実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

活動情報/第35回特別研究指定校活動情報/第35回特別研究指定校

岐阜市立本荘小学校の活動報告/平成21年度1月〜3月
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セールスポイント

学校の学習活動は日常的に継続

 本荘小学校の研究推進は、「手の込んだ豪華な料理ではなく、普段の食事」と例えているように、毎日の学習活動でできることを大切にして進めています。昨年11月28日に、全国に向けて学習活動公開を行いましたが、その次の日からも公開当日と同じ普段通りの学習活動が展開されていました。そしてこの3学期、やはり同じように普段通りの学習活動が進められています。週に2回ずつ岩ア潔先生にアドバイスをいだだきながら、教科書を活用した学習を行っています。これは、本研究が「無理・無駄・ムラ」のない取り組みであり、「偉大なるワンパターン」と褒めていただいた学習活動とICT活用によるものだと考えています。
 この3学期にも、兵庫県西宮市・鳥取県日南町・千葉県千葉市・愛知県足助町・岐阜県関市・兵庫県多可町の先生方やICT関係の企業から学習活動の視察がありましたが、学校では特別に意識することなく、普段の児童の姿や学習の様子を観ていただく事ができました。

1年間のまとめと次年度の方向

 この1年間を通して、教科書を中心とした学習活動に取り組んできました。児童にも、家庭で自主学習をしてきたことをもとに、学校での学習活動を進める、という学びの連続が定着してきました。今年度は算数を核にして、国語や社会・理科などの教科でも実践的に進めてきましたが、どの教科でもどの教師でも可能な取り組みだと考えています。そこで、次年度は教科書を中心とした学びの連続を、全教科で進めていこう、という研究の方向を確認しました。

実践経過

1月
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  • 学習指導部会・研究推進委員会
    次年度の研究の方向について、話し合った


  • アンケート調査
    家庭での自主学習と学校での学習活動について(7回目)

2月
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  • 他校からの視察
    兵庫県西宮市・鳥取県日南町・千葉県千葉市・愛知県足助町の先生方から視察があった。本校の学習活動の進め方やICTの活用などについて、観ていただいた。


  • アンケート調査
    家庭での自主学習と学校での学習活動について(8回目)


3月
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  • 他校からの視察
    岐阜県関市・兵庫県多可町の先生方から視察があった。本校の学習活動の進め方やICTの活用などについて、観ていただいた


  • 企画部会
    宮崎大学から新地辰朗教授をアドバイザーに招き、次年度の研究の方向について、話し合った。
 

成果と課題

●心機融合 プロジェクターやiプリ等を利用した学習活動が日常的に継続している。
他県からの視察等で、本校の心機融合した学習活動について広めることができた。
●学びの連続 児童の家庭での自主学習を前提とした学びの連続が日常的に継続している。
家庭での自主学習を前提とした学びの連続を、全ての教科に広めていきたい。
●教科書活用 教科書を活用した学習活動が日常的に継続している。
学習計画表を作成し、児童が見通しをもって進める学習活動を、全ての教科に広めていきたい。
●ICT活用 岐阜市内の学校に新しく配備された大型テレビと書画カメラを、これまでのパソコンとプロジェクターと併用した学習活動を進め始めている。
電子黒板の活用や、教室内のICT機器等のケーブル類の整頓に工夫が必要である。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 3学期は、学習指導部会・研究推進委員会・企画部会を通して、この1年間をまとめ、次年度への研究の方向を探ってきました。そこでは様々な意見を交流しましたが、最も大きく意見が分かれたのは、研究の方向について、教科を絞って深化するのか、広げて普遍化するのか、という点でした。
 けれども、この研究で進めている教科書を活用して、家庭と学校とで連続した学習活動をどの教科でも行えるようにすることが大切という考えから、次年度は研究領域を全教科に広げることにしました。
 次には、研究領域を全教科に広げ、今年度のように教科部会を中心として取り組んでいくと、1教科あたりの部員が2〜3人と少人数になることや、教科によって専門性をもっている職員の人数に偏りがあること、などが課題になりました。そこで、研究を進める小部会を学年部会とし、それぞれの学年で学習する教科について取り組もう、と次年度の方向を考えました。
 

1年間(21年度)の実践を終えての感想

 平成19年度、文部科学省から3年間の「先導的教育情報化推進プログラム」研究の指定を受けました。この校務の情報化の取り組みで、校内にICT環境等が整備され、教職員にもそれらを活用する技能が高まり、ゆとりが生まれてきました。これを児童の学力の育成にどう生かすのか。言い換えれば、学習の情報化をどのように進めるかは、本荘小学校の大きな課題でした。
 そのため、平成20年度からプロジェクターを利用して教科書の画像を映し出す、学習計画表を作成する、45分の学習時間を学び合いの時間と個の学習の時間とに分ける、などの試行に取り組み始めました。けれども、当時の本荘小学校にはプロジェクターはわずかに3台あったのみなど、学習の情報化に取り組む環境はまだまだ整っていませんでした。
 そこに、パナソニック教育財団から実践研究助成をいただいたことで、プロジェクターや児童の学習用パソコン、校内LANなどを整備する事ができました。これらを活用することで、教師も児童も教科書を活用した学習活動、自主学習をもとにした家庭と学校との学びの連続に、力を入れて取り組む事ができるようになりました。また、宮崎大学大学院教授の新地辰朗氏に研究の方向付けを、元岐阜聖徳学園大学教授の岩ア潔氏に学習活動の進め方をご指導いただいた事で、着実に研究の歩みを進める事ができました。
 そして11月28日(土)、これまでの取り組みを発表する学習活動公開を行う事ができました。当日は全国から多くの方々にご参加いただき、貴重なご意見をいただく事ができました。この日に見ていただいた様子は、この日限りの特別な授業ではなく、この1年間の毎日と同じ日常的な学習活動であり、その様子を見ていただいたことが、自分たちの研究に対する自信につながっています。
 本荘小学校は、2年間のこの研究を自分たちなりの自信をもって折り返す事ができます。これまでご支援をいただいたパナソニック教育財団はじめ多くの方々に改めて感謝申し上げます。
 

次年度(22年度)への思い(課題、目標など)

 本荘小学校の大黒柱である井上志朗校長。この研究をはじめ、あらゆる面で私たち本荘小学校の職員を導いていただきました。また、この2年間取り組んでいる学習の情報化、そして3年間取り組んできた校務の情報化でも、本荘小学校のみならず、他の多くの学校に21世紀の教育として先進的な取り組みを広めていただきました。また、困難な事があるといつも、「有り難いこと」が自分を成長させてくれるのだから「ありがとう」と言うのだ、と話していただきました。その井上校長が今年度でご退職されます。
 4月からは、新しい体制でのスタートとなります。大黒柱が交替することになりますが、これに私たちは「ありがとう」と言いたいと思います。井上校長のいない本荘小学校で、この研究を進められれば、自分たちのやっている事がどの学校でも可能である、という事を示す事になります。
 次年度は、研究の対象を全ての教科に広めます。「偉大なるワンパターン」である学習活動とICT活用を、どの教科でも日常的に行えるように取り組んでいきます。
 「手の込んだ豪華な料理ではなく、普段の食事」は、教科の特色によって、どのような味付けが必要なのかを研究していきたいと考えています。
 

解説と講評

コメント:宮崎大学 教授 新地辰朗 先生

本荘小学校の1月〜3月の活動について

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 3月10日(水),3カ月ぶりに,学校に伺う機会を得た。11月の学習活動公開と同様に,午前中,全21学級の授業を参観した。どの学級でも教科書が拡大投影されるなど,教師・子どもたちが自在に情報メディアを操っていた。学校としての統一的な方針があるからこそ,教師が迷うことなく,日常的にテクノロジー活用に取り組めるのであろう。本荘小学校では,「自主学習」の継続と支援という,教師間で共有されたビジョンがある。本荘小学校の目指す「心機融合」は,個人や組織のねらいとテクノロジーとの整合性を確認できるビジョンの大切さを感じさせる。

本荘小学校の子どもたちの発表する姿には,学習に対する規律性や落着きはもちろん,柔軟な発想と表現を促す学習環境の完成がうかがえる。一般に,子どもたちを促す時,教師は声を大きくしがちである。ここの学校ではそれがない,静かな語りかけで,子どもたちの学習が活発化する。教育の専門家として,丁寧な働きかけが,全クラスでみられる。学校長,教頭,企画部,アドバイザ(岩崎潔先生)のそれぞれの働きが,教師が判断・工夫する余裕をもたらしているように思える。
 平成21年度,岐阜市内の学校では,50インチディジタルテレビと実物投影機が全学級に整備された。近隣の学校との連携や情報交換など,これまで以上に地域から期待されるであろう。平成22年度,新しい校長先生の下,教育ビジョンと情報メディア活用の新たな融合が楽しみである。
 
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