学校法人津曲学園 鹿児島修学館中学校・高等学校

第51回特別研究指定校

研究課題

中学・高校での探究学習・自己調整学習を充実させる生成系AI活用の校内浸透
~評価や振り返りにおけるメタ認知能力育成等を目指した環境整備と活用方法の蓄積・共有~

2025年度04-07月期(最新活動報告)

最新活動報告
教職員、生徒、保護者の生成系AI使用状況を把握するためのアンケート調査を実施。......

アドバイザーコメント

木原俊行 先生
学校法人津曲学園鹿児島修学館中学校・高等学校(以下,鹿児島修学館中高等学校)は......

学校法人津曲学園 鹿児島修学館中学校・高等学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 鹿児島県 学校法人津曲学園 鹿児島修学館中学校・高等学校
アドバイザー 木原 俊行 四天王寺大学 教授
研究テーマ 中学・高校での探究学習・自己調整学習を充実させる生成系AI活用の校内浸透
~評価や振り返りにおけるメタ認知能力育成等を目指した環境整備と活用方法の蓄積・共有~
目的 中高生の探究学習や自己調整学習を充実したものにするために、周りの生徒との協働や教師の支援・助言に加えてAIも活用できるようにする。
現状と課題
  • ①探究学習や自己調整学習において、生徒ひとり一人が取り組むテーマやペースが異なるため、教師による支援やフィードバックの時間を充分に確保することが難しい。
  • ②AIについて教師による認識や理解・活用にばらつきがあり、学校全体での取り組みにしていくには、生徒が活用する際のリテラシー・モラルへの不安を払拭し、活用方法を校内で蓄積・共有するしくみをつくっていく必要がある。
学校情報化の現状 教師も生徒も日常的に頻繁にICTを活用しているが、生徒の不適切な使用について問題になることもある。
生成系AI活用においても、適切な使用に向けたリテラシー・モラル育成が課題である。
取り組み内容 次の3点を中心に2年間で段階的に取り組む。
  • ①【教員による生成系AIの理解・活用】 まず教師が生成系AIを使いながら、研修や日常の場面で使い方の共有や対話をすることを通して理解を進める。同時に、リスクや問題点について具体的に認識し、検討する。
  • ②【生徒が生成系AIを活用する際のリテラシー・モラル指導の環境整備】 学校で定めている「学問的誠実性ポリシー」に生成系AI利用に関する項目を追加して、方針を明文化するとともに、保護者からの承認を得る手続きや生徒が利用するときのルールなど、具体的な指導方法・体制を整備する。
  • ③【生徒の探究学習・自己調整学習における生成系AI活用方法の蓄積・共有(特に評価や振り返りにおけるメタ認知能力育成)】 1年目は宮崎東高等学校での千葉大学との連携による実践を参考に、 「総合的な学習〔探究〕の時間」での活用を中心に、教科を越えて活用方法をいっしょに探り、蓄積・共有する。2年目は各教科での探究的な学びや自己調整学習における評価や振り返りでの活用方法を中心に、学校全体で蓄積・共有する。
成果目標
  • ① 教員の(1)「生成系AIについての理解・関心」、(2)「業務や指導に活用」の割合が高まり、(3)「生徒に生成系AIを活用させるうえでの不安」の割合が低くなる。
  • ② 生成系AI活用方法の蓄積・共有のしくみが構築され、そのしくみが頻繁に活用される。
  • ③ 生徒の(1)探究学習や自己調整学習におけるAI活用が広まり、「適切に」かつ「効果的に」活用できているという割合が高まり、(2)メタ認知能力等が高まる。
助成金の使途 生成系AI関連書籍購入費、「スクールAI」契約費、生成AIの有料版契約費、研究大会参加・先進校視察旅費、校内研修外部講師謝金、公開研究会準備・運営費 他
研究代表者 新名主 敏史
研究指定期間 2025年度~2026年度
学校HP https://www.shugakukan.ed.jp/
公開研究会の予定 【1年目】8月(上旬):本校の実践状況紹介・他校の探究学習等での活用事例共有
【2年目】10月:授業公開・実践状況報告・「探究学習や自己調整学習での生成系AIの活用」講話・ワークショップ

本期間(4月~7月)の取り組み内容

【4月】

  • ・教職員、生徒、保護者の生成系AI使用状況を把握するためのアンケート調査を実施。
  • ・校内生徒向け『IBハンドブック』にAIの利用についてのページを追加。

〔『IBハンドブック』抜粋〕

  • ・4月3日〜15日 探究支援型GPTs(MetaQ)のシステムプロンプトを作成。
    ※MetaQとは「問い返し」を基本として、生徒のメタ的な思考に寄与する仕組みを組み込んだカスタマイズAIのこと。
  • ・4月23日、校内研修(パナソニック教育財団実践研究助成の概要、IBの見解等)
  • ・4月26日(土)、IB職員研修(講師:鹿児島国際大学准教授辻慎一郎先生、演題:鹿児島県内小・中・高等学校における教育の情報化の現状と課題)
  • ・4月26日(土)、研究アドバイザーの四天王寺大学教授木原俊行先生、パナソニック教育財団 久保田事務局長、鹿児島国際大学准教授辻慎一郎先生が来校、校内研究組織メンバーとの打ち合わせ。

〔2025年4月26日(土)訪問時授業風景〕

【5月】

  • ・「スクールAI」(全教職員)、ChatGPT有料版(ICT委員長)登録、利用開始
  • ・5月初旬~ 定期アンケート実施

教師のAI活用事例を共有するために、定期的にアンケートを実施中(全体実施2回、自由回答4回)。週ごとにサマリを作成し1つのドキュメントにまとめていった。

notebookLMを活用して各週のサマリから先生方の活用状況を時系列で分析し、以下の出力を得た。活用の幅が広がっている一方で、AI活用に不安がある先生方へどのように前向きに活用してもらえばよいかが課題。アンケート結果をもとにして、研修会や講座を行うなどの次のアクションが必要。「リスクや問題点について具体的に認識し、検討する」という観点で振り返ると、アクションが足りなかった。

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週次サマリーの時系列比較からは、先生方のAI活用の教科や場面が多様化し、活用の質も深まっている様子が見て取れます。当初、数学や国語といった特定の教科で、授業準備や校務支援の効率化を中心に活用されていましたが、次第に英語、学級活動、探究学習へと教科が広がり、生徒への個別フィードバック作成や、授業中に生徒のアイデアを深掘りする支援といった教育内容に踏み込んだ実践が増加しています。

ツールについても、ChatGPTやGeminiといった汎用的なものに加え、NotebookLMやCanva AI、カスタム版GPTsなど、特定用途に特化したツールの活用も見られるようになりました。こうした活用の広がりと共に、AIの限界やプロンプトの重要性、データ連携の課題など、より実践的・技術的な課題認識が深まり、プロンプト改善やスキル向上への関心が高まっています。これは、AI活用が試行段階から、教育効果を高めるための発展段階へと移行しつつあることを示唆しています。(notebookLMで分析)

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  • ・5月初旬 保護者向けアンケート実施
  • ・5月16日(金) 全体保護者でパナソニック教育財団実践研究助成の概要及び生成系AIの活用について説明

〔2025年5月16日(金) 全体保護者会時の生成系AIの活用説明・スライド〕

  • ・5月中旬 教務部と生徒支援部で、「学問的誠実性ポリシーの改訂案」検討。
  • ・5月21日(水) 社会科の教諭のアドバイスを受け、MetaQのアップグレード版MetaQⅡのシステムプロンプトを開発。「ポリアの問題解決のプロセス」「ソクラテス式問答法」の発想をMetaQに組み込んだ。
  • ・5月30日(金)助成金贈呈式・スタートアップセミナーに参加。

〔5月30日(金)助成金贈呈式〕

  指導・助言を受けて、次のような点を記録した。

  • ◎本実践研究における「メタ認知能力」は、主に生成系AIを使う際に、「自分自身が適切かつ効果的にAIを活用できてるかどうか?」を自覚的に考えることができる力で良いのではないか。(学習のプロセスを重視し、「AIを使っている際に、自分自身の思考が活性化しているか?」「この使い方・使うタイミングで良いか?」「自分の学びにAIをどのように活用するのが効果的であるか?」などを考えることができる。)
  • ◎審査員の方からのコメントにあった「生成AIパイロット校の取り組みとの違いを明確にして,教員の負担軽減と生徒の探究学習の充実の両立という視点での研究成果を示してほしい。」という点について相談した。国際バカロレア校であること、中高一貫校であることを踏まえてAIの活用やカリキュラムを探っていくことで、結果としてオリジナリティのある実践を目指すのが良さそうという見通しを得た。パイロット校の取り組みを参考にしつつも、とらわれ過ぎず、やりながら進めていくべきとのこと。
  • ◎具体的には、AIリテラシーをIBのATLスキルリストの中に位置付け、各学年・教科でどのように育む機会を設定するかを検討すると良いというアドバイスをいただいた。
  • ◎AIリテラシーについては、知識に偏りがちであることに気を付け、態度や価値観、エネルギー問題を含めた倫理についても身につけることが重要で、その面でもIBとの相性が良いというお話をいただいた。
  • ◎実践をカリキュラム全体の中に位置付ける大切さを強調された。また、贈呈式での寺島史朗課長のお話も踏まえて、新学習指導要領に向けて、カリキュラムの中での「技術」や「情報」の役割が大きくなるという点も意識して実践を進めていく必要があると感じた。
  • ・5月31日(土)高校2年生対象 生成AI活用講座

  高校2年生対象に生成AIの活用法講座を開いた(2時間)。

〔5月31日(土)高校2年生対象 生成AI活用講座〕

◎実施内容

生徒の振り返りには、「Work1を通して生成AIの効果的な使い方と注意すべき点を改めてはっきりと区切ることができた」「自身の認識が合っていた」「自分が過去にレポートなどで丸写しや不適切な活用をしていたことに気づき、今後は気をつけたい」といった、AIの適切な活用方法について考えるきっかけになった旨の内容が多く書かれていた。また、カスタマイズAIを活用してみた感想では、「課題研究で問いを立てるときにおける新しい視点を得た」「課題研究で悩んでいたことが解決した」など前向きなコメントが多く見られた。一方、探究活動における「問い立て」を完全に生成AIに任せてしまうことで「自分で1から考える力や調べるプロセスが弱まる可能性がある」「AIに効果的に問いを投げかけるスキルが必要となる」といった声もあった。

【6月】

  • ・6月2日(月)第51回全日本教育工学研究協議会全国大会茨城つくば大会の研究発表募集が開始されたのに合わせ、発表の申し込みと今年度の発表内容の検討を行った。
  • ・6月5日(木)、8月の公開研究会に向けて、以下の登壇者*と打ち合わせ。
    • ・辻 慎一郎氏(鹿児島国際大学福祉社会学部 准教授)
    • ・木田 博氏(鹿児島市教育委員会 教育DX担当部長)
    • ・西山 正三氏(宮崎県立宮崎東高等学校定時制課程夜間部 教諭)
    • ・大保 政貴(鹿児島修学館中学校・高等学校 理科教諭・ICT委員長)
    • ・新名主 敏史(鹿児島修学館中学校・高等学校 英語科教諭・IBMYPコーディネーター)
  • ・6月13日(金)宮崎県立宮崎東高等学校定時制課程夜間部に見学訪問
  • ・6月末  高校1年「科学と人間生活」で、生成系AIを活用した(形成的)評価の実践。Notebook LMを活用して、生徒の手書きのレポートに対して、IBMYPの評価規準に沿ったフィードバックを生成。生徒に示す際には、教員から補足説明を加えた。

【7月】

  • ・7月9日(水)  アドバイザー木原先生訪問  授業見学・校内研修

〔7月9日(水)高校2年生 物理授業〕

〔7月9日(水)高校2年生 生物授業〕

〔7月9日(水)中学1・2年合同総学〕

〔7月9日(水)校内研修〕

〔7月9日(水)校内研修〕

  • ・7月11日(金) いちき串木野市立羽島中学校(助成校)研究公開参加

アドバイザーの助言と助言への対応

☆4月打ち合わせ来校時----------------------------

【助言】「ポリシー、ATLなど、生徒に示すのに、何から手をつけるか?」を検討する必要がある。

≫助言への対応

学校で作成している『IBハンドブック』や保護者承諾書に大まかなポリシーは示したが、ATL(IBの学び方のスキル)については、今年度中に検討して来年度から校内で共通理解して進められるようにする。

【助言】「AIをどのような場面でどのようなことに活用するのかの合意形成を進める」

≫助言への対応

現段階では、どのような場面でどのようなことに活用できるのかを把握するため、活用状況を収集・共有している。

【助言】どのような「AIリテラシー」をどのように育むのかを要検討

≫助言への対応

すでにあるものを変えながら(学習スタンダードのように、生徒も含めて≒生徒の声も取りいれて)つくっていく

【助言】実践研究の評価の精選、必ずしも申請書通りでなくともよい(予算についても)

≫助言への対応

実践しながら記録・データ収集し、評価方法についても効果的なものを選定していく。

【助言】中高全体で取り組み、特長的な代表的な実践において、中高、教科のバランスを!

≫助言への対応

高校から実践を始め、指導方法や体制を整えながら中学校、学校全体へと広げていく。

【助言】「メタ認知能力」の測定・評価については、基本的にAI利用のメタ認知で良いのでは?」(量的データ:生徒たちが「AIを効果的に使えているか?」)

(質的データ:専門家からの評価的コメントをいただく、学会発表や公開研究会参加者からのフィードバック等)

≫助言への対応

生徒たちにも「AIを効果的に使えているか?」をいっしょに考えてもらいながら実践を進め、メタ認知の状況を見取り、最終的にどのような測定・評価がふさわしいかを検討する。

☆7月アドバイザー訪問時----------------------------

【助言】「生徒は自然にうまく使っている状況が見られたので、教員全員の理解が整うのを待つ必要はないのではないか?」「生徒の活用については、生徒にゆだねる部分を増やしても良いのではないか?」「研修の在り方について、生徒の活用状況や対応方法の共有をしてはどうか?」

≫助言への対応

モラルやリテラシーに関する面の対応を研修等で周知し、生徒の活用を見守れるようにしていく。

【助言】「AIリテラシーの指導のしくみをどうつくっていくか?」

≫助言への対応

今年度、各学年で試行しながら、来年度の実施時期や内容等を検討する。

【助言】「総学や道徳の時間などでも可能だが、「技術」や「情報」のカリキュラムの中でどうAIリテラシーを育んでいくか?」

≫助言への対応

「技術」や「情報」の現状のカリキュラムの中にどのようにAIリテラシー育成の要素を入れていくかをICT委員会でも検討する。(「技術」や「情報」の教員個人任せにするのではなく。)

本期間の裏話

宮崎県立宮崎東高等学校定時制課程夜間部に見学に行かせていただいた際、夜まで情報交換をさせていただいた。同校の西山正三先生や千葉大学の田川翔先生も含め、当日もあつく語り、つながりも得られたことがたいへんありがたく、うれしく感じた。

本期間の成果

  • ・高校生のAI活用が本格的にスタートした(大きなトラブルや問題は表面化していない)
  • ・教員によるAI活用の共有するしくみが整備されてきた

今後の課題

  • ・生徒(高校生)の活用状況の把握
  • ・生徒(中学生)の活用を開始するための準備
  • ・IBのATL(学び方のスキル)に生成系AI活用のスキルを位置付ける
  • ・組織全体での利用

今後の計画

  • ・7月11日(金) いちき串木野市立羽島中学校(助成校)研究公開参加
  • ・8月5日(火) 鹿児島修学館主催公開研究会実施
  • ・10月15日(木) 校内探究交流会

気付き・学び

  • ・生徒の「適切な」活用という意味では、究極的には「生徒の学ぶ意欲・自分が成長したいという気持ち」次第だということを身にしみて感じている。
  • ・生成系AIの活用について、教員間でのコミュニケーションが増えた。
  • ・会議の中でも生成系AIにアイディア出しに使う場面が増えてきた。
  • ・校内研修の在り方を考える中で、組織として活用しようという発想が強くなった。教員によって生成系AIの活用状況に大きな差がある。そのため、校内研修では全員にフィットする具体的な活用方法を紹介することは難しい。組織内のスキルや意欲の高い者のノウハウをいかに校内全体に広めるかに焦点を当てた職員研修が好ましいと考えている。

成果目標

  1. ①【教員による生成系AIの理解・活用】
    まず教師が生成系AIを使いながら、研修や日常の場面で使い方の共有や対話をすることを通して理解を進める。同時に、リスクや問題点について具体的に認識し、検討する。→本校で活用しやすいプロンプトなどを共有し、「組織としての活用」する文化が定着する。
  2. ②【生徒が生成系AIを活用する際のリテラシー・モラル指導の環境整備】
    学校で定めている「学問的誠実性ポリシー」に生成系AI利用に関する項目を追加して、方針を明文化するとともに、保護者からの承認を得る手続きや生徒が利用するときのルールなど、具体的な指導方法・体制を整備する。→「AIリテラシー」をいつどのように育むかの体制を整備する。
アドバイザーコメント
木原 俊行 先生
四天王寺大学
教授 木原 俊行 先生

 学校法人津曲学園鹿児島修学館中学校・高等学校(以下,鹿児島修学館中高等学校)は,第51回特別研究指定校(活動期間:2025〜2026年度)の1校に選出された。鹿児島修学館中高等学校は,特別研究指定校に選ばれるまでに,パナソニック教育財団の実践研究助成を受けている。ここ数年だけでも,2019年度,2020年度,2023年度と3度の助成を受けている。2023年度については,オンラインサポート校にも選ばれている。同校の先生方は,同年度,「学校図書館の「学習・情報センター」機能の充実とICT活用との統合・融合/国際バカロレア教育における探究学習促進・情報活用能力向上を目指して」というタイトルで研究活動に従事した。その成果は,パナソニック教育財団の評価プロジェクトによって,確認されている(同年度の優れた実践研究報告書の1つに選ばれている)。このように,パナソニック教育財団の実践研究助成という文脈で,学校として組織的に実践研究を推進するという経験を,鹿児島修学館中高等学校は豊富に有している。だから,特別研究指定校を申請するにあたって,よく練られた研究計画が策定されていた。換言すれば,鹿児島修学館中高等学校の先生方は,実践研究力が高い。それは,今回,アップロードされた,活動報告書が13頁にも及んでいることにも確認できよう。

 鹿児島修学館中高等学校のアドバイザーとして,筆者は,4月と7月に,同校を訪問し,その授業や校内研修の模様を拝見した。ある程度予想していたことだが,同校の生徒たちの情報活用能力は高い。端末を利用して,探究的な学びをたくみに繰り広げている。しかも,いわゆる個別最適な学びと協働的な学びが往還され,探究のサイクルが展開されている。例えば,生物の授業で生徒が調査結果をミュージカルで表現するための準備に従事している姿を拝見した。ミュージカルのトピックや役割は多様であるから,生徒は個別にまたグループ別に端末を利用して作業を進めていた。そして,一部の生徒は,例えば,シナリオの推敲に生成AIを活用していた。他の教科・領域の学習においても,生徒は必要に応じて,生成AIの活用を進めていた。同校の生徒にとって,探究的な学びは必然である。そして,一部の生徒にとって,もはや生成AIは,探究的な学びに資する知的ツールに位置付いていた。

 もちろん,生成AIに関する技術革新のスピードは速まるばかりである。また,生徒の利用も,おそらくは家庭でのそれが急激に増えると思われる。それゆえ,前述した,よく練られた研究計画も,それらに応じた修正が求められよう。鹿児島修学館中高等学校の先生方には,豊かな実践研究力を発揮して,生成AI活用実践の拡充を図っていただきたい。