学校法人津曲学園 鹿児島修学館中学校・高等学校

第51回特別研究指定校

研究課題

中学・高校での探究学習・自己調整学習を充実させる生成系AI活用の校内浸透
~評価や振り返りにおけるメタ認知能力育成等を目指した環境整備と活用方法の蓄積・共有~

2025年度01-03月期(最新活動報告)

最新活動報告
一部の教員が独自に研究していた「AI活用による所見文作成」......

アドバイザーコメント

木原俊行 先生
学校法人津曲学園鹿児島修学館中学校・高等学校(以下,鹿児島修学館中高等学校)が......

学校法人津曲学園 鹿児島修学館中学校・高等学校の研究課題に関する内容

都道府県 学校 鹿児島県 学校法人津曲学園 鹿児島修学館中学校・高等学校
アドバイザー 木原 俊行 四天王寺大学 教授
研究テーマ 中学・高校での探究学習・自己調整学習を充実させる生成系AI活用の校内浸透
~評価や振り返りにおけるメタ認知能力育成等を目指した環境整備と活用方法の蓄積・共有~
目的 中高生の探究学習や自己調整学習を充実したものにするために、周りの生徒との協働や教師の支援・助言に加えてAIも活用できるようにする。
現状と課題
  • ①探究学習や自己調整学習において、生徒ひとり一人が取り組むテーマやペースが異なるため、教師による支援やフィードバックの時間を充分に確保することが難しい。
  • ②AIについて教師による認識や理解・活用にばらつきがあり、学校全体での取り組みにしていくには、生徒が活用する際のリテラシー・モラルへの不安を払拭し、活用方法を校内で蓄積・共有するしくみをつくっていく必要がある。
学校情報化の現状 教師も生徒も日常的に頻繁にICTを活用しているが、生徒の不適切な使用について問題になることもある。
生成系AI活用においても、適切な使用に向けたリテラシー・モラル育成が課題である。
取り組み内容 次の3点を中心に2年間で段階的に取り組む。
  • ①【教員による生成系AIの理解・活用】 まず教師が生成系AIを使いながら、研修や日常の場面で使い方の共有や対話をすることを通して理解を進める。同時に、リスクや問題点について具体的に認識し、検討する。
  • ②【生徒が生成系AIを活用する際のリテラシー・モラル指導の環境整備】 学校で定めている「学問的誠実性ポリシー」に生成系AI利用に関する項目を追加して、方針を明文化するとともに、保護者からの承認を得る手続きや生徒が利用するときのルールなど、具体的な指導方法・体制を整備する。
  • ③【生徒の探究学習・自己調整学習における生成系AI活用方法の蓄積・共有(特に評価や振り返りにおけるメタ認知能力育成)】 1年目は宮崎東高等学校での千葉大学との連携による実践を参考に、 「総合的な学習〔探究〕の時間」での活用を中心に、教科を越えて活用方法をいっしょに探り、蓄積・共有する。2年目は各教科での探究的な学びや自己調整学習における評価や振り返りでの活用方法を中心に、学校全体で蓄積・共有する。
成果目標
  • ① 教員の(1)「生成系AIについての理解・関心」、(2)「業務や指導に活用」の割合が高まり、(3)「生徒に生成系AIを活用させるうえでの不安」の割合が低くなる。
  • ② 生成系AI活用方法の蓄積・共有のしくみが構築され、そのしくみが頻繁に活用される。
  • ③ 生徒の(1)探究学習や自己調整学習におけるAI活用が広まり、「適切に」かつ「効果的に」活用できているという割合が高まり、(2)メタ認知能力等が高まる。
助成金の使途 生成系AI関連書籍購入費、「スクールAI」契約費、生成AIの有料版契約費、研究大会参加・先進校視察旅費、校内研修外部講師謝金、公開研究会準備・運営費 他
研究代表者 新名主 敏史
研究指定期間 2025年度~2026年度
学校HP https://www.shugakukan.ed.jp/
公開研究会の予定 【1年目】8月(上旬):本校の実践状況紹介・他校の探究学習等での活用事例共有
【2年目】10月:授業公開・実践状況報告・「探究学習や自己調整学習での生成系AIの活用」講話・ワークショップ

本期間(4月~7月)の取り組み内容

【4月】

  • ・教職員、生徒、保護者の生成系AI使用状況を把握するためのアンケート調査を実施。
  • ・校内生徒向け『IBハンドブック』にAIの利用についてのページを追加。

〔『IBハンドブック』抜粋〕

  • ・4月3日〜15日 探究支援型GPTs(MetaQ)のシステムプロンプトを作成。
    ※MetaQとは「問い返し」を基本として、生徒のメタ的な思考に寄与する仕組みを組み込んだカスタマイズAIのこと。
  • ・4月23日、校内研修(パナソニック教育財団実践研究助成の概要、IBの見解等)
  • ・4月26日(土)、IB職員研修(講師:鹿児島国際大学准教授辻慎一郎先生、演題:鹿児島県内小・中・高等学校における教育の情報化の現状と課題)
  • ・4月26日(土)、研究アドバイザーの四天王寺大学教授木原俊行先生、パナソニック教育財団 久保田事務局長、鹿児島国際大学准教授辻慎一郎先生が来校、校内研究組織メンバーとの打ち合わせ。

〔2025年4月26日(土)訪問時授業風景〕

【5月】

  • ・「スクールAI」(全教職員)、ChatGPT有料版(ICT委員長)登録、利用開始
  • ・5月初旬~ 定期アンケート実施

教師のAI活用事例を共有するために、定期的にアンケートを実施中(全体実施2回、自由回答4回)。週ごとにサマリを作成し1つのドキュメントにまとめていった。

notebookLMを活用して各週のサマリから先生方の活用状況を時系列で分析し、以下の出力を得た。活用の幅が広がっている一方で、AI活用に不安がある先生方へどのように前向きに活用してもらえばよいかが課題。アンケート結果をもとにして、研修会や講座を行うなどの次のアクションが必要。「リスクや問題点について具体的に認識し、検討する」という観点で振り返ると、アクションが足りなかった。

===

週次サマリーの時系列比較からは、先生方のAI活用の教科や場面が多様化し、活用の質も深まっている様子が見て取れます。当初、数学や国語といった特定の教科で、授業準備や校務支援の効率化を中心に活用されていましたが、次第に英語、学級活動、探究学習へと教科が広がり、生徒への個別フィードバック作成や、授業中に生徒のアイデアを深掘りする支援といった教育内容に踏み込んだ実践が増加しています。

ツールについても、ChatGPTやGeminiといった汎用的なものに加え、NotebookLMやCanva AI、カスタム版GPTsなど、特定用途に特化したツールの活用も見られるようになりました。こうした活用の広がりと共に、AIの限界やプロンプトの重要性、データ連携の課題など、より実践的・技術的な課題認識が深まり、プロンプト改善やスキル向上への関心が高まっています。これは、AI活用が試行段階から、教育効果を高めるための発展段階へと移行しつつあることを示唆しています。(notebookLMで分析)

===

  • ・5月初旬 保護者向けアンケート実施
  • ・5月16日(金) 全体保護者でパナソニック教育財団実践研究助成の概要及び生成系AIの活用について説明

〔2025年5月16日(金) 全体保護者会時の生成系AIの活用説明・スライド〕

  • ・5月中旬 教務部と生徒支援部で、「学問的誠実性ポリシーの改訂案」検討。
  • ・5月21日(水) 社会科の教諭のアドバイスを受け、MetaQのアップグレード版MetaQⅡのシステムプロンプトを開発。「ポリアの問題解決のプロセス」「ソクラテス式問答法」の発想をMetaQに組み込んだ。
  • ・5月30日(金)助成金贈呈式・スタートアップセミナーに参加。

〔5月30日(金)助成金贈呈式〕

  指導・助言を受けて、次のような点を記録した。

  • ◎本実践研究における「メタ認知能力」は、主に生成系AIを使う際に、「自分自身が適切かつ効果的にAIを活用できてるかどうか?」を自覚的に考えることができる力で良いのではないか。(学習のプロセスを重視し、「AIを使っている際に、自分自身の思考が活性化しているか?」「この使い方・使うタイミングで良いか?」「自分の学びにAIをどのように活用するのが効果的であるか?」などを考えることができる。)
  • ◎審査員の方からのコメントにあった「生成AIパイロット校の取り組みとの違いを明確にして,教員の負担軽減と生徒の探究学習の充実の両立という視点での研究成果を示してほしい。」という点について相談した。国際バカロレア校であること、中高一貫校であることを踏まえてAIの活用やカリキュラムを探っていくことで、結果としてオリジナリティのある実践を目指すのが良さそうという見通しを得た。パイロット校の取り組みを参考にしつつも、とらわれ過ぎず、やりながら進めていくべきとのこと。
  • ◎具体的には、AIリテラシーをIBのATLスキルリストの中に位置付け、各学年・教科でどのように育む機会を設定するかを検討すると良いというアドバイスをいただいた。
  • ◎AIリテラシーについては、知識に偏りがちであることに気を付け、態度や価値観、エネルギー問題を含めた倫理についても身につけることが重要で、その面でもIBとの相性が良いというお話をいただいた。
  • ◎実践をカリキュラム全体の中に位置付ける大切さを強調された。また、贈呈式での寺島史朗課長のお話も踏まえて、新学習指導要領に向けて、カリキュラムの中での「技術」や「情報」の役割が大きくなるという点も意識して実践を進めていく必要があると感じた。
  • ・5月31日(土)高校2年生対象 生成AI活用講座

  高校2年生対象に生成AIの活用法講座を開いた(2時間)。

〔5月31日(土)高校2年生対象 生成AI活用講座〕

◎実施内容

生徒の振り返りには、「Work1を通して生成AIの効果的な使い方と注意すべき点を改めてはっきりと区切ることができた」「自身の認識が合っていた」「自分が過去にレポートなどで丸写しや不適切な活用をしていたことに気づき、今後は気をつけたい」といった、AIの適切な活用方法について考えるきっかけになった旨の内容が多く書かれていた。また、カスタマイズAIを活用してみた感想では、「課題研究で問いを立てるときにおける新しい視点を得た」「課題研究で悩んでいたことが解決した」など前向きなコメントが多く見られた。一方、探究活動における「問い立て」を完全に生成AIに任せてしまうことで「自分で1から考える力や調べるプロセスが弱まる可能性がある」「AIに効果的に問いを投げかけるスキルが必要となる」といった声もあった。

【6月】

  • ・6月2日(月)第51回全日本教育工学研究協議会全国大会茨城つくば大会の研究発表募集が開始されたのに合わせ、発表の申し込みと今年度の発表内容の検討を行った。
  • ・6月5日(木)、8月の公開研究会に向けて、以下の登壇者*と打ち合わせ。
    • ・辻 慎一郎氏(鹿児島国際大学福祉社会学部 准教授)
    • ・木田 博氏(鹿児島市教育委員会 教育DX担当部長)
    • ・西山 正三氏(宮崎県立宮崎東高等学校定時制課程夜間部 教諭)
    • ・大保 政貴(鹿児島修学館中学校・高等学校 理科教諭・ICT委員長)
    • ・新名主 敏史(鹿児島修学館中学校・高等学校 英語科教諭・IBMYPコーディネーター)
  • ・6月13日(金)宮崎県立宮崎東高等学校定時制課程夜間部に見学訪問
  • ・6月末  高校1年「科学と人間生活」で、生成系AIを活用した(形成的)評価の実践。Notebook LMを活用して、生徒の手書きのレポートに対して、IBMYPの評価規準に沿ったフィードバックを生成。生徒に示す際には、教員から補足説明を加えた。

【7月】

  • ・7月9日(水)  アドバイザー木原先生訪問  授業見学・校内研修

〔7月9日(水)高校2年生 物理授業〕

〔7月9日(水)高校2年生 生物授業〕

〔7月9日(水)中学1・2年合同総学〕

〔7月9日(水)校内研修〕

〔7月9日(水)校内研修〕

  • ・7月11日(金) いちき串木野市立羽島中学校(助成校)研究公開参加

アドバイザーの助言と助言への対応

☆4月打ち合わせ来校時----------------------------

【助言】「ポリシー、ATLなど、生徒に示すのに、何から手をつけるか?」を検討する必要がある。

≫助言への対応

学校で作成している『IBハンドブック』や保護者承諾書に大まかなポリシーは示したが、ATL(IBの学び方のスキル)については、今年度中に検討して来年度から校内で共通理解して進められるようにする。

【助言】「AIをどのような場面でどのようなことに活用するのかの合意形成を進める」

≫助言への対応

現段階では、どのような場面でどのようなことに活用できるのかを把握するため、活用状況を収集・共有している。

【助言】どのような「AIリテラシー」をどのように育むのかを要検討

≫助言への対応

すでにあるものを変えながら(学習スタンダードのように、生徒も含めて≒生徒の声も取りいれて)つくっていく

【助言】実践研究の評価の精選、必ずしも申請書通りでなくともよい(予算についても)

≫助言への対応

実践しながら記録・データ収集し、評価方法についても効果的なものを選定していく。

【助言】中高全体で取り組み、特長的な代表的な実践において、中高、教科のバランスを!

≫助言への対応

高校から実践を始め、指導方法や体制を整えながら中学校、学校全体へと広げていく。

【助言】「メタ認知能力」の測定・評価については、基本的にAI利用のメタ認知で良いのでは?」(量的データ:生徒たちが「AIを効果的に使えているか?」)

(質的データ:専門家からの評価的コメントをいただく、学会発表や公開研究会参加者からのフィードバック等)

≫助言への対応

生徒たちにも「AIを効果的に使えているか?」をいっしょに考えてもらいながら実践を進め、メタ認知の状況を見取り、最終的にどのような測定・評価がふさわしいかを検討する。

☆7月アドバイザー訪問時----------------------------

【助言】「生徒は自然にうまく使っている状況が見られたので、教員全員の理解が整うのを待つ必要はないのではないか?」「生徒の活用については、生徒にゆだねる部分を増やしても良いのではないか?」「研修の在り方について、生徒の活用状況や対応方法の共有をしてはどうか?」

≫助言への対応

モラルやリテラシーに関する面の対応を研修等で周知し、生徒の活用を見守れるようにしていく。

【助言】「AIリテラシーの指導のしくみをどうつくっていくか?」

≫助言への対応

今年度、各学年で試行しながら、来年度の実施時期や内容等を検討する。

【助言】「総学や道徳の時間などでも可能だが、「技術」や「情報」のカリキュラムの中でどうAIリテラシーを育んでいくか?」

≫助言への対応

「技術」や「情報」の現状のカリキュラムの中にどのようにAIリテラシー育成の要素を入れていくかをICT委員会でも検討する。(「技術」や「情報」の教員個人任せにするのではなく。)

本期間の裏話

宮崎県立宮崎東高等学校定時制課程夜間部に見学に行かせていただいた際、夜まで情報交換をさせていただいた。同校の西山正三先生や千葉大学の田川翔先生も含め、当日もあつく語り、つながりも得られたことがたいへんありがたく、うれしく感じた。

本期間の成果

  • ・高校生のAI活用が本格的にスタートした(大きなトラブルや問題は表面化していない)
  • ・教員によるAI活用の共有するしくみが整備されてきた

今後の課題

  • ・生徒(高校生)の活用状況の把握
  • ・生徒(中学生)の活用を開始するための準備
  • ・IBのATL(学び方のスキル)に生成系AI活用のスキルを位置付ける
  • ・組織全体での利用

今後の計画

  • ・7月11日(金) いちき串木野市立羽島中学校(助成校)研究公開参加
  • ・8月5日(火) 鹿児島修学館主催公開研究会実施
  • ・10月15日(木) 校内探究交流会

気付き・学び

  • ・生徒の「適切な」活用という意味では、究極的には「生徒の学ぶ意欲・自分が成長したいという気持ち」次第だということを身にしみて感じている。
  • ・生成系AIの活用について、教員間でのコミュニケーションが増えた。
  • ・会議の中でも生成系AIにアイディア出しに使う場面が増えてきた。
  • ・校内研修の在り方を考える中で、組織として活用しようという発想が強くなった。教員によって生成系AIの活用状況に大きな差がある。そのため、校内研修では全員にフィットする具体的な活用方法を紹介することは難しい。組織内のスキルや意欲の高い者のノウハウをいかに校内全体に広めるかに焦点を当てた職員研修が好ましいと考えている。

成果目標

  1. ①【教員による生成系AIの理解・活用】
    まず教師が生成系AIを使いながら、研修や日常の場面で使い方の共有や対話をすることを通して理解を進める。同時に、リスクや問題点について具体的に認識し、検討する。→本校で活用しやすいプロンプトなどを共有し、「組織としての活用」する文化が定着する。
  2. ②【生徒が生成系AIを活用する際のリテラシー・モラル指導の環境整備】
    学校で定めている「学問的誠実性ポリシー」に生成系AI利用に関する項目を追加して、方針を明文化するとともに、保護者からの承認を得る手続きや生徒が利用するときのルールなど、具体的な指導方法・体制を整備する。→「AIリテラシー」をいつどのように育むかの体制を整備する。
アドバイザーコメント
木原 俊行 先生
四天王寺大学
教授 木原 俊行 先生

 学校法人津曲学園鹿児島修学館中学校・高等学校(以下,鹿児島修学館中高等学校)は,第51回特別研究指定校(活動期間:2025〜2026年度)の1校に選出された。鹿児島修学館中高等学校は,特別研究指定校に選ばれるまでに,パナソニック教育財団の実践研究助成を受けている。ここ数年だけでも,2019年度,2020年度,2023年度と3度の助成を受けている。2023年度については,オンラインサポート校にも選ばれている。同校の先生方は,同年度,「学校図書館の「学習・情報センター」機能の充実とICT活用との統合・融合/国際バカロレア教育における探究学習促進・情報活用能力向上を目指して」というタイトルで研究活動に従事した。その成果は,パナソニック教育財団の評価プロジェクトによって,確認されている(同年度の優れた実践研究報告書の1つに選ばれている)。このように,パナソニック教育財団の実践研究助成という文脈で,学校として組織的に実践研究を推進するという経験を,鹿児島修学館中高等学校は豊富に有している。だから,特別研究指定校を申請するにあたって,よく練られた研究計画が策定されていた。換言すれば,鹿児島修学館中高等学校の先生方は,実践研究力が高い。それは,今回,アップロードされた,活動報告書が13頁にも及んでいることにも確認できよう。

 鹿児島修学館中高等学校のアドバイザーとして,筆者は,4月と7月に,同校を訪問し,その授業や校内研修の模様を拝見した。ある程度予想していたことだが,同校の生徒たちの情報活用能力は高い。端末を利用して,探究的な学びをたくみに繰り広げている。しかも,いわゆる個別最適な学びと協働的な学びが往還され,探究のサイクルが展開されている。例えば,生物の授業で生徒が調査結果をミュージカルで表現するための準備に従事している姿を拝見した。ミュージカルのトピックや役割は多様であるから,生徒は個別にまたグループ別に端末を利用して作業を進めていた。そして,一部の生徒は,例えば,シナリオの推敲に生成AIを活用していた。他の教科・領域の学習においても,生徒は必要に応じて,生成AIの活用を進めていた。同校の生徒にとって,探究的な学びは必然である。そして,一部の生徒にとって,もはや生成AIは,探究的な学びに資する知的ツールに位置付いていた。

 もちろん,生成AIに関する技術革新のスピードは速まるばかりである。また,生徒の利用も,おそらくは家庭でのそれが急激に増えると思われる。それゆえ,前述した,よく練られた研究計画も,それらに応じた修正が求められよう。鹿児島修学館中高等学校の先生方には,豊かな実践研究力を発揮して,生成AI活用実践の拡充を図っていただきたい。

本期間(8月~12月)の取り組み内容

【7月】

◎7月11日(金) いちき串木野市立羽島中学校(一般助成校)研究公開参加

同じ県内の助成校の実践を見学し、情報交換することが出来、学びと刺激をいただいた。

【8月】

◎8月5日(火) 鹿児島修学館主催公開研究会実施

「鹿児島修学館パナソニック教育財団実践研究助成特別研究指定校公開研究会 ~探究×生成AI :実践事例から考える教育の今とこれから~」

校内外で、現状と教育全体の中での基本的な考え方を共有し、考えることが出来た。

↓『南日本新聞デジタル』(2025/09/01 11:00)記事での報道から抜粋
https://373news.com/news/local/detail/219924/

「探究学習に生成AI活用…そのメリット、リスクは? 鹿児島修学館中・高で研究会
生成AIを探究学習にどう生かすかを考える研究会が、鹿児島市の鹿児島修学館中・高校であった。中高の教員や大学生ら約60人が参加。ツールとしての活用法、リスクや問題点について意見を交わした。」

【参加者感想抜粋】
  • ☆これまで学ぶことができないことが学べてよかった。プロンプトの作り方の質問したのは自分でした。大保先生から良いやり方を学んだのでまずはいろいろ触ってみて、これから実践のほうに持っていきたいと思います。ありがとうございました。
  • ☆これまで個々の生徒に対応できることに限界を感じていたが、これからは対応できることが増えると実感しました。研修を深め、自分でも工夫して実践していきたい。
  • ☆教育および学務の両方で生成AIのアジャイルな試行が進められていて、とても素晴らしいと感じました。ご登壇された先生方、とても素敵なお話を紹介してくださり、誠にありがとうございました。
  • ☆現在勤務している小学校は、来年総合的な学習の時間(探求学習)で町の公開発表を行うことになっています。生成AIを用いて限られた時間を上手にタイムマネジメントして行ったり、生成AIとの対話を通して個律の学びへと変容させていくことを提案したりと同僚に還元できるヒントをたくさんいただけたように感じます。今日は、ありがとうございました。
  • ☆私は高校生なので教育に関しての観点からのお話は少しむずかしかったが、AIの使い方や今現在の使い方を聞いて、自分の課題研究やLDTの活動にどう生かせるかを考えながら聞くことができた。いいアイデアも浮かんだのでとても良い時間になったと思う。
  • ☆初めてAIの存在を知ってから、さほど時間がたっていないのにも関わらず、あっという間に世の中に浸透し、精度も上がり、AIに対して最初に抱いたネガティヴな印象もかなり払拭されたように感じていましたが、今日の公開研究会でさらに確信しました。あなたの学びの伴走者になりうる、は言い得て妙です。まさしくAIをどう使うか、を自分に問うことが重要だと感じました。
  • ☆図書館勤務のため、現場のスピード感に乗り遅れている現状があり、参加しましたが、学びの多い内容にとても刺激を受けました。大保先生が、「課題はアイディアの種」とおっしゃっていたのが、本当にその通りだと共感でき、「学校で起こるプチ課題はほとんどAIで解決できる」との言葉に、教育の未来を感じました。
    図書館勤務の中で感じるプチ課題も、AIに任せて効果的に解決できないか模索していきたいと思いました。ありがとうございました。
  • ☆次期学習指導要領のポイントや、先生方の実践から多くのことを学ばせていただきました。教科内探究については私も実践しているのですが、2学期は生成AIを教科の中で積極的に活用していきたいと改めて思いました
◎8月26日 探究学習レポート評価についての打ち合わせ・評価プロンプト開発

探究学習の生徒のレポート評価について、全教員がどのようにかかわるかを検討し、今後の計画及び生成系AIをどのように活用するか方向性を検討した。

ミーティングをもとに、評価案を出力するプロンプト(プロトタイプ)を開発した。教師による評価とAIによる評価を比較することで、AI評価の妥当性を検討する材料となることを期待するとともに、教師のAIに対する理解を深めるきっかけとしたい。

【9月】

◎生成AIを活用したレポートのフィードバック用紙を作成し、1on1でミーティング。(高1科学と人間生活・高2物理)
☆実践者(理科教員)コメント

「これまでレポートを書かせてはいるものの、フィードバックが十分でなく、科学的思考力を十分に身につけさせられていないのではないかという反省から、記録に残るようなフィードバックの形を模索。生成AIも活用し、一人ひとりのフィードバックシートを作成。生徒が自分のレポートに対するフィードバックをもらうことで総括の良かった点と改善点が具体的に分かり、今後の成長につながることを期待している。」

☆高1:科学と人間生活

2025科学と人間生活『システム』総括評価フィードバック

【手順】:手書きのレポート(名前を黒塗り修正)を、notebookLMで1人ずつ評価&フィードバックコメント作成してもらう
→南が修正&コメント削除・追加(総括なので点数は全て南がつける)
→geminiですぐに貼り付けられる体裁にしてもらう
→タブにクラス・出席番号の名前をつけて、一人ずつ貼り付け
→1人ずつ印刷して面談で活用

【実践者(理科教員)感想】

手書きのレポートなので、書いてないことを推測して読んでしまっていることがあり、コメントの修正は適宜必要でした。結構時間がかかりました。もっと良い方法を模索したいと感じています。

「概念理解」や「ATLスキル」へのつながりなど、学んだことがどう活かされるかのコメントは秀逸。一人ひとりの個人実験テーマに合わせたコメントをしてくれるので、差異化された指導には適していると思いました。

◎IBMYPのパーソナルプロジェクト評価での生成AI活用試行

国際バカロレアMYP(中等教育プログラム)の集大成であるパーソナルプロジェクトの評価を標準化する過程で生成AIを試行的に活用。

〔評価の標準化に向けての話し合いの様子〕

生成AIをどのタイミングで活用するかの判断は任せ、生成AIの指摘も参考にしつつ最終的な判断は教員が下すかたちで実施。

生成AIの見解も参照しながら、それぞれの教員が評価した結果について全体でやりとりして評価の標準化を図った。標準化の中で具体的な評価方針の言語化が進んだことで、来年度以降の生成AIのプロンプトに加えることが出来ると感じた。

例えば、「レポートの中で、プロジェクト自体の計画を書かなければならないところにレポート作成の計画を書いてしまっている場合の評価はどうなるのか?」という疑問に対して、IB機構の見解に基づいて結論が出されていた。今年度のプロンプトには入っていなかったが、来年度以降は「プロジェクト自体の計画を書かなければならないところにレポート作成の計画を書いてしまっている場合は評価されない」ということをプロンプトに明記し、教職員の中でも共通認識として確認することができる。

つまり、生成AIのプロンプトを精緻に改良することを目指すことは、具体的な評価方針の言語化を促すことにつながると考えられる。

※他に、国際バカロレアMYP(中等教育プログラム)の学際的単元等、複数の教員で評価をする際の標準化でも生成AIを試行的に活用。評価の標準化(の過程での具体的な確認や言語化)と生成AIの活用(言語化したことを次年度以降のプロンプトへ反映)との相性の良さは感じるが、教員の負担という意味では、むしろ読むべきものの量が増えているのが現状。

【10月】

◎10月15日(木) 校内探究交流会(第二回アドバイザー訪問として木原先生来校)

午前中に中学1年から高校2年までが参加する探究交流会を実施。午後は校内研修。

〔探究交流会の様子(高校2年生発表)〕

発表時にも、生成AIの活用状況についても質問して確認されていた。

〔探究交流会の様子(高校1年生発表)〕

〔探究交流会の様子(中学3年生発表)〕

職員研修のテーマ①「教職員の生成AI活用状況の報告」

本校で推進している生成AIの教育活用に関する教職員アンケートの集計結果の総括を報告した。

活用領域に関して、初期段階では業務効率化を中心とした利用が目立ったが、次第に「教材開発」「探究支援」「評価活動」といった、より創造的かつ教育的価値の高い領域へと実践が拡大していることが明らかになった。実践に対する満足度も高く、全体の約87%が「まあまあうまくいった」または「非常にうまくいった」と回答しており、教育現場における生成AI活用の有効性が示唆された。最も多く活用された場面は「授業準備(教材・テスト作成)」と「校務支援(事務作業の負担軽減など)」であり、これらが全体の約半数を占めた。これは、生成AIが教師の日常業務の負担軽減に具体的に貢献していることを示している。同時に、「評価・フィードバック」や「授業中の生徒の活動支援」といった直接的な教育活動での活用も着実に進んでいる。主要な使用ツールは「ChatGPT」と「Gemini」が多数を占めた。

職員研修のテーマ②「生徒の探究活動における生成AI活用状況の変遷(アンケート結果の共有を通して)」

高校2年生を対象に定期的に行ったアンケート結果を共有して(計4回実施)、生徒がどのように生成AIを活用しているか、職員全体で実態把握を行った。

「どのようなことを生成AIに投げかけたか」という質問に対して、
・どのように計画を立てればよいか
・今後の研究の進め方
という観点でAIを活用する生徒や、
・実際に起きた事件や判例
・○○の仕組み、○○の作り方
といった具体的な内容を質問する生徒、
・行き詰ったときにアドバイスをもらおうとした
・自分が持っている知識をもとに「問い」を返してもらった
といったメタ的な活用をする生徒など、多様な活用実態があることを全体で共有した。

〔校内研修での木原先生からのフィードバック〕

〔生徒に生成AIの活用について詳しくインタビューしている場面〕

〔校内「研究組織」メンバーと木原先生とのミーティング〕

◎教員によるAI関係資格取得促進

「教員によるAIの理解」という目標の成果をさらに明確にするため、いくつかのAI関係の資格を紹介し、資格取得を促進した。資格取得のための教本や過去問集を学校で購入し、参照できるようにした。

〔Gemini Certification for Educators(「Gemini 教育者向け認定プログラム」)認定証〕

【11月】

◎11/15 第51回全日本教育工学研究協議会全国大会茨城つくば大会 研究経過報告

第51回全日本教育工学研究協議会全国大会茨城つくば大会で経過報告を行った。

分科会では、かなり多くの方々(100人近く)に聴いていただいた。

発表資料より抜粋

①実践のモデル図

今後の実践の方向性を「指導計画の充実、AIリテラシーの要素も踏まえた体系的な教科指導の実践」と位置づけた。

②言語化した生成AIリテラシー(左)生成AIリテラシーを3観点で見たときにどのような資質能力があるか示した関連表(右)
③今後の見通し

AIリテラシーとATLスキルの関連性を明らかにして、ユニットプランに反映させる。

みどりの学園義務教育学校での公開授業研究会も見学することができ、実践内容に加えて、公開授業研究会の運営についても参考にすることができた。

◎11/17 【生徒が生成AIを活用する】実践 高校1年化学基礎
授業の展開
  • ・単元テストに関する振り返り、授業内容の説明
  • ・教科書を開いて興味のある法則を選び、問いを立ててスプレッドシートへ
  • ・生徒が選択した情報から、スプレッドシート上でプロンプトを作成(プロンプトの型は提示)
  • ・Geminiのガイド付き学習モードを選択させ、目標を意識しながら生成AIと対話する
  • ・AIと対話しながら、基本法則について理解を深め、自分で説明する文章を作成する。
    (👇2行目後半、「この「同温・同圧」という部分が~」の部分は、気体反応の法則を考える上でとても重要な視点。教科書の読み取りだけでは得にくい考え方をAIとの対話を通して得て、言語化できたのではないか。)
  • ・チェックリストによる振り返り、記述による振り返り(AIの出力の見方・AIに対する指示の工夫・自己の思考の深まりという観点を強調)

みんな、PCに向かって黙々とAIとの対話を繰り広げていた。

思考が深まったり、今後のAIの活用のアイディアが生まれたり、もっと上手にAIを使おうという考えになったり、生徒の振り返りから様々な変化が見て取れた。

印象的だった生徒の振り返り

「最近、勉強中も生活中もAIを使う機会が増えて、いろんな質問を投げかけて答えてもらっていました。でも、今回の授業では、自分自身がより深くAIに質問した内容を理解できるようにAIの方からも質問をされたり自分の言葉で説明してみてと言われたりして、私が一方的に質問してAIが答えを教えてくれたり説明してくれたりだけではなく、AIからも言葉を返してくれたりして、AIと対話ができたということが新鮮で嬉しかったです。でも、答えてくれたことに対してわからなかったとき、指示する言葉をただわからないだけで返してしまって、どういうところがわからなかったという具体的な面で返すことができなかったところを次は意識して使ってみたいなと思いました。AIの新しい使い方をしれて楽しかったです。」

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ・【助言】AIリテラシーの「校内での暫定的な定義化」をすべき
    →【対応】ATLスキルというIBの学ぶスキルの枠組みとAIリテラシーの関係性を表にして校内共有していくことに着手。今後各教科の単元でのATLスキルとの関連性が明確にしていく。
  • ・【助言】基本的に全生徒に使わせる(AIを活用する)単元や時期があるといい。調べたことを確かめるために使わせるなど「目的」や「指針」があるといい。
    →【対応】来年度に向けて、どの時期にどのようにAIリテラシーを育成するか、各教科の単元でのリテラシー育成で不十分なところがないかを確認して、計画・実施を検討。
  • ・【助言】AI利用に関する引用参考文献の在り方をどうするか検討すべき
    →【対応】校内の『IBハンドブック』でこれまで生徒に示していた引用参考文献の示し方がやや煩雑だったため、より簡易な方法も併記した。(教員が選択・指示。)

本期間の裏話

第51回全日本教育工学研究協議会全国大会茨城つくば大会で経過報告を行った際、情報交換会や合間の時間に、アドバイザーの木原俊行先生やパナソニック教育財団の方々、来年度の全国大会開催地高知県香美市・香北中学校の方々、特別研究指定校仲間の香川県多度津小の研究主任の先生等とお話することができた。

鹿児島に帰る移動日に、授業公開をされてパネルディスカッションにも登壇された茨城県立竹園高校の戸井田翔太郎先生に筑波をご案内いただきました。

本期間の成果

【教員による生成系AIの理解・活用】

活用の共有を通して、全体的に理解・活用が進み、会議のときにAIにも相談したり、日常的にAIの活用について職員室で話題になるなど、世代や教科関係なく「あたり前に使っている」状態になった。

さらに、教員によるAIの理解を進めるため、いくつかのAI関係の資格を紹介し、資格取得を促進した。実際に、3人(全体の1割)の教員がGemini Certification for Educatorsに挑戦・取得した。 資格取得のための教本や過去問集を学校で購入し、参照できるようにした。

【生徒が生成系AIを活用する際のリテラシー・モラル指導の環境整備】

  • ・校内の『IBハンドブック』でこれまで生徒に示していた引用参考文献の示し方がやや煩雑だったため、より簡易な方法も併記した。
  • ・AIリテラシーを言語化し、ATLスキルというIBの学ぶスキルの枠組みとAIリテラシーの関係性を表にして校内共有していくことに着手した。

今後の課題

【教員による生成系AIの理解・活用】

教員によるAIの理解をさらに進めるため、購入した資格取得のための教本や過去問集を活用して資格取得を補助・促進する。資格取得の過程でも職場内の学び合いが起きるようにし、資格取得をしない教員にも情報共有するなどして全体的に理解・活用が進むようにする。

【生徒が生成系AIを活用する際のリテラシー・モラル指導の環境整備】

来年度のAIリテラシー育成の計画表を作成する。特に、中学生が安全・適切・効果的にAIを活用するための指導計画を検討する。

今後の計画

  • ・12月~ 校内教員向け「ITパスポート」や「生成AIパスポート」の受験・資格取得促進
  • ・12月~ 来年度の公開授業研究会実施計画着手
  • ・12月中 国際バカロレア教育の「ATLスキル」に「AIリテラシー」を位置付けた一覧表提案
  • ・1月中 国際バカロレア教育の「ATLスキル」に「AIリテラシー」を位置付けた一覧表確定
  • ・3月18日(水) 今年度第三回アドバイザー訪問

気付き・学び

  • ◎探究交流会の際に、ポスターやプレゼンスライドでAIをどこでどのように使っているのかわかりづらかった。生徒にたずねてみると、AIを使っている場合が多かった。まずは探究の発表会などの場面で、簡単にでも良いのでAIを使ったことを示すようにすると良いと感じた。質疑応答の場面で、探究の内容と同様にAIの活用方法や問題点などについても対話するきっかけにすることでいっしょに考えていけるように思う。
  • ◎第51回全日本教育工学研究協議会全国大会茨城つくば大会で、みどりの学園義務教育学校の公開授業研究会を見学した際、相談相手のひとりとしてAIを活用している生徒のみなさんの様子を見ながら、「その教科・その学習内容を学ぶ意味や学ぶ楽しさをどの単元・どの授業でもどれだけ伝えられるか、どう伝えるか」がますます重要になることを再認識した。
    AIが存在すること、AIを使うことを前提として、どうしたら生徒が自分で考え、最終的には自分で表現したくなるのかを考えて授業や評価課題を設計することがより大切になってきたことを実感。
    昨年に比べてもだいぶ増えてきているAIに関する実践発表はまだ混沌としており、どのようなものが価値あるのかというところも定まっていない感じもした。他の実践も聞きながら、本校なりの実践、つまりIB校としてのカリキュラムマネジメントの中に位置づけた実践にはそれなりの意義は見出せそうに感じた。
  • ◎第51回全日本教育工学研究協議会全国大会茨城つくば大会で、特別研究指定校の先輩校みどりの学園義務教育学校の公開授業研究会を見学。来年度、本校も実施することになるので、どのような準備をして、当日運営するのかも考えながら見学。
    木原先生とも相談して、少しイメージが固まりつつある状態。

成果目標

【教員による生成系AIの理解・活用】

まず教師が生成系AIを使いながら、研修や日常の場面で使い方の共有や対話をすることを通して理解を進める。同時に、リスクや問題点について具体的に認識し、検討する。
→さらに理解を進めるために、「ITパスポート」や「生成AIパスポート」の受験・資格取得を通して、核となる教職員を増やし、学校での活用の議論や促進につなげる。

【生徒が生成系AIを活用する際のリテラシー・モラル指導の環境整備】

学校で定めている「学問的誠実性ポリシー」に生成系AI利用に関する項目を追加して、方針を明文化するとともに、保護者からの承認を得る手続きや生徒が利用するときのルールなど、具体的な指導方法・体制を整備する。
→国際バカロレア教育の学び方のスキルをまとめた「ATLスキル」と「AIリテラシー」を関連づけて、各教科の各単元で育む体制づくりを進める。

アドバイザーコメント
木原 俊行 先生
四天王寺大学
教授 木原 俊行 先生

 学校法人津曲学園鹿児島修学館中学校・高等学校(以下,鹿児島修学館中高等学校)がパナソニック教育財団の実践研究助成特別研究指定校としての取り組みを始めて,8ヶ月ほどが過ぎた。

 鹿児島修学館中高等学校のアドバイザーとして,筆者は,10月に同校を訪問し,生徒による探究成果の発表や先生方の校内研修の模様を拝見した。また,11月には,全日本教育工学研究協議会第51回全国大会(つくば大会)において,同校の先生方が研究発表を行う姿にも接した。それらにおいて,鹿児島修学館中高等学校の実践研究が計画通りに,すなわち順調に進展していることを確認できた。

 まずなんといっても,同校の生徒の生成AI利用が増えている。筆者は,10月の訪問の際に,たくさんの生徒の探究学習の成果を耳にした。さらに,数名の生徒に探究における生成AI利用についてインタビューしてみた。その結果,生徒たちが,探究の様々な過程で生成AIを利用していることが分かった。それらは,先行研究のレビューに,調査に,考察したことのモデル化にと,多様であった。

 そして,学校の報告に載っている「私が一方的に質問してAIが答えを教えてくれたり説明してくれたりだけではなく,AIからも言葉を返してくれたりして,AIと対話ができたということが新鮮で嬉しかったです」という生徒のコメントから,生成AIをたんに効率化のためだけでなく,自身の探究のパートナーとして役立ててほしいという同校の先生方の願いが生徒に通じている,そのための先生方の仕掛けが功を奏していることが確認された。

 次なる課題は,生徒と生成AIのよき関係を組織的に展開することであろう。鹿児島修学館中高等学校は国際バカロレア校であり,それゆえATLスキルの育成を柱とする教育課程が編成されている。それらと生成AI利用のスキルやモラルとの関係を整理すること,換言すれば,鹿児島修学館中高等学校としての生成AI利用のカリキュラム(学年・教科・単元等)を開発することが望まれる。学校の報告によれば,すでにその構想は生まれているので,ぜひ今年度中に形にしていただきたい。もちろん生成AIの利用は,日々,変化を遂げている。今や小学校においても,子どもたちがそれを利用している。そのため,生成AI利用のカリキュラムは,現状では暫定的なものにしかならないけれども,それでもなお,いったんその全体像を考えることは,次のステップに進むためには価値あることである。

 なお,学校の報告でも記されているが,鹿児島修学館中高等学校の先生方は,特別研究指定校のミッションである,実践の発信にも努力を傾注している。夏休みの他校との交流,全日本教育工学研究協議会における研究発表などに,それは確認できる。実践研究2年度目には,授業公開を含む研究発表の機会が設定される。その発信を新しいスタイル・デザインで実施していただくことも,アドバイザーとしては期待している。

本期間(1月~3月)の取り組み内容

【1月】

◎2026年1月8日 教員自主学習会(所見作成プロンプトのノウハウ共有)

 一部の教員が独自に研究していた「AI活用による所見文作成」の知見を共有するため、自主的な研修会を企画した。特定のリーダーが主導するトップダウン形式ではなく、希望者が集まり具体的な手法を学び合うボトムアップ型の研修としたことで、実践的なノウハウの横展開を図った。

 通知表や指導要録の所見について、クラス担任だけでなく、関係する教員が持ち寄った情報をもとに文案を作成することで、内容的にもそれぞれの生徒をより多様で多角的な視点から記述することができるのがメリットのひとつである。

〔自主学習会という位置づけであったが多くの教員が参加していた。〕

◎個別フィードバックシートの作成と1on1面談(高1「科学と人間生活」)

「科学と人間生活×数学」の融合単元や「中和滴定」の実験レポートにおいて、生成AIを用いて生徒一人ひとりへの個別フィードバックシートを作成した。従来、全生徒への詳細な質的コメントの提供は時間的に困難であったが、AIの活用により実現した。作成したシートを基に個別面談を行うことで、生徒の科学的思考力とメタ認知能力を促進する対話が可能となった。

◎2026年1月31日 文部科学省主催 国際バカロレア教育推進ウィンターセミナー「AIと情報・メディアリテラシーを活用した個別最適な学び」参加

https://ibconsortium.mext.go.jp/news/news-4084/

「生成AI時代の学問的誠実性とAIリテラシー:学校現場の今を語り合う」をテーマとしたセミナーにオンライン参加した。他校のIB認定校におけるAI利用ポリシーの運用や、生徒への具体的なリテラシー指導の実践事例を収集した。

また、基調講演「AI時代の学びとリサーチスキルの再定義」の講師:Dr. Justin Zhang(ジャスティン・ジャン博士)のホームページには多くの参考になるリソースがあり、今後の活用が期待される。

https://www.justinzh.com/home

【2月】

◎学年保護者会での実践報告(2月5日)

「生成AIとキャリア」をテーマに、保護者へAIの進歩と社会動向について説明した。その際、AIによる音声入力・音声出力の実演を行い、AIが「学びの伴走者」としてどのように機能するかを具体的に提示した。生徒が「自分軸」を持って技術と向き合う重要性を伝える、効果的なデモンストレーションとなった。

◎校内向け「IB通信」の発行による「学問的誠実性」の周知と啓発

 全校生徒・保護者に向けて「学問的誠実性ポリシー」に関する解説を、生成AI活用の視点を交えて発行した。

 IBの学習者像である「信念をもつ人(principled)」に基づき、単なる「ルールの遵守(ズルをしない)」に留まらず、なぜ誠実な学びが必要なのかを以下の2点から強調した。

★自己の学力形成: 誠実な思考とプロセスを経てこそ真の実力が付くものであり、AIに学習の核心を「肩代わり」させてはならないこと。

★他者への敬意: 正しい引用は先人の知見に対する敬意であり、知的財産を守るための不可欠なスキルであること。

 また、生徒がAIを利用する際に「この使い方は自分の思考力や表現力を高めることにつながっているか」を自省するよう具体的に促した。これは、本研究課題の核である「評価や振り返りにおけるメタ認知能力の育成」を、生徒が日々の学習の中で主体的に実践するための具体的な指針として位置付けている。

◎生徒向け「生成AI学習ガイド」の素案作成

 AI活用群とAI活用禁止群で学習成績にどのような影響が起きるかに関する「成績には影響がないが学生の学習プロセスには影響があったと示す」研究*を参照し、「こういう風に活用するといい」という前向きなイメージで作成した。

*Christian Rojas, Rong Rong, Luke Bloomfield(2025) ‘Allowing Generative AI in Class: Evidence from a Semester-Long Controlled Teaching Study’

◎学際的単元(IDU)ユニットプランナー(単元計画書)の作成補助と動画共有

 来年度の各学年の「学際的単元」実施に向けて、新たな教科どうしの組み合わせで単元計画書作成を進めている。教科会や相手教科との合同会議時間の確保が課題となる中、AIを活用して学際的単元ユニットプランナーの作成を推進した。さらに、プランの意図や特徴を解説する動画をAIで生成し、教職員間で視覚的にイメージを共有することで、非同期での円滑な協働体制を構築した。

◎音声データからの議事録自動作成

 説明会等の録音データと配布資料を基に、AIを用いて議事録を作成した。内容を聴き直して要点をまとめる作業がほぼ不要となり、情報の集約と共有のスピードが飛躍的に向上した。

◎「ATLスキル」と「AIリテラシー」の関連表の検討

 国際バカロレア(IB)の「学び方のスキル(ATL)」に生成系AI活用のスキルを位置付ける作業を進めた。次年度から各教科の単元計画(ユニットプラン)にAIリテラシー教育を体系的に組み込む準備ができつつある。

◎教員による外部資格取得の継続支援

 教員のAI理解を深めるため、ICT委員会を中心に「ITパスポート」や「生成AIパスポート」の受験・資格取得を引き続き促進した。参考書の共有や情報交換を通じて、教員間の学び合いを活性化させた。

【3月】

◎過程重視探究発表会(定時制高校による総合的な探究の時間の全国大会)見学(3月13日)

(【発表会の「目的」】
 決して恵まれた環境と言えない定時制課程における探究活動において、結果ではなく、どのくらい自分の好きなものに対する探究活動に取り組めたかを重視する発表会を行い、生徒に成功体験を経験させ、これからの人生において自信を持たせる。今回の発表会を通じて「過程重視の探究」モデルを提起する。) 

【発表参加校】

青森県立三沢高等学校
青森県立田名部高等学校
福岡県立八幡中央高等学校
宮崎東高等学校定時制課程夜間部

【所感等】

 宮崎東高等学校定時制課程夜間部は、数年前から探究に力を入れ、半数近くが退学していた状況から、退学者がほとんどいない状況になった。「小中学校で不登校の経験があったり、人前で話すことや多人数でいることが苦手な生徒が多い」という状況で「自分の興味関心、生きがいを見つけてもらうために探究活動」を実施している。発表会でも「プロセス重視」を明確にしている。

 また、「千葉大学と連携して生成AIによる評価も取り入れて、多面的に評価をしようとしているところ」(発表会案内より抜粋)とのことで、その実際を見学することができた。

 生成AIを活用しての評価は全体の30%程度で、それ以外は審査員によるもの。(どちらにおいても、「じっくりと粘り強く探究活動(アンケートや実験の数が非常に多い、探究に自分の休日などを使って行っているかなど)を行っているか(結果や成果は出ていなくともよい)」という評価項目が他の3倍の比重になっている。)発表後の質疑応答では、審査員の方々からのポジティブなフィードバックが印象的だった。

 自分たちの学校の探究学習がどうあるべきか、理念と実践がともに明確になっており、生徒の発表からもそのことがよく伝わってきた。

◎総括的評価課題でのAI使用状況把握・振り返りの促しと共有(中学2年国語)

 課題のワークシートの最後に、AI活用も含めて、どのような力を借りて作成したかや、AIをどのように使ったかを振り返る欄をつくった。

 まずは生徒自身が、AI活用について振り返る機会をつくり、教員も把握し、いっしょに考える機会になりうる。

【↓ 生徒の記入例】
◎第3回アドバイザー訪問(3月18日)

 授業見学をしていただくと同時に、次年度に向けての課題整理や計画作成を行った。

 授業見学については、全員がAIを利用する授業、一部の生徒がAIを利用している授業等、結果的に多様な状況を把握することができた。

◆新高1数学

(多様な学び方のひとつとしてAIを活用)

◆新高1春の学習会「外部講師によるAIリテラシー育成講座」

(AIのしくみと使い方のこつを体験しながら考える)

◆高1化学基礎

(「自分の言葉で説明できるようになること」を目標にAIを活用)

◆高2論理国語

(小論文のルーブリックをもとにフィードバックを得るのにAIを活用)

◎生成系AIを活用した通知表・指導要録所見作成の実装

 年度末の繁忙期に向け、研修会で得たノウハウをもとに通知表や指導要録の所見作成に焦点をあてた組織的取組を実施した。

  • 手法: 担任一人が抱え込むのではなく、複数の教員が分担して情報を入力・生成する体制を構築。AIが出力した下案を教員が吟味・修正するプロセスを徹底した。
  • 成果: 作業時間の短縮に加え、複数の教員の視点を取り入れた多角的かつ客観的な生徒理解に基づく所見作成が可能となった。事後のアンケートでは、業務負担軽減と教員間の連携強化について多くの肯定的な回答を得た。
1年次実施報告書の作成と課題の抽出

 実践を通じて、AI生成文に対する心理的抵抗やリテラシーの差といった課題も再認識された。これを受け、すべての教員を包摂できるよう、次年度は「自律的に学び、共有し、協働する文化」をより強固にするためのガイドライン整備や定期的な研修の継続を計画に盛り込んだ。

アドバイザーの助言と助言への対応

  • ・今回のアドバイザー訪問で実施されていた「AIリテラシー育成のための講座」をどのタイミングでどのように実施するかの計画が必要。
    → 総合的な学習の時間で実施の検討と、IBのATLスキルと関連付けて各教科内で育成する計画を表にまとめる。
  • ・研究公開について
    「完成されたものを参加者に見せる必要はない」
    「参加者と本校の先生が意見を交わす機会が必要」
    「その機会にも、生成AIを利用したい」
    「中学と高校、両方の授業を公開してほしい」
    「全員がAIを利用する授業、一部の生徒がAIを利用している授業の両方が公開されることが望ましい」
    「AIリテラシーを含む、情報教育に関わる教育課程表(R9年度版)を提案してほしい(暫定版でよい)」
    → 特に、「全員がAIを利用する授業、一部の生徒がAIを利用している授業」などは、日常からそのような状態になるよう取り組んでいきたい。

本期間の裏話

 第3回アドバイザー訪問(3月18日)に向けて、校内で「当日AIリテラシーを育むことにつながるような授業をされる予定はありませんか?」と呼び掛けたところ、申し出があった。

 アドバイザー訪問や授業公開に向けて特別に準備するのではなく、元々の教育活動を見ていただいてフィードバックいただけることをうれしく感じた。

 小論文に対しての生成AIからのフィードバックを活用する実践とのこと。今回の研究テーマにぴったりのものが、日常的に取り組まれていることがわかった。

 また、2月に県外の学校からお問い合わせをいただき、第3回アドバイザー訪問(3月18日)の日に訪問見学いただくことになった。はるばる東京から鹿児島まで見学に来ていただくような意欲ある学校とつながりをもち、情報交換できることをこちらもたいへんありがたく感じる。

本期間の成果

◎ボトムアップ型の校内研修による「組織的知財」の形成

 一部の教員による自主的な学習会を起点として、年度末の所見作成業務における生成AI活用のノウハウが全校規模で共有された。これにより、単なる業務効率化に留まらず、複数の教員の視点を介在させることで、より多角的で客観的な生徒理解に基づいた記述が可能になるという質的向上を確認した。

◎IB校としてのAIリテラシー・ポリシーの言語化と周知

 文部科学省のセミナー等の知見を反映し、「ATLスキル」と「AIリテラシー」を統合した関連表の素案を作成した。また、「IB通信」を通じて「学問的誠実性」の観点からAIとの向き合い方を生徒・保護者に発信し、自己の学力形成のためにAIをどう「誠実に」使うかという規範を再確認した。

◎教員の専門性向上と自律的な学びの定着

「AIパスポート」等の資格取得を促進し、組織的なスキルの底上げを進めた。また、外部アドバイザー訪問に合わせて自発的にAI活用の公開授業を申し出る教員が現れるなど、生徒の学習面でも日常的に生成AIを活用する土壌が校内に根付き始めている。

今後の課題

◎リテラシーや活用意欲の個人差への対応

 1年間の実践を通じて、生成AIに対する心理的抵抗やスキルの差が明らかとなった。すべての教員を包摂できるよう、次年度はより柔軟な支援体制の構築が求められる。

◎中学生への本格展開と指導計画の精緻化

 先行して実施した高校生の実践をモデルとしつつ、中学生が安全かつ効果的にAIを活用するための具体的な年間指導計画の策定と、発達段階に応じたリテラシー指導の徹底が必要である。

◎研究成果の測定と評価の実施

 この1年間でどのくらい日常的な活用が進んだのか、AIからのフィードバックが、実際に生徒の「学び方の学び(メタ認知)」にどう寄与しているか等を定量・定性の両面から客観的に測定・分析したい。

今後の計画

◎次年度ユニットプランへのAIリテラシーの組み込み

 作成した「ATLスキルとAIリテラシーの関連表」に基づき、各教科の単元計画において、どのタイミングでどのようなAI活用・リテラシー指導を行うかを具体的に実装する。

◎「生成AI学習ガイド」の配布と活用開始

 2月に作成した素案を完成させ、新年度から全生徒に配布することで、生徒自身がAIを「学習の伴走者」として主体的に活用できる環境を整える。

◎5月20日(水)アドバイザー訪問

 公開研究会がより充実したものになるよう、校内で模擬的に実施してみる。

5時間目 授業公開(中学1クラス、高校1クラス 見ながら気づき・質問も入力)

6時間目 研究協議会

◎第2回公開研究会の計画(2026年度)

 1年間の蓄積をさらに発展させ、各教科での具体的な探究学習や自己調整学習におけるAI活用事例を広く学外へ公開し、知見を共有するかたちを検討する。同時に、公開研究会を本校での実践を深化させ、振り返るきっかけになるよう位置付けたい。

◎10月28日(水)研究発表会予定

5時間目 授業公開(中学2クラス、高校2クラス 見ながら気づき・質問も入力)

生徒下校後 研究協議会(4か所) 生徒も参加

13:00~13:35 全体説明(動画であらかじめ配信も)・質疑応答(録音➡AIでまとめ)

13:45~14:35 研究授業スタート

14:45~15:35 研究協議会(参加者の気づき等、AIでまとめ)

15:45~16:45 校長あいさつ等 ワークショップ 教頭閉会挨拶

1年間を振り返って、成果・感想・次年度への思い

 本年度は、生成AIを、単なる「便利な道具」としてではなく、IB教育が目指す「信念のある人」・「学問的誠実性をもった」学習者を育むための強力なパートナーとして位置付けるための土台作りを行った1年であった。

 定期的なアンケートや校内研修、自主学習会を経て、知見が組織全体へとボトムアップで広がっていく過程を実感できた。特に、教員同士がAIを介して生徒理解を深め合い、協働して校務に当たる姿は、本研究が目指す「蓄積・共有」の理想的な形の一つと言える。

 また、県外の意欲ある学校から視察の問い合わせをいただくなど、本校の実践が学外からも注目されていることは、励みのひとつとなる。

 次年度は、この1年で整備したポリシーやガイドラインを基盤とし、「総合的な学習(探究)の時間」から各教科の日常的な授業実践へと活用の場をさらに広げていく。AIが教育の質をいかに高め、生徒の「自分で考え、表現したい」という意欲をいかに引き出せるか、その可能性を全校体制で追求し続けていきたい。

成果目標

①【教員による生成系AIの理解・活用】

 教師が日常的に生成系AIを使いながら、理解を進め、授業や生徒の学習での活用方法を探り、実践する。

「ITパスポート」や「生成AIパスポート」等の外部資格取得を促進し、専門的知識に基づいた活用とリスク管理能力を組織的に担保する。

②【生徒が生成系AIを活用する際のリテラシー・モラル指導の環境整備】

 国際バカロレア(IB)の「ATLスキル(学び方のスキル)」と「AIリテラシー」を関連付ける。これに基づき、2年目からの組織的なAIリテラシー育成を計画する。

③【 生徒の探究学習・自己調整学習における生成系AI活用方法の蓄積・共有(特に評価や振り返りにおけるメタ認知能力育成)】

「総合的な学習〔探究〕の時間」において、生徒達がどのようにAIを活用したかを把握する。各教科でも各教師の自発的な取り組みを共有する。

アドバイザーコメント
木原 俊行 先生
四天王寺大学
教授 木原 俊行 先生

 学校法人津曲学園鹿児島修学館中学校・高等学校(以下,鹿児島修学館中高等学校)がパナソニック教育財団の実践研究助成特別研究指定校としての取り組みを始めて,1年弱が過ぎた。

 鹿児島修学館中高等学校のアドバイザーとして,筆者は,2026年3月に同校を訪問し,いくつかの授業において,生徒が生成AIを活用している姿に接した。また,2026年1月~3月までの同校の校内研修等について説明を受けた。

 今回の訪問で授業を見学して,鹿児島修学館中高等学校の生徒たちの生成AIが熟してきたことを実感した。それは,次のような授業例に代表される。

 高校1年生の化学の授業では,金属のイオン化傾向やそれと反応性の関係性について各生徒が探究的な学びを進めるための「問い」を設定する場面で,生成AIの活用が導入されていた。それは,まず教科書を利用して生徒が仮の「問い」を設定する,その妥当性を高めるために生成AIを活用する,生成AIによる「助言」を踏まえて生徒が自分の言葉で「問い」を作り直すという3ステップを刻むものであった。つまり,当該授業では,生成AIの利用が2段階の生徒の自律的な思考の間に位置づく過程が構成されていた。そして,そのような生成AIの活用によって,いわゆる自由進度学習が実現していた。

 また,中学校3年生の数学の授業では,まず生成AIの活用について教員から生徒に,「AIを『答え合わせ』ではなく『思考の伴奏者』にする」「AIの『クセ』を見抜こう!」といったメッセージが手渡され,生成AI利用の基本スタイルがきちんと指導されていた。換言すれば,生成AIの利用前に,その特徴について教員と生徒が共通理解する場面が設定されていた。それゆえ,その後の数学の問題を解答する際に,ある生徒は,すぐに生成AIを利用して思考していたが,他の生徒は,友人と協力したり,教員に相談したりしていた。つまり,生徒の解法に向けたアプローチが多様化されていた。さらに,時間が経つと,一部の生徒たちはそれらをミックスして問題の解法に取り組んでもいた。一部の生徒たちは,生成AIを友人と協力して活用するといった姿を示していた。

 こうした生徒と生成AIのよき関係を強化するために,鹿児島修学館中高等学校では,AIリテラシーについての学びをカリキュラム化しようとしている。その試みとして,外部講師(同校の卒業生)を招聘し,生成AIの特性等を生徒が理解するための機会が授業化されていた。外部講師は,生成AIの仕組みや特徴,ハルシネーションなどについて生徒に解説したり,生徒に事例検討をさせたりしていた。

 学校の報告書に記載されている,生成AI活用に関する教員の自主勉強会の開催,学年保護者会での説明,IB通信上での生成AI活用の留意点の啓発等々の取り組みが,上述した生徒の生成AI活用の充実を支えていると思われる。

 鹿児島修学館中高等学校の生成AI活用に関する実践研究は,極めて順調である。他校の先生方の生成AI活用の授業化に資する知恵が蓄積されている。同校では,2026年10月に研究発表会を催し,参加者と実践研究の中間的な成果と課題について対話する予定である。ぜひ,多くの方と,会場でお目にかかりたい。