松下電器・パナソニックグループの関わり

松下電器・パナソニックグループの関わり

 1973年(昭和48年)12月の財団設立から今日まで、松下電器・パナソニックグループの関わり、あるいは様々な支援について、資料等を参照して振り返ってみる。

1. 設立まで

 松下電器産業株式会社(以下、松下電器)の創業者である、松下幸之助氏は、人材育成の重要性を「松下電器は、物をつくるまえに人をつくる」という言葉で語っている。

 当財団の設立時に、松下幸之助氏の具体的な関与があったかどうかは定かではないが、PHP研究所などの資料にも、下記のような言説があり、氏が学校教育にも大きな関心を持っていたことが窺える。

 「企業における人材育成の重要性を説くとともに、学校教育にも大いに関心を寄せていました。」

 「人間としての基本的側面を重視する一方で、『万差億別』の教育を実現することによって人それぞれがそれぞれの才能を最大限発揮しつつ、調和のとれた、ともに生きともに栄える社会をつくり上げていくということを念願していた。」

 こうした創業者の思いに加え、学校現場での各種視聴覚機器活用の機運が高まる中で、松下電器グループとしても事業活動での一層のお役立ちを意図し、1973年(昭和48年)5月に「松下AV教育研究センター」を開設した。

 このセンターは、主に松下通信工業株式会社(以下、松下通信)が開発した最新の視聴覚教育機器・システムを備え、広く教員研修等に活用いただく場として位置づけられていた。

 同年5月に行われた、このセンターの開業式典に、後に当財団の初代理事長にご就任いただく、森戸辰男氏をお招きしたことが、当財団の設立の直接のきっかけになった。

 実は、森戸氏は式典には出席されなかった。そのため式典に向けてのメッセージを書簡として送った。これが後に「森戸書簡」と称され、今日まで財団の理事長室等にも掲示しているものである。

 この「森戸書簡」は、当時松下電器の社長であった松下正治氏に宛てたもので、教育界が目指している「教育情報を的確に理解させ、個性を十分に伸ばす新しく能率的な教育の姿」を示し、そこでの産業界への期待を語り、教員が情報機器に接する場の不足を補うものとしてのセンター設立の意義についても触れている。

 そして今後への期待として、「本センターのような民間事業が、よくその公共性を自覚し、それに即した進展を図られるように念願してやみません。」と結んでいる。

 この「よくその公共性を自覚し、それに即した進展を図られるよう」という要請に応える形で、同年12月に「松下視聴覚教育研究財団」が設立された。

森戸氏から松下氏に宛てた書簡の写真
森戸氏から松下氏に宛てた書簡(昭和48年5月11日)

 財団の設立にあたり、森戸氏には発起人に、そして初代の理事長にご就任いただき、氏のご縁で多くの教育界の重鎮に財団にご参画をいただけ、その後の事業活動を進めるにあたっての大きな力となった。

2. 財団運営への関わり

(1)基金・機材、運営資金の出捐による支援

 財団の設立にあたり、松下電器と松下通信から約1億円の基金(基本財産)と、数千万円相当の視聴覚機器の出捐(寄附)を受けた。視聴覚機器については5月に開設されていた「松下AV教育研究センター」等に設置されている機器を財団に譲渡する形で出捐された。

 その後の財団の運営は、松下電器グループからの毎年の寄附金(1.5~3.5億円で年度により変動)をもって運営資金に充てるという方式で、今日まで行われている。

 なお、当財団のような企業系の財団で、このように毎年の寄附金で運営している財団は少数派であり、多くは出捐企業の株式などを基金として、その配当金や運用益を運営資金としている場合が多い。

(2)設立発起人~財団役員への就任

 財団の設立に先んじて、1973年(昭和48年)11月に「設立趣旨書」が発行されており、そこに記載の6名の「発起人」の中に、当時の松下電器社長の松下正治氏、常務取締役の小川鍛氏の2名の名前がある。

 同年12月の財団設立時の財団の理事、監事、評議員の中での松下電器グループ関係者は下記の通り。

  • 理 事:15名中5名(松下電器 社長・常務・特機本部長、松下通信 社長、財団事務局長)
  • 監 事:2名中1名(松下電器 常務)
  • 評議員:16名中2名(松下電器 常務、松下通信 専務)

 その後も、松下電器からは歴代社長に加え、管理部門(東京支社)担当・法人営業担当・企業市民活動担当の役員などが、松下通信からも歴代社長、法人営業担当・視聴覚機器事業担当の役員などが、途切れることなく財団の役員に就いている。

 2000年代初頭の経営改革による松下電器グループの再編以降は、松下電器の会長・社長が理事・評議員に、法人営業部門役員(2004年~2007年)、企業市民活動担当役員・参与(2008年~)が、副理事長に就くことになった。

 2011年の公益認定を機に、パナソニック株式会社※1(2008年に松下電器産業株式会社から改称)から社長・会長が評議員(2022年からは会長のみ)に、企業市民活動担当役員が副理事長に、企業市民活動部門責任者が理事に就くという現在の体制に移行した。

※1 2022年持株会社制に移行し、現在はパナソニックホールディングス株式会社