先導的実践研究助成
稲垣 忠 東北学院大学 准教授

 本研究では、児童がプレゼンテーション、ビデオ、新聞やリーフレットなどに学習内容をまとめ、校内や地域、他校の他者に向かって発信する「つくって伝える」学びを支援する教材を開発する。

 小学校では平成23年4月から新学習指導要領が本格実施される。その中でも思考力、判断力、表現力を育み、他者や社会とかかわっていく手段である言語に関わる能力の伸張を図る「言語活動の充実」が改善事項として大きく取り上げられている。言語を伴った表現活動には、スピーチや討論など、口頭・対面のコミュニケーション場面で発揮されるものと、新聞やリーフレットのように紙の上で表現されるものや、ニュース番組、CM、Webサイトやプレゼンテーションソフト上の発表資料のようにメディア上で表現されるものがある。本研究ではこれらのうち、口頭・対面のコミュニケーションや、意見文等の文章のみによる表現ではない、デザインやメディア特性を意識することが求められる制作活動を伴った学習を対象とする。小学校では国語科、社会科、総合的な学習の時間などにおいて、児童が言語による表現を伴ったメディア作品を制作する場面は少なくない。具体的には以下の3点に取り組むことを本研究の目的とする。

  1. 新聞づくり、リーフレットづくり、ビデオづくり、プレゼンテーションづくりの4つのメディア制作活動を対象に、相手意識やメディアの特性を踏まえた制作上の留意点を整理し、評価の観点ごとの基準(ルーブリック)を開発する。
  2. ルーブリックと連動した、基準に応じた作品サンプルを閲覧・視聴できるWeb上の教材(ルーブリック型教材)を開発し、公開する
  3. 児童のICT活用として、タブレット等の携帯端末をグループに1台程度貸与し、メディア制作活動の過程で上記Web教材をいつでも参照し、改善する指針を得られる環境を構築し、教材及び授業実践の効果検証を行う。

 言語活動において児童がICTを活用することは、教科の目標を達成するだけでなく、情報活用能力の育成にも資するとされている。そこで、本研究の特色である、1.メディア制作におけるルーブリックの作成、2.ルーブリックと連動したWeb教材の提供、3.タブレット端末による児童のICT活用の3つの面から実践研究上の意義を述べる。

  1. メディア制作活動は従来からさまざまな教科に位置づけられて実践されてきた。制作活動において作品の評価は、教科の指導目標に即してなさるべきである。ところが、たとえばプレゼンテーションには、文字の大きさや分量、スライド構成、色彩やアニメーション効果等、多くの要素が含まれている。そのため、本来の指導目標以外の部分で指導の必要が生じたり、作品の質が左右されてしまう問題がある。メディアの特性に即したルーブリックを提供することにより、教科を超えて表現の質を高める情報活用の実践力の育成に資するだけでなく、教科としての指導ポイントを明確にする意義があると考えられる。
  2. 一般的に質的な基準を文章で記述するルーブリックは、メディア制作を対象とした場合、その文言だけで具体的な評価対象の状況を把握することは難しい。基準ごとに作品サンプルを閲覧できる教材を開発することで、教師が教科単元にあわせて観点を選んで提示する指導教材として活用できる。また、Web教材として児童にも提供することにより、指導事項以外の面を個々のスキル差に応じて学習する補助教材として活用することができるだろう。
  3. 児童にはタブレット端末からWeb教材の閲覧や、自分たちの制作物をデジタルテレビ、電子黒板等を介して提示できる環境を用意する。普通教室での新聞やリーフレット制作、コンピュータ室でのプレゼンテーションやビデオ制作にタブレット端末上のWeb教材を用いることで、一般的なICT環境の学校でも取り組みやすい児童のICT活用のモデルを提案することができる。

【お役立ちコンテンツ】
 つくってつたえる 〜メディア制作を助けるWeb教材〜