実践研究助成(初等中等教育現場の実践的な研究に関する助成制度)
平成24年度 成果報告会レポート
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成果報告会とは

成果報告会とは

パナソニック教育財団では、ICTを効果的に活用しながら教育課題の改善に取り組む全国の学校に助成(実践研究助成)を行っています。
この「実践研究助成」の成果報告会を8月6日に行いました。北は北海道、南は沖縄県から約70校の助成先の先生方と、選考委員および専門委員など総勢約150名の先生方にご出席いただきました。

「成果報告会」は、“ 実践を深め 育てること ”への支援の一環として、
@ 研究成果を明確化する機会と場にする
A 助言や意見をもらうことにより、気づきを得る場とする
B 相互の研究成果やアイディアを共有する場とする
C 交流を深める場とする
D 今後さらに研究を深め、次なる研究に取組むための契機とする
を目的に実施しています。

今回は、昨年度(第37回)助成校、ならびに 一昨年度(第36回)特別研究指定校          の成果報告とそれらを通じた、情報や成果の交流、還元が行われました。

 
主催者あいさつ

主催者あいさつ開会式では、パナソニック教育財団常務理事の赤堀氏より「助成校は今後、他の学校への普及をミッションとしてほしい。本日は専門委員の先生方や他校と忌憚のない意見を交わして様々な気づきをしてほしい」との挨拶がありました。

動画主催者挨拶

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「くるま座ディスカッション」
くるま座ディスカッションでは、参加校が特別研究指定校と地域別などの17グループに分かれ成果報告を行いました。各グループには専門委員の先生方が入られアドバイスを行いました。
特別研究指定校グループを中心にいくつかをご紹介します。

■3世代の特別研究指定校が成果と課題を共有
 

○特別研究指定校グループ
特別指定校グループでは、報告を行う第37回特別研究指定校(助成2年目)の他、第36回、38回の特別研究指定校も参加し、世代をまたいで、研究の効果検証について悩みを共有し、アイディアを交換し合いました。
専門委員の先生方からは、全校を挙げて取り組むことの素晴らしさに言及されるとともに、研究前と研究後の変化を明らかにする必要があるとのアドバイスがありました。

 
酒田市立飛鳥中学校

酒田市立飛鳥中学校
生徒の学習意欲を引き出すために、学校全体で様々な取り組みをされておられます。教科の枠を超えて学校全体で取り組みことにより、先生方の意識が変わったとの報告がなされました。

勝山市立村岡小学校

勝山市立村岡小学校
ICTを活用した「わかる授業」に全校挙げて取り組んでおられます。そのためには、まずは先生方が教科書に指導ポイントを書き込むなどして、教科書を徹底的に使いこなすことを実践しているとの報告がありました。実物投影機で焦点化したり大きくみせたりすることにより、子どもたちの発言内容が変わり、楽しんで学んでいる様子が見て取れるようになったそうです。

京都府立乙訓高等学校

京都府立乙訓高等学校

教員のICT利用率の推移の他、効果の1つとして、進学率を上げることの課題を挙げ、定期試験や学習進度の向上など、教科によってわかってきたことを紹介されていました。
守口市立橋波小学校

守口市立橋波小学校

ICT活用の先進的な実践、取り組みについて報告がありました。その後、コラボノートによる共有時間の短縮化、タブレットの手書きモードとキーボード入力の実情、児童アンケートの傾向などについて、情報交換がされていました。
 
西宮市立北六甲台小学校

西宮市立北六甲台小学校

教員全員が一丸となって取り組める要因について質問があり、校長のリーダシップ、全教室の統一環境など、その本質にせまるような、意見交換がされていました。
鹿児島市立山下小学校

鹿児島市立山下小学校

全教室に設置された電子黒板や実物投影機、またデジタルペンなどを使って、子ども達の「思考の可視化」に挑戦しておられます。個々の授業での学習課題を達成しながらどう思考力を育成するのか、といった難しい課題に対して、研究を進めておられます。
助成を機に研究にICTを位置け、モノからツールに
 
北海道グループ

○北海道グループ 
札幌市立幌西小学校では、助成を機に研究の中にICT活用を位置づけたとのことです。モノとして入っていた「ICT」「電子黒板」が研究ベースにのって、学習のツールとして位置づき、ICTありきではなく、授業プランにICTをどう活用することが有効かということで研究をすすめることができた、との報告がなされました。
「ずばり、電子黒板の良さは」との質問には、「学びの基本が身につくこと」をお答えになりました。

コンピュータを使うスキル
 
四国グループ

○四国グループ
東みよし町立足代小学校では、全児童にタブレットPCが支給されている環境にある中で、調べたり、まとめたりではなく「コンピュータを使うスキル」を指導するため7つの指導プランの実践ついて報告がなされました。
例えば保存ボタンの使い方については、子ども達がフォルダの概念を先にしっかり理解しているため、「どのような名前をつけるか」「友だちと共有するにはどのような名前をつければいいか」などについて戸惑うことがないとのことでした。
専門委員からは、獲得したスキルが教科教育へどのように活かされるかを考えてほしい、と実践研究の継続発展へのアドバイスがありました。

文部科学省 ごあいさつ

文部科学省生涯学習政策局参事官の新井氏

くるま座ディスカッション後に文部科学省生涯学習政策局参事官の新井氏よりご挨拶を頂きました。

「文部科学省としては、21世紀を生きる子ども達に求められる「生きる力」を育む教育を行うため、教育の情報化を推進している。また、政府としても、7月31日に日本再生戦略をおいて、ICTも活用しながら、課題の発見・解決やコミュニケーション能力など重要な能力・スキルの確実な習得を目指すことが大事であると閣議決定されたところである。くるま座ディスカッションに参加させて頂いて、各学校それぞれに独自のオリジナリティーあふれる取り組みを行っておられるので、それぞれの知見、ノウハウを共有して自らの実践に生かしてほしい。また、継続が大事であり、現在行われている取り組みをより一層深めて頂いて、研鑽を積んで頂きたいと思います。」

動画文部科学省 ごあいさつ

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ポスターセッション
ポスターセッション

本会における「ポスターセッション」とは、特別研究指定校が創意工夫して制作したポスターを前に発表を行い、参加者はさまざまなポスターの前に立ち寄りながら、自由に質問するというものです。

今回は、第36回、37回、38回特別研究指定校の計11校がポスター発表を行いました。
どの学校もポスターだけにとどまらず、シートで説明したり、お揃いのTシャツで吹き出しをつけながら説明したり、研究会の宣伝には手品が出てきたり、様々な工夫をこらしながら聞き手をひきつけ、先生方らしいプレゼンテーションをされていました。

■ ポスター一覧(PDF)
◆ 第36回 特別研究指定校 ◆
中村西 桃山小 幸崎中      
中村西小 京教附属
桃山小
幸崎中      
◆ 第37回 特別研究指定校 ◆
村岡小 橋波小 北六甲台小 山下小 飛鳥中 乙訓高
村岡小 橋波小 北六甲台小 山下小 飛鳥中 乙訓高
◆ 第38回 特別研究指定校 ◆
平小 芝谷中        
平小 芝谷中        
 
校内研修会の工夫と毎月の授業研究会
 
川崎市立平小学校

○川崎市立平小学校 (第38回特別研究指定校)
助成1年目の平小学校では、ICT活用を全校に広げるための校内研修会について紹介していました。クエストカードを用意、部屋ごとにICT機器を置いておき、各学年の先生達(3クラス1グループ)が設置・設定・配線というミッションをこなしながらICT機器に慣れていき、最終的にはどんな授業づくりに取り組めるだろうかとICT活用の場面、意図や目的を考えるというスタイルで行ったとのことでした。
また5月から月1回ペースで授業研究会を行い、6月には1年〜6年生まで18クラスと音楽、特別支援学級の全20クラスがICTを使った授業を行ったそうです。今後の目標はICT活用の先のカリキュラム作成とのことです。

学ぶ姿勢を育てるための支援
 
酒田市立飛鳥中学校

○酒田市立飛鳥中学校(第37回特別研究指定校)
実践が2年目に入っている飛鳥中学校からは、自分の学習状況をとらえる「学習コミュニケーション」と全職員で学ぶ姿勢を育てるための支援について報告がありました。
「学習コミュニケーション」では、@「単元評価」の実施 A「学習マップ」の活用 B「評価シート」の開示(PCの利用) C「飛鳥タイム」の試行(学び合うスキルと姿勢づくり)を実践しているそうです。
全職員で学ぶ姿勢を育てるための支援としては、@BU(ブラッシュアップタイム) APT(プライベートティーチャー) BFT(フェニックスタイム) CGT(ガイダンスタイム)という4つの柱を設定しているとのことでした。
各々の学習について細かく記し、また先生の丁寧なコメントが書かれたBU(ブラッシュアップ)ノートを子ども達は「宝物」と呼んでいるそうです。

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シンポジウム

シンポジウムでは平成20年度から設けられた「特別研究指定校」3期校による2年間の活動と成果の報告が行われました。特別研究指定校には、研究者(専門委員より選任)がアドバイザーとして2年間、学校をサポートし続けます。これも特別研究指定校制度の大きな特徴といえます。

 
「わが校」の見つめなおし につなげる

はじめにファシリテーターの寺嶋先生が本シンポジウムの趣旨として以下の2点を挙げ、本成果報告会が“実践を深め、育てること”につながるように促されました。
@特別研究指定校の成長の軌跡をたどりながらその成果を分析する。
Aこれにより登壇校を含め皆さまに今年度残り、来年度以降の「わが校」の見つめなおしをしていただきたい。 

今回のシンポジムでは特別研究指定校の報告を受け、ファシリテーターと各校アドバイザーによるディスカッションを行いました。アドバイザーを通し、学校が語り切れなかった部分、学校の隠れた魅力などが紹介し、それぞれの学校の取り組みと成果をいっそう明らかにしていきました。

ファシリテーター
寺嶋浩介(長崎大学 准教授)


報告者
<東京>   東京都練馬区立中村西小学校
再生動画 再生動画(アドバイザーによる解説)

<広島>   広島県三原市立幸崎中学校
再生動画 再生動画(アドバイザーによる解説)

<京都>  京都教育大学附属桃山小学校
再生動画 再生動画(アドバイザーによる解説)


アドバイザー
堀田龍也(玉川大学 教授)  中村西小学校担当
木原俊行(大阪教育大学 教授)幸崎中学校担当
浅井和行(京都教育大学 教授)京都教育大学附属桃山小学校担当

 
共通性と多様性

ファシリテーターの寺嶋先生最後はファシリテーターの寺嶋先生が本シンポジウムを以下の3つの視点からまとめ締めくくりました。
@ 3校の成果・特徴
どの学校も着実に進めてきて、かつ改善されてきたことがよくわかった。ICTの活用が教員から子どもへと広がっている点は3校共通であるが、その方法は研究の目標、歴史、校種、規模などによって異なる

  • 中村西小学校:
    教育の目標などにブレがない上で、ICTを常設し、活用の型をシンプルに明確化した
  • 幸崎中学校:
    習得型も実践しながら、段階的に活用型の多様な授業へと発展させた
  • 附属桃山小学校:
    実践からICT活用を整理し、カリキュラム構築し、再び実践に戻した
A 学校研究・推進リーダーの特徴の変化
B アドバイザーの役割

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本日のまとめ・講評
赤堀常務理事

「成果報告会」の最後のセッションでは「本日のまとめ」として、赤堀常務理事が一日の活動を振り返り、「どの実践も、授業過程をベースにICTが関わっているということが重要である。このことを一挙にではなく、実践を繰り返すうちに徐々にわかってきた、ということも大切なことである。例えば、拡大提示は効果的だが、子どもは縮尺がわからなくなる場合もあるようにメディアの使い方によって、その道具性はプラスにもマイナスにもなる。道具性は状況によって、強く前に出たり、消えたりする。そのことに気付き、臨機応変にICTを対応させることが大切である。」と講評を述べました。
また、赤堀常務理事は、実践に基づいたことは生きた知見となる、とし実践の体系化が今後の課題であるとして話を結びました。

動画成果報告会 まとめ


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参加者の声

参加者に「成果報告会」に参加しての感想、本助成制度に関する思いなどを伺いました。
助成を受けられた先生方の声をお聞きください。

アンケート

・「成果報告会」という機会により、人とのつながりができて、とてもよかったです。他県の方と情報交換を、直にできてよかったです。(新潟県 中学校 教諭)

・やはりくるま座ディスカッションが一番印象に残りました。1年前に会った先生方にまた会えることに加えて、それぞれの成果を共有できることは、今後の糧になると強く感じました。
(福岡県 特別支援学校 教諭)

・実践に対して、いろいろと御意見やアドバイスをいただくことができ、これからの取組への意欲が高まってきました。(京都府 高等学校 副校長)

・シンポジウムは実践報告のみならず、その学校にかかわった専門委員の先生方のコメントがあるのがよかったです。目には見えない努力や下準備、苦労話などが聞けたのがよかったです。また司会の先生が、報告になかった部分を引き出してくださったのがよかったです。
(宮城県 小学校 教諭)

・シンポジウムにより何をどのように整理していくかの方向性が見えたように思う。専門家からの補足や推進の視点の交流は、自校の取り組みを振り返るときに参考になった。
(広島県 小学校 校長)

インタビュー

= 助成制度について (高橋 純 専門委員(富山大学 准教授)) 
・本助成では、贈呈式や成果報告会などで他県、他地域との交流により違いを感じ更に頑張ることができ、学校としても教員として成長できる。これは助成金以上のメリットである。

= 助成を受けたことによる変容 (特別研究指定校:西宮市立北六甲台小学校)
・実践研究に取り組むことが若手教員の力量アップの契機となり、その結果、子どもの基礎学力向上につながった。

= 他校への応援メッセージ (特別研究指定校:京都府立乙訓高等学校)
・応募して、やってみる姿勢が大事。学校としてICTを活用してやってみたいことが1つでもあれば、それをテーマに挑戦して欲しい。

動画平成24年度「成果報告会」ダイジェスト はこちらからご覧いただけます

 
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