実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

活動情報/第34回特別研究指定校活動情報/第34回特別研究指定校

三次市立三和小学校の活動報告/平成21年度8〜12月
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セールスポイント

研究発表会の開催

11月27日に研究発表会を開催しました。山形県,長崎県をはじめ,県内外からの皆様に参加していただくことができました。
ポイント(1) バラエティ豊かな授業実践の公開(全学級公開)
電子情報ボード,実物投影機,コンピュータ,デジタルカメラなど多様なICTを活用しました。また,授業内容では,思考したことを分かりやすく表現する場面,表現の基礎を学ぶ場面,学んだことを活用して思考する場面など,思考力・表現力をテーマとしたさまざまな学習場面を提案しました。
ポイント(2) ポスターセッション形式による事後協議会
本時の授業展開をわかりやすく表現した大型ポスターを会場に設置し,ポスターセッション形式による事後協議会を実施しました。さらに今年は,スタンプラリー形式を採用し,参加者の皆様が,楽しみながら数多くのポスターを回って意見交流していただけるよう工夫しました。
ポイント(3) ICT活用ワークショップ
電子情報ボードや実物投影機などのICTは,まだまだ学校現場に普及しているとはいえません。そこで,参加者の皆様にICTを活用した授業のイメージをより持っていただくために,ICT活用ワークショップを実施しました。会場には,電子情報ボード,実物投影機,コンピュータを設置し,参加者の皆様が実際に直接操作できるようにしました。各ブースには本校職員が待機し,機器活用のポイントや苦労など,参加者の皆様といろいろな意見交流を行いました。
ポイント(4) 木原先生によるご講演
指導講師の木原俊行先生には,この3年間に20回近く本校に指導に来ていただいています。公開授業へのご講評,本校研究の特徴やよさ,今後の課題や展望等について,いつもながら具体的に,分かりやすくお話いただきました。
ポイント(5) ふりかえりタイム
研究発表会の最後を飾ったのが「ふりかえりタイム」です。参加者の皆様に今日一日をふりかえっていただきながら,今後のICT活用や思考力・表現力育成の授業実践について考えていただきました。ふりかえりをグループで交流し,さらに全体で共有し,和やかな雰囲気の中,明日からの実践へのアイデア,活力を得るよい機会となりました。

研究紀要・ICT活用実践事例集の作成・配布

研究紀要の作成に当たっては,全員が執筆を担当し,これまでの取り組みを振り返り,成果や課題を再認識することができました。また,3年間にわたるICT活用実践を整理し,実践事例集としてフルカラーのパンフレットを作成しました。これらの冊子は研究発表会で配布し,参加者の皆様にも大変好評を得ました。

実践経過

8月
  • DVD「思考力・表現力を育成する指導の実際」研修
  • 校内ミニポスターセッション
9月
  • 校内授業研究会(9月16日) キーワード(研究の方向性の再確認)
    ◆1年算数科「10よりおおきいかず」
    • 成果:実物投影機を用いて,「ブロッククイズ」をすることで,児童の学習への意欲が高
         まった。
    • 課題:「10のまとまり」にするということへの意識が弱い児童も見られた。学習課題の
         表現の仕方と算数的活動の中身を一致するようにしていく。
    ◆3年国語科「わたしのお気に入りの場所」
    • 成果:学校放送番組を活用することで「インタビューの極意」を児童が共有することがで
         きた。
    • 課題:自分たちのインタビューの様子をビデオで視聴し,振り返り思考する場面の時間が
         十分に取れなかった。放送番組の内容をより吟味し,部分視聴をするという計画で
         もよかった。
10月
  • 研究紀要の作成
  • ICT活用実践事例集の作成
11月
  • 研究部会での模擬授業
  • 事後協議用ポスターの作成
  • 研究発表会の実施(11月27日)
    1年算数科「かたちをうつして」
    2年国語科「わたしの見学ノート」
    3年国語科「様子をくわしく表そう」
    4年算数科「調べ方と整理のしかた」
    5年国語科「森林のおくりもの」
    6年算数科「文字と式」
写真1
12月
  • 研究発表会の反省
  • 2学期研究部会活動の反省
  • 3学期研究部会活動の計画



 

成果と課題

●成果
  • 研究発表会を開催し,参加者の皆様から多くのご意見・ご感想をいただくことができたこと。
  • 研究発表会参加者アンケートの結果,参加者の皆様から本校研究に対して高い評価をいただくことができたこと。
  • 研究紀要・実践事例集の作成や,研究発表会の開催を通して,3年間のICT活用の研究実践を振り返り,整理することができたこと。
●課題
  • ICTを活用した授業改善を,児童の思考力・表現力の向上に着実に結びつけるための,継続的な取り組みが必要であること。
  • ICT活用以外にも,全校で共通して取り組むべき授業改善のポイントを明確にして,日々の授業改善に取り組むこと。
  • 3年間の研究を総括し,次年度以降の研究推進の方向性について協議し,研究計画を立てること。
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

 今年度は助成金を活用し,特別研究指定校の坂出市立府中小学校・富山市立山室中部小学校の研究会に参加させていただくことができ,指定校同士の交流もできました。お互いの実践に刺激を受け,今後,更なる研究の推進に努めていきたいと職員の意欲も向上しています。
 今年度これまでの反省をふまえて,2月5日(金)に研究会を行います。多くの方のご参加とご意見をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 

解説と講評

コメント:大阪教育大学 教授 木原俊行 先生

研究発表会の企画・運営を通じた,実践研究の進展

 平成21年11月27日,広島県三次市立三和小学校は,研究発表会を開催した。その特徴は,学校からの報告中の「セールスポイント」に記されている。例えば,「バラエティ豊かな授業実践の公開(全学級公開)」「ポスターセッションによる事後協議会」等である。それらについて,筆者なりに解説したい。
 まず,三和小学校の教師たちが有する,研究発表会の企画・運営に関する基本コンセプト,その確かさについて確認しよう。彼らは,研究発表会を,自校の実践研究の特徴と課題を学校外の教師等の評価言を得て詳細に検討する機会として理解している。だから,完璧な授業を披露する必要もないし,参加者数をいたずらに増やす必要もない。授業実践や研究発表を題材とする,他校の教師との意見交換が密になり,またそれが多面的であれば,それでよいのである。換言すれば,実践研究のR-PDCAサイクルの一環として研究発表会を性格づけるという,同校の教師たちの姿勢に,まずは注目していただきたいのだ。
 それゆえに,他校の教師たちとの対話が豊かになるための仕組みを,三和小学校の教師たちは整えている。これにも,見るべきものがたくさんある。例えば,「ポスターセッションによる事後協議会」は,参加者,とりわけ若い教師や中学校の教師たちにとって,コメントが出しやすいスタイルの協議会であることは自明であろう。また,ICT活用に関するワークショップが企画・運営されており,そこでは,活動を介した,教師間の意見交換も実現している。さらに,三和小学校の教師たちは,研究紀要に加えて「ICT活用実践事例集」を作成し,参加者に配布しているが,これも,参加者から評価コメントを引き出すためのよきアプローチとして見事である。
 もちろん,研究発表会をこのように企画・運営するのは,簡単なことではない。その準備に相当の時間が費やされたことは,容易に推察しうる。しかしながら,三和小学校の教師たちは,ここ数年間継続して研究発表会を実施してきて,上述したようなコンセプトとプロセスに基づく研究発表会であれば,自分たちにとっても,そして参加者にとっても,得るものが多いことを実感している。だからこそ,あえて,研究発表会のプログラムや準備に工夫を重ねるのである。その姿は,仲間や外部人材とともに問題解決的な学習に励む子どもの姿に,実によく似ている。
 もし,読者が何のために研究発表会を催すのかが分からなくなったら,あるいはそのデザインや方法に関して迷いが生じたら,三和小学校のそれをもう一度じっくり眺めてみるとよろしかろう。そうすれば,研究発表会をやってみたい,その企画・運営を工夫してみようという気持ちがまた湧いてくるに違いないから。
 
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