実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第40回特別研究指定校(活動期間:平成26~27年)

多摩市立 愛和小学校 /平成27年度4-7月期

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研究課題と成果目標
研究課題と成果目標

取組内容
取組内容

裏話
裏話

成果
成果

今後の課題
今後の課題

アドバイザーコメント
必見! アドバイザーコメント

 

研究課題と成果目標

 

[研究課題]

タブレットPCの日常化が拓く新たな教育Styleの創造
-学びの環境(授業、教師、地域)のRe-designを通して

[成果目標]

  • タブレットPCの日常化を促すルーティンの確立
  • 活用できるアプリケーション一覧の作成
  • 代表的アプリケーションを活用した協働学習、表現活動の授業展開のモデル化
  • タブレットPCの日常化がもたらす(教員、子供の)変化の把握
  • タブレットPCの積極的活用による基礎基本の定着とキーコンピテンシーの育成

本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応

 

校内研究会4回開催(全体会1回+授業研究等分科会提案3回)
授業報告会1回開催(*)

  • 4月8日(水)校内研究会(全体会)
    研究テーマ、内容、組織、日程の確認
  • 6月10日(水)校内研究会(第1回授業研究)高学年分科会提案
  • 7月9日(木)校内研究会(第2回授業研究)中学年分科会提案
  • 7月15日(水)校内研究会(分科会提案)通級指導学級分科会提案
  • *6月27日(土)i和design公開プレゼンテーション
    総務省「先導的教育システム実証事業」協力校中間報告会開催

第1回授業研究

6年 社会「貴族のくらし 武士の世の中」 授業者 才記 舜太郎 教諭
貴族と武士の違いを捉えさせるために、学習支援アプリ「スクールタクト」を活用して「自分はどちらの身分になりたいか」の課題について各児童の意見を表出させ、
友達との意見交換をして一人一人の意見や時代の理解を深めさせた。
(写真 School Taktを活用した社会科授業)

多摩市立愛和小学校活動報告イメージ2

多摩市立愛和小学校活動報告イメージ3

第2回授業研究

4年 図工「絵を鑑賞しよう」 授業者 竹田 圭子 教諭
鑑賞活動を学習支援アプリ「スクールタクト」を活用して、普段なかなか意見を出せない児童にも自分の意見を書き込ませ、お互いの考えを一覧で効率的に知らせることで、同じ一枚の絵でも人によって様々に想像を働かせていることに気付かせた。

分科会提案

通級指導学級 「ICTを用いた、特性に合った漢字学習の方法」 提案 おおぞら教員
AT(アスシティブ・テクノロジー)の考え方と効果的なアプリの紹介
※AT:アシスティブテクノロジーとは、障害を持つ人々を支援するための技術全般を指す用語
校内研修等を通じた児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた教材や支援機器の充実・
活用学びを支える手段の1つとして、タブレットのAT的活用は有効であることを提案した。
*参考アプリ一覧として掲載

多摩市立愛和小学校活動報告イメージ4

i和design公開プレゼンテーション

多摩市立愛和小学校活動報告イメージ1

  • 総務省「先導的教育システム実証事業」協力校中間報告会
    教育分野においてICTを利活用するにあたり、クラウドやHTML等の最先端の情報通信技術を柔軟に取り入れ、多種多様な端末に対応した低コストの教育ICTシステムの実証事業の協力校として、現時点における学校現場での取組み状況を報告し、今後の実証事業の推進に資することを目的に開催した。

公開テーマ「公立学校×Cloud×EdTech」
午前中 全8学級2コマの授業公開
午後  講演「教育の情報化に関する総務省の取組について」 総務省 元山和久 様
ICT CONNCT21 普及・促進SWGによるパネルディスカッション
「教育現場のニーズを、EdTechはいかに解決できるのか?」
本校活用のハード&ソフトの展示

アドバイザーの助言と助言への対応

◯アドバイザーからの助言

  1. 愛和小学校のICT環境を活かした創造的な授業を提案すべきである。二項対立型授業は、 一つの型としてあってもよい。
    →研究授業を行う際に事前の協議に研究部も参加して、研究の意義や方針がずれないよう方向性を定める。
    単なるICTを活用した工夫・改善レベルの授業提案に終わらないよう、創造的な提案を促していく。
  2. 児童の ICT活用は精選されてきた。
    →さらなる日常化をめざして、活用を推進していく。

  3. 授業の変化により教師の役割も変化するが、その役割をもっと自覚して意図的に行うべきである。
    →授業研究においては、指導案にあらかじめ教師の役割(facilitaterとしての行為)を提示できるよう形式を変更した。
  4. 協働学習においてコミュニケーションをどうデザインするかは大事なこと。直接声に出して話し合えばよいとは思わないが、児童がコメントを書いている圧倒的に長い時間における教師の役割を再考したい。
    →授業全体の設計において、めあてを明確化するとともに学習支援アプリを活用した有効な展開、流れを今後の授業研究の中で考えていく。ICT活用による子供のコミュニケーションと直接の対面によるコミュニケーションとのバランスについても検討していく。
  5. 本校の研究では、教科外で育むべき力の育成も大きな目標となっているはずである。指導案のめあてを記載する箇所には、授業教科でのめあてと教科外で育成をめざすめあての二つを示すべきではないか。
    →指摘いただいた二つのめあてを記載できるよう指導案の形を変更し、常に研究全体で目指す児童像は外さないよう意識する。
 

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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 
  • 研究活動に消極的であった分科会が、何回かの意見交換を通してタブレットを活用した素晴らしい分科会提案をした。この提案は今後様々なところでプレゼンできる汎用性及び質の高いものであると考える。
  • 今年度よりクラウドの活用を本格化するためにマルチOSに挑戦し始めた。 2年生にWindouwsタブレット、6年生にChromeBookを配布したが、iPadを継続して使用してきたため、それほどの違和感なく児童が使用できたことに安堵感を覚えるとともに彼らの操作リテラシーの高さに改めて驚かされた。
  • 反面、ステルス設定されている校内Wi-Fiへの接続設定にはここでは言い尽くせない大変な苦労があった。
  • 夏季休業に入ったが、ほぼ全校児童にタブレットを持ち帰らせることができ、長期休業中における活用の事実を創れることは、今後の地域のRe-designの推進に様々な可能性をもたらすことになると期待している。

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成果

 

  • 今学期の活動を通じて、研究活動のGoal(3月)が具体的に見えてきた。特に授業のRe-designが進み、3つのRe-designの関係性やそれぞれの具体が鮮明になってきた。
  • 本研究がもつ意味・意義ー20年後の社会を生きる子どもたちに責任をもつ教育を実践するために本研究があり、新しい時代を拓くKeyとなるタブレットPC活用のための基本的視座が明らかになってきた。
  • ICT推進にかかわる定番の言説に対して、積極的推進者の立場としての対応スタンスを明らかにできた。
  • 「不易と流行」をいう人にとってのICTは今後20年たっても流行のままである!
  • 「ICTを使うことが目的化されている」という授業批判に対して、ICTを使ったことない人に言われる筋合いはない!
  • 従来の教科教育における「授業力」とICTを活用した「授業構想力」は全く別物。だから「授業力のある人がICTを使えば鉄板」は、違う!
  • ICTの活用は授業のImprovement(工夫・改善)ではなく、ParadigmShift(非連続的な劇的な変化・変革)!
  • EdTech Innovationとは、「学習者を主語に教育という制度や仕組みが再構築されること」(by Masahiro Sato)

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今後の課題

 
  • 教員のRe-design及び地域のRe-designの具現化
    授業のRe-designについては60%位の進捗状況だと考えるが、授業との関係性を手がかりにそれぞれについての具体を明らかにしていかなければならない。
  • 保護者・地域に対する新しい教育Styleの理解・啓発
    研究が進めば進むほど新しい教育Styleと従来授業との差が開いてくる。その差のもつ意味について丁寧に説明してかなければ、保護者・地域の理解はなかなか得られない。
  • 授業のRe-designを一層推進するための基本的視座の明確化
    必要な時代認識、教科教育との関係性、新しい授業構成の在り方等について検討し,今年度のJAET(富山大会)で発表する。

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公開研究会の計画

 
  • 8月25日(火)i和design 教員セミナー
  • 10月31日(土)i和design プログラミングカンファレンス
  • 3月12日(土)パナソニック教育財団特別研究指定校研究発表会

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アドバイザーコメント

大阪教育大学大学院連合教職実践研究科 准教授 寺嶋 浩介 先生

 
寺嶋先生

■学校全体のシステムが改革されてきた

同校の取り組みを表層的にとらえると,「公立学校なのにも関わらず,なんだか変わった学校が1人1台端末導入に関する取り組みをしている」ということになるだろうと思う。しかし,そのウラでは,今後の学校経営にあたって,実に様々な提案をしてくれていると思う。以下に例を挙げる。

  • 特にICT活用による教育を進めようとする企業と,持ちつ持たれつな関係を築きながら,1人1台端末の導入を図ろうとしている点
  • 3年生以上の教科担任制を実施しだした点(ただし,これは高学年の児童の数が少ないということで可能になっている側面もある)
  • 総合的な学習のカリキュラムを精選し,プログラミングと学校菜園の活動に絞っていった点

このような改革とともに,スクールリーダーとしての校長の役割が昨年から比較すると,変わってきた。具体的に,学校内の校務分掌については,副校長や主幹にかなりリーダーシップが移譲されるようになり,校長は「経営者」として外部と交渉するような立場となっている。今年は,校内の数名の教員が,学会や研究会で発表をしたり,また公開の研究会を運営する予定なのだそうだ。8月4日の財団の中間報告会でも,3年目の才記教諭が印象に残る発表を行った。このような環境で,多くの教員が成長の機会を与えられるようになってきた。本校はICT活用に取り組むだけではなく,学校組織としても成長をしながら,教員個々の成長が図られていると思う。
 やはりただ闇雲に1人1台端末を導入するだけでは何も変わらない。一方で,工夫次第で学校全体を改革する可能性を秘めた,強力な道具であるとも言える。

■ 愛和型学習の提案性

「教育のRe-design」を標榜する同校の今回の活動報告は,実に過激であった。しかし,問いかけていることから意外と考えさせられる点は多い。

  • 教科を越えて,子どもが身につけないといけない力は何なのか
  • これまでの教科教育は,必要なのか
  • これからの教師に求められる「授業構想力」やアクターとしての教師のあり方とは

しかし,それらがまだ学校の共通理解になっていない。1人1台端末活用については,日常化がすでに進んでいるので,これからの教育を見据えた際に,ぜひこうしたことに対する提案をしていただければと思う。

 

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