実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

活動情報/第34回特別研究指定校活動情報/第34回特別研究指定校

三次市立三和小学校の活動報告/平成21年度1〜3月
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研究推進リーダー研修会の開催

2月5日(金)に,大阪教育大学教授 木原俊行先生を指導講師としてお招きし,「研究推進リーダー研修会」を開催いたしました。本研修会は,三次市教育委員会と共催し,今年度の研究を振り返りながら,次年度研究計画策定のポイントについて考察するものでした。当日は,三次市内の小中学校の研究主任の先生方に加え,兵庫県,鳥取県の先生方にもご参加いただきました。
写真1 (1)授業公開
研修会では,まずICTを活用した国語科(4年),算数科(5年)の研究授業ならびに事後協議会を行いました。

写真2 (2)研究推進振り返りのポイント

木原俊行先生より,研究推進を振り返る上でのポイントについてご指導いただきました。
写真3 (3)ワークショップ
小グループごとに,チェックリストを使って自校の研究推進の振り返りを行いながら,次年度の課題や展望について考えるワークショップを行いました。

(4)振り返りタイム
本日の研修会を振り返り,感じたことやこれからの課題などについてグループ内や全体で交流し,共有しました。

研究推進パワーアップガイドの作成・配布

写真4 これまで本校で取り組んできた研究推進に関する様々な工夫や手立てを,「研究推進パワーアップガイド」にまとめました。
作成した冊子は,2月5日の研究推進リーダー研修会で配布しました。
参加者の皆様から「わかりやすい」「自分の学校でも試してみたい」といった評価をいただきました。

実践経過

1月
  • 研究推進パワーアップガイドの作成
    • 原稿の作成・校正
    • 印刷・製本
  • 三次市教育委員会との連携
    • 研究推進リーダー研修会の運営について
  • 研究授業事前検討会
    • 指導案検討(研究部会 全体会)
    • 模擬授業(研究部会)
  • 校内学力調査(全学年 算数科・国語科)
2月
  • 研究推進リーダー研修会の開催(2月5日)
    • 授業提案 4年国語科「くらしの中の和と洋」 5年算数科「割合」
    • 研究計画点検のポイント(木原俊行先生より)
    • ワークショップ(今年度研究計画の点検 グループ・全体交流)
    • 振り返りタイム
  • 研究推進リーダー研修会の反省
    • 研究授業のまとめの作成
    • 外部アンケートの集計
  • 研究視察団訪問(鹿児島県より)
3月
  • 研究部会の開催
    • 1年間の部会活動のまとめ
  • 研究全体会の開催
    • 学力調査等の分析
    • 研究推進に関する職員アンケートの実施・集計
    • 今年度研究の成果・課題についての協議
  • 研究紀要増補版の作成
  • 次年度研究推進計画の作成
 

成果と課題

●成果
  • 研究推進リーダー研修会の研究授業では,それまでの研究教科を交換して研究授業を行った。事前検討会や授業提案を通して,自分が所属していない部会・教科の研究内容についての理解を深めることができた。
  • 研究推進リーダー研修会を市教委とタイアップして行うことで,市内の研究主任の先生方に参加していただき,研究推進について理解を深めることができた。
  • 研究推進パワーアップガイドを作成・配布することで,本校で取り組んできた研究推進に関する工夫,手立て等を地域に発信できた。また,原稿作成を通して,自分たちの取り組みの意図や課題を再確認できた。
  • 11月の公開研究発表会以降の研究授業のまとめ,研究部会のまとめ,研究全体のまとめなどの文書をまとめ,研究紀要増補版を作成することができた。11月に作成した研究紀要とともに次年度の職員に配布し,これまでの研究をうまく継続できるようにしていきたい。
●課題
  • 研究推進リーダー研修会では,限られた時間の中で授業提案,ワークショップを行ったため,内容が十分消化できないまま時間切れになってしまった面があった。時間と内容のバランスを考慮し,プログラムや時間配分を計画しなければならない。
  • 市教委研修とタイアップさせることで,より多くの参加者を得ることができた反面,授業に関する協議時間が取れないことや,市教委との詳細な打ち合わせが必要であることなど,考慮すべき点もあった。
  • 研究推進パワーアップガイドの作成計画の見通しが甘く,原稿作成や校正の時間が十分に取れまかった。見通しのある計画が必要であった。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 今年度は研究助成最終年度ということで,これまでの研究をまとめ,その成果を発信しなければならないと考えていました。
 様々な課題や改善すべき点はありましたが,「研究推進リーダー研修会の開催」と「研究推進パワーアップガイドの作成」をやり遂げたことで,どうにか特別研究指定校としての責務を果たせたかな,と思っております。
 

2年間(20・21年度)の実践を終えての感想

 この2年間,本研究助成によって,本校の研究はずいぶんパワーアップしました。
 本校では「思考力・表現力の育成」をめざし,研究に取り組んでまいりました。「どうすれば子どもたちに思考力,表現力をつけることができるのか,そこにICTをどう役立てることができるのか」まさに,みんなで手探りをしながら取り組んできました。
 研究助成金によって,本校のICT環境は飛躍的に充実しました。ICTがいつでもすぐ使えるような環境が整っている学校は,そうはありません。本校が様々な授業改善にチャレンジできたのも,環境によるところが大きいと思います。
 年3回,講師を派遣していただけたことも,特別研究指定ならではの恩恵でした。指導講師の木原俊行先生には,財団による講師派遣に加え,何度も本校にお越しいただきました。私たちが見えていない本校実践のよさや課題,目標を,的確に,また具体的に示していただきました。こうして無事2年間の研究指定を終えることができたのも,先生のご指導の賜物です。本当にありがとうございました。
 こうして振り返ってみると,この2年間の研究助成で得たものは,「ICT環境」という目に見えるものも勿論ですが,「みんなで考え,作り上げる三和小研究の風土」そのものではないかと思います。これからも,この研究風土を大切にして,研究推進に取り組んでいきたいと思います。2年間ありがとうございました。
 

次年度(22年度)以降、今回の成果をどのように展開するのか(課題、目標など)

(1)ICT活用の継続・発展
この2年間で整備したICT機器と,その活用のポイントを,今後もしっかりと授業改善に生かしていく。そのためにも,次年度の早い時期に,ICT活用の実技研修,授業研究を実施し,新しく赴任した職員がすぐに授業で活用できるようにしていく。

(2)研究推進の工夫
この2年間,「全員参加の三和小研究」をモットーに研究推進に取り組んできた。そのノウハウやポイントは先述した研究推進パワーアップガイドに整理した。
次年度からは,パワーアップガイドにのせた様々な手立てや工夫を,さらに改善しながら,三和小の研究がさらに活性化,発展できるように取り組んでいきたい。

(3)研究の発信・交流
今回の研究助成を通して,県内外の多くの学校と交流することができた。今後も本校研究の積極的な発信に努めながら,研究交流の輪を広げ,深められるようにしていきたい。

解説と講評

コメント:大阪教育大学 教授 木原俊行 先生

実践研究でパワーアップする教師たち

 平成22年2月,平成21年度に引き続き,広島県三次市立三和小学校は,三次市教育委員会と協力して,市内の小中学校の研究推進リーダーを対象とする研修会を開催した。この「研究推進リーダー研修会」の企画・運営は,特別研究指定校による地域貢献のさらなる可能性を示すものであろう。その特徴は,各学校の研究推進リーダーを対象とする,ワークショップの実施に象徴される。参加したリーダー教師たちは,三和小学校から示されたチェックリストを利用して,所属校の平成21年度の実践研究の実態を点検し,また,それを踏まえて平成22年度の取り組みを展望した。これらによって,三和小学校の実践研究と他校のそれが共鳴した。
 そのための資料として作成された,『研究推進パワーアップガイド』は,その内容において,秀逸である。学校における実践研究を充実させるための知恵が満載である。三和小学校は,平成21年11月に研究発表会を催し,その際に,研究紀要を配布している。それに加えて,2年間のパナソニック教育財団の「特別研究指定校」としての取り組みのエッセンスをガイドにまとめて,研究推進リーダー研修会の参加者に提供したのだ。それは,研究ポートフォリオと呼べるものであり,参加者にとって有用であるだけでなく,三和小学校の教師たちにとっても,ガイド作成の過程は,研究的実践を省察するためのよき機会となったであろう。彼らは,平成22年3月には,『研究紀要増補版』まで準備するようだ。学校における実践研究の過程や成果を文書にまとめていく作業は,面倒ではあったろうが,三和小学校の教師たちの力量形成に資するものであったと確信する。

 上述した期間だけでなく,平成21年度・同22年度の2年間ずっと,三和小学校の教師たちは,国語科と算数科を中心として,ICT活用による思考力・表現力の育成を図ってきた。例えば算数的活動とICT活用を接続させたり,プロジェクト的な学習にICT活用を位置づけたりして,いわゆる「『活用型』授業」の成立と充実を実現してきた。
 さらに,授業研究の企画・運営を工夫し,それを重ねてきた。特に,参加型・ワークショップ型の事後協議会のデザインをいくつも開発してきた。そして,前述したように,その軌跡を何度も,研究発表会を開催したり,文書にまとめたりして,他校の教師たちに発信してきたし,それを通じて実践の省察を繰り広げてきた。
 それらの取り組みの様子は,学校における実践研究で成長する教師の姿を象徴するものだ。そうしたパワーアップが今後も継続されることを期待している。同時に,三和小学校をモデルにして,特別研究指定校の制度を活かして,成長する学校が続くことを祈念している。
 
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