実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に対する助成制度)

活動情報/第34回特別研究指定校活動情報/第34回特別研究指定校

富山市立山室小学校の活動報告/平成20年度4〜7月
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セールスポイント

教室常置で使うことが当たり前になった実物投影機とプロジェクタ

機器を使い続けてくると、それらは黒板やチョークと同じような学習指導のための道具となる。本校では、このように機器の活用が日常化している。
昨年度9月に実物投影機とプロジェクタを全ての普通教室に常置して以来、効果的な活用場面についての情報交換も活発に行ってきた。今年度に入り、特別支援教室、特別教室、少人数指導のための教室等、全ての教室に常置された。全教育課程での活用が可能になったことで、より分かりやすい授業に向けての活用のポイントが次第に明らかになっている。

研修の積み重ねが研究をステップアップ

今日的な学力を本校の研究主題と結び付けて取り組んできた。外部講師の指導助言による理論的な裏付けや実証されたデータをもとにした校内研修の実施により、学習場面での効果が明らかになってきた。
指導をもとに、日々、研修を重ね、深めていくことで、教師の力を高めていくことができた。

実践経過

日常的に活用し、研修を重ねることでICT活用の効果を再認識!

4月
  • 今年度の研究の概要について 共通理解
  • 3部会研修(研究内容の確認・研究計画作成)
    「生活規律確立部会」「基礎学力定着部会」「授業力向上部会」
  • 校内授業研究の年間計画作成
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5月
  • 外部講師による訪問アドバイス(堀田龍也先生・高橋純先生)
    • 授業公開(モジュール学習全学級・授業公開2学級)
    • ワークショップ型研修
      「ICTを生かしたテンポのよい反復練習・指導内容」
      「効果的なICT活用場面」
    • 講師からの指導助言
  • 公開研一次案内を各関係機関へ送付
写真2
写真3
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6月
  • 学校訪問研修(本校の研究主題に基づいた授業研修)
  • 外部講師による訪問アドバイス(高橋純先生)
    • 授業公開7学級
    • ワークショップ型研修「発問・指示が生きる効果的なICT活用」
    • 指導助言及び講義「読む人が納得する指導案を考えるコツ」
7月
  • 公開研配付予定の資料本の内容検討

情報主任による参加自由型研修実施
  • 実物投影機とプロジェクタ活用研修
  • フラッシュ型教材活用研修 等
校内授業研究実施(全体・部会)
  • 三部会からの提案授業による研修
 

成果と課題

教師の授業力を児童の学力向上につなげる!

●成果 教師の授業力の高まり
  • 「学力」を構造的にとらえ、研究の方向を共通理解し、3部会に分かれて研究を推進してきた。3部会からの提案授業を通して研究を重ねることで、効果的なICT活用指導法について、授業のねらいとの整合性、活用場面の妥当性、機器操作の手順など、視点を明確にして討論することができるようになった。
  • 児童の基礎的な学力向上を目指し、発問・指示・説明を明確にした授業を考えたり、論理性や整合性のある指導案の書き方を検討したりすることを通して、「教師力×ICT力」を意識し、ICT活用と学習効果の関係に目を向けて、日々、実践できるようになってきた。
●課題
  • 児童の学力向上につなげる具体的な手立てを明らかにしていく
 

裏話(嬉しかったこと、苦心談、失敗談 など)

使わない方がいいんじゃない?

昨年度9月に各学級に常置した実物投影機やプロジェクタは、機種や機能、性能がまちまちであった。実際に授業で使用してみると、明るさが足りず教室の後ろから見ると何が映っているのかはっきり分からなかったり、拡大しすぎるとぼやけてしまったりと、使うことで授業がとぎれてしまい、活用そのものを疑問視する声も聞かれた。また、使うことを意識し過ぎてしまい、必要のない場面で使ったり、体験や経験を軽視してしまったりするような使い方も見られた。
今年度に入り、機器の面で充実した環境にすることができた。晴天時の教室でも明るく鮮明に見えるプロジェクタの性能に驚き、拡大することによって布地の織り方まではっきり分かるほどの実物投影機に感動した。より大きな効果を感じたのは、機器が充実したからかもしれない。さらには、授業場面での具体的な活用について研修を積むことで、活用の効果を意識した使い方ができるようになってきた。
天候や教室環境に左右される場面は多々あるが、ICT活用はまだまだ可能性を秘めていると感じている。日々の活用を通して、新たな活用法を探っていきたい。
 

解説と講評

コメント:メディア教育開発センター 准教授 堀田龍也先生

 本校の研究は,ICT活用による指導法の改善の研究に位置づく研究である。特に特徴的な点は,ICT活用によって改善される指導法を,学習指導のみならず生活指導にも拡張している点にある。(1)しっかりとした生活習慣の確立のための生活指導,(2)それを前提とした訓練・習熟による基礎的な学力の徹底,(3)これらの基礎的な学力の上に立つ教科書レベルの基礎・基本の学力の習得,(4)さらにその先にある活用型の学習活動および探究型の学力の育成という層に分けたICT活用の研究となっている。1年目については,特に(1)から(3)までを中心として研究範囲を定めている。
 4月より始まった研究指定ではあるが,第1回の公開授業研究会を11月末に計画している。7月末の段階では,研究指定となった初期の段階であることもあり,すべての教員がICTを活用した指導に取り組み,その経験値を高め,その上でようやくICT活用の何がポイントなのかについて検討を始めた時期である。それでも,1学期中に全教員が日常的にICT活用による授業を行っていることはすばらしいことだと思う。また,適宜,外部講師による訪問アドバイスを受けており,段階ごとの助言を受けて次第にICT活用と学力,授業パターンなどについての関係について強く意識し始めたところであり,今後に期待できる部分である。
 研究指定として行うアウトプットである「ICTを活用した生活指導ガイドブック」「ICT活用による基礎的な学力習得のためのモジュール学習教材パッケージ」「基礎・基本の確かな学力向上のためのICTを活用した授業力向上ガイドブック」などについては,現状ではまだ形はないが,その中身に入るものの蓄積が始められているところである。
 
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