実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第37回特別研究指定校(活動期間:平成23〜24年)

守口市立橋波小学校の活動報告/平成24年度1月〜3月
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セールスポイント

2年生の研究授業

 今年度最後の研究授業が1月31日に行われました。2年生には、タブレットPCが導入されていませんが、グループで1台のタブレットPCを使った授業が行われました。授業の導入段階で、タブレットPC上でパズルにしたピカソのゲルニカを完成させます。その後、ゲルニカについての鑑賞を行いました。

3学期実践報告会

 今年度、3回目の実践報告会を実施しました。全教科・領域の実践を1つ1つ聞き合いました。実践報告会も4年目で12回目になりました。

実践事例の検証(2学期・3学期分)

 それぞれの実践に関して、活用型学習とICTの活用型検証を行いました。それぞれの実践に関してグループで話し合いながら、ワークシートに検証していきました。

児童対象ICT活用のアンケート

 これで、4回目のアンケートを行いました。

実践経過

1月  1月31日(木)研究授業 2年生 図工

 2年生が、ゲルニカの鑑賞を行いました。絵の細部まで注目させるために、パズルにしました。
パズルが完成すると、子どもたちが、この絵がどんな絵なのかを考えました。
 このピカソのゲルニカ鑑賞の授業は、昨年度6年生でも行われたものですが、今回は2年生で実施されたものでした。同じ教材で学年が違うと教える内容や考える内容が違うというとても良い授業になりました。
 通常だと、同じ教材を違う学年で扱うことが少ないと思います。それの敢えてチャレンジしたおもしろい提案授業でした。


 
2月  2月27日(水) 実践報告会 実践事例の検証会

 全教科・領域で実践報告が行われました。1つ1つの実践を全員で聞き合いました。その後、実践事例の検証を行いました。

実践事例の検証会では、ワークシートを使って1つ1つの実践について考えました。まず、実践が活用型の授業であったのかどうかを確認します。その後、ICT活用が、基礎的効果・本質的効果・副次的効果のどれに位置していたのかを考えました。

ICT活用のアンケートを実施しました。これで、4回目の実施になります。

 10月に比べると、ICTを使いたいという子どもが増えました。また、ICTを使った方が発表しやすいという子どもも増えました。ペアやグループでのICT活用も良いという子どもが増えました。10月よりも少しだけICT機器活用が良いという結果になりました。

 

成果と課題

2年生の研究授業

 2年生では、これまでタブレットPCを使ったことがありませんでした。しかし、今回の授業のため、3回程度使ったようです。研究授業の際に子どもたちは、非常にスムーズに使えていました。
 タブレットPC上でパズルにした点は、とてもおもしろい取り組みだったと思います。授業者のアイディアが非常に生きた授業だったと思います。また、パズルにすることで、細部まで注目していた点が授業の後半に繋がっていました。

実践事例の検証(2学期・3学期分)

 実践事例の検証は、2学期と3学期分を行いました。検証することは、とても良いことだと思うのですが、実践の数が多く、まとめてするには少し無理があったように思います。公開授業(11月30日)の後に、2学期分の検証が出来れば良かったと思います。ただ、日程的な課題もあり、調整が必要だと考えています。

 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

2年生の研究授業

 2年生には、タブレットPCから大型モニターに転送できるシステムがないため、実物投影機を使ってタブレットPCを映して、大きく映していました。転送システムがあれば、スムーズに出来ますが、無くてもタブレットPCを直接映すという方法を選んだ授業者のアイディアに驚かされました。

2年間の実践を終えての感想

実践事例の検証(2学期・3学期分)

 昨年度末に上がったのは、実践事例の検証が必要であるという点でした。そこで、今年度は、多くの実践事例について検証作業を行う事にしました。またそれに応じて検証ワークシート(活用型学習とICTの活用型検証ワークシート)を作成しました。
 2学期の公開授業研(11月30日)でポスターセッションとして発表しましたが、検証作業はできませんでした。そこで、3学期にまとめて検証作業を行いました。しかし、上記にも述べたように、実践事例の数が多く2学期・3学期分をまとめて行うには時間的に難しかったです。2学期の実践は、2学期に中に行える日程的な調整が必要であると考えます。

低学年でのタブレットPC活用

 本校では、タブレットPCが4・5・6年に導入されています。(総務省絆プロジェクト)しかし低学年には、タブレットPCが導入されていません。それでもタブレットPCを時折使うようになりました。それによって低学年でもタブレットPCが使える環境も整えることも大切だと感じています。無線LANや転送システムなどもあると良いと考えます。

児童のアンケート結果

 2年間で計4回のアンケートを行いました。各項目での多少の変化はあるものの、概ね8割の子どもが、肯定的な意見を持っていました。表現力を高めるのに、ICT活用は有効であると同時に、思考力を高めるにもICT活用は有効であると考えられます。
ただ、そのための授業プランをしっかり考えなければならないということも大切です。研究部を中心に事前研をしっかり行ってきた成果もあると考えます。

授業視察

 今年度は、外部からの授業視察が多くありました。その都度、様々なクラスでの公開をお願いしました。どこのクラスでも受け入れてもらいました。教員の授業力は著しく向上してきた結果であると考えます。どの教員も自信を持って授業に臨めるようになってきた成果であると考えます。
これらの成果を継続するために、次年度の入れ替えで新しく来られる教員には、研修が必要であると考えます。
 

次年度以降、今回の成果をどのように展開するのか

 校内研究授業での討議会では、グループごとにタブレットPCを使って成果と課題を話し合いました。毎回、タブレットPCを使う事で、不慣れだった教員も少しずつ慣れてきたように感じます。今後も継続して行いたいと思います。

 実践事例集(4冊目)の完成が目前に迫ってきました。これら多くの実践を参考にしながら、授業プランを考えて行きたいと思います。そして子どもたちの思考力・表現力の育成に努めていきたいと考えています。

 研究授業前の事前研などは、かなり組織立って計画的に行えてきました。授業についてみんなで考える場として、とても良い機会になっていると思います。次年度も組織的に計画的に実施していきたいと考えています。

 次年度も、実践報告会を行いたいと考えています。教員の授業についてみんなが考える場を持つことは、大切だと思います。

解説と講評

コメント:兵庫教育大学 准教授 永田智子先生

 平成24年度最後の研究授業が1月31日に行われました。タブレットPCが導入されていない2年生が,グループ1台のタブレットPCを使って絵画鑑賞をするという授業でした.パズル状に切断されたピカソの絵をグループのメンバーで協力して完成させたり,ゲルニカの絵を見て気づいたところに印をつけ,学級全体に向けて意見を発表したりといった学習活動が繰り広げられました.これは橋波小学校が目指した,児童がICTを活用して思考したり表現したりする学習そのものでした.

 2年前,橋波小学校は「多様な教科・領域における活用型学力の育成〜電子黒板やタブレットPCなどを用いた活用型学習の実践事例の創造〜」というテーマを掲げて研究をはじめました.2年経ち,先にも述べたようにICTを活用した活用型学習が,一人のスーパー教師だけではなく,全校レベルで行われるようになりました.

 しかし,ここに至るまでの道のりは平たんなものとは言えませんでした.教員がICTを使ってわかりやすい授業を実現するところまでは比較的取り組みやすいのですが,子どもたちにICTを活用させ,かつ,それが習得型学習ではなく活用型学習になるようするというのは,それを1部の教員だけでなく全教員が実現するということは,思った以上にハードルが高いのです.

 研究テーマに迫るために,橋波小学校では様々な工夫を行ってきました.研究部を中心に事前研をしっかり行うこと,校内研究授業での討議会では教員自身がタブレットPCを使って成果と課題を話し合うこと,ワークシートを使ってICT活用が効果的であったか検証すること,児童へアンケートを実施してICT活用効果を検証すること,定期的に全教科・領域での実践報告会を行うこと,年度末には実践事例集を作成すること,など多様で地道な活動が積み重ねられたのです.

 こういった工夫は他校が見習うべきことではありますが,一度に全部導入することはおすすめできません.学校の実情に応じたところから,少しずつ加えていくのです.そうしなければ,初めて取り組む教員にとっては,負荷がかかりすぎてしまいます.橋波小学校では,研究部が中心になって,次に何ができそうかを考え加減しながら進めてきました.こうした努力が功を奏し,今や全国トップレベルのICT活用校になったのです.

 次年度以降,橋波小学校は人事異動によりメンバーが変わります.これまで積み上げてきた橋波小メソッドともいえる工夫を是非とも継承するとともに,新たな風も取り入れてさらに発展していただきたいと思います.また橋波小学校を巣立つ先生方は,橋波メソッドを,新しい学校にも広げていっていただきたいと思います.

 
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