学校法人聖ヨゼフ学園 日星高等学校

第47回特別研究指定校

研究課題

SDGs未来都市舞鶴市を通して地方創生を考える
~ICTで人と繋がる。社会と繋がる。教科が繋がる。誰一人取り残さない教育をめざして~

2022年度01-03月期(最新活動報告)

最新活動報告
関西大学小柳教授、パナソニック教育財団 関戸様、石井様参加のもと本校の......

アドバイザーコメント

小柳 和喜雄 先生
聖ヨゼフ学園日星高等学校の「総合的な探究の時間」はユニークな組み立てになっている......

学校法人聖ヨゼフ学園 日星高等学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 京都府 学校法人聖ヨゼフ学園 日星高等学校
アドバイザー 小柳 和喜雄 関西大学 教授
研究テーマ SDGs未来都市舞鶴市を通して地方創生を考える
~ICTで人と繋がる。社会と繋がる。教科が繋がる。誰一人取り残さない教育をめざして~
目的 SDGsの考え方を軸に①地域社会の資源や財産を確認し、自ら地域の問題や課題に取り組む。 ②教科横断的授業を行うことにより単なる知識を得る授業でなく得た知識活用できる「資質・能力」を養う。これにより地域で活躍できる人材を育成し、協力していただいている地方行政、地元企業と相互利益をもたらし地方創生を目指すカリキュラムを作成する。
現状と課題

現状:舞鶴市がSDGs未来都市に選ばれ、市や地域社会のリソースを生徒の学びに生かす大きな機会を得た。その中で、1年生の「総合的な探究の時間」において市役所や若手起業家と連携した地域探究活動が始まった。

課題:普通科総合コースには自己肯定感が低く学習に対して受け身な生徒が多い。中学段階の基礎学力が定着していない生徒や、学ぶ意味や学ぶ楽しさを知らない生徒も少なくない。そのため、学習の対象を身近な地域や現実社会の問題とすることにより学習意欲を高め、地域の人々とつながることで地域社会への関心をもち、地域貢献や社会貢献への意識を高められると考えた。

学校情報化の現状 昨年度、コロナ禍における全国一斉休校にあたり、全校でオンラインでの授業を行うことにより、学校の情報化が著しく進歩した。
取り組み内容
  • 「総合的な探究の時間」の授業プランを作成し実践する。 1年生はグループ研究 2年生は個人研究
    1年生・2年生 市役所や若手起業家の協力を得て、地域のよさや課題の発見、改善策の提案
    3年生 2030年の社会を予測した卒業論文の制作
  • SDGsを軸に3年間の「教科横断プログラム」の作成
    教科横断コーディネーターを中心にSDGsを軸に、生徒が深い学びが提供できるプログラムを作成する。
成果目標

2022年新学習指導要領実施に伴い、①地域の行政や民間と連携した「総合的な探究の時間」と②教科横断的授業を取り入れたカリキュラムマネジメントの確立を行う。
これにより生徒の自己肯定感、地域愛を育て、都市一局集中ではなく地域に根差す人材を育成する。

  • ① 生徒がSDGsについて学び、世界の中で自分たちが果たすべき役割について理解する。
  • ② SDGsを地域と関連させて舞鶴市がより良くなるためにはどうしたら良いかを考える。
  • ③ ICT機器を活用して、自分の考えを公の場でプレゼンテーションできる。
助成金の使途 iPad、短焦点プロジェクター、他校視察旅費、講師謝礼、研究冊子制作他
研究代表者 吉岡 達也
研究指定期間 2021年度~2022年度
学校HP https://www.nisseihs.ed.jp
公開研究会の予定 SDGs探究AWARDSへの参加

本期間(4月~7月)の取り組み内容

1 会議等

(1)特別研究指定校第1回会議 日時:4月26日(月) 16時から17時30分(zoom)

 助成金贈呈式及びスタートアップセミナー 5月28日(金)13時30分から17時30分

 4月26日、zoomによる会議を行った。参加者は、本校教員7名、担当アドバイザーである関西大学 小柳教授、パナソニック教育財団事務局である。財団から助成に関する説明をいただき、本校の2年間にわたるSDGsと地域連携を軸にした「総合的な探究の時間」のカリキュラム、「教科横断的授業」のカリキュラムの運用について説明した。小柳教授からは入口、出口を明確にすることや、評価の時期、方法を検討するようにアドバイスを受けた。事務局から全校体制・全教員で継続的に取り組むことと本研究の成果・プロセスを広く公開することが確認され決意を新たにした。また、5月28日のスタートアップセミナーにおいては日本女子大学 吉崎名誉教授、明治大学 岸准教授からもアドバイスをいただき、本研究のために多くの方に協力をいただいていることを再確認した。

(2)特別研究指定校第2回会議 日時:6月2日(水) 16時から17時(zoom)

 参加者は本校教員6名、関西大学 小柳教授、パナソニック教育財団である。主にアドバイザー訪問指導の日程調整を行なった。7月15日(木)5時間目、2年生「総合的な探究の時間」(インターンシップ事前指導)授業、6時間目、本校のICT環境、普段の授業の様子を見学していただくことになった。

(3)特別研究指定校第3回会議 日時:7月15日(木) 14時10分から15時

 参加者は本校教員7名、関西大学 小柳教授、パナソニック教育財団(zoom)である。

小柳教授と初めての対面での会議となった。アドバイザー、財団これまでの活動を報告した。

小柳教授からは今年のゴールである報告会を実りあるものにするために、

  • ・インターンシップを行いながら生徒が成果物の素材を集められなければならない。そのために、9月のインターンシップ実施までに生徒にどんな成果物を作り、どのような対象に伝えるのかイメージを持たせる指導を行うこと。
  • ・インターンシップを通して自分がどう変わったのかを前後で生徒自身が分かる指標を作った方が良い。
  • ・それぞれのタスク「日星ゼミ」「SDGs・V市役所」「進路学習」、「インターンシップ」「課題研究」「進路学習」がどう交差するのか繋がりを意識しなければいけない。

などのアドバイスをいただいた。

2 総合的な探究の時間

(1)1年生
①「総合的な探究の時間」の概要

 年間を通して26時間で計画を立てた。内容は日星ゼミと称して4時間のプログラムをA・B・Cの三講座。SDGs・バーチャル市役所(以後V市役所とする)と称して、12時間のプログラム。残り二時間はV市役所の取り組みの報告集会とする。学年3クラスをさらに二つに分け、合計6チーム(1−1①②、1−2①②、1−3①②)を作り、ローテンションを組んで、誰もがすべてのプログラムに参加できるようにした。(V市役所は3チーム合同にして12時間のプログラム。)

②「日星ゼミ」

 Aは「地域課題の発見」「地域愛の育成」「イノベーション力の養成」をねらいに、「一般社団法人KOKIN」と連携したゼミで、生徒が地域に出て、リノベーションされた建造物に触れ、まちづくりを考えるものである。

 B「映画から学ぶ」、C「資格にチャレンジ(漢検編)」は、本校教員が担当した。

③「SDGs・V市役所」の概要

1学期:SDGsについて学び、SDGsの視点を取り入れることがまちづくりにどのように役に立つのかを考える。まちにおける市役所の役割を学ぶ。

2学期:市役所各課より舞鶴市の課題を提案され、SDGsの視点を持ちながらアンケートや文献調査、インターネット調査、フィールドワークなどを通して課題の解決方法を考える。

3学期:自分たちの提案をスライドにまとめプレゼンテーションをする。

④「日星ゼミ」(KOKINとの共同プログラム)(対象:1年3組 28名)(全4時間)

1−3①チーム 4月27日(火)〜5月18日(火)

1−3②チーム 6月8日(火)〜6月22日(火)

1時間目 地元活性化のために働いている大人から舞鶴の良さを学んだ。

2,3時間目 フィールドワーク(リノベーションされた建造物等を見学)

4時間目 紹介ポスターを作成した。(Metamoji Classroom使用)

日星ゼミでのフィールドワークの様子

⑤「SDGs・V市役所」(対象:1年生1組〜3組 78名)(全4時間)

SDGs・V 市役所

1−1② 1−2② 1−3② 4月27日(火)〜5月18日(火)

1−1① 1−2① 1−3① 6月8日〜6月22日(火)

1時間目 SDGsと地方創生の関係を知る。

2,3時間目 SDGs de 地方創生カードゲーム実施。

4時間目 市役所の役割を知り、地域が抱える問題を考える。

⑥「V市役所担当課リクエストアンケート実施」

(対象:1年生1組〜3組 78名)7月13日(火)

 生徒に2学期に行われるV市役所でどの課に課題を出してもらいたいかをリクエストを聞いた。(Classi使用)

(2)2年生
①「インターンシッププログラムの概要」(地域で活躍する大人から地域課題を学ぶ)

 地元で活躍している事業主に講演をしていただき、「働く意味」や「働く喜び」について考える。「仕事とは誰かの役に立つこと」「社会はみんなの仕事で成り立っている」ことを知った上でインターンシップを行い、働く喜びを実感し、社会の一員として役立っていることが自己肯定感に繋がることを知る。

②「インターンシッププログラム」(対象:2年1組〜3組 91名)

1時間目 インターンシップオリエンテーション 4月15日(木)

 インターンシップに向けての導入を行なった。

2時間目 キャリア講演会 5月13日(木)

 講演者 株式会社 ローカルフラッグ(濱田様) 株式会社ツクヨミラシン(駒井様)

3,4時間目 キャリア講演会 事業所選択 5月20日(木)

 講演者 有限会社畿久鶴(久下様) 株式会社京栄電工(安原様) インフォニック株式会社(望月様)

 2週にわたり地元企業に講演をしていただいた。60年以上地元を支えた企業、学生で企業した方や、飲食業、これから地元に参入するIT企業、など他業種の方に仕事の内容や働きがいなど生の声を聞いた。

キャリア講演会の様子

5時間目 インターンシップ事前指導、注意事項 6月17日(木)

 ビジネスマナーや働く意味についての講義を受けた。

3 第1回アドバイザー訪問指導

6時間目 各事業所に分かれてのインターンシップ事前指導 7月15日(木)

 関西大学 小柳教授に来校していただき、パナソニック教育財団事務局にはzoomで参加していただいた。

 2学期から12事業所でインターンシップを行う。事業所ごとに分かれ各事業所からインタビューしたことやインタンシップの内容を生徒に伝えた。

 「働く」とはについて考えた。働くとは、人と繋がること、人のためになることをすること。それによって自己肯定感や自己の存在意義を確認できるということについて考えた。

インターンシップ事前指導の様子

4 評価

(1)総合的な探究の時間振り返りアンケート実施

(対象:1年生1組〜3組 78名)7月13日(火)

SDGsに対して地元舞鶴に対して1学期間でどのように意識が変化したかアンケート調査を行なった。(Classi使用)

アドバイザーの助言と助言への対応

 「総合的な探究の時間」と「教科横断型授業」2本の柱を進めていく上でカリキュラム開発・運用・評価を無理無く効果的に進めていく必要がある。

 入口(準備をきちんとすること)と出口(最終的に伝えたいことは何か)を明確にしなければいけない。

 この教育実戦によって身に付いた力の確認方法をどの時期にどのような方法で行うのが良いかを考えることが大切であるというアドバイスをいただいた。

 入口については、市役所、地元企業、地元大学である福知山公立大学共に好意的であり、「総合的な探究の時間」が軌道に乗り始めた。出口については生徒の地元舞鶴に対する思いや地元に貢献したいという気持ちの変化を追う。生徒たちに付けさせたい力として、問題解決能力や情報収集能力、創造力、学びに向かう力が挙げられた。

 評価の方法として、学期ごとの生徒へのアンケート、生徒の成果物で評価することは決まった。

本期間の裏話

 事業所にインターンシップの協力要請をした時に最初は難色を示される事業所が多いのではないかと思っていたが、地域の未来の担い手を育てるプログラムだと賛同していただける協力的な事業所もあり嬉しく思った。また、教職員の中でも本研究において興味・関心を持っていただき、協力的であり、来年度の新学習指導要領実施に向けて一足早く学校が動きだしている感覚がある。

本期間の成果

  • ・1年時、2年時「総合的な探究の時間」のプログラムの詳細を確定できた。
  • ・新学習指導要領実施に向けての準備ができた。

今後の課題

  • ・教科横断型授業のための教員研修
  • ・観点別評価を踏まえた教科横断型授業でつけたい力の見える化。
  • ・効果的な成果物の選定と提出時期の検討
  • ・生徒の問題解決能力、情報収集能力、想像力の伸びをどうやって測るのかの検討

今後の計画

  • ・1年生 市役所協力のもとバーチャル市役所の実施
  • ・2年生 インターンシップ実施
  • ・近隣小中学校教員対象のI C T活用公開授業の実施

成果目標

  • ・SDGsを舞鶴と関連させて舞鶴市がより良くなるためにはどうしたら良いかを考える。
  • ・ICT機器を活用して、自分の考えを公の場でプレゼンテーションできる。
アドバイザーコメント
小柳 和喜雄 先生
関西大学
教授 小柳 和喜雄 先生

1.研究テーマ・取り組みについて

 「聖ヨゼフ学園日星高等学校」は、西舞鶴駅からゆっくり歩いて20分、車なら5分とかからない緑豊かな市街地にある高等学校である。2019年に創立90周年を向かえ、その歴史と文化(教育目標:人と共に生き、人のために役立つ、心豊かな人に)もさることながら、第一印象として、1人1人を大切にし、時代を切り開いていく校風(自尊:かけがえのない存在、生命である自分や他者を大切にする心。自知:私たちの使命や可能性を見いだしこれを伸ばす喜び。自制:より高い目標に向かって自分を創り社会に出て行く勇気)を感じさせてくれる学校であった。

 1人1人の興味関心、生徒の探究的な学びを大切にしている姿が印象的であり、少人数で活発にICT等も駆使しながら話し合っている姿が心に残った。そしてその学習活動を支える教職員の資料準備、話しやすい雰囲気作りや問いかけなど、心地よい学習環境を築く配慮が感じられた。

 ICTに関しては、1人1台環境が整備されており無線LANで校内どこからでもインターネットにアクセスできる状況であった。本研究テーマの基盤となる「総合的な探究の時間」を、教職員チーム、学外関係者とともに実践研究を進め、その推進のコア(探究学習、進路学習等)となる時間を設定し、学習の成果の発表と交流を位置づけ、生徒および参加者の対話的・主体的な学びを豊かなものにしようとしている姿が見られた。

 本校の話によれば、これから2年の研究期間に、積極的に様々な場で成果の発表を行うとともに、SDGsと地域連携を軸にした「総合的な探究の時間」と教科横断型の学習を推進し、1)問題解決能力の育成、2)自己がどう社会と関わっていくのか、社会にとって役立つことができるのかの基礎的理解、3)産学官が繋がって地域を作っていることを知り、自分が地域に何ができるのか、に貢献できる3年間の「総合的な探究の時間」カリキュラムを開発していきたいとのことであった。

2.本期間の取り組み

 4月26日、最初の会議を、zoomを用いて行い、2020年度入学生から始めている「総合的な探究の時間」の内容や現在の進捗状況を伺った。そして、5月28日の助成金贈呈式及びスタートアップセミナー時に研究目的や計画についてより詳細に伺い、6月2日にこれからの進め方に関する日程調整を中心とするzoomを行った。緊急事態宣言が解除されたこともあり、7月15日に学校を訪問する機会を得た。その際、5時間目に2年生「総合的な探究の時間」(インターンシップ事前指導)授業と6時間目に学校のICT環境や通常の授業の様子を見学させていただく機会を得た。そして、放課後に、研究推進チームの先生方と意見交換や今後に向けての打ち合わせを行った。

 写真にあるように、教科の授業で目的に応じてICT(パソコン、タブレット、スマートフォン)が日常使いで活用され、生徒たちは、学習活動に応じて、メディア選択をし、情報活用能力を生かした学習が展開されていた。1人で考える機会、生徒同士で話す機会が、あるリズムを持つ流れで組み立てられているようにも感じられた。ICTなどを生かす学習のルールが授業で生かされているのが感じられた。

3.今後の期待

 聖ヨゼフ学園日星高等学校の取り組みは、他の学校にはなかなかまだ見られないSDGsと地域連携を軸にした「総合的な探究の時間」のカリキュラム開発への挑戦とそれを効果的に運用していく方法や具体的な手続き、そしてその理論的裏付けを明らかにしようとされている。この「総合的な探究の時間」のカリキュラムは複雑な構造(後々学校からも報告があると思われる)を持ち、そこに参画し協力をしてくれる地域の人々や市役所、教育機関などが多い。しかしそこには、新しい取り組みに向けて、作り出していく雰囲気が感じられた。

 これを継続的に進め、それらを学校全体の財産としていくためには、実践に関わる生徒、教職員、関係者の声などを大切に受けとめ、成果の評価をしつつ、その成果を導いた各取り組みの評価を丁寧にしながら、目指している姿に近づいていって欲しい。

本期間(8月~12月)の取り組み内容

1 会議等

(1)「インターンシップルーブリック」「総合的な探究の時間ルーブリック」検討会議

8月19日〜8月30日

 第1回アドバイザー訪問の中で指摘を受けたインターンシップでの評価方法の一つとしてルーブリック評価を行うことを決め評価基準の検討を行なった。検討を行う中で、生徒に3年間で身につけて欲しい力について話し合われ、その中で3年間の総合的な探究の時間での指標の1つとしてのルーブリック評価(プロトタイプ版)を作成した。8月28日にアドバイザーである小柳教授にインターンシップルーブリック・総合的な探究の時間ルーブリックを提出しアドバイスをいただいた。

(2)特別研究指定校第4回会議 日時:11月10日(水)17時〜18時(zoom)

 オンラインによる会議を行った。参加者は本校教員1名、関西大学 小柳教授、パナソニック教育財団である。第1回訪問からの経過報告を行い、11月25日に行われる第2回訪問指導の内容についての打ち合わせを行った。

(3)特別研究指定校第5回会議 日時:11月25日(木)15時20分〜16時

 参加者は本校教員4名、関西大学 小柳教授。第2回訪問指導後の会議となった。アドバイザーに1年生2学期の総合的な探究の時間の取り組み(V市役所)、2年生2学期の総合的な探究の時間(インターンシップ)について行なってきたことを説明しアドバイスをいただいた。

小柳教授からは、

  • ・2年生の「インターンシップ日誌」を見て1年生にも冊子を作り、企画が事前に見えるようにした方が良い。
  • ・学年ごとの探究活動で身につける力を明確化した方が生徒たちもゴールイメージがつけやすい。

とアドバイスをいただいた。

当日の様子

2 総合的な探究の時間

(1)1年生
①日星ゼミ

1年生「日星ゼミ(KOKINとの共同プログラム)」が京都府内に緊急事態宣言が出されたため、フィールドワークを行うことができず、9月7日、9月28日においては、KOKINスタッフがフィールドワークを行い、それを教室で視聴するzoomによるオンラインフィールドワークとなった。

「日星ゼミ(KOKINとの共同プログラム)」対象:1年1組 22名 1年2組 28名)

(全4時間)

1−1Aチーム 8月31日(火)〜9月14日(火) フィールドワークzoom
1−2Aチーム 9月21日(火)〜10月5日(火) フィールドワークzoom
1−1Bチーム 10月12日(火)〜11月2日(火)
1-2Bチーム 11月9日(火)〜11月24日(水)

① 地元活性化のために働いている大人から舞鶴の良さを学んだ。
②③フィールドワーク(リノベーションされた建造物等を見学)
④紹介ポスターを作成した。(Metamoji Classroom使用)

緊急事態宣言下のzoomを使ったフィールドワークの様子

緊急事態宣言が明けてからのフールドワークの様子

②V市役所(対象:1年生1組〜3組 78名)(全8時間)

 8月31日、10月12日に市役所(デジタル推進課、子ども支援課、幼稚園・保育所課、広報広聴課)の4課とコーディネーターである企画政策課 亀井様他計7名の市役所職員をお招きして本年度のV市役所の取組が開始した。V市役所とは市役所各課より舞鶴市の課題を提案され、SDGsの視点を持ちながらアンケートや文献調査、インターネット調査、フィールドワークなどを通して課題の解決方法を考えるものである。

 デジタル推進課からは「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を実現するにはどのような取り組みを行えば良いですか?」(※誰一人取り残さないとは、みんながデジタル化の恩恵を受けられる事を示します)

 子ども支援課からは「舞鶴の地域の資源を使って、たくさんの親子が一緒に遊べる場所や遊びをたくさん教えてください」

 幼稚園・保育所課からは「中・高校生に、保育や子育ての重要性について理解してもらい、興味を持ってもらうためにはどうすればよいか、どんな方法があるか、考えて見てください」

 広報広聴課からは「市のキャッチコピー『ヅルいい!舞鶴』このキャッチコピーを幅広い世代の市民の皆さんに浸透させ、活用していくにはどうすれば良いか考えてください」
という課題をいただき課題解決に向けてグループで協議した。

Bチーム 8月31日(火)〜10月5日(火)

Aチーム 10月12日(火)〜11月24日(水)

V市役所の様子

(2)2年生
①インターンシッププログラム(対象:2年1組〜3組 91名)

 当初の予定では全5回(9月9日、10月7日、10月28日、11月11日、11月18日)のインターンシップの予定だったが、京都府に緊急事態宣言が出されたことで9月9日の第1回が中止に、10月7日の第2回インターンシップも本校にコロナウイルス感染者が出たため中止となった。当初の5回ではなく3回だけのインターンシップとなった。

10事業所に分かれてのインターンシップの様子

3 第2回アドバイザー訪問指導

インターンシップ事後指導 11月25日(木) 

インターンシップを終えてインターンシップ日誌の中にある「体験を終えて」をまとめた。その後3学期に行われるプレゼンテーションに向けて資料作りを各自で行った。

4 評価

総合的な探究の時間ルーブリック自己評価アンケート実施

(対象:2年生1組〜3組 91名)9月9日実施

インターンシップルーブリック自己評価アンケート実施

(対象:2年生1組〜3組 91名)9月9日実施、11月25日実施

 夏に作成した総合的な探究の時間ルーブリック、インターンシップルーブリックを9月9日に行った。インターンシップを終えた11月25日に再度実施し比較した。

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ・出口(最終的に伝えたいことは何か)を明確にしなければならない。
  • ・学年ごとの探究活動で身につける力を明確化すること。

 3年間を通しての「総合的な探究の時間ルーブリック評価」2年生「インターンシップルーブリック評価」を作成した。3学期は来年度入学の1年生に対して、3年後のゴールイメージと1年後のゴールイメージができる指標と冊子作りを目指したい。

本期間の裏話

 インターンシップが5回から3回になり1事業所から受け入れ辞退の申し入れがあった(本来なら焼き菓子の商品開発をする予定だった)が、生徒たちが、自分たちの力で商品開発をしてダメもとで、事業所に提案してみようということになった。さらに、商品開発のための資金源としてのクラウドファンディングも行うことが決まった。その後、事業所から承諾を頂き、現在クラウドファンディングで日星高校(学)、事業所(産)、舞鶴市(官)協力のもと商品開発のための資金を集めている。

(期間2021年12月15日〜2022年1月31日)

本期間の成果

  • ・総合的な探究の時間ルーブリック評価、インターンシップルーブリック評価の作成ができた。
  • ・3回ではあったが、インターンシップが実施でき。その中で生徒の成長が見られた。

今後の課題

  • ・教科横断型授業のための教員研修
  • ・1年生に対しての3年後、1年後のゴールイメージが持てる冊子作り

今後の計画

  • ・1年生 V市役所プレゼンテーション(グループ)
  • ・2年生 インターンシッププレゼンテーション(個人)

成果目標

  • ・SDGsを舞鶴と関連させて舞鶴市がより良くなるためにはどうしたら良いかを考える。
  • ・ICT機器を活用して、自分の考えを公の場でプレゼンテーションできる。
アドバイザーコメント
小柳 和喜雄 先生
関西大学
教授 小柳 和喜雄 先生

1.はじめに

 7月訪問時に2学期の取り組みとして計画されていたインターシップが、8月より緊急事態宣言が出されたこともあり当初通りに行うことができず、時間変更、機会短縮など、学校にとって大変な調整と苦労があったことは想像に難くない。しかし、11月訪問時に感じたことは、聖ヨゼフ学園日星高等学校の生徒たちと教員は、そのような状況下にあっても、探究的な学びを楽しみ、創り出していこうとしており、その雰囲気は以前と変わらなかった。学校の報告に見られるように、感染予防に対して注意深い対策をとりながらも、当初目指していたことに向けて、できる取り組みを工夫して行っていた。むしろこのような稀にみる環境下だからこそ、協力して工夫して取り組もう、自分たちで今何ができるか、一人一人が考え行動しているようにも感じられた。

2.研究テーマ・取り組みについて

 聖ヨゼフ学園日星高等学校の「総合的な探究の時間」はユニークな組み立てになっている。大きな枠組みとして、「進路学習」と「探究学習」の2つからできていて、それは、1年生から3年生まで通しで計画されている。

 そのユニークさが際立つ「探究学習」に目を向けると、たとえば1年生の「探究学習」では、「社会を知る」をテーマに、(1)日星ゼミと(2)SDGsが組まれている。この期間、学校の報告に見られるように、(1)「日星ゼミ(KOKIN との共同プログラム)」は、① 地元活性化のために働いている大人から舞鶴の良さを学ぶ。②③フィールドワーク(リノベーションされた建造物等を見学)、④紹介ポスターを作成する(Metamoji Classroom)などが行われる。しかし、9月7日、9月28日においては、フィールドワークを行うことができず、KOKINスタッフがフィールドワークを行い、それを教室で視聴するzoomによるオンラインフィールドワークが実施されるなど、生徒の学びに臨場感を持たせる臨機応変な対応と工夫が見られた。(2)SDGsの取り組みの1つである「V市役所」は、市役所各課より舞鶴市の課題を提案され、SDGsの視点を持ちながらアンケートや文献調査、インターネット調査、フィールドワークなどを通して課題の解決方法を考えるものである。8月31日、10月12日に市役所の4課(デジタル推進課、子ども支援課、幼稚園・保育所課、広報広聴課)とコーディネーターである企画政策課の計7名の市役所職員を招き、社会に参画する機会を原体験する取り組みである。たとえば、広報広聴課からは「市のキャッチコピー『ヅルいい!舞鶴』このキャッチコピーを幅広い世代の市民の皆さんに浸透させ、活用していくにはどうすれば良いか考えてください」という課題をもらい、課題解決に向けてグループで協議するなど、生徒にとって真実味と責任を感じる社会的実践に参加する探究学習の機会が工夫されていた。

 2年生の総合的な探究の時間で行われている「探究学習」では、「社会に飛び出す」をテーマに、(1)課題研究と(2)インターンシップが計画されている。この期間、学校の報告に見られるように、(2)インターンシップでは、京都府に緊急事態宣言が出されたことで 9月 9日の第1回が中止に、10月7日の第2回インターンシップも本校にコロナウイルス感染者が出たため中止となり、結果、当初5回の予定が、3回だけのインターンシップが行われることになった。しかしそのような状況下でも、経験したインターシップの機会を生かし、インターンシップ日誌の中にある「体験を終えて」をまとめ、その後3学期に行われるプレゼンテーションに向けて資料作りを各自で行っていた。

 探究学習を通して、螺旋的に探究プロセスを経験し、探究的な学習のステップや方法を1年生、2年生とスパイラルアップ(積み上げ螺旋)で学んでいることがよくわかる。そしてその学びに個々人、協働の学びを生かす授業展開の工夫も見られた。

 このように臨機応変な対応を行いながらも、学びの機会とその質を担保できているのは、教員チームの組織的教育力がそこに働いているのが伝わってきた。

 また、その臨機応変な対応を可能としているもう1つの働きとして、ICTの活用が挙げられる。聖ヨゼフ学園日星高等学校では1人1台環境が整備されており、無線LANで校内どこからでもインターネットにアクセスできる状況である。その環境があるため、ZoomなどのWWW会議システムを用いた取り組みや、インターンシップの経験の記録と振り返り、そのまとめとしてのプレゼンテーション資料の作成に生かされている。

 本研究テーマの基盤となる「総合的な探究の時間」を、教職員チーム、学外関係者とともに実践研究を進め、その推進のコア(探究学習、進路学習等)となる時間を設定し、学習の成果の発表と交流を位置づけ、生徒および参加者の対話的・主体的な学びを豊かなものにしようとしている姿があらためて感じられた。

3.本期間の取り組み

 まず8月28日に、WWW会議システムを用いて、7月に課題となっていたインターンシップルーブリック・総合的な探究の時間ルーブリックについて検討を行った。次に、11月10日(水)にWWW会議システムを用いて、第1回訪問からの経過報告を伺い、11月25日の第2回訪問に向けての内容の打ち合わせを行った。そして11月25日(木)に学校を訪問する機会を得た。その際、5時間目と6時間目に2年生「総合的な探究の時間」(インターンシップ事後指導)授業を見学させていただく機会を得た。そして、放課後に、研究推進チームの先生方と意見交換や今後に向けての打ち合わせを行った。

 写真にあるように、目的に応じてICT(パソコン、タブレット、スマートフォン)が日常使いで活用され、生徒たちは、学習活動に応じて、アプリケーションやメディア選択をし、情報活用能力を生かした学習が展開されていた。1人で考える機会、生徒同士で話す機会が、効果的に組み立てられていることがよく伝わってきた。そしてICTなどを生かす学習のルールが授業で生かされていることがあらためて感じられた。

4.今後の期待

 聖ヨゼフ学園日星高等学校の取り組みは、前回の報告でも述べたように、他の学校にはなかなかまだ見られないSDGsと地域連携を軸にした「総合的な探究の時間」のカリキュラム開発への挑戦とそれを効果的に運用していく方法や具体的な手続き、そしてその理論的裏付けを明らかにしようとされている。この「総合的な探究の時間」のカリキュラムは複雑な構造を持ち、そこに参画し協力をしてくれる地域の人々や市役所、教育機関などが多い。Covid-19の影響を受けながらも、新しい取り組みに向けて、様々な協力者と密接に連絡を取り、柔軟かつ質を担保する対応を作り出していく実践そのものがここにはあった。

 これを継続的に進め、それらを学校全体の財産としていくためには、実践に関わる生徒、教職員、関係者の声などを大切に受けとめ、成果の評価をしつつ、その成果を導いた各取り組みの評価(組み立て、どの内容、どのような道具、環境、どのような人との関わり、ほかが効果的であったかの評価)を丁寧にしながら、目指している姿に近づいていって欲しい。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

1 総合的な探究の時間

① 1年生「V(バーチャル)市役所」
  • ・記録のまとめ、プレゼン資料作成
  • ・2月15日 「V市役所報告会」(グループ発表)を行った。
② 2年生「インターンンシップ」
  • ・インターンシップの振り返り、プレゼン資料作成(個人)、グループ代表選考
  • ・2月3日 インターンシップ報告会(個人発表)。

 以下、前回までは取り組み内容を学年ごとに報告したが、今回は1年生、2年生の関連も分かりやすくするために時系列で報告する。

1年生① 1月12日「プレゼンの方法を学ぶ」
・『聞き手の心に火を付ける! プレゼンテーション術』講演と討論

 福知山公立大学 准教授 杉岡秀紀先生を招聘し、「プレゼンとは何か」について講演を聞いた。その後「プレゼンテーションの手本」の映像をもとに「何が上手いと思うポイントだったか」をグループで議論し発表した。生徒からは「間の取り方がうまい」「語りかけるように喋っていた」など聞き手を主人公にできる意見が多く出た。「V市役所報告会」(2月15日)に向けての準備ができた。

1年生② 1月25日 プレゼンテーション作成及び準備

 「V市役所報告会」(2月15日実施)に向けての発表スライド調整

2年生① 1月27日 事業所別「代表選考会」

 個人で作ったプレゼンを事業所別グループで発表しあい、「インターンシップ報告会」(2月3日実施)に向けて事業所別に代表を選考

1年生③ 2月1日(火)

 「V市役所報告会」(2月15日実施)に向けてのプレゼンテーション準備

2年生② 2月3日(木)「インターンシップ報告会」(個人発表)
第3回「アドバイザー訪問指導」 小柳和喜雄教授及び事業所から9名参加

前回選考の各事業所単位の代表者が発表

 当初、関西大学 小柳教授、パナソニック教育財団事務局様に実際に訪問していただいてインターンシップ報告会を行う予定であった。しかし、1月27日より京都府にまん延防止等重点措置が出されたため、当日は発表者のiPadをzoomで画面共有し、小柳教授やコロナ感染防止の観点で実際に来校できない事業所にwebで参加いだいた。

 また、1年生も参加し、先輩のプレゼンテーションを観ることにより、2年生の取り組みを知るとともに、2月15日に行う「V市役所報告会」に向けてイメージしやすい環境を整えた。

1年生④ 2月15日「V市役所報告会」(グループ発表)

 舞鶴市役所(デジタル推進課、子ども支援課、幼稚園・保育所課、広報広聴課)の4課とコーディネーターである企画政策課 亀井様他計7名の市役所職員を招待

 各課から出された課題について調べて考えた自分たちの提案を18グループが発表

 2学期中旬から作成したスライドを使い、役割を分担するなどにより全員が発表する機会を設けた。

デジタル推進課 「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を実現するにはどのような取り組みを行えば良いですか?」・・・4グループ

子ども支援課 「舞鶴の地域の資源を使って、たくさんの親子が一緒に遊べる場所や遊びをたくさん教えてください」・・・4グループ

幼稚園・保育課 「中・高校生に、保育や子育ての重要性について理解してもらい、興味を持ってもらうためにはどうすればよいか、どんな方法があるか、考えて見てください」・・・4グループ

広報広聴課 「市のキャッチコピー『ヅルいい!舞鶴』このキャッチコピーを幅広い世代の市民の皆さんに浸透させ、活用していくにはどうすれば良いか考えてください」・・・6グループ

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ・2年の「総合的な探究の時間」プログラムは一定できてきているが2年生の取り組みの中で研究課題に掲げているS D Gsに関することが少ないと感じた。
    →次年度、2年生1学期にインターンシップ事前指導の際にS D Gsと企業に関するプログラムを入れた事前学習を取り入れたい。
  • ・S D Gsに関して1年次、2年次と学年ごとの目標を立てると明確にならないか。
    →1年次、S D Gsと地方創生の関係、2年次S D Gsと企業の取り組み(地元企業にできること)のテーマで目標設定を行いたい。

本期間の裏話

 前回の活動報告書の裏話で扱った、クラウドファンディングが、商品開発のためのクラウドファンディングだが、当初の目標金額であった1,200,000円を上回る1,387,000円の寄付をいただいた。今後、事業所と協議を重ね、商品を開発していきたい。

本期間の成果

  • ・昨年度は実施できなかった福知山公立大学 杉岡先生の講演会が実施でき、プレゼンテーションは聞き手が興味を示してくれることが大切だと気づき工夫ができた。
  • ・1年生「V市役所報告会」では生徒は地元に興味を持ち、地元愛が向上した。また多くの生徒がチームで1つのものを作り上げていく大切さを述べていた。また多くの聴衆の前での発表することで自信をつけた生徒もいた。
  • ・2年生「インターンシップ報告会」では地元の企業と生徒が繋がることにより、地元愛や働く喜びについて触れた様子を工夫しながら1年生に伝えていた。

今後の課題

 1年生、2年生の総合的な探究の時間のプログラムが完成した。次年度に向けて、1年生は総合的な探究の時間が1単位増え2単位となるため、フィールドワークを充実させ、より深い考察が行えるようにする必要性がある。

 また2年生は、本来の計画では2年生はインターンシップと課題研究を行う予定だったが、今年度は2つを実施する時間が取れず、インターンシップで得たこと、考えたことを課題研究とした。次年度はインターンシップを行った後にSDGsの17項目から課題を発見しそれをもとに発表できるような環境を整えたい。

 次年度の1年生は新カリキュラムとなるため、教科横断型授業を充実させる。

今後の計画

  • ・今年度のまとめをし、次年度に向けて改善していく。
  • ・新カリキュラム実施に際し1年生の総合的な探究の時間が1単位から2単位となるため、フィールドワークの充実や市役所職員との連携を密に取れる環境を作りたい。
  • ・1年生、新カリキュラムの中で教科横断型授業を計画する。

1年間を振り返って、成果・感想・次年度への思い

 今年度も昨年度と同様でコロナに振り回される1年となった。さまざまな制限がかかる中での探究活動ではあったが、zoomを活用したフィールドワークやクラウドファンディングなど、その中で教員や生徒からピンチをチャンスに変えるアイデアが生まれた。教員がコロナ禍の中でもできることを「探究」していたのだと振り返りことができる。

 3学期に行ったお世話になった市役所の方、事業所の方を招いての報告会で生徒たちは自分達が考えたことを大人に向けて発信する過程を経験していく中で、学ぶことの大切さ、チームで1つのものを作り上げること、人とかかわることで様々な知識が身につくことなどを、そしてそれを発信することが自己肯定感に繋がったことが生徒たちのアンケート結果から伺うことができた。

 次年度もコロナの制限がかかる中で教員がチームとなり常に前向きな気持ちで研究を進めていきたい。

成果目標

1年生 1学期:総合的な探究の時間で身につける力を理解しSDGsと地方創生について考える。
生徒が日星ゼミによって地元の魅力・課題に気づく。

2学期:V市役所で舞鶴市が抱える課題について探究活動を通じて解決策を考える。

3学期:V市役所報告会に向けてチーム一丸となって生徒がプレゼンテーション内容を考えまとめ、発表し自己評価、相互評価することで生徒自身の成長を実感し自己肯定感を育てる。

2年生 1学期:生徒がインターンシップに向けて働く意味について考え、SDGsと企業について考える。

2学期:インターンシップを通して働く意味について実感し、それを個人でまとめることにより地元企業の良さを発見し地元愛を育てる。

3学期:インターンシップ報告会を通して仕事を通じて街の魅力を発信し、持続可能な町にするためには何が必要かを通して自分の進路につなげる。

アドバイザーコメント
小柳 和喜雄 先生
関西大学
教授 小柳 和喜雄 先生

1.はじめに

 7月、11月と訪問をすることができたが、この第3期間は、残念ながらまん延防止等重点措置期間に当たり、訪問はかなわなかった。しかし、WWW会議システムを通じて、2年生のインターンシップから学んだことについて、1年生および2年生全員に向けて、プレゼンテーションがされた場(「インターンシップ報告会」(2月3日実施))に参加することができた。それは、インターンシップで訪問した事業所別に個人でそれぞれの振り返りに基づき作ったプレゼンテーションについて、事業所別グループ発表を行う。そしてその結果に基づき、代表を話し合いから選出し、行われたものであった。プレゼンテーションに工夫がみられ、インターンシップの学びの成果とともに、その伝え方(プレゼンテーション)の方法についても、参加者全員が学べるように工夫がされていた。

2.研究テーマ・取り組みについて

 聖ヨゼフ学園日星高等学校の「総合的な探究の時間」はユニークな組み立てになっている。大きな枠組みとして、「進路学習」と「探究学習」の2つからできていて、それは、1学年から3学年まで通しで計画されている。詳細は学校の報告に記されている。

 この研究期間中は、取り組みが始まって2年ということもあり、1学年と2学年の学びの姿が報告されている。螺旋的に探究プロセスを経験し、探究的な学習のステップや方法を1学年、2学年とスパイラルアップ(積み上げ螺旋)で学んでいることがよくわかる。

 聖ヨゼフ学園日星高等学校の「総合的な探究の時間」は、とくに社会的実践への参加が重視されている。そのこともあり、学校外の多くの人がこの実践を理解し、協力する体制のもとで実践が行われている。そのため、この学びに参加している人々の様々な状況に、臨機応変な対応が教員チームに求められる。学びの機会とその質を担保するために、管理職、研究主任のリーダーシップの下、学校がその組織的教育力を発揮していることが伝わってくる。

 またインターシップの報告などに参加していても、1人1台環境がこの取り組みで生かされていることがよくわかり、生徒の情報活用能力が磨かれ、生かされていることも伝わってくる。

3.本期間の取り組み

 この期間についての学校の報告にあるように、2学期までの学びを、目的に応じてICT(パソコン、タブレット、スマートフォン)を駆使して、伝えたいことと関わる記録を取り出し、整理し、身体表現や問いかけなども工夫して、聞き手を意識したプレゼンテーションが行われていた。1学年は外部講師からプレゼンテーションの手法を学ぶ機会、2学年の姿から学べる機会が与えられていた。一方2学年は、代表選考を通じてインターンシップの振り返り内容やプレゼンテーションの方法について相互批評とインターンシップの機会を与えてくれた事業者の方々や学校外の人など、異年齢の人に伝える機会が与えられていた。そして学びの振り返りとそれを人に伝えるときに、ICTなどをどのように生かすかについて学べる工夫がされていた。探究的な学びにおいて、まとめと振り返り、それを表現していくことが重要となる。学年進行によって、その学びに広がりと深まりを持たせる工夫が、カリキュラムを組む際に重要となる。聖ヨゼフ学園日星高等学校の「総合的な探究の時間」から、その工夫のポイントが学べると感じられた。

4.今後の期待

 聖ヨゼフ学園日星高等学校の取り組みは、前々回、前回の報告でも述べたように、他の学校にはなかなかまだ見られないSDGsと地域連携を軸にした「総合的な探究の時間」のカリキュラム開発への挑戦とそれを効果的に運用していく方法や具体的な手続き、そしてその理論的裏付けを明らかにしようとされている。この「総合的な探究の時間」のカリキュラムは複雑な構造を持ち、そこに参画し協力をしてくれる地域の人々や市役所、教育機関などが多い。様々な協力者と密接に連絡を取り、柔軟かつ質を担保する対応を作り出していく実践そのものがここにはある。

 これを継続的に進め、それらを学校全体の財産としていくためには、実践に参画している生徒、教職員、関係者の声や姿を受けとめ見取り、成果を評価しつつ、その成果を導いた各取り組みの評価(組み立て、どの内容、どのような道具、環境、どのような人との関わり、など)を丁寧にしていくことが重要となる。そして取り組みをブラッシュアップしていくために、実践の様子の資料(写真や動画など)をアーカイブとして残し、実践で用いた資料(生徒に渡している資料、教員や協力者が共有している資料など)も、取り組みの評価を通じて改良を加え、学校の財産として使えるようにしていくことが重要となると思われる。

本期間(4月~7月)の取り組み内容

 本研究は、一昨年度の一般助成、昨年度からの特別研究指定校として計3年間、財団様から助成をいただいているSDGsを軸とした3年間の「総合的な探究時間」のカリキュラム研究である。

1 会議等

(1)特別研究指定校第6回会議 日時4月22日(金)17:00

 今年度の研究進め方と2年間の研究ゴールイメージについて、オンラインによる会議を行った。参加者は、本校教員、担当アドバイザーである関西大学 小柳教授、パナソニック教育財団事務局である。

 昨年度は2年生総合的な探究の時間、「インターンシッププログラム」の取り組みを観ていただきアドバイスを頂いたが、今年度は1年生の総合的な探究の時間における「日星ゼミ」と「V(バーチャル)市役所」を観てもらいアドバイスをいただくことになった。

 小柳教授からは、

  • ・3年間のカリキュラムの「見える化」。
  • ・学年が上がるごとに探究活動や学びをスパイラルアップしていくことの「見える化」。
  • ・1年生については3年目、2年生は2年目の研究となるため教育実践についてはスパイラルダウンをして深掘りをすること。

以上のアドバイスをいただいた。

(2) 教科横断会議 日時5月30日12:00

 1年生教科横断授業について1年総合コース教科担当教諭、教科横断コーディネーター、探究部担当教員で会議を持った。SDGsの考え方をもとに教科書の内容から教科横断のテーマを決め実践に向けて検討した。

(3) 特別研究指定校第7回会議 日時:6月1日(水)15:30

 参加者は本校教員3名、関西大学 小柳教授、パナソニック教育財団石井様。第4回訪問指導後の会議となった。当日、「V市役所」での「SDGs de 地方創生」カードゲームの様子と「日星ゼミ」における「フィールドワーク」を見学してもらいアドバイスをいただいた。

 小柳教授からは、

  • ・SDGsと役所、企業、学びの関連について、マップなどを使って「見える化」すること。
  • ・自分の言葉で振り返る機会を多くしてそれを3年間の探究の財産として残せるようにすること。

とアドバイスをいただいた。

2 総合的な探究の時間

1年生
(1)「総合的な探究の時間」の概要

 1年生総合的な探究の時間「日星ゼミ」「SDGs・V市役所」の取り組みも今年で3年目となる。今年度より新カリキュラムとなり2単位(年間46時間)で計画を立てた。

  1. ①「日星ゼミ」 4時間のプログラムをA・B・Cの3講座(計12時間)
  2. ②SDGs・バーチャル市役所(以後V市役所とする)(21時間)
  3. ③ 進路学習(13時間)   からなる。

 昨年同様、合計6チーム(1−1①②③、1−2①②③)を作り、ローテンションを組んで、誰もがすべてのプログラムに参加できるようにした。また、探究学習と進路学習を繋げることによりキャリア教育の充実をはかった。

(2)「日星ゼミ」

「日星ゼミA」

(ねらい)「舞鶴の人と場所を知る」「舞鶴と自分の未来を考える」「選択肢の幅を広げる」(特徴)「一般社団法人KOKIN」と連携したゼミとして、机上での学習だけでなく、生徒が地域に出て、リノベーションされた古民家を訪問したり舞鶴で活動されている方の話を聞いたりすることで進路の選択肢の幅を広げ、舞鶴市の未来と自分自身の未来を考える授業である。

 舞鶴市は、近年、少子高齢化や人口減少が進むと同時に教育の中で舞鶴の魅力に触れる機会が減少し、中高生からは「この町から早く出たい」「この町には何にもない」という言葉が飛び交っているように感じる。そのような状況の中で高校生の間に少しでも舞鶴の魅力に気づき、舞鶴の人と繋がる機会を作ることで、舞鶴を出たとしても関係を持つ「関係人口」として、またUターンして来る子が増えることで舞鶴の活性化に貢献するとともに、生徒の進路における選択肢の幅を広げることにも繋げる。

(ゴール目標)三年生で行う「卒業研究」に繋げ、卒業後の進路に結びつけること。

【具体的な授業】

「日星ゼミA」(一般社団法人KOKINとの共同プログラム)

対象:1年1組 1年2組 10名(全4時間)

(ねらい)「舞鶴市の未来と自分自身の未来を考える」

(1時間目)

 一般社団法人KOKIN代表の大滝様をお招きし、KOKIN立ち上げの動機や舞鶴市の現状と展望について学ぶ。大人から見た舞鶴を知ることで違う視点から舞鶴を再発見する。

(2,3時間目)

 実際に1限目で聞いたお話を「自分の目」で見るべく、フィールドワークを行い、肌で感じることでリノベーションされた古民家やカフェ等を身近に感じ、より地域について知る。また、iPadを使用しメモや写真に収めることで4限目の授業のアウトプットに繋げる。

(4時間目)

 授業を通じて感じた事、考えた事を付箋に書き出し、言語化しアウトプットする機会を作る。授業の内容についての理解が深まるだけでなく、それを人に伝える能力も養う。

日星ゼミでの授業の様子(左上から1時間目、2,3時間目、右下4時間目)

「日星ゼミB」

対象:1年1組 1年2組 10名(全4時間)

(ねらい)「生徒たちの視野を広げる」「自己肯定感を育てる」

(特徴)1年学年団4名の先生が1時間ずつ担当し、「地域」「自己肯定」「SDGs」のテーマから1つを選びテーマに沿った授業を行った。

【具体的な授業】

(1時間目)

 舞鶴や京都北部の言語文化の特徴を学び、自分達の住んでいる地域の言語の素晴らしさを再認識する。

(2,3時間目)

 ルールライティングワークやコミュニケーションワークと呼ばれるグループワークを、アイスブレイクを交えて行い、「計画・行動・評価・改善」を学ぶ。個々が成長することでグループ全体の成長を促す相乗効果を得る。

(4時間目)

 SDGsの理解をSDGs塗り絵(SDSN Northern Europe)から学び、大人の塗り絵とよばれる複雑な模様の塗り絵を行うことによって、リラックスした状態を作り出し、自分自身の見つめ直しと自律神経を整える活動をする。

「日星ゼミC」

対象:1年1組 1年2組 10名(全4時間)

(ねらい)郷土学習の一環として、自分たちの住む街の歴史や地形、文化、産業、人物等を深く知る。意外と知らないことに気づき、私たちが住む地域に目を向ける。関心を持つことで郷土愛を深める。また多数の人たちに魅力を発信できる人材に育ってほしい。

【具体的な授業】

(1時間目)

 資料やインターネットなど活用し地域に関わる学習をしたあと、地域に関する問題(クイズ)づくりを行う。一人数問作成し、グループで整理し、最終的に全グループの問題をまとめ、ゼミ独自の郷土問題集を作成する。

(2時間目)

 校外へ出ての活動は、まだ制限されているため、まずは自分たちが入学してきた学校について知る。本校は、ミッション・スクールであり、戦争で校地が没収されたり、戦後は、重砲兵連隊の建物を借り受け、再スタートをするなど歴史とも深く関わってきた経過がある。学校内にも当時の面影を残す建物や記念碑など存在し、校内を巡りながら写真に収めたり、メモをとったりしながら学習する。

(3,4時間目)

 2時間目に学習した内容についてiPadを用いて、プレゼン用の資料を作成する。自身がどんな学びをしたか、それを他者にいかに伝えられるかなどを意識しながら作業を進めていく。全体での発表の機会を持ち、完成したものをみんなで共有したい。

※なお、活動終了時には郷土問題集を冊子にし、全員に配布予定。

(3)「SDGs・V市役所」

 V市役所の取り組みは本年で3年目となる。今年度は過去2年間にお世話になった舞鶴市危機管理防災課、生活環境課、広報広聴課から課題をいただいた。また、本年度の大きな収穫としては問題提起後に、実際にフイールドワークが行えたことである。

①「SDGs・V市役所①」(対象:1年生1組〜2組 78名)

4月22日(金)〜5月18日(水) 1−1② 1−2① 1−2③

5月25日(水)〜6月 3日(金) 1−1① 1−1③ 1−2②

「SDGsの考え方が地方創生にどのように役立つのか。地域の抱える問題を考える」

(1時間目) SDGsと地方創生の関係を知る。

(2,3時間目)「SDGs de 地方創生」カードゲーム実施。

(4時間目) 市役所の役割を知り、地域が抱える問題を考える。

「SDGs・V市役所②」・・・「フールドワークを通して地域の問題を考える」

①「SDGs・V市役所①」(対象:1年生1組〜2組 78名)

6月15日(水)〜6月29日(水) 1−1② 1−2① 1−2③

(1時間目) 市役所から課題提案 フィールドワークの立案

(2,3時間目) 課題を解決するのに役立つフィールドワークの実施

(4時間目)フィールドワークまとめ

〈市役所各課からの課題〉

危機防災課

  • ・「高校生の視点から若い世代(10代〜20代)が防災について、「知る」だけではなく「行動」に繋げられるような防災啓発・教育の手法を考えて下さい。

広報広聴課

  • ・私の思う舞鶴のいいところ「MYヅルいい」の景色や色などをSNSで同世代を中心に発信するのならどのツール(インスタグラム、ツイッターなど)を使用するのか。
  • ・自分がインフルエンサーになったと考え、「MYヅルいい」をSNSで発信して下さい。
  • ・投稿した内容について、反響の大きさなどを分析して下さい。

生活環境課

  • ・ごみ減量の取り組みモデルになってほしい。

これらの課題解決に向けてのフィールドワークを実行しその後、協議や分析を行った。

3 教科横断授業

5月30日の会議を受けて、1年生において、新教育課程に基づく教科横断授業を行った。

1学期

  • ・歴史総合「欧米の市民革命と西洋の衝撃」
  • ・英語コミュニケーション「Curry Travels around the World」を通して「平和とカレー」について
  • ・生物基礎「代謝」と数学「1次不等式」での「健康的なダイエットとは」について考えた。

「Metamoji Classroom」の利用により、教科間での教材の「見える化」が進み、教科横断が行いやすい環境となっている。

クラスボックスで他教科の教材が確認できる

4 評価

(1)総合的な探究の時間ルーブリックアンケート実施

(対象:1年生1組,2組)4月20日(水)実施

(2)総合的な探究の時間振り返りアンケート実施

(対象:1年生1組,2組)7月20日(水)実施

 SDGsに対して地元舞鶴に対して1学期間でどのように意識が変化したかアンケート調査を行なった。(Classi使用)

(3)教科横断、授業満足度、理解度アンケート実施(対象:1年生1組,2組)6月末実施

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ・SDGsと役所、企業、学びの関連についてマップなどを使って「見える化」すること。
    夏に「探究部」のメンバーを中心にマップを作成する。
  • ・自分の言葉で振り返る機会を多くしてそれを3年間の探究の財産として残せるようにすること。
  • ・1年生のプログラムは4時間1タームとなっている。1ターム終えるごとに振り返りの時間を自分言葉で振り返る時間を設定する。

本期間の裏話

 コロナが少し収束し、市役所職員と教員、生徒で「V市役所」フィールドワークに出た際に生徒の生き生きとした様子を見て、職員の方々に非常に喜んでいただけたことがとても印象に残った。市の課題解決という学びを生徒と共有したことの成果である。

本期間の成果

  • ・1年生「SDGs・V市役所」においてコロナ禍で2年間行うことができなかったフィールドワークが行え、実感を伴った学びにより課題を自分ごととしてとらえることができた。
  • ・2つの教科横断授業を実施することで、共通のテーマに基づき関連した内容と時間を設定でき、関心が広がり、課題をほりさげる学習になった。

今後の課題

  • ・1学期行った教科横断授業の成果と課題の洗い出し。
  • ・教科横断型授業のための教員研修。
  • ・2学期に行うB班「SDGs・V市役所」フィールドワークに向けて市役所職員と会議を持ってブラッシュアップをする。

今後の計画

  • ・1年生 バーチャル市役所(B班)実施
  • ・2年生 インターンシップ実施

成果目標

1年生 1学期:総合的な探究の時間で身につける力を理解しSDGsと地方創生について考える。
生徒が日星ゼミによって地元の魅力・課題に気づく。

2学期:V市役所で舞鶴市が抱える課題について探究活動を通じて解決策を考える。

3学期:V市役所報告会に向けてチーム一丸となって生徒がプレゼンテーション内容を考えまとめ、発表し自己評価、相互評価することで生徒自身の成長を実感し自己肯定感を育てる。

2年生 1学期:生徒がインターンシップに向けて働く意味について考え、SDGsと企業について考える。

2学期:インターンシップを通して働く意味について実感し、それを個人でまとめることにより地元企業の良さを発見し地元愛を育てる。

3学期:インターンシップ報告会を通して仕事を通じて街の魅力を発信し、持続可能な町にするためには何が必要かを通して自分の進路につなげる。

3年生 1,2学期:1年生2年生で学んだことをもとに自分の進路実現を目指す。

3学期:高校3年間の集大成として卒業論文を作成し発表する。

アドバイザーコメント
小柳 和喜雄 先生
関西大学
教授 小柳 和喜雄 先生

1.はじめに

 聖ヨゼフ学園日星高等学校の「総合的な探究の時間」はユニークな組み立てになっている。大きな枠組みとして、「進路学習」と「探究学習」の2つからなり、1学年から3学年まで通しで計画されている。詳細は学校の報告に記されている。

 2021年度は、主に2年生の授業を中心に観察させてもらい、2年生の通年のカリキュラムについて、学ぶ機会をいただいてきた。しかし1年生の通年カリキュラムについては、コロナ化の中での日程調整から、直接、その取り組み内容や生徒さんの様子をなかなか見る機会がなかった。そのため2022年度は、1年生を中心に、訪問の機会を頂くこととなった。昨年観察させていただいた2年生の学びの姿とどのように1年生の学びがつながるのか、計画されている内容を、実際に観察し、その姿を感じる機会となる。またこの1年生から、国の新学習指導要領の完全実施と関わる本校の新教育課程が開始される機会でもある。学校として、生徒の関係認識を養い、問いを掘り下げ事象を理解していく学びの経験を促し、探究的な態度を導くこと、そして教職員の各授業の内容を互いによく理解し合うことを導くことと関わって、教科横断的な授業にもチャレンジされている。それを有効にしていく道具の活用なども工夫している。この度の訪問では、その取り組み内容や実践について詳細な説明を伺うことができた。

2.研究テーマ・取り組みについて

 学校の報告書に説明されているように、この取り組みは試行を入れて3年目ということもあり、地域との連絡調整、協力体制もよく整えられている。2年生のインターシップの学びに向けて、1年生では、探究の手続きや地域を知ることなどが丁寧に組み立てられていることが良く理解できる。「総合的な探究の時間」は、とくに社会的実践への参加が重視されており、学校外の多くの人がこの実践を理解し、協力する体制のもとで実践が行われている。

 1年生総合的な探究の時間は、「日星ゼミ」「SDGs・V市役所」(今年度より新カリキュラムとなり2単位:年間46時間)で構成されている。

 その内訳は、(1)「日星ゼミ」として、A(「舞鶴の人と場所を知る」「舞鶴と自分の未来を考える」「選択肢の幅を広げる」)、B(「生徒たちの視野を広げる」「自己肯定感を育てる」:「地域」「自己肯定」「SDGs」のテーマから1つを選びテーマに沿った授業)、C(郷土学習の一環として、自分たちの住む街の歴史や地形、文化、産業、人物等を深く知る。意外と知らないことに気づき、私たちが住む地域に目を向ける。関心を持つことで郷土愛を深める)の3講座を各4時間 (計12時間)が組まれている。

 次に(2)「SDGs・バーチャル市役所」(舞鶴市危機管理防災課、生活環境課、広報広聴課から課題が出され、実際にフィールドワークなども通じて、それに応えていく)として(21時間)が組まれている。この度の訪問では、「SDGs・バーチャル市役所」のプログラムの1つである、1)SDGsと地方創生の関係を知る(1時間目)、2)「SDGs de 地方創生」カードゲーム実施(2,3時間目)を参観する機会を得た。

 最後に(3)進路学習として(13時間)が組まれている。

 ここから螺旋的に探究プロセスを経験し、探究的な学習のステップや方法を1年生からスパイラルアップ(積み上げ螺旋)で学んでいることがよくわかる。そして2年生のインターンシップにつながる地域の課題の理解、創世の工夫についてのイメージ形成、進路学習を通じて、学びを自分ごとにするプログラムの組み立ての工夫も感じられる。また各学習活動において、1人1台環境がこの取り組みに生かされていることがよくわかり、その積み重ねにより、生徒の情報活用能力が磨かれ、生かされていることが生徒の姿から実感できる。

3.本期間の取り組み

 コロナの影響もいくらか収まってきたこともあり、学校では、当初から企画していたフィールド調査も行いながら、1年生のプログラム「日星ゼミ」「SDGs・V市役所」をフルに展開されていた。

 学校の報告の写真に見られるように、1)「日星ゼミA」(一般社団法人KOKINとの共同プログラム:全4時間)のうち、実際に1限目で聞いたお話(「舞鶴市の未来と自分自身の未来を考える」と関わって、1時間目に聞いた一般社団法人KOKIN立ち上げの動機や舞鶴市の現状と展望のお話、および大人から見た舞鶴を知る)を「自分の目」で見るべく、フィールドワークを行い、肌で感じる機会に遭遇できた。生徒が、リノベーションされた古民家やカフェ等を身近に感じ、より地域について知り、iPadを使用し、メモや写真に収める場面に立ち会うことができた。生徒が本物と出会うときにそこで何が生じるか、生徒が様々なことを感じていることを、質問を多くしている姿から感じ取ることができた。

 また2)「SDGs de 地方創生」の学びとして、カードを用いながら、地方創生考えようとしている姿に遭遇できた。最初カードを使って考えることに戸惑っている姿も見られたが、すぐにグループでそのコツをつかみ、カードを使ってアイディアを出し合い、立場の違う役割を持つほかの生徒や教員に、グループが地域創世として考えていること、その実現に向けて投資を要請するために交渉している真摯な姿を目の当たりにすることができた。カードゲームなどの経験のある生徒たちの経験をうまく生かし、バーチャルだけれども、現実の企画立案や投資を募るのに必要な要素やプロセスを学ばせていく教育方法の工夫には驚かされた。

 一方で、教員チームは、SDGsに対して、地元舞鶴に対して、この学習の取り組みを通して、生徒の意識にどのような変化がみられるか、丁寧にアンケート調査も行ない、成果の評価と取り組みの評価も行っていた。

 そして、「Metamoji Classroom」を利用し、教科間での教材の「見える化」を進め、教科横断が行いやすい環境を構築していた。

 この期間の取り組みとして、多くの姿を見せていただいた。

4.今後の期待

 聖ヨゼフ学園日星高等学校の取り組みは、他の学校にはなかなかまだ見られないSDGsと地域連携を軸にした「総合的な探究の時間」のカリキュラム開発への挑戦とそれを効果的に運用していく方法や具体的な手続き、そしてその理論的裏付けを明らかにしようとされている。

 それには、1)3年間のこのカリキュラムの特徴の「見える化」。2)学年が上がるごとに探究活動や学びをスパイラルアップしていくことの「見える化」。3)一方で、1年生については3年目、2年生は2年目の研究となるため、教育実践について、スパイラルダウンをして深掘りされている点を見取り、その記録を残し、それに基づいて成果を説明していくことが期待される。

本期間(8月~12月)の取り組み内容

1 会議等

 特別研究指定校第8回会議 日時:10月19日(水)15時30分〜17時

 参加者は本校教員6名、関西大学 小柳教授、パナソニック教育財団 石井様。第5回訪問指導後の会議となった。

 小柳教授からは、

  • ・アプリを効果的に利用して、生徒が多くの情報を集め(コレクト)、その中から重要なものを選び(セレクト)、3年間を振り返る(リフレクト)ことができる。こうした活動により課題が「自分ごと」になり地方創生に繋がる。しかし「自分ごと」の中にも生徒1人1人の度合いが生徒によって異なるのでそれを埋める手立てが必要である。

とアドバイスをいただいた。

2 総合的な探究の時間

1年 第5回アドバイザー訪問指導

「SDGs・バーチャル市役所(以後V市役所とする)」フィールドワーク   10月19日(水)

 V市役所「広報広聴課」チームのフィールドワークに関西大学 小柳教授、パナソニック教育財団 石井様に同行していただいた。

 「広報広聴課」から生徒に出された課題は以下の通りである。

  1. ・私の思う舞鶴のいいところ「MYヅルいい」の景色や色などをSNSで同世代を中心に発信するのならどのツール(インスタグラム、ツイッターなど)を使用するのか。
  2. ・自分がインフルエンサーになったと考え、「MYヅルいい」をSNSで発信して下さい。
  3. ・投稿した内容について、反響の大きさなどを分析して下さい。

この課題を解決するためのフィールドワークに同行していただいた。

(吉原の入り江)

(舞鶴親海公園)

(ふるるファーム)

(五老ヶ岳公園)

2年 インターンシップ

(9月8日(木),9月15日(木),10月6日(木),10月20日(木),11月10日(木))

 去年は、コロナの影響で5回のインターンシップを行うことができなかったが、今年度は予定通りの5回のインターンシップを行うことができた。12事業所に分かれ「働く意味」について考え、自分達の知らないところでの仕事や働き方などに気づく機会となった。

3年 卒業論文発表会

10月25日(火)〜11月15日(火) 卒業論文制作

11月22日(火) 卒業論文発表会準備

11月29日(火) 卒業論文発表

主なテーマ「未来を繋ぐ教育」「税金について」「高校3年間の歩み」「郵政民営化」など

 1,2年を聴き手に迎え、3年生の卒業論文発表会(個人プレゼンテーション)を行った。当日は講堂に14ブースを作り、14人×6ターンの順に回るポスターセッションをiPadで行った。3年生にとっては自分の3年間の歩みを振り返ると共に、人前で話す機会となった。内気な生徒も多いが、全員が発表するというチャレンジでもあった。iPadを駆使して画像や動画を取り入れ、聴き手にわかり易く説明していた。認められる経験は、自己肯定感を向上させ、また社会に出てからの自信に繋がると確信した。

 3学期に「V市役所報告会」(1年生)「インターンシップ報告会」(2年生)を行うにあたってのモデルとなった。また、それぞれ2年後、1年後の「卒業論文発表会」に向けてのゴールイメージを持つことができた。

アドバイザーの助言と助言への対応

 生徒が課題を「自分ごと」として深く考察できるようにすることが日星高校の今後のテーマである。

 3年間の「総合的な探究の時間」のプログラムが完成し、それを実行することができた。  様々なアプリを効率的に活用していくことはもちろんであるが、生徒達が「自分ごと」に落とし込めるように、教員全体で3年間の教育課程を振り返り、それを学年ごと、プログラムごととマクロ(3年間)からミクロ(プログラムごと)に再構築していくこと、各プログラムが分断されたものになるのではなく繋がりを大切にすること。

 アウトプットの方法に関しては、各プログラムを担当している先生に委ねている場面もあるため、アウトプットの方法を考え、グループの考えをもとに個人で考える機会を多く持つことにより「自分ごと」として捉えることができる。

本期間の裏話

 クラウドファンディングで資金を調達し商品開発を行った「ヅルいいプリン」が商品化され、9月19日、「舞鶴赤れんが倉庫」で行われたイベントで発売された。当日は開発した生徒が売り手となり250本を販売し完売した。現在は舞鶴市内に2店舗で販売している。予定数を完売すれば、市内小学校へプレゼントしたいと考えている。

本期間の成果

  • ・3年間の「総合的な探究の時間」のプログラムが完成したこと。
  • ・3年生の卒業論文発表会で、生徒のプレゼンテーション能力の向上と自己肯定感が高まったこと。
  • ・舞鶴のイメージアップコピーである「ヅルいい」をプリンの開発やP Rに市役所も一端を担い「広報まいづる」や各社新聞にも掲載された。目標とする「産・官・学」が手を組んで「地方創生」を「自分ごと」として学ぶ1つのモデルケースとなった。

今後の課題

 生徒たちが「地方創生」の課題をより「自分ごと」として捉えられるように3年間のプログラムを改良する。そのためにも教員の意識を揃える必要がある。もう一度、SDGsの考え方の研修を行い、ねらいと方法を再検討する。それに基づきプログラムを再構築する。

今後の計画

  • 1年生 V市役所プレゼンテーション(グループ)
  • 2年生 インターンシッププレゼンテーション(個人)
  • 3年生 卒業論文をまとめて記録化する(次年度へと引き継ぐ)

成果目標

1年生 1学期:総合的な探究の時間で身につける力を理解しSDGsと地方創生について考える。生徒が日星ゼミによって地元の魅力・課題に気づく。

2学期:V市役所で舞鶴市が抱える課題について探究活動を通じて解決策を考える。

3学期:V市役所報告会に向けてチーム一丸となって生徒がプレゼンテーション内容を考えまとめ、発表し自己評価、相互評価することで生徒自身の成長を実感し自己肯定感を育てる。

2年生 1学期:生徒がインターンシップに向けて働く意味について考え、SDGsと企業について考える。

2学期:インターンシップを通して働く意味について実感し、それを個人でまとめることにより地元企業の良さを発見し地元愛を育てる。

3学期:インターンシップ報告会を通して仕事を通じた町の魅力を発信し、持続可能な町にするためには何が必要か考えることを通して自分の進路につなげる。

3年生 1,2学期:1年生2年生で学んだことをもとに自分の進路実現を目指す。

3学期:高校3年間の集大成として卒業論文を作成し発表する。

アドバイザーコメント
小柳 和喜雄 先生
関西大学
教授 小柳 和喜雄 先生

1.はじめに

 聖ヨゼフ学園日星高等学校の「総合的な探究の時間」はユニークな組み立てになっている。大きな枠組みとして、「進路学習」と「探究学習」の2つからなり、1学年から3学年まで通しで計画されている。詳細は学校の報告に記されている。

 これまで2年間は前学習指導要領に基づく教育課程に、学校裁量で試行的に「総合的な探究の時間」を行ってきたが、この1年生から、新学習指導要領の完全実施と関わって新たな学校の教育課程に明確に位置付けられ、その実施が開始された。また学校として、生徒の関係認識を養い、問いを掘り下げ事象を理解していく学びの経験を促し、探究的な態度を導くこと。そして教職員の各授業の内容を互いによく理解し合うことを導くことと関わって、教科横断的な授業にも取り組み、学期に1回あるテーマとかかわる数時間の授業も行われてきた。それを有効にしていくことに、生徒と教員の両者が情報の共有と活動の共有を図るために活用を工夫して用いている「Metamoji Classroom」の機能を活かし、クラウド上にポートフォリオが作られている。これにより教科間での教材の「見える化」を進め、教科横断が行いやすい環境を構築してきた。この度の訪問では、その取り組み内容や実践について、1年生のフィールドワークに同行しながら、詳細な説明を伺うことができた。

2.研究テーマと取り組みについて

 この取り組みは試行期を入れて3年目となる。地域との連絡調整、協力体制も、コロナ禍の中で、教員チームが積み上げてきた信頼関係を活かし、実践をよりよくしていこうとする努力の中で、それぞれのプログラムが実施されている。

 3年間の「総合的な探究の時間」カリキュラムとして、地域に生徒の目を向けさせ、自分自身何ができるか、自分はどうあるのかなどを少しずつ見つめさせる。探究のプロセスの中で、身につけ、磨いてもらう探究的な活動に求められる知識、技能も、ICTなどを活かし、取り組むテーマや課題も変わる中で、スパイラルに伸ばしていく工夫がされている。

 1年生から3年生かけて、探究の手続きや地域を知ることなどが丁寧に組み立てられていることが良く理解できる。とくに社会的実践への参加が重視されており、学校外の多くの人がこの実践を理解し、協力する体制のもとで実践が行われている。

 1年生総合的な探究の時間は、「社会を知る」をキーワードに、(1)「日星ゼミ」として、A(「舞鶴の人と場所を知る」「舞鶴と自分の未来を考える」「選択肢の幅を広げる」)、B(「生徒たちの視野を広げる」「自己肯定感を育てる」:「地域」「自己肯定」「SDGs」のテーマから1つを選びテーマに沿った授業)、C(郷土学習の一環として、自分たちの住む街の歴史や地形、文化、産業、人物等を深く知る。意外と知らないことに気づき、私たちが住む地域に目を向ける。関心を持つことで郷土愛を深める)の3講座を各4時間で組まれている。

 次に(2)「SDGs・バーチャル市役所」(舞鶴市危機管理防災課、生活環境課、広報広聴課から課題が出され、実際にフィールドワークを通じて、それに応えていく)が組まれている。

 最後に(3)進路学習が組まれている。

 2年生は、「社会に飛び出す」をキーワードとして、(1)「探究学習」として、町の課題を知る「課題研究」と仕事を知る「インターンシップ」が組まれ、(2)「進路学習」として、働く意味や社会貢献の意味を考える時間が組まれている。今年は、5回のインターンシップがすべて実施され(昨年までコロナの影響で全回の実施が困難であった)、12 事業所に分かれ「働く意味」について考え、自分達の知らないところでの仕事や働き方などに気づく機会の影響が可能となったと報告されている(学校からの報告参照)。

 3年生は、「社会に貢献する」をキーワードに、(1)「進路実現」と(2)「卒業論文発表」が組まれている。これまで1年生と2年生で積み上げてきた地域に関する情報や知識、進路について考えていることなども生かしながら、自身の問題関心から卒業論文に挑む構成になっている。詳細は、学校からの報告に記載されているように、主なテーマとして「未来を繋ぐ教育」「税金について」「高校3年間の歩み」「郵政民営化」など、その内容は、今までの学びを活かし、社会に開いているテーマが選ばれているのがわかる。

 また試行期も含め3年目になる取り組みのため、完成年度である3年生は、1、2 年を聴き手に迎え、卒業論文発表会(個人プレゼンテーション)が行われている。学校からの報告にあるように、3年生にとっては自分の3年間の歩みを振り返ると共に、人前で全員が話す機会となり、iPad を駆使して画像や動画を取り入れ、聴き手にわかり易く説明する機会となるように組まれている。3 学期に1年生は、「V 市役所報告会」、2年生は、「インターンシップ報告会」を行うにあたって、そのモデルを3年生の姿から得る機会が組まれているのは、まさに3年間を通した「総合的な探究の時間」の体系的なカリキュラムの工夫といえる。

3.本期間に同行した取り組みとかかわって

 この度は、上記1年生の(2)「SDGs・バーチャル市役所」(舞鶴市危機管理防災課、生活環境課、広報広聴課から課題が出され、実際にフィールドワークを通じて、それに応えていく)の取り組みのうち、バーチャル市役所「広報広聴課」チームのフィールドワークに参観する機会を得た。

 そこでは、1年生から螺旋的に探究プロセスを経験し、探究的な学習のステップや方法をスパイラルアップ(積み上げ螺旋)で学び、2年生のインターンシップにつながる地域の課題の理解、創世の工夫についてのイメージ形成し、原体験や問いが持てる工夫がなされている。「広報広聴課」からのミッションに応えていく活動は、まさに地域の課題の理解、創世の工夫についてのイメージをもち、自分に何ができるかなどを考える機会となっている。

 また各学習活動において、1人1台環境がミッションに応えるうえで生かされていた。生徒はタブレットをうまく活用し、取材した写真や動画、調査情報、メモなど、デジタルの記録を互いに移動中なども見せ合っていた。その中で、例えば「自分がインフルエンサーになったと考え、「MY ヅルいい」を SNS で発信」という条件下なら、どれが良いか相互批評をしている姿に遭遇した。情報の共有だけでなく活動プロセスで協同の姿が移動中でもみられ、タブレットを見せ合い、身を乗り出して語っている姿が見られた。このような主体的・対話的な学びの姿を引き出す工夫の積み重ねにより、生徒の情報活用脳能力が磨かれ、生かされていることが前回訪問から数か月経つ生徒の姿から実感できた。

4.今後の期待

 聖ヨゼフ学園日星高等学校の取り組みは、他の学校にはなかなかまだ見られないSDGsと地域連携を軸にした「総合的な探究の時間」のカリキュラム開発への挑戦とそれを効果的に運用していく方法や具体的な手続き、そしてその理論的裏付けを明らかにしようとされている。

 これまでの学校の成果として、1)3年間のこのカリキュラムの特徴の「見える化」。2)学年が上がるごとに探究活動や学びをスパイラルアップしていくことの「見える化」など、意識的に取り組み、実践を積み上げてきた。

 学校の報告にもみられるように、3年間の総合的な探究の時間のプログラムは、ある程度完成に近づいている。しかしだからこそ、この先は、取り組みから見えてきた生徒の姿により目を向け、さらなる取り組みの改善に向けた一歩が前進の行動が求められてくるだろう。生徒たちが「地方創生」の課題をより「自分ごと」として捉えられるようにするには、そしてその学びをより深い学びへと導いていくには何が必要か。3 年間のプログラムを参画している生徒の姿からより丁寧に見つめ、たえざる改善が求められるだろう。1年生については3年目、2年生は2年目の研究となってきていることを受け、その記録から、生徒の学びの姿、成長の姿や、伸びしろを見取り、それに基づいてどのような手立てが有効であったのか、など取り組みの評価を通じたプログラムの改善に挑んでいくことが重要となるだろう。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

1 会議等

職員研修(特別研究指定校第9回会議) 日時:2月15日(水)15時30分〜17時

 関西大学小柳教授、パナソニック教育財団 関戸様、石井様参加のもと本校の教員に対して「3年間の総合的な探究の時間の教育プログラム」を再確認し、次年度に向けてさらに発展させるために小柳教授からアドバイスをいただく時間を設けた。

 小柳教授からは

  • ・総合的な探究の時間と各教科の授業を「見える化」することにより、今、各教科担当、各学年内で分断されている教材を繋ぐことができる。それが生徒の「論理的な思考プロセスを構築させる力」「客観的な視点で多面的に分析・考察する力」「アイデアを飛躍させ仮説を形成する力」を育てる。
  • ・1年生については3年目、2年生は2年目の研究となってきていることを受け、各学年での振り返り、データ調査を行う。その記録から、生徒の学びの姿、成長の姿や、伸びしろを見取り、それに基づいてどのような手立てが有効であったのか、など取り組みの評価を通じたプログラムの改善に挑んでいくことが重要となる。

とアドバイスをいただいた。

2 総合的な探究の時間

1年生

1月12日(火)
福知山公立大学 准教授 杉岡 秀紀先生を招聘

『「プレゼンテーションの技法」〜聞き手に火をつけるプレゼン術〜』講演実施

 昨年に引き続き、福知山公立大学 杉岡准教授に講演を行なっていただいた。プレゼンとは何かについて講演を受けた後、プレゼンテーションの手本の映像を観た後、何が上手いと思うポイントだったかについてグループで議論し発表した。2月15日に行われたプレゼンテーション後の生徒アンケート中で、この講演で教えていただいたことに留意しながら、スライド作り、プレゼンテーションを行なったという声も多くあり、この講演が生徒に有効だったことが伺えた。

第6回アドバイザー訪問指導
2月15日(水)「V市役所報告会」

 関西大学 小柳教授、パナソニック教育財団 関戸様、石井様、舞鶴市役所 亀井様を招いて「V市役所報告会」を行なった。危機管理防災課、広報広聴課、生活安全課から出された課題について自分たちが考えた課題解決方法を発表した。

2年生

2月2日(木)「インターンシップ報告会」

 当初1月26日に行う予定だったインターンシップ報告会がコロナウイルスによる学級閉鎖のため2月2日に延期となりお世話になった事業所を招いての報告会とはならなかった。

 参加いただいた先生の多くから「昨年度よりも内容が濃くなっている」と評価をいただいた。

 当日は1年生も参加し、先輩のプレゼンテーションを見ることにより、その後に行われる「V市役所報告会」に向けてイメージしやすい環境を整えた。

アドバイザーの助言と助言への対応

総合的な探究の時間と各教科の授業の「見える化」について

 I C Tの活用(Metamoji Classroom等)により教科間での教材の「見える化」は進んでいる。今後、各教科、各学年での具体的な教授内容や教授方法等を「見える化」することにより繋がりができる。その繋ぎ役としてSDGsを活用したい。

総合的な探究の時間の評価を通じたプログラムの改善について

 アンケート等の数値データから得られるものと、実際にこのプログラムを行なっていただいた先生・生徒の感想・意見をもとに常に改善を加えていきたい。

本期間の裏話

 2月15日の職員研修を受けて翌日、総合コース会議の中で「3年間の総合的な探究の時間」の評価できる点、改善点などが話し合われた。多くの先生方の関心が得られている証拠である。

本期間の成果

  • ・1年生「V市役所報告会」2年生「インターンシップ報告会」を無事終えて3年間の「総合的な探究の時間」のプログラムが完成したこと。
  • ・1年生、2年生の総合的な探究の時間を通してほとんどの生徒がルーブリックを使った自己評価で数値が向上していたこと。

2年間の成果

  • ・3年間の「総合的な探究の時間」のプログラム完成
  • ・総合的な探究の時間ルーブリック評価の完成
  • ・新カリキュラムにおける教科横断型授業の実施

今後の課題(計画)

 3年間の「総合的な探究の時間」のプログラムが完成した。しかし、プログラム作成が目標ではない。これからますます困難になる時代を生き抜くため「論理的な思考プロセスを構築させる力」「客観的な視点で多面的に分析・考察する力」「アイデアを飛躍させ仮説を形成する力」を身につけさせたい。また、本校の教育理念である。「人と共に生き・人のために役立つ・心豊かな人に」に挙げられる「豊かな感受性」や「優しさ」「気遣いや気配り」ができる生徒を育てたい。

 本校は昨年11月にユネスコスクール加盟した。他の加盟校との交流、地域社会やN P O等との連携を更に発展させること。本研究を基にESDの推進拠点となれるよう職員研修等を充実させたい。

2年間を振り返って

 2020年度に一般助成、2021年度に特別研究指定校を受け3年間で「総合的な探究の時間」のプログラムが完成した。3年間のプログラムを経験した教諭がまとめた成果を以下に示す。

1年生 高校生になると、ほとんど座学で、地域の生活と切り離されてしまっていた。
この活動を通して、実際に地域に出かけ、地域の現状や課題を知り、それを解決していく方法を考える機会となった。また、地域で活動している若者や企業家の姿から、生き方のモデルとしても大きな示唆を得てきた。

2年生 インターンシップにおいては、回数は少なかったものの直接、仕事を学び、体験することによって豊かな学びを行なった。
通信業務の体験をした生徒は、「自分たちの見えないところで、こんな仕事があり、こんなふうに心を配って、仕事をしてくれているおかげで、自分たちの生活があると言うことに気がついた。」と感想に書いていた。
また、企業とコラボレーションして、「ズルいいプリン」を作成するなどアイデアを形にする体験。また、目的が明確であれば応援してくれる人がいることに気付かされたクラウドファンディングなど高校時代に体験したことは、これからの人生にきっと生きてくるであろう。

3年生 3年間の積み重ねの中で、ICTを活用する力、情報収集―整理―まとめー発表などのそれぞれの場面のスキルを全員が身につけてきた事は素晴らしいものだと思う。
卒業研究発表では、全員が自分のテーマに沿って数名のグループに報告をしたが、iPadをうまく使い、プレゼン資料を作成。普段、あまり目立たない生徒も、堂々と自分の高校生活の体験を語っていた姿は、感動であった。

成果目標

1年生 1学期:総合的な探究の時間で身につける力を理解しSDGsと地方創生について考える。
生徒が日星ゼミによって地元の魅力・課題に気づく。

2学期:V市役所で舞鶴市が抱える課題について探究活動を通じて解決策を考える。

3学期:V市役所報告会に向けてチーム一丸となって生徒がプレゼンテーション内容を考えまとめ、発表し自己評価、相互評価することで生徒自身の成長を実感し自己肯定感を育てる。

2年生 1学期:生徒がインターンシップに向けて働く意味について考え、SDGsと企業について考える。

2学期:インターンシップを通して働く意味について実感し、それを個人でまとめることにより地元企業の良さを発見し地元愛を育てる。

3学期:インターンシップ報告会を通して仕事を通じた町の魅力を発信し、持続可能な町にするためには何が必要か考えることを通して自分の進路につなげる。

3年生 1,2学期:1年生2年生で学んだことをもとに自分の進路実現を目指す。
高校3年間の集大成として卒業論文を作成し発表する。

アドバイザーコメント
小柳 和喜雄 先生
関西大学
教授 小柳 和喜雄 先生

 聖ヨゼフ学園日星高等学校の「総合的な探究の時間」は、大きな枠組みとして、「進路学習」と「探究学習」の2つからなり、1学年から3学年まで通しで計画されている。詳細は学校の報告に記されている。

 この度の訪問では、1年生の「日星ゼミ」(社会を知る・地域を知る・自分を見つめる)と「SDGs・バーチャル市役所」(舞鶴市危機管理防災課、生活環境課、広報広聴課から課題が出され、実際にフィールドワークを通じて、それに応えていく)の取り組みと関わって、今まで、関心を持ち、調べ、明らかにしてきたことの成果発表の場(グループごと)に立ちあうことができた。

  1. 発表する内容へどう聞き手の関心を誘うかの工夫(見やすく視聴覚に働きかけるスライドの作り方、聞き手の参加を促す語りかけ・問いかけの工夫、身体的な表現・実際にやって見せ具体的なイメージを与える工夫、調査データなど数値情報をグラフ化し伝えたいことの説得性を高める工夫、発表内容の組み立て・構成の工夫など)が良く考えられていた。
  2. 多くの人の前で話すことは、個人差もあり容易なことではない。しかし全員が自分の役割を果たし、機器トラブルなどに関してもグループで支え合って、やり遂げる姿が見られた。

 これまで積み上げてきた成果が、聞き手にも、また1年自身にも実感できる場となっていることが感じられた。

 このような成果をもたらしたプログラムの仕掛けとしては、2年生のインターンシップにつながる地域の課題の理解、創世の工夫についてのイメージを形成し、原体験や問いが持てる工夫がなされていること。「広報広聴課」からのミッションに応えていく活動など、まさに地域の課題の理解、創世の工夫についてのイメージをもち、自分に何ができるかなどを考える機会となっていること。また各学習活動において、1人1台環境がミッションに応えるうえで生かされる機会となっていること、などがあげられる。

 そして生徒はICTをうまく活用し、取材した写真や動画、調査情報、メモなど、デジタルの記録を互いに共有し、目的に向けてそれらを活用しながら論議することが日常化していること。情報の共有だけでなく、協同で活動し、分業を協業につなげ、伝えたいことを一緒に作っていくプロセスを大事にすることが、あげられる。

 さらに、振り返りの機会保証として、ルーブリックが開発されており、それがまた生かされ、生徒自身も教員も、その姿を確認し、成果と課題を見つめている点も、重要な仕掛けの1つになっていることが、あげられる。

 聖ヨゼフ学園日星高等学校は、SDGsと地域連携を軸にした「総合的な探究の時間」のカリキュラム開発への挑戦とそれを効果的に運用していく方法や具体的な手続き、そしてその理論的裏付けを明らかにしようとしてきた。

 試行期も含め3年の取り組みを経て、上位の1年生の姿、そして報告書に記されている2年生の姿、完成年度である3年生の姿は、3年間を通した「総合的な探究の時間」の体系的なカリキュラムの成果であることが確認できる。1年生から螺旋的に探究プロセスを経験し、探究的な学習のステップや方法をスパイラルアップ(積み上げ螺旋)で学ぶ経験は、3年間のプログラムの基盤を形成する上で意味を持つことが確認できる。

 学校の報告にもみられるように、3年間の総合的な探究の時間のプログラムの遂行は、それを担ってきた全教員にその手ごたえや情報を共有することを可能にした。

 これにより3年のプログラムは完成となるが、これをver.1として、取り組みから見えてきた生徒の姿により目を向け、さらなる取り組みの改善に向けた一歩が前進の行動が求められてくるだろう。生徒たちが「地方創生」の課題をより「自分ごと」として捉えられるようにするには、そしてその学びをより深い学びへと導いていくには何が必要か。3 年間のプログラムを参画している生徒の姿からより丁寧に見つめ、今後もたえざる改善が求められるだろう。1年生については3年目、2年生は2年目の研究となってきていることを受け、その記録を改めて見つめ、比較し、活かし、生徒の学びの姿、成長の姿や、伸びしろを見取り、それに基づいてどのような手立てが有効となるか、など取り組みの評価を通じたプログラムの改善に挑んでいくことが、ver.2に向けて重要となるだろう。