先導的実践研究助成
田村 知子 中村学園大学 講師

【課題・背景】

 今次学習指導要領改訂では、学校教育法で明確にされた学力の三要素に基づき、基礎・基本の習得とそれを活用して課題を解決するための思考力・判断力・表現力の育成をバランスよく行うことを各学校に求めている。特に、全教育課程を通して、言語活動の充実とも関連した活用型の授業が実施されることによって、児童生徒の学力向上が実現されることが期待される。また、道徳教育や体育などの充実により、豊かな心や健やかな体を育成することも求められており、各学校はこれまで以上に教育課程の編成力および実効性ある実施力が問われている。

 そのような背景の下、(独)教員研修センターの「カリキュラムマネジメント指導者養成研修」をはじめ、地方教育委員会及び教育センターにおいてもカリキュラムマネジメント(以下、CMと略)をテーマとした教員研修が実施されている。しかし、CM論は比較的新しく、教員間での認知度は依然として低く、さらなる研修の充実が求められる。また、(独)教員研修センターの研修受講者は各都道府県帰任後に、CM指導者の役割を担う必要があるが、CM概念は広く、多様な実践パターンが展開されうるため、それを効率的かつ効果的に指導するための支援が必要である。また、CMが学校に定着・促進されるためには、担任一人ひとりが授業を変える必要があり、そのためには、概念理解だけでなく、学校内での参画ツールや、学校で実践可能な具体的な教育ツールが必要である。

【目的】

 本研究では、集合型教員研修を、CMを学校に促進・定着させるための方法論のひとつとみなし、集合型教員研で使用でき実効性のある内容・方法を開発、教材化することを目的とする。

【特色】

  1. CM研修の理論的基盤として、カリキュラムマネジメント・モデルを使用する(田村2009)。このモデルは、(ア)子どもの実態を踏まえて育成すべき学力の要素を措定する、(イ)学力育成の具体的な内容・方法を計画、実施、評価、改善するマネジメントサイクルをつくる、(ウ)そのための人的物的諸条件の整備および(エ)教職員間の目標を共有化しての協働性の創出、(カ)家庭や地域および(キ)教育委員会との連携・協力、そして(オ)学校組織を牽引しカリキュラム全体に責任を負う学校長をはじめとするスクールリーダー層のリーダーシップ、の各要素間の関係を構造的に示したものである。本モデルを使用することによって、実践事例や勤務校の実践について構造的な分析および改善案の作成が可能である。なお、本モデルは(独)教員研修センターの「カリキュラムマネジメント指導者養成研修」でも研修全体を貫く中心概念として使用されている。
  2. 本研究には、(独)教員研修センターをはじめとした各地のCM研修の講師を務める研究者および、各地の教育センター等で実際に企画・実施する指導主事等の責任者が関与しているので、各地の実態に即したプログラムおよび教材を使用した研修の開発と実施、および評価・改善までが可能で、より洗練された成果物の作成が期待できる。また、研修受講者の職位や教職経験年数、研修受講人数、研修時間など様々な条件に対応したバリエーションも作成可能である。
  3. 研修には、理論のみならず、具体的な事例が必要である。本研究は、実際にCMに取り組み学力向上に効果をあげた学校の事例(CMの手法、各種教材、校内研修の方法など)を同時に提供することができる。
  4. また、英語版を作成する。現在、授業研究をキーワードとして国際的な研究協力が進んでいる。その中心となっているのが国際授業研究学会(World Association of Lesson Studies、以下、WALSと略)である。その中で、わが国の果たす役割は大きく、また、授業改善を支える学校全体のCMの必要性が明らかになっており、英語版はこのような国際的な研究推進に貢献する。また、小学校外国語活動の充実においてもCMの考え方が極めて重要であり、そのカリキュラムの開発・実施に関係する外国人講師の存在は見過ごせない。また、外国人児童生徒と保護者等、学校教育に関与する日本語使用者以外の関係者が今後さらに増加する。これを鑑みると、英語による説明資料の作成は、各学校のCM推進と、説明責任を果たすためには必要不可欠である。

【お役立ちコンテンツ】
 カリキュラムマネジメントを促進する教員研修の企画・運営 ガイド