学校法人国際学園 星槎もみじ中学校

第52回特別研究指定校

研究課題

独自開発対話型VRアプリによる探究・自己調整学習モデルの構築実践
~音声対話による評価・振り返り支援の授業モデル化~

2026年度04-07月期(最新活動報告)

最新活動報告
VRゴーグル等を活用したクロスタイムを継続的に実施し、「VRゴーグルに慣れよう......

アドバイザーコメント

北澤 武 先生
学校法人国際学園 星槎もみじ中学校は、「独自開発対話型VRアプリによる探究・自己......

学校法人国際学園 星槎もみじ中学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 北海道 学校法人国際学園 星槎もみじ中学校
アドバイザー 北澤 武 青山学院大学 教授
研究テーマ 独自開発対話型VRアプリによる探究・自己調整学習モデルの構築実践
~音声対話による評価・振り返り支援の授業モデル化~
目的 本研究は、中学生における探究学習および自己調整学習の質を高めることを目的とし、音声対話型AIを活用した独自開発のVRアプリを「学びの伴走者」として位置付け、その教育的有効性を検証するものである。特に、評価・振り返り場面においてAIとの対話を活用し、生徒のメタ認知能力の向上と自己理解の深化を図るとともに、教師の個別支援負担の適正化を目指す。さらに、これらの実践を通して、対話型AIを活用した探究学習モデルを体系化し、他校へ展開可能な汎用的教育モデルとして提示する。また、VR空間における没入的対話環境が学習者の思考の深まりおよび振り返りの質に与える影響を明らかにする。
現状と課題
  • ① 探究学習では生徒ごとにテーマや進度が異なり、個別最適な支援やフィードバックの確保が困難であり、振り返りの質に差が生じやすい。
  • ② 生成AIの教育活用は進展しているが、教員間で理解や経験に差があり、学校全体での体系的な活用には至っていない。
  • ③ 従来のAI活用はPC環境に依存し、準備や操作負担が大きく、授業への継続的導入の障壁となっている。
本校では、Meta Quest単体で安定動作する独自開発VR対話アプリを実現しており、この実用的基盤を教育モデルへと発展させることが求められている。さらに、本アプリは起動成功率・待機時間・安定性において実用水準に達しており、授業で継続的に活用可能な環境を実現している。
学校情報化の現状 本校ではICT環境の整備は一定程度進んでおり、授業における活用も行われているが、主に情報提示や個別学習支援に留まっている。生成AIの活用については一部の教員に限定されており、学校全体としての活用方針や実践の共有は十分ではない。
また、VRや音声対話AIといった新しい技術の導入は進みつつあるものの、教育効果の検証や授業設計への体系的な組み込みは発展途上である。今後は、これらの技術を活用した探究学習モデルを構築し、学校全体での実践と共有を進める必要がある。
取り組み内容 本研究では以下の2点を柱として段階的に実践を行う。
  • ① 教員のAI活用能力の向上
    • ・校内研修を通して生成AIおよび対話型AIの理解を深める
    • ・教育利用におけるリスクや倫理面の整理
    • ・授業での活用方法の共有と標準化
  • ② 探究学習における対話型AI活用の実践
    • ・VR環境における音声対話を活用した探究活動の実施
    • ・問いの深化、仮説検討、振り返りの言語化の支援
    • ・対話ログおよび振り返り記述の分析による学習効果の検証
    • ・VR空間における没入感が対話の質および振り返りの深さに与える影響を分析する
    • ・授業モデルとして「対話→振り返り→再構成」の学習サイクルを明確化し、再現可能な形で整理する
これらを通して、対話型AIを活用した自己調整学習モデルの構築を行う。
成果目標
  • ・対話型AIを活用した授業実施率:80%以上
  • ・生徒の振り返り記述の質的向上(ルーブリック評価):平均1段階以上向上
  • ・自己効力感の向上(アンケート):向上回答70%以上
  • ・対話継続率:90%以上
  • ・VRアプリの起動成功率:95%以上
助成金の使途 VRゴーグルMeta Quest3s、ChatGPT5.2 有料版 ライセンス料、講師謝礼、JAET参加旅費交通費、芸術作品見学研修会、mobile WiFi レンタル料、資料製作費他
研究代表者 大倉 俊亮
研究指定期間 2026年度~2027年度
学校HP https://seisa.ed.jp/momiji-jh/
公開研究会の予定
  • ・全日本教育工学研究協議会(JAET)での発表
  • ・公開授業研究会の実施(年1回以上)
  • ・研究成果(授業案・評価ルーブリック・運用手順)の公開

本期間(4月~7月)の取り組み内容

<授業>

 VRゴーグル等を活用したクロスタイムを継続的に実施し、「VRゴーグルに慣れよう」を合言葉に、VRゴーグルの装着やアプリ体験を週1回実施した。以前に開発した、「jump」や「イコマの矢」などを改めて体験して、VRゴーグルの特性を生かした体験をした。また、「VRchat」や「OPEN Brush」を使用して空間に絵を描き、しりとりでつなぐ、同じ空間で絵を描いてみる等、WEB上での交流にも挑戦している。

<研修>

 教員向けの研修会では、CONVAIの基本的な使用方法を学び、それぞれが各自のアカウントでAIキャラクターつくりを実践した。設定の工夫でいろいろな可能性があることを共有しそれぞれでの活用に活かしていく。

<アドバイザー訪問>

 7/17(金)アドバイザー来校のもと、研究授業を実施

「AIとの対話VS WEB検索」というテーマで「課題に対して、AIがどこまで相談役になれるか」ということを生徒と共に検証した。結果としてはWEB検索の場合も、AIへの対話を通しての課題解決の場合もそれぞれのメリット、デメリットがあることを体感することができた。

アドバイザーの助言と助言への対応

 授業後の振り返りの際に「今日学んだこと」「次回やってみたいこと」等の質問を加えておくことでより授業内容の評価の分析がしやすくなるとのアドバイスをいただいた。また、5月から7月の授業のアンケートの分析や質問内容については、授業中のテーマを明確にすることで、同じアンケートでも結果が変化してくるのではないかというアドバイスもいただいた。夏休み以降の授業の中で反映をしていきたい。

本期間の裏話

 機器の準備に手間取っていた際に、生徒が手伝ってくれるようになりました。VRゴーグルの範囲設定などはお願いすると手際よく設定してくれる生徒が増えてきたので、とても頼もしいです。

本期間の成果

 VRゴーグル等を活用したクロスタイムを継続的に実施し、生徒の学習参加意欲や振り返りへの影響について基礎的な実践データを取得することができた。

 生徒アンケートでは、『「楽しかった」「また参加したい」「普段の授業より面白い」』といった反応が多く見られ、VR活用に対する高い興味関心が確認できた。

 また、第1回から第2回にかけて参加人数が増加し、リピーター参加やZoom参加者も見られるようになった。これにより、対面と遠隔を組み合わせたハイブリッド型の学習参加の可能性についても一定の手応えを得ることができた。

 さらに、アンケート内容についても、「楽しかったか」だけでなく、・集中しやすさ・イメージのしやすさ・対話や共有・探究意欲・振り返りのしやすさ等を確認できる内容へ発展させることができ、VR活用による学びの変化を検討する基礎段階へ進めることができた。

今後の課題

  • VR酔いへの配慮・限られた機材台数での運用・ミラーリングや通信環境の安定化
  • 体験時間の調整・安全確認等については、継続的な改善が必要である。
    また、「楽しかった」という感想だけで終わらせず、・学びの深まり・対話や共有の変化・自己調整学習への影響・探究的な学びへの発展等をどのように授業設計へ結び付けていくかが今後の重要な課題である。
    さらに、対面参加とZoom参加を組み合わせた活動についても、学習効果や参加感覚の違いをどのように評価するか検討を進める必要がある。

今後の計画

 今後は、VR体験と振り返り活動の接続をさらに深めるとともに、外部有識者からの助言も踏まえながら、VRを活用した探究・自己調整学習モデルの改善を進める予定である。

 2026年は探究活動の中でのAIの活用方法、かかわり方を探りながら、2027年に実践を進めていきたいと考えている。また、多様な学びを必要としている生徒の変容についても追いかけていきたい。

気付き・学び

 AIやVRといった目新しさで生徒は積極的になってくれるが、授業として成立させていくためにはそれらを活用した「教材」と「何を学ぶか」がとても重要であるということを再確認できた。

成果目標

  • 対話型AIを活用した授業実施率:80%以上
  • 生徒の振り返り記述の質的向上(ルーブリック評価):平均1段階以上向上
  • 自己効力感の向上(アンケート):向上回答 70%以上
  • 対話継続率:90%以上
  • VRアプリの起動成功率:95%以上
アドバイザーコメント
北澤 武 先生
青山学院大学
教授 北澤 武 先生

 学校法人国際学園 星槎もみじ中学校は、「独自開発対話型VRアプリによる探究・自己調整学習モデルの構築実践~音声対話による評価・振り返り支援の授業モデル化~」の研究テーマで、2026年度から第52回特別研究指定校としての研究がスタートしました。星槎もみじ中学校は、これまで「不登校特例校における課題解決学習を深化させるためのVR教育の実践的研究」のテーマで、2023年度から2025年度の3カ年にわたって、一般助成校として、パナソニック教育財団の支援を得ながら研究を行ってきました。この度、特別研究指定校として、積み上げてきた3カ年の研究成果をもとに、さらに研究を発展させ、全国の学校に有益な知見を提供していくことが期待されます。

 まず、3カ年の研究成果を振り返りたいと思います。2023年度では、それぞれの異なった特性をもつ生徒一人ひとりに寄り添った教育活動を行うために、VR技術を用いたプログラムに挑戦しました。そして、VRを体験した生徒の視点を解釈することと、VRが現実と仮想の世界の双方向の近未来的な時空間の移動を通して生きることの大切さや意義を自身に問う場面提供になり得るかを追究しました。開発したVRコンテンツは、模擬狩猟、人類史の体験、能楽堂壇上の体験、避難訓練(脱出)の体験でした。生徒を対象にVR体験に関する質問紙調査を実施した結果、肯定的な意見が79%でした。そして、自由記述の回答から、VR体験を自分ごととして捉え、考えることができるようになったという生徒の変容が認められたことが、研究成果として報告されました。

 2024年度の研究では、「主要科目間にありがちな縦割り教育の弊害をVRの導入によって改善し、その結果として個別最適化された学習環境を構築する教育手法を提案すること」を目的に研究が進められました。開発したVRコンテンツは、第一に、「自身の作品をメタバース美術館に飾ろう!」のテーマで、生徒が作成した作品をメタバース上に展示し、鑑賞会を行うものでした。第二に、「火災現場からの脱出!」のテーマで、校内で突発的に発生するアクシデントにどのように対応し、逃げ切るかの体験を行いました。そして、リセットができない生命の尊さについて問いがなされました。この取り組みは、札幌市厚別消防署からの問い合わせがあるほどの関心が寄せられるなど、成果を得ることができました。しかし、一部の生徒にVR酔いが発生している事実が認められました。研究の目的を達成するために、VR酔いとVR体験の楽しさの関係について定量的な分析を行った結果、両者の間に相関関係は認められないことが明らかになりました。しかしながら、VR酔い対策が課題として挙げられました。

 2025年度の研究では、「過去2年間の研究実践を足場としたVR・メタバース・1人1台端末の利用を更に活性化し、課題解決学習を深化させるための学習デザイン、そして、開発されたVR 教材を活用する校内体制を確立すること」を目的に研究が進められました。その結果、生徒の意見から、「危険だからこそVR で体験したい」、「職業体験をしてみたい」など、自分の将来や社会課題と結びついたVRのイメージが認められました。また、教員を対象とした校内体制づくりとして、VRの直接体験を実施しました。その後、教員を対象に調査を行った結果、VR酔い対策ガイドラインの整備が求められましたが、教員のVR操作に関するスキルが向上したことと、カリキュラムにVRを活用した教材を取り入れることを前向きに捉える教員が増えたことが、研究成果として挙げられました。

 上述の研究成果と課題を踏まえて、2026年度の研究が始まりました。2026年度は、「中高生の探究学習および自己調整学習を充実させるため、生徒同士の協働や教師の支援に加え、音声による会話が可能な対話型AIを「学びの伴走者」として活用できる環境を整備すること」を目的に、研究が進められています。2026年4月〜7月の取り組みでは、生徒がVRゴーグルに慣れるための体験や、教員が生成AIに慣れるための体験を実施しました。

 そして、2026年7月17日(金)には、生成AI体験を行ってスキルを身に付けた教員による研究授業が実施され、参観することができました。技術分野「情報の技術」に位置付けられた研究授業では、まず、音声対話型生成AI(CONVAI: https://convai.com/)を活用して心臓の仕組みを理解するグループ(図1)と、Web検索で心臓の仕組みを理解するグループ(図2)で分かれました。その後、各グループの手法で検索を行い、得られた知見をグループ間で共有し、音声対話型生成AIによる検索とWebによる検索の特徴について議論しました。情報活用能力の構成要素である「情報技術の特性の理解(生成AIの基本的な仕組み等の理解)」に焦点化し、知識構成型ジグソー法の要素を取り入れた授業でした。対話型生成AIで検索する生徒も、Webで検索する生徒も、ICT端末を活用しながら重要な情報を見出し、思考したことを表現しており、情報活用能力、とりわけ情報技術を活用する力の高さを実感することができました。音声対話型生成AIの特性として、大量の情報を提示してくれることと、情報の信憑性、情報が拡散してしまう恐れがあることについて気づいた生徒がいました。

図1 対話型生成AI(CONVAI)を活用しながら問題解決する生徒

図2 Web検索しながら問題解決する生徒

 授業後の研究協議会では、校長先生から「音声対話型生成AIに対して、行き過ぎた質問をした生徒が存在しましたが、その生徒に対して生成AIが当該生徒のことを心配する返しをしたことで、当該生徒が適切な問いを考え直す場面が認められ、生成AIが生徒を正しい方向に導くという良い場面を見ることができました」との発言がなされました。まさに、2026年度の研究目的である「音声による会話が可能な対話型 AI を「学びの伴走者」として活用できる環境の整備」と、その活用の意義を確信した研究授業となりました。

 今後の課題として、「楽しかった」という感想だけで終わらせず、「学びの深まり」「対話や共有の変化」「自己調整学習への影響」「探究的な学びへの発展」が挙げられています。生徒の実態を鑑みながら、星槎もみじ中学校の教職員が一丸となって、上記の課題を解決していくことを楽しみにしています。