国立大学法人神戸大学附属小学校

第48回特別研究指定校

研究課題

ICT機器を活用した金融教育カリキュラムの開発と有効性検証
~開発アプリ「KUペイ」を用いた異年齢集団による「附小マーケット」の実践を通して~

2022年度04-07月期(最新活動報告)

最新活動報告
本校では,一人一台のiPadを整備している。iPadは,これまでも各学年......

アドバイザーコメント

豊田 充崇 先生
まずは、本件の研究内容のオリジナリティについてですが、当財団の......

国立大学法人神戸大学 附属小学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 兵庫県 国立大学法人神戸大学 附属小学校
アドバイザー 豊田 充崇 和歌山大学 教授
研究テーマ ICT機器を活用した金融教育カリキュラムの開発と有効性検証
~開発アプリ「KUペイ」を用いた異年齢集団による「附小マーケット」の実践を通して~
目的 本研究は,児童会活動として行う本校の全校単元「附小マーケット」の学習において,タブレット端末のアプリにおける電子マネー(本校独自通貨「KUペイ」)を用いた金融活動やクラウドファンディングを通したお店の予算獲得の活動を取り入れることにより,情報リテラシーや金融リテラシー,アントレプレナーシップを併せ育むことを意図している。具体的な目的は,以下の通りである。
  1. ①本校の基盤である縦割り班(特別活動における児童会活動)を単位とし,「附小マーケット」の全校単元を行い,6年間の継続的系統的な金融教育カリキュラムを開発する。その際,他教科との関連もカリキュラムに位置付け,教科横断的な学びを実現する。
  2. ②「附小マーケット」に向けた準備を通して,人と協働する楽しさや大変さを味わうことと,その結果としての金銭の授受を電子媒体によって行うということを合わせて経験することで,電子媒体を通した金銭の授受に対してもリアルな実感を伴った金銭感覚を育む。
  3. ③電子決済にアンケート機能を搭載したアプリを開発することで,稼げた金銭の多寡によってのみ自分たちの活動を評価するのではなく,お客側からのフィードバックを適時把握し,それを踏まえて班ごとに成長や改善を目指すという自己評価活動のあり方を確立する。
  4. ④保護者もお客として学習に参加し,アンケートを通して子どもたちの活動にフィードバックを行うことで,学校と保護者が学習の目的を共有した上で全校的な自治的活動に参画し,共に学校すべての子どもを育む教育活動を推進する。
  5. ⑤各班の予算をクラウドファンディングの結果によって追加する活動を行うことで,新しいアイディアを生み出す面白さや主体的挑戦的な姿勢を育む。
現状と課題 ≪ICT環境の現状と課題≫
児童の一人一台のタブレット端末(iPad)および,校内無線lan(一部の教室を除く)が整備されている。ただし,教員用タブレットは数台の共有タブレットを必要に応じて使用しており,全教員分が整備されていない。また,各教室には電子黒板が設置されいる。様々な教科の学習において,積極的にICT機器を使用している他,児童アンケートの実施や児童への資料共有等にもタブレット端末を活用している。また,保護者アンケートや欠席連絡,学校からの情報発信もすべてデジタル化しており,児童,保護者ともにICT機器の活用に積極的である。児童の基本的なICT環境は整っているため,今後はICT機器を活用し,各教科学習のほか,リテラシー教育,生活指導,特別活動,教育家庭と学校の協働にも積極的に取り組んでいく必要があると考えている。

≪特別活動の現状と課題≫
単元「附小マーケット」は,今年度が初めての取組みとなるが,その基盤となる縦割り班には,長年,学校として取り組み,実績を積み上げてきた。そのため,全校的に班長を中心とした班運営を行う教育活動が確立されている。一方で,教育活動のプログラムが定番化していくことによって児童の創造性を発揮する場が減少していることから,より縦割り班の仲間と協働的・創造的に取り組むことができるプログラムを設定し,主体的で挑戦的な姿勢を育んでいく必要があると考えている。

≪金融教育の現状と課題≫
金融に関する学習としては,家庭科や生活科,道徳など,各教科において学習指導要領の学習内容に基づき,個別に行ってきた。しかし,各教科での学びを関連付けながら金融教育としてカリキュラムを体系化することはできていない。今後は,「附小マーケット」を核にしながら,各教科での金融に関わる学習内容を金融教育としてカリキュラム整備を行いたい。
学校情報化の現状 ICT機器の整備については,十分に整っている。また,校務支援システムを中心に,校務の情報化も急速に進めてきた。今後は,情報モラルやプログラミングといった情報教育や,ICT活用による学習支援の推進など,ソフト面の充実に力を注いでいきたい。
取り組み内容 本研究は,1~6年生で構成する縦割り班ごとに各自のアイディアを基に出店し,全校で「附小マーケット」を創り上げるという全校単元において実践する。本校では,年間を通して児童会活動に取り組んでおり,運動会や遠足,日々の清掃活動もすべて縦割り班で行っている。各班の班長は,定期的に班長会議を開いて班運営や学校全体の実態について話し合い,年間を見通した計画的な班づくりに取り組んでいる。また,班長会議を担当する教員の役割は校務分掌に位置づけられており,全教員と班長との橋渡しを行いながら,児童会活動の運営をリードしている。このような緻密で組織的な児童会活動において,先述の現代の諸課題に対応するべく「附小マーケット」の単元を新設したいと考えた。「附小マーケット」は,次のような展開を想定している。
  1. ❶班ごとにお店のアイディアを出し合う。
  2. ❷全校で集まって各班がお店の内容をプレゼンし合い,児童同士が互いにクラウドファンディングを行う。
  3. ➌クラウドファンディングの結果に応じて予算が加算され,その予算の範囲内で具体的な出店の準備を進める。
  4. ❹「附小マーケット」を開催し,お店側とお客側を交代して経験したり,保護者をお客として招待したりする。「附小マーケット」におけるお客側の支払いは,タブレット端末のアプリを通して行う。アプリ内では支払いと同時にアンケートが行える機能をつけることで,お客側が感じた嬉しさや満足感とその理由をお店側に適時フィードバックする。
  5. ❺お客側から受け取ったフィードバックの内容を班の仲間と読み合いお店の運営に反映させたり,「附小マーケット」の準備や当日の自分たちの頑張りを振り返ったりすることを通して,班の仲間と一緒に活動を創り上げたことを喜び合ったり嬉しく感じたりする。
成果目標 本研究の目的の1~5それぞれについて,以下のように成果目標を想定している。
  1. ①児童会活動としての単元「附小マーケット」と他教科における6年間の金融教育カリキュラムを作成する。
  2. ②本研究の事前アンケートにおいて把握した児童の金融リテラシーの実態に合わせた実践を行う。
  3. ③単元を通して用いる学習カードに,お客側からのフィードバックが自分のお店屋さんにどのように生きたのかを記述できる欄を設け,自分たちの成長や改善はどのようなことが要因となっていたのかを自覚できるようにする。
  4. ④「附小マーケット」当日だけでなく,保護者が懇談会や通信等を通して,本研究を理解し学校教育に関わった実感を得る機会を設ける。
  5. ⑤各班のお店のアイディアを互いに知り合う機会を複数回つくり,新たなアイディアを創出することの面白さを感じられるようにする。
助成金の使途 アプリ開発費、iPad64GB Wi-Fiモデル、発話の文字起こしの委託費、先行実践の調査旅費他
研究代表者 田淵 知紗
研究指定期間 2022年度~2023年度
学校HP https://www.edu.kobe-u.ac.jp/hudev-akashie
公開研究会の予定
  • ・1年次 2月…全校単元「附小マーケット」の実践発表および他教科における金融教育の先行実践の公開
  • ・2年次 8月頃…本研究の実践発表もしくは投稿(日本特別活動学会を予定)
  • ・2年次 11月…アプリを活用した金融活動(クラウドファンディング,附小マーケット当日)の実践公開
  • ・2年次 2月…全校単元「附小マーケット」の取組についての成果発表の実施

本期間(4月~7月)の取り組み内容

1.ICT機器の積極的活用
…デジタルポートフォリオ,ICTを活用した取組みの保護者向け発信

【デジタルポートフォリオ】

 本校では,一人一台のiPadを整備している。iPadは,これまでも各学年様々な学習で使用してきたが,今年度はより積極的に活用していくことにした。その取組みの一つとして,全校で行っている「デジタルポートフォリオ」がある。

 小・中学校においても,キャリア教育の他,総合的な学習の時間を中心に,ポートフォリオが様々な教育活動で取り入れられるようになってきている。また,最終的な結果だけではなく,学習のプロセスを蓄積することで自分の学びを総体的に捉えられるという点で,評価活動にポートフォリオを導入することの意義は大きい。しかし,紙媒体でポートフォリオを作成するには,児童にとっても教師にとっても負担がかかる面があった。

 そこで,ICT機器を活用することで,特に低年齢の児童や発達に困難を抱える児童にとって,従来のポートフォリオ作成では大きな負担となっていた,ワークシートや資料等の整理への苦労を軽減したいと考えた。また,ICTを活用することによって児童の負担が軽減されることは,教育活動を支援する教員にとっての負担が軽減されることにも繋がる。作成作業自体への負担感を軽減することで,ポートフォリオの内容に対する支援の質を高めていきたいと考え,ICTを活用した新たなポートフォリオの作成と運用に取り組むこととした。

【ICTを活用した取組みの保護者向け発信】

 各教科の学習でも,ICTを積極的に取り入れて授業を行った。デジタルポートフォリオや各教科での様子を各学年が「学年通信」にまとめることで,学校が積極的にICTを活用して授業を行っていること,また,どのように活用しているかの具体を保護者に向けて発信した。

2.ICTを効果的に活用する授業づくりの工夫と実践公開による効果検証

 ICT機器の積極的な活用を全学年で推進してきたが,具体的にどのように活用することが効果的なのかを検証する必要があると考えた。そこで,ICTを活用した授業の参観およびその事後検討を校内の授業研究として行った。

  • ・日時:2022年6月16日(木)14:45-15:30
  • ・学年:第3学年
  • ・教科・単元:音楽科「映像から生まれる音を楽しもう」
<実践授業の概要>

 前時は,映像と音楽の関わり合いに興味を持ち,曲に当てはまる映像を予想したり,映像にあてはまる曲を予想したりする活動に取り組んだ。曲だけを聞いて頭の中でイメージをもつ鑑賞の授業とは異なり,映像を見ながら曲を聞いたり,曲を聞きながら映像を選んだりすることで,映像から音色や大きさ,タイミングをより具体的に捉えて聞くことができた。

 本時では,なかでも音色に着目し,自分が選んだ映像に合う音が出る楽器を選ぶという活動を行った。様々な種類の楽器を鳴らしている動画をiPadで配信し,子どもたちが自分のiPadで一つひとつの楽器の音を聞きながら,映像に合った音色の楽器を選ぶことができるようにした。

<事後検討で挙げられたICT機器の効果>
  • ・映像によって子どもたちの思考内容が焦点化されていたが,それがまさに音を出すタイミングや音色といった本時で着目させたいポイントとなっていた。その要因は,授業の発問と映像の切り取り方や提示の仕方がしっかりと繋がっていたことにあった。
  • ・どのような音色がいいのかを考えながら,映像を何度も繰り返し見ている子どもたちがいた。自分のペースで必要に応じて繰り返しみることができるのはICT機器を活用することの良さだった。
  • ・iPadから出る音の大きさが程よく,一人ひとりが音をじっくり聞いて吟味することができていた。
  • ・映像を見ながら音色を選ぶ際に,自分の選んだ映像には合っていないと判断した音色と,合っていると判断した音色の動画を区分してロイロノート上で整理することができるので,視覚的に自分がどの音色を候補にしているのかが分かりやすくなっていた。
  • ・次時以降も,必要に応じて映像や音色の動画を繰り返し見たり,振り返って見返したりすることができる。学習をいつでも振り返ることができるという点がICT機器の良さである。
  • ・曲を聞いて頭の中でその情景を想像するということが鑑賞の授業のイメージであり,鑑賞の授業=分かりにくいという印象があったが,映像が入ることで何を考えるとよいのかが可視化され,非常に分かりやすくなっていた。

3.金融教育の学習効果を測るアンケートの開発過程

 本研究のテーマは,「ICT機器を活用した金融教育カリキュラムの開発と有効性検証」であるため,金融教育の有効性を測ることができる調査の開発を行う必要があると考えた。そこで,金融教育の事前と事後でどのように金銭感覚やお金の仕組みに対する興味関心が変化しているのかを測るアンケートを作成した。

 アンケートの作成にあたっては,校内の特別活動部の教員を中心として,繰り返し検討を重ねた。電子マネーやスマホ決済の使用経験の度合いによって経験群を分け,それぞれの場合において,お金の使い方やお金に対する意識,また,お金の流通の仕組みや電子マネー・スマホ決済の仕組みに対する興味関心を問うアンケートを作成した。

 本アンケートは,金融教育の事前調査として,7-8月の期間に児童と保護者を対象に実施をする。そして,本校の金融教育の根幹である全校単元『附小マーケット』を終えた後の12月に,事後調査として同じアンケートを実施することを予定している。事前調査と事後調査を比較することで一年間のなかでの金融教育の効果を測ることができると考えている。さらに,本アンケートを来年度も同時期に行うことで,一年次と二年次の経年変化を捉えるとともに,一年次の効果の持続程度も測定していきたいと考えている。

 また,保護者にも同じ内容のアンケートに協力いただくことで,金融教育の効果がご家庭にどの程度影響を与えているのかをも明らかにしていきたいと考えている。

4.本校の金融教育の根幹となる全校単元『附小マーケット』で用いるアプリ「KUペイ」の開発過程

 アプリ「KUペイ」は,以下のような手順で使用することをイメージし,開発をしている。

  1. 1.教員が管理画面からチャージ用のQRコードを作成する
  2. 2.児童が自分の端末でチャージ用QRコードを読み取り,お金をチャージする
  3. 3.お客側の児童がお店に行き,サービスや商品の金額を入力し,その情報が含まれたQRコードを作成する
  4. 4.お店側の児童が3で作成したお客側の児童のQRコードをお店側の端末で読み取り,売り上げ金とアンケートの回答を受信し,情報をお店側の端末に蓄積する
  5. 5.商品の受け渡し後,「売買成立」ボタンを押すことでお客側の児童の残金を減らす

 4-7月期において,特に検討したのは,「4」における「お客さんからのアンケート」機能の具体的な内容であった。特にアンケート内容の抽象度について,繰り返し検討を行った。アンケートの内容の具体性において,精度が上がると,お店側の改善に直接的に繋がるフィードバックが期待できるが,その一方で,本アプリの活用場面が限定的になるという問題があった。検討を行った結果,今後,アプリを広く公開した際の汎用性を高く維持するためにも,アンケート項目の内容を規定せず,番号だけの設定に留めることとした。また,アンケートには,自由記述ができるコメント欄も設けることにした。さらに,お店側の端末では,各項目について「全くそう思わない,あまりそう思わない,そう思う,とてもそう思う」が各々どれくらい回答されているのかの数が分かる(集約できる)機能を搭載していくこととなった。

アドバイザーの助言と助言への対応

1.金融教育の学習効果を測るアンケートの開発過程について

 研究開始当初,アンケート調査を行うことは予定していたものの,どのようなアンケートを作成するかの具体は決まっていなかった。しかし,アドバイザー訪問の際,電子マネーやスマホ決済の利用経験群ごとに調査をしてはどうかというご助言をいただいた。そのご助言を受け,実際のアンケートは,経験群を区分するアンケートを含めた二部構成とした。

2.先行研究の探し方について

 小学校での金融教育の事例は非常に少なく,先行研究の見つけ方に苦労した。アドバイザー訪問では,豊田教授のご紹介により,先行研究として二校の実践取組みを知ることができた。これらの学校での取組みの具体を調べることを通して,クラウドファンディングを教育活動に取り入れることの利点を再確認することができた。

3.マーケティングリサーチ「消費者の声」のデータ集計方法について

 本研究では,メインとなる活動として,『附小マーケット』という全校単元を開発している。『附小マーケット』では,各お店の会計時にお客さんからアンケートに答えてもらうことで,その後のお店の改善に活かしていくという活動場面を設定している。お客さんからのフィードバックは,基本的には開発中のアプリ「KUペイ」にアンケート機能を搭載することで実現していこうと考えている。アドバイザー訪問では,独自開発のアプリの他にも,手軽にフィードバックを行うことができる既成のアプリを紹介いただいたため,金融教育の活動内容に合わせて,搭載された機能によって,より適切なアプリを組み合わせて活用していきたいと考えている。

本期間の裏話

 5月。入学して間もない一年生が初めて学習でiPadを使用した。初めてiPadを使用したのは,特別活動の時間であった。タブレット端末使用への慣れ・不慣れの実態は,特に一年生においてはこれまでの生活経験によって幅があるが,iPadを学習で使うことに大きな期待感を抱き,楽しみにしていることは全員の表情から見取れた。その後も,学習でiPadを使うことを心待ちにし,一番最初にiPadを使う機会となった「特別活動」の時間になる度に,「今日もiPad使うの?」と嬉しそうに聞きにくる一年生の姿がたくさん見られる。

本期間の成果

  • ・ICT機器の活用が一層推進された。一年生の子どもたちを含め,iPadやロイロノートといったICT機器を使いこなす姿が日常的に見られるようになっている。学習場面に限らず,全校行事や特別活動,給食や生徒指導に関する啓発などにおいても,ロイロノートのアンケート機能や配信機能などを積極的に活用している。
  • ・金融教育の効果を測る調査アンケートが完成した。また,本アンケートを実際にロイロノート上で配信し,アンケート調査の実施を進めていくことができた。
  • ・アプリ「KUペイ」の内容が決定し,試作段階へと進むことができた。現在,プロトタイプのアプリ作成段階となっている。

今後の課題

  • ・金融教育アンケートを回収し,その結果から,金融教育前段階における電子マネーやスマホ決済の経験群ごとのお金の使い方やお金に対する意識,また,お金の流通の仕組みや電子マネー・スマホ決済の仕組みに対する興味関心の実態を分析していく。
  • ・アプリ「KUペイ」について,今後はプロトタイプの形でアプリの内容詳細を検証していく。
  • ・今回は保護者への取組み発信として,学年通信を通したICT機器の活用の様子を紹介したが,さらに広く研究成果を発信していく場として,HP上における本研究の取組ページを開設していく必要があると考えている。

今後の計画

8-9月

  • ・児童/保護者事前調査アンケートの結果を分析する。
  • ・10月からのアプリの運用に向け,さらにアプリの内容詳細を検討していく。
  • ・『附小マーケット』の実施計画について,内容詳細を検討していく。

10-11月

  • ・『附小マーケット』を実践する。
  • ・子どもたちの準備プロセスと当日のアプリ活用の様子についても,ICT機器を活用して記録する。

12月

  • ・児童/保護者を対象に,金融教育事後調査アンケートを実施する。
  • ・ICT機器を活用した他教科における金融教育カリキュラムを作成する。

1月

  • ・児童/保護者事後調査アンケートの結果を分析する。

2月

  • ・全校単元『附小マーケット』の実践発表および他教科における金融教育の先行実践を公開する。

気付き・学び

  • ・校内で実践公開した音楽科の学習において,従来は曲を聞いて頭の中で曲想を思い浮かべることが一般的だった鑑賞の授業展開とは異なり,映像と動画を用いた視覚的な情報と音色や音の大きさ,タイミングといった聴覚的な情報を融合させる新たな授業展開が行われた。このことから,どのような場面でICT機器を有効に活用するのかを考え,実現していくことは,教師自身がこれまでのスタンダードイメージに縛られることなく,学習の場面を創造的に再構成していくことに繋がるということに気付かされた。

成果目標

  1. ①本校の基盤である縦割り班(特別活動における児童会活動)を単位とし,『附小マーケット』の全校単元を行い,6年間の継続的系統的な金融教育カリキュラムを開発する。その際,他教科との関連もカリキュラムに位置付け,教科横断的な学びを実現する。
    児童会活動としての単元『附小マーケット』と他教科における6年間の金融教育カリキュラムを作成する。
  2. ②『附小マーケット』に向けた準備を通して,人と協働する楽しさや大変さを味わうことと,その結果としての金銭の授受を電子媒体によって行うということを合わせて経験することで,電子媒体を通した金銭の授受に対してもリアルな実感を伴った金銭感覚を育む。
    本研究の事前アンケートにおいて把握した児童の金融リテラシーの実態に合わせた実践を行う。
  3. ③電子決済にアンケート機能を搭載したアプリを開発することで,稼げた金銭の多寡によってのみ自分たちの活動を評価するのではなく,お客側からのフィードバックを適時把握し,それを踏まえて班ごとに成長や改善を目指すという自己評価活動のあり方を確立する。
    単元を通して用いる学習カードに,お客側からのフィードバックが自分のお店屋さんにどのように生きたのかを記述できる欄を設け,自分たちの成長や改善はどのようなことが要因となっていたのかを自覚できるようにする。
  4. ④保護者もお客として学習に参加し,アンケートを通して子どもたちの活動にフィードバックを行うことで,学校と保護者が学習の目的を共有した上で全校的な自治的活動に参画し,共に学校すべての子どもを育む教育活動を推進する。
    →『附小マーケット』当日だけでなく,保護者が懇談会や通信等を通して,本研究を理解し学校教育に関わった実感を得る機会を設ける。
  5. ⑤各班の予算をクラウドファンディングの結果によって追加する活動を行うことで,新しいアイディアを生み出す面白さや主体的挑戦的な姿勢を育む。
    各班のお店のアイディアを互いに知り合う機会を複数回つくり,新たなアイディアを創出することの面白さを感じられるようにする。
アドバイザーコメント
豊田 充崇 先生
和歌山大学
教授 豊田 充崇 先生

【研究のオリジナリティと重要性】

 まずは、本件の研究内容のオリジナリティについてですが、当財団の3000件を超える実践研究助成データベース(https://www.pef.or.jp/db/)においては、金融教育・金銭教育に加えて消費者教育の取り組みも見つかりません。また、電子マネーをキーワードにした研究もありません。よって、今回の「小学校で校内通貨ともいうべき仮想の電子マネーを活用した取り組みの実践的研究」というその着想自体に新規性を感じます。

 金融教育については、本年度から高等学校の家庭科にて実施されることが教育系ニュースで度々報道されてきましたが、国内の小学校では、まだまだ実践的な研究の蓄積が少ないといえます。その金融教育に関して、小学生でも活用できる仮想電子マネーの専用アプリ開発・検証も込みでの実践的な研究となると大きな期待がかかるのは当然かと思います。

 そもそも、「金融教育」自体が、まだ教育分野でも共通認識されていないかと思いますので、まずは、1つのまとまった資料として、金融広報中央委員会による「学校における金融教育の年齢層別目標」【改訂版】をぜひ一度ご参照いただければと思います。

https://www.shiruporuto.jp/education/about/container/program/mokuhyo/

 例えば、上記資料の「生活設計・家計管理に関する分野」の小学校中学年では、

  • ○欲しいものと必要なものの区別ができる
  • ○お金の適切な使い方を知ることを通じて節度ある生活の大切さに気付き、実践する。
  • ○こづかいとしてもらったお金や使ったお金の記録をつけることなどを通じて、お金を管理する。

 といった目標が並びます。なんとなく大人が読んでも自戒の念がよぎるフレーズです。また、下記のように教科との関連も示され、他の項目からは特に社会科・特別活動との関連性も強いことがわかります。

  • ○お金の使い方について見直しながら、自ら節度を守り節制に心掛ける(道徳)
  • ○プリペイドカードなどは金銭同様に大切に扱う必要があることを理解する(家庭科)
  • ○必要性を考えて、計画を立て、それに沿って買い物ができる(家庭科)

 金融教育の目標を俯瞰していると、キャリア教育との関連性も強く、消費者教育や防災教育、統計教育そして情報教育とクロスオーバーする部分も多いことが分かります。金融教育というと、なんとなくその字面から、「銀行の仕組み・投資・資産形成」といったイメージが強いのですが、上記のサイトでは、「自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に行動できる態度を養う教育」とあり、目標リストを参照すると、なるほどと納得できるかとおもいます。よく考えてみれば、「お金を使わない日は無い」わけで、意識すればするほど、身近なテーマであることが分かります。

 しかしながら、現在の小学生には、社会全体の金銭のやり取りが見えづらくなっていることも確かです。給料袋を見たり、集金に来る人もほとんどいなくなっていますし、ネットショッピングでモノが届くけども、支払いの場面を見ていないと、それがいくらなのかも知らないと思います。駄菓子屋で100円を握りしめて、何が買えるかを店先で考えて支払うといった経験のある児童のほうが少ないのではないでしょうか。思い起こせば、お札を自分の判断で初めて使ったのは、ボードゲーム「人生ゲーム」においてだったと思います。「人生を楽しく過ごす」ためには、やはり、お金がかかるということを実感し、学んだ瞬間だったかもしれません(笑)。

 今や、児童らもお菓子の支払いは交通系ICカードによる電子マネーが多くなっており、最近は塾の入校カード、通学定期にも電子マネー機能が搭載されています。使用履歴をスマートフォンで管理している児童もいるくらいです。加えて、オンラインゲームへの課金も考えると、児童によっては、リアルマネーよりも電子マネーの方が金額的には使用している可能性もあります。

 社会生活上、見えなくなっているお金の動きですが、だからこそ、それを意識させて、お金の価値を実感する機会がより一層必要となってきたともいえるのではないかと思います。

【第一期報告より】

 さて、神戸大学附属小学校の第一期報告からは、タブレット一人一台体制におけるICT活用授業の環境が充分に整備されていること、そして、その日常使いが既になされており、慣れる段階を経て、はっきりとした学習効果を見出だせる程になってきたことが報告されました。特に、デジタルポートフォリオなどの取り組みは、これだけでも1つの研究になるのではないかと思います。これらの一連の活動は、これからはじまるタブレットの電子マネーアプリを活用した実践的な研究の基盤となることがうかがえます。また、事前アンケートでは児童・保護者ともに実施し、実践の成果以外に、金融教育に関する意識調査・電子マネー等の利用実態把握も兼ねた調査にもなるため、その結果には注目が集まるのではないかと予想されます。

 そして、開発中の電子マネーアプリの動作画面やその機能なども見えてきました。目標達成のために機能を絞り込み、ユーザーフレンドリーなインターフェイスであるように思います。実践的検証を経て、このアプリが全国の学校でも使えるようになるといったことを想像するだけで、期待に胸が膨らみます。

 加えて、このアプリ画面を見て1点気づいたのですが、買い手の視点だけではなくて、売り手の視点も意識しているところにあります。売り手が買い手から商品のフィードバックを受けとる機能がついている点です。確かに、モノを買う以前にモノを作り出して売るという側が時系列的に前にあるのを忘れていました。「消費者立場で賢い買い物の仕方を学ぶ」という視点でみていたのですが、「より良い製品をつくるためには」といった、日本のものづくりの精神につながるような取り組みにも発展するのではないかと考えられます。マーケティングの学習や起業家教育にもつながる今回の取り組みにより期待が高まったといえます。二学期からの本格的な取り組みについて、続報が待ち遠しいです!