先導的実践研究助成(高等教育機関の研究者に対する助成制度)先導的実践研究助成(高等教育機関の研究者に対する助成制度)

平成23年度 先導的実践研究助成贈呈式レポート

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「明確なゴール」を持って取り組む「ICTを使った教育手法」の研究を支援

平成23年4月24日(日)にパナソニックセンター東京にて、先導的実践研究助成助成金贈呈式が行われました。

当日は、奨励状授与から始まり、助成者の先生方より今回の取り組みについてプレゼンテーションを行っていただき、その後、主査の先生方による質疑応答、アドバイスが行われ、最後に情報交流会を開催、お互いの親睦を深めて締めくくりました。

今回の応募数及び採択数は、それぞれ
 普及型  応募数12件中4件採択
 モデル型 応募数9件中3件採択
 萌芽型  応募数11件中2件採択
となり、
 応募数32件中 採択9件 採択率28%
といった結果となりました。

赤堀常務理事 奨励状授与に伴い、主催者挨拶を行ったパナソニック教育財団赤堀常務理事は「先導的実践研究助成」は、研究者のオリジナルな研究よりも「明確なゴール」を持って取り組む「ICTを使った教育手法」として、実践に役立つことを重要視している助成制度であるという趣旨を確認し、その特徴として次の2つをあげられました。

  1. 研究者と実践者が一緒に研究に取り組む
  2. 普及、モデル、萌芽という3つの研究のタイプを設け、
    ステップで研究に取り組む

上記の明確なゴールのために、初等中等教育学校現場での実践に繋がる視点からアドバイスをすることの出来る研究者によるヒヤリングを実施する主査制度を設けており、主査とコラボレーションしながら推進して欲しい旨を伝えられました。

助成先の先生方また、「この震災のあった厳しい状況の中、贈呈式を行えることを奇跡のように、喜ばしく思います。我々は、教育の灯を消してはならない」と教育に懸ける熱意も助成者の方々に伝えられました。

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プレゼンテーション

今後の方向性、見解を深めるためのセッション

今回のプレゼンテーションは昨年の「普及型」「モデル型」「萌芽型」のそれぞれ3つに分かれて開催されたものとは異なり、一つの会場でそれぞれの研究課題をバランスよく聞けるようになっておりました。
そうすることにより、萌芽型はモデル型に向けて、モデル型は普及型に向けて、普及型はより多角的な立場からの意見を得ることができるというそれぞれのメリットを享受できると考えたためです。

グループ1
主査:木原俊行氏(大阪教育大学教授)

永田 智子
兵庫教育大学大学院 准教授
永田 智子
モデル型
ICTを活用した小学校家庭科ガイダンスと振り返り授業を行うための授業実践パッケージの開発
(※当日は都合によりご欠席)
 
島田 希 島田 希
高知大学 講師
モデル型
若手教師へのメンタリングを行うミドル・リーダーのためのハンドブックの開発
 
江木 啓訓
東京農工大学 助教
江木 啓訓
萌芽型
初等中等教育における筆記行為の検知に基づく学習支援手法に関する研究
 

グループ1
主査:黒上晴夫氏(関西大学教授)

田村 知子 田村 知子
中村学園大学 講師
モデル型
学力向上をめざしたカリキュラムマネジメントの促進・定着のための集合型教員研修の開発と普及
 
稲垣 忠
東北学院大学 准教授
稲垣 忠
モデル型
「つくって伝える」学びの質的向上を目指したルーブリック連動型Web教材の開発
 
光原 弘幸 光原 弘幸
徳島大学 講師
萌芽型
協調と競争を織り交ぜたLocation-based Learningによる防災学習
 

グループ1
主査:堀田龍也氏(玉川大学教授)

小田 和美
東京女子体育大学 准教授
小田 和美
モデル型
新学習指導要領に対応した『情報教育の実践・評価のためのポータルサイト』の構築
 
泰山 裕 泰山 裕
園田学園女子大学 講師
モデル型
思考力育成を目指す授業設計のためのパンフレットの作成
 
榎本 聡
国立教育政策研究所 主任研究官
モデル型
教育情報ナショナルセンターの学習オブジェクトメタデータを活用したデジタル教材及び指導案・実践事例共有システムの開発と評価
(※当日は都合によりご欠席)
 

いくつかのプレゼンテーションをご紹介致します。

東京農工大学の江木啓訓助教授は「初等中等教育における筆記行為の検知に基づく学習支援手法に関する研究」を発表されていらっしゃいました。
この研究は、児童の興味意欲の多様化を客観的に把握するために、筆記用具の動きをセンサーで追ってその動きによって現在の児童の状態を把握するというものでした。
多くの児童の動きを一度に把握できることや、ペン回しやペンを置いてしまうこと、集中力散漫な児童に見られる動きを察知して授業のフィードバックを行うことが、児童の学習を妨げることなく測定でき、今後普及するであろうデジタルデバイスとの親和性も含めて非常に実用的な研究発表でした。

また、東北学院大学の稲垣忠准教授は「つくって伝える」学びの質的向上を目指したルーブリック連動型Web教材の開発を発表されていらっしゃいました。
ルーブリックとは「基準」という意味とのことで、この研究では児童がプレゼンテーション、ビデオ、新聞やリーフレットなどに学習内容をまとめ、校内や地域に向かって発信をすることを支援する教材を開発されます。他者や社会とかかわるうえで必要な思考力、判断力、表現力を育み、コミュニケーションスキルを向上させるのがねらいとのことでした。

東京女子体育大学の小田和美准教授は、新学習指導要領に対応した「情報教育の実践・評価のためのポータルサイト」の構築を発表されていらっしゃいました。
情報教育は、新しい学習指導要領では体系的に捉えて学ぶ場がなく、各教科で必要なものを学ぶと解説されています。今後は求められる「学力」が「知識理解」から「判断力、創造力、発信力」といった力に変わっていくとのことで、情報を収集・加工・まとめ・発信するという情報教育を体系的に捉えた指導が必要となるそうです。
そこで、体系的に学べるだけの情報教育に関する情報、事例を集約したWebサイトを構築し、現場の先生方の知識を集めて公開していく「情報教育の実践・評価のためのポータルサイト」が考案されました。今後は情報教育を軸とした授業設計、評価を展開されるとのことでした。

どなたも時間の経過を感じさせないほどのプレゼンテーションで、伝えたい想いや、教育に対する気持ちが伝わってまいりました。

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情報交流会

交流を深め、研究の方向性を確かめる

各プレゼンテーション終了後、再び参加者全員が集まり、情報交流会が行われました。
今回は、2011年3月11日に発生した東日本大震災を踏まえ、例年より厳かなムードでの開始となりましたが、教育という尊いテーマについて議論を重ねる中で会場も熱気に包まれ、参加者にとって大変有意義な時間となったようでした。
その中で今回助成の先生方3名にお話を伺いました。


 

光原 弘幸インタビュー徳島大学 講師 光原 弘幸氏
「協調と競争を織り交ぜたLocation-based Learningによる防災学習」

Q.今回、採択に当たっての意気込みをお聞かせください。
とにかく、努力を重ねたいと思います。助成採択のご連絡をいただいた翌日に地震がありました。だからこそ、なるべく早く成果を出せるようより努力をしてまいりたいと感じています。

Q.防災学習というところに焦点を当てられた理由は?
徳島では30年以内に60%の確率で南海地震の恐れがあると言われています。
それは誰もが知っているが、そのために行動を起こさなくては意味がない。
地震には、本当にしっかりとした準備が必要なので。
ただ、やはりそういう状況にならないと動かないのも事実。
そのために、きっかけが必要だと感じた。そこで、ゲーム感覚で学び、
競争しあったりして危機感を知ることができるものを作り上げれば、
子どもでもしっかり学習できるのではないかと考えました。
私には、子どもが2人いるのですが、子どもが何かの時にしっかり
判断できるようになるようなものを親の目線から、準備しておきたかった。
というのも一つの理由です。

Q.この研究の今後の展望を教えていただけますか。
研究を続け、日本全体で使ってくれるように進めて行きたいと思います。

 

泰山 裕インタビュー園田学園女子大学 講師 泰山 裕氏
「思考力育成を目指す授業設計のための
パンフレットの作成」

Q. 今回、採択に当たっての意気込みをお聞かせください。
この助成自体が実践に役立つように取り組みしてまいります。
思考力というのは、ぼんやりしてわかりにくいというイメージがあるので、
そういう授業をするときに、何か助けになるようなものを作りたいと思っています。

Q.「思考力育成」にいきつくまでの経緯は?
社会的背景で言うと指導要領の改訂や、ゆとり教育の推進などが挙げられます。
また、思考力というのは「私生活」「学校生活」「社会生活」の基本だと思い、
それを意識化して育成するのは大変重要だと感じたことがきっかけとなりました。

Q.今後のモデル展開はどのようなイメージをお持ちですか?
日本全国に展開をしてまいりたいと思います。

 
田村 知子インタビュー中村学園大学 講師 田村 知子氏
「学力向上をめざしたカリキュラムマネジメントの促進・定着のための集合型教員研修の開発と普及」

Q.今のお気持ちは?
この研究の必要性を認めていただけてうれしいです。ありがとうございます。

Q.この研究のテーマにされた背景を教えてください。
私自身カリキュラムマネジメントについて10年以上研究を続けてまいりました。
この手法自体まだ新しく、1999年頃から注目されたマネジメント手法となります。
学習指導要領改訂に連動して学校経営の自主性が叫ばれ、
そこではじめて各学校に本当のカリキュラム作りの力量が問われることになりました。
しかし、多くの先生が学校にカリキュラムを考え、実行することができません。
なぜなら、カリキュラムの成功事例、失敗事例などの教員同士の課題の共有が行われるのは難しかったからです。
このテーマがそういった現状を変えるきっかけになればと思ったのが背景です。

Q.今後の展望を教えていただけますか?
現在、何がカリキュラムマネジメントかと問われてしっかりと返答できる人は 少ないと思います。できるだけわかりやすく研修を進め、研修を受けた成果が学校に還元されるよう、学校でしっかりフィードバックできるツール、具体的成功事例をまとめ、今後は客観的に見てさらに使いやすくしたいと考えています。

 

各々の意気込みや想い、今後の展望を熱意を持って語っていただきました。「教育者」という日本の根底を支える人々が真剣に議論を交わす充実した3時間となりました。