がどう発達するのか、客観的な評価が今後の課題である。

 

高等部の期間のみの学習ではなく、小学部からの積み上げとして、キャリア発達の各側面と照らして評価することによって、全人格的発達を長期的視点に立って支援する教育課程の中に位置づけることを期待したい。

 

研究課題と成果目標

研究課題

    卒業後の自立まで見据えたキャリア発達を促すICTツールの開発
    ~作業学習におけるタブレットPCを用いた支援アプリの開発と授業実践による効用の検証~

  • 本年度、高等部全生徒が喫茶サービスを学習するにあたり、生徒個々の実態に合わせた支援が必要であるが、現状ではその支援内容について、ICTを利用するかどうかを含め、明確にしていない。
  • ICTを活用することによって、具体的にキャリア発達の視点からどのような効果が得られたのか十分に評価できていない。
  • 現状の接客支援アプリは、オーダーを取った後の業務手順について、補えていない。
  • 生徒の卒業後の実態に合わせた指定障害福祉サービス事業所で支援アプリ(接客支援アプリ、レジアプリ)が利用できるような環境ができていない。
  • 本取組で利用中のシステムの一部であるレジアプリは、他の作業班での作業販売でも活用できそうではあるが、現状は、喫茶以外での利用を想定していない。
成果目標
  • 成果目標1:『すべての生徒が活躍でき』『キャリア発達を促す』喫茶サービスの授業モデル構築
    •  以下、3つの構成要素の機軸により、キャリア発達を促す喫茶サービスの授業モデルを構築する。この授業モデルを実践することで、障がいの状況に関わらず、すべての生徒が活躍し、キャリア発達を促す(生徒が役割を理解し主体的に行動し、成長や課題に気づき、なりたい自分の将来のイメージをもち改善しようとし、自分の役割に自信をもつ)ことができる。
    • ①構成要素1:個々の実態に合わせた「役割」と「支援」の明確化
       特に「強み」に着目したアセスメントに基づき、個々の実態に合わせた「役割」と「役割を果たすために必要な支援(ICTの利活用を前提とする)」と「効果的な支援の時機・瞬間」を明確にする。
    • ②構成要素2:主体的な役割遂行を実現するためのタブレットPCによるデジタル化された支援ツールの整備・管理(支援環境の整備)
       喫茶サービスを行うにあたりデジタル化された必要な支援ツール(教材)を整備し、どのタブレットPCでも閲覧できるように累積・管理する。支援ツールの一つとして、オーダーを取った後の業務手順についても補い、すべての接客手順をナビゲーションできる「接客支援アプリ」を開発する。役割遂行に必要な支援ツールが整備されていることで、生徒が、必要な時機・瞬間に、必要な支援ツールだけを選択し活用する中、主体的に役割を果たし、個々のキャリア発達を促すことができる。
    • ③構成要素3:課題解決的な学習と個々のタスク管理
       「喫茶サービス実施中の動画による即時評価」「終礼時の当日の映像視聴とミーティング(気づきの交流)」「Webカメラ等で録画した映像を活用した事前・事後学習」など、ICTを利活用した課題解決的な学習を行う。特に、本研究では、事前学習→喫茶営業→事後学習の一連の課題解決的な学習の流れを、授業モデルの中核として確立する。また、個々のタスク(役割・課題)管理を行い、自分の役割や目標(マイク録音)、それに対する評価(動画等も含む)と改善点、次への課題などを時系列で記録し、累積する。累積したタスクを、生徒と教師の対話の中で適宜活用し、生徒が自身を客観的に捉え、主体的に自らの成長や課題に気づき、改善していこうとする中で、キャリア発達を促すことができる。『すべての生徒が活躍でき』『キャリア発達を促す』喫茶サービスの授業モデルの指導書を作成する。
  • 成果目標2:レジアプリの機能をより汎用性の高いアプリへと開発
    •  レジアプリの機能について、本研究で利用中のシステムの一部であるレジアプリを、すべての作業班で活用できる環境を整えることで、これまでレジを担当できなかった生徒ができるようになる。また、現状android版のアプリをiPadでも動作可能にすることで、他校や事業所での導入が検討しやすくなる。そこで、社会福祉法人郡上市社会福祉協議会にて試験導入することによって、利用者の効率、効果、充足するようなGUIやそれを補う情報機器によって、ユニバーサルデザインされた完成度の高いレジアプリになると考える。

本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応

本期間(1月~3月)の取り組み内容

(1)研究成果の評価方法の検討

①成果目標1:ICTを利活用した喫茶サービス授業モデルの評価方法
 ICTを利活用した喫茶サービスの授業モデルを実践することで生徒のキャリア発達が促されているかどうかを、より客観的に検証するための評価方法を検討した。動画検証による評価方法を補うため、客観的指標として「キャリア発達段階表」を参照することとした。「動画で見る姿」「生徒の主観的な記述や語り」「お客様や教師の評価」を時系列に蓄積し、それらを基にキャリア発達段階表を参照しながら生徒の内面的変化を推察し、心理的社会的変化や成長を質的に捉え、「キャリア発達評価表」としてまとめることにより、キャリア発達が促されているか事例毎に評価する。

キャリア発達段階表とキャリア発達評価表

②成果目標2:レジ利用可能者数の変化とレジ使用者本人の評価(話頭と動画)による検証
 これまでレジを担当していなかった生徒や事業所の利用者が、レジアプリの活用により、レジ担当をできるようになったのかどうか、その人数の増加数で量的評価する。また、実際にレジアプリを活用する様子の動画撮影や感想の聞き取りにより、レジアプリを活用した場合の効率や効果を検証する。

校外作業製品販売

全作業班『レジアプリ』の活用

(2)外部評価

① 研究メンバーも参加し、所属している専門分野の方から頂く改善点や、支援アプリの開発や授業実践による効用の検討を行う
 調査検討委員会(NPO法人、各大学、専門機関、他校が参画する委員会)の研究メンバーでアプリ開発に関する協議を行う。接客場面の参観及びログの解析等により、アプリ活用状況や研究成果の評価を行い、成果発表の公開(ATACカンファレンスでの研究発表等)についても協議し、より効果のある研究につなげる。

(3)普及活動

【普及活動① ATACカンファレンス2016京都】

展示会の様子

ポスター発表

 2016年12月10日(土)に、ポスター発表をさせていただきました。ATACカンファレンスは、1996年にスタートして以来、支援技術(AT:Assistive Technology)とコミュニケーション技術(AC:Augmentative Communication)をキーワードに、様々な技術を伝達することで障害のある人の生活を変えることが趣旨となっています。
 様々な機関の方から、ICTの情報機器が豊富にあり、それを具体的に活かす方法が示されていることや本人視点動画にすることで、手順がわかりやすいと、評価をいただきました。専門性の高い方からのご意見をいただくことができ、それを今後の研究に活かしていきたいと思います。

ATACカンファレンスポスター

【普及活動② 岐阜県障がい福祉サービス事業所連絡会】

PowerPointで作業手順を作成

作業手順のプレゼンテーション

 2017年1月20日(土)、岐阜県障がい福祉サービス事業所連絡会では、美濃飛騨ブロックの福祉関係の方にICTの研修を行いました。
  「何が使えるかより、何のために使うかが大切になるICT利活用について」のタイトルで講演をさせて頂きました。作業手順をICT化するため、PowerPointを活用した演習を行いました。4つの事業所より福祉現場の作業内容を持って来てもらい、動画や静止画を使った作業手順を作成しました。参加された方のアンケートより「PCに慣れることから始まった。覚えれば大変便利なものだと思います」「目で見える形での情報伝達は、正確に伝わるため理解しやすいと再認識できました」との意見がありました。

アドバイザーの助言と助言への対応

    ■アドバイザーの助言

  • 授業の事前・本番・事後の工夫について、ブラッシュアップし、他校に参考になるものにしたらどうか。他校がやってみたいと思える授業モデルを成果にしてほしい。
  • 汎用性の高いアプリについて、学校だけでなく研究メンバー関係者の努力が必要。
  • 生徒がどのように変わったか、学習効果をどう評価するか厳密に考えてほしい。生徒自身の気持ちの変化、発達を評価することがまず第一である。
  • 活動後、新鮮なうちにどう振り返りさせるかが大切である。動画は有効であるが、教師間の意見交換を大切にし、教師が試行錯誤して、次の授業につなげてほしい。
  • 振り返りの際、チェックリストで行う方法もある。教師と事前に注意する項目を決め、振り返ってできたかどうか、どこまで配慮できたかなど、すぐにチェックし自己評価する項目があるとやりやすいと思われる。
  • 客の感じ方と生徒の主観の差や共通する部分をどう評価していったらよいか考えると、より良い接客のプログラムになる。
  • 客の評価を生徒にフィードバックすることで、生徒の達成感につながる。そのあたりの気持ちのやりとりを客観化できるとよい。
  • ■助言への対応

  • 強みを生かしたアセスメントと支援ツール、動画での評価をセットとして取り組む。
  • レジアプリについて、社会福祉協議会でのワークショップと2月に行う製品販売での導入成果をまとめ、事業所導入につなげる。
  • IOS版のアプリの開発。
  • キャリア発達の段階表からチェック項目をひろい、子どもの言葉にかえてチェックできるようなチェックリストを作る。
  • 客の評価について、生徒の達成感につながるものに内容を変更する。

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 1年間の成長を生徒が視聴し、「自分だけできればいいと、最初は思っていました。だけど、仲間と協力しないと効率よく行うことができないことに気づきました。お客様のことを考えて接客するようになったし、仲間と協力して効率よくできるようになった。」「周りを見て行動することの大切さや笑顔で接客することの大切さを学びました。接客することでお客さんの笑顔が見え、人との関わりに慣れることができたので、そこが私には大きかったです。」と、これまでの生徒自身の映像視聴を振り返りながらの教員との対話、仲間との対話によって、キャリア(生き様)を構築するための力や社会人として自立する力の一側面を見いだすことができました。

成果

  • 『キャリア発達段階表』は、内面的成長の過程に項目カテゴリーのマトリックスとしてチェックすることで、グラフ化し、現状の生徒自身の成長と発達を可視化した。
  • 『キャリア発達評価表」は、可視化した過去のグラフと現状況のグラフを比較させ、内面的変化の過程や生徒の言葉、動画から見える姿を時系列で記録し、少しずつ成長するキャリアの内面的推察と心理的社会的変化を発達段階表から評価する。
  • 『普及活動』を通し、多くの関係者の方と知り合うことができ、この研究をさらに普及させるべくネットワークが形成しつつある。

今後の課題

  • 『キャリア発達段階表』、『キャリア発達評価表』のブラッシュアップ。
  • 客のアンケートとログの解析を行い、生徒の振り返りに生かす。
  • 作業日誌・チェックリストの導入と活用、振り返り方法について再考する。
  • 喫茶サービスでのICT利活用を含む手引書を作成。

今後の計画

  • 喫茶サービスにおいて、蓄積した支援ツールを生徒が主体的に活用できるアプリの決定と整理。
  • 役割毎の支援ツール一覧図作成。
  • 生徒及びお客様のチェック項目決定、作成。
  • 活用する支援ツールも含めた課題解決的な授業の流れをマニュアル化。
    →喫茶サービスの授業モデルとしてパッケージ化(図表、マニュアル完成)

1年目の成果目標スケジュール

2年目の成果目標スケジュール

1年間を振り返って、成果・感想・次年度への思い

 卒業後の自立まで見据え、『すべての生徒が活躍でき』『キャリア発達を促す』喫茶サービスの授業モデルを構築するために、ICT利活用を含めた支援の時機・瞬間を明確にした役割遂行過程からキャリア発達を促す授業モデルを検討、検証を重ねてきた。特に、評価方法について、動画検証の客観的指標を明確化することで、生徒自身の内面的変化の段階や次の変化へのアセスメントにも効果的な時機・瞬間が明確化することができた。また、動画検証から、生徒自身が喫茶営業後の即時評価や事後学習、学期末でポイントを踏まえた振り返りをすることができた。さらに、教員や生徒同士の対話からは、課題遂行の様子や達成している姿に気付き、考え、課題を見つけ、新たな課題を見いだし、追及する目標・課題に促すことができた。

 次年度は、高等部全員で喫茶サービスを行わず、サービス班の作業学習として授業が行われる。新たにサービス班に所属する生徒や新1年生の作業班ローテンションの生徒にも、これまでの汎用的なアプリ、喫茶サービスの授業モデルを展開する。授業モデルや評価方法の効用検証を積み上げ、より先鋭されたものにし、誰でも、どこでも実践可能なモデルにする。

 レジアプリについて、作業製品販売時のレジ担当の人数によって、量的評価を行う。また、障害福祉サービス事業所での利用に向け、汎用性のあるレジアプリ開発、事業所内の販売製品に合わせた改良を行う。

アドバイザーコメント
明治学院大学 名誉教授 金子 健 先生

本校の研究テーマ、取り組みの意義

 知的障害特別支援学校高等部の教育課程において重要な役割を担う作業学習を中心としたキャリア教育のモデル構築の重要な試みである。生徒自身が自覚的、目的的に活動に取り組むために作業手順を明確化し、自らの動作を映像的に振り返る手立てをICTによって提供することで認知発達を促すことを可能にするところにこの教育の普遍的意義がある。


本期間の取り組み・成果の評価

 これまでの取り組みの中で課題として指摘された生徒の成長をどう捉えどのように評価するかという点について、「キャリア発達評価表」を取り入れる試みを始めた。今後、学習に入る前の時点での評価を起点として、一定時間間隔で評価することによって、個々の生徒の学習効果と発達的変化について客観的な測定が可能となることが期待される。
 接客実習中の生徒自身の行動について録画をして振り返ることで改善を促すという取り組みをしてきたが、今回はさらに動画をキャプチャーして静止画として見直すことを取り入れた。そのことにより、生徒の行動について教員間で協議し共有することで、学習効果を高めることに貢献している。


今後の課題・期待

 トータルなキャリア発達の中に位置づけることで、小学部からの教育課程全体を捉えなおし、卒業後の生活にどう結びつけるかを見直すことが今後の課題である。その意味で、今回の取り組みの中に福祉施設での本アプリ使用が計画されていることに期待したい。

研究課題と成果目標

研究課題
  • ICTの利活用を前提に、障がいの程度にかかわらず、全ての生徒が喫茶サービスで活躍できるようにする支援方法を取りまとめ、次年度にも利用できるようにする。
  • ICTを活用した喫茶サービスで学習した生徒や関係者に対し、本取組が生徒一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要となる能力や態度を育てているのかを検証する。
  • 『接客支援アプリ』、『レジアプリ』を使用することで、本校生徒が行う喫茶サービスの接客業務の多くを補うと共に、コミュニケーションスキルの育成の寄与を目指す。
  • 地域の指定障害福祉サービス事業所や他校に向けた成果情報の発信を行い、ICT導入の活動が広がることを目指す。
  • 全ての作業班で『レジアプリ』を活用する環境を整える。特に、現状android版の『レジアプリ』をiPadでも動作可能にする。
成果目標
  • 成果目標1:『全ての生徒が活躍でき』『キャリア発達を促す』喫茶サービスの授業モデル構築
    •  以下、三つの構成要素の機軸により、キャリア発達を促す喫茶サービスの授業モデルを構築する。この授業モデルを実践することで、障がいの状況にかかわらず、全ての生徒が活躍し、キャリア発達を促すことができる。
       (キャリア発達を促す…生徒が役割を理解し主体的に行動し、成長や課題に気付くことができる。また、なりたい自分の将来のイメージをもち改善しようとし、自分の役割に自信をもつこと。)
    • ①構成要素1:個々の実態に合わせた「役割」と「支援」の明確化
       特に生徒の「強み・力」に着目したアセスメントに基づき、個々の実態に合わせた「役割」と「役割を果たすために必要な支援(ICTの利活用を前提とする)」と「効果的な支援の時機・瞬間」を明確にする。
    • ②構成要素2:主体的な役割遂行を実現するためのタブレットPCによるデジタル化された支援ツールの整備・管理(支援環境の整備)
       喫茶サービスを行うにあたりデジタル化された教材として必要な支援ツールを整備し、どのタブレットPCでも閲覧できるように累積・管理する。支援ツールの一つとして、オーダーを取った後の業務手順についても補うことで、全ての接客手順をナビゲーションできる「接客支援アプリ」を開発する。役割遂行に必要な支援ツールが整備されていることで、生徒が、必要な時機・瞬間に、必要な支援ツールだけを選択し活用することができ、主体的に役割を果たし、個々のキャリア発達を促すことができる。
    • ③構成要素3:課題解決的な学習と個々のタスク管理
       「喫茶サービス実施中の動画による即時評価」「気付きの交流となる終礼時の当日の映像視聴とミーティング」「Webカメラ等で録画した映像を活用した事前・事後学習」など、ICTを利活用した課題解決的な学習を行う。特に、本研究では、ICT利活用した事前学習→喫茶営業→事後学習の一連の課題解決的な学習の流れを、授業モデルの中核として確立する。個別の役割・課題管理は、生徒自身の役割や目標を発言する動画・マイク録音、喫茶営業での録画映像を、集積する。また、それに対する評価と改善点、次への課題などを時系列で記録し、累積する。喫茶営業の録画映像や目標の動画映像、アプリで入力したログ、日常的な生徒の態度や会話等をポートフォリオとして、事後学習や事前学習で、生徒と教師の対話の中で適宜活用する。そういった、生徒の「今の状態」を客観的に捉え、主体的に自らの成長や課題に気付き、改善していこうとする過程はICT利活用することで、キャリア発達を促すことができる。
  • 成果目標2:レジアプリの機能をより汎用性の高いアプリへと開発
    •  レジアプリの機能について、本研究で利用中のシステムの一部であるレジアプリを、全ての作業班で活用できる環境を整える。また、現状android版のアプリをiPadでも動作可能にすることで、他校や事業所での導入が検討しやすくなる。そこで、社会福祉法人郡上市社会福祉協議会の障害福祉サービス事業所にて試験導入することによって、利用者の効率、効果、充足するようなGUIやそれを補う情報機器になって、ユニバーサルデザインされた完成度の高いレジアプリになると考える。

本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応

本期間(4月~7月)の取り組み内容

(1)新アプリ「Good Shot」!

アイコンとログとキャプチャ一覧

アプリGood Shot いいね!

Android版、アプリ「Good Shot」を用いて、PC画面のWebカメラのライブ映像画面をスクリーンショットする機能。「Good Shot」では、「いいね」「チェック」「注目」という3つの項目から選択し、タップすることができる。「いいね」は生徒の主体的な活動、「注目」は即時評価につながる活動、「チェック」は改善が必要な活動として評価し、教師がその場でタップする。スクリーンショットした画像は、時刻_「項目」_「担当者」をファイル名として、時系列に記録した。担当者が、どんなときに、どの項目をタップしたのか記録され、営業後の即時評価、事後学習に活用した。

(2)作業日誌とお客様アンケート

コンセプト内容決め

KJ法

 喫茶サービスのコンセプトを「やすらげる おちつける 喫茶」としているが、イメージにとどまり、具体的なコンセプトが明確になっていなかった。そこで改めて、KJ法を用いて話し合い、生徒たちが実施した喫茶の動画から「気付き」「仲間のよい姿」等を見つけ、付箋に記入し、7項目に整理した。7項目は、作業日誌とお客様アンケートに反映し、生徒の評価基準とした。
 作業日誌は、事後に振り返って生徒の視点で評価した。お客様アンケートは、客にアンケートの記入を依頼し、会計時に提出してもらう。アンケートには、メッセージを記入する欄があるため、接客の即時評価としても活用した。終日、営業で緊張が続いたり、失敗したときに、客からの励ましのメッセージを見せ、モチベーションアップにつながるようにした。

始めての接客

フレッシュな接客

(3)「キャリアマネジメントハンドブック(手引書)」と「手引き動画」

 喫茶サービスにおける授業モデルを分かりやすく解説した電子書籍版のβ版を作成した。構成は、1章については、ICTを利活用した喫茶サービスをすぐに始めたい人向けに、アプリ紹介や情報機器構成を伝える内容とした。2~3章にかけては教員向けの章として構成した。喫茶サービスにおける授業モデルを可視化できるようにした。
 手引き動画については、ドリンクの淹れ方やデザートの盛り付け方等で手順を確かめたいときに、喫茶店の見取り図で知りたい場所を押すと、動画が再生されるようにした。

(4)レジアプリの開発状況と福祉サービス事業所での実践

 2017年1月20日(土)、岐阜県障がい福祉サービス事業所連絡会では、美濃飛騨ブロックの福祉関係の方にICTの研修を行い、「レジアプリ」を紹介した。研修の参加者の中からレジアプリを活用したいという事業所があり、社会福祉法人郡上市社会福祉協議会のぽぷらの家で、4月29日の「春祭り」に向けて試験運用実践を行った。

福祉サービス事業所へ操作説明

サービス利用者へ操作説明

 レジアプリの運用にあたり、利用者の実態からあがった二つの課題について、岐阜県情報技術研究所の研究員の方と協力し、改善した。一つ目は、「ございます」という言葉が、なかなか発音しづらいことに対し、「です」という表記に変更した。二つ目は、漢字のルビ表記が読みにくいことに対し、「ひらがな」の表記に変更した。
 「春祭り」でのレジアプリの活用は、スムーズにレジをすることができた。普段、会計がいくらか分からず戸惑う利用者や電卓でも釣銭のやりとりが分からない利用者であっても、お金をもらったり、釣銭を渡したりすることが概ねできた。改善点としては、職員が管理する上で、情報機器のトラブルに対しての対処方法が分からないことがあがった。

商品項目に合わせてスムーズな会計

「です」という表記で伝えやすい接客

(5)平成29年度サービス班所属生徒の実態把握

 喫茶サービスを終えた後、サービス班の教職員間で、生徒の学習進歩状況から「Good Shot(アプリ)」を活用した。Webカメラの記録映像のキャプチャで、「いいね、注目、チェック」項目から生徒のキャリア発達が促される因子の時機・瞬間の実態把握をする。教職員間で、各教員が、それぞれの異なる視点によっての生徒の「今の状態」を話し合うことができた。また、多角的な視点を教職員間で共有することができ、より客観的に実態把握することができた。

実態把握するための会議

動画から実態把握

アドバイザーの助言と助言への対応

    ■助言

  • お客様アンケートについて
     技術面で評価することと、モチベーションを高めることの両面で評価ができるような項目を検討するとよい。お客様アンケートと誰が接客したのかを突き合わせるとよい。自分がやったことが評価されていることが、やりがいやキャリアアップにつながる。
  • キャリアマネジメントハンドブックについて
     キャリアマネジメントハンドブックは、「紙版」と「デジタル版」というものではなく、付録としてデジタル版を作るという方法がよい。喫茶サービスにおける作業手順を説明する動画については、支援者向けの付録として作るとよい。授業モデルやICT利活用の方法以外にも、教員配置、動き、役割についても含むとよい。
  • レジアプリの開発状況と福祉サービス事業所での実践
     会計時の言葉遣いは、地域特有の方言がある。例えば、地域によっては、会計時のお礼の言葉、「ありがとうございました」が、「おおきに」という言葉になることがある。生活経験からの「なじみのある言葉」として、柔軟性が必要である。
  • H29年度サービス班所属生徒について(キャリア発達評価表から)
    キャリア発達評価表は生徒の発達を促すと同時に、教師のキャリアアップのためでもある。
  • ■助言への対応

  • お客様アンケートについて
     お客様アンケートと記入した客を誰が接客したのか突き合わせるため、会計時、伝票と一緒にアンケートも提出してもらうことにした。
     アンケートは、自由記述でのメッセージ欄と、接客全般に関する7つの評価項目(5段階)を記載し、生徒の接客の技術向上と、意欲向上の両側面を補完するものにした。
  • キャリアマネジメントハンドブックについて
     電子書籍版として出版するにあたり、内容をさらにブラシュアップし、喫茶サービスをすぐに始めたい人向けと教職員向けと二つの対象者に絞り込むことにした。手順動画は、喫茶サービスで関係する業務手順に迷ったら手順を確認できるような動画にした。
  • レジアプリの開発状況と福祉サービス事業所での実践
     福祉サービス事業所での試験的運用について、秋頃の開催イベントに向け、利用者の実態に合わせたアプリ開発を今後も岐阜県情報技術研究所と協力して行う。
  • H29年度サービス班所属生徒について(キャリア発達評価表から)
     生徒の変化からどのような状況が積み重なれば、「喫茶サービスの録画映像」と「今の状態」から、内面的変化を促すことができ、キャリア発達を促すきっかけがわかる。また、教職員間で協議することで、多角的な視点から生徒を捉え、より客観的な現状把握になった。これが、教職員間のキャリアアップにつながった。

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 アプリ「Good Shot」の誕生秘話。喫茶営業時間は、およそ5時間。アプリ開発以前は、喫茶サービスで営業する生徒の良い姿や改善する姿を時刻で記録し、喫茶営業後の5時間分の記録の時刻と照らし合わせ、生徒の事後学習で活用する部分だけを抜き出す膨大な作業が必要であった。その様子を見ていた、岐阜県情報技術研究所の方が、画面をキャプチャする機能がある教師用アプリとして、「Good Shot」を開発。今やこれが、キャリア発達を促す、時機・瞬間を捉えるための研究の要となっている。改めて、『工学』『福祉』『教育』が連携することで、新たな教育の現代的な意味を考えさせてくれた。

成果

  • 喫茶サービスにおける授業モデルが確立し、学習効果のある授業過程として、生徒の学びに還元されている。1年生で初めて喫茶サービスを学習する生徒は、事前学習、喫茶営業を経て「2時間で接客できる手順」によって接客することができた。事後学習でも、接客する自分の姿を、喫茶営業の録画映像から、具体的に振り返ることができた。ICT利活用した事前学習→喫茶営業→事後学習という一連の学びのプロセスが、生徒のキャリア発達を促すモデルとして機能した。
  • お客様アンケートについて、自由記述でメッセージを記入する箇所を設けたことで、客からの即時評価として、接客する生徒の励みになった。
  • レジアプリは、生徒の学びの実態に合わせた設定が可能になった。
  • Good Shotで、複数の教職員が「いいね」「チェック」「注目」をタップして評価し、喫茶営業後、評価した場面の動画視聴をして教職員間で対話した。生徒の「今の状態」を複数の視点で振り返ることで、教職員のキャリア教育にもつなげることができた。

今後の課題

  • 電子書籍版としての「キャリアマネジメントハンドブック」の内容をブラシュアップ
  • お客様アンケート項目の精査と、アンケート結果の活用方法の検討
  • 全ての作業班のICT利活用に向けての導入方法の検討

今後の計画

  • キャリアマネジメントハンドブックに掲載する内容を精査し、喫茶サービスをICT利活用する上でのハンドブックを電子書籍版として出版。
  • 事後学習で、生徒の学びに合わせた振り返りにおける新たなICT利活用の検討。
  • H29年度サービス班所属生徒のキャリア発達評価表や、お客様アンケート内容からの評価によってキャリア発達が促された体験を明確化し、キャリアマネジメントハンドブックの後段に活用事例として掲載。

気付き・学び

  • 言葉にするのは難しいが内面で感じている何かを言葉にするのがメタ認知。学習後に振り返り、メタ認知的な活動を活発にするためには、様々な道具が必要になってくる。ICTは、メタ認知を促すための「支援思考ツール」として考えている。
アドバイザーコメント
明治学院大学 名誉教授 金子 健 先生

 知的障害のある児童生徒を対象とした特別支援学校では、卒業後の主体的生活と社会的自立が教育の大きな目標として取り組まれている。とりわけ領域・教科を合わせた指導である生活単元学習や作業学習では、児童生徒の生活における必然性や興味・関心に基づいて、目当てと見通しを持って学習活動を展開するのが、この教育の特徴となっている。主体的で深い学びを追求するアクティブ・ラーニングそのものである。
 本校の今回の高等部における活動もその一環として、次のような活動と目標によって構成されている。

  • ①作業学習として取り組まれることの多い喫茶業務の実習で、金銭のやり取りをサポートするレジアプリの利用によって、生徒の学習を支援する。
  • ②そこからさらに発展して、客とのコミュニケーションや接客態度、他の生徒との協力・協働を促す。
  • ③それらを追求する中で、生徒の自己理解、勤労意欲など、キャリア発達の促しが、究極の目標である。

 本校のこれらの目標と活動は、十分成功していると言える。レジアプリの使用によって、注文取りに始まり、レジでの会計やつり銭の対応がスムーズにできるようになる。目当てと見通しを持った一連の行動の流れとしてインプットされ定着することで、自信と働くことへの意欲を高めることができる。
 活動中のビデオ映像を見直して、自身の行動を認知的に理解するとともに、録画のキャプチャー画像を活用することで、生徒の行動を本人も含め皆で振り返ることができる。それによって、不十分な行動は修正され、より望ましい行動はプラスの評価を得て定着することになる。
 また、体験を共有することによって、協力や協働が可能になるのである。


 今後の課題としては、生徒のキャリア発達を客観的に捉えるための評価表を蓄積すること、喫茶サービスでの実習手法を他の学習に汎化すること、キャリアマネジメントハンドブックを精選することによって他校への普及を促進することなどが挙げられる。

本期間(8月~12月)の取り組み内容

(1)成果が分かる在庫管理の「受払管理」アプリ

アイコンと操作アプリの画面

Windows PCのサーバーソフトウェア

 高等部の作業学習で、他の作業班でも利活用できるアプリとして、在庫管理アプリを紹介する。バーコードリーダーを使って、様々な製品、材料を管理している。製品の完成個数、織った長さを入力することで、今日の出来高が明確になり、達成感が実感として湧くことができる。また、使用した紐の長さを入力し、材料の在庫管理をしている。
 製品リストをタップすると、製品画像が表示され、生徒の出来高一覧が分かるようになった。製品が売れ、払い出しされると在庫数が減り、在庫ストック数が一定の数を下回ると警告音が鳴る。警告音によって在庫数が減っていることに気が付き、製品を製作するための動機付けになる。ICT利活用で日常的に誰でもできる在庫管理体制を整えることによって、教員から個数を指示されての製作ではなく、生徒自身が自ら気付き、製品を作り上げることができる。

1日の結果をバーコードでスキャン

ており布(さをり)の長さを入力

(2)バーチャルリアリティ(VR)で、気付く力から変えていく力へ

360度の視野で振り返り

360度カメラ

 360度カメラの臨場感により、個々の接客の課題がより具体的に分かるきっかけをつくってくれる。具体的には、生徒1が「いらっしゃいませ」とお客様を迎えると、生徒2が客の人数に合わせて水を用意する。生徒3がパントリーでデザートの準備をする。そういった、連携された動きを確認することや接客の個別課題に注目することに利活用している。
 据え置き型ディスプレイベースのシステムを体感した生徒は、「もう一人の自分がいるみたい」「そこに自分がいる感じ」と、自己を俯瞰する力がVRの空間から自己を振り返り、変えていく力の創造性を培うことができた。

(3)高齢者デイサービスセンターでの出前喫茶

 近郊の高齢者デイサービスセンターにて、出前喫茶を行った。道の駅とは違う場所での喫茶営業だが、デイサービス利用者の身体の様子や言葉で伝えることの様子に合わせ接客することができた。加齢性難聴の利用者に、メニュー表の商品名を指でさし示し、少し大きめの声で、ゆっくり、ハッキリと話しながら、タブレットPCに注文内容を入力することができた。また、喫茶を終えた後の団欒の会でも、デイサービス利用者に学校での活動の様子を伝える姿があった。

デイサービスセンターでの接客

高齢者の様子に合わせて接客

(4)お客様アンケートの集計結果を学びの評価へ

 お客様アンケートの5段階評価に関しては、データ単独での評価として活用するのではなく、「自己評価」「お客様評価」「映像」の3つを照らし合わせて活用することとする。例えば、同じ評価を伝える場合でも、生徒個々によって捉え方が異なり、前向きに捉える生徒もいれば、モチベーションが下がる生徒もいる。よって、お客様アンケートの評価結果は、一律の活用方法ではなく、生徒の適切な実態把握の上で、個々の生徒に合わせて活用する。生徒が自己を前向きにかつ適切に捉えることのできるデータはどう提示するとよいのか、どういった時に、どう支援し、どう伝えるか、その指導方法も含めて検討し、振り返りを中心に今後活用していく。

(5)第3回目!レジアプリを福祉サービス事業所で実践

 2017年10月15日(日)、ふるさとまつりにて、社会福祉法人郡上市社会福祉協議会ぽぷらの家が出店時の会計アプリとしてのレジアプリの第3回目の試験運用実践を行った。

変更されたシステム説明

サービス利用者へ操作説明

 レジアプリの運用にあたり、Android版レジアプリとiOS版レジアプリの両方を選択することが可能になった。Android版レジアプリは、Wi-Fiルーターがキャッシュドロア内に内蔵され、PC、レシートプリンタ、キャッシュドロア、DKDスイッチ、タブレットPCの構成になる。iOS版レジアプリは、iPad、レシートプリンタのみのスマートなBluetooth構成だが、現段階ではデベロッパAPPである。Macを必要とし、Xcodeよりビルドを実行し、iPadにインストールする。そして、1週間後再インストールという繰り返しの手順になる。

iOS版レジアプリ(商品選択)

iOS版レジアプリ(金銭選択)

 福祉サービス事業所は、Android版レジアプリを選択した。事業所の利用者は、最初のうちは緊張していた様子で会計をしていたが、次第にスムーズな会計をするようになった。以前は、後日になって、売上高が分かっていたが、レジアプリを活用することで即時に売上高が分かるようになったため、利用者が達成感を得るともに、これまでの製品を作り上げてきた喜びに満ちた表情があった。

(6)研究報告を通した普及活動

 第41回東海地区特別支援学校知的障害教育研究大会 第4分科会(進路指導・キャリア教育)
第43回 全日本教育工学研究協議会 全国大会 研究発表 特別支援教育2
ATACカンファレンス京都2017 ポスター発表 以上で報告をした。
報告を通し、以下の講評を頂いた。

  • 児童生徒の主体的な学びを促す実践事例として、ICT利活用が生徒の実態にあった成果と機能を果たしている。
  • セルフマネジメントとして、自己教示、自己監視、自己強化といった自分の目標を自分で達成できるとする、自分がどこを見て評価すれば良いかへの支援になっていた。
  • 社会的スキルのセルフモニタリング支援がなされていた。

アドバイザーの助言と助言への対応

    ■助言

  • 振り返りのICTツール
     振り返りの学習で、超単焦点プロジェクタでホワイトボードフィルムに映し出された映像に生徒が書き込む様子をレコードすることで、後でそれを見返したときに、振り返りが一層強化される。
  • お客様アンケート項目についての精査と活用
     アンケートの採点基準の5段階評価は、その得点基準が客によって異なるため、客観的な評価として活用することは難しい。
  • キャリアマネジメントハンドブックについて
     実践事例集を掲載。
  • 他の作業班におけるICT利活用
  • ■助言への対応

  • 振り返りのICTツール
     ハードウェア上でレコードすることは、技術的に難しいが、生徒たちが振り返っている様子を上から俯瞰する映像をレコードすることで、事後の振り返りを事前学習に生かすことができる。
  • お客様アンケートについて
     喫茶営業では、お客様にアンケートの記入依頼をしている。アンケートによる評価が接客評価につながった。アンケート項目の5段階評価やメッセージ内容の評価の統計を取った。休憩時間に、生徒たちは、お客様が記入したメッセージを見ることで、ライブ感のある即時評価によって、接客したことの達成感を即時に確認できた。
  • キャリアマネジメントハンドブックについて
     実践事例集を通し、キャリア発達評価表を生かし、生徒が成長し、発達が促された体験を明確化する。
  • 他の作業班におけるICT利活用の事例
     縫製班の取組では、作業製品の在庫管理や材料の管理を受払管理アプリで在庫を管理する。商品管理している棚や 材料棚にバーコードを張り付け、タブレットPCとバーコードリーダーでスキャンし、出庫・入庫の個数を入力して在庫を管理した。材料の組紐は、使った組紐の長だけ減っていくことがリアルタイムで分かるため、生徒自ら少なくなっていることを教員に報告することができる。

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

  • レジアプリがandroid版、iOS版が開発されたことで、用途に合わせた選択肢と利活用の幅が広がった。

成果

  • 作業学習において他の作業班(縫製班)でも活用できる在庫を管理するアプリを開発した。一つ一つの作業製品を完成させたり、『ており布(さをり布)』の長さを入力したりすることで、生徒が自分自身の成果を確認できるアプリになった。縫製班で作るための材料も在庫管理することで、生徒たちは自然と材料が少なくなっていることや作業製品の在庫不足に気がつき、主体的に作業学習に取り組めるようになった。
  • お客様アンケートの5段階評価やコメント内容を統計することで、生徒一人一人の接客回数のばらつきがあることが分かった。また、生徒が接客する時間帯で、午前中は客から高評価だが午後からは評価が下がることや、生徒の接客に対する評価項目で、どのお客様からも変わらない高評価項目が分かった。
  • 振り返りのツールとして、据え置き型ディスプレイベースシステム、VRによって、360度の臨場感と没入感により、生徒の興味・関心を惹きつけ、振り返りの学習で個々の課題に集中して取り組むことができた。
  • 高齢者デイサービスセンターでの出前喫茶で、様々なお客様に合った注文の取り方や受け答えをすることができた。具体的には、メニュー表の商品名を指で示し、相手の目線に合わせた接客をすることができた。
  • 2台のWebカメラを設置することで、フロアとパントリーとの一貫した接客の流れが分かり、パントリーで食器洗い・拭きをする生徒が多く、フロアで接客する生徒が少なくなっていることに気がつくことができた。2台のカメラによって、自分自身が取り組んでいる状況と周囲の状況を把握する気づきの学びができた。

今後の課題

  • 振り返り学習でのより有効な情報機器の利活用方法の明確化と授業展開の深化
  • キャリアマネジメントハンドブックの事例集作成

今後の計画

  • レジアプリのiOS版の開発と受払管理アプリでの画面構成の開発
  • 振り返り学習でのより有効な情報機器の利活用方法の明確化と授業展開の検討
  • キャリアマネジメントハンドブックの完成

気付き・学び

  • ATACカンファレンス京都2017でのポスター発表で、参加者からのVRに関する興味・関心が高かった。VRは、活用方法や教育的効果があるのかも含めて検証が必要である。研究成果として厳密に明確化されていない部分も含めて、活用方法とそれを具体的に授業に反映できるのかも含め検証したい。

成果目標

(1)成果目標1:『全ての生徒が活躍でき』『キャリア発達を促す』喫茶サービスの授業モデル構築
 以下、三つの構成要素の機軸により、キャリア発達を促す喫茶サービスの授業モデルを構築する。この授業モデルを実践することで、障がいの状況にかかわらず、全ての生徒が活躍し、キャリア発達を促すことができる。
 (キャリア発達を促す…生徒が役割を理解し主体的に行動し、成長や課題に気付くことができる。また、なりたい自分の将来のイメージをもち改善しようとし、自分の役割に自信をもつこと。)

  • ①構成要素1:個々の実態に合わせた「役割」と「支援」の明確化
    特に生徒の「強み・力」に着目したアセスメントに基づき、個々の実態に合わせた「役割」と「役割を果たすために必要な支援(ICTの利活用を前提とする)」と「効果的な支援の時機・瞬間」を明確にする。
  • ②構成要素2:主体的な役割遂行を実現するためのタブレットPCによるデジタル化された支援ツールの整備・管理(支援環境の整備)
    喫茶サービスを行うにあたりデジタル化された教材として必要な支援ツールを整備し、どのタブレットPCでも閲覧できるように累積・管理する。支援ツールの一つとして、オーダーを取った後の業務手順についても補うことで、全ての接客手順をナビゲーションできる「接客支援アプリ」を開発する。役割遂行に必要な支援ツールが整備されていることで、生徒が、必要な時機・瞬間に、必要な支援ツールだけを選択し活用することができ、主体的に役割を果たし、個々のキャリア発達を促すことができる。
  • ③構成要素3:課題解決的な学習と個々のタスク管理
    「喫茶サービス実施中の動画による即時評価」「気付きの交流となる終礼時の当日の映像視聴とミーティング」「Webカメラ等で録画した映像を活用した事前・事後学習」など、ICTを利活用した課題解決的な学習を行う。特に、本研究では、ICT利活用した事前学習→喫茶営業→事後学習の一連の課題解決的な学習の流れを、授業モデルの中核として確立する。個別の役割・課題管理は、生徒自身の役割や目標を発言する動画・マイク録音、喫茶営業での録画映像を、集積する。また、それに対する評価と改善点、次への課題などを時系列で記録し、累積する。喫茶営業の録画映像や目標の動画映像、アプリで入力したログ、日常的な生徒の態度や会話等をポートフォリオとして、事後学習や事前学習で、生徒と教師の対話の中で適宜活用する。そういった、生徒の「今の状態」を客観的に捉え、主体的に自らの成長や課題に気付き、改善していこうとする過程はICT利活用することで、キャリア発達を促すことができる。

(2)成果目標2:レジアプリの機能をより汎用性の高いアプリへと開発
 レジアプリの機能について、本研究で利用中のシステムの一部であるレジアプリを、全ての作業班で活用できる環境を整える。また、現状android版のアプリをiPadでも動作可能にすることで、他校や事業所での導入が検討しやすくなる。そこで、社会福祉法人郡上市社会福祉協議会の障害福祉サービス事業所にて試験導入することによって、利用者の効率、効果、充足するようなGUIやそれを補う情報機器になって、ユニバーサルデザインされた完成度の高いレジアプリになると考える。

アドバイザーコメント
明治学院大学 名誉教授 金子 健 先生

本校の研究テーマ、取り組みの意義
 新学習指導要領が実施されようといういま、小学校から大学に至るまで大きな課題となっているのはアクティブラーニングとキャリア教育であろう。
知的障害特別支援学校では、終戦直後のこの教育の黎明期より、主体的、実際的な生産活動を通じてこそ児童生徒の学習が効果的に行われるとの実践的教訓を蓄積していた。昭和38年の最初の学習指導要領においては、領域・教科という通常の教育と共通の教育課程編成の枠組みを基本にせざるを得なかったが、その後、「領域・教科を合わせた指導」を可能とする規定が導入されるという歴史的経過をたどって今日に至っている。
 一方、通常の教育では、「合わせた指導」ともいえる「総合的学習」の導入や、「主体的・対話的で深い学習活動」とされるアクティブラーニングや働く意欲を育てライフキャリアを豊かにする「キャリア教育」などが強調され、学習指導要領にも盛り込まれるようになっている。
 このような状況の中で、ICTを活用して高等部の作業学習で自覚的、主体的な学習効果を高めようという本校の試みは誠に時宜を得た取り組みといえる。

本期間の取り組み・成果の評価
 本校の取り組みの中心である喫茶業務におけるICT活用以外の作業学習での応用として、在庫管理アプリが試みられた。他の作業班で取り組んでいるランチョンマットづくりの学習で、バーコードリーダーを使って材料や製品の個数を管理することにより、自主的自発的に活動に参加することができるようになる。就労や社会参加において重要な意義を持つ自発性を養ううえで大きな意義を持つといえる。
 喫茶業務において360度カメラを導入して自分や仲間たちの動きを俯瞰的に捉えるという試みも、自らを客観的に見て課題解決に向けての方略を立てるという認知発達を促すうえで大切なステップになりうると評価することができる。
 高齢者デイサービスセンターでの出前喫茶の活動は、これまで経験してきた道の駅の学習で身に着けた認知的ストラテジーを汎化させ、実践的作業能力を高めるうえで有効である。
 今期、このような活動の広がりが見られたことは、ICTの活用が校内の他部署、他校、さらには福祉や地域社会へと普及する可能性を示したと言える。

今後の課題
 評価表による生徒の実態把握をさらに精緻化するとともに、そのデータを蓄積すること。
 この評価表を他の場面、他の活動へ応用することの検討などが今後の課題である。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

レジアプリ、iOS版App storeでダウンロードスタート!

レジスターアプリのアイコン

お釣の硬貨が大きく表示

 iOS版レジアプリも、数回のタップと会計時に伝える言葉とお金のマッチングができれば会計することができます。アプリ画面では、紙幣と硬貨が表示され、客が出したお金を画面に表示されるお金にタップすれば、自動で計算し、POSプリンタからレシートを印刷します。その日の一定時点、売上も即時に分かり、売上アップに向け、モチベーションが高まります。一日の売上も部門ごとに整理され、その場で会計報告書類としてレシートを印刷することができます。
 2018年2月App storeにてダウンロードが可能になりました。iPadとPOSプリンタでのBluetooth構成でスマートなレジが完結します。レジアプリ内にEPSON製のドライバーが組み込まれているため、EPSON製のPOSプリンタでレシートが出力されます。動作確認済みのPOSプリンタは、TM-88V、TM-30です。

    今後の追加の機能として、

  • 商品の写真の表示、撮影機能の追加
  • 店舗情報(班、商品、単価などの情報)を、CSVファイルで一括読み込み、書き出しする機能の追加をします。

レシートに印字されるロゴマークも変更可能

部門や商品の価格変更可能

https://itunes.apple.com/jp/app/レジスター/id1342506644?l=ja&ls=1&mt=8☜clickすると、App storeへジャンプします。

受払管理アプリのイラスト化

 受払管理アプリは、製品の在庫管理や材料を管理するアプリです。以前は、バーコードをスキャンして、文字でしか、商品を確認できなかったのが、バーコードをスキャンすると、その画像がタブレットPCに表示され、また、印刷サーバーアプリでも、画像が表示されるようになりました。画像と文字が表示されることで、スキャンしたときに、ダブルチェックができるようになりました。
 生徒が在庫管理することで、例えば、お客様から10個の注文が入った時、在庫数が12個あることをすぐに確認し、即座に注文品を販売できることを、生徒自ら教師に伝えるようになってくるなど、主体的な在庫管理が働く喜びや意欲を高めています。

スキャンした商品の画像が表示

スキャンすると印刷サーバーアプリにも商品画像が表示

接客支援アプリの完全ナビゲーション化

接客支援アプリのアイコン

アプリの一部

 接客支援アプリは、接客手順と接客で使用する言葉をタブレットPCでアシストします。アシストの程度は、生徒自身がモード選択・変更することができます。生徒の力に合わせてモード変更することができます。

注文最終確認でアイコン化

注文最終確認でアイコン化

 従前のものは、注文を取った後の手順を補えていませんでしたが、客が入店し「いらっしゃいませ」から、注文した商品を全て提供し「ごゆっくりどうぞ」までの接客手順をすべて補うように改良しました。複数注文されたお客様の場合、最初に入力したドリンクのみ表示され、伝票を見ながらドリンク名をお客様に伝えていました。アプリの方で、注文したアイコンが表示され、一時的に忘れてもテーブルごとにドリンクのアイコンが表示されることで、アプリで全ての接客手順を補うことができるようになりました。
 高等部1年生での初めての接客でしたが、接客支援アプリの行動と接客時に使用する言葉の完全ナビゲーションによって、手順が分かり、安心して一人で接客をやりきることができました。接客や手順を覚えることに終始せず、接客に必要な表情やコミュニケーションについて重点的に学習することができました。アプリを手がかりに接客を繰り返すことで自信が生まれ、初めて会う客からの問いかけにも応えたり、相手に適切な対応で用件を伝えたりすることができるようになりました。お客様アンケートからも、落ち着いて、聴き取りやすい声で、とても丁寧な対応という講評があがっていました。

キャリアマネジメントハンドブックの事例集作成

 ICTを利活用した喫茶サービスの授業モデルを実践する中で、効用のあった事例として、個々の生徒のキャリア発達が促されていく変化の過程とともに事例集を作成しました。そして、「キャリアマネジメントハンドブック」にも掲載しました。

【※1】キャリア発達段階表のレーダーチャート
評価の前段階のアセスメントとして、「キャリア発達段階表」を活用し、教師間で
各項目の発達段階をチェックし、個々の段階をレーダーチャート化しました。

【※1】キャリア発達段階表のレーダーチャート
評価の前段階のアセスメントとして、「キャリア発達段階表」を活用し、教師間で
各項目の発達段階をチェックし、個々の段階をレーダーチャート化しました。

 その一つとして、「振り返りツールで課題解決的な学びの連鎖で一転機」した事例を紹介します。
 高等部1年生のBは、「人と話すことが好きなんです」と、喫茶サービスがあるサービス班を当初から希望していました。キャリア発達段階表【※1】によると、「コミュニケーション力」「社会性」で高い値を示していました。その意欲や基礎的能力を、強みとして発揮できるよう考え、役割をホールでの接客に固定しました。実際に、その強みは接客回数に反映され、他の生徒は一度の営業で5回程度の接客回数でしたが、Bは11回接客をしていました。自分の役割を理解し、周囲の状況を把握し、客が来店すると、すぐに接客することができていました。
 事後学習では、ツールとしてお客様アンケートや接客営業中の録画映像を活用し、振り返りを行いました。Bの反省では「途中から笑顔になれなかったかも」と語っていましたが、接客の様子を俯瞰する動画を視聴すると、終始笑顔で接客できていたことが確認できていました。お客様アンケートからは「初々しくそして礼儀正しく一生懸命さが伝わって良かったです」とコメントがあり、アンケートの「気持ちの良いあいさつ」「おもてなしのよさ」の項目ですべての客から最高値「5」の評価を受けていました。その内容を伝えると、照れながらも歓心していました。動画やアンケートから客観的に自分の良さを自覚し、達成感を得ることができていました。「笑顔で接客したい」と次の目標を語った姿から、芽生えた自覚や自信が、自分の良さをより発揮したいという気持ちにつながったと考察しました。

2画面(フロアとパントリー)の同時再生

目標に照らし合わせた動画を確認

 また、Webカメラを2台設置しフロアとパントリーの様子が分かることで、パントリーで数名の生徒が固まって、客が来店したにもかかわらずフロアに生徒が一人もいない状況が確認できました。その様子をBは、事後学習で気付き、協力して作業するということの認識を新たに理解し、次回の目標に加えて設定していました。翌月の実際の喫茶場面で、パントリーで同じような状況になった時、「固まるなよ、フロアに行かないと」とBが仲間に呼び掛けている姿がありました。キャリア発達の段階表による「仲間と協力・共同してチームの一員として役割遂行できる」力が育った瞬間でした。
 もう二つ目の事例として、「一つの役割に繋げるのではなく,動画から内面的な背景をキャッチ」を紹介します。

【※2】キャリア発達段階表のレーダーチャート

 高等部3年生のCは、2年生の時に接客(ホール)を中心的な役割として行っていました。Webカメラの録画映像から、注文を取る際、最初に来客した人数をカウント後に客が追加される予想外のことが生じると、どのように対応したらいいのか分からなくなる姿が見られました。接客支援アプリの「困ったボタン」をタップして助けを求めることはできるが、状況を説明できず、困惑した表情になることが多くありました。Cは、キャリア発達段階表(以下、段階表)によると「計画・立案・実行力」「情報収集・活用能力」の値が高く、自分の役割や目標が明確だと様々な情報を活用して主体的に動くことが分かりました。また、「コミュニケーション」「社会性」の値が低く、TPOに応じた言動の難しさがあることから、接客ではなく、「バリスタ」の役割に変更しました。バリスタの役割の中にもいくつかの仕事があるが、役割をより限定し、「ホールで珈琲を淹れる」役割のみに変更しました。そうすることで、テーブルに備えてあるミルク等を客の使用に応じて補充したり、客が帰った後、自分で気付いてテーブルの片付けをしたりする姿が見られるようになりました。また、動画で振り返る中で、教師や仲間から評価されることで、より意欲的に活動できるようになりました。Cにとって分かりやすい役割になったことで、気持ちに余裕ができ、周囲を俯瞰する力とともに、「社会性」が育ちつつあると考えられます。キャリア発達の段階をグラフ化したレーダーチャートは、その屈性度合いが明瞭であれば、強みが明確にわかり、強みを生かした役割を厳選することができます。強みを生かすことで達成感や意欲が生じ、自信や余裕につながり、強みを伸長するだけでなく、キャリア発達全体を促すことにつながることができました。
 以上の内容を細かく、キャリア発達を促すICTツールの因果関係の考察を『キャリアマネジメントハンドブック』で示していきます。

アドバイザーの助言と助言への対応

    ■助言

  • 研究が終了しても、喫茶サービスの授業モデルは、スペシャルイベントで終わるのではなく、継続することが可能なものにしてほしい。
  • ■助言への対応

    →事前学習、事後学習は、喫茶サービスの授業モデルとしてのパッケージで取り組んでいるので、継続して取り組むことが可能です。このパッケージを多くの先生方に理解してもらうと共に、誰もがハンドリングで扱えるような仕組みづくりが重要な課題となります。誰もが活用できる「キャリアマネジメントハンドブック」の完成をめざします。

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 喫茶営業で、360度カメラで撮影した映像を、壁やテーブルがスマートスクリーンにAndroid 7.0を搭載したプロジェクターで投射し、接客する生徒の動きを焦点化し、注視しながら、接客する生徒の動向をタッチで触り、360度カメラで、動向の様子を振り返ることができました。また、超短焦点プロジェクターで投射するホワイトボードフィルム(IZUMI製 まなボード)は、投射時の発色がよく、フィルムの下がめくれるようになっているので、紙を挟み込んで書き込むことが可能になり、XチャートやYチャート等のワークシートを挟めこめるような活用の幅が広がりました。

タッチスクリーンで360度の画面を操作中

2画面を投射し、2台のカメラで動向を知る

本期間の成果

  • レジアプリのiOS版はApp storeでダウンロード可能
  • 受払管理アプリでの画面構成が変更
  • キャリア発達評価表の段階的記入
  • キャリアマネジメントハンドブックの完成

2年間の成果

 喫茶サービスにおける授業モデルは、事前学習、喫茶営業、事後学習の学習展開でICTツールが、キャリア発達を促すシステムとなりました。事前学習では、接客支援アプリの完全ナビゲーションにより、接客手順を覚えることが目的化せず、「人とかかわるための基本的な知識・技術の向上」というスムーズな目的意識の形成となり、個々に必要な課題に迫る学習ができました。喫茶営業では、個々のよさを生かして役割を果たし、主体的で協同的な実体験から、学びの達成感を感じ取ることができました。事後学習では、自己を俯瞰できる動画やお客様アンケート、対話を広げる投影法により、「次はどう改善したらいいのか」と自分の行動の結果を確認し、その結果を言語化し、評価することで次の行動を修正していくことができました。このフィードバックと改善を連続的に往来することで、キャリア発達が促されるシステムが維持可能となりました。課題に対し、解決したい状況をイメージする力に映像を用いて振り返り、解決に役立つICTツールに焦点を当てつつ、生徒の長所・強みに注目し、課題解決を図る過程で小さな達成の積み重ね評価によって「活動・活躍したい」環が広がっていきました。
 また、汎用性の高いアプリ開発は、ユーザーの操作性に寄り添った過程の中で、トライアンドエラーの集積・改良により、身近で誰もが使いたくなる、使い込まれるアプリにすることができました。

今後の計画

 360度カメラの利活用からの効用の検証
 キャリアマネジメントハンドブックの電子書籍化に向けてのデータ整理

2年間を振り返って

 キャリア発達を促すには、正しいか間違っているのかを気にせず、まずは自分が喫茶営業で体験したことを自分の言葉で、「感じたこと、思っていること」を表現することが重要です。さらに、ICTの利活用によって伝え・思考する動機づけを促すことと、一連の授業モデルにより、達成した実感を得ることで、自己有用感が高まることができました。こういった、よりよい螺旋の向社会的な内面的変化によって、自分らしい生き方を実現していく過程を、今後も大切にしていきたいです。

今後の課題

 本研究の効用が実証できた「直感的操作ができる」「俯瞰できる」「対話が深まる」ICT機器について、他の学習にも応用するための利活用事例の積み上げの効用の検証が不十分です。360度カメラで撮影した動画を用いた据え置きディスプレイベースのバーチャルリアリティは、今まで確認できなかったすべての視野が分かり、職場実習の事前学習として職場の様子を個別で事前に確認することにも活用の可能性があります。超短焦点プロジェクタでの多様な場所へ投写し、マルチタッチは、映像を囲んだり、また壁の周囲に集まったり、遠く離れた遠隔地の様子を直感的にマルチタッチしながら集団で確認するなど、コミュニケーションの交流ツールとして活用することが考えられます。そういった現時点での最新テクノロジーを応用した動画視聴の発展的な利活用事例を積み上げ、検証することが今後の課題です。
 また、アプリ開発は、岐阜県情報技術研究所との連携によって成立しています。開発の背景には、生徒が使いやすく、使い込まれる方法を具体的に伝え、喫茶営業で利用している状況を研究員が参観し、アプリ改良につながっています。今後も様々な協力機関と協力・開拓し、創意工夫のICT利活用によって、児童・生徒のキャリア発達が促される支援技術の開発が求められます。

今後の計画

 360度カメラの利活用からの効用の検証
 キャリアマネジメントハンドブックの電子書籍化に向けてのデータ整理

アドバイザーコメント
明治学院大学 名誉教授 金子 健 先生

本校の研究テーマ、取り組みの意義
 知的障害のある児童生徒の心理的特性として抽象的思考の困難さが挙げられる。日常生活における具体的経験の積み重ね、すなわち個を取り巻く環境と主体的行動との相互作用から普遍的法則を抽出し、それを新しい場面に適用して問題解決を図るという操作的思考が苦手とされる。学校教育においては、教科書の上での知識学習の理解、定着、応用が困難である。
 したがって知的障害特別支援学校の学習指導要領とその解説では、教科別に学習するだけでなく、必要に応じて領域・教科を合わせて学習することができるとされている。その結果、生活単元学習や作業学習という授業形態がとられることが一般的である。
 また、卒業後の自立と社会参加が重要な教育目標となり、小学部段階からのキャリア教育を意識した取り組みに力を入れている。とりわけ高等部においては、一層具体的実践的な作業学習が求められている。本校の取り組みは、この作業学習においてICTを活用することで、より効果的なキャリア発達を可能とすることを目指している。
 知的障害のある生徒の卒業後の進路として、かつては製造業が主であったが近年は第三次産業とりわけ接客などのサービス業への就職も多くなっている。その背景には社会の産業構造の変化があり、就労機会の拡大は喜ばしいことではあるが、知的障害の特性として対人コミュニケーションや臨機応変の対応が苦手であり、その改善・克服が教育の課題となっている。

取り組みの実際と評価
 本校では高等部の作業学習の一環として、喫茶サービスを取り入れている。金銭の授受を経験することで数量処理の学習をしたり、対人的コミュニケーションの学習、他者との協働、協力、役割分担、責任感の醸成など様々な意図が含まれている。その活動において支援アプリを導入することで、スムーズな接客とレジでの確実な金銭授受を体験することができる。
 接客における必要な発話がタブレット上に表示されて、コミュニケーションを支援してくれる。またレジでのつり銭の扱いなど金銭授受の支援が得られることで、生徒は自信を持って体験することができるようになる。
 さらに、活動を映像記録し、活動後に生徒自身も仲間と共にそれを視聴することで、一連の活動をフィードバックし、協力や役割分担の認識という社会性を高め、目当てと見通しを持った活動、すなわちメタ認知の能力を高めることができるのである。主体的・対話的で深い学びを目指した、アクティブラーニングそのものであるとも言える。

今後の課題・期待
 体験的な学習とICTの活用によって、経験的にその効果は実感できるが、どのような能力がどの程度獲得されるのか、成果の客観的な評価が課題となる。本校ではキャリア発達段階表のレーダーチャートを作成し、生徒の変化を把握することを試みている。認知発達の各側面と照らして何がどう発達するのか、個人の学習特性を把握し、個別指導計画作成に活かすことができる。
 高等部の期間のみの学習ではなく、小学部からの積み上げとして、キャリア発達の各側面と照らして評価することによって、全人格的発達を長期的視点に立って支援する教育課程の中に位置づけることができる。
 また、今回の取り組みで試みたように、卒業後の福祉的就労の場面でもこのアプリを活用することで、移行支援と職場定着にも活かすことが可能となる。さらには本校が作成したキャリアマネジメントハンドブックが広く他校でも活用されることを期待したい。