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日野市立平山小学校の活動報告/平成21年度8月〜12月
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セールスポイント

2月4日に実施した研究発表会の内容

―コミュニティ・スクールとして地域ぐるみで取り組んだ学力向上策―
図 学力向上という大きな目標に向かって、地域と家庭が中心になり一番の根っこになる子供の生活習慣の向上に取り組み、学習習慣の基盤を身に付けさせる。このような学力向上のための土台を確かなものにしながら、授業力を向上させるためにICT活用を取り上げ、全ての先生が一丸となって実践研究を進めてきた。このことを、全6学年とわかくさ学級のすべての学年の公開研究授業と全体会のパネルディスカッションで報告した。

(右の画像をクリックすると拡大表示されます。)

実践経過

1月 公開研究授業に向けた指導案の検討:東原先生ご指導。テレビ会議も活用
ねらいは何か、そのためにどんな思考・活動をさせるのか、その手立てとしてのICT活用等について、それぞれの学年で検討を重ねた。
2月 ◇2月4日(木)“研究発表会の開催”
公開授業開始前のオリエンテーション
授業の見所、ICT活用の特徴、活用する時間等を紹介。
(前日に、学年ごとに撮っておいたビデオを上映)
第1学年「20よりおおきいかず」
(インタラクティブスタディ)
《スタートラインを揃える》
既習内容を完全習得する機会を設けてから,新たな学習に取り組む。 
第2学年「図を使って考えよう」
(ノートを映して発表・デジタル教材)
《思考のステップ》
習熟度別にステップを調整。思考の流れを重視したデジタル自作教材。
第3学年「重さのはかり方と表し方」
(スタディノート・ポスター機能)
《友達の考え方を比較・分類・統合》
考え方をスタディノートポスター上で共有し、操作→発見。
第4学年「面積のはかり方と表し方」
(インタラクティブスタディ)
《個別指導による完全習得》
データに基づいた個別指導。互いに教え合う学習。
第5学年「いろいろな四角形の面積の求め方」(カブリ3D)
《図形の操作が思考を促す》
算数で実験を行う。いつでも言えることを発見する。
第6学年「生活の中の算数」
(スタディノート・ポケット)
《発見して写真にその場でメモ》
写真とメモを根拠に思考を深める。
わかくさ学級「上手に買えるかな」
(自作教材・実物投影機)
《一人ひとり固有の課題》
やり方の拡大提示で,友達のやり方に関心が深まる。友達をほめる。
パネルディスカッション
(パネリストとして、年間指導講師の東原先生も参加)
コミュニティ・スクール、家庭・地域の取組、ICT活用による学力向上について実践報告。

◇2月10日(水) 校内研究 最終研究授業(公開授業):中川先生ご指導
第6学年 「生活の中の算数」
(研究発表会での公開授業の続き)

生活の中の“算数を活用する対象となる事象”を探す活動、まとめる活動を終えた最終段階。
「身の回り」を素材にして問題を自作し、互いに解き合う。(事前の指導は東原先生)



《指導内容》
  • 実生活に結びつけるという視点をもつことは大切。新学習指導要領でも各教科に明記。
  • 教科横断的に!算数と他教科での、より議論が深まるような学習場面の関連の検討を。
    議論、説得などの自発的な考えに重きをおいていけるとよいのでは?


 

成果と課題

 本研究がねらうことは、『算数科における学力向上(基礎基本の完全習得と数学的な思考力の育成)』である。1年目はこの目標に向けて、「教師の学びは必ず子供の学びにつながる」と信じ、ひたすら教師が学ぶことに徹した。講師の指導のもと、子供の実態を分析して学力向上プランを作成した。また毎月の研究授業では、その単元の教材研究を徹底して行い、新たなICT活用に挑み、そこで学んだ新たな視点を日々の算数の授業で生かすように努めてきた。
 このように、年間を通して講師の先生から学ぶ機会をもつことができたことは大変有意義だった。全教員が一丸となって目標を共有し、特に、学年のチームワークを生かして実践を進めてきたことにより、若手教員の指導力が飛躍的に向上したと感じている。
 同時に、本研究を進めながら、学力向上の基盤となる「基本的な生活習慣や学習習慣の定着」に向けて、家庭や地域と連携して取り組めたことは大きな成果だった。
 2年目は、成果を形に表すことができるようにしていきたい。
 
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 研究発表会に参加してくださった方々から、後日うれしいお便りをたくさんいただいたことが何よりの励みになった。「コミュニティ・スクールと学力向上のためのICT活用が一体となって平山小学校の子供と先生を元気にしているのだ、ということを実感させていただきました。」「参観者が見守る中でも、子供は学習に集中し課題に立ち向かっていました。先生方は常に笑顔で子供の発言や反応を受け止めながら、ねらいが達成できるようにと真剣さが伝わってきました。若竹が天をめざしてぐんぐん伸びていくように、子供と先生がひとつの目標に向かって勢いをもってがんばっている姿に元気をいただきました。」「何よりも感動したのは、先生方の子供達に対する真剣な眼差しです。一人一人の子供達にわかる喜びを味わってもらいたい、できるという自信をもってもらいたいという熱意が沸騰しているのを感じました。集団でなんとなく分かる、集団で何となく分からないという、子供達をかたまりで考え接するのではなく、本当に一人一人に真摯に向かい合う姿に感動しました。」・・・
 年間を通じてご指導してくださった東原先生には大変お世話になった。毎月の研究授業はもちろん、テレビ会議でのご指導時間は50時間も越えた。にもかかわらず、一緒に研究するのだから、とおっしゃって、講師謝礼は一切受け取られなかった。また、パナソニック教育財団の担当講師でいらっしゃる中川先生には、校内研究のテーマとは別の観点から、授業展開やICT活用のあり方をご指導いただき、広い視野で研究を支えてくださった。本校の研究は、熱意ある先生方によって支えられていることを実感しており、感謝の気持ちで一杯である。
 

1年間(21年度)の実践を終えての感想

 本研究を通して、ICT(インタラクティブスタディ、スタディノート、スタディノート・ポケット、カブリ3D、自作デジタル教材、電子黒板、大型テレビ、実物投影機)が、どのような学習活動を支援するかがわかり、今後の可能性も見えてきた。このことを次年度の実践に生かしていきたい。
 また、学力向上という大きな目標に向かって、地域ぐるみの体制を整えられたことは、何よりの成果だと感じる。地域と家庭が中心になって一番の根っこになる子供の生活習慣の向上に取り組み、よりよい学習習慣に結びつける。このような学力向上のための土台を確かなものにしながら、授業力を向上させるためにICT活用を取り上げ、全ての先生が一丸となって実践研究を進めていく、という体制である。
 

次年度(22年度)への思い(課題、目標など)

 上に記したように、1年目の成果をもとに研究を進めていく。学力向上は、すぐに結果に出るものではないが、何らかの形で、成果を形に表すことができるようにしたい。
 

解説と講評

コメント:放送大学 教授 中川一史 先生

 平山小学校は、学力向上を「生活的な生活習慣」「学習のやくそく」「学力向上プラン」「基礎基本の完全習得」「思考力・表現力」の積み上げのもとに研究を深めてきている。
 また、ICTを 活用することは授業力を向上させるという共通理解をもって全校的にすすめてきている。
 教員も、日常的にさらにチャレンジングにICTを活用し、その評価を行っている。
特筆すべきは、公開研究授業の直後にも、校内の研究に根づいたICTを活用した算数の実践的研究をきっちりと校内で行っていたことだ。
 2月の授業をともなった検討会では、話し合いにおける「対話」「交流」「議論」「説得・納得」の段階についての解説を行った。さらに、算数科と算数科以外で、より議論が深まるような学習場面の関連の検討について、今後の課題として指摘した。
 いずれにしても、ICT活用場面をあげながら、しっかりと授業研究を行っている本校の研究姿勢に敬意を表したい。
 
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