実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第42回特別研究指定校(活動期間:平成28~29年)

大阪教育大学附属平野小学校 /平成28年度4-7月期

 

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研究課題と成果目標
研究課題と成果目標

取組内容
取組内容

裏話
裏話

成果
成果

今後の課題
今後の課題

今後の計画
今後の計画

公開授業等の予定
公開授業等の予定

アドバイザーコメント
必見! アドバイザーコメント

 

研究課題と成果目標

 

[研究課題]

子どもが主役になる次世代の学び
-BYOD社会に対応するスマートディバイスの効果的な教育的利用-

[成果目標]

1.校内研修・研究発表・先行研究

  • 複数のスマートディバイスを活用した実践事例を創造することで,高学年では児童一人ひとり探究的な学びを深め、低学年では学級やグループでの協働的な学びを深めることが可能になるため、子どもが主役になる次世代の学びを提案することができる。
  • 教材開発や実践事例の創造をすることで、アクティブ・ラーニングや探究的な学習などを踏まえた新たな教育方法を取り入れた学習スタイルを確立することができるため、BYOD社会に対するスマートディバイスの教育的な利用方法を提案できる。

2.主体性・協働性・創造性を育む場面を示した実践事例集の作成

  • 様々な教科・領域にいて、児童によるスマートディバイス活用を校内で共有できるため、継続的・発展的に研究を推進することができる。
  • 本校の責務である地域貢献活動の一環として配布することが可能であるため、参加教員とその学校における児童のスマートディバイス活用に寄与することができる。

3.研究実践の共有化と活性化を図るために、学期に1回実践例報告会の開催

  • 児童の新たなスマートディバイス活用を学校全体で共有することが可能になるため、研究教科やその他の教科指導にも生かすことが可能になり,授業の活性化に繋がる。
  • 実践報告会を開催し、講師を招聘することで、先進的な実践や理論を学ぶことができ、更なる発展的な教材開発や実践事例を創造することができる。

本期間の取り組み内容/アドバイザーの助言と助言への対応

 

[本期間(4~7月)の取り組み内容]

【4月】

4月13日(水)【研究全体会】

研究全体会で、本研究の取り組みについて説明を行う。また各学年で新教科「未来そうぞう科」におけるICT活用の実践を行い、7月の研修会で報告することを確認する。文部科学省研究開発学校の指定を受けたことで、実践報告の回数・時期の一部修正を行った。申請書では、各教科領域で1年間3実践を計画していた。しかし教科により人数の偏りがあるため、難しい部分も出てきた。教員22人で2実践とし、加えて各学年の未来そうぞう科の実践として1実践を行うことに修正した。(22人×2実践+6学年=48実践)

また、11月30日(水)に新教科「未来そうぞう科」×「ICT活用」として5クラスの公開授業を実施することを確認した。

4月18日(月)【事前訪問指導】

3年生3クラスの授業参観をしていただいた。①1人1台のiPadを活用しているクラス(社会科)と②グループで活用しているクラス(国語科)、③教員のiPadを全体に映して授業しているクラス(外国語科)の3つの種類の授業を参観していただいた。

板橋区立中台中学校活動報告イメージ01 板橋区立中台中学校活動報告イメージ01

【5月】

iPod Touch6を50台購入した。購入後、すぐに設定を行った。本校の管理下に置くために、Macのconfiguratorを使って基本設定を行った。その際、大阪教育大学の仲矢史雄先生及び学生さんのご協力を得て半日かけて設定を行った。

本校既存のWi-FiとそのAP(アクセスポイント)の動作性を確認する授業を行った。既存のAPでは、クラス人数分のアクセスを処理しきれないため、別途ポータブルAPを増設した。

(4年生算数科)「一億をこえる大きな数」

板橋区立中台中学校活動報告イメージ01

※氏名等見えないように小さくしています

この学習で、iPod Touch6とiPad2を使って、仮想BYODクラスを想定して、1クラスで授業を行う。児童が190755799という数字を漢数字に直して、アプリを使って教員のiPadに転送する授業を行った。

【6月】

(4年生社会科)「ごみのゆくえ」

この学習でiPodTouch6とiPad2を使って調べ学習を行った。調べた事柄に児童自らが書き込み、教員のiPadに転送できるようになってきた。

板橋区立中台中学校活動報告イメージ01 板橋区立中台中学校活動報告イメージ01

(1年生生活科)

育てている花の写真を撮るために活用した。また、児童が撮ってきた写真をAirPlayで電子黒板に映して、以前と違うところや成長してきたところの観察を具体的に行った。低学年にとっては、比較的小さなiPod Touchは、手軽に写真を撮れて、その後の授業に使いやすいと考えられる。

他の学年に実践してもらえるように、貸出を開始する。保管場所を職員室として、それぞれの学年や専科の授業で使えるようにする。また、貸出用にスケジュール表を作成し、記入してもらえるように掲示した。

(クラブ活動)

卓球クラブで「上手な子どもの動画を撮って見たい。」と児童からの声が上がった。そこで、人数分のiPod Touchを用意した。児童一人ひとりが上手な児童の動画を撮って、自分の打ち方との違いを比べて練習をしていた。

【7月】

貸出用にスケジュール表を作成したことにより、専科の授業にも取り入れられるようになってきた。高学年の音楽科や中学年の図工科などでも少しずつ取り入れて実践が行われている。

(4年生算数科)「式と計算の順序」

板橋区立中台中学校活動報告イメージ01 教員から児童に課題を配付して、その課題に直接記入させ回収したものを全体に映して交流する授業が行われた。また、授業用のノートを写真で撮ったものを教員に転送するというような学習も行われている。

アドバイザーの助言と助言への対応

4月の事前訪問指導の際にご指導いただいたこと。

「BYODでは、私的なディバイスを使った実践になる。しかし、各個人でディバイスを購入してもらうには、まだハードルが高い。そこで、各家庭に眠っているディバイスを使うと良いのではないだろうか。」というアドバイスをいただいた。

スマートフォンを使うようになった家庭で、買い替えなどで家庭に眠っているディバイスがあるだろう。それを使ってみるのは、1つの方法だろうと考えている。実際にあるクラスの保護者に「契約切れで電話はできないが、写真が撮れWi-Fiがあれば繋がるスマートフォンがあり、かつ学校で子どもに使っても良い」と答えていただいたのが1/5ほどあった。今後、買い替えなどで生まれてくるスマートフォンなどのディバイスを活用していきたいと考えている。

 

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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 

個人ディバイスを使った実践を行うにあたって、ある保護者にご協力いただき、家庭でも使えるかどうか試してもらった。本校では、基本ディバイスがiOSであるが、あえてAndroid端末を使って実験を行った。子どもに今日の授業や明日の予定を、アプリを使って転送した。しばらくしてから、子どもから「無事見れたよ。」ということを同じアプリを使って転送されてきた。

この実験をもとにすれば、家庭に子どもの学習の様子を手に取るように伝えることができる。また反転学習で学校の端末を持って帰るというような場面もあったが、それも不必要になり、家庭のスマートフォンなどで手軽にできるようになることが分かってきた。

児童にとって、iPod Touchは、iPhoneに見えるようで、iPadよりも人気がある。手軽感と軽さが好評のようである。文字をタイピングする場合は、iPod TouchもiPad大きな差は無いようである。しかし手書きになるとiPod Touchは小さくて書きにくいようで、「iPadの方が書きやすいかなぁ。」と感想を漏らしていた。

子どもは、iPadなどの機器操作にすぐに慣れてくる。その良い一例を紹介する。ある授業で、教員のiPad画面をApple TVを経てプロジェクターに映すと、(下左図1)のような画面になった。教員がキーボードを打とうとすると、「あ~、キーボードの位置が重なって文字が見えないから、打ちにくいなぁ。」と言うと、ある子が「先生、それ直せるで! 私も困ってんけど、直したで!」と得意気に話をしてきた。その後、プロジェクターに映っている状況下で、見事教員のキーボードの位置を変えたのである。(下右図2)クラスの子どもたちから、「お~、すご~い。」と大絶賛と拍手喝采。子どものたちのICT機器への対応能力の高さに驚いた。

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(図1)

板橋区立中台中学校活動報告イメージ01
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(図2)

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成果

 

比較的早い時期にiPod Touch6を50台導入することができたため、1学期の中頃から授業の実践を行うことができた。iPod Touchの貸出用スケジュール表を掲示することで、他学年や専科の授業で積極的に活用できるようになった。

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今後の課題

 

BYODとして実践を行う上で、まだまだ解決していかなければならない課題が山積している。

①校内のWi-Fi環境の整備および増設

各普通教室および特別教室にWi-Fi環境とAPが設置されているが、1人1台を想定されたものでないため、クラス全員が端末を利用してAPにアクセスすると、動作性が落ちてしまったり、停止してしまったりする。
⇒ポータブルAPを増設して対応したい。

②BYODを見越して、フリーWi-Fi環境にしたい。

様々な私的ディバイスが持ち込まれた場合、フリーWi-Fiで対応したいと考える。校内Wi-Fiと切り離すことで、校内セキュリティを考慮していきたいと考えている。
⇒大学との関係があるため、難しい。

③各学年の情報モラルやスキルのカリキュラムの改定

本校にある情報モラルやスキルのカリキュラムを修正していきたい。1人1台のディバイスを使うようになった場合のスキルやモラルは、大幅に変わってくるだろうと考えている。
⇒情報推進委員会で検討していきたい。

④私的ディバイスを持ち込むことによるガイドラインの作成

様々なディバイスを持ち込むことによる、校内利用のガイドライン設定と保護者への周知が必要になってくる。
⇒Wi-Fi環境下でないと繋がらないディバイス、どこでも繋がるディバイスなど、場合分けをしながら設定していきたい。

⑤アプリと個人IDの取得、その費用

アプリの中には、個人IDを購入して利用できるものがある。その費用をどのようにするか検討する必要がある。児童全員に必要なのか、ある学年以上すべてにするのか、など検討が必要。
⇒学校費用とするか、個人費用とするか。

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今後の計画

 

①今後は、上記の課題をできるだけ解決できるように進めていきたい。インフラ環境においては、小学校だけでできるものではないため、大学の情報処理センターとの話し合いを行い、解決していきたい。

②1学期は、iPod Touchの貸出用スケジュール表を掲示して対応してきた。しかし、この方法では、「早い者勝ち」「記入したクラスだけが使える」ことになってしまう。そこで、2学期以降は、時間割を作成して、優先的に使える時間を設定して授業実践に取り組める環境を整える。

③11月30日(水)、一般に広く公開授業を行う。そのための案内や準備を進めて行く。授業を行う教科の指導助言の先生方や研究協力員の先生方に協力を仰ぐ。

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公開授業等の予定

 

(7月29日(金)1学期の実践報告会14:00~)

1学期に実践したものを報告する。どのように活用したのかを意見交流したいと考えている。

(8月30日(火)Open Cafe 14:00~)

若手教員(概ね新任3年目以内、大学生)向けの授業講習会を行う。ICT活用の授業が3本予定されている。

(11月30日(水)子どもが主役になる次世代の学び14:00~)

国語・社会・理科・体育・未来(新教科)での授業を行う。一般に公開を行い、各授業で討議会を行う。最後に豊田先生の講演会を予定している。

(2月10日(金)・11日(土)授業研究発表会)

全教科で公開授業を行う。

板橋区立中台中学校活動報告イメージ01 板橋区立中台中学校活動報告イメージ01 板橋区立中台中学校活動報告イメージ01

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アドバイザーコメント

和歌山大学 教職大学院 教授 豊田 充崇 先生

 
永田先生イメージ

文部科学省によって「ICT活用教育アドバイザリーボード」が昨年度に設置され、既にその報告書が公開されていることは記憶に新しいと思います。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1370125.htm

この報告書内では、地方自治体が抱える教育の情報化に関する7つの課題が示されていますが、その中でも「ビジョンや目的が明確でない」「活用推進の仕組みができていない」などの項目が気がかりです。つまり、「タブレット端末」という流行を追うことが中心で、何のためにそれが必要で、それをどのように広めていくのか、そもそも教育現場からの要請やニーズはどうなのかといったことが不明確のまま導入に踏み切るというケースが多いということなのだと思います。

そんな中、大教大附属平野小学校への訪問となりました。まず、結論的にいうと、タブレット端末活用の素地は既にできており、学習効果の向上に寄与した事例の蓄積を捉えることができました。各教室に大型提示装置(+電子黒板機能、+実物投影機)、無線LAN等の設備は整っており、それに加えて40台を超えるタブレット端末の導入もなされているため、「授業中での1人1台体制」は可能です。また、教師による教材提示場面であっても、児童が学習アプリを活用する場面や児童が情報を集め・まとめ・発信する場面においても、ソツのない実践場面が繰り広げられていました。

よって、単なるタブレット端末活用研究ではなくて、今回の特別研究指定では、既存のICT環境に加えて、スマホサイズのモバイル端末(iPodTouch)を追加導入するといった点が注目される点で、これによって「仮想的なBYODにおける授業研究」を目指すところに新規性があるといえます。仮想的なBYODというのは、自宅に持ち帰る端末やフィールドワークに持ち出す端末も含めて学校が準備して貸し出すという形態です。

ある情報化先進地域のタブレット利用統計を見てみると、「情報検索」(とその結果の印刷やまとめ)、「カメラ機能の活用」「映像の視聴」「学習アプリの活用」といった使い方が上位を占めます。さすがにスマホサイズのモバイル端末(iPodTouch)で文章作成やプレゼンをというのは酷ですが、現状のタブレット利用統計の大部分の使い方にはスマホサイズのモバイル端末でも対応可能なのです(フリック入力のほうがキーボードよりも速いという児童も多数いることは確かです)。むしろ、写真・映像の記録、自宅での映像コンテンツの視聴、学習アプリの活用などは、モバイル性の高さから、このスマホサイズの端末のほうが利便性が高いともいえます。教室机上でのノートや教科書との併用もスペース的に容易で、フィールドワークに持ち出す場合も、首からぶら下げるなど落下破損の心配なども軽減され、むしろ活用の効果が高まる事も考えられます。新たに、「コンパクさ」を生かした使い方の提案が可能になり、これが浸透してくると、「自宅にある契約切れのスマートフォン」を無線LANに接続して再利用するということにもつながる可能性もあり得ます。

そのような話をしつつ、2回目の訪問の際に参観した授業では、早くもモバイル端末のニーズが明確になってきました。この授業は、事前に撮影しておいた何種類かのインタビュービデオを各グループでそれぞれ視聴して考えをまとめるというもので、先生方の授業設計や妥協のない教材開発、学習環境の整備などの意気込みが感じられる授業でした。しかしながら、やはり話し合いや全体共有での時間不足が明らかで、だからこそ、スマホサイズのモバイル端末への期待がかかっていることが証明できた事例であったといえます。自宅にモバイル端末を持ち帰って事前視聴(もしくは学級内で個人の意志の選択による個別視聴)へ移行すれば、そういった課題も解消できることは確かです。

2回の訪問によって、「仮想的なBYODで実現可能な反転授業の研究」は、単に流行を追う研究ではなくて、これまでの取り組みの上で、より高いニーズとして生まれてきた研究課題であることを実感した次第です。新しい形態のBYODとしてオンリーワン的な研究が進捗するのではないかとの期待がかかります。

今後の大教大附属平野小学校の展開の中では、モバイル性の高さを発揮したフィールドワーク型の授業実践をはじめ、「図書室の本を借りて持って帰る」のと同様にライトな感覚を持った「自宅持ち帰り型」の授業実践なども考えられるかと思います。また、タブレット端末とスマホサイズのモバイル端末との用途の使い分け、安価・軽量さゆえの小回りの効く運用方法、自宅で眠る契約切れスマホの再利用の可能性など、研究の副産物も生まれてくることでしょう。

2学期以降の本格実施に向けての期待がかかります。

 

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