実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

第38回特別研究指定校(活動期間:平成24~25年)

徳島県立盲学校の活動報告/平成25年度1月~3月
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実践経過
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成果と課題
成果と課題

成果と課題
裏話

2年間の実践を終えた感想
2年間の実践を終えた感想

次年度の展望・目標
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アドバイザーコメント
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  • 全国の盲学校等へ研究実践集録を発送
  • 2年間の研究を元に,次年度に向けての取り組みを検討

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実践経過

 

徳島県立盲学校の報告書イメージ1

1月は,研究実践集録を全国の盲学校や国立障害者リハビリテーションセンター等の視覚障害者に職業教育を行っている学校へ発送しました。冊子とデータCDの2つで構成しています。データCDは音声で冊子の内容を読み上げることができるようになっている他,本校で作成したデジタル教材・その制作動画に加え,研究当初に行ったICTアンケート調査結果も添付しています。

2月・3月は,次年度へ向けての取り組みについて協議を繰り返しました。この2年間で校内ではiPad等のタブレットや画面転送などによる視覚障害のある生徒の学習環境を構築でき,家庭学習の補助としてホームページを活用した自己学習システムを構築してきました。しかし,生徒の学習が大変であることに変わりはなく,それを補助する自己学習システムのコンテンツはまだまだ不足していること等について話し合い,このコンテンツの充実に向けて更に教員が協力して取り組んでいくことが確認されました。

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成果と課題

各盲学校等へ研究実践集録等を発送したところ,ICTを使用した視覚障害者の学習環境の構築について参考になったとの文書が送られてくるなど,この研究における全国の盲学校での関心の高さを改めて感じることができました。

11月の研究発表会以後もICTを活用した授業を実践していますが,デジタル教材の良さは理解できるものの,まだ敷居が高く活用に向けて消極的な生徒もいます。それらの生徒に対してのフォローやより適切な資料を模索するなど生徒一人ひとりにあった教材をこれからも検討し,作成していく必要を感じています。

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裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 

11月に研究発表会を行い,3学期は安堵の期間となりました。この2年間でICTを活用した授業パターンができてきたため,次年度に向けての取り組みを考え話し合いを行いました。これからも引き続きICTの活用実践を深めていき,その内容を発信していくことについて確認を行いました。

次年度以降もよりよいコンテンツを作成し,生徒の活用しやすい教材を作成していきたいと考えています。

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2年間の実践を終えての感想

 

【ICT導入前の本校の課題】

本校で直面している生徒の「学習上の困難」として,

  1. (1)教科書の文字や図が生徒自身の視力に合わず,見えにくい。
  2. (2)生徒は,一人ひとり見え方が違い,また天気や体調により見え方が違うため,適切な学習環境を提供しにくい。
  3. (3)生徒は,単眼鏡などの補助具を用いても,黒板の字が見えない,見えにくい。
  4. (4)一般に販売されている参考書や専門書は文字が小さすぎて見えない。
などの現状がありました。これらの課題に対して,ICTを活用して学習上の困難を改善したいと取り組んできました。

【2年間の実践の成果】

  1. (1)生徒は個々に合わせたICT機器の環境整備が整ったため,個々に見やすい状況で教材を確認できるようになりました。
  2. (2)パソコンからパーソナルモニターに画面を転送することで,生徒は板書内容を確認できるようになりました。このことで,全盲教員も同様に板書ができるようになり,生徒に見やすく要点を提示できるようになりました。
  3. (3)ホームページを活用した自己学習システムを構築し,自己学習用のデジタルコンテンツを作成しました。一般の参考書等が見えにくく家庭での学習が困難な生徒も,ホームページからログインすることで,生徒限定の見やすい学習コンテンツで勉強ができると好評でした。

その他,今回の実践が教員の授業力向上にもつながったと考えます。職業教育の専門教員全員が毎学期ICTを活用した公開・研究授業を行い,それに伴う指導案検討会も実施してきました。指導案検討会では,激しい意見交換もありましたが,その過程が教員の授業スキル向上につながったのではないかと思います。

【これからの課題】

デジタル教材がまだまだ不足しています。教材の充実を図らなければならなりません。また授業中の生徒のICT活用は,まだ教員からのアプローチが中心で,生徒自ら活用する機会があまり多くありません。これについても,引き続き活用を促すなど対策を考えていきたいと思います。

その他,機器が生徒数に対して足りていません。iPadやタブレットPC等は常に生徒個人に適した環境で提供できていないため機器の充実が必須です。

また,現在全盲生徒がいないため,弱視生徒の支援が中心となっています。引き続き全盲生徒も活用しやすい教材作製等を行っていかなければならないと考えています。

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次年度への思い

 

【活用事例を提示し,活用例をホームページより発信】

新たな学年となり,新しい生徒が入学してきます。在校生も含め,その生徒の状況に応じた活用方法を検討し,iPadや画面転送など生徒にあった方法を見いだしながら,成功事例だけでなく,失敗事例も含めてアップしていきたいと思います。

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アドバイザーコメント

明治学院大学 教授 金子 建 先生

 

個別のニーズに応じた特別支援教育

特別支援教育は障害のある児童生徒や特別な支援を必要とする児童生徒を対象に、個々の教育的ニーズに応えることをその役割としているが、学校教育法の改正によって、特別支援学校だけでなく一般の小中学校の通常の学級においても特別支援教育を行うこととなっている。

2014年1月、日本政府は長年の懸案であった国連障害者の権利条約を批准した。障害のある人々が社会に参加するための権利を保証し、社会参加を可能にしていこうというものである。学校教育では一人ひとりの教育的ニーズに応じた合理的配慮が行政や学校、そして教師に求められることになる。最大公約数を対象とするだけでなく、個に応じた特別の教育上の配慮を用意することが求められ、それをしないことは差別とされる。 これは幼稚園、小学校から大学までの教育機関ばかりでなく、就労、医療など社会生活全般にわたって適用される。いま、合理的配慮を可能にする有効なツールとして、ICTの活用が期待されている。

盲学校でのICT活用

本校の研究助成は、専攻科の鍼灸・マッサージ師等を養成するコースでのICTを活用した教育実践の試みである。対象となる生徒はいずれも視覚障害があるが、その障害の種類や程度は一人ひとり異なる。またその年齢は、10代から60歳過ぎまでと幅広く、人生のキャリアも様々である。このように多様な生徒の多様な特別支援ニーズに応えるために、ICTの活用が有効である。本校では、個人用ディスプレイに教材を提示する際に、拡大率や輝度を生徒の視力に合わせて調整するなど、印刷教材にない学習効果を生んでいる。また、学校ホームページに学習コンテンツを置いて家庭学習を可能にしたことも大きな成果である。

多感覚を活用した学習支援

特別支援教育でのICT利用のメリットの一つは、感覚モダリティの多様化ができる点にある。人間の認知機能において視覚がもたらす情報量は膨大であり、その視覚に障害がある場合に、視覚以外の感覚をいかに活用するかが鍵となる。本校では、マッサージなどの技術習得に際して必須である人体構造の理解に、模型を多用することによって触覚や運動覚を活用している。

教員のための支援ツールとして

本校には視覚障害のある教員も少なくない。これらの教員が授業を行う際のICT活用には、例えば音声読み上げソフトを使ってパワーポイントの資料を作成・提示するなど、一般の教員の場合以上の苦労があるが、その教育効果もまた大きなものがある。全国の盲学校等への波及効果を高めるためにも、指導事例のデータベース化と共に、障害教員のためのノウハウの集積が望まれる。

 

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