先導的実践研究助成
泰山 裕 園田学園女子大学 講師

 本研究の目的は、学習指導要領に埋め込まれた思考スキルを抽出し、学年別に段階と関連を整理することである。これにより、各学年において指導すべき思考スキルの種類とその目標を明らかにすることで、思考力育成を目指した実践のためのガイドラインの提供が可能となると考えられる。本研究では思考力育成のためには、中央教育審議会答申で述べられるような考える技法、思考スキルの指導が重要であると考えて研究を進めていく。思考スキルとは、考えるための方法であり、思考を「比較する」「分類する」などといった具体的な動詞に落として表現したものである。

 現在、学習指導要領の改訂や、PISA型学力への着目などにより、思考力の育成は教育における重要な課題となっている。今回の学習指導要領改訂のポイントは、生きる力の重視、さらに「思考力・判断力・表現力等の育成」、その基本としての知識の充実である。そのために、「各教科において基礎的・基本的な知識・技能の習得を重視」すると同時に、「知識・技能の活用を図る学習活動を充実」させる必要があることが明記されており、「総合的な学習の時間を中心として」、「各教科等で習得した知識・技能を相互に関連付けながら解決する」といったようなことが求められている。ここで重視される知識とは、事実的な知識のみではなく、思考スキルも含まれたものである。つまり、各教科内で学習した知識に加え、思考スキルも活用しながら問題解決を行っていく必要があると考えられる。

 思考力を具体的な行動目標,思考スキルとして記述するという考え方はブルームら(1956)による教育目標の分類学にその根源を確認することが出来る。ブルームらの教育目標の考え方は、教育目標という大きなものを行動レベルで記述することで、それぞれの目標を明確にするというものである。ブルームらの教育目標の分類学は指導と評価の目標を、具体的な水準で、しかも体系的かつ明確な形で設定するための理論的枠組みである。教育活動における目標の全体を認知的、情意的、精神運動的の3つに分離し、それぞれの領域ごとに、最終的な目標達成にまで行き着く過程でどのような目標の系列をたどっていくことになるのか、という観点から体系的に目標の明確化を行っている。現在、ブルームの教育目標の分類学は認知領域、情意領域、精神運動領域の3つの領域が想定されているが、精神運動領域に関しては、最終的なものは発表されてはいない。認知領域においては、知識、理解、応用、分析、総合、評価の6つの段階が想定され、整理されている。

 黒上ら(2007)はブルームらの教育目標や、その修正版であるマルツァーノらの新分類学の考え方を参考に、思考ルーブリックとして、それぞれの教科に必要な思考スキルを定義している。黒上らは「国語、算数、理科、社会」の4教科において、それぞれに必要と思われる思考スキルを整理し、それらを思考ルーブリックとしてまとめている。各教科における思考キーワードを「比較する」「分類する」などの具体的に行動レベルに落とし込み、それを教科内において必要とされる技法(思考スキル)として定義している。さらに、それぞれに評価指標を設定することで、教科内で思考を意識した授業を設計・実践・評価できるようにしている。黒上らの思考ルーブリックは実践を設計し、思考力育成を目指すための授業を行うために有効な枠組みとして利用されている。

 このように、思考力育成のために「思考」という言葉を思考スキルという具体的なものに分解し、それを目標として設定するという試みは思考力育成のためには重要であると考えられる。思考スキルは考えるための方法、思考するための技術である。学習指導要領には、習得した思考スキルを活用しながら、問題解決などの高次な思考を達成することが求められている。そのためには、各教科において思考スキルを習得させ、それを活用しながら学習を進めていくような体系的な指導が必要であると考えられる。

 しかし、思考スキルは学習指導要領上に埋め込まれた形で提示されているため、具体的にいつどのような思考スキルを育成していくべきであるかは明確に記述されていない。各教科内において思考スキルの指導を意識的に進めていくためには、各教科内に埋め込まれた思考スキルを抽出し、整理を行う必要がある。

 本研究では,学習指導要領に埋め込まれた思考スキルを抽出し、それぞれの学年別目標と、それらの関連や、そのために必要となるツールをまとめ、思考力育成のための実践の補助とするためのパンフレットの作成を目指した研究を進めていく。

【お役立ちコンテンツ】
 思考スキルに焦点化した授業設計のためのパンフレット