先導的実践研究助成
島田 希 高知大学 講師

 本研究の目的は、若手教師へのメンタリングを行うミドル・リーダーのためのハンドブックを開発することである。それが求められる主たる理由として、次の2点を挙げることができる。

  1. ミドル・リーダーのメンタリング能力を向上させる必要性
    現在、大都市圏を中心に、熟練教師の大量退職時代を迎えている。それにより、今後、大量採用が見込まれている若手教師の力量形成を支援する必要性が高まっている。例えば、授業におけるICT活用に比較的抵抗感が少ないと言われる若手教師も、授業力量という点では、先輩教師からの指導・助言が必要な場合も少なくない。こうした状況において、中堅教師に求められる資質能力として、若手教師への助言・援助などの指導的役割が挙げられるなど、学校内のミドル・リーダー(研究主任、教務主任、学年主任など)への期待が高まっている(教育課程審議会答申「養成と採用・研修との円滑化について(第3次答申)」)。  また、メンタリングに関する先行研究では、若手教師−ミドル・リーダー(メンター)間の発達支援関係が、若手教師の力量形成に重要な役割を果たすことが示されている。具体的には、@若手教師の気づきを喚起するフィードバックの提供、Aスキルの発達を促すコーチングの実施、B教師としてのアイデンティティ構築を促すキャリア・カウンセリングの実施が、メンタリングにおいて重要であると言われている。  近年では、これらのメンタリング能力を身に付けることを目的とするミドル・リーダー対象の研修や教職大学院での授業が、開発、実践されつつある。しかしながら、若手教師へのメンタリングを行うすべてのミドル・リーダーが、こうした機会を得ることができるわけではない。それゆえ、こうした研修プログラムに加えて、ミドル・リーダーのメンタリング能力を向上させるための教材が必要である。
  2. ミドル・リーダーのメンタリング能力向上を支援する教材開発の必要性
    国外、主に米国での先行研究を通じて、ミドル・リーダーによるメンタリングを支援するためのツールが多く開発されている。例えば、メンタリング・プログラムを評価するためのルーブリックやメンタリングで用いるコーチングスキルをまとめたチェックリストなどである。しかしながら、わが国においては、こうした教材が十分に開発されているとは言い難い状況にある。こうした状況をふまえ、本研究では、若手教師への指導的役割を担うミドル・リーダーを対象としたハンドブックの開発に取り組むこととした。

     本研究を通じて開発されるハンドブックは、理論編、実践編、資料編から構成される。理論編では、@メンタリングの意義と実践動向、Aミドル・リーダーに求められるメンタリング能力の基本枠組みが示される。実践編には、Bメンタリングの事例(年間スケジュールおよびメンタリングの内容に関する概要)とその解説、Cメンタリングを行う際に、特に配慮すべき場面とその解説および具体的な対応策、D上記Cに関連する演習問題とその解説が含まれる。資料編には、ミドル・リーダーが、E自らのメンタリングを点検・評価するためのチェックリストおよびFチェックリストでの評価をふまえ、メンタリングの取り組みを総括するための分析シートが収められる。 そして、これらの内容は、実際に若手教師へのメンタリングを行っている、もしくは行ったことがあるミドル・リーダーとともに検討を重ね、執筆していく。それゆえ、そこで示される内容は、実際的なメンタリングの経験にもとづいて導き出された知見であり、若手教師への指導・助言を行うミドル・リーダーが、自らの取り組みを進める上で、参考にし得る具体的なアイデアが豊富に含まれることになる。 また、メンタリングの実施に際しては、若手教師の力量形成に応じて、柔軟にその関わりを変化、発展させていく必要があると言われている。本研究を通じて開発されるハンドブックは、「読み物」としてだけではなく、自らのメンタリングを点検・評価し、総括を行うためのチェックリストや分析シートが含まれており、日常的に活用可能なものになると考えられる。

【お役立ちコンテンツ】
 ミドル・リーダーのためのメンタリング・ハンドブック
〜若手教師支援の充実を目指して〜