新学習指導要領では、学力向上が強調されており、学校環境や児童・生徒の現状をふまえた、授業づくりと、教育課題への取り組みがますます必要となってきています。
一方、日本は昔から、教師同士が授業づくりに関するアイデアや意見を出し合い、互いに向上しながら、授業力を高めてきました。
また、その成果を記録したり、発表会等をしたりしながら、アイデアやノウハウを学校内外と共有してきました。いわゆる学校における実践研究、「校内研究(学校研究)」です。
2010年9月に報告された国立教育政策研究所の調べでは、組織的に校内研究を実施している学校ほど教員間のコミュニケーションが
十分にとれており、授業の水準が高いことが明らかになりました。(*)
また、多くの小・中学校で、校内研究のための全体的な委員会が
組織されていることが明らかになりました。(*)
(* 2010年10月11日 日本教育新聞
国立教育政策研究所「教員の質の向上に関する調査研究」「校内研究等の実施状況に関する調査結果」
に関する掲載記事より)
実際、当財団の”実践研究助成”を受けられた学校でも、助成を受けたことで校内の研究が活性化し、結果として、教員間のコミュニケーションが密になり、学力向上に結びつく授業づくりを実現した事例などが数多く見られます。
学期末に、「生活規律確立」「基礎学力定着」「授業力向上」の3部会で、研究の成果を確認しました。(中略)それらを全体研修の場で発表し合い、共有化することで来年度の研究につなぐことができると考えたからです。結果として、学年の実態に応じた指導内容や指導法、子どもの学力の実態などを聞くことができ、来年度の研究の構想に役立てることができました。
(富山市立山室中部小学校の活動情報より抜粋)
この2年間,本研究助成によって,本校の研究はずいぶんパワーアップしました。本校では「思考力・表現力の育成」をめざし,研究に取り組んでまいりました。「どうすれば子どもたちに思考力,表現力をつけることができるのか,そこにICTをどう役立てることができるのか」まさに,みんなで手探りをしながら取り組んできました。
(中略)この2年間の研究助成で得たものは,「ICT環境」という目に見えるものも勿論ですが,「みんなで考え,作り上げる三和小研究の風土」そのものではないかと思います。
(三次市立三和小学校の活動情報より抜粋)
一方、実りある研究を実現するためには、研究テーマに即した部会を設置するなど、体制づくりや運営方法にも工夫が必要であり、多くの学校が”どのように研究を進めていけばよいか”大変悩まれています。
当財団では、そんな先生方の疑問やお困りを解決するためのノウハウ集を提供していますので、ぜひこの機会にご一読下さい。
多様にある教育課題の中から、優先順位を決めて、組織的に解決に取り組んでいくためには、学校長の”経営力”や学校の実践をひっぱっていく”リーダーたちの資質の向上”が不可欠です。
しかしながら、経営力や資質だけでは実現できないのも現実です。というのも、ある調査(*)では、学校長が、”特色ある学校づくり”のために裁量できる予算は、学校予算の約1割強、半数以上が20万円以下という結果が出ています。
つまり、”特色のある学校づくり”を打ち出したとしても、それを実現するための原資確保が学校長たちの大きな課題となっているのも事実なのです。
*上記グラフはH18年度 文部科学省委託調査研究「新教育システム開発プログラム」
「学校長の裁量・権限に関する調査」ベネッセコーポレーションによる調査報告書より一部抜粋。
私たち財団では、約37年にわたり”実践研究助成”という形で、教育現場で課題解決に取り組む学校や先生方を応援してきました。
当財団 理事長 遠山はこう申します。「すべての学校がもっとよい学校にし、よい授業にしたいという意欲を持っている。自分の学校はこういう点をよくしようということを衆知を集め、知恵を出し、議論してもらいたい。そうすることで意欲が一つにまとまり方向が決まってくる。意欲を申請書という形で表してほしい。そういうプロセスを踏むと学校は良くなってゆきます。」