上越市立大手町小学校

第52回特別研究指定校

研究課題

豊かな体験と情報活用の一体的充実により、探究し続ける子供を育成する教育課程の提案
~新たに設定した資質・能力「情報探究力」「人間関係力」「学びに向かう力」を基軸として~

2026年度04-07月期(最新活動報告)

最新活動報告
第1回全体研究会を実施した。大手町小学校の子供観・教育観と共に......

アドバイザーコメント

村川 雅弘 先生
4月28日(火)と6月24日(水)の2度、上越市立大手町小学校を訪問した。その報告を......

上越市立大手町小学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 新潟県 上越市立大手町小学校
アドバイザー 村川 雅弘 鳴門教育大学 名誉教授・客員教授
研究テーマ 豊かな体験と情報活用の一体的充実により、探究し続ける子供を育成する教育課程の提案
~新たに設定した資質・能力「情報探究力」「人間関係力」「学びに向かう力」を基軸として~
目的 現代社会に生きる私たちは、これまでとは比べ物にならないほどの多くの情報を得ることができる。様々な情報が溢れる現代社会、そして未来の社会において、人が人としてよりよく生きるためには、膨大な情報から必要なものを自らの意思や判断で選び取ると共に、直接体験を基に問いを立て、他者と手を取り合いながら課題解決に向かうことが重要であると考える。私たちはこの過程を、探究することであると捉え、子供が生涯に渡り、探究し続けるような資質・能力を育みたい。
そこで、「探究し続ける子供」にとって重要な資質・能力として以下の3つを設定する。
  • ・直接体験と得た情報とを関連させて活用する「情報探究力」
  • ・他者との関係をつくり、協働的に課題解決に向かおうとする「人間関係力」
  • ・自らの学びを方向付ける「学びに向かう力」
そしてこれらを効果的に育成するため、探究的な学びの基盤となる「生活科」および「総合的な学習の時間」を新たな資質・能力の視点から再構成することで、子供が社会と深くつながり、自分自身の成長を実感できる探究的な学びが中核となる教育課程を創造することが本研究の目的である。
現状と課題 昨年度まで学校重点目標「共生社会をつくる子供」に重要な資質・能力として、認知能力「コアスキル」と非認知能力「コアマインド」を発揮・育成する実践研究を進めてきた。この研究によって以下のような成果と課題が明らかとなった。
【成 果】
  • ・豊かな直接体験を前提とした各学年の「探究」の活動が構想・展開された。
  • ・異学年・同学年活動を年間構想に位置付け、実践することができた。
  • ・年間を通して作文シートや学びのシートを書き溜める活動を継続することができた。
  • ・「コアスキル」「コアマインド」がはたらく子供の姿を共有し、意味付けることができた。
【課 題】
  • ・直接体験を通して得た感覚などの情報と社会の事実とを関連付け、学びを深める活動に学年間での差が見られた。
  • ・異学年・同学年活動をすることによって育みたい資質・能力が明確でなく、計画や評価に曖昧さが見られた。
  • ・子供が蓄積した学びの履歴を、次の学びへ繋げる手立てが十分でなかった。
  • ・「コアスキル」「コアマインド」の複雑さや曖昧さによって、学校外へ研究を発信した際に理解を得られない部分があった。
学校情報化の現状
  • ・「教科指導におけるICT活用」については、学校全体で学年の系統性を鑑みた指導計画の作成が進んでいない。「探究」を中心に指導計画を見直すと共に、これによって見られた変容について、子供の姿、数値データの両面から評価する。
  • ・「情報教育」については、ICTの基本的な操作の習得及びプログラミング教育について、教員個々に委ねられている点が課題である。前述のICT活用に関わる系統的な指導計画の中に明確に位置付けると共に、具体的な活動例を蓄積・発信していく。
  • ・情報モラルの指導について、上越教育大学・清水教授を招いた研修を計画的に進め、実践を重ねる。
取り組み内容 ①「情報探究力」「人間関係力」「学びに向かう力」の構造の整理
  • 〇「情報探究力」「人間関係力」「学びに向かう力」を視点に授業公開研究を進め、見られた子供の姿を分析・整理することによって、それぞれの資質・能力の構成要素を明らかにする。
②「情報探究力」を育成する「探究」の構造の明確化
  • 〇年間の「探究」指導計画作成及び定期的なカリキュラム評価によって、「情報探究力」の発揮・育成に有効な手立てを整理する。
  • 〇「探究」で見られた子供の姿を分析し、学年ごとに「情報探究力」を発揮する具体像を整理する。
③「人間関係力」を育成する「ふれあい」の構造の明確化
  • 〇年間指導計画に異学年活動の時間を設定し、「人間関係力」の発揮・育成に有効な手立てを整理する。
  • 〇学校全体で統一する異学年活動の計画を基に、各学年の同学年活動の構想及び評価を行い、見られた子供の姿を整理・分析する。
④「学びに向かう力」を育成する「学びの時間」の構造の明確化
  • 〇「探究」の活動を中心に、課題解決に向かおうとする中で、好奇心や情熱、粘り強さを意図的に発揮させるような手立てを講じ、子供の自信を育む。
  • 〇各学年の「学びの時間」において、子供が自分自身の学びを振り返り、成長を自覚できるような有効な授業実践及び評価を行う。
  • 〇子供が1週間の学びを見通す時間と、週末の振り返りの時間を、全校で統一して一体的に実践する。
成果目標
  • ・3つの資質・能力の発揮・育成に関わる項目を取り入れた学校評価アンケートを、子供・保護者を対象に年2回実施する。3つの資質・能力の発揮・育成に関わる項目についての肯定的評価が子供・保護者共に80%を上回る。
  • ・研究会や活動公開DAYの参会者を対象に事後アンケートを行う。研究内容の明瞭さ・汎用性に関わる項目における肯定的評価が回答者の80%を上回る。
助成金の使途 「ロイロノートスクール」年間契約料、先進校視察、公開研究会運営費
研究代表者 風間 寛之
研究指定期間 2026年度~2027年度
学校HP https://www.ohtemachi.jorne.ed.jp/
公開研究会の予定
  • ・12月11日(金)に、研究発表会を実施する。全国から参会者を募り、研究成果を発信する。
  • ・特例研究指定校アドバイザー・村川教授から来ていただく機会を運営指導委員会とし、研究会の他に2回実施する。この日を「大手町・活動公開DAY」として、参会者を募り、授業公開等を行う。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

【4月】

3年探究「高田のカラフル見いつけた」

  • ・第1回全体研究会を実施した。大手町小学校の子供観・教育観と共に、今年度新たに設定した3つの資質・能力「情報探究力」「人間関係力」「学びに向かう力」及び、これらを発揮・育成する教育課程開発の在り方について共有した。
  • ・各学年の「探究」を中核とした年間指導計画「探究カリキュラム」の作成について検討を進めた。主に「情報探究力」を発揮・育成する単元を思い描き、カリキュラム表の中に明示した。
  • ・4月10日、6年探究「今年の探究どうする?」の授業公開を行った。子供が体験したいこと、体験によって得られる学び、どのように社会とつながるか等を視点に、今年度の「探究」の活動の方向性について話し合う授業を公開した。今年度新任教員が中心に授業を参観し、大手町小の子供観・教育観を具現する授業の在り方について共有した。
  • ・4月28日、特別研究指定校の打ち合わせとして、当校のアドバイザーである鳴門教育大学・村川雅弘名誉教授とパナソニック教育財団の皆様をお迎えした。今年度の研究推進の方向性についてご指導をいただくと共に、全学年の「探究」の授業を参観していただいた。

【5月】

3年国語「見つけよう 説明文のきまり」

  • ・今年度運用する「探究」「ふれあい」「学びの時間」「教科」の4部会について、活動計画を検討・作成し、活動をスタートさせた。
  • ・5月20日(水)、3年国語「見つけよう説明文のきまり」と4年算数「アングルLABO」の授業公開を行った。全教員で参観及び事後振り返りWSを行い、資質・能力を発揮・育成する子供の姿を視点に、成果を共有した。
  • ・各学年の「探究カリキュラム」を作成した。

5年生の「探究カリキュラム」

  • ・5月26日、Ⅰ期(4.5月)のカリキュラム振り返りWSを行った。学年部ごとに資質・能力の発揮・育成を視点に各学年の活動を振り返り、Ⅱ期の「探究カリキュラム」の修正を行った。各学年の振り返りはWS後に全職員で共有した。

Ⅰ期1年生のカリキュラム振り返りWSで話し合われたこと

  • ・Ⅰ期(4.5月)の活動を振り返る「学びの時間」で、子供は蓄積してきた学びの履歴(学びのシート)を構造化し、「学びのネットワークシート」をまとめた。

「学びのシート」を書く6年生

6年生の「学びのネットワークシート」

【6月】

  • ・6月9日、これまでの公開授業研究で見られた子供の姿、教員がこれまでに見てきた子供の姿から「情報探究力」を発揮・育成していると考える姿を抽出し、WS形式で整理した。このWSによって明らかになった「情報探究力」を発揮・育成する具体的な姿を整理することによって、「『情報探究力』構成表(仮)」を作成した。「問いの創出」「論理的思考」「創造性」「情報収集」「情報機器の操作」と「直接体験」を視点に具体的な子供の姿を思い描き、学年の発達段階によって整理した。
  • ・6月24日、村川雅弘名誉教授とパナソニック教育財団の皆様をお迎えして、第1回7運営指導委員会を行った。5年ふれあい「協力し助け合い自ら行動礼儀正しくみんなが楽しい自然教室」、1年探究「みんなのツリーハウス」、6年探究「伝えよう わたしの『まち』の魅力~本町編~」の授業公開及び振り返りWSを行った。全体会の最後に、村川名誉教授より、今後の研究推進についてのご指導をいただいた。

1年探究「みんなのツリーハウス」

6年探究「伝えようわたしの『まち』の魅力~本町編~」

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ・直接体験を重要とし、子供にとって価値のある直接体験を思い描いた「探究」の構想・展開の価値について評価していただいた。特に1年「探究」の授業において、言葉を話すことができない中型動物であるヤギと子供が密接にかかわることを通して、子供が諸感覚をつかってヤギの嗜好や行動の意味、気持ちなどといった情報を感じ取る姿について、低学年における価値ある情報活用の姿として意味付けていただいた。
  • ・一方で、情報端末を有効に用いての情報活用についての課題を指摘していただいた。子供同士の主体的なやりとりによって、子供が情報を整理し、答えを導きだしていく活動をつくるための情報端末の活用を推進する必要性と、有効な活用例について助言をいただいた。
    →村川名誉教授からの助言を受け、6月に作成した「『情報探究力』構成表(仮)」の運用を進める。特に学年の発達段階を鑑みて構成した情報端末の活用を意識した実践を蓄積していく。実践の蓄積とこれによる「『情報探究力』構成表(仮)」の改善を進める。
    →自校での実践と並行して、他校の情報活用や情報端末活用の実践についての情報収集を進める。先進的に実践を深めている学校の取組を参考にし、自校での取組に活用する。

本期間の裏話

2年生のベンチ作りを手伝う5年生

  • ・今年度5年生になった子供が、ポニーを飼育している2年生が小屋の周りにベンチを作っているという話を聞きつけた。1年生の時の「探究」で机や椅子、アスレチックなどを作った経験がある5年生は「俺に手伝わせて!」と話し、昼休みにポニーの小屋に行き、2年生に電動ドライバーの使い方を教えながら一緒にベンチを完成させた。体験を通して身に付けたわざが自信となり、後輩へ伝承されていく…。素敵な姿であった。
  • ・5月20日の授業公開後のWSで、今年度新任の教員が、「情報探究力の発揮を見るために、どの学年でどんな子供の姿が想定されるのかを、教員が共通で分かるようになるとよい」という発言をした。これを受けて、6月9日の「情報探究力WS」が生まれ、話し合ったことを基に、「『情報探究力』構成表(仮)」の作成と共有が進んだ。主体的に研究を進める教員の願いから、新たなものが生み出されたことに大きな手応えを感じた。

本期間の成果

  • ・「探究カリキュラム」作成による指導計画、振り返りWSによる振り返り及びカリキュラムの修正のサイクルが動き出し、カリキュラム・マネジメントが機能している。
  • ・4部会の活動がスタートし、公開授業研究実践前の活動構想等が計画的に実施されている。全職員による研究体制が整っている。
  • ・公開授業研究振り返りWSの際の「『情報探究力』の具体が共有されると、授業づくりや授業参観の際の子供の見方が明確になる」という参観した職員の発言を起点に、「情報探究力」に関わるWSを企画・実施した。
  • ・「情報探究力」に関わるWSを基に、「『情報探究力』構成表(仮)」を作成した。当校職員はもちろん、他校への研究成果の発信を行う際に有用な情報であると考える。

今後の課題

  • ・4月の訪問でご指導をいただいた「学びの時間」で子供が作成した「学びのネットワークシート」をAIによって分析する取組を進める。子供の記述した言葉の頻出度等の数値化及び変化の傾向等を分析することを考えている。
  • ・「スタートアップセミナー」で指摘をいただいた研究評価に関わる取組について検討中である。ルーブリックの試作・検討を進めていく。

今後の計画

  • ・7月16日、上越教育大学・清水雅之教授を招いて4年「学びの時間」、2年「探究」の授業公開を行う。授業に向けて、構想を検討している。「学びの時間」においては、日々の振り返りを基に「学びに向かう力」(自己調整や自信)を意図的に育成する授業、「探究」においてはポニーや野菜とかかわる直接体験から得た多くの情報を整理する「情報探究力」が発揮される授業を構想している。
  • ・7月30日、Ⅱ期(6.7月)の各学年のカリキュラム振り返りWSを行う。
  • ・学校評価アンケートの評価項目及び子供の姿を評価するためのルーブリックの検討を進める。
  • ・「『情報探究力』構成表(仮)」を基にした授業公開研究を進め、作成した表の妥当性、「情報探究力」の内実、子供の資質・能力を育む授業の在り方等についての研究を進める。
  • ・県外を含めた他校の視察を進め、先進研究校の取組を自校の研究に活用する。

気付き・学び

  • ・今回の指定をいただけたことで、スタートアップセミナーを始め、全国の研究者、実践者の皆様とお話する機会が多くあった。様々な事情で直接体験が制限されてしまう学校、団体があることから、ダイナミックな活動を展開できる当校の環境が特別であることを実感した。当校の強みを生かした研究を推進すると共に、将来、この強みが世の中の“当たり前”となるような成果を生み出すべく、研究を進めていきたい。

成果目標

  • ・3つの資質・能力の発揮・育成に関わる項目を取り入れた学校評価アンケートを、7月に子供・保護者を対象に実施し、3つの資質・能力の発揮・育成に関わる項目についての肯定的評価が子供・保護者共に80%を上回る。
  • ・Ⅰ期・Ⅱ期の高学年の子供の「学びのネットワークシート」の記述から、言葉の頻出度等の数値化及び変化の傾向等を分析することで、子供自身が感じている資質・能力の発揮・育成について明らかにする。
  • ・Ⅱ期の振り返りWSにおいて、子供の姿を見とる教師の視点が変容したことを記述内容及び発言から確かめる。
アドバイザーコメント
村川 雅弘 先生
鳴門教育大学
名誉教授・客員教授 村川 雅弘 先生

【大手町小の出会いとかかわり】

 4月28日(火)と6月24日(水)の2度、上越市立大手町小学校を訪問した。その報告を行う前に、同小との出会いとかかわりについて少し触れたい。

 大手町小は、文部科学省(かつては文部省)研究開発学校として、本制度が始まった1977年度以来、6度の指定を受けている。全国の全ての公立学校で最多の指定である。学習指導要領改訂の生活科や総合的な学習の時間の創設に寄与してきた。私は1995年からの研究指定時の30年ほど前からかかわってきた。

 しかし実は、私の師匠の水越敏行大阪大学名誉教授も大手町小とのかかわりがあり、1979年に大手町小と『学校の創意が生きる教育課程―二領域編成の上越プランー』(明治図書)を刊行され、その水越先生の師匠の広岡亮蔵名古屋大学名誉教授も1966年に大手町小と『学習指導の現代化』(明治図書)を刊行している。3代にわたってかかわらせていただいているわけである。

 60年前の広岡先生の大手町小の研究に対する言葉を一部紹介したい。

〇学習指導の現代化へのこうした多角的なとりくみは、ともすればバラバラな努力になりやすい。だが幸いに、大手町校の研究は、学校の姿勢がかなりしっかりしており、これらの諸側面が結びついて、だいたいひとつに溶けあってきている。

ひとつに溶けあった姿を、かんたんに描けば(白抜き丸数字は筆者)、
❶精選され、構造化された指導内容、
❷主体的~発見的な学習過程によるつきつめの深い学習、
❸個別学習と集団思考の組み合わせによる、思考の多角的な練り、
❹現代教機具の導入による指導の効率化
の系列的な諸側面からなる。

こうして、多角的なとりくみが、一つにまとまりながら、学習指導の現代化へと結集している。

「現代教機具」は今の時代に当てはめれば「ICT」である。60年以上前から、大手町小はその当時においても最先端の、そして、現在の❶「指導内容の精選と構造化」、❷「主体的・対話的で深い学び」、❸「個別最適な学びと協働的な学びの一体化」、❹「ICTの有効活用」につながる教育研究を行っていたことが伺える。

 1998年2月の公開研究会はすごかった。全国からの参加者は3,000人。私が講師を務めた杉田かおり教諭(当時)の4年総合「食糧白書~私たちの提言~」は体育館で行われ、子どもたちを取り囲むように700~800人が参観した。この「食糧白書編集会議」は総合的な学習における発表・表現活動を考える際のその後の私の基軸となっている。ともすれば,グループごとの発表は発表のしっぱなしに終わりがちである。この授業は違っていた。ある一つのグループが食糧白書の原稿の構想を発表したのだが,他のグループからは内容や構成についての質問や助言が1時間中飛び交った。よい白書を作るという共通目標の下,真剣な話し合いがなされた。皆でよいものと作るという目標を達成するための手段としての発表であった。このような会議は7回続いた。つまり、1つのグループの提案に対して1時間の話し合いがなされたということである。後ほど送られてきたB4版104ページの白書は専門家も顔負けの素晴らしいものだった。

【豊かな体験を踏まえた探究】

 GIGAスクール構想により小中学校の全ての児童・生徒に学習用情報端末が配付されたことで、各教科等で日常的に端末が活用されるようになり、我が国のICT教育は大きく前進した。その一方で、総合的な学習の時間において情報端末による情報検索で済ませる児童生徒が増えてきた。その中にあって、大手町小はどの学年の「探究」(同校は生活科と総合的な学習の時間を何れも「探究」と呼んでいる)においても、体験を重視しながらもICTの有効活用を進めていこうとしている。

 体験重視は、運動場を見ただけでもわかる。写真1は2回目の訪問時の運動場の様子であるが、校舎側には2年生がポニーの「ぽこちゃん」のための野菜畑と5年生の「探究」のための田んぼと畑が広がっている。奥には「父親応援団」が作った柵の中で1年生が飼っているヤギの親子が暮らしている。また、運動場の向こうに流れる青田川は4年「探究」の主たる活動場所である。その他、3年生は高田城址公園が主なフィールドで、5年生は「限界集落」の中ノ俣にバスで10回以上通う。6年生は高田城址公園と本町商店街を中心に活動する。どの学年にも豊かな体験の場が保障されている。

写真1

 4月28日(火)の午前中は、全学年の「探究」の授業を参観した。

 生活科は教科書ベースの年間指導計画ではなく、子どもとの話し合いで決まる。今年度、1年生は2頭のやぎを、2年生は1年次から引き続きポニーを飼っている。2年生は再び飼うポニーの「ぽこちゃん」の好きな野菜を育てるために農業高校の生徒との交流会を行っていた。どの学年も「今年の『探究』では何を行いたいのか」、熱い協議が続いていた(写真2・写真3・写真4)。各教室の黒板やホワイトボードからその足跡を読み取ることができる。1年間かけて取り組むのにふさわしいテーマを真剣に探している姿がどの学年でもみることができた。

写真2

写真3

写真4

 低学年の「体験」と「情報」の関連を以下のように期待している。哺乳動物(例えば、やぎ:写真5)は当然のことながら言葉はしゃべらないが、毎日かかわり触れることで、子どもたちは五感を通してその生きものの変化や成長などに関する様々な情報を得ることができる。子どもたちは、感じたことや得た情報を友だちに伝えたり、文に表したり、絵に描いたりして発信する。時には獣医さんや本、インターネットからも必要な情報を得る。それらの情報を正しく理解し、伝え合うことで、より健やかに育てていくことができる。また、情報端末で成長の過程を記録し、振り返ることで、改めて自分たちがかかわっている動物の成長と自分たちの頑張りや協力、そして成長を実感する。そのような情報活用を期待したい。

写真5

 4月と6月の2回において、授業の中では中高学年の「探究」における情報活用はほとんど見ることができなかった。6月24日の6年生の授業では「町の魅力を最終的に発信するためにはどの方法がいいか」を検討するための一覧が示されていた(写真6)。すぐに情報端末に頼るのではなく、新聞やチラシ、ポスター、パンフレットなどのオールドメディアを含めての検討は必要である。

 ただし、例えば、チラシのアイデアを考えたり、他者に紹介したり提案する際には情報端末は有効と考える。今回は、紙のワークシートを使っていた(写真7)。筆者のように、絵やイラストが不得意な児童は情報端末やAIを活用することで自己のイメージを具体的かつ明確に伝えることができる。他者からのコメントや助言を踏まえての加筆・修正も楽である。付せん機能を使えば、紙のワークシート・付せんと同様なことができ、なおかつ学級全体に提示しやすい。適切な情報端末活用を今度期待したい。

 今は対象とどっぷりとかかわり、そこで得た情報を話し言葉や文で発信・記録を行っている状況である。6月9日の研修において、それまでの公開授業研究で見られた子どもの姿、教員がこれまでに見てきた子どもの姿を踏まえて「情報探究力」を発揮・育成している姿を抽出し、「『情報探究力』構成表(仮)」を作成している。この構成表を指針に今後、「探究」を通して得た情報を中心に情報端末が有効に活用されていくことだろう。

写真6

写真7

【教師自身も協働的に「探究」に取り組む】

 校舎内の階段の壁には前年度の全学年「探究」の足跡が掲示されている(写真8)。教師も児童もこれを参考にしつつ異なる内容・展開の「探究」に挑戦する。

 大手町小の報告書から本研究に関して何度も研修を重ねていることが伺える。60年以上にわたっての研究の蓄積がある。教師自身が常に「探究」的に組んでいる。特色ある教育活動である「探究」に関して新任教員が共通理解を図れるように早々に授業公開や研究協議を行っている。

写真8

 写真9は「研究室」に掲示されている前年度末の「2025年度の研究の振り返りワークショップ」の成果物である。筆者の20年あまり前の鳴門教育大学大学院時代のゼミ生・河野昭一(現徳島県美馬市立江原中校長)が開発した「概念化シート」を使って分析している。縦軸は「成果」と「課題」、横軸は「子供の姿」と「研究体制・教師」である。これはカリキュラム・マネジメントの側面2の「PDCAサイクルの確立」にかかわるもので、当校の研究に関する年間レベルのPDCAのCAに該当する。

 実はこのような取組は筆者が記憶している限り、20年以上前から行われている。写真10は2006年3月8日の「生活科・総合的な学習の年間指導計画見直し・改善ワークショップ」の様子である。筆者が提案した手法である。学年団に級外の教師や管理職が加わり、拡大した年間指導計画を中央に置き、その年度の取組を振り返り協議しながら、成果と課題を明確化・共通化を行い、新年度の計画づくりにフィードバックしようとしている。

写真9

写真10

 近年は、このPDCAサイクルがさらに進化している。先に述べたように、今年度のテーマや具体的な内容・活動は教師と子どもで計画・実施していくが、年度始めに、各学年の構想は研究推進部で行う。どの学年でどの学習材(ヤギや青田川、本町商店街など)を活用してどのような展開が考えられるかを、前年度までの成果と課題を踏まえて構想する(写真11)。各学年の教員はそれを腹案として、子どもたちと話し合いを行う。また、年間指導計画の見直しに関しては、サイクルが短くなっている。1年間を5期(4・5月期、6・7月期、9・10月期、11・12月期、1・2・3月期に分け、各期が終了する時点でその期の学習を見直し協議し、次期の活動に生かしている。次回の報告では、この点について触れたい。このようなシステムが確立しているので、本研究の今度の展開が楽しみである。

写真11

 大手町小の報告者の中にある「学びのネットワークシート」も起源は、筆者の20年ほど前の鳴門教育大学大学院時代のゼミ生・三橋和博(現徳島県阿波市立土成中学校校長)が開発した「『知の総合化』ノート」である。三橋氏もパナソニック教育財団の一般研究助成を受けてデジタル化を果たした。同小も以前は紙ベースで行われていたが、今はデジタルベース(写真13)である。体験情報とデジタル情報を個々の児童が整理し振り返りを行う「学びの時間」を含め「学びのネットワーク」およびその評価面での活用に関しては次回以降の紹介・検討したい。

 なお、訪問した学校(大手町小含む)の様子などは、YouTube配信しています。「むーちゃんねる7788」で検索してみてください。

写真12

写真13

  1. ➀村川雅弘「年間指導計画を全教職員で見直し次年度に繋げる」、『ワークショップ型教員研修 はじめの一歩』教育開発研究所、pp.72-73。2016年
  2. ➁村川雅弘・三橋和博『「知の総合化ノート」で具現化する21世紀型能力』学事出版、2015年